ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B |
---|---|
管理番号 | 1303958 |
審判番号 | 不服2014-7936 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-28 |
確定日 | 2015-08-07 |
事件の表示 | 特願2010- 26661号「給湯空調機」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月25日出願公開、特開2011-163654号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯 本願は、平成22年2月9日の出願であって、平成25年7月3日付けで拒絶理由が通知され、同年9月6日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成26年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2. 本願発明について 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年9月6日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「外気と冷媒とを熱交換する第1熱交換器と、 前記第1熱交換器を経て供給される前記冷媒を圧縮する圧縮機と、 前記圧縮機で圧縮された前記冷媒が供給され、内気と前記冷媒とを熱交換する第2熱交換器と、 前記圧縮機で圧縮された前記冷媒が供給され、給湯用水と冷媒とを熱交換する第3熱交換器と、 前記第2熱交換器及び前記第3熱交換器の一方又は双方を経て供給される前記冷媒を膨張させた後に前記第1熱交換器に向けて供給する膨張弁と、 前記第3熱交換器で熱交換される前記給湯用水を貯えるとともに、前記第3熱交換器における前記熱交換により加温された前記給湯用水を貯える貯湯タンクと、 前記第3熱交換器と前記貯湯タンクの間で前記給湯用水を循環させる水循環ポンプと、 前記圧縮機から吐出される前記冷媒が流れる第1冷媒配管と、 前記膨張弁に向けて前記冷媒が流れる第2冷媒配管と、 を備え 前記第1冷媒配管は、前記第2熱交換器に向けて前記冷媒が流れる第1支流管と、前記第3熱交換器に向けて前記冷媒が流れる第2支流管と、に分岐され、 前記第2熱交換器から前記膨張弁に向けて前記冷媒が流れる第3支流管と、前記第3熱交換器から前記膨張弁に向けて前記冷媒が流れる第4支流管と、前記第2冷媒配管に合流されるとともに、 前記貯湯タンクに貯えられる前記給湯用水の温度Tの検知結果に基づき、前記第1支流管又は前記第2支流管への前記冷媒の流入を選択的に許可する第1弁手段を備える、 ことを特徴とする給湯空調機。」 3. 引用文献 (1)引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭61-43124号(実開昭62-156764号)のマイクロフィルムには(以下「引用文献1」という。)、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1a)明細書第2頁1?5行 「本考案は,ヒートポンプ装置に関し,特に,冷媒圧縮機からの高温高圧の吐出冷媒を室内熱交換器と給湯用水加温用熱交換器とに2分して暖房と給湯用水の加温を同時に行うようにしたヒートポンプ装置の改良に関するものである。」 (1b)明細書第5頁5行?第6頁1行 「尚,本実施例は,冷暖房及び給湯用水加温用ヒートポンプ装置を用いて説明するものである。 第1図を参照すると,暖房と給湯用水の加温とを同時に行う場合,室外ユニット1と貯湯槽2とを循環する給湯用水加温側ルートと,室外ユニット1と室内ユニット3とを循環する室内暖房側ルートとの2ルートが形成される。 図中に実線矢印で示すように,給湯用水加温側ルートは,冷媒が,冷媒圧縮機4,電磁弁5,給湯用水加温用熱交換器6,逆止弁7,暖房加温用膨張弁8,室外熱交換器9,電磁弁10,四方弁11,冷媒圧縮機4の順に流れる第1の冷媒サイクルと,給湯用水が貯湯槽2,循環ポンプ12,給湯用水加温用熱交換器6,感圧制水弁13,貯湯槽2の順に流れる水循環サイクルとからなっている。」 (1c)明細書第6頁7行?第7頁2行 「一方,室内暖房側ルートは冷媒が,冷媒圧縮機4,電磁弁14,室内ユニット3内の室内熱交換器15,電磁弁16,逆止弁17,暖房加温用膨張弁8,室外熱交換機9,電磁弁10,四方弁11,冷媒圧縮機4の順に流れる第2の冷媒サイクルからなっている。 ここで,冷媒圧縮機4からの高温高圧化した吐出冷媒は,電磁弁5と四方弁11及び電磁弁14とを通して,第1サイクルと第2の冷媒サイクルとに2分され,凝縮器である給湯用水加温用熱交換器6および室内熱交換器15でそれぞれ潜熱を放出し,低温高圧の冷媒となり,逆止弁7及び17を通った後合流し,暖房加温用膨張弁8を通り低温低圧の冷媒となり,室外熱交換器9で吸熱して,常温低圧の冷媒となり,冷媒圧縮機4に戻ることになる。」 