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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1302658 |
審判番号 | 不服2014-2397 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-02-07 |
確定日 | 2015-07-01 |
事件の表示 | 特願2011-530032「データセントリック検索の動的管理のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日国際公開、WO2010/039151、平成24年 2月23日国内公表、特表2012-504814〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年10月3日を国際出願日とする出願であって、平成25年5月28日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月2日付けで手続補正がなされたが、同年10月17日付けで拒絶査定がなされ、平成26年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成26年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年2月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 平成26年2月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項7を、補正後の請求項1に変更する補正事項を含むものである。 そして、補正前の請求項7に係る発明及び補正後の請求項1に係る発明は、それぞれ、以下のとおりである。 なお、<補正後の請求項1>における下線は補正箇所を表している。 <補正前の請求項7> 「 【請求項7】 データセントリックデータ処理環境におけるデータ処理スペースの予測的拡張方法であって、 コンピュータが、データベースに対するドメイン固有データ処理に関する予想事象の関連情報を受信するステップと、 前記コンピュータが、前記データベースに少なくとも一つのメモリ位置を有する前記データ処理スペース内のデータであって前記ドメイン固有データ処理を受けて特定されるデータを特定するステップと、 前記コンピュータが、受理した情報を日時によって配列されたログに基づいて予想事象のスケジュールを予測するステップと、 前記コンピュータが、前記予測スケジュールに基づいて、前記予想事象に先立って、前記データ処理スペース内のデータを少なくとも一つの新しいメモリ位置に複製することにより、前記データ処理スペースを拡張するステップと、 前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理を少なくとも前記拡張データ処理の中で分散配置するステップと、 を包含する方法。」 <補正後の請求項1> 「 【請求項1】 データセントリックデータ処理環境におけるデータ処理スペースの予測的拡張方法であって、 コンピュータが、データベースに対するドメイン固有データ処理に関する予想事象の関連情報を受信するステップと、 前記コンピュータが、前記データベースに少なくとも一つのメモリ位置を有する前記データ処理スペース内のデータであって前記ドメイン固有データ処理を受けて特定されるデータを特定するステップと、 前記コンピュータが、受信した予想事象の関連情報に基づいて予想事象のスケジュールを予測して予測スケジュールを生成するステップと、 前記コンピュータが、前記予測スケジュールに基づいて、前記予想事象に先立って、前記データ処理スペース内のデータを少なくとも一つの新しいメモリ位置に複製することにより、前記データ処理スペースを拡張して拡張データ処理スペースを生成するステップと、 前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理を少なくとも前記拡張データ処理スペースの中で分散配置するステップと、 を包含する方法。」 2.補正の目的の適否について 上記補正事項の内の、補正前の請求項7の「前記コンピュータが、受理した情報を日時によって配列されたログに基づいて予想事象のスケジュールを予測」という記載を「前記コンピュータが、受信した予想事象の関連情報に基づいて予想事象のスケジュールを予測」という記載に変更する補正事項(以下、「補正事項A」という。)についてみるに、それが、特許法第17条の2第5項でいう「請求項の削除」を目的とするもの(第1号)、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするもの(第2号)、「誤記の訂正」を目的とするもの(第3号)、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするもの(第4号)、のいずれにも該当しないことは明らかである したがって、同補正事項Aを含む本件補正の目的は、特許法第17条の2第5項の規定に適合しない。 