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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1300891
審判番号 不服2014-4064  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-03 
確定日 2015-05-14 
事件の表示 特願2012-517896「無線通信装置のデュアルアイドル・トラフィック状態」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月 6日国際公開、WO2011/002915、平成24年12月13日国内公表、特表2012-532508〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)6月30日(優先権主張2009年6月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月22日付けで拒絶理由が通知され、同年10月28日付け手続補正がなされ、同年11月29日付けで拒絶査定され、これに対し、平成26年3月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。



第2.平成26年3月3日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年3月3日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、平成25年10月28日付け手続補正書の請求項1の記載を、本件補正後の請求項1の記載に変更する補正事項を含むものであって、その本件補正前の請求項1、及び、本件補正後の請求項1の記載は、それぞれ、以下のとおりである(なお、下線は請求人が付与した。)。

<本件補正前の請求項1>
「【請求項1】
第1送受信ノードから第1制御信号を無線で受信し、第2送受信ノードから前記第1制御信号とは異なる第2制御信号を無線で受信するように構成された受信機と、
前記第2制御信号を用いて前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信し、前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへ自無線通信装置がハンドオフした後に前記第1制御信号を監視して前記第1送受信ノードとの登録を維持するように構成されたコントローラと、
を含む無線通信装置。」

<本件補正後の請求項1>
「【請求項1】
第1送受信ノードから第1制御信号を無線で受信し、前記第1送受信ノードと同じ通信規格の第2送受信ノードから前記第1制御信号とは異なる第2制御信号を無線で受信するように構成された受信機と、
前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへのトラフィックチャネルハンドオフを行い、前記トラフィックチャネルハンドオフ後に前記受信する第1制御信号の監視を継続して前記第1送受信ノードとの登録を維持し、前記第2送受信ノードから受信する前記第2制御信号を用いて前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信するように構成されたコントローラと、
を含む無線通信装置。」

すなわち、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての以下の事項を含んでいる。

1-1.補正事項1
「第2送受信ノード」なる記載を、「前記第1送受信ノードと同じ通信規格の第2送受信ノード」なる記載とする補正(以下、「補正事項1」という。)。

1-2.補正事項2
「前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへ自無線通信装置がハンドオフした後に前記第1制御信号を監視して前記第1送受信ノードとの登録を維持」なる記載を、「前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへのトラフィックチャネルハンドオフを行い、前記トラフィックチャネルハンドオフ後に前記受信する第1制御信号の監視を継続して前記第1送受信ノードとの登録を維持」なる記載とする補正(以下、「補正事項2」という。)。

1-3.補正事項3
「前記第2制御信号を用いて前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信し、・・・前記第1送受信ノードとの登録を維持するように構成されたコントローラ」を、「・・・前記第1送受信ノードとの登録を維持し、前記第2送受信ノードから受信する前記第2制御信号を用いて前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信するように構成されたコントローラ」なる記載とする補正(以下、「補正事項4」という。)。

2.新規事項の有無
上記補正事項1?3について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内においてなされた補正であるか、以下で検討する。

2-1.補正事項1
願書に最初に添付された明細書の段落【0033】には、
「図4を参照して説明される例において、第2送受信ノード104は、フェムトセル208で無線サービスを提供するフェムトセル基地局204であり、第1送受信ノードは、マクロセル206内でサービスを提供するマクロセル基地局202である。基地局202,204は、UMTSのプロトコル及び規格に従って動作する。 」
と記載されている(下線部は、当審が付与した。)。

そして、上記記載によれば、「第1送受信のノード」及び「第2送受信ノード」はともに、「UMTSのプロセス及び規格に従って動作する」のであるから、「第2送受信ノード」が「第1送受信ノードと同じ通信規格」であるといえる。
してみると、補正事項1における「前記第1送受信ノードと同じ通信規格の第2送受信ノード」は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面の記載の範囲内の事項であるといえる。

