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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01B |
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管理番号 | 1300901 |
審判番号 | 不服2014-9306 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-20 |
確定日 | 2015-05-14 |
事件の表示 | 特願2007-152658「パターンが施された金属箔の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月18日出願公開、特開2008-305703〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年6月8日の出願であって、平成24年12月21日付けで拒絶理由が起案され、平成25年2月25日に意見書及び手続補正書が提出がされ、同年3月11日付けで拒絶理由が起案され、同年5月13日に意見書及び手続補正書が提出がされ、平成26年2月12日付けで拒絶査定が起案され、同年5月20日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、同日に手続補正書が提出され、同年9月24日付けで前置報告書が作成され、同年11月19日に上申書が提出されたものである。 第2 平成26年5月20日付けの手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成26年5月20日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正により、平成25年5月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲 「【請求項1】 (イ)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で導電性基材が露出している凹部が形成されているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、(ロ)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含む、パターンが施された金属箔の製造方法であって、前記めっき用導電性基材において、前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなり、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下であることを特徴とするパターンが施された金属箔の製造方法。 【請求項2】 めっき用導電性基材において、絶縁層が幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学形を描くように形成されている請求項1記載のパターンが施された金属箔の製造方法。」が、次のように補正された。 「【請求項1】 (イ)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で導電性基材が露出している凹部が形成されているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、(ロ)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含む、パターンが施された金属箔の製造方法であって、前記めっき用導電性基材において、前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなり、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下であり、さらに、前記絶縁層は幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されており、前記幾何学図形が、絶縁層の底面における面積が1?1×10^(6)平方ミクロンメートルであり、絶縁層の間隔が1?1000μmであり、導体層パターンの開口率が10%以上となるように描かれている、ことを特徴とするパターンが施された金属箔の製造方法 【請求項2】 金属箔が、キャパシタ用集電体のための穴明き金属箔である、請求項1記載のパターンが施された金属箔の製造方法。」 (2)そして、本件補正は、平成25年5月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1を削除するとともに、独立形式で記載した同請求項2に「前記幾何学図形が、絶縁層の底面における面積が1?1×10^(6)平方ミクロンメートルであり、絶縁層の間隔が1?1000μmであり、導体層パターンの開口率が10%以上となるように描かれている、」を加えたものである(以下、「請求項2補正事項」という)。そして、この請求項2補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められる。 