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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1303800
審判番号 不服2014-18617  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-18 
確定日 2015-07-30 
事件の表示 特願2010-228794「表示装置,表示装置の制御方法,及び,プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年4月26日出願公開,特開2012-83484〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,平成22年10月8日の特許出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成25年 6月 7日:手続補正書(以下「補正1」という。)
平成26年 1月27日:拒絶理由通知(同年2月4日発送)
平成26年 4月 4日:意見書(以下「意見書」という。)
平成26年 4月 4日:手続補正書
平成26年 6月17日:拒絶査定(同年同月24日送達)
平成26年 9月18日:手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成26年 9月18日:審判請求
平成26年10月16日:前置報告

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。
「 画像を表示する表示部と,
前記表示部の表示範囲に複数の表示領域を並べて配置し,各表示領域に画像を表示させる表示制御部と,
各々の前記表示領域に表示される画像を,複数の入力画像から選択する画像選択部と,
前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作と,前記選択を決定する確定操作とをするための画像指定画面を前記表示部に表示させ,
前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更し,
前記画像指定画面の表示中の操作により全ての前記表示領域に表示する画像が選択され,前記確定操作がされた場合に,全ての前記表示領域に表示する画像を一括して決定し,決定した画像を前記画像選択部により選択させる多画面表示制御部と,
を備えることを特徴とする表示装置。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである(下線部は当審判体が付した,以下同じ。)。
「 画像を表示する表示部と,
前記表示部の表示範囲に複数の表示領域を並べて配置し,各表示領域に画像を表示させる表示制御部と,
各々の前記表示領域に表示される画像を,複数の入力画像から選択する画像選択部と,
前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作と,前記選択を決定する確定操作とをするための画像指定画面を前記表示部に表示させ,
前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,前記確定操作がなされる前に,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更し,
前記画像指定画面の表示中の操作により全ての前記表示領域に表示する画像が選択され,前記確定操作がされた場合に,全ての前記表示領域に表示する画像を一括して決定し,決定した画像を前記画像選択部により選択させる多画面表示制御部と,
を備えることを特徴とする表示装置。」

2 補正の目的
本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)の多画面表示制御部における「前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更し」の構成を,「前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,前記確定操作がなされる前に,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更し」の構成に限定するものである。したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下,検討する。

3 独立特許要件違反
(1) 本件補正後発明
本件補正後発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載のとおりのもの(前記1(2)に記載のとおりのもの)である。
なお,本件出願の発明の詳細な説明には,【図1】とともに,画像選択部(ソース選択部23)が,表示制御部(表示制御部15)の構成の一部である実施形態が開示されている。しかしながら,請求項1では,両者は,別の構成として記載されているから,本件補正後発明の「画像選択部」と「表示制御部」は,別の構成(請求項1に記載されたとおりの構成)と認める。また,請求項1の記載及び【図3】(b)等からみて,本件補正後発明の「入力画像」は,「入力画像の内容」のみならず,「コンピュータ」,「ビデオ」,「HDMI」等の,「入力画像の入力元の名称」を含む概念と認める。

(2) 引用例1に記載の事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-60297号公報(【公開日】平成19年3月8日,【発明の名称】放送受信装置及び受信可能な受信放送方式表示方法,【出願番号】特願2005-243198号,【出願日】平成17年8月24日,【出願人】株式会社東芝,以下「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

ア 「【要約】
【課題】各種の放送方式を受信でき多画面表示できる受信装置において,チャンネル選択操作で混乱を生じないようにし,利用者の操作の信頼性と安定性を得る。
【解決手段】複数の受信部及び複数のデコーダ19,30,12A-24C,25A-25Cのうち,第1,第2の受信部が選択され,その選局出力が,第1,第2のデコーダでデコードされる。信号処理部34は,2つのデコード出力を2画面表示するための処理を行う。表示器14は,1つの表示領域上の対応した第1,第2の分割画面にそれぞれ表示する。状態表示処理部は,表示領域の一部分に,前記複数の受信部で受信できる放送方式のマークを表示するとともに,上記の選択のために選局不可となっている放送方式のマークを区別して表示する。」

イ 「【技術分野】
【0001】この発明は,放送受信装置及び受信可能な放送方式表示方法に関するもので,特に各種の放送方式を受信できる装置に適用して最適となるものである。
【背景技術】
【0002】周知のように,近年では,テレビジョン放送のデジタル化が推進されてきている。例えば,日本国内においては,BS(broadcasting satellite)デジタル放送及び110度CS(communication satellite)デジタル放送等の衛星デジタル放送だけでなく,地上デジタル放送も開始されている。また,地上アナログ放送も存在する。
【0003】一方,放送受信装置は,上記した各種の放送方式の信号を受信できるように,各方式に対応したチューナを内蔵した装置も開発されている。したがってユーザーは,所望の放送方式の所望のチャンネル及び番組を視聴することができる。
【0004】さらにまた,放送受信装置は,表示器の大型化も進み,全体の表示領域が広くなっている。このために,複数のチャンネルを同時に受信し,1つの表示領域に対して複数の画面を同時に表示することが可能である。
【0005】また,一般的に,表示装置では,メニュー表示機能が設けられる。メニュー表示では,各種ボタン表示をハイライト表示とトーンダウン表示することにより,選択状況を識別させている。複数のチャンネルのデータを同時に取り扱う技術としては,例えば特許文献1がある。ここでは,1つのチューナを制御して複数チャンネルのデータを同時に処理しようとするものである。
【0006】また,同一の表示領域に異なる放送からの情報を表示する技術として,特許文献2がある。ここでは,番組表情報の送信されている放送と番組表情報の送信されていない放送の番組表を同一画面に表示している。
【0007】さらにハイライト表示を行なう技術として,特許文献3がある。ここでは,録画予約しているかどうかを識別するために,番組名欄にハイライト表示技術を用いている。
【特許文献1】特開2001-245226公報
【特許文献1】特開2003-198961公報
【特許文献1】特開2000-209513公報」