2-2.補正事項2
願書に最初に添付された明細書の段落【0033】、【0049】、【0067】及び【0068】には、
「マクロセル基地局下りリンク信号は、下りリンクトラフィック信号404と下りリンク制御信号406を含む。下りリンク制御信号406を「第1制御信号」と称することで、「第2制御信号」と称されるフェムトセル基地局204から送信される下りリンク制御信号408から区別する。」、
「無線通信装置106の受信機502は、第1送受信ノードから第1制御信号を無線で受信し、第2送受信ノードから、第1制御信号とは異なる第2制御信号408を無線で受信するように構成される。コントローラは、第2制御信号を用いて第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信しながら、第1制御信号を監視して、第1送受信ノードとの登録を維持する。 」、
「ステップ808では、第1送受信ノード102とのアイドル状態の通信を維持しつつ、第1送受信ノード102から第2送受信ノード104へのトラフィックハンドオフ手順を行う。 」、
「ステップ810では、第1制御信号を第1送受信ノードから受信し、第2制御信号を第2送受信ノード102から受信する。無線通信装置106は、第2送受信ノードとトラフィック状態を維持し、第1送受信ノード102とアイドル状態を維持する。無線通信装置106は、第1送受信ノード102からアイドル状態のプロトコルに従って制御信号406を受信し続ける。 」
と記載されている(下線部は、当審が付与した。)。

そして、上記記載によれば、「ハンドオフ」とは、「トラフィックハンドオフ」であるといえる。また、監視する「第1制御信号」は、無線通信装置106の受信機502において受信した「第1制御信号」であること、及び、第1送受信ノード102からの第1制御信号と称される制御信号406を「アイドル状態のプロトコルに従って制御信号406を受信し続ける」ことから、第1送受信ノード102とのアイドル状態及び登録を維持することに際して、第1制御信号の監視を継続することがいえる。
してみると、補正事項2における「前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへのトラフィックチャネルハンドオフを行い、前記トラフィックチャネルハンドオフ後に前記受信する第1制御信号の監視を継続して前記第1送受信ノードとの登録を維持」することは、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面の記載の範囲内の事項であるといえる。

2-3.補正事項3
願書に最初に添付された明細書の段落【0049】には、
「そのため、無線通信装置106の受信機502は、第1送受信ノードから第1制御信号を無線で受信し、第2送受信ノードから、第1制御信号とは異なる第2制御信号408を無線で受信するように構成される。コントローラは、第2制御信号を用いて第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信しながら、第1制御信号を監視して、第1送受信ノードとの登録を維持する。 」
と記載されている(下線部は、当審が付与した。)。

してみると、補正事項3における「登録を維持し、前記第2送受信ノードから受信する前記第2制御信号を用いて前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信するように構成されたコントローラ」は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面の記載の範囲内の事項であるといえる。

2-5.まとめ
以上、補正事項1?3の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内においてなされた補正であるから、特許法第17条の2第3項の記載を満たしている。

3.補正の目的
次に、補正事項1?3について、特許法第17条の2第5項第1号?第4号に規定する目的のいずれかに該当するか、以下で検討する。

3-1.補正事項1
補正事項1は、「第2送受信ノード」が「前記第1送受信ノードと同じ通信規格の第2送受信ノード」であることに限定するものである。
そして、該限定は、特許請求の範囲を減縮するものであるとともに、補正の前後における発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一のものである。
このため、本件補正の補正事項1は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3-2.補正事項2
補正事項2は、「自無線通信装置が」なる記載の削除を含んでいるものの、請求項1に係る発明が「無線通信装置」に係る発明であり、ハンドオフが他機の動作ではなく自機の動作であることは明らかであるから、「自無線通信装置が」なる記載の削除は実質的な補正に当たらない。
してみると、補正事項2の実質的な補正は、「ハンドオフ後」が「トラフィックハンドオフ後」であることに限定しているとともに、監視する「第1制御信号」が無線通信装置106の受信機502において受信した「第1制御信号」であること、及び、「第1制御信号」の監視が「第1制御信号の監視」の継続であることに限定するものである。
そして、該限定は、特許請求の範囲を減縮するものであるとともに、補正の前後における発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一のものである。
このため、本件補正の補正事項2は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3-3.補正事項3
補正事項3では、「前記第2制御信号を用いて前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信」なる記載を「前記第1送受信ノードとの登録を維持」なる記載の前から後に変更させる補正を含んでいるが、いずれも「コントローラ」の動作であり、該記載の位置の違いに応じて特定される事項に差異はないことから、「前記第2制御信号を用いて前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信」なる記載の位置の変更は実質的な補正に当たらない。
してみると、補正事項3の実質的な補正は、「第2制御信号」が「前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信する前記第2制御信号」であることに限定するものである。
そして、該限定は、特許請求の範囲を減縮するものであるとともに、補正の前後における発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一のものである。
このため、本件補正の補正事項3は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3-4.まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

4.独立特許要件
本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるため、平成26年3月3日付け手続補正書により補正された請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定の違反)について、さらに、以下で検討する。

4-1.本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.本件補正の内容」の「<本件補正後の請求項1>」に記載したとおりのものである。

