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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47K |
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管理番号 | 1304827 |
審判番号 | 不服2014-16478 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-20 |
確定日 | 2015-08-27 |
事件の表示 | 特願2011-194807号「浴槽用手摺り」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日出願公開、特開2012- 24592号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年 4月14日に出願した特願2009-98387号(以下「原出願」という。)の一部を平成23年 9月 7日に新たな特許出願としたものであって、平成26年 5月 8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年 8月20日に拒絶査定不服審判請求がなされた後、当審において、平成26年11月25日付けで拒絶理由が通知され、平成27年 2月 2日に手続補正がなされ、さらに同年 2月23日付けで拒絶理由(最後)が通知され、これに対し、同年 4月27日に手続補正がなされたものである。 第2 平成27年 4月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年 4月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「浴槽の側壁の上端部に配置されるものであって、上片と前記上片の一側部から下方へ垂下する側片を設け、手摺りが設けられた本体具と、 前記側片の内側に設けられる押圧板と、 前記側片に設けられ、前記押圧板を前記側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドルと、 水平なスライド片とこのスライド片の一端から下方へ垂下して延設された受け片とを有し、前記スライド片が前記本体具の前記上片に取り付けられ、前記受け片が前記押圧板と対向配置された押圧受け具とを備え、 前記操作ハンドルは、前記側片に取り付けられた雌ねじ具を通して前記側片に挿通され、前記側片から内方に突出する側の端部に前記押圧板が連結されたボルト軸と、前記ボルト軸の前記側片から外方へ突出する側の端部に設けられ、前記ボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブと、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらないようにする回動伝達遮断機構とを有し、 前記押圧受け具の前記スライド片は、前記受け片が前記押圧板に対し近接離反するスライド方向と直交する方向のうち前記上片の上面に沿う方向への移動が規制されて前記スライド方向にスライド移動するものであって、このスライド移動された位置で前記本体具の前記上片に対し固定されるものであり、 前記回動伝達遮断機構は、前記押圧受け具の前記スライド片が前記本体具の前記上片に対し固定されて、前記側片が前記浴槽の外側に位置するように前記本体具を前記浴槽の側壁の上端部に被せて配置した状態で、前記ハンドルノブを回し操作する際に、所定の力を加えると、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらない構成としものであって、 前記回動伝達遮断機構を、前記側片の外側に配置して前記浴槽の外側に位置させるようになしたことを特徴とする浴槽用手摺り。」 から 「浴槽の側壁の上端部に配置されるものであって、上片と前記上片の一側部から下方へ垂下する側片を設け、手摺りが設けられた本体具と、 前記側片の内側に設けられる押圧板と、 前記側片に設けられ、前記押圧板を前記側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドルと、 水平なスライド片とこのスライド片の一端から下方へ垂下して延設された受け片とを有し、前記スライド片が前記本体具の前記上片に取り付けられ、前記受け片が前記押圧板と対向配置された押圧受け具とを備え、 