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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1300818
審判番号 不服2014-20227  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-07 
確定日 2015-06-04 
事件の表示 特願2010-174568「フィーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年2月23日出願公開、特開2012-38762、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月3日の出願であって、平成26年7月3日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年7月8日)、これに対し、同年10月7日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年10月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。) の適否
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
電子部品を収納するキャリアテープと前記キャリアテープを覆うカバーテープとを有する供給テープを前記電子部品を取り出す取出口へ移動させる駆動手段と、前記供給テープが移動するテープシュートに前記供給テープを押付け、前記取出口を具備する案内機構と、前記案内機構に設けられ前記カバーテープを切断する切断手段と、前記切断された前記カバーテープが前記取出口の上部にくるのを回避するガイド部とを有し、
前記案内機構は、前記駆動手段を構成する駆動スプロケットに前記キャリアテープを押し付け、前記取出口を兼ねる開口部を設けた上板と、前記ガイド部を前記上板に固定するためのガイド機構固定部とを有し、前記切断手段は前記ガイド機構固定部における前記供給テープの挿入側に固定され、
前記切断手段の刃先は先端から前記供給テープが移動する方向に向かって高くなるように上向きに形成され、且つその底部に対して平行な面で2等辺三角形の形状を有することを特徴とするフィーダ。」
と補正(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)するものである。

上記補正は、請求項1において、発明を特定するために必要な事項である「案内機構」について、「前記駆動手段を構成する駆動スプロケットに前記キャリアテープを押し付け、前記取出口を兼ねる開口部を設けた上板と、前記ガイド部を前記上板に固定するためのガイド機構固定部とを有し、前記切断手段は前記ガイド機構固定部における前記供給テープの挿入側に固定され」るとの限定を付するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2010-147223号公報(以下「刊行物1」という。)には、「部品供給装置」に関して、図面(特に、図3、図5、図6参照。)と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0021】
(省略)供給テープ60は、図5(a)に示すように、基本的には、電子部品4を凹部63に収納するキャリアテープ61と前記キャリアテープを覆うカバーテープ62とからなる。(省略)」

イ 「【0022】
次の図3を用いて、本実施形態における部品供給装置2の構成を説明する。本部品供給装置2は、大別して、供給テープ60を部品供給装置2に自動装着する供給テープ自動装着部20、電子部品4を装着位置に移動させるスプロケット駆動部30、前記スプロケット駆動部30に確実に供給テープ60を挿入するための供給テープ挿入部70、部品供給カート50に部品供給装置2を載置する部品供給装置固定部2kと、部品供給カート50及び部品供給カート50を介して本体1との信号の授受をする部品供給装置コネクタ2dからなるインターフェイス81、及びインターフェイス81や後述する内部に存在するセンサからの信号を受けこれ等を制御し、本体1との信号授受を行なう供給装置制御部80からなる。」

ウ 「【0036】
第二に、本実施形態におけるスプロケット駆動部30の構成及び動作について説明する。スプロケット駆動部30は、供給テープ60に設けられたスプロケット孔64を駆動する急峻な形状の歯車を持つスプロケット31、その同心円状に設けたウオームホイール32とウオームギヤ33を介してスプロケット31を駆動するスプロケット駆動モータ34、スプロケットが確実に供給テープ60を送出できるように供給テープ60をバネ35によって供給テープ60の摺動しながら移動する移動路である供給装置シュート(図示せず)に押付けるカッタ付押付手段40、及び吸着位置の位置決め等を行う位置決め補正センサ36から構成される。カッタ付押付手段40の手前に設けられた位置決め補正センサ36は、供給テープ60のサイドに設けられたスプロケット孔64の位置を検出のために上部から照明するLED37とスプロケット孔64を撮像するための撮像カメラからなる。
【0037】
図6はカッタ付押付手段40を示した図で、(a)図が斜視図、(b)図が断面図である。カッタ付押付手段40は、供給テープ60を供給装置シュートに押付けるカッタ付き押付け板46、カバーテープ62をキャリアテープ61から離脱し、カット時の台となるカバーテープガイド42、離脱後のカバーテープ62を案内するカバーテープ押え部材43、カバーテープ62をカットするカッター41、左右に切り裂かれたカバーテープ62を電子部品吸着孔45での吸着に妨げにならないようにするカバーテープを左右にガイドするカバー開口ガイド44からなる。なお、供給テープ60とスプロケット31の契合部とが契合できるように、押付け板46は細長い孔を有している。また、電子部部品吸着孔45は、図3に示す吸着ノズル17の直下位置Sに配置される。
【0038】
供給テープ60がカッタ付押付手段40にくると、供給テープ60の上面のカバーテープ61は、カバーテープカッター41によりその中心から左右にカットされる。カットされたカバーテープ61は、カバーテープ開口ガイド44により左右に分かれて電子部品吸着孔45を通過する。通過したカバーテープ61は、カッタ付押付手段40の端部で電子部品を吸着されたキャリアテープ62と再度一体となって接合し、その接合したテープは供給済みテープ60Uとなる。」