4-2.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日の前に公開された文献である米国特許出願第2008/0025262号明細書(以下、「引用文献」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。

ア.「[0002] A WIMAX (worldwide interoperability for microwave access) or a WiBro (wireless broadband) service, i.e., a communication service for enabling a wireless internet connection during movement by using a portable terminal apparatus, are being used. Since both of the WIMAX and the WiBro service have analogous objects, they are simply referred to as the WiBro, hereafter. The WiBro is advantageous in that it supports portability (e.g., maximum 60 Km/h) and a handoff between base stations like a cellular phone, and also supports a higher transmission speed per subscriber (e.g., a maximum uplink transmission speed of 1 Mbps and a maximum downlink transmission speed of 3 Mbps) than a conventional cellular phone. Further, since the WiBro has a larger cell radius than a wireless LAN, it can provide a service covering a larger area.
[0003] However, as described above, the WiBro has various disadvantages. For example, the WiBro has a lower transmission speed than the wireless LAN. 」
(当審訳:
[0002] WIMAX(worldwide interoperability for microwave access)やWiBro(wireless broadband)サービス、すなわち、ポータブル端末装置の使用により、移動中に無線インターネット接続を可能とするための通信サービスが、すでに使用されている。WIMAXとWiBroサービスの両方は類似した対象を有しているので、それゆえ、それらは単にWiBroと呼ばれている。WiBroは携帯性(例えば、最大60Km/h)及びセルラー電話のように基地局間のハンドオフをサポートし、また、加入者毎に従来のセルラー電話よりも高い伝送速度(例えば、1Mbpsの最大アップリンク伝送速度、3Mbpsの最大ダウンリンク伝送速度)をサポートするという利点を有している。さらに、WiBroは無線LANより大きいセル半径を有しているので、より広いエリアをカバーするサービスを提供することができる。
[0003] しかしながら、上記したように、WiBroはさまざまな欠点を有している。例えば、WiBroは無線LANと比べより低い伝送速度を有している。 )

イ.「[0005] Another object of the application is to provide a method for performing a handoff from a WiBro service to a wireless LAN service and a terminal apparatus using the method. 」
(当審訳:
[0005] 出願の他の目的は、WiBroサービスから無線LANサービスへのハンドオフを実行するための方法、及び、その方法を用いた端末装置を提供することである。 )

ウ.「[0024] As shown in FIG. 1 , a handoff has to be performed when the terminal apparatus 10 located in a WiBro cell moves into a wireless LAN cell. For example, although a WiBro service is available within the wireless LAN cell, the terminal apparatus 10 can perform a handoff to a wireless LAN service to obtain a higher transmission speed. Further, if the WiBro service is not available within the wireless LAN cell, that is, if the inside of the wireless LAN cell is a shadow area in connection with the WiBro base station 20 , the terminal apparatus 10 has to perform a handoff to the wireless LAN service to continuously receive an internet service.」(なお、[0024]の「the terminal apparatus 20」は「the terminal apparatus 10」の誤記であると認められるため、「the terminal apparatus 20」を「the terminal apparatus 10」と読み替えた。)
(当審訳:
[0024] 図1に示すように、ハンドオフは、WiBroセルに位置するの端末装置10が無線LANセルの中に移動した時に実行されなければならない。例えば、WiBroサービスが無線LANセル内で利用可能であるが、より高い伝送速度を得るために、端末装置10が無線LANサービスにハンドオフを実行する。さらに、WiBroサービスが無線LANセル内で利用できない場合、それは、無線LANセルの内側がWiBro基地局20との接続において影の領域となる場合、端末装置10はインターネットサービスを継続的に受信するために、無線LANサービスにハンドオフを実行しなければならない。 )

エ.「[0026] First, the terminal apparatus 10 can communicate with the WiBro base station 20 (block S 11 ). Then, the terminal apparatus 10 can inform the WiBro base station 20 that it will perform a scanning (block S 12 ).」
(当審訳:
[0026] まず、端末装置10は、WiBro基地局20と通信する(ブロックS11)。そして、端末装置10は、スキャンを実行することをWiBro基地局20に通知する(ブロックS12)。)