しかしながら、新たに請求項2において特定された「金属箔が、キャパシタ用集電体のための穴明き金属箔である、」は、金属箔の用途の限定であり、実質的に新たな請求項を追加するもので、発明を特定するために必要な事項を限定するものとは認められず、同法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するものではなく、請求項3補正事項が請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明にも該当せず、同法第17条の2第5項第1号、第3号、および第4号のいずれにも該当しない新たな請求項の追加である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 そして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、「第6 独立特許要件について」に後記するとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成26年5月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年5月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (イ)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で導電性基材が露出している凹部が形成されているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、(ロ)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含む、パターンが施された金属箔の製造方法であって、前記めっき用導電性基材において、前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなり、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下であることを特徴とするパターンが施された金属箔の製造方法。」 第4 引用文献 (i)原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された本願出願前日本国内において頒布された刊行物である特開2005-294687号公報には次の事項が記載されている。(下線は、参考のために合議体が付した。) (ア)「【請求項1】 少なくとも所期の導体層パターンに対応した部分が導電性である基材上に導電性金属を電気めっきして導体層パターンを形成し、上記基材上に得られた導体層パターンを再剥離可能な接着性支持体に転写することを特徴とする導体層パターンの製造法。 【請求項2】 少なくとも所期の導体層パターンに対応した部分が導電性である基材が、導電性基材の表面に幾何学図形状の絶縁性物質を配列させて、導体層パターンに対応した導電性基材の露出部分を形成したものである請求項1記載の導体層パターンの製造法。 【請求項3】 少なくとも所期の導体層パターンに対応した部分が導電性である基材が、導体層パターンに対応した形状を有する導電性材料の間隙に絶縁性物資を配置したものである請求項1記載の導体層パターンの製造法。 【請求項4】 その表面に幾何学図形状の絶縁性物質を配列させた導電性基材が、導電性基材に幾何学図形状のレジスト膜を導電性基材の露出部分が導電層パターンに対応する態様で配列するようにフォトリソグラフ法を適用することにより作製したものである請求項2記載の導体層パターンの製造法。 【請求項5】 少なくとも所期の導体層パターンに対応した部分が導電性である基材が、回転体(ロール)である請求項2?4のいずれかに記載の導体層パターンの製造法。 【請求項6】 少なくとも所期の導体層パターンに対応した部分が導電性である基材である回転体(ロール)の一部を電解液に浸漬させ、回転体を回転させつつ電解めっきにより、導体層パターンを形成し、回転体の回転に伴い電解液から出てきた導体層パターンに接着性支持体を別の回転体(ロール)により圧着することにより、導体層パターンを接着性支持体に転写する請求項5記載の導体層パターンの製造法。 【請求項7】 得られた導体層パターン付き接着性支持体の導体層パターンの一部または全部を覆うように樹脂層を積層することを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の導体層パターンの製造法。 【請求項8】 電気めっきに用いる導電性金属が、20℃における体積抵抗率で20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むものであることを特徴とする導電性パターンからなる請求項1?7のいずれかに記載の導体層パターンの製造法。 【請求項9】 導電層パターンの開口率が50%以上である請求項1?9のいずれかに記載の導体層パターンの製造法。」 (イ)「【0014】 上記の導電性材料とともに使用される絶縁性物質としては電解液に侵されず、電気めっきにより金属を析出させない程度に絶縁性である性質を有する材料、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾイミダゾール樹脂、メラミンポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリエチレンなどが使用できる。それぞれ必要に応じ、硬化剤、変成剤、充填剤等を適宜選んで使用する。フォトリアオグラフ法を適用できるフォトレジスト材料を用いることもでき、その場合には環化ゴム系フォトレジスト、熱硬化性を有するアクリル系レジスト、メラミン系レジスト、水溶性コロイド系フォトレジスト等が使用できる。また、電解液に侵されなければ、無機材料(例えば、アルミナ、シリカ、ガラス、セラミックなど)であってもよい。」 (ウ)「【0021】 上記の幾何学図形としては、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の正の整数)、円、だ円、星型などを組み合わせた模様であり、これらの単位の単独の繰り返し、あるいは2種類以上組み合わせで使うことも可能である。電磁波遮蔽性の観点からは三角形が最も有効であるが、可視光透過性の点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がるが、可視光透過性の点から開口率は50%以上が必要とされる。開口率は、60%以上がさらに好ましい。開口率は、電磁波遮蔽性接着シートの有効面積に対する有効面積から導電性金属で描かれた幾何学図形の導電性金属の面積を引いた面積の比の百分率である。ディスプレイ画面の面積を電磁波遮蔽性接着シートの有効面積とした場合、その画面が見える割合となる。」 (エ)「【0022】 このような幾何学図形を反転した導体層パターンのライン幅は40μm以下、ライン間隔は100μm以上の範囲とするのが好ましい。また幾何学図形の非視認性の観点からライン幅は25μm以下、可視光透過率の点からライン間隔は120μm以上がさらに好ましい。ライン幅は、40μm以下、好ましくは25μm以下が好ましく、あまりに小さく細くなると表面抵抗が大きくなりすぎて遮蔽効果に劣るので1μm以上が好ましい。ライ ン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。前述のようにディスプレイ前面に使用する場合、開口率は50%以上が必要であるが、60%以上がさらに好ましい。ライン間隔が大きくなり過ぎると、電磁波遮蔽性が低下するため、ライン間隔は1000μm(1mm)以下とするのが好ましい。なお、ライン間隔は、幾何学図形等の組合せで複雑となる場合、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。 また、電気めっきにより形成されるラインの厚みは100μm以下が好ましく、ディスプレイ前面の電磁波遮蔽シートとして適用した場合、厚みが薄いほどディスプレイの視野角が広がり電磁波遮蔽材料として好ましく、また電気めっきにより析出させるのにかかる時間を短縮することにもなるので40μm以下とすることがより好ましく、18μm以下であることがさらに好ましい。あまりに厚みが薄いと表面抵抗が大きくなりすぎて遮蔽効果に劣るうえに導体層パターンの強度が劣り、基材からの剥離が困難になるため0.5μm以上が好ましく、さらに1μm以上がさらに好ましい。・・・」 (ii)原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された本願出願前日本国内において頒布された刊行物である特開2002-38292号公報には次の事項が記載されている。 (オ)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の電鋳母型は、転写対象物に転写する導電体をベース板の転写領域に形成し、転写対象物にこの導電体を押し当てて転写する際、この導電体を転写領域から上に引き出して転写対象物に転写しようとすると、なす角αが垂直となった絶縁層2と転写領域との界面において導電体と界面の間に摩擦が発生してしまうため、導電体が転写領域から上に引き出されず、これにより、導電体が転写対象物に転写されず、転写不良が起こるという課題を有していた。 【0007】本発明は上記従来の課題を解決するもので、転写不良を低減させることができる電鋳母型を提供することを目的とするものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。 【0009】本発明の請求項1に記載の発明は、特に所定のパターンとなる転写領域を除いた部分に設けた絶縁層を有する導電性のベース板であって、このベース板と絶縁層は転写領域との界面に前記転写領域が前記ベース板から遠ざかる方向に向かって広がりを持つように構成した傾斜部を備えたもので、転写対象物に転写する導電体をベース板の転写領域に形成し、転写対象物にこの導電体を押し当てて転写する際、導電体を転写領域から引き出して転写対象物に転写するとき、導電体はベース板から離れれば絶縁層と転写領域との界面と接することはないため、絶縁層と転写領域との界面において導電体と界面の間に摩擦が発生することを防止できるという作用を有するものである。」 (カ)「【0011】請求項3に記載の発明は、特に、絶縁層の傾斜部は、ベース板の転写領域とのなす角を95°以上としたもので、転写対象物に転写する導電体をベース板の転写慮域に形成し、転写対象物にこの導電体を押し当てて転写する際、導電体を転写領域から引き出して転写対象物に転写するとき、導電体はベース板から離れれば絶縁層と転写領域との界面と接することはあり得ないため、絶縁層と転写領域との界面において導電体と界面の間に摩擦が発生することをより確実に防止できると言う作用を有するものである。」 (iii)原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された本願出願前日本国内において頒布された刊行物である特開2005-206935号公報には次の事項が記載されている。 (キ)「【0014】 そこで上述の欠点を解消するために、厚みの薄い金属メッキ膜を用いて積層コンデンサを製作することが検討されている。その場合、金属メッキ膜が被着されたセラミックグリーンシートを複数枚、積層することによって積層体を形成し、これを高温で焼成することによって積層コンデンサが製作される。 