3.むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願について 1.本願発明 本件補正(平成26年2月7日付けの手続補正)は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成25年9月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 データセントリックデータ処理の動的管理方法であって、 コンピュータが、データベースに対するドメイン固有データ処理に関する事象の関連情報を受信するステップと、 前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理と関連するネットワークセグメントを特定するステップと、 前記コンピュータが、前記データベースの第1のメモリ位置にあるデータであって前記ドメイン固有データ処理を受けて特定されるデータを特定するステップと、 前記コンピュータが、特定された前記ネットワークセグメントに近接する少なくとも一つの新しいメモリ位置に前記データを少なくとも1回複製するステップと、 前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理を前記少なくとも一つの新しいメモリ位置の中で分散配置するステップと、 を包含する方法。」 なお、本願発明でいう「データベースに対するドメイン固有データ処理に関する事象の関連情報」は、本願明細書の段落【0027】の記載等を参酌し、「毎秒あたりの特定ドメイン内での検索問い合わせの数に関連する情報」、換言すれば、「毎秒あたりの特定のデータアクセス装置に対する検索問い合わせの数に関連する情報」の全般を当然に含むものと解する。 また、本願発明でいう「前記ドメイン固有データ処理と関連するネットワークセグメント」は、本願明細書の段落【0033】の記載等を参酌し、上記「検索問い合わせ」を発するネットワークセグメントを当然に含むものと解する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-186141号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、データ管理方法、データ管理プログラム、データ管理システム、および、構成管理装置に関する。 【背景技術】 【0002】 データ管理システムは社会基盤の重要な役割を担っている。データを蓄積し続けるデータ管理システムでは、扱うデータ量の増加やアクセス数の増加が発生する。これにより、データ管理システムには負荷が発生する。 【0003】 データ管理システムへの負荷は、全体のデータのうち、一部のデータにアクセスが集中することが要因となる。なお、データアクセスの傾向として、例えば、データの読み込みの割合が、データの書き込みの割合よりも、極めて大きくなることがある。また、別の傾向として、書き込みされてからの経過時間が短いデータほどアクセスが集中し、時間が経過したデータ程アクセスされないこともある。 【0004】 データ管理システムを構成するデータ記憶装置は、アクセス対象のデータを格納する。このデータ記憶装置への負荷集中を緩和する手法が、いくつか提案されている。 【0005】 例えば、非特許文献1などに記載されたRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、複数の物理的なデータ格納装置を、単一の論理的なデータ格納装置として認識させ、複数の物理的なデータ格納装置に分散して並列にアクセスさせることで、データ記憶装置への負荷集中を緩和する。 【0006】 また、アクセスが集中するデータについて、データ記憶装置にデータの複製を作成し、同じデータへのアクセスを複数のデータ記憶装置に分散することによって、データ記憶装置13へのアクセス性能の悪化を防ぐ方法がある(特許文献1参照)。さらに、ストライピングは、1つのファイルを断片化して別々のデータ記憶装置に分散して記憶することで、データ記憶装置への負荷集中を緩和する。 【0007】 そして、同一データへ複数のアクセスが多発するような場合に、予め複製データの作成契機となる条件を設定しておくことで、複製データの作成、及びアクセス先の切り替えをシステム内部で自動的に行うための技術が開示されている(特許文献2参照)。 【特許文献1】米国特許第6961727号明細書 【特許文献2】特開2005-338893号公報 【非特許文献1】Patterson, David A/Gibson, Garth A/Katz, Randy H著、「A Case for Redundant Arrays of Inexpensive Disks」、CSD-87-391 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 データ管理システムを構成するデータ記憶装置への負荷分散を行うだけでは、データ管理システム全体の負荷分散を達成するには、不十分である。 