オ.「[0029] Further, the terminal apparatus 10 can employ any one or both of the active scanning and the passive scanning in order to search the wireless LAN base station 30 . If the terminal apparatus 10 fails to find the wireless LAN base station 30 as a result of the search, the terminal apparatus 10 can continue communicating with the WiBro base station 20 (block S 11 ). If the terminal apparatus 10 finds the wireless LAN base station 30 as a result of the search, the terminal apparatus 10 can continue the handoff process.
[0030] Upon successful scanning, the terminal apparatus 10 can inform the WiBro base station 20 of a mode change, e.g., entering into an idle mode or a sleep mode (block S 14 ). If the terminal apparatus 10 enters into the sleep mode, the terminal apparatus 10 transmits a sleep mode request to the WiBro base station 20 to inform the WiBro base station 20 of entrance into the sleep mode. Then, the terminal apparatus 10 receives a sleep mode response including information on a sleep mode entrance time, a sleep period and a listening period from the WiBro base station 20 . If the terminal apparatus 10 enters into the idle mode, the terminal apparatus 10 transmits an idle mode request to the WiBro base station 20 in order to inform the WiBro base station 20 of entrance into the idle mode. Then, the terminal apparatus 10 receives an idle mode response including information on an idle mode entrance time, an idle period and a listening period from the WiBro base station 20 . In addition, even after the terminal apparatus 10 changes mode (e.g., enters into the sleep mode or the idle mode), the terminal apparatus 10 can check whether there are traffics (e.g., data) to be transmitted from the WiBro base station by using the listening period. Then, the terminal apparatus 10 can communicate with the wireless LAN base station 30 (block S 15 ).
[0031] The terminal apparatus 10 can receive a signal transmitted from the WiBro base station 20 during every listening period e.g., decided in the block S 14 , and then check whether there are traffics to be transmitted from the WiBro base station 20 (block S 16 ). Specifically, the terminal apparatus 10 can receive a traffic indication message from the WiBro base station 20 during every listening period, where the traffic indication message informs the terminal apparatus 10 that there are traffics to be transmitted from the WiBro base station 20 . If the traffic indication message indicates that there is no traffic to be transmitted, the terminal apparatus 10 can communicate with the wireless LAN base station again (block S 15 ). If the traffic indication message indicates that there are traffics to be transmitted, the terminal apparatus 10 preferably receives the traffics from the WiBro base station 20 and then communicates with the wireless LAN base station 30 again (block S 15 ). 」(なお、[0031]の「the wireless LAN base station 20」は「the wireless LAN base station 30」の誤記であると認められるため、「the wireless LAN base station 20」を「the wireless LAN base station 30」と読み替えた。)
(当審訳:
[0029] また、端末装置10は、無線LAN基地局30を探索するために、アクティブスキャン及びパッシブスキャンのいずれか一方又は両方を使用する。探索の結果として、端末装置10が無線LAN基地局を検出することができない場合、端末装置10はWiBro基地局20との通信を継続する(ブロックS11)。探索の結果として、端末装置10が無線LAN基地局30を検出することができた場合、端末装置10はハンドオフプロセスを継続する。
[0030] 成功したスキャンによって、端末装置10は、モード変更、例えば、アイドルモードやスリープモードへ入ったこと、をWiBro基地局へ通知する(ブロックS14)。端末装置10がスリープモードに入ると、端末装置10は、スリープモードに入ることをWiBro基地局20に知らせるために、WiBro基地局20へスリープモード要求を伝送する。そして、端末装置10は、スリープモードに入った時間、スリープ期間及びリスニング期間に関する情報を含むスリープモード応答をWiBro基地局20から受信する。端末装置10がアイドルモードに入ると、端末装置10は、アイドルモードに入ることをWiBro基地局20に知らせるために、WiBro基地局20へアイドルモード要求を伝送する。そして、端末装置10はアイドルモードに入った時間、アイドル期間及びリスニング期間に関する情報を含むアイドルモード応答をWiBro基地局20から受信する。さらに、端末装置10がモードを変更した(例えば、スリープモードまたはアイドルモードに入った)後、端末装置10は、リスニング期間を用いることによって、WiBro基地局から伝送されたトラフィックがあるかどうかを確認する。そして、端末装置10は無線LAN基地局30と通信することができる(ブロックS15)。
[0031] 端末装置10は、(例えば、ブロックS14で決定された)リスニング期間毎に、WiBro基地局20から送信された信号を受信し、WiBro基地局20から伝送されたトラフィックがあるかどうかを確認する(ブロックS16)。具体的には、端末装置10はリスニング期間毎にWiBro基地局20からトラフィック指示メッセージを受信することができる。ここで、トラフィック指示メッセージはWiBro基地局20から伝送するトラフィックがあるあることを端末装置10に知らせる。トラフィック指示メッセージが伝送されるべきトラフィックがないことを示す場合、端末装置10は、再び、無線LAN基地局と通信する(ブロックS15)。トラフィック指示メッセージが伝送されるべきトラフィックがあることを示す場合、端末装置10は、なるべく、WiBro基地局20からのトラフィック及び無線LAN基地局30との通信を、再び、受信する(ブロックS15)。 )