【0015】 このような積層コンデンサの内部電極となる金属メッキ膜は、内部電極と対応する形状の開口パターンを有したマスクを金属製の基板上に形成するとともに、前記基板をメッキ槽中に浸漬し、前記マスクの開口内に位置する基板の表面に従来周知の電解メッキ法にて金属を析出させることによって形成される。このような基板の主面にセラミックグリーンシート等を押圧し、マスクの開口内に形成された金属メッキ膜をセラミックグリーンシートの一主面に転写することによって、金属メッキ膜がセラミックグリーンシート上に付着・形成される。」 (ク)「【0051】 導電性膜6の表面に形成されるマスク層7は、金属メッキ膜8の析出領域を規制するためのものである。マスク層7は、十分な電気絶縁性を備えることが好ましい。例えば、その比抵抗は、104Ω・cm以上に設定するとよい。ビッカース硬度Hvは例えば1000以上、摩擦係数μは例えば0.3以下の材料を用いる。このような諸特性を満足する材料としては、例えば、アモルファス構造のDLCやGLC(グラファイト・ライク・カーボン)等が挙げられる。」 (ケ)「【0054】 ここで、マスク層7の側面と底面との間に形成される角部の角度α(図4参照)は90度以下、例えば90度?85度に設定しておくことが好ましい。このように90度以下に設定しておけば、基体9と接する金属メッキ膜8の下面の面積が、その上面の面積よりも小さくなることから、金属メッキ膜8を樹脂フィルム20等に転写する際、金属メッキ膜8の外周部がマスク層7に引っ掛かりにくくなり、金属メッキ膜8の剥離を容易することができる。」 第5 引用発明の認定 引用文献1の記載事項(ア)には【請求項1】として「少なくとも所期の導体層パターンに対応した部分が導電性である基材上に導電性金属を電気めっきして導体層パターンを形成し、上記基材上に得られた導体層パターンを再剥離可能な接着性支持体に転写することを特徴とする導体層パターンの製造法。」及び【請求項1】を引用する【請求項2】として「少なくとも所期の導体層パターンに対応した部分が導電性である基材が、導電性基材の表面に幾何学図形状の絶縁性物質を配列させて、導体層パターンに対応した導電性基材の露出部分を形成したものである請求項1記載の導体層パターンの製造法。」が記載されている。そして、同(イ)には「導電性材料とともに使用される絶縁性物質としては・・・、無機材料(例えば、アルミナ、シリカ、ガラス、セラミックなど)であってもよい。」ことが記載されている。 これら記載事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には 「導電性基材の表面に幾何学図形状の無機材料(例えば、アルミナ、シリカ、ガラス、セラミックなど)である絶縁性物質を配列させて、導体層パターンに対応した導電性基材の露出部分を形成したものである基材上に導電性金属を電気めっきして導体層パターンを形成し、上記基材上に得られた導体層パターンを再剥離可能な接着性支持体に転写することを特徴とする導体層パターンの製造法。」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されていると認められる。 第6 対比・判断 本願発明と引用1発明を対比すると、引用1発明の「導電性基材」、「無機材料」、「絶縁性物質」、「パターン」及び「電気めっき」は、それぞれ、本願発明の「導電性基材」、「無機材料」、「絶縁層」、「パターン」及び「めっきにより金属を析出させる工程」に相当することは明らかである。 また、引用1発明の「導体層」は、「厚みは100μm以下」(記載事項(エ))であるから、本願発明の「金属箔」に相当するということができ、引用1発明の「導体層パターンの製造法」は、本願発明の「パターンが施された金属箔の製造方法」に相当する。 次に、引用1発明の「絶縁性物質を配列させて、導体層パターンに対応した導電性基材の露出部分を形成」することは、本願発明の「導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、導電性基材が露出している凹部が形成」されることに相当するものといえる。 そして、引用1発明の「無機材料(例えば、アルミナ、シリカ、ガラス、セラミックなど)」は、本願発明の「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料」と「無機材料」で共通する。 さらに、引用1発明の「基材上に得られた導体層パターンを再剥離可能な接着性支持体に転写すること」から「基材上に得られた導体層パターンを剥離すること」が記載されているに等しいので、このことが本願発明の「基材上に得られた導体層パターンを剥離」に相当することは明らかである。 そうすると、本願発明と引用1発明とは、「導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、導電性基材が露出している凹部が形成されているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、(ロ)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含む、パターンが施された金属箔の製造方法であって、前記めっき用導電性基材において、前記絶縁層が、無機材料からなることを特徴とするパターンが施された金属箔の製造方法。」である点で一致すると認められる。 そして、以下の点で相違するものと認められる。 