なお、上記(1c)で摘示した記載中の「第1サイクル」は、引用文献1中において他に「第1サイクル」という用語が記載されていないことからみて、上記(1b)で摘示した記載中の「第1の冷媒サイクル」と同一のものと認める。 (1d)明細書第9頁9?13行 「次に第2図に示すとおり,給湯用水の加温のみの場合は,給湯用水加温側ルートだけが使用される。即ち,電磁弁14および16が閉成され,冷媒圧縮機4からの吐出冷媒は第1の冷媒サイクルのみを形成する。」 (1e)明細書第10頁2?6行 「次に,第3図に示すとおり,室内暖房のみの場合,室内暖房側ルートだけを使用し給湯用水加温側ルートは使用されない。 即ち,電磁弁5が閉成され,冷媒圧縮機4からの吐出冷媒は第2の冷媒サイクルのみを形成する。」 (1f)引用文献1記載の発明の認定 上記記載事項(1a)?(1e)を総合すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。 「暖房と給湯用水の加温とを同時に行う場合,室外ユニット1と貯湯槽2とを循環する給湯用水加温側ルートと,室外ユニット1と室内ユニット3とを循環する室内暖房側ルートとの2ルートが形成され, 給湯用水加温側ルートは,冷媒が,冷媒圧縮機4,電磁弁5,給湯用水加温用熱交換器6,逆止弁7,暖房加温用膨張弁8,室外熱交換器9,電磁弁10,四方弁11,冷媒圧縮機4の順に流れる第1の冷媒サイクルと,給湯用水が貯湯槽2,循環ポンプ12,給湯用水加温用熱交換器6,感圧制水弁13,貯湯槽2の順に流れる水循環サイクルとからなっており, 室内暖房側ルートは冷媒が,冷媒圧縮機4,電磁弁14,室内ユニット3内の室内熱交換器15,電磁弁16,逆止弁17,暖房加温用膨張弁8,室外熱交換機9,電磁弁10,四方弁11,冷媒圧縮機4の順に流れる第2の冷媒サイクルからなっており, 冷媒圧縮機4からの高温高圧化した吐出冷媒は,電磁弁5と四方弁11及び電磁弁14とを通して,第1の冷媒サイクルと第2の冷媒サイクルとに2分され,凝縮器である給湯用水加温用熱交換器6および室内熱交換器15でそれぞれ潜熱を放出し,低温高圧の冷媒となり,逆止弁7及び17を通った後合流し,暖房加温用膨張弁8を通り低温低圧の冷媒となり,室外熱交換器9で吸熱して,常温低圧の冷媒となり,冷媒圧縮機4に戻る,冷暖房及び給湯用水加温用ヒートポンプ装置であって、 給湯用水の加温のみ行う場合は,電磁弁14および16が閉成され,冷媒圧縮機4からの吐出冷媒は第1の冷媒サイクルのみを形成し, 室内暖房のみ行う場合は,電磁弁5が閉成され,冷媒圧縮機4からの吐出冷媒は第2の冷媒サイクルのみを形成する,暖房及び給湯用水加温用ヒートポンプ装置。」(以下、「引用発明」という。) 4. 本願発明と引用発明との対比 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「暖房及び給湯用水加温用ヒートポンプ装置」は、「暖房」とは「空調」を意味することは明らかであり、本願発明の「給湯空調機」に相当する。 引用発明の「室外熱交換器9」は、外気と冷媒とを熱交換するためのものであることは明らかであり、本願発明の外気と冷媒とを熱交換する「第1熱交換器」に相当する。 引用発明の「冷媒圧縮機4」は、本願発明の冷媒を圧縮する「圧縮機」に相当する。 引用発明の「室内熱交換器15」は、内気と熱交換するためのものであることは明らかであり、本願発明の内気と前記冷媒とを熱交換する「第2熱交換器」に相当する。 引用発明の「給湯用水加温用熱交換器6」は、給湯用水と冷媒とを熱交換するためのものであることは明らかであり、本願発明の給湯用水と冷媒とを熱交換する「第3熱交換器」に相当する。 引用発明の「暖房加温用膨張弁8」は、「室内熱交換器15」及び「給湯用水加温用熱交換器6」を流れ合流した低温高圧の冷媒を低温低圧の冷媒にする膨張弁であるから、本願発明の第2熱交換器及び第3熱交換器の一方又は双方を経て供給される冷媒を膨張させた後に第1熱交換器に向けて供給する「膨張弁」に相当する。 引用発明の「貯湯槽2」は、本願発明の「貯湯タンク」に相当し、「加温された」水を蓄えるものであることは明らかであり、「水循環サイクル」において「給湯用水加温用熱交換器6」を流れた水が流れることから、本願発明の「第3熱交換器で熱交換される給湯用水を貯えるとともに、第3熱交換器における熱交換により加温された給湯用水を貯える」ものといえる。 引用発明の「循環ポンプ12」は、給湯用水を「給湯用水加温熱交換器6」と「貯湯槽2」の間で循環させることから、本願発明の第3熱交換器と貯湯タンクの間で給湯用水を循環させる「水循環ポンプ」に相当する。 引用発明の「第1の冷媒サイクル」と「第2の冷媒サイクル」における、「冷媒圧縮機」から吐出されてから、2分される前の部分は、本願発明の「圧縮機から吐出される冷媒が流れる第1冷媒配管」に相当する。 引用発明の「第1の冷媒サイクル」と「第2の冷媒サイクル」における、合流してから、「暖房加温用膨張弁8」を通る前の部分は、本願発明の「膨張弁に向けて冷媒が流れる第2冷媒配管」に相当する。 