ウ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】上記したように各種の放送方式が存在し,各種の放送方式で放送された信号を1つの受信装置で受信できるような場合に次のような問題が生じる。つまり1つの表示領域で複数の分割画面を表示している状態で,ユーザーは,その他にどのような放送方式を受信できるのか混乱を招くことがある。例えば,第1の放送方式の第1チャンネルを第1のチューナで受信し,第1画面でその映像を表示中に,第1の放送方式の第2チャンネルを第1のチューナで受信し,第2画面でその映像を表示しようとしても,このことは不可能である。これは第1のチューナは,既に第1チャンネルを受信中であるからである。
【0009】ユーザーが,上記のような受信操作を行なった場合,ユーザーは,第2の画面に所望のチャンネルの映像を表示できないために,混乱を生じることがある。或いは,操作が間違っているのか,受信装置が故障しているのかの混乱を招くことがある。
【0010】また,最近では,録画機能を備えたデジタルテレビジョン受信装置が市場で販売されている。このような装置において,受信装置の画面では,アナログ地上波放送の番組を視聴し,録画装置では,BS放送の番組Aを録画することもある。このような状態のとき,ユーザーが受信装置の表示画面でBS放送の番組Bを視聴しようとすると,番組Aの録画を失する場合がある。
【0011】そこでこの発明は,各種の放送方式の受信部を有した装置において,チャンネル選択操作で混乱を生じないようにし,利用者の操作の信頼性と安定性を得ることができる放送受信装置及び受信可能な放送方式表示方法を提供することを目的とする。」

エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】以下,図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
【0016】以下,この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は,この発明の実施の形態で説明するテレビジョン放送受信装置11の正面側の外観を示している。
【図1】

【0017】図1において,このテレビジョン放送受信装置11は,主として,装置本体となるほぼ四角形状に形成された薄型のキャビネット12と,このキャビネット12を起立させて支持するスタンド13とから構成されている。
【0018】上記キャビネット12には,その正面に,例えば平面型液晶表示パネル等でなる映像表示器14の表示領域14aが露出されるとともに,一対のスピーカ15,操作部16,後述するリモートコントローラ(図1では図示せず)17から送信される操作情報を受けるための受光部18等が配置されている。」

オ 「【0021】図2は,上記テレビジョン放送受信装置11の信号処理系を概略的に示している。この信号処理系を構成する各種の回路ブロックは,主として,上記キャビネット12の内部で背面に近い位置,つまり,上記映像表示器14の表示領域14aの裏側あたりに配置されている。
【図2】

【0022】アナログテレビジョン放送受信用のアンテナ27で受信したアナログテレビジョン放送信号は,入力端子28を介してチューナ部29に供給される。このチューナ部29は,入力されたアナログテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。このチューナ部29から出力された信号は,A/D(analog/digital)変換部30によりデジタル化された後,セレクタ26に出力される。
【0023】A/D変換された信号が,HDDユニット20にて記録される場合は,セレクタ26に付随しているエンコーダにより,所定のフォーマット例えばMPEG(moving picture experts group)2方式による圧縮処理が施された後,HDDユニット20にて記録される。
【0024】また例えば地上波デジタルテレビジョン放送受信用のアンテナ22Aで受信したデジタルテレビジョン放送信号は,入力端子23Aを介してチューナ部24Aに供給される。このチューナ部24Aは,入力されたデジタルテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。そして,このチューナ部24Aから出力された信号は,デコーダ部25Aに供給されて,例えばMPEG(moving picture experts group)2デコード処理が施された後,セレクタ26に供給される。
【0025】また例えば放送衛星(Broadcast Satellite)からの放送受信用のアンテナ22Bで受信したデジタルテレビジョン放送信号は,入力端子23Bを介してチューナ部24Bに供給される。このチューナ部24Bは,入力されたデジタルテレビジョン放送信号から所望のチャンネルのストリーム信号を選局し復調している。そして,このチューナ部24Bから出力された信号は,デコーダ部25Bに供給されてデコード処理が施された後,セレクタ26に供給される。
【0026】さらにまた,例えば通信衛星(Communication Satellite)からの放送受信用のアンテナ22Cで受信したデジタルテレビジョン放送信号は,入力端子23Cを介してチューナ部24Cに供給される。このチューナ部24Cは,入力されたデジタルテレビジョン放送信号から所望のチャンネルのストリーム信号を選局し復調している。そして,このチューナ部24Cから出力された信号は,デコーダ部25Cに供給されてデコード処理が施された後,セレクタ26に供給される。
【0027】また上記のチューナ部24A,24B,24Cの出力は,直接セレクタ26に供給されている(図示せず)。この信号から映像・音声情報のパケットなどが分離され,この制御部35を介して直接HDDユニット20にて記録されることも可能である。
【0028】上記セレクタ26は,複数の入力デジタル映像及び音声信号から1つ或いは複数を選択して,信号処理部34に供給している。この信号処理部34は,入力されたデジタル映像信号に所定の信号処理を施して上記映像表示器14での映像表示に供させている。」