本願発明では、導電性基材が露出している凹部が「その絶縁層に開口方向に向かって幅広で」「凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である」のに対して、引用1発明では、凹部が「その絶縁層に開口方向に向かって幅広で」「凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である」ことを特定事項としていない点(以下、「相違点(a)」という。)。 そこで、上記相違点(a)について検討する。 本願発明の「その絶縁層に開口方向に向かって幅広で」「凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である」ことの技術的意義が「凹部の側面の傾斜角αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上60度以下が特に好ましいが、DLC膜をプラズマCVD法で作製する場合は、凹部の側面の傾斜角αは、ほぼ45?60度の角度に制御されやすい。すなわち、凹部4は、開口方向に向かって幅広になるように形成される。」(当初明細書段落【0031】)であって、「凹部の側面の傾斜角α」の好ましい範囲を挙げたもので、角度の数値範囲の限定が臨界的意義を有するものとすることができず、しかも、例えば、原査定の拒絶の理由において引用文献2には、記載事項(カ)に「特に、絶縁層の傾斜部は、ベース板の転写領域とのなす角を95°以上としたもの」と記載され、本願発明の「凹部の側面の傾斜角α」では、「85°以下」に相当し、引用文献3には、記載事項(ケ)に「マスク層7の側面と底面との間に形成される角部の角度α(図4参照)は90度以下、例えば90度?85度に設定しておくことが好ましい」と記載されているように、引用1発明において「その絶縁層に開口方向に向かって幅広で」「凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である」と特定すること当業者であれば適宜設定し得る設計事項にすぎないものである。 そして、本願明細書の記載を検討しても、本願発明により当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏することができたものとすることはできない。 したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 独立特許要件について 平成26年5月20日付けの手続補正書により、補正後の請求項1についてなされた補正が特許法第17条の2第6項に規定する要件を満たしているかについて、予備的に検討する。 平成26年5月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項2に係る発明の限定的減縮に該当するものであるが、その内容は、本願発明に「前記絶縁層は幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されており、前記幾何学図形が、絶縁層の底面における面積が1?1×10^(6)平方ミクロンメートルであり、絶縁層の間隔が1?1000μmであり、導体層パターンの開口率が10%以上となるように描かれている」ことを特定事項として付加するものである。 付加された特定事項について検討する。 まず、「絶縁層は幾何学図形を描くように」形成されることについては、引用文献1には、記載事項(ア)に「【請求項4】 その表面に幾何学図形状の絶縁性物質を配列させた導電性基材が、導電性基材に幾何学図形状のレジスト膜を導電性基材の露出部分が導電層パターンに対応する態様で配列するようにフォトリソグラフ法を適用することにより作製したものである請求項2記載の導体層パターンの製造法。」ことが記載されるのであるから、当然「幾何学図形状の絶縁性物質」は、「絶縁層は幾何学図形を描くように」に該当すると認められるので、相違点ではない。 そして、「幾何学図形が、絶縁層の底面における面積が1?1×10^(6)平方ミクロンメートルであり、絶縁層の間隔が1?1000μmであり、導体層パターンの開口率が10%以上となるように描かれている」点について開口率に関しては、引用文献1の記載事項(ア)の「【請求項9】 導電層パターンの開口率が50%以上である」が、前記特定事項の「導体層パターンの開口率が10%以上となるよう」と「導体層パターンの開口率が50%以上となるよう」において共通するものと認められるから相違点ではない。 また、「前記幾何学図形が、絶縁層の底面における面積が1?1×10^(6)平方ミクロンメートルであり、」については、引用文献1の記載事項(エ)に「幾何学図形を反転した導体層パターンの・・・ライン間隔は100μm以上の範囲とするのが好ましい。」及び「ライン間隔は1000μm(1mm)以下とするのが好ましい。」ことが開示されているので、導体層パターンのラインにより形成される正方形の面積に換算してみると「1?1×10^(6)μm^(2)」となり、本願補正発明の「絶縁層の底面における面積が1?1×10^(6)平方ミクロンメートルであり」と一致するものと認められるから、相違点ではない。 さらに、「絶縁層の間隔が1?1000μmであ」ることについても引用文献1の記載事項(エ)に「ライン幅は、40μm以下、」及び「1μm以上が好ましい。」ことが開示されているので、「絶縁層の間隔が1?1000μmであり」と「絶縁層の間隔が1?40μmであり」において共通するものと認められるから、相違点ではない。 したがって、本願補正発明は、引用1発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。 