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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1301476 |
審判番号 | 不服2014-5135 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-18 |
確定日 | 2015-06-03 |
事件の表示 | 特願2010-518386「太陽光電源式装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月 5日国際公開、WO2009/018090、平成22年11月11日国内公表、特表2010-535011〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成20年7月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年7月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年7月13日付で手続補正書が提出され、平成25年1月25日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年1月29日)、これに対し、平成25年5月13日付で意見書が提出されたが、平成25年11月15日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年11月19日)、これに対し、平成26年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。 2.平成26年3月18日付の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年3月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由I] (1)補正の内容 本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。 「【請求項1】 太陽光電源式装置であって、 バッテリと、 少なくとも1つの太陽電池セルと、 直流使用が可能な交流電気機器と、 前記少なくとも1つの太陽電池セルからの第1の電気信号を受けるとともに、前記バッテリに充電信号を供給する第1のDC/DCコンバータと、 前記バッテリおよび前記第1のDC/DCコンバータの少なくとも一方から第2の電気信号を受けるとともに、前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流電力信号を供給する第2のDC/DCコンバータとを備える、太陽光電源式装置。 【請求項2】 前記第1のDC/DCコンバータは降圧コンバータである、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項3】 前記第1のDC/DCコンバータは昇圧コンバータである、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項4】 前記第1のDC/DCコンバータは、 最大電力点追跡回路を含む、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項5】 前記少なくとも1つの太陽電池セルを含む複数の太陽電池セルを備える太陽光発電モジュールをさらに備える、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項6】 前記直流使用が可能な交流電気機器は、小型蛍光灯である、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項7】 前記第2のDC/DCコンバータに結合された複数の器具をさらに備え、 前記複数の器具の各々は、複数の直流使用が可能な交流電気機器のうちの対応する1つに結合される、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項8】 前記複数の直流使用が可能な交流電気機器は、 複数の小型蛍光灯を含む、請求項7に記載の太陽光電源式装置。 【請求項9】 前記複数の直流使用が可能な交流電気機器は、 白黒テレビ、カラーテレビ、ラジオおよびコンピュータの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の太陽光電源式装置。 【請求項10】 前記第1のDC/DCコンバータおよび前記第2のDC/DCコンバータに結合されたマイクロコントローラをさらに備え、 前記マイクロコントローラは、前記第1および第2のDC/DCコンバータの素子を制御するように構成され、配置される、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項11】 筐体をさらに備え、 前記マイクロコントローラ、前記第1のDC/DCコンバータおよび前記第2のDC/DCコンバータは、前記筐体内に配置される、請求項10に記載の太陽光電源式装置。 【請求項12】 前記バッテリは、前記筐体内に配置される、請求項11に記載の太陽光電源式装置。 【請求項13】 直流使用が可能な交流電気機器へ電力を供給する方法であって、 太陽光発電モジュールから電力を取出すステップと、 前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップとを備える、方法。 【請求項14】 前記太陽光発電モジュールから電力を取出すステップは、 前記太陽光発電モジュールによって供給される信号のDC/DC変換を行なうステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記太陽光発電モジュールから電力を取出すステップは、 前記太陽光発電モジュールから取出す電力を最適化するために、最大電力点追跡装置を用いるステップ含む、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 前記直流使用が可能な交流電気機器へ供給される前記直流信号を監視するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。 【請求項17】 前記直流信号を監視するステップは、 前記直流信号内の電流サージを検出するステップと、 前記電流サージの検出に基づいて、前記直流信号を遮断するステップとを含む、請求項16に記載の方法。 【請求項18】 電力の少なくとも一部をバッテリに蓄積するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。 【請求項19】 前記バッテリに電力を蓄積するステップは、 前記バッテリを過充電から保護するステップを含む、請求項18に記載の方法。 