カ 「【0029】映像表示部14としては,例えば,液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等でなるフラットパネルディスプレイが採用される。また,上記信号処理部34は,入力されたデジタル音声信号に所定の信号処理を施し,アナログ化して上記スピーカ15に出力することにより,音声再生を行なっている。
【0030】ここで,このテレビジョン放送受信装置11は,上記した各種の受信動作を含む種々の動作を制御部35によって統括的に制御されている。この制御部35は,CPU(central processing unit)等を内蔵したマイクロプロセッサであり,上記操作部16や操作子21(図2では図示せず)からの操作情報,または,上記リモートコントローラ17から送信された操作情報を受光部18を介して受けることにより,その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御している。
【0031】この場合,制御部35は,メモリ部36を使用している。このメモリ部36は,主として,そのCPUが実行する制御プログラムを格納したROM(read only memory)と,該CPUに作業エリアを提供するためのRAM(random access memory)と,各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを備えている。
【0032】ここで,制御部35は,スタンド13内に収容されたHDDユニット20と接続されている。この場合,制御部35からHDDユニット20に電源電力及び制御信号の供給を行なうライン37は,接続部38を介して制御部35とHDDユニット20とを接続している。
【0033】また,制御部35とHDDユニット20との間でデジタル映像及び音声信号を授受するライン39は,i.Link接続部40を介して制御部35とHDDユニット20とを接続している。すなわち,制御部35とHDDユニット20との間でのデジタル映像及び音声信号の伝送は,電源及び制御信号とは別個にi.Linkによって行なわれる。
【0034】上記テレビジョン放送受信装置11は,セレクタ26で選択されたデジタルの映像及び音声信号を,HDDユニット20により記録することができるとともに,HDDユニット20に記録されたデジタルの映像及び音声信号を再生し,視聴に供させることができる。」

キ 「【0035】図3は,この発明の特徴の基本的要素の一例を示している。ここでは,アナログ系のチューナ部29,復調部,A/D変換部30をまとめて,受信部及びデコーダ29,30として示している。またチューナ部24A,デコーダ部24Aをまとめて受信部及びデコーダ24A,25Aとして示している。またチューナ部24B,デコーダ部24Bをまとめて受信部及びデコーダ24B,25Bとして示している。またチューナ部24C,デコーダ部24Cをまとめて受信部及びデコーダ24C,25Cとして示している。
【図3】

【0036】今,上記装置では,アナログ放送受信部「地上A」が1つ,地上波デジタル放送受信部「地上D」が1つ,BS放送受信部「BS」が1つ,CS放送受信部「CS」が1つ存在するものとして示している。また,この装置では,表示器14において,1つの表示領域14a内に,第1,第2の画面14a1,14a2を分割表示することができるものとして説明する。
【0037】このために,例えば,第1の画面にアナログ放送のチャンネルの映像を表示し,第2の画面に地上波デジタル放送のチャンネルの映像を表示することができる。また,第1の画面に地上波デジタル放送のチャンネルの映像を表示し,第2の画面に衛星(BS又はCS)放送によるチャンネルの映像を表示することもできる。
【0038】但し,上記の構成であると,第1の画面と第2の画面の両方に同時にアナログ放送のチャンネルの映像を表示することはできない。また第1の画面と第2の画面に同時に地上波デジタル放送のチャンネルの映像を表示することはできない。
【0039】ここで制御部35は,以下のブロックを含む。操作入力判別部35a,使用中の受信部及びデコーダ判別部35b,利用可能な受信部及びデコーダ判別部35c,情報表示処理部35dを含む。
【0040】操作入力判別部35aは,リモートコントローラ17によって入力された操作を処理する。この操作入力判別部36aからの判別結果に応じて装置の各部の初期動作がスタートする。
【0041】使用中の受信部及びデコーダ判別部35,操作内容に応じて,現在使用しているチューナ部とデコーダ部を把握している。さらに装置には,未使用の受信部及びデコーダを利用可能な受信部及びデコーダ判別部35cにより把握する。この把握は,受信部及びデコーダのセレクタの制御情報をチェックすることで容易に行なうことができる。
【0042】したがって,現在使用しているチューナ部とデコーダ部とを除くと,第2の画面での映像表示に利用可能な受信部及びデコーダ部が判明する。
【0043】つまり,上記の装置であると,今,(1)第1の画面にアナログ放送のチャンネルの映像を表示しているときは,第2の画面でアナログ放送のチャンネルの映像を表示することはできないことが把握される。逆に第2の画面では,地上波デジタル放送,又はBS放送,又はCS放送のいずれかのチャンネルの映像を表示することが可能であることが判明する。また,(2)第1の画面に地上波デジタル放送のチャンネルの映像を表示しているときは,第2の画面で地上波デジタル放送のチャンネルの映像を表示することはできないことが把握される。逆に第2の画面では,アナログ放送,又はBS放送,又はCS放送のいずれかのチャンネルの映像を表示することが可能であることが判明する。また,(3)第1の画面にBS放送のチャンネルの映像を表示しているときは,第2の画面でBS放送のチャンネルの映像を表示することはできないことが把握される。逆に第2の画面では,アナログ放送,又は地上波デジタル放送,又はCS放送のいずれかのチャンネルの映像を表示することが可能であることが判明する。また,(4)第1の画面にCS放送のチャンネルの映像を表示しているときは,第2の画面でCS放送のチャンネルの映像を表示することはできないことが把握される。逆に第2の画面では,アナログ放送,又は地上波デジタル放送,又はBS放送のいずれかのチャンネルの映像を表示することが可能であることが判明する。
【0044】本発明に係る装置は,上記のように受信可能な放送方式を,装置の状態として表示領域の一部に表示することができる。その表示データを出力する部分が,状態表示処理部35dであり,ここで生成された表示データが,信号処理部34を介して,表示器14の一部に表示される。
【0045】第1の画面14a1に近接して,現在この画面で表示されている放送方式とそのチャンネルを表示する表示番組のチャンネル表示領域a11が確保されている。また第2の画面14a2に近接して,現在この画面で表示されている放送方式とそのチャンネルを表示する表示番組のチャンネル表示領域a22が確保されている。
【0046】さらにまた,第1の画面14a1に近接して,この画面14a1側で受信可能な放送方式のマーク(或いはシンボル,記号)が表示若しくはハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークが消去若しくはトーンダウン表示される。同様に,第2の画面14a2に近接して,この画面14a2側で受信可能な放送方式のマーク(或いはシンボル,記号)が表示若しくはハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークが消去若しくはトーンダウン表示される。
【0047】この結果,ユーザーは,各画面において受信可能な放送方式を容易に認識することができる。ユーザーが,第2の画面に所望のチャンネルの映像を表示できないために,混乱を生じるということがなくなる。また,操作が間違っているのか,受信装置が故障しているのかの混乱を招くことが防止される。」

