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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1302675
審判番号 不服2014-14288  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-22 
確定日 2015-07-01 
事件の表示 特願2012-215252「往復動エンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月21日出願公開、特開2013- 36470〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2004年3月2日(優先権主張 2003年3月3日、2003年7月30日)を国際出願日とする特願2005-503036号(以下、「原出願」という。)の一部を平成22年1月8日に新たな特許出願(特願2010-3425号)とし、さらにその一部を平成24年9月27日に新たな特許出願としたものであって、平成24年10月25日に手続補正書が提出され、平成25年7月29日付けで拒絶理由が通知され、平成25年10月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年4月15日付けで拒絶査定がされ、平成26年7月22日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに平成26年9月2日に審判請求書の請求の理由を変更する手続補正書が提出され、平成26年11月20日に上申書が提出されたものである。

第2.平成26年7月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年7月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成26年7月22日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正前の(すなわち、平成25年10月4日提出の手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
燃焼室を規定しているピストンのトップ面に隣接している第一のピストンリングと、第一のピストンリングとの間で環状ガス室を規定していると共にこの環状ガス室でのピストンの側面の受圧面積が反スラスト側よりもスラスト側で大きくなるように、第一のピストンリングに隣接している第二のピストンリングと、シリンダの内面の円周方向に関して並んでシリンダの内面に配されていると共にスラスト側で環状ガス室を燃焼室に連通させる複数のガス通路とを具備しており、複数のガス通路は、ピストンが上死点に位置する際に又は上死点からの降下始期に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させるようにシリンダの内面に設けられた凹所を夫々具備しており、凹所の夫々で規定される空間の開口面の径は、第一のピストンリングの厚みより大きくなっており、少なくとも一対の凹所は、シリンダの内面の円周方向において、スラスト側中心を挟んで配置されている往復動エンジン。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
燃焼室を規定しているピストンのトップ面に隣接している第一のピストンリングと、第一のピストンリングとの間で環状ガス室を規定していると共にこの環状ガス室でのピストンの側面の受圧面積が反スラスト側よりもスラスト側で大きくなるように、第一のピストンリングに隣接している第二のピストンリングと、シリンダの内面の円周方向に関して並んでシリンダの内面に配されていると共にスラスト側で環状ガス室を燃焼室に連通させる複数のガス通路とを具備しており、複数のガス通路は、ピストンが上死点に位置する際に又は上死点からの降下始期に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させるようにシリンダの内面に設けられた凹所を夫々具備しており、凹所の夫々で規定される空間の開口面の径は、第一のピストンリングの厚みより大きくなっており、少なくとも一対の凹所は、シリンダの内面の円周方向において、スラスト側中心を挟んで対称に、かつ、ピストンの往復動方向において、同位置に配置されている往復動エンジン。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「一対の凹所」に関し、「少なくとも一対の凹所」が「対称に、かつ、ピストンの往復動方向において、同位置に」配置されている旨を限定することを含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
原出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平4-362258号公報(以下、「引用文献」という。)には、「エンジン」に関し、図面とともに、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【請求項1】 エンジン燃焼室を規定するピストン上面に隣接して配置された第一のピストンリングとこの第一のピストンリングに隣接して配置された第二のピストンリングとの相互間の距離が、ピストンの反スラスト側の側面からこの反スラスト側の側面に対向するスラスト側の側面に向うに従って漸次長くなるように、第一及び第二のピストンリングをピストンに設け、ピストンがクランク角でほぼ0度から20度までの位置に存在する際に、ピストン側面とこのピストン側面に対面するシリンダ側壁内面との間であってかつ第一のピストンリングと第二のピストンリングとの間で規定された環状の偏倚ガス室をエンジン燃焼室に連通させるガス通路を、シリンダ側壁内面に球面凹所を形成して設けてなるエンジン。
【請求項2】 ガス圧を受容するピストン側面の受圧面積が、ピストンの反スラスト側の側面よりこの反スラスト側の側面に対向するスラスト側の側面の方で大きくなるように、ピストン側面とこのピストン側面に対面するシリンダ側壁内面との間であってかつエンジン燃焼室を規定するピストン上面に隣接して配置された第一のピストンリングとこの第一のピストンリングに隣接して配置された第二のピストンリングとの間で規定された環状空間を偏倚ガス室として形成し、ピストンがクランク角でほぼ0度から20度までの位置に存在する際に、偏倚ガス室をエンジン燃焼室に連通させるガス通路を、シリンダ側壁内面に球面凹所を形成して設けてなるエンジン。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は往復動エンジンに関する。」(段落【0001】)