【請求項20】 前記直流使用が可能な交流電気機器へ前記直流信号を供給するステップは、 前記バッテリから電力を取出すステップと、 前記バッテリからの電力の少なくとも一部を、前記直流信号に変換するステップとを含む、請求項18に記載の方法。 【請求項21】 前記バッテリから電力を取出すステップは、 前記バッテリの放電を制限するステップを含む、請求項20に記載の方法。 【請求項22】 前記バッテリから電力を取出すステップは、 前記バッテリから信号を受けるステップと、 前記信号のDC/DC変換を行なうステップとを含む、請求項20に記載の方法。 【請求項23】 前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップは、 小型蛍光灯へ前記直流信号を供給するステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項24】 前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップは、 白黒テレビ、カラーテレビ、コンピュータおよびラジオの少なくとも1つに、前記直流信号を供給するステップを含む、請求項13に記載の方法。」 これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。 「【請求項1】 太陽光電源式装置であって、 バッテリと、 少なくとも1つの太陽電池セルと、 直流使用が可能な交流電気機器と、 前記少なくとも1つの太陽電池セルからの第1の電気信号を受けるとともに、前記バッテリに充電信号を供給する第1のDC/DCコンバータと、 前記バッテリおよび前記第1のDC/DCコンバータの少なくとも一方から第2の電気信号を受けるとともに、前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流電力信号を供給する第2のDC/DCコンバータとを備え、 前記第2のDC/DCコンバータは、前記直流使用が可能な交流電気機器へ供給される電圧を、前記バッテリの出力電圧よりも高いレベルまで引き上げる昇圧コンバータである、太陽光電源式装置。 【請求項2】 前記第1のDC/DCコンバータは降圧コンバータである、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項3】 前記第1のDC/DCコンバータは昇圧コンバータである、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項4】 前記第1のDC/DCコンバータは、 最大電力点追跡回路を含む、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項5】 前記少なくとも1つの太陽電池セルを含む複数の太陽電池セルを備える太陽光発電モジュールをさらに備える、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項6】 前記直流使用が可能な交流電気機器は、小型蛍光灯である、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項7】 前記第2のDC/DCコンバータに結合された複数の器具をさらに備え、 前記複数の器具の各々は、複数の直流使用が可能な交流電気機器のうちの対応する1つ に結合される、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項8】 前記複数の直流使用が可能な交流電気機器は、 複数の小型蛍光灯を含む、請求項7に記載の太陽光電源式装置。 【請求項9】 前記複数の直流使用が可能な交流電気機器は、 白黒テレビ、カラーテレビ、ラジオおよびコンピュータの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の太陽光電源式装置。 【請求項10】 前記第1のDC/DCコンバータおよび前記第2のDC/DCコンバータに結合されたマイクロコントローラをさらに備え、 前記マイクロコントローラは、前記第1および第2のDC/DCコンバータの素子を制御するように構成され、配置される、請求項1に記載の太陽光電源式装置。 【請求項11】 筐体をさらに備え、 前記マイクロコントローラ、前記第1のDC/DCコンバータおよび前記第2のDC/DCコンバータは、前記筐体内に配置される、請求項10に記載の太陽光電源式装置。 【請求項12】 前記バッテリは、前記筐体内に配置される、請求項11に記載の太陽光電源式装置。 【請求項13】 直流使用が可能な交流電気機器へ電力を供給する方法であって、 太陽光発電モジュールから電力を取出すステップと、 前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップとを備え、 前記太陽光発電モジュールから電力を取出すステップは、電力の少なくとも一部をバッテリに蓄積するステップを含み、 前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップは、 前記バッテリから電力を取出すステップと、 前記バッテリからの電力の少なくとも一部を、前記直流信号に変換するステップとを含み、 前記バッテリから電力を取出すステップは、 前記バッテリから信号を受けるステップと、 前記信号の電圧を前記バッテリの出力電圧よりも高いレベルまで引き上げるDC/DC変換を行なうステップとを含む、方法。 【請求項14】 前記太陽光発電モジュールから電力を取出すステップは、 前記太陽光発電モジュールによって供給される信号のDC/DC変換を行なうステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記太陽光発電モジュールから電力を取出すステップは、 前記太陽光発電モジュールから取出す電力を最適化するために、最大電力点追跡装置を用いるステップ含む、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 前記直流使用が可能な交流電気機器へ供給される前記直流信号を監視するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。 【請求項17】 前記直流信号を監視するステップは、 前記直流信号内の電流サージを検出するステップと、 前記電流サージの検出に基づいて、前記直流信号を遮断するステップとを含む、請求項16に記載の方法。 