【0009】 データ管理システムには、データ記憶装置に対してアクセスを指示するデータアクセス装置が接続されている。このデータアクセス装置は、アクセス要求に従って、データ記憶装置に記憶されているデータのアクセスをアクセス要求元に仲介する。 【0010】 データアクセス装置は、アクセス要求量が多くなり、処理能力の限界を超えてしまうと、データ記憶装置の処理能力には余裕があっても、データアクセス装置の処理待ちが発生する。つまり、データアクセス装置が、データ管理システム全体のボトルネックとなる。 【0011】 そこで本発明は、データ管理システム全体の負荷分散を達成することを主な目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 前記課題を解決するため、本発明は、読み込み要求または書き込み要求であるアクセス要求の入力を受け付けるアクセス要求装置と、前記アクセス要求の対象となるファイルを記憶するデータ記憶装置、および、前記データ記憶装置に対してアクセス権を専有するデータアクセス装置の組と、前記データアクセス装置のうち、前記アクセス要求の対象となるファイルの原本ファイルを管理する原本データアクセス装置、および、前記データアクセス装置のうち、複製ファイルを管理する複製データアクセス装置を、前記データ記憶装置が記憶するファイルと対応づけた構成情報を記憶する構成管理装置と、を接続するデータ管理システムによるデータ管理方法であって、前記アクセス要求装置が、所定ファイルへの前記読み込み要求の入力に対して、所定ファイルを管理する前記原本データアクセス装置および前記複製データアクセス装置のうち、1台の前記データアクセス装置を前記構成情報から選択して前記読み込み要求を行い、所定ファイルへの前記書き込み要求の入力に対して、所定ファイルを管理する前記原本データアクセス装置および前記複製データアクセス装置に対して前記書き込み要求を行い、前記構成管理装置が、負荷が集中するファイルの前記複製ファイルを記憶する前記データ記憶装置、および、その複製データアクセス装置の組単位で、前記構成情報に追加することを特徴とする。その他の手段は、後記する。 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、データ管理システム全体の負荷分散を達成することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下、本発明の一実施形態に係るデータ管理システムについて、図面に基づき説明する。 【0015】 図1は、本発明の一実施の形態に係るデータ管理システム2を示す構成図である。このデータ管理システム2は、例えば、受発注情報管理システムに適用される。 【0016】 データ管理システム2は、アクセス要求装置21、構成管理装置24、データアクセス装置22、および、データ記憶装置23が互いにネットワークで接続されて構成される。 【0017】 データ管理システム2において、望ましい装置の台数は以下の通りである。アクセス要求装置21は、アクセス要求を行うユーザ数分存在する。構成管理装置24は、基本的に1台で済むが、冗長化や負荷分散のために多重化してもよい。 【0018】 データアクセス装置22、および、データ記憶装置23は、互いに組となるので、同じ数ずつ存在する。この組の数は、データ管理システム2に対するアクセス量全体を余裕を持って処理可能な台数を予め用意しておく。これは、本実施形態のデータ管理システム2が行う負荷分散は、特定のデータアクセス装置22に対するアクセス集中を、別のデータアクセス装置22にも共同で負担することによって、実現するためである。つまり、共同で負担するデータアクセス装置22が存在しない(換言すると、全てのデータアクセス装置22の処理能力に余裕がない)ほどの乏しい計算機環境では、負荷分散の実現は困難となる。」 「【0038】 ここで、データアクセス装置22、および、データ記憶装置23の組が複数存在するときに、それらの組の間で、負荷のアンバランスが生じることもある。例えば、最近アクセス対象となるデータが、新たに増設されたデータ記憶装置23に対して集中的に記憶されると、その新たなデータ記憶装置23へのアクセスが集中する。これは、新しいデータほど、そのデータの使用頻度が高くなるという傾向によるものである。 【0039】 そこで、本実施形態では、負荷集中が発生したデータアクセス装置22、および、データ記憶装置23の組に対して、その組が管理するデータを、新たな組にも複製することによって、負荷集中が発生するデータへのアクセスを共同で負担する。