(ウ)「【0009】
…(中略)…本発明におけるガス通路は、シリンダ側壁内面の円周方向に関していずれの場所に形成しても良いが、好ましい例ではピストンのスラスト側の側面に対面するシリンダ側壁内面に形成される。本ガス通路としての球面凹所は一つでも良いが、これに代えてシリンダ側壁内面の円周方向に関して複数個互いにピストンの往復動方向に関して位置をずらせて或いは同一位置に設けても良いのである。」(【0009】)

(エ)「【0012】以下本発明を、図面に示す好ましい具体例に基づいて説明する。これにより前記発明及び更に他の発明が明瞭となるであろう。
【0013】尚、本発明はこれら具体例に何等限定されないのである。
【0014】
【具体例】図1及び図2において、シリンダ1内に配置されたピストン2の上方にはピストンリング3及び4及び油かきリング5が嵌着されている。燃焼ガスが漏出しないように密に嵌合された突合わせ部6を有したピストンリング3は、エンジン燃焼室8を規定するピストン2の上面7と実質的に平行に配置されている。
【0015】ピストンリング4は、ピストンリング3及び4相互間の距離が、ピストン2の反スラスト側の側面15から反スラスト側の側面15に対向するスラスト側の側面16に向うに従って漸次長くなるように、換言すれば距離D1よりも距離D2の方が長くなるように、ピストンリング3に対して傾斜してピストン2の外周面に配置されている。これによりピストン2の側面9とピストン2の側面9に対面するシリンダ1の側壁内面10との間であってかつピストンリング3とピストンリング4との間で規定された環状空間は、当該環状空間においてガス圧を受容するピストン2の側面9の受圧面積が、反スラスト側の側面15側よりスラスト側の側面16側の方で大きくなるように、偏倚ガス室11として形成されている。
【0016】ピストンリング4の両端突合せ部12は、偏倚ガス室11のガスが両端突合せ部12を介してピストンリング4と油かきリング5との間で規定される環状空間に漏出しないように密に当接又は嵌合されている。
油かきリング5は、ピストンリング4の両端突合せ部12を介してピストンリング4と油かきリング5との間で規定される環状空間に漏出したガスを更に外部に逃がさないようなっている。
【0017】ピストン2のスラスト側の側面16に対面するシリンダ側壁内面10には、ピストン2がクランク角でほぼ0度から20度までの位置に存在する際に、偏倚ガス室11をエンジン燃焼室8に連通させるガス通路としての球面凹所17が形成されている。
【0018】尚、ピストン2には軸13を介してコンロッド14が連結されている。
【0019】このように構成されたエンジンでは、爆発行程でエンジン燃焼室8で爆発して発生したガス圧は、球面凹所17を介して偏倚ガス室11に導入される。この導入されたガス圧に基づき偏倚ガス室11の偏倚した側圧を受けてピストン2は、その往復動では側壁内面10、特にスラスト側の側面16に対面する側壁内面10に対して浮上する。ガス圧で側壁内面10に対して浮上されたピストン2は、極めて低い摺動摩擦抵抗をもって往復動し、エンジンの燃費の改善等を計り得る。
【0020】そしてピストン2がクランク角でほぼ20度を越える位置に移動されると、偏倚ガス室11とエンジン燃焼室8とは連通されなくなるので、ピストン2がクランク角でほぼ0度から20度までの位置に移動されている際にエンジン燃焼室8での爆発で球面凹所17を介して偏倚ガス室11に導入されたガス圧は、ピストン2がクランク角でほぼ20度を越える位置に移動されされてもそのまま維持される結果、クランク角でほぼ20度を越える位置での移動中においてもシリンダ1の側壁内面10との摺動摩擦抵抗が十分に減少されてピストン2は往復動されることとなる。」(【0012】ないし【0020】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)並びに図1及び図2の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていることが分かる。