【請求項18】 前記バッテリに電力を蓄積するステップは、 前記バッテリを過充電から保護するステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項19】 前記バッテリから電力を取出すステップは、 前記バッテリの放電を制限するステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項20】 前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップは、 小型蛍光灯へ前記直流信号を供給するステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項21】 前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップは、 白黒テレビ、カラーテレビ、コンピュータおよびラジオの少なくとも1つに、前記直流信号を供給するステップを含む、請求項13に記載の方法。」 (2)目的要件について 本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。 特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。 本件補正後の請求項13は本件補正前の請求項13に比べて、「前記太陽光発電モジュールから電力を取出すステップは、電力の少なくとも一部をバッテリに蓄積するステップを含み、前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップは、前記バッテリから電力を取出すステップと、前記バッテリからの電力の少なくとも一部を、前記直流信号に変換するステップとを含み、前記バッテリから電力を取出すステップは、前記バッテリから信号を受けるステップと、前記信号の電圧を前記バッテリの出力電圧よりも高いレベルまで引き上げるDC/DC変換を行なうステップとを含む」との構成を更に有している。 本件補正後の請求項13が本件補正前の請求項13に対応するものと仮定する。本件補正前の請求項13は、「バッテリ」、「DC/DC変換」する機能を有しておらず、本件補正前の請求項13の「太陽光発電モジュールから電力を取出すステップ」、「前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流信号を供給するステップ」の何れの事項を限定しても「バッテリ」、「DC/DC変換」する機能となることはなく、しかも太陽光発電モジュールからの電力を貯蔵すること、及び信号の電圧を所望の値に変換するという新たな課題を解決しているから、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 本件補正後の請求項13が有する構成を全て有するのは、本件補正前の請求項13を引用する本件補正前の請求項18を引用する本件補正前の請求項20を引用する本件補正前の請求項22(以下「本件補正前の請求項22」という)であり、この点は請求人も審判請求書で同様の主張を行っているから、本件補正後の請求項13が本件補正前の請求項22に対応するものと仮定する。本件補正前の請求項14、15、16は、何れも本件補正前の請求項13のみを引用し、本件補正前の請求項18、20、22の何れも本件補正前の請求項14、15、16の何れの請求項も引用しておらず、本件補正前の請求項22を引用する請求項は存在しなかったものが、本件補正後の請求項13を引用する本件補正後の請求項14、15、16が存在するから、所謂増項補正に該当し、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 そうであれば、本件補正は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一である「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。 また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。 (3)むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項2号の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [理由II] 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-250646号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 a「太陽光により電力を発生する太陽光発電装置と、 当該太陽光発電装置の出力に接続された第1の電力変換装置と、 前記第1の電力変換装置の出力に接続された第1の電力蓄積装置と、 前記第1の電力変換装置の出力に接続された充電器により充電される第2の電力蓄積装置と、 前記第1の電力変換装置の出力と前記第1の電力蓄積装置の出力に接続されかつ前記第2の電力蓄積装置に逆流阻止ダイオードを介して接続された第2の電力変換装置と、 前記第2の電力変換装置の出力に接続された負荷とを具備することを特徴とする独立型太陽光発電システム。」(【請求項1】) b「請求項1の記載された独立型太陽光発電システムであって、前記第1の電力蓄積装置は電気二重層コンデンサまたは電解コンデンサの何れかであり、前記第2の電力蓄積装置はNi-MH蓄電池またはNi-Cd蓄電池の何れかであって、前記充電器は定電流充電を行うことを特徴とする独立型太陽光発電システム。」(【請求項7】) c「図1は本発明の一実施形態例である独立型太陽光発電システムのブロック構成図であり、1は太陽光発電装置の一例である太陽電池、2は第1の電力変換装置の一例である第1のコンバータ、3は第2の電力変換装置の一例である第2のコンバータ、4は負荷、5は第1の電力蓄積装置の一例である電気二重層コンデンサ(EDLC)、6は第2の電力蓄積装置の一例であるNi-MH蓄電池、7は充電器、8は逆流阻止ダイオード、9は制御装置、10は電流・電圧検出装置である。 すなわち、太陽電池1は太陽光により電力を発生する。前記太陽電池1の出力には第1のコンバータ2が接続され、前記第1のコンバータ2の出力側にはEDLC5が接続される。前記第1のコンバータ2の出力側には充電器7を介してNi-MH蓄電池6が接続され、前記第1のコンバータ2の出力側と前記EDLC5の出力側には第2のコンバータ3が接続される。前記第2のコンバータ3の入力側には逆流阻止ダイオード8を介してNi-MH蓄電池6が接続され、前記第2のコンバータ3の出力側には負荷4が接続される。前記EDLC5、Ni-MH蓄電池6及び充電器7は電流・電圧検出装置10の入力側に接続され、この電流・電圧検出装置10の出力側は制御装置9の入力側に接続され、この制御装置9の出力側は前記第1のコンバータ2、第2のコンバータ3及び充電器7に接続される。」(【0020】-【0021】) d「前記第2のコンバータ3は前記負荷4が要求する電圧で電力を供給する。」