ク 「【0048】図4(A)には,受信装置に搭載されているチューナと,第1画面と第2画面でそれぞれ現在選択している放送方式と,この状態で,第1画面と第2画面でそれぞれ選択できる放送方式の関係を示す情報をパターン化した例を示している。このパターンはテーブルとして例えば,メモリ部36に格納されてもよい。
【図4】(A)

【0049】図4(A)の場合は,地上波アナログ放送の受信部が1台,地上波デジタル放送の受信部が1台,BS放送の受信部が1台,CS放送の受信部が1台,搭載されているデジタルテレビジョン受信装置の例を示している。
【0050】選択可能な放送方式は丸印であり,選択不可能な放送方式は,ばつ印で示している。図面では,地上A…地上波アナログ放送,地上D…地上波デジタル放送,BS…放送衛星放送,CS…通信衛星放送を意味する。
【0051】図4(A)には,4つのケースを示している。今,ケース1のように,第1画面については「地上A」が選択され,第2画面については,「地上D」が選択されているものとする。すると,第1画面については「地上D」が選択不可であり,第2画面については,「地上A」が選択不可である。
【0052】ケース2のように第1画面については「地上D」が選択され,第2画面については,「BS」が選択されているものとする。すると,第1画面については「BS」が選択不可であり,第2画面については,「地上D」が選択不可である。
【0053】ケース3のように第1画面については「BS」が選択され,第2画面については,「SC」が選択されているものとする。すると,第1画面については「CS」が選択不可であり,第2画面については,「BS」が選択不可である。
【0054】ケース4のように第1画面については「CS」が選択され,第2画面については,「地上A」が選択されているものとする。すると,第1画面については「地上A」が選択不可であり,第2画面については,「CS」が選択不可である。」

ケ 「【0061】図5には,図4(A)に示した設定のもとで,表示器14の表示領域14aに2画面が構成された例を示している。
【図5】

【0062】この例は,第1画面で「地上D」が選択され,第2画面で「BS」が選択された様子を示している。図4(A)のケース2の例である。
【0063】この場合は,第1の画面14a1に近接して,現在この画面で表示されている放送方式とそのチャンネルを表示する表示番組のチャンネル表示領域a11が確保されている。この表示領域a11には,現在の画面が,「地上D」のチャンネル011であり,番組名が「タイガーの尾」であることを示している。
【0064】さらに,第1の画面14a1に近接して,この画面14a1側で受信可能な放送方式のマーク(或いはシンボル,記号或いは放送方式識別情報)がハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークがトーンダウン表示(消去でもよい)される。つまり,ここでは,マークとして,「地上A」,「地上D」,「CS」がハイライト表示され,「BS」がトーンダウン(消去でもよい)されて表示されている。これは「BS」のチューナが,第2画面側で使用中であるからである。
【0065】また第2の画面14a2に近接して,現在この画面で表示されている放送方式とそのチャンネルを表示する表示番組のチャンネル表示領域a22が確保されている。この表示領域b11には,現在の画面が,「BS」のチャンネル152であり,番組名が「人間ドキュメント・102の教授」であることを示している。
【0066】さらにまた,第1の画面14a2に近接して,この画面14a2側で受信可能な放送方式のマーク(或いはシンボル,記号,或いは放送方式識別情報)がハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークがトーンダウン表示(消去でもよい)される。ここでは,マークとして,「地上A」,「BS」,「CS」がハイライト表示され,「地上D」がトーンダウン(消去でもよい)されて表示されている。これは「地上D」のチューナが,第1画面側で使用中であるからである。
【0067】上記したように,受信可能な放送方式が表示されることにより,ユーザは,どのような放送方式を受信できるのか混乱を招くことなく,安心して装置を操作することができる。」