カ.「[0040] Furthermore, embodiments in accordance with the application are also advantageous in that the terminal apparatus performs a handoff to the wireless LAN service after informing the WiBro base station of a mode change (e.g., entering into the idle or the sleep mode), so that the terminal apparatus can receive information supplied to the WiBro base station after the handoff operation without a miss and can rapidly (e.g., immediately) return to the WiBro service. 」
(当審訳:
[0040] さらに、出願による実施形態は、端末装置が、WiBro基地局へモード変更(例えば、アイドル又はスリープモードに入ったこと)を通知した後に、無線LANサービスにハンドオフを実行することに利点をもたらし、その結果、端末装置がハンドオフ操作の後にWiBro基地局から提供された情報をミスなく受信し、WiBro基地局サービスへ速やかに(例えば、早急に)戻ることが可能となる。 )

上記のア?カによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「 WiBroは、無線LANより大きいセル半径を有しているので、より広いエリアをカバーするサービスを提供することができるが、無線LANと比べより低い伝送速度を有しており、
ハンドオフは、WiBroセルに位置するの端末装置10が、無線LANセルの中に移動した時に、より高い伝送速度を得るためや、WiBroサービスが無線LANセル内で利用できない場合や、無線LANセルの内側がWiBro基地局20との接続において影の領域となる場合に実行され、
端末装置10は、WiBro基地局20と通信し、
端末装置10は、無線LAN基地局30を探索するために、アクティブスキャン及びパッシブスキャンのいずれか一方又は両方を使用し、
探索の結果として、端末装置10が無線LAN基地局30を検出することができた場合、端末装置10はハンドオフプロセスを継続し、
成功したスキャンによって、端末装置10は、アイドルモードへ入ったことをWiBro基地局へ通知し、
端末装置10がアイドルモードに入った後、端末装置10は、リスニング期間を用いることによって、WiBro基地局20からトラフィック指示メッセージを受信することで、WiBro基地局から伝送されたトラフィックがあるかどうかを確認するとともに、無線LAN基地局30と通信し、
ここで、トラフィック指示メッセージはWiBro基地局20から伝送するトラフィックがあるあることを端末装置10に知らせるものであり、
トラフィック指示メッセージが伝送されるべきトラフィックがあることを示す場合、端末装置10は、WiBro基地局20からのトラフィック及び無線LAN基地局30との通信を受信し、
その結果、端末装置がハンドオフ操作の後にWiBro基地局から提供された情報をミスなく受信し、WiBro基地局サービスへ速やかに戻ることが可能となる
WiBroサービスから無線LANサービスへのハンドオフを実行するための方法を用いた端末装置。」

4-3.対比
本件補正発明と引用発明とを、以下で対比する。

引用発明は、ハンドオフは、WiBroセルに位置するの端末装置10が無線LANセルの中に移動した時に実行され、端末装置10は、WiBro基地局20との通信から無線LAN基地局30との通信に移行している。
そして、引用発明の「WiBro基地局」及び「無線LAN基地局」は端末装置と通信する、すなわち、トラフィックチャネル信号の送受信を行う局であることから、「送受信ノード」であるといいえる。
また、引用発明のハンドオフは通信中のハンドオフであることから、「トラフィックハンドオフ」であるといいえる。
このため、引用発明の「WiBro基地局」は「第1送受信ノード」に対応し、引用発明の「無線LAN基地局」は「第2送受信ノード」に対応すると共に、引用発明において、本件補正発明と同様に、「前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへのトラフィックチャネルハンドオフを行」っているといえる。

引用発明は、「端末装置10がアイドルモードに入った後、端末装置10は、リスニング期間を用いることによって、WiBro基地局20からトラフィック指示メッセージを受信」している。
ここで、引用発明の「トラフィック指示メッセージ」は制御信号であるといいえる。また、該「トラフィック指示メッセージ」は、「第1の送受信ノード」に対応する「WiBro基地局」から受信するメッセージであるから、「第1制御信号」に対応する。
また、引用発明の「端末装置10」は「トラフィック指示メッセージ」に対応する「第1制御信号」を受信していることから、「受信機」を含んでいると考えるのが妥当である。
してみると、引用発明は、本件補正発明と同様に、「第1送受信ノードから第1制御信号を無線で受信するように構成された受信機」を含んでいるといえる。