前記操作ハンドルは、前記側片に取り付けられた雌ねじ具を通して前記側片に挿通され、前記側片から内方に突出する側の端部に前記押圧板が連結されたボルト軸と、前記ボルト軸の前記側片から外方へ突出する側の端部に設けられ、前記ボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブと、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらないようにする回動伝達遮断機構とを有し、 前記本体具の前記上片上には、前記受け片が前記押圧板に対し近接離反するスライド方向に沿って長い壁部が設けられ、前記押圧受け具の前記スライド片は、その側面を前記壁部の側面に対向配置させ、前記スライド方向と直交する方向のうち前記上片の上面に沿う方向への移動が前記壁部によって規制されて前記スライド方向にスライド移動するものであって、このスライド移動された位置で前記本体具の前記上片に対し固定されるものであり、 前記回動伝達遮断機構は、前記押圧受け具の前記スライド片が前記本体具の前記上片に対し固定されて、前記側片が前記浴槽の外側に位置するように前記本体具を前記浴槽の側壁の上端部に被せて配置した状態で、前記ハンドルノブを回し操作する際に、所定の力を加えると、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらない構成としたものであって、 前記回動伝達遮断機構を、前記側片の外側に配置して前記浴槽の外側に位置させるようになしたことを特徴とする浴槽用手摺り。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。 2 補正の目的及び新規事項の追加の有無 請求項1に係る上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「押圧受け具の前記スライド片」の、「上片の上面に沿う方向への移動」の「規制」の態様に関して、「本体具の前記上片上に」「スライド方向に沿って長い壁部が設けられ」る点、「スライド片」「の側面を前記壁部の側面に対向配置させ」る点、及び、「移動が前記壁部によって規制され」る点を限定したものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、上記補正は新規事項を追加するものでもない。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物1に記載された発明 当審における平成27年 2月23日付けの拒絶の理由に引用した、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である登録実用新案第3141419号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。また、記載事項は平成20年 2月 7日付け手続補正書に基づく。)。 (1-a)「【0004】 ところが、最近の多くの浴槽の外側壁面が強度的に不十分であって、強く締め付けすぎると浴槽外壁面が破損する懸念があることから強く締め付けられないこと、又、多くの浴槽の内壁面は上方に向って傾斜しているため、必要な強度で取り付けることが困難である、という問題があり、更に、市販されている通常の浴槽用手すりは、浴槽内壁面への取り付けが吸盤ではなく、面により与えられるだけである。そのため、入浴時に手すりに体重を預けると、手すりが浴槽から外れたり、ずれたりするというおそれがあり、不安定であるという問題がある。」 (1-b)「【0008】 以下、図面に基づき本考案を実施するための最良の形態を説明する。 図1乃至図5は本考案の浴槽用手すりの実施の一形態を示すもので、浴槽縁部にまたがるようにして設置できるように、天板7aの一端側と他端側に下向きに内側支持部7bと外側支持部7cをそれぞれ取り付けてなる支持具7を構成し、該支持具7の上記外側支持部7c取付け側の上面に、逆U字状に折り曲げてなる手すり握り部(グリップ)4を上端部に有する手すり支持部8を、上端側が内側支持部7a側へくの字状に折り曲げられた状態で取り付ける。上記支持具7の内側支持部7bの下端部には、横方向に延びる吸盤連結パイプ9を、吸盤連結パイプと支持具との連結部3にて自由に回転できるように連結支持させる。該吸盤連結パイプ9の両端部には、確認窓を有して該確認窓に色が表示されるようにしてある安全確認表示部2を備えた安全確認表示機能付吸盤1を、それぞれ取り付け、吸盤連結パイプ9の自由な回転により2個の吸盤1の吸着面が常に浴槽内壁面に対して平行になるようにする。 【0009】 更に、上記支持具7の外側支持部7cには、外壁面取り付け固定用ネジ5を外側から内側へ向けて取り付けて、該ネジ5に浴槽外壁面取り付け滑り止め板6を螺合させ、ネジ5の回転により上記浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が内外方向、すなわち、浴槽外壁面に近接離反する方向へ移動できるようにする。 