これにより、ILM(Information Lifecycle Management)と呼ばれる効率的なストレージ活用を実現する。つまり、システム全体のアクセス性能を向上させるために、ほとんどアクセスされなくなったデータに対する計算機資源の数を減らし、アクセス数が多いデータに対する計算機資源を増やすことで、データごとのアクセス数に応じた構成変更を行う。 【0040】 図3は、本実施形態の構成情報25の変更を説明する説明図である。図3(a)は、ファイル「p」の追加前を示し、図3(b)は、ファイル「p」の追加後を示す。 【0041】 まず、図3(a)において、アクセス対象の各ファイルには、そのアクセスを処理するためのデータアクセス装置22、および、データ記憶装置23の組が割り当てられている。例えば、ファイル「1」には、原本ファイルを管理する組「1」、および、複製ファイルを管理する組「2」が割り当てられている。 【0042】 ストレージプールは、データアクセス装置22、および、データ記憶装置23の組について、データ記憶装置23にアクセス対象のファイルが記憶されていない(換言すると処理空きとなっている)組を管理する。 【0043】 なお、既に特定のファイル処理用として使用されている組から、負荷が集中していない組(例えば組「5」)を削除することによって、ストレージプールには、組が戻される。戻された組は、別のファイル処理用として再利用される。なお組の削除の詳細は、後記する「複製データアクセス装置22の削除」手順で説明する。 【0044】 次に、図3(b)において、ファイル「p」を割り当てる組を、ストレージプールから確保する。組「6」は、ファイル「p」の原本ファイルを管理するために、割り当てられる。詳細は、後記する「原本データアクセス装置22の追加」手順で説明する。そして、組「7」および組「5」は、ファイル「p」の複製ファイルを管理するために、割り当てられる。詳細は、後記する「複製データアクセス装置22の追加」手順で説明する。 【0045】 以上により、アクセスが集中していないファイル「n」の計算機資源である組「5」が、アクセスが集中するファイル「p」の計算機資源として活用される。これにより、ファイル「p」へのアクセスを効率的に負荷分散できる。なお、ストレージプール内の組を割り当てるときに、どの組を割り当てるかを指定する方法として、管理者ユーザが明示的に指定する方法や、ストレージプール内の組を順序づけし、前に指定された組の次に位置する組を指定する、ラウンドロビンの方法などがある。」 「【0056】 図6は、データ読み込み手順を示すフローチャートである。 【0057】 アクセス要求装置21は、構成管理装置24に対して、構成情報25を要求する(S301)。構成管理装置24は、アクセス要求装置21に対して、構成情報25を返信する(S302)。 【0058】 アクセス要求装置21は、複製データアクセス装置22が存在するか否かを判定する(S311)。具体的には、取得した構成情報25を基にユーザが指定した読み込み先のファイル名と同じファイル名のファイルにアクセス可能なデータアクセス装置22を特定する。 【0059】 まず、S311でYesなら、アクセス要求装置21は、アクセス対象の複製データアクセス装置22を決定する(S312)。複製データアクセス装置22が複数存在するときには、前記した選択アルゴリズムにより、1つのアクセス対象を選択する。一方、S311でNoなら、アクセス要求装置21は、アクセス対象の原本データアクセス装置22を決定する(S313)。 【0060】 アクセス要求装置21は、アクセス対象のデータアクセス装置22に対して、データの読み込みを要求する(S314)。アクセス対象のデータアクセス装置22は、配下のデータ記憶装置23に対して、データの読み込みを行うように制御する(S315)。アクセス対象のデータアクセス装置22は、アクセス要求装置21に対して、データの読み込み完了を通知する(S321)。通知メッセージには、読み込み対象のファイルのデータ内容が含まれる。アクセス要求装置21は、一般ユーザに対して、データの読み込み完了を通知する(S322)。 【0061】 図7は、構成管理要求手順を示すフローチャートである。 【0062】 アクセス要求装置21は、構成管理装置24に対して、管理者ユーザからの構成管理要求を送信する(S401)。ここで、構成管理要求とは、以下の(1)から(3)までのいずれかである。 【0063】 構成管理要求(1)は、「原本データアクセス装置22の追加」である。新たに、原本ファイルを記憶するデータ記憶装置23、および、そのデータ記憶装置23を管理する原本データアクセス装置22の組をデータ管理システム2に追加する。これは、原本ファイルが新たに管理対象となったとき、その管理の担当先として発行される。構成管理要求には、追加するデータアクセス装置22の名称と、原本ファイルのファイル名とが含まれる。 【0064】 構成管理要求(2)は、「複製データアクセス装置22の追加」である。