引用発明は、「端末装置10がアイドルモードに入った後、端末装置10は、リスニング期間を用いることによって、WiBro基地局20からトラフィック指示メッセージを受信することで、WiBro基地局から伝送されたトラフィックがあるかどうかを確認」している。
ここで、引用発明において、「端末装置10がアイドルモードに入」るのはトラフィックハンドオフの結果であると考えるのが妥当であるから、引用発明における「端末装置10がアイドルモードに入った後」は「トラフィックハンドオフ後」に他ならない。
してみると、引用発明は、本件補正発明と同様に、「前記トラフィックチャネルハンドオフ後に前記受信する第1制御信号の監視を継続して」いるといえる。

引用発明は、「端末装置10がアイドルモードに入った後、端末装置10は、リスニング期間を用いることによって、WiBro基地局20からトラフィック指示メッセージを受信することで、WiBro基地局から伝送されたトラフィックがあるかどうかを確認するとともに、無線LAN基地局30と通信し」ている。
してみると、引用発明は、本件補正発明と同様に、「前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信」しているといえる。

また、引用発明が含む「受信機」は、「端末装置10がアイドルモードに入った後、端末装置10は、リスニング期間を用いることによって、WiBro基地局20からトラフィック指示メッセージを受信することで、WiBro基地局から伝送されたトラフィックがあるかどうかを確認するとともに、無線LAN基地局30と通信」するなど、その動作が制御されていることから、引用発明はこれらの制御を行う「コントローラ」を含んでいると考えるのが妥当である。
そして、「前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへのトラフィックチャネルハンドオフを行」うこと、「前記トラフィックチャネルハンドオフ後に前記受信する第1制御信号の監視を継続」すること、及び、「前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信」することは、制御の結果の動作であることから、これらの制御は「コントローラ」が行っていると考えるのが妥当である。
してみると、引用発明は、「前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへのトラフィックチャネルハンドオフを行」い、「前記トラフィックチャネルハンドオフ後に前記受信する第1制御信号の監視を継続し」、「前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信」するように構成された「コントローラ」を含んでいるといえる。

さらに、引用発明は、WiBro基地局20や無線LAN基地局30と通信する端末装置である。
ここで、引用発明がWiBro基地局20や無線LAN基地局30と行う通信は「無線通信」であることは明らかである。
してみると、引用発明の「端末装置」は、本件補正発明と同様に、「無線通信装置」であるといえる。

以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

<一致点>
第1送受信ノードから第1制御信号を無線で受信するように構成された受信機と、
前記第1送受信ノードから前記第2送受信ノードへのトラフィックチャネルハンドオフを行い、前記トラフィックチャネルハンドオフ後に前記受信する第1制御信号の監視を継続し、前記第2送受信ノードからトラフィックチャネル信号を受信するように構成されたコントローラと、
を含む無線通信装置。

また、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件補正発明は、「第2送受信ノード」は「第1送受信ノードと同じ通信規格」であるのに対して、引用発明は、「第1送受信ノード」は「WiBro」、「第2送受信ノード」が「無線LAN」と異なった通信規格である点。

<相違点2>
本件補正発明の「受信機」は「前記第1制御信号とは異なる第2制御信号を無線で受信する」のに対して、引用発明は該制御信号を受信することは記載されていない点。

<相違点3>
本件補正発明は、「トラフィックチャネルハンドオフ後に」「前記第1送受信ノードとの登録を維持し」ているのに対して、引用発明は第1送受信ノードとの登録を維持することは記載されていない点。

4-4.当審の判断
<相違点1について>
引用発明における「ハンドオフ」は、「WiBroセルに位置するの端末装置10が無線LANセルの中に移動した時に、より高い伝送速度を得るためや、WiBroサービスが無線LANセル内で利用できない場合や、無線LANセルの内側がWiBro基地局20との接続において影の領域となる場合に実行され」るものであると共に、引用発明の「WiBro」は「無線LANと比べより低い伝送速度を有して」いる。
このため、引用発明の「無線LAN基地局」は、「WiBro基地局」より高い伝送速度を得るために設置された基地局であり、WiBroサービスが利用できない、或いは、「WiBro基地局」との接続において影の領域に設置される基地局であるといいえる。
ここで、引用発明の「無線LAN基地局」は「WiBro基地局」と比較して小さいサービスエリアに対してサービスを提供する基地局であるから、「無線LAN基地局」はマイクロ基地局に、「WiBro基地局」はマクロ基地局に対応するといえる。