【0010】 本考案の浴槽用手すりを浴槽縁に取り付けて使用するときは、支持具7の内側支持部7bに取り付けた2個の安全確認表示機能付吸盤1が浴槽内壁面側に位置するように、又、支持具7の外側支持部7cに取り付けた浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が浴槽外壁面側に位置するように、支持具7を浴槽縁をまたがせて載置する。しかる後、2個の安全確認表示機能付吸盤1を浴槽内壁面に吸着させると共に、外壁面取り付け固定用ネジ5を締め付け方向へ回転させることにより浴槽外壁面取り付け滑り止め板6を前進させて、浴槽外壁面に滑り止め板6を押し付けるようにし、浴槽縁部の側壁部を内外方向から挟持させるようにする。この際、2個の吸盤1を結ぶのに吸盤連結パイプ8を使用し、このパイプ9が連結部3で回転自在となっているので、吸盤1の吸着面は常に浴槽内壁面に対して平行になり、吸盤1を浴槽内壁面に確実に吸着させて取り付けることができる。吸盤1には、安全確認表示部2があり、吸盤1が確実に浴槽内壁面に取り付けられているとき、つまり、強度が十分に得られる状態に取り付けられたときは、確認窓から緑色に表示される。なお、不確実な取り付けや取り外した状態では、確認窓が赤色に表示されるようにしてある。」 (1-c)上記(1-b)の「上記支持具7の外側支持部7cには、外壁面取り付け固定用ネジ5を外側から内側へ向けて取り付けて、該ネジ5に浴槽外壁面取り付け滑り止め板6を螺合させ、ネジ5の回転により上記浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が内外方向、すなわち、浴槽外壁面に近接離反する方向へ移動できるようにする。」という記載事項及び、図2及び4から、「外壁面取り付け固定用ネジ5」は、軸と軸の外側端部に形成されたハンドルノブにより構成されることが記載されているといえる。 また、軸がボルトであって、「外側支持部7c」に雌ねじが設けられ、ボルトが雌ねじを通ることは明らかである。 上記の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。 「浴槽縁部にまたがるようにして設置できるように、天板7aの一端側と他端側に下向きに内側支持部7bと外側支持部7cをそれぞれ取り付けてなる支持具7を構成し、該支持具7の上記外側支持部7c取付け側の上面に、手すり握り部(グリップ)4を有する手すり支持部8を取り付けた浴槽用手摺りであって、 支持具7の外側支持部7cには雌ねじが設けられ、ボルト軸とボルト軸の外側端部に形成されたハンドルノブにより構成される外壁面取り付け固定用ネジ5を、ボルト軸が雌ねじを通るように外側から内側へ向けて取り付けて、該ネジ5に浴槽外壁面取り付け滑り止め板6を螺合させ、ネジ5の回転により上記浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が内外方向、すなわち、浴槽外壁面に近接離反する方向へ移動できるようにし、 浴槽縁に取り付けて使用するときは、支持具7の内側支持部7bに取り付けた2個の安全確認表示機能付吸盤1が浴槽内壁面側に位置するように、又、支持具7の外側支持部7cに取り付けた浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が浴槽外壁面側に位置するように、支持具7を浴槽縁をまたがせて載置し、外壁面取り付け固定用ネジ5を締め付け方向へ回転させることにより浴槽外壁面取り付け滑り止め板6を前進させて、浴槽外壁面に滑り止め板6を押し付けるようにし、浴槽縁部の側壁部を内外方向から挟持させるようにする 浴槽用手摺り。」 (2)刊行物2に記載された事項 本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開平8-266436号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (2-a)「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、入浴介助装置に関するものであり、特に、体力が低下した高齢者、身体障害者等が入浴の際に、入浴動作の息継ぎとして使用する入浴台となる入浴介助装置に関するものである。」 (2-b)「【0012】 図2において、挾持基部11は浴槽1の周縁部外に使用され、全体の外形が、管材を略逆U字状に曲折したものを更に略逆L字状に曲折し、その下端の両端を管材で接続した枠体11aと、枠体11aの上面にはステンレス板金で形成された中央部に逆凹部溝11bが配設され、そして、その逆凹部溝11bの両側に一対の取付雌捩子11cが配設されている。