(【0024】) 上記記載事項からみて、引用例には、 「独立型太陽光発電システムであって、 Ni-MH蓄電池と、 太陽電池と、 負荷と、 前記太陽電池の出力に接続されるとともに、前記Ni-MH蓄電池に充電器を介して出力が接続される第1のコンバータと、 入力が逆流阻止ダイオードを介して前記Ni-MH蓄電池に接続されかつ前記第1のコンバータの出力に接続されるとともに、前記負荷に出力が接続される第2のコンバータとを備える、独立型太陽光発電システム。」 との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (2)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「独立型太陽光発電システム」、「Ni-MH蓄電池」、「太陽電池」、「第1のコンバータ」、「第2のコンバータ」は、それぞれ本願補正発明の「太陽光電源式装置」、「バッテリ」、「少なくとも1つの太陽電池セル」、「第1のDC/DCコンバータ」、「第2のDC/DCコンバータ」に相当する。 引用発明の「前記太陽電池の出力に接続されるとともに、前記Ni-MH蓄電池に充電器を介して出力が接続される第1のコンバータ」は、本願補正発明の「前記少なくとも1つの太陽電池セルからの第1の電気信号を受けるとともに、前記バッテリに充電信号を供給する第1のDC/DCコンバータ」に相当する。 引用発明の「負荷」と、本願補正発明の「直流使用が可能な交流電気機器」は、「負荷」との概念で一致する。 引用発明の第2のコンバータの出力信号は直流電力であるから、引用発明の「入力が逆流阻止ダイオードを介して前記Ni-MH蓄電池に接続されかつ前記第1のコンバータの出力に接続されるとともに、前記負荷に出力が接続される第2のコンバータとを備え」と、本願補正発明の「前記バッテリおよび前記第1のDC/DCコンバータの少なくとも一方から第2の電気信号を受けるとともに、前記直流使用が可能な交流電気機器へ直流電力信号を供給する第2のDC/DCコンバータとを備え」は、「前記バッテリおよび前記第1のDC/DCコンバータの少なくとも一方から第2の電気信号を受けるとともに、前記負荷へ直流電力信号を供給する第2のDC/DCコンバータとを備え」との概念で一致する。 したがって、両者は、 「太陽光電源式装置であって、 バッテリと、 少なくとも1つの太陽電池セルと、 負荷と、 前記少なくとも1つの太陽電池セルからの第1の電気信号を受けるとともに、前記バッテリに充電信号を供給する第1のDC/DCコンバータと、 前記バッテリおよび前記第1のDC/DCコンバータの少なくとも一方から第2の電気信号を受けるとともに、前記負荷へ直流電力信号を供給する第2のDC/DCコンバータとを備える、太陽光電源式装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 負荷に関し、本願補正発明は、直流使用が可能な交流電気機器であるのに対し、引用発明は、単に負荷である点。 〔相違点2〕 第2のDC/DCコンバータに関し、本願補正発明は、第2のDC/DCコンバータは、直流使用が可能な交流電気機器へ供給される電圧を、バッテリの出力電圧よりも高いレベルまで引き上げる昇圧コンバータであるのに対し、引用発明は、負荷へ直流電力信号を供給するものの、それ以上の限定はない点。 (3)判断 相違点1について 本願補正発明も引用発明も、第2のDC/DCコンバータの出力は直流電力であって、装置全体は負荷へ電力を供給する電源装置であるから、直流電力の供給を受ける負荷をどの様なものとするかは当業者が適宜選択できるものと認められる。また、本願補正発明は電気が利用できない約16億人が電気を利用できるようにしようとするもの(【0002】)であって、電気に関する設備が極めて不足している地域で利用しようとするものであるから、直流電力の供給を受けて動作する負荷であるならば如何なる負荷でも装置に接続しようと考えることが一般的である。更に、負荷として直流使用が可能な交流電気機器は周知のもの(必要があるならば特開2001-340276号公報等参照)である。 そうであれば、引用発明において、負荷として直流使用が可能な交流電気機器を接続することは当業者が容易に考えられることと認められる。 相違点2について DC/DCコンバータは出力が直流電力であって、入力電圧を制御によって所定の出力電圧に変えるもの(必要があれば特開平6-233534号公報【0002】参照)であり、入力電圧を昇圧するか降圧するかいずれかの制御を行うものである。また、上記dには、引用例の第2のコンバータは負荷が要求する電圧で電力を供給する旨の記載がある。更に、電源装置において、負荷に見合う電圧を供給することは当然に採用すべき技術的事項である。 そうであれば、引用発明において、直流使用が可能な交流電気機器に直流電力を供給する第2のDC/DCコンバータを、昇圧コンバータとしてバッテリの出力電圧よりも高いレベルまで電圧を引き上げることは当業者が適宜選択し得ることと認められる。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記した平成23年7月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び、その記載事項は、上記「2.[理由II](1)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、第2のDC/DCコンバータについて、「第2のDC/DCコンバータは、直流使用が可能な交流電気機器へ供給される電圧を、バッテリの出力電圧よりも高いレベルまで引き上げる昇圧コンバータ」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の記載を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由II](3)」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-16 |
結審通知日 | 2015-01-06 |
審決日 | 2015-01-21 |
出願番号 | 特願2010-518386(P2010-518386) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H02J)
P 1 8・ 572- Z (H02J) P 1 8・ 121- Z (H02J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 智康 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
堀川 一郎 矢島 伸一 |
発明の名称 | 太陽光電源式装置 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 荒川 伸夫 |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 佐々木 眞人 |
代理人 | 森田 俊雄 |