(カ)引用文献の上記(1)(イ)の記載から、引用文献には、往復動エンジンが記載されていることが分かる。

(キ)上記(1)(ア)及び(エ)の記載から、引用文献に記載された往復動エンジンは、エンジン燃焼室8を規定するピストン2の上面7に隣接しているピストンリング3と、ピストンリング3との間で環状の偏倚ガス室11を規定していると共にこの偏倚ガス室11でのピストン2の側面9の受圧面積が反スラスト側の側面15側よりもスラスト側の側面16の側で大きくなるように、ピストンリング3に隣接しているピストンリング4とを具備するものであることが分かる。

(ク)上記(1)(ア)及び(エ)並びに図1及び図2の記載から、引用文献に記載された往復動エンジンは、ピストン2のスラスト側の側面16に対面するシリンダ1の側壁内面10に、スラスト側で偏倚ガス室11をエンジン燃焼室8に連通させるガス通路を具備していることが分かる。

(ケ)上記(1)(ウ)の記載から、引用文献に記載された往復動エンジンにおいて、ガス通路としての球面凹所17は、シリンダ1の側壁内面10の円周方向に関して複数個、ピストンの往復動方向に関して同一位置に設けられても良いものであることが分かる。

(コ)上記(1)(ア)及び(エ)の記載から、ガス通路としての球面凹所17は、ピストン2がクランク角でほぼ0度から20度までの位置に存在する際に偏倚ガス室11をエンジン燃焼室8に連通させるようにシリンダ1の側壁内面10に設けられていることが分かる。

(サ)上記(1)図1の記載から、引用文献に記載された往復動エンジンにおいて、球面凹所17の開口の径は、ピストンリング3の厚みより大きいことが看取できる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1及び図2の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「エンジン燃焼室8を規定するピストン2の上面7に隣接しているピストンリング3と、ピストンリング3との間で環状の偏倚ガス室11を規定していると共にこの偏倚ガス室11でのピストン2の側面9の受圧面積が反スラスト側の側面15側よりもスラスト側の側面16の側で大きくなるように、ピストンリング3に隣接しているピストンリング4と、ピストン2のスラスト側の側面16に対面するシリンダ1の側壁内面10に偏倚ガス室11をエンジン燃焼室8に連通させるガス通路とを具備しており、ガス通路としての球面凹所17は、シリンダ1の側壁内面10の円周方向に関して複数個、ピストンの往復動方向に関して同一位置に設けられ、かつ、ピストン2がクランク角でほぼ0度から20度までの位置に存在する際に偏倚ガス室11をエンジン燃焼室8に連通させるようにシリンダ1の側壁内面10に設けられ、球面凹所17の開口の径は、ピストンリング3の厚みより大きい往復動エンジン。」

2.-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エンジン燃焼室8」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「燃焼室」に相当し、以下同様に、「ピストン2」は「ピストン」に、「上面7」は「トップ面」に、「ピストンリング3」は「第一のピストンリング」に、「環状の偏倚ガス室11」及び「偏倚ガス室11」は「環状ガス室」に、「ピストン2の側面9」は「ピストンの側面」に、「反スラスト側の側面15側」は「反スラスト側」に、「スラスト側の側面16の側」は「スラスト側」に、「ピストンリング4」は「第二のピストンリング」に、「シリンダ1」は「シリンダ」に、「ガス通路」は「ガス通路」に、「シリンダ1の側壁内面10」は「シリンダの内面」に、「球面凹所17」は「凹所」に、「球面凹所17の開口の径」は「凹所夫々で規定される空間の開口面の径」に、「往復動エンジン」は「往復動エンジン」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明において「ピストン2のスラスト側の側面16に対面するシリンダ1の側壁内面10にスラスト側で偏倚ガス室11をエンジン燃焼室8に連通させるガス通路とを具備しており、ガス通路としての球面凹所17は、シリンダ1の側壁内面10の円周方向に関して複数個、ピストンの往復動方向に関して同一位置に設けられ」ていることは、本願補正発明において「シリンダの内面の円周方向に関して並んでシリンダの内面に配されていると共にスラスト側で環状ガス室を燃焼室に連通させる複数のガス通路とを具備しており」、「少なくとも一対の凹所は、シリンダの内面の円周方向において、かつ、ピストンの往復動方向において、同位置に配置されている」ことに相当する。
また、引用発明における「ピストン2がクランク角でほぼ0度から20度までの位置に存在する際」は、本願補正発明における「ピストンが上死点からの降下始期に位置する際」に相当するから、引用発明においてガス通路としての球面凹所17が「ピストン2がクランク角でほぼ0度から20度までの位置に存在する際に偏倚ガス室11をエンジン燃焼室8に連通させるようにシリンダ1の側壁内面10に設けられ」ることは、本願補正発明において「複数のガス通路は、ピストンが上死点に位置する際に又は上死点からの降下始期に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させるようにシリンダの内面に設けられた凹所を夫々具備して」いることに相当する。
さらに、引用発明において「球面凹所17の開口の径は、ピストンリング3の厚みより大きい」ことは、本願補正発明において「凹所の夫々で規定される空間の開口面の径は、第一のピストンリングの厚みより大きくなって」いることに相当する。