更に、枠体11aの横から略V字状の補助枠体11dが溶接されている。この枠体11aの上面と略V字状の補助枠体11dの上面は略同一平面になるように形成されている。略V字状の補助枠体11dは必要に応じて、その荷重に耐えるための接続杆11eを配設する場合がある。この挾持基部11は全体がステンレスで形成されている。」 (2-c)「【0014】 挾持補助材12はその全体が略凸条に形成したステンレス板を、側面からみて略L字状に折曲形成し、その上面12aが公知の浴槽1の周囲の周縁部の厚みの120?130%の長さになっている。その側面略L字状の挾持補助材12の他の垂下面12bの長さは、10cm程度に形成されている。その垂下面12bには、更に、弾性に富み滑り難いゴムキャップ13が挿着されている。挾持補助材12の略凸条の両側には、その長さ方向に2列の長孔12cが穿設されている。 【0015】 したがって、挾持基部11の逆凹部溝11bに挾持補助材12の略凸条の上面12aを重ね合せて、浴槽1の周縁部の内側の内壁面に挾持補助材12の垂下面12bをあてがい、また、浴槽1の周縁部の外側の外壁面に挾持基部11の枠体11aをあてがい、両者で浴槽1の周縁部を挾圧し、その状態で挾持補助材12の2列の長孔12cを介して2本の固定捩子14を取付雌捩子11cに螺合する。このときの浴槽1の周縁部を挾圧する挾持補助材12の垂下面12bと挾持基部11の枠体11aとの挾圧力によって安定した取付状態を得る。更に、浴槽1の周縁部との間に良好な取付け状態を得る必要がある場合には、挾持基部11の枠体11aにゴム層(ゴム筒)を付設して用いる。 【0016】 なお、前記挾持補助材12の上面の略凸状は、挾持基部11の逆凹部溝11bとの嵌合を行うものであり、かつ、挾持補助材12及び挾持基部11の機械的強度を上げるものである。また、ゴムキャップ13は局部的な圧力により浴槽1の内面を傷付けないように、その圧力を分配して弾圧するものである。」 (2-d)上記(2-c)の記載事項から、挾持基部11の逆凹部溝11bに挾持補助材12の略凸条の上面12aを重ね合せて、浴槽1の周縁部の内側の内壁面に挾持補助材12の垂下面12bをあてがい、また、浴槽1の周縁部の外側の外壁面に挾持基部11の枠体11aをあてがい、両者で浴槽1の周縁部を挾圧する際に、挾持補助材12の略凸条の上面12aをスライドさせて、浴槽1の周縁部の内側の内壁面に挾持補助材12の垂下面12bをあてがっていることは明らかである。 また、挾持補助材12の上面の略凸状は、挾持基部11の逆凹部溝11bとの嵌合を行うものであるから、挾持補助材12の略凸条の上面12aの側面と、挾持基部11の逆凹部溝11bの側面とが対向配置されていることは明らかである。 上記の事項を総合すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物2発明」という。)。 「挾持基部11の上面の逆凹部溝11bに挾持補助材12の略凸条の上面12aを重ね合せて、挾持補助材12の略凸条の上面12aの側面と、挾持基部11の逆凹部溝11bの側面とが対向配置されるように嵌合し、浴槽1の周縁部の内側の内壁面に、ゴムキャップ13が挿着された挾持補助材12の垂下面12bをスライドさせてあてがい、また、浴槽1の周縁部の外側の外壁面に挾持基部11の枠体11aをあてがい、両者で浴槽1の周縁部を挾圧し、その状態で挾持補助材12の2列の長孔12cを介して2本の固定捩子14を、逆凹部溝11bに配設された取付雌捩子11cに螺合する入浴介助装置」 (3)対比 本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。 ア 刊行物1発明における「浴槽縁部」は、本願補正発明における「浴槽の側壁」に相当する。 イ 刊行物1発明における「浴槽縁部にまたがるようにして設置」する構成は、少なくとも「浴槽縁部」の上端部に配置されるということであるから、本願補正発明における「浴槽の側壁の上端部に配置される」構成に相当する。 ウ 刊行物1発明における「天板7a」は、本願補正発明における「上片」に相当し、 以下同様にして、 「外側支持部7c」は、「側片」に、 「天板7aの」「他端側に下向きに」「取り付け」られた「外側支持部7c」は、「上片の一側部から下方へ垂下する側片」に、 「手すり握り部(グリップ)4」は、「手摺り」に、 「支持具7」は、「本体具」に、 「浴槽外壁面取り付け滑り止め板6」は、「押圧板」に相当する。 エ 刊行物1発明における「外側支持部7cに取り付けた浴槽外壁面取り付け滑り止め板6」は、浴槽外壁面側に位置するように、支持具7を浴槽縁をまたがせて載置し、浴槽外壁面に押し付けられるのであるから、「外側支持部7c」より内側にあるといえ、本願補正発明における「側片の内側に設けられる押圧板」に相当する。 