エ 「【0041】
以上、スプロケット駆動部30における本実施形態によれば、外部に飛び出ることもなく小型に構成でき、供給テープ60に押付ける押付け板46を設けることによって、確実にスプロケットを駆動、即ち供給テープ60を確実送出できる。
また、スプロケット駆動部30における本実施形態によれば、前記押付け板46をカッタ付きとすることで、押付け板46から供給テープのカバーテープとキャリアテープとが一体となって送出され、夫々を一緒に回収でき、廃棄が簡単にできる。
また、スプロケット駆動部30における本実施形態によれば、本位置決め補正センサ36を設けることで、吸着位置を補正でき、さらに確実に吸着できる電子部品装着装置を提供できる。」

オ 図6には、電子部品吸着孔45が開口であり、カッタ付き押付け板46にカッター41及びカバー開口ガイド44を設けることが示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「電子部品4を収納するキャリアテープ61と前記キャリアテープ61を覆うカバーテープ62とを有する供給テープ60を前記電子部品4を取り出す電子部部品吸着孔45へ移動させるスプロケット駆動部30と、前記供給テープ60が移動する供給装置シュートに前記供給テープ60を押付け、前記電子部部品吸着孔45を具備するカッタ付押付手段40と、前記カッタ付押付手段40に設けられ前記カバーテープ62を左右に切り裂くカッター41と、前記左右に切り裂かれた前記カバーテープ62が前記電子部品吸着孔45での吸着に妨げにならないよう前記カバーテープを左右にガイドするカバー開口ガイド44とを有し、
前記カッタ付押付手段40は、前記スプロケット駆動部30を構成するスプロケット31に前記供給テープ60を押し付け、前記電子部品吸着孔45を設けたカッタ付き押付け板46を有し、前記カッタ付き押付け板46にカッター41及びカバー開口ガイド44を設けた部品供給装置2。」

(2)本願の出願前に頒布された国際公開第2008/156877号(以下「刊行物2」という。)には、「COMPONENT TAPE」に関して、図面(特に、FIG.5ないしFIG.17参照。)と共に、次の事項が記載されている。仮訳は、当審で行った。

ア 5ページ22行?24行
(仮訳)
部品テープ400は、基材テープ404、カバーテープ405(より明確な描写では基材テープ404から剥離されることが図示されている)、及び電子部品12を収容することができる複数のポケット406から構成される。

イ 5ページ29行?6ページ3行
(仮訳)
フィーダ10(図17に示される実施形態)によって、取り上げ配置装置(図示せず)に電子部品12の効率的な提供を促進するため、部品テープ400は、カバーテープ405の一部を操作部407として有し、テープ係合機構又はスプリッタ220(図5-16に示される実施形態)が容易にカバーテープ405に係合し、確実に部品12を露出させる。

ウ 8ページ16行?19行
(仮訳)
部品テープ400のカバーテープ405がテープ係合機構220のテープ係合チップ222に最初に係合された後は、テープ係合機構220の構造的な構成が、カバーテープ405の分離およびバイアスされた変形を容易にし、テープ係合機構220を越えて進む。

エ 8ページ22行?23行
(仮訳)
従って、カバーテープ405は、2つのセクション405a及び405bに分解され、各セクションは、くさび状のテープ係合機構の反対側に分離する。

オ 9ページ2行?11行
(仮訳)
したがって、図15は、本発明の実施形態であって、操作部407が露出モジュール200の実施形態のテープ係合機構220の実施形態に遭遇した後に再変形されたカバーテープ405を有する部品テープ400の実施形態を示しています。さらに進行が続くと、より多くの露出した電子部品12が部品配置装置によって取り上げられ、カバーテープ405の以前に分解されたセクション405a/bが基材テープ404に最も近い位置に再整列或いは再変形されます。このように、図16は、本発明の実施形態であって、露出モジュール200の実施形態のテープ係合機構220の一実施形態との遭遇した後に再結合したセクション405a/bを有する部品テープ400の実施形態の上面を示す。

カ FIG.5ないしFIG.7には、露出モジュール200の板状体(符号なし)の一端にスプリッタ220が設けられ、スプリッタ220の歯先は先端から部品テープ400が移動する方向に向かって高くなるように上向きに形成され、且つその底部に対して平行な面で2等辺三角形の形状を有することが示されている。