コ 「【0068】図6は,上記の装置の動作例を実現するために示したフローチャートである。
【図6】

チューナの選択及び選局操作があった場合(ステップSA1),その操作は第1画面用であるのか第2画面用であるのかの判定が成される(ステップSA2)。第1画面用の操作であった場合,第1画面に関してテーブルが参照される(ステップSA3)。テーブルは,図4(A)或いは図4(B)の論理判定に基づいて構築される。次に念のために,選択されたチューナは使用可能か否かの判定が成される(ステップSA4)。使用不可であれば警告が表示される(ステップSA7)。
【0069】使用可能であれば,ハイライトマークとトーンダウンマーク(或いは消去)とを決定し,図5で示したような放送方式のマーク表示(放送方式識別情報表示)を得る。そして具体的に選択及び選局動作が実行される(ステップSA5)。そして最終的に,放送方式の識別表示についてハイライトマークとトーンダウンマーク(或いは消去)が決定されて表示される(ステップSA7)。
【0070】第2画面側が操作される場合も同様である。即ち,第2画面用の操作があった場合,第2画面に関してテーブルが参照される(ステップSA8)。次に,選択されたチューナは使用可能か否かの判定が成される(ステップSA9)。使用不可であれば警告が表示される(ステップSA7)。使用可能であれば,ハイライトマークとトーンダウンマークとを決定し,図5で示したような放送方式のマーク表示を得る。そして具体的に選択及び選局動作が実行される(ステップSA10)。そして最終的に,放送方式の識別表示についてハイライトマークとトーンダウンマーク(或いは消去)が決定されて表示される(ステップSA11)。
【0071】この発明は,上記の実施の形態に限定されるものではない。上記の実施形態では,デジタルテレビジョン放送受信装置が2画面を表示し,複数のチューナ及びデコーダを同時に利用する形態を示した。しかし複数のチューナ及びデコーダを同時に利用する形態は2画面表示の例に限定されるものではない。」

サ 「【0074】図9には,リモートコントローラ17の外観を示している。さきの2画面表示と1画面表示状態は,二画面キー17qを操作することにより,繰り返し画面状態を切換えることができる。」
【図9】


(3) 引用発明
これら記載事項からみて,引用例1には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。また,引用発明の認定に際して参考にした引用例1の記載箇所を明示するため,段落番号を付記する。)。

「 【0029】映像表示部14としては,例えば,液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等でなるフラットパネルディスプレイが採用され,
【0028】セレクタ26は,複数の入力デジタル映像及び音声信号から1つ或いは複数を選択して,信号処理部34に供給し,
【0028】信号処理部34は,入力されたデジタル映像信号に所定の信号処理を施して上記映像表示器14での映像表示に供させ,
【0030】制御部35は,CPU等を内蔵したマイクロプロセッサであり,リモートコントローラ17から送信された操作情報を受光部18を介して受けることにより,その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御し,ここで,【0039】制御部35は,操作入力判別部35a,使用中の受信部及びデコーダ判別部35b,利用可能な受信部及びデコーダ判別部35c,情報表示処理部35dを含み,【0040】操作入力判別部35aは,リモートコントローラ17によって入力された操作を処理し,【0041】使用中の受信部及びデコーダ判別部35は,操作内容に応じて,現在使用しているチューナ部とデコーダ部を把握し,【0041】利用可能な受信部及びデコーダ判別部35cは,未使用の受信部及びデコーダを把握し,【0044】状態表示処理部35dは,受信可能な放送方式を,装置の状態として表示領域の一部に表示する,表示データを出力し,
【0036】映像表示部14において,1つの表示領域14a内に,第1の画面14a1,第2の画面14a2を分割表示することができ,【0046】第1の画面14a1に近接して,第1の画面14a1側で受信可能な放送方式のマークがハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークがトーンダウン表示され,第2の画面14a2に近接して,第2の画面14a2側で受信可能な放送方式のマークがハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークがトーンダウン表示され,
【0068】チューナの選択及び選局操作があった場合,選択されたチューナは使用可能か否かの判定が成され,【0069】使用可能であれば,ハイライトマークとトーンダウンマークとを決定し,選択及び選局動作が実行され,最終的に,放送方式の識別表示についてハイライトマークとトーンダウンマークが決定されて表示され,
【0047】ユーザーが,各画面において受信可能な放送方式を容易に認識することができる,
【0016】テレビジョン放送受信装置11。」

(4) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりである。
ア 表示部
引用発明において,「映像表示部14としては,例えば,液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等でなるフラットパネルディスプレイが採用され」る。
ここで,本件補正後発明の「画像」は,引用発明の「映像」のような,動画像を含む。
したがって,引用発明の「映像表示部14」は,本件補正後発明の「画像を表示する表示部」に相当する。

イ 表示制御部
引用発明において,「セレクタ26は,複数の入力デジタル映像及び音声信号から1つ或いは複数を選択して,信号処理部34に供給し,信号処理部34は,入力されたデジタル映像信号に所定の信号処理を施して上記映像表示器14での映像表示に供させ」ている。
ここで,引用発明の「信号処理部34」が,映像表示部14の表示範囲に,複数の画面を並べて配置し,映像を表示させていることは明らかである(【図3】の構成説明図及び【要約】の【解決手段】の「表示器14は,1つの表示領域上の対応した第1,第2の分割画面にそれぞれ表示する。」という記載からも理解できる事項である。)。
したがって,引用発明の「信号処理部34」は,本件補正後発明の「前記表示部の表示範囲に複数の表示領域を並べて配置し,各表示領域に画像を表示させる表示制御部」に相当する。