既にデータ管理されている原本ファイルに対して、複製ファイルを記憶するデータ記憶装置23、および、そのデータ記憶装置23を管理する複製データアクセス装置22の組をデータ管理システム2に追加する。これは、原本ファイルやその複製ファイルに対するアクセスが集中したため、その緩和を目的として発行される。構成管理要求には、追加するデータアクセス装置22の名称と、複製ファイルを追加する原本ファイルのファイル名とが含まれる。 【0065】 構成管理要求(3)は、「複製データアクセス装置22の削除」である。既にデータ管理されている複製ファイルに対して、その複製ファイルを記憶するデータ記憶装置23、および、そのデータ記憶装置23を管理する複製データアクセス装置22の組をデータ管理システム2から削除する。これは、以前アクセスが集中したために追加された複製ファイルについて、そのアクセスが緩和されたために処理が空いたため、装置の有効活用を目的として発行される。構成管理要求には、削除するデータアクセス装置22の名称が含まれる。」 「【0073】 図9は、「複製データアクセス装置22の追加」手順を示すフローチャートである。 【0074】 構成管理装置24は、構成管理要求が有効か否かを判定する(S601)。なお、構成管理要求が有効とは、ユーザが構成管理要求で指定したデータアクセス装置名およびファイル名と同じデータアクセス装置名およびファイル名が構成情報25に含まれている旨を示す。 【0075】 S601でNoなら、構成管理装置24は、管理者ユーザに対して、構成管理要求が無効である旨のエラーを通知する(S602)。そして、処理を終了する。 【0076】 S601でYesなら、構成管理装置24は、複製データアクセス装置22に対して、構成管理要求で指定された複製ファイルを管理対象とする(S603)ように指示する。そして、複製データアクセス装置22には、複製ファイルを管理するためのアプリケーションがインストールおよびデプロイされる。複製データアクセス装置22は、配下のデータ記憶装置23に対して、構成管理要求で指定された複製ファイルを記憶できるように準備する。 【0077】 構成管理装置24は、構成情報25から、構成管理要求で指定された複製ファイルに対する原本ファイルを管理する原本データアクセス装置22を特定する(S611)。具体的には、ユーザが指定した複製ファイルのファイル名と同じファイル名のファイルにアクセス可能なデータアクセス装置22のうち、ファイル属性が原本であるデータアクセス装置22を特定する。 【0078】 構成管理装置24は、特定した原本データアクセス装置22に対して、原本ファイルの読み込みを要求する(S612)。原本データアクセス装置22は、配下のデータ記憶装置23に対して、データの読み込みを行うように制御する(S613)。原本データアクセス装置22は、構成管理装置24に対して、原本ファイルの読み込み完了を通知する(S614)。 【0079】 構成管理装置24は、S603で追加した複製データアクセス装置22に対して、原本ファイルのデータ内容をもとに複製ファイルの書き込みを要求する(S621)。複製データアクセス装置22は、配下のデータ記憶装置23に対して、データの書き込みを行うように制御する(S622)。複製データアクセス装置22は、構成管理装置24に対して、複製ファイルの書き込み完了を通知する(S623)。 【0080】 構成管理装置24は、構成情報25に、追加した複製データアクセス装置22を登録する(S624)。例えば、追加したデータアクセス装置名が「データアクセス装置p1」、追加する複製ファイルが対応する原本ファイル名が「ファイルp」であった場合、構成情報25のデータアクセス装置名項目には「データアクセス装置p1」、ファイル名項目には「ファイルp」、ファイル属性項目には「複製」がそれぞれ書き込みされる。構成管理装置24は、管理者ユーザに対して、構成管理要求の処理完了を通知する(S625)。」 「【0087】 以上説明した本実施形態によれば、アクセス要求装置21は、読み込み要求の入力に対して、原本データアクセス装置22だけでなく、複製データアクセス装置22に対しても、要求を割り振る候補とする。また、アクセス要求が多いために負荷が集中するファイルについて、そのファイルを処理する複製データアクセス装置22の追加が可能となっている。よって、ファイルごとにばらつきのある読み込み要求に対して、効率的な複製データアクセス装置22の割り当てが可能となる。また、データ記憶装置23だけでなく、そのデータ記憶装置23を担当する複製データアクセス装置22の組単位での追加により、データアクセス装置22へのボトルネックが解消される。よって、データ管理システム全体の負荷分散を達成することができる。」 ここで、上記記載事項を引用例の関連図面と技術常識に照らし、段落【0064】でいう「原本ファイルに対するアクセス」が集中した場合の処理に着目すれば、次のことがいえる。 (1)段落【0011】、【0039】、【0064】、【0087】等の記載によれば、引用例には、データ管理システムにおいて、原本ファイル23aに対するアクセスの集中を動的に緩和する方法が開示されている。 (2)段落【0062】等の記載によれば、上記(1)でいう「方法」は、「構成管理装置24が、管理者ユーザからの構成管理要求を受信するステップ」といい得るステップを有している。 そして、その「管理者ユーザからの構成管理要求」のうちのあるもの(段落【0064】でいう「管理者要求(2)」)は、原本ファイル23aに対するアクセスが集中した場合に、その緩和を目的として発行されるものである。 したがって、上記(1)でいう「方法」は、「構成管理装置24が、原本ファイル23aに対するアクセスが集中した場合に、その緩和を目的として発行される構成管理要求を受信するステップ」といい得るステップを有している。 (3)段落【0077】?【0079】の記載によれば、構成管理装置24は、複製を作成すべき原本ファイル23aを特定し、それを少なくとも一つの新しい「複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」に少なくとも1回複製するように機能するものといえる。 したがって、上記(1)でいう「方法」は、「構成管理装置24が、複製ファイルを作成すべき原本ファイル23aを特定するステップ」といい得るステップと、「前記構成管理装置24が、少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組に原本ファイル23aを少なくとも1回複製するステップ」といい得るステップを有している。 (4)段落【0038】?【0045】、【0056】?【0060】、【0080】の記載によれば、構成管理装置24は、特定の原本データアクセス装置22とデータ記憶装置の組における原本ファイル23aに対するアクセス要求についての処理を、上記(4)でいう少なくとも一つの新しい「複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」の中で分散配置させるように機能するものといえる。 したがって、上記(1)でいう「方法」は、「前記構成管理装置24が、特定の原本データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組における前記原本ファイル23aに対するアクセス要求についての処理を前記少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組の中で分散配置するステップ」といい得るステップを有している。 以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「データ管理システムにおいて、原本ファイル23aに対するアクセスの集中を動的に緩和する方法であって、 構成管理装置24が、前記原本ファイル23aに対するアクセスが集中した場合に、その緩和を目的として発行される構成管理要求を受信するステップと、 前記構成管理装置24が、複製ファイルを作成すべき原本ファイル23aを特定するステップと、 前記構成管理装置24が、少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組に前記原本ファイル23aを少なくとも1回複製するステップと、 前記構成管理装置24が、特定の原本データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組における前記原本ファイル23aに対するアクセス要求についての処理を前記少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組の中で分散配置するステップと、 を包含する方法。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (1)引用発明の方法は、複数のアクセス要求装置21からのアクセス要求が集中し得ることを前提にしたものであり、そのアクセス要求の集中を動的に緩和するものであるから、本願発明と同様に「データセントリックデータ処理の動的管理方法」ともいい得る。 (2)引用発明の「構成管理装置24」は本願発明の「コンピュータ」に相当する。 (3)上記2.の「なお、」以下に示した本願発明の解釈を踏まえると、本願発明の「データベースに対するドメイン固有データ処理に関する事象の関連情報」は、引用発明の「原本ファイル23aに対するアクセスが集中した場合に、その緩和を目的として発行される構成管理要求」を含むものといえる。 したがって、引用発明の「構成管理装置24が、前記原本ファイル23aに対するアクセスが集中した場合に、その緩和を目的として発行される構成管理要求を受信するステップ」は、本願発明の「コンピュータが、データベースに対するドメイン固有データ処理に関する事象の関連情報を受信するステップ」に相当する。 (4)引用例の「データ記憶装置23」は、データベースの一種ということができるから、それに格納されている、引用発明の「複製ファイルを作成すべき原本ファイル23a」は、「データベースの第1のメモリ位置にあるデータ」ともいい得る。 また、当該「複製ファイルを作成すべき原本ファイル23a」は、特定のデータアクセス装置22の下でアクセスが集中した原本ファイルであるから「ドメイン固有データ処理を受けて特定されるデータ」であるともいい得る。 したがって、引用発明の「前記構成管理装置24が、複製ファイルを作成すべき原本ファイル23aを特定するステップ」は、本願発明の「前記コンピュータが、前記データベースの第1のメモリ位置にあるデータであって前記ドメイン固有データ処理を受けて特定されるデータを特定するステップ」に相当する。 (5)引用発明の「少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」は、本願発明の「少なくとも一つの新しいメモリ位置」に相当するといえるから、引用発明の「前記構成管理装置24が、少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組に前記原本ファイル23aを少なくとも1回複製するステップ」と本願発明の「前記コンピュータが、特定された前記ネットワークセグメントに近接する少なくとも一つの新しいメモリ位置に前記データを少なくとも1回複製するステップ」とは、「前記コンピュータが、少なくとも一つの新しいメモリ位置に前記データを少なくとも1回複製するステップ」である点で共通する。 (6)引用発明の「特定の原本データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組における前記原本ファイル23aに対するアクセス要求についての処理」は、本願発明の「ドメイン固有データ処理」に相当するといえるから、引用発明の「前記構成管理装置24が、特定の原本データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組における前記原本ファイル23aに対するアクセス要求についての処理を前記少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組の中で分散配置するステップ」は本願発明の「前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理を前記少なくとも一つの新しいメモリ位置の中で分散配置するステップ」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「データセントリックデータ処理の動的管理方法であって、 コンピュータが、データベースに対するドメイン固有データ処理に関する事象の関連情報を受信するステップと、 前記コンピュータが、前記データベースの第1のメモリ位置にあるデータであって前記ドメイン固有データ処理を受けて特定されるデータを特定するステップと、 前記コンピュータが、少なくとも一つの新しいメモリ位置に前記データを少なくとも1回複製するステップと、 前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理を前記少なくとも一つの新しいメモリ位置の中で分散配置するステップと、 を包含する方法。」である点。 (相違点) 本願発明は、「前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理と関連するネットワークセグメントを特定するステップ」を有し、「前記データを少なくとも1回複製するステップ」においてデータを複製する「少なくとも一つの新しいメモリ位置」が、「特定された前記ネットワークセグメントに近接する少なくとも一つの新しいメモリ位置」であるのに対し、引用発明は、「前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理と関連するネットワークセグメントを特定するステップ」に相当するステップを有するものとはされておらず、「前記データを少なくとも1回複製するステップ」(前記原本ファイル23aを少なくとも1回複製するステップ)においてデータ(原本ファイル23a)を複製する「少なくとも一つの新しいメモリ位置」(少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組)が、「特定された前記ネットワークセグメントに近接する少なくとも一つの新しいメモリ位置」とはされていない点。 なお、上記「前記ドメイン固有データ処理と関連するネットワークセグメント」は、上記1.の「また、」以下に述べたとおり、「検索問い合わせ」を発するネットワークセグメントを当然に含むものと解する。 4.判断 (1)(相違点)について 以下の事情を総合すると、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 ア.引用例の段落【0002】?