これに対して、マクロ基地局と同じ通信規格のマイクロ基地局が、マクロ基地局のカバレージが貧弱または存在しないエリアや高速データサービスを必要とするエリアに設置され、マクロ基地局とマイクロ基地局の一方の基地局との通信中に他方の基地局と通信を開始して通信を行うという作用を奏すること、及び、該マイクロ基地局は無線LANの基地局に類似した役割を有していることは周知な事項である。

例えば、国際公開第2009/043002号の段落[0005]には、
「An introduction of home Node B (HNB) is considered as a viable candidate solution and is currently being studied as part of third generation partnership project (3GPP) Release 8. The HNB offers services over relatively small service areas, such as home or office. It has a similar role to a wireless local area network (WLAN) access point (AP). The service may be provided where cellular coverage is poor or non-existent.」
(パテントファミリーである特表2010-541428号公報(平成22年12月24日国内公表)の該当する段落【0002】の記載:
「HNB(ホームノードB(home Node B))の導入は、実行可能な候補ソリューションと考えられており、3GPP(第3世代パートナシッププロジェクト)リリース8の一部として現在研究されている。HNBは、住宅またはオフィスなど、比較的小さなサービスエリアに対してサービスを提供する。HNBは、WLAN(無線ローカルエリアネットワーク)のAP(アクセスポイント)に類似した役割を有する。セルラカバレージが貧弱または存在しない場所において、サービスを提供することができる。」)
と記載されている。
そして、「HNB」は、セルラーの端末装置を、自宅又は事業者で使用可能とするために、ユーザ等が自宅又は事業所などの特定の小さな範囲をカバーするように設置する基地局であるから、上記記載における「HNB」は、セルラカバレージを形成する基地局と同じ通信規格を用い、セルラカバレージに比較すると、小さいサービスエリアに対してサービスを提供する基地局であるといいえる。
してみると、該記載に見られるように、セルラカバレージを形成する基地局と同じ通信規格を用い、セルラカバレージに比較すると、小さいサービスエリアに対してサービスを提供する基地局が、セルラカバレージが貧弱または存在しない場所においてサービスを提供するために設置され、無線LANの基地局に類似した役割を有することは周知な事項であるといえる。

さらに、特表2007-514367の段落【0002】、【0003】及び【0019】には、
「マイクロセルは、マクロセルの中のトラフィックの集中するエリアにサービスを提供する、あるいは高速データサービスを提供するように位置設定することができる。」、
「階層セル構造(hierarchial cell structure、HCS)では、マクロセルおよびマイクロセルは、扱う種々のトラフィックパターンあるいは無線環境が一般的に重複する。マイクロセル基地局は、ディジタル伝送線路を介してマクロセル基地局に接続されることができる、あるいはマイクロセル基地局は丁度マクロセルのように取り扱われ、公知の移動通信用グローバルシステム(global system for mobile communications、GSM)の基地局コントローラ(base station controller、BSC)あるいは第3世代、広帯域、符号分割多元アクセス(wideband、code division muliple access、WCDMA)システムの無線ネットワーク・コントローラ(radio network controller、RNC)のような基地局コントローラノードに直接接続されることができる。」、
「マクロセルおよびマイクロセルは、HCSにおいて同じ周波数帯域を使用するので、ソフトハンドオーバおよびセルサイトダイバシティを使用することができる。」
と記載されている。
該記載における「マイクロ基地局」は、「丁度マクロセルのように取り扱われ」るとともに、GSMのBSCあるいはWCDMAのRNCに直接接続されることから、マイクロ基地局はマクロ基地局と同じ通信規格を用いているといえる。
また、該記載における「マイクロ」或いは「マクロ」はカバレージの大きさを示していると考えるのが妥当であるから、「マイクロ基地局」は「マクロ基地局」に比較すると、小さいサービスエリアに対してサービスを提供する基地局であるといいえる。
さらに、ソフトハンドオーバおよびセルサイトダイバシティは、一方の基地局との通信中に、他方の基地局と通信を開始して通信を行うことであるといいえる。
してみると、該記載に見られるように、マクロ基地局と同じ通信規格のマイクロ基地局が、高速データサービスを必要とするエリアに設置され、マクロ基地局とマイクロ基地局の一方の基地局との通信中に、他方の基地局と通信を開始して通信を行うことは周知な事項であるといえる。