ウ 画像選択部
引用発明において,「セレクタ26は,複数の入力デジタル映像及び音声信号から1つ或いは複数を選択して,信号処理部34に供給し」ている。
したがって,引用発明の「セレクタ26」は,本件補正後発明の「各々の前記表示領域に表示される画像を,複数の入力画像から選択する画像選択部」に相当する。

エ 多画面表示制御部(画像指定画面)
引用発明において,「制御部35は,CPU等を内蔵したマイクロプロセッサであり,リモートコントローラ17から送信された操作情報を受光部18を介して受けることにより,その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御し,ここで,制御部35は,操作入力判別部35a,使用中の受信部及びデコーダ判別部35b,利用可能な受信部及びデコーダ判別部35c,情報表示処理部35dを含み,操作入力判別部35aは,リモートコントローラ17によって入力された操作を処理し,使用中の受信部及びデコーダ判別部35は,操作内容に応じて,現在使用しているチューナ部とデコーダ部を把握し,利用可能な受信部及びデコーダ判別部35cは,未使用の受信部及びデコーダを把握し,状態表示処理部35dは,受信可能な放送方式を,装置の状態として表示領域の一部に表示する,表示データを出力し」ている。
そうしてみると,引用発明の「表示領域の一部」(状態表示処理部35dが出力する表示データを表示する領域)と,本件補正後発明の「画像指定画面」は,「前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作」「をするための画像指定画面」の点で一致する。
また,引用発明の「制御部35」と本件補正後発明の「多画面表示制御部」は,「前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作」「をするための画像指定画面を前記表示部に表示させ」る制御を行う点で一致する。

オ 多画面表示制御部(表示形態を変更し)
引用発明の「制御部35は,操作入力判別部35a,使用中の受信部及びデコーダ判別部35b,利用可能な受信部及びデコーダ判別部35c,情報表示処理部35dを含み,操作入力判別部35aは,リモートコントローラ17によって入力された操作を処理し,使用中の受信部及びデコーダ判別部35は,操作内容に応じて,現在使用しているチューナ部とデコーダ部を把握し,状態表示処理部35dは,受信可能な放送方式を,装置の状態として表示領域の一部に表示する,表示データを出力し」ているところ,「チューナの選択及び選局操作があった場合,選択されたチューナは使用可能か否かの判定が成され,使用可能であれば,ハイライトマークとトーンダウンマークとを決定し,選択及び選局動作が実行され,最終的に,放送方式の識別表示についてハイライトマークとトーンダウンマークが決定されて表示され」る。
したがって,引用発明の「制御部35」と本件補正後発明の「多画面表示制御部」は,「前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,」「他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更し,」という制御を行う点で一致する。

カ 表示装置
以上の対比結果を踏まえると,引用発明の「テレビジョン放送受信装置11」は,本件補正後発明の「表示装置」に対応する。

(5) 一致点及び相違点
ア 本件補正後発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「 画像を表示する表示部と,
前記表示部の表示範囲に複数の表示領域を並べて配置し,各表示領域に画像を表示させる表示制御部と,
各々の前記表示領域に表示される画像を,複数の入力画像から選択する画像選択部と,
前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作をするための画像指定画面を前記表示部に表示させ,
前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更する多画面表示制御部と,
を備える表示装置。」

イ 本件補正後発明と引用発明は,以下の点において相違する。
(相違点)
本件補正後発明の「多画面表示制御部」は,「前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作と,前記選択を決定する確定操作とをするための画像指定画面を前記表示部に表示させ,前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,前記確定操作がなされる前に,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更し,前記画像指定画面の表示中の操作により全ての前記表示領域に表示する画像が選択され,前記確定操作がされた場合に,全ての前記表示領域に表示する画像を一括して決定し,決定した画像を前記画像選択部により選択させる」多画面表示制御部であるのに対し,引用発明の「制御部35」は,上記下線部の構成において異なる点。