【0011】の記載から把握される引用発明の課題や、引用例の段落【0045】の「ストレージプール内の組を割り当てるときに、どの組を割り当てるかを指定する方法として、管理者ユーザが明示的に指定する方法や、ストレージプール内の組を順序づけし、前に指定された組の次に位置する組を指定する、ラウンドロビンの方法などがある。」という記載から明らかなように、引用発明においては、「前記原本ファイル23aを少なくとも1回複製するステップ」において原本ファイル23aを複製する「少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」は、当業者が任意に定め得るものである。 イ.また、引用例の図1に示されるように、引用発明においては、アクセス要求装置21から各「データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」へのアクセスがネットワーク経由でなされることが当然に想定されているが、そのネットワークが大規模なネットワークの場合には、アクセス先の「データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」が、アクセス要求装置21が属するネットワークセグメントに近接しているのが望ましいことは、当業者にごく普通に想定されることである。 このことは、原査定で審査官が引用した特開2006-146951号公報の段落【0034】、【0035】に次のような記載があることや、それを根拠にした審査官の「オリジナルのサーバにアクセスが集中した場合に、クライアントの最寄りのミラーノードにコピーを生成し、該ミラーノードにアクセスさせることは周知であり」との指摘、さらには、その指摘に対して請求人がなんらの反論をしていないこと等からもうかがわれる。 「【0034】 第2の効果は、クライアントは、常に低遅延、高スループットでコンテンツを取得することが可能になる。 【0035】 その理由は、オリジンサーバにアクセスが集中してコンテンツ取得時の遅延、スループットの性能が低下した場合は、取得要求の頻度が高いコンテンツの複製が自動的にクライアントにとって最寄りの適応ミラーノードにコピーされ、クライアントは最寄りの適応ミラーノードから該コンテンツを取得することが可能だからである。」 ウ.してみれば、引用発明の「前記原本ファイル23aを少なくとも1回複製するステップ」において原本ファイル23aを複製する「少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」を、「複製する原本ファイル23aに対するアクセス要求を発したアクセス要求装置21」が属するネットワークセグメントに近接する位置にあるものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。 そして、そのようにする場合には、「複製する原本ファイル23aに対するアクセス要求を発したアクセス要求装置21」を知り得、原本ファイル23aを複製する「少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組」を指定し得る「構成管理装置24」に当該アクセス要求装置が属するネットワークセグメントを特定させるようにするのが自然である。 エ.以上のことは、引用発明を、「前記コンピュータが、前記ドメイン固有データ処理と関連するネットワークセグメントを特定するステップ」に相当するステップを有するものとし、「前記データを少なくとも1回複製するステップ」(前記原本ファイル23aを少なくとも1回複製するステップ)においてデータ(原本ファイル23a)を複製する「少なくとも一つの新しいメモリ位置」(少なくとも一つの新しい複製データアクセス装置22とデータ記憶装置23の組)を、「特定された前記ネットワークセグメントに近接する少なくとも一つの新しいメモリ位置」とすることが、当業者にとって容易であったことを意味している。 (2)本願発明の効果について 本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明、及び周知の事項から当業者が容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-01-29 |
結審通知日 | 2015-02-03 |
審決日 | 2015-02-17 |
出願番号 | 特願2011-530032(P2011-530032) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 57- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 萩島 豪、原 秀人 |
特許庁審判長 |
乾 雅浩 |
特許庁審判官 |
小曳 満昭 白石 圭吾 |
発明の名称 | データセントリック検索の動的管理のためのシステムおよび方法 |
代理人 | 特許業務法人YKI国際特許事務所 |