このため、引用発明の「第2送受信ノード」に対応する「無線LAN基地局」を、同様な作用を奏するとともに同様な役割を有する周知な送受信ノードである、「第1送受信ノード」と同じ通信規格の送受信ノードとすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。

<相違点2について>
引用発明は、「端末装置10がアイドルモードに入った後、端末装置10は、リスニング期間を用いることによって、WiBro基地局20からトラフィック指示メッセージを受信することで、WiBro基地局から伝送されたトラフィックがあるかどうかを確認するとともに、無線LAN基地局30と通信し」ている。
ここで、「無線通信装置」に対応する端末装置が、「第2送受信ノード」に対応する「無線LAN基地局」と通信していることは、「無線通信装置」と「第2の送受信ノード」との間でトラフィックチャネル信号を送受信を行うことである。
そして、トラフィックチャネル信号の送受信を行うために、トラフィックチャネル信号を送受信するための制御信号の送受信が行われていると考えるのが妥当であって、該制御信号を「第2の制御信号」といいえる。
さらに、引用発明における「第1の制御信号」は、「第1送受信ノード」から伝送される信号であるとともに、「トラフィック指示メッセージ」であるに対して、「第2の制御信号」は、「第2送受信ノード」を送受信する信号であるとともに、トラフィックチャネル信号を送受信するための制御信号であるから、「第2の制御信号」は「第1の制御信号」とは異なる制御信号であるといえる。
してみると、引用発明に記載はないものの、引用発明の受信機は「前記第1制御信号とは異なる第2制御信号を無線で受信する」ものであって、この点に実質的な相違はない。

また、この点において仮に実質的な相違があったとしても、引用発明における「無線通信装置」に対応する端末装置が、「第2送受信ノード」に対応する「無線LAN基地局」と通信するためには、トラフィックチャネル信号を送受信するための制御信号を送受信することが必要なことは明らかであるから、引用発明の「無線通信装置」が含む「受信機」を「前記第1制御信号とは異なる第2制御信号を無線で受信する」ように構成することは、当業者であれば容易になし得る事項である。

<相違点3について>
引用発明は、ハンドオフ後、「無線通信装置」に対応する端末装置は、「アイドルモードへ入ったことをWiBro基地局へ通知」し、「第1送受信ノード」に対応するWiBro基地局に伝送するトラフィックがある場合は、「第1送受信ノード」は「無線通信装置」にトラフィック指示メッセージを伝送している。
ここで、アイドルモードでは登録が維持されると理解するのが当業者にとって一般的な理解である。
さらに、引用発明では、「第1送受信ノード」に「無線通信装置」へのトラフィックが伝送されることが想定されているが、「第1送受信ノード」との登録が維持されていなければ、「無線通信装置」へのトラフィックが「第1送受信ノード」に伝送され得ないと考えるのが妥当である。
してみると、引用発明に記載はないものの、引用発明は、「トラフィックチャネルハンドオフ後に」「前記第1送受信ノードとの登録を維持し」ているものであって、この点に実質的な相違はない。

また、この点において仮に実質的な相違があったとしても、「無線通信装置」へのトラフィックが「第1送受信ノード」に伝送され得るようにするため、「トラフィックチャネルハンドオフ後に」「前記第1送受信ノードとの登録を維持」することは、当業者であれば容易になし得る事項である。


そして、引用発明においては、ハンドオフ後も、アイドルモードになる基地局にトラフィックがあるかどうかを確認し、速やかに戻ることを可能としていることから、本件補正発明により得られる効果は、引用発明及び周知な事項に基いて、当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


5.まとめ
したがって、平成26年3月3日付けの手続補正書における他の補正を検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3.本願発明について
1.本願発明
平成26年3月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?17に係る発明は、平成25年10月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、前記「第2.平成26年3月3日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」の「1.本件補正の内容」で「<本件補正前の請求項1>」として記載したとおりのものである。


2.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及び引用発明は、前記「第2.平成26年3月3日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「4-2.引用文献の記載事項」に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願発明は、前記「第2.平成26年3月3日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「4-1.本件補正発明」で検討した本件補正発明における「第2送受信ノード」、「ハンドオフ後」、「前記第1制御信号を監視して前記第1送受信ノードとの登録を維持」及び「第2制御信号」についての限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2.平成26年3月3日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「4-4.当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。



第4.まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-09 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-31 
出願番号 特願2012-517896(P2012-517896)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 佐藤 聡史
吉田 隆之
発明の名称 無線通信装置のデュアルアイドル・トラフィック状態  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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