(6) 判断
引用発明は,「映像表示部14において,1つの表示領域14a内に,第1の画面14a1,第2の画面14a2を分割表示することができ,第1の画面14a1に近接して,第1の画面14a1側で受信可能な放送方式のマークがハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークがトーンダウン表示され,第2の画面14a2に近接して,第2の画面14a2側で受信可能な放送方式のマークがハイライト表示され,受信不可能な放送方式のマークがトーンダウン表示され」るものであるから,【図5】のような選択操作画面を実施の態様とする発明である。ただし,引用例1の段落【0071】には,「この発明は,上記の実施の形態に限定されるものではない。上記の実施形態では,デジタルテレビジョン放送受信装置が2画面を表示し,複数のチューナ及びデコーダを同時に利用する形態を示した。しかし複数のチューナ及びデコーダを同時に利用する形態は2画面表示の例に限定されるものではない。」と記載されている。したがって,引用発明は,3画面表示や4画面表示,あるいは,ピクチャーインピクチャー表示も可能なテレビジョン放送受信装置11も意図したものであるが,この場合の選択操作画面の構成について,引用例1には,図5及びその説明のような,明示的な記載が存在しないから,「各種の放送方式の受信部を有した装置において,チャンネル選択操作で混乱を生じないようにし,利用者の操作の信頼性と安定性を得ることができる放送受信装置及び受信可能な放送方式表示方法を提供することを目的とする。」(段落【0011】)という引用発明の目的課題を達することが可能な範囲内で,適宜の選択操作画面を案出することは,当業者における通常の創意工夫である。
ところで,映像表示部に表示可能な画面が複数ある場合の選択操作画面として,映像表示部に表示する画面の選択肢を複数選択可能なようにユーザに呈示し,ユーザが映像表示部に表示する画面を選択した上で一括して決定するような技術は,引用発明において2画面表示のみならず,3画面表示や4画面表示,あるいは,ピクチャーインピクチャー表示も可能とする際の選択操作画面に適したものであるところ,このような選択操作画面は,例えば,(A)特開2001-24959号公報(以下「周知例1」という。)の【図4】(a)(b)及びその説明(「200ch」,「201ch」及び「202ch」のうち「200ch」及び「202ch」を選択し,「表示」ボタン407によって,選択されたチャンネルを選局・表示する技術),(B)特開2010-56832号公報(以下「周知例2」という。)の【図22】及びその説明(「241c」?「246c」のうち「242c」及び「243c」を選択して「終了」する技術),(C)特開2010-20411号公報(以下「周知例3」という。)の【図12】及びその説明(選択欄512?515のうち選択欄512?514が選択され,接続ボタン504のクリックにより接続する技術),(D)特開2007-150580号公報(以下「周知例4」という。)の【図5】及びその説明(「NXN総合」?「テレビTK」のうち「FZテレビ」及び「NHテレビ」を選択して「保存」する技術)に記載されているように周知技術である。
また,引用発明において「ユーザーが,各画面において受信可能な放送方式を容易に認識することができる」という効果を維持するためには,周知技術を採用するに際しても,映像表示部14に表示する画面を選択する都度,ハイライト表示及びトーンダウン表示を変更することが,絶対に必要である一方,映像表示部14に表示する画面を選択する途中経過を映像表示部14の表示に逐一反映させるか否かは,装置の処理能力等を勘案し取捨選択しうる事項にすぎない(例えば,周知例1においても,段落【0041】において「受信者がチャンネルを選局する場合,ユーザ入力111の「移動」等の操作を行い,表示ボタン407上に前記選択カーソル308を移動させ,「決定」等の操作を行うと,選択されたチャンネルが選局・表示される。」と説明しつつも,段落【0040】において「またこのとき画面を二分割し,選択された二つのチャンネル200ch,202chの映像を同時表示することが可能である。また選択されたチャンネルが増える度に画面を更に分割して表示することも可能である。」と説明している。)。
そうしてみると,当業者が,引用発明の効果を維持しつつ周知技術の構成を採用するに際し,前記取捨選択をなすことは,引用発明の要旨の範囲内における,引用発明の具体的実施態様の変更にすぎない。
また,以上のようにしてなる「制御部35」は,「前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作と,前記選択を決定する確定操作とをするための画像指定画面を前記表示部に表示させ,前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,前記確定操作がなされる前に,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更し,前記画像指定画面の表示中の操作により全ての前記表示領域に表示する画像が選択され,前記確定操作がされた場合に,全ての前記表示領域に表示する画像を一括して決定し,決定した画像を前記画像選択部により選択させる多画面表示制御部」となる。

そして,本件補正後発明の効果のうち,「ユーザーは,システム上の制約等を自ら考慮することなく,簡単に,複数の表示領域101,103に表示される映像の入力ソースを,許容される組み合わせで選択できる。」(段落【0043】)という効果は,引用発明が奏する効果であり,「表示範囲に複数の表示領域を並べて配置する多画面表示を行う場合に,全ての表示領域に表示する画像を,より簡単な操作によって選択し,切り換えることができる。」(補正1による補正後の段落【0011】)という効果は,前記周知技術が奏する効果にすぎない。
したがって,本件補正後発明が奏する効果は,引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであり,顕著なものであるとはいえない。

(7) 備考
「画面」は,通常,「写真・映画・テレビなどの,写し出された像。」を意味する(広辞苑6版)。
ここで,引用発明の「表示領域の一部」は,ひとまとまりの像ではない(2つに別れている)としても,「映し出された像」ではあるから「画面」であり,この点において,前記(4)エの対比のように,引用発明の「表示領域の一部」と本件補正後発明の「画像指定画面」を対応づけることが可能である。
ただし,仮に,本件補正後発明の「画像指定画面」の「画面」をひとまとまりの像と限定的に解釈した場合においては,引用発明の「表示領域の一部」と本件補正後発明の「画像指定画面」は,「画面」といえるか否かの点においても相違することとなる。
しかしながら,仮にこの点を相違点と認定するとしても,引用発明の「表示領域の一部」と本件補正後発明の「画像指定画面」は,前記(4)エで言及した機能の点においては一致するものであり,また,「画面」といえるか否かの相違点は,前記(6)と同様の判断により,克服されるものにすぎない(結論に影響を及ぼさない。)。