第8 上申書の補正案について 請求人は、平成26年11月19日に上申書を提出し、「(5)そこで、本願請求項1に係る発明を削除し、本願請求項2に係る発明を新たな請求 項1に係る発明とすることにより、製造の対象となる金属箔がキャパシタ用集電体のための穴明き金属箔であることに特定し、引用文献1には記載されていないキャパシタ用の集電体の製造方法の発明であることを明確にするとともに、本願請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とにおける幾何学図形の相違を一層際だてるため、本願請求項1に係る発明の幾何学図形では、絶縁層が円形のものであることに特定する、以下のように補正することを考えております。 『[請求項1] (イ)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で導電性基材が露出している凹部が形成されているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、(ロ)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含む、パターンが施された金属箔の製造方法であって、前記めっき用導 電性基材において、前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなり、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下であり、さらに、前記絶縁層は円形の幾何学図形を描くように又はそれ自身円形の幾何学図形を描くように形成されており、前記円形の幾何学図形が、絶縁層の底面における面積が1?1×106平方ミクロンメートルであり、絶縁層の間隔が1?1000μmであり、導体層パターンの開口率が10%以上となるように描かれている、ことを特徴とするパターンが施されたキャパシタ用集電体のための穴明き金属箔の製造方法。』」という補正案を提示している。 しかしながら、「円形の幾何学図形」については、引用文献1の記載事項(ウ)において「 上記の幾何学図形としては、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の正の整数)、円、だ円、星型などを組み合わせた模様であり、これらの単位の単独の繰り返し、あるいは2種類以上組み合わせで使うことも可能である。」とあるように、引用発明に包含されるものであり、「キャパシタ用集電体のための穴明き金属箔」についても、キャパシタが電気二重層コンデンサのことであって、前置報告書において引用した特開2005-129924号公報に「【請求項1】 電気二重層コンデンサ用金属製集電体であって、前記金属製集電体に貫通孔が形成されていることを特徴とする電気二重層コンデンサ用金属製集電体。 【請求項2】 厚さが25μm以下である請求項1に記載の電気二重層コンデンサ用金属製集電体。 【請求項3】 貫通孔の孔径が1μm?100μmであって、孔のピッチが孔径の1.1?100倍の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気二重層コンデンサ用金属製集電体。 【請求項4】 貫通孔の断面積が占める面積が、集電体全体の面積の3%以上20%以下であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の電気二重層コンデンサ用金属製集電体。 【請求項5】 集電体が、銅、アルミニウム、ニッケルあるいはそれらの合金またはステンレスからなることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の電気二重層コンデンサ用金属製集電体。 【請求項6】 貫通孔が、レーザー光もしくは機械加工で形成されたことを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の電気二重層コンデンサ用金属製集電体。 ・・・ 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は電気二重層コンデンサ(電気二重層キャパシタともいう)に有用な金属製集電体に関する。更に詳しくは該金属製集電体を用いた高電気容量、高耐久性で、膨張率の低い電気二重層コンデンサ用分極性電極、その分極性電極を有する電気二重層コンデンサに関する。」とあるように、厚さが25μm以下の貫通孔が形成されている電気二重層コンデンサ用金属製集電体は、穴明き金属箔の用途として格別のものではない。 したがって、補正案により進歩性が生じるものと判断することができないので、さらに補正の機会を与えない。 第9 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-13 |
結審通知日 | 2015-03-17 |
審決日 | 2015-03-27 |
出願番号 | 特願2007-152658(P2007-152658) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
Z
(H01B)
P 1 8・ 121- Z (H01B) P 1 8・ 575- Z (H01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀧口 博史 |
特許庁審判長 |
鈴木 匡明 |
特許庁審判官 |
飯田 清司 松本 貢 |
発明の名称 | パターンが施された金属箔の製造方法 |
代理人 | 大谷 保 |