引用発明の「第1の冷媒サイクル」における、「2分され」てから「給湯用水加温用熱交換器6」までの部分が、本願発明の「第2熱交換器に向けて冷媒が流れる第1支流管」に相当し、「給湯用水加温用熱交換器6」から合流するまでの部分が、本願発明の「第2熱交換器から膨張弁に向けて冷媒が流れる第3支流管」に相当し、 引用発明の「第2の冷媒サイクル」における、「2分され」てから「室内熱交換器15」までの部分が、本願発明の「第3熱交換器に向けて冷媒が流れる第2支流管」に相当し、「室内熱交換器15」から合流するまでの部分が、本願発明の「前記第3熱交換器から前記膨張弁に向けて前記冷媒が流れる第4支流管」に相当する。 引用発明の「電磁弁5」、「電磁弁14」および「電磁弁16」は、電磁弁14および16が閉成することで、給湯用水の加温のみ行う場合に第1の冷媒サイクルのみを形成し,電磁弁5を閉成することで、室内暖房のみ行う場合に第2の冷媒サイクルのみを形成していることから、本願発明の第1支流管又は第2支流管への冷媒の流入を許可する「第1弁手段」を構成する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「外気と冷媒とを熱交換する第1熱交換器と、 前記第1熱交換器を経て供給される前記冷媒を圧縮する圧縮機と、 前記圧縮機で圧縮された前記冷媒が供給され、内気と前記冷媒とを熱交換する第2熱交換器と、 前記圧縮機で圧縮された前記冷媒が供給され、給湯用水と冷媒とを熱交換する第3熱交換器と、 前記第2熱交換器及び前記第3熱交換器の一方又は双方を経て供給される前記冷媒を膨張させた後に前記第1熱交換器に向けて供給する膨張弁と、 前記第3熱交換器で熱交換される前記給湯用水を貯えるとともに、前記第3熱交換器における前記熱交換により加温された前記給湯用水を貯える貯湯タンクと、 前記第3熱交換器と前記貯湯タンクの間で前記給湯用水を循環させる水循環ポンプと、 前記圧縮機から吐出される前記冷媒が流れる第1冷媒配管と、 前記膨張弁に向けて前記冷媒が流れる第2冷媒配管と、 を備え 前記第1冷媒配管は、前記第2熱交換器に向けて前記冷媒が流れる第1支流管と、前記第3熱交換器に向けて前記冷媒が流れる第2支流管と、に分岐され、 前記第2熱交換器から前記膨張弁に向けて前記冷媒が流れる第3支流管と、前記第3熱交換器から前記膨張弁に向けて前記冷媒が流れる第4支流管と、前記第2冷媒配管に合流されるとともに、 前記第1支流管又は前記第2支流管への前記冷媒の流入を許可する第1弁手段を備える、 給湯空調機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 第1弁手段による第1支流管又は第2支流管への冷媒の流入の許可を、本願発明では、前記貯湯タンクに貯えられる前記給湯用水の温度Tの検知結果に基づき選択的に行うのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。 (2)相違点についての検討 引用発明の「貯湯槽2」のような給湯用の水を高温にして蓄えるタンクを備えた給湯装置において、給湯用の水温の検知結果に基づいて加温制御を行うことは本願出願前の周知技術(例えば、実願昭56-115870号(実開昭58-20871号)のマイクロフィルムの明細書第5頁第12行?第6頁第7行及び第1図等参照。)であり、引用発明において、貯湯槽2の加温制御を行う必要があることは明らかであるので、上記周知技術を適用することは、当業者にとって格別な困難性はない。 また、引用発明は、電磁弁14および16が閉成することで第1の冷媒サイクルのみを形成し,電磁弁5を閉成することで第2の冷媒サイクルのみを形成することができるものであるので、本願発明でいう「第1支流管又は第2支流管への冷媒の流入を選択的に許可」し得る構成を有している。 そして、引用発明は、給水用水の加温と室内暖房両方同時に行える給湯空調機であるものの、例えばシャワー使用等のために急速に湯を沸かすために、電磁弁14および16を閉成することで第2の冷媒サイクルのみを形成し、暖房に対し給湯用水加温を優先し、また、給湯用水が十分高温になれば、電磁弁5を閉成し、暖房が再開するために電磁弁14,16を開き、第1の冷媒サイクルのみを形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 このように引用発明において、給湯用水の温度の検知結果に基づき、電磁弁5、14及び16により、第1、第2の冷媒サイクルにおける冷媒の循環を選択的に許可する構成、すなわち、本願発明の上記相違点に係る構成を得ることは、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者の予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-05 |
結審通知日 | 2015-06-10 |
審決日 | 2015-06-23 |
出願番号 | 特願2010-26661(P2010-26661) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼藤 啓 |
特許庁審判長 |
千壽 哲郎 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 森本 康正 |
発明の名称 | 給湯空調機 |
代理人 | 堀川 美夕紀 |
代理人 | 大場 充 |
代理人 | 大竹 夕香子 |