(8) 請求人の主張について
ア 請求人は,「本願発明の特徴的な構成である,「前記表示領域に表示する画像として選択可能な複数の前記入力画像を表示し,表示された前記入力画像のいずれかを前記表示領域に表示する画像として選択する操作と,前記選択を決定する確定操作とをするための画像指定画面」を表示し,「前記画像指定画面の表示中の操作により,複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に,選択された前記入力画像と同時に表示できない前記入力画像が他の前記表示領域に表示する画像として選択されないように,前記確定操作がなされる前に,他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更」する点について,刊行物A乃至Dに開示及び示唆はない。」と主張する。
しかしながら,引用発明(刊行物B)と周知技術(刊行物C)を組み合わせてなるものは,請求人が主張する構成を具備する。

イ 請求人は,「本願発明は,本願明細書の段落[0043]に記載したように,「同時に選択できない入力ソース」について,「これらの一方が左画面用カーソル117または右画面用カーソル118で選択された場合は,他方を選択できないようにする。」ことができ,「ユーザーは,システム上の制約等を自ら考慮することなく,簡単に,複数の表示領域101,103に表示される映像の入力ソースを,許容される組み合わせで選択できる。」との格別の効果を奏する。特に,「前記確定操作がなされる前に」,「画像指定画面の表示形態を変更」するので,ユーザーが,同時に選択できない組合せを選択してしまうという無駄な操作を行うことがなく,利便性の向上に寄与することは明らかである。」と主張する。
しかしながら,段落【0043】記載の効果は引用発明が奏する効果に過ぎず,また,引用発明は,選択操作が行われる都度,ハイライト/トーンダウン表示を変更する構成を有するところ,引用発明と周知技術を組み合わせるに際し,この構成を敢えて変える必要はなく,むしろ,「ユーザーが,各画面において受信可能な放送方式を容易に認識することができる」という引用発明の効果を考慮すると,敢えて変えることは考えられない(変えると引用発明の効果が失われる点において,変えることの方にむしろ阻害要因がある)。したがって,「前記確定操作がなされる前に」,「画像指定画面の表示形態を変更」する構成に到ることは,当然のことにすぎない。

ウ 請求人は,「刊行物Bが開示する多画面表示中の画面(図5)は視聴中の画面であり,本願の画像指定画面の特徴である「画像指定画面の表示中の操作により全ての前記表示領域に表示する画像が選択され,前記確定操作がされた場合に,全ての前記表示領域に表示する画像を一括して決定」する点について刊行物Bに開示及び示唆はない。」と主張する。
しかしながら,引用例1(刊行物B)には,前記(6)で述べたとおりの,容易推考の契機が存在する。また,引用例1の段落【0044】の「本発明に係る装置は,上記のように受信可能な放送方式を,装置の状態として表示領域の一部に表示することができる。」という記載からみても,【図5】の構成は,引用発明において必須の構成ではなく,適宜変更可能な構成にすぎない(引用発明の発明が解決しようとする課題(段落【0008】及び【0009】)との関係においても,必須な構成であるとはいえない。)。
なお,【図5】のような表示を視聴中の画面に常時表示することは一般的ではなく,リモートコントローラ17のいずれかのボタンを押したときに表示されるのが普通である。

エ 請求人は,「刊行物Cは,表示画面(図4(a),(b)等)においてチャンネルを選択する操作を開示するが(段落[0032]等),この表示画面において,「複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に」,「他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更」する点について開示も示唆もなく,表示形態を変更するタイミングについても勿論開示及び示唆はない。」,「刊行物Dに開示された「選択画面」(図22,段落[0085]等)は,表示する候補となる画像データのサムネイルを表示し,これらサムネイルから表示する画像データを選択する画面であり,この選択画面において,「複数の前記表示領域のいずれかに表示する画像として前記入力画像が選択された場合に」,「他の前記表示領域に対応する前記画像指定画面の表示形態を変更」する点の開示及び示唆はない。」と主張する。
しかしながら,刊行物C(周知例1)及び刊行物D(周知例2)は,「映像表示部に表示可能な画面が複数ある場合の選択操作画面として,映像表示部に表示する画面の選択肢を複数選択可能なようにユーザに呈示し,ユーザが映像表示部に表示する画面を選択した上で一括して決定する」ことが周知技術であることを示す文献にすぎず,請求人が主張するような開示及び示唆がされていることを要しない。

(9) 小括
本件補正後発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのまとめ
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本願発明)は,前記「第2」1(1)に記載のとおりのものである。
なお,本件出願の発明の詳細な説明には,【図1】とともに,画像選択部(ソース選択部23)が,表示制御部(表示制御部15)の構成の一部である実施形態が開示されている。しかしながら,請求項1では,両者は,別の構成として記載されているので,本願発明の「画像選択部」と「表示制御部」は,別の構成(請求項1に記載されたとおりの構成)であると認める。
また,本願発明の「入力画像」には,「入力画像の内容」のみならず,「コンピュータ」,「ビデオ」,「HDMI」(【図3】(b))等の,「入力画像の入力元の名称」も含まれると認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例1に記載の事項及び引用発明
引用例1に記載の事項及び引用発明は,前記「第2」3(2)及び(3)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明の多画面表示制御部において,「前記確定操作がなされる前に」との要件を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成を全て含み,さらに他の限定を付したものに相当する本件補正後発明が,前記「第2」3(4)ないし(9)で述べたとおり,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであることを考慮すると,本願発明も,同様に,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
また,本願発明が奏する効果は,引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであり,顕著なものであるとはいえない。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-26 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-16 
出願番号 特願2010-228794(P2010-228794)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 中塚 直樹
樋口 信宏
発明の名称 表示装置、表示装置の制御方法、及び、プログラム  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  

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