キ FIG.16には、FIG.15と比較すると、操作部407の左側において電子部品12の無いポケット406の数が増加している。上記オの記載と合わせみると、電子部品12が部品配置装置によって取り上げられたことが分かるから、FIG.5及びFIG.16の露出モジュール200の板状体に設けられら符合210が示す部分は、電子部品12の取出口であるといえる。

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「電子部品4」は前者の「電子部品」に相当し、以下同様に、「キャリアテープ61」は「キャリアテープ」に、「カバーテープ62」は「カバーテープ」に、「供給テープ60」は「供給テープ」に、「電子部部品吸着孔45」は「取出口」に、「スプロケット駆動部30」は「駆動手段」に、「供給装置シュート」は「テープシュート」に、「カッタ付押付手段40」は「案内機構」に、「カッター41」は「切断手段」に、「左右に切り裂く」ことは「切断する」ことに、「カバー開口ガイド44」は「ガイド部」に、「前記カバーテープ62が前記電子部品吸着孔45での吸着に妨げにならないよう前記カバーテープを左右にガイドする」ことは「前記カバーテープが前記取出口の上部にくるのを回避する」ことに、「スプロケット31」は「駆動スプロケット」に、「カッタ付き押付け板46」は案内機構の「上板」に、「部品供給装置2」は「フィーダ」にそれぞれ相当する。
また、後者のカッタ付き押付け板46に設けられた「電子部品吸着孔45」は開口であるから、前者の上板に設けられた「前記取出口を兼ねる開口部」に相当する。

したがって、両者は、
「電子部品を収納するキャリアテープと前記キャリアテープを覆うカバーテープとを有する供給テープを前記電子部品を取り出す取出口へ移動させる駆動手段と、前記供給テープが移動するテープシュートに前記供給テープを押付け、前記取出口を具備する案内機構と、前記案内機構に設けられ前記カバーテープを切断する切断手段と、前記切断された前記カバーテープが前記取出口の上部にくるのを回避するガイド部とを有し、
前記案内機構は、前記駆動手段を構成する駆動スプロケットに前記キャリアテープを押し付け、前記取出口を兼ねる開口部を設けた上板を有するフィーダ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願補正発明は、切断手段が「前記切断手段の刃先は先端から前記供給テープが移動する方向に向かって高くなるように上向きに形成され、且つその底部に対して平行な面で2等辺三角形の形状を有す」るのに対し、
引用発明は、カッター41の形状が不明である点。

〔相違点2〕
本願補正発明は、案内機構が上板「と、前記ガイド部を前記上板に固定するためのガイド機構固定部とを有し、前記切断手段は前記ガイド機構固定部における前記供給テープの挿入側に固定され」るのに対し、
引用発明は、カッタ付押付手段40がカッタ付き押付け板46を有し、前記カッタ付き押付け板46にカッター41及びカバー開口ガイド44を設ける点。

4 当審の判断
そこで、各相違点を検討する。
(1)相違点1について
刊行物2のスプリッタ220は、カバーテープ405を2つのセクション405a及び405bに分解し、各セクションをくさび状のテープ係合機構の反対側に分離するものであるから、刊行物2のスプリッタ220と引用発明のカッター41とは、カバーテープを左右に切り裂くことで共通する。

そうすると、引用発明のカッター41を刊行物2のスプリッタ220の「スプリッタ220の歯先は先端から部品テープ400が移動する方向に向かって高くなるように上向きに形成され、且つその底部に対して平行な面で2等辺三角形の形状を有する」との事項を適用して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
刊行物2の露出モジュール200の板状体は、電子部品12の取出口210を備えたものである(前記「2(2)」の「キ」)から、本願補正発明の「前記取出口を兼ねる開口部を設けた上板」に相当する。

そうすると、刊行物2の露出モジュール200の板状体は、一端にスプリッタ220が設けられるに止まるから、本願補正発明の「前記ガイド部を前記上板に固定するためのガイド機構固定部とを有し、前記切断手段は前記ガイド機構固定部における前記供給テープの挿入側に固定される」との構成を有するものではない。

また、刊行物2には、刊行物2の露出モジュール200の板状体を、本願補正発明の「前記ガイド部を前記上板に固定するためのガイド機構固定部とを有し、前記切断手段は前記ガイド機構固定部における前記供給テープの挿入側に固定される」との構成とする記載や示唆はない。

したがって、引用発明において、刊行物2に記載された事項を適用して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。

(3)効果について
また、本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が予測できる範囲内のものということができない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明について
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-05-22 
出願番号 特願2010-174568(P2010-174568)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 575- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山中 なお  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 冨岡 和人
内田 博之
発明の名称 フィーダ  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  

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