以上から、本願補正発明と引用発明は、
「 燃焼室を規定しているピストンのトップ面に隣接している第一のピストンリングと、第一のピストンリングとの間で環状ガス室を規定していると共にこの環状ガス室でのピストンの側面の受圧面積が反スラスト側よりもスラスト側で大きくなるように、第一のピストンリングに隣接している第二のピストンリングと、シリンダの内面の円周方向に関して並んでシリンダの内面に配されていると共にスラスト側で環状ガス室を燃焼室に連通させる複数のガス通路とを具備しており、複数のガス通路は、ピストンが上死点に位置する際に又は上死点からの降下始期に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させるようにシリンダの内面に設けられた凹所を夫々具備しており、凹所の夫々で規定される空間の開口面の径は、第一のピストンリングの厚みより大きくなっている往復動エンジン。」
である点で一致し、次の点で相違する。

〈相違点〉
本願補正発明においては、少なくとも一対の凹所は、シリンダの内面の円周方向において、スラスト側中心を挟んで対称に配置されているのに対し、引用発明においては、少なくとも一対の凹所がスラスト側中心を挟んで対称に配置されているか不明である点(以下、「相違点」という。)。

2.-3 判断
上記相違点について検討する。
本願補正発明の発明特定事項において、「複数のガス通路は、…凹所を夫々具備しており、…少なくとも一対の凹所は、スラスト側中心を挟んで対称に、かつ、ピストンの往復動方向において、同位置に配置されている」ということは、凹所の数を一対だけに限定することを意味するものではないが、凹所の数を2つとし、それらスラスト側中心を挟んで対称に、かつ、ピストンの往復動方向において、同位置に配置されているものを含んでいる。
これに対し、引用発明は、ガス通路としての球面凹所17を「シリンダ1の側壁内面10の円周方向に関して複数個、ピストンの往復動方向に関して同一位置に設け」るものであるところ、例えば、球面凹所17を2つ設ける場合を考えたときに、偏倚ガス室11内のガス圧を均等にするために、スラスト側中心を挟んで対称に配置することは、格別な創作性を発揮するまでもなく、ごく普通に試みられることであるといえる。
したがって、引用発明において、一対の球面凹所17をスラスト側中心を挟んで対称に配置することにより、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

以上から、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、平成26年7月22日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明は、平成25年10月4日提出の手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願時に願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。

2.引用発明
原出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平4-362258号公報)記載の発明(引用発明)は、前記第2.の[理由]2.-1の(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
前記第2.の[理由]1.(2)で検討したとおり、本件補正は、該補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明、すなわち本願発明について、その発明特定事項をさらに限定したものである。したがって、本願発明は、本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当するといえる。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2の[理由]2.-2及び2.-3に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4.むすび
上記第3.のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-14 
結審通知日 2015-04-21 
審決日 2015-05-07 
出願番号 特願2012-215252(P2012-215252)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02F)
P 1 8・ 575- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷川 啓亮  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 中村 達之
佐々木 訓
発明の名称 往復動エンジン  
代理人 高田 武志  

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