オ 刊行物1発明における「外壁面取り付け固定用ネジ5」は、本願補正発明における「操作ハンドル」に相当する。 カ 刊行物1発明における「外側支持部7cに取り付けた浴槽外壁面取り付け滑り止め板6」を「浴槽外壁面に近接離反する方向へ移動できるように」する、「外側支持部7cに」「取り付け」た「外壁面取り付け固定用ネジ5」は、外側支持部7cに外壁面取り付け固定用ネジ5を取り付けて、該ネジ5に浴槽外壁面取り付け滑り止め板6を螺合させ、ネジ5の回転により上記浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が浴槽外壁面に近接離反する方向へ移動できるのであるから、「浴槽外壁面取り付け滑り止め板6」を「外側支持部7c」に「近接離反する方向へ移動」させるものといえ、本願補正発明における「側片に設けられ、前記押圧板を前記側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドル」に相当する。 キ 刊行物1発明における「内側支持部7b」は、本願補正発明における「受け片」に相当し、 以下同様にして、 「下向きに」「取り付け」られた「内側支持部7b」は、「下方へ垂下して延設された受け片」に、 「安全確認表示機能付吸盤1」は、「押圧受け具」に、 「内側支持部7bに取り付けた」「安全確認表示機能付吸盤1」は、「受け片が」「押圧受け具」「を備え」る構成に相当する。 ク 刊行物1発明における「安全確認表示機能付吸盤1」は、浴槽縁に取り付けて使用するときは、支持具7の内側支持部7bに取り付けた2個の安全確認表示機能付吸盤1が浴槽内壁面側に位置するように、又、支持具7の外側支持部7cに取り付けた浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が浴槽外壁面側に位置するように使用されるのであるから、本願補正発明における「押圧板と対向配置された押圧受け具」に相当する。 ケ 刊行物1発明における「外側支持部7cに」「設けられ」た「雌ねじ」は、本願補正発明における「側片に取り付けられた雌ねじ具」に相当し、 以下同様にして、 「ボルト軸」は、「ボルト軸」に、 「ハンドルノブ」は、「ハンドルノブ」に相当する。 コ 刊行物1発明における「外側支持部7cに」「設けられ」た「雌ねじ」「を通」される、「ボルト軸」は、本願補正発明における「側片に取り付けられた雌ねじ具を通して前記側片に挿通され」た「ボルト軸」に相当する。 サ 刊行物1発明における「浴槽外壁面取り付け滑り止め板6」を「螺合」させる「外壁面取り付け固定用ネジ5」の「ボルト軸」は、上記エより、「浴槽外壁面取り付け滑り止め板6」が「外側支持部7c」より内側にあるといえるから、本願補正発明における「側片から内方に突出する側の端部に前記押圧板が連結されたボルト軸」に相当する。 シ 刊行物1発明における「ボルト軸」「の回転により上記浴槽外壁面取り付け滑り止め板6が浴槽外壁面に近接離反する方向へ移動できる」ようにする「ボルト軸の外側端部に形成されたハンドルノブ」は、本願補正発明における「ボルト軸の前記側片から外方へ突出する側の端部に設けられ、前記ボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブ」に相当する。 ス したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、 「浴槽の側壁の上端部に配置されるものであって、上片と前記上片の一側部から下方へ垂下する側片を設け、手摺りが設けられた本体具と、 前記側片の内側に設けられる押圧板と、 前記側片に設けられ、前記押圧板を前記側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドルと、 下方へ垂下して延設された受け片とを有し、前記受け片が前記押圧板と対向配置された押圧受け具とを備え、 前記操作ハンドルは、前記側片に取り付けられた雌ねじ具を通して前記側片に挿通され、前記側片から内方に突出する側の端部に前記押圧板が連結されたボルト軸と、前記ボルト軸の前記側片から外方へ突出する側の端部に設けられ、前記ボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブとを有する浴槽用手摺り。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]: 「受け片」に関して、 本願補正発明は、「水平なスライド片とこのスライド片の一端から下方へ垂下して延設され」、「スライド片が前記本体具の前記上片に取り付けられ」、「本体具の前記上片上には、前記受け片が前記押圧板に対し近接離反するスライド方向に沿って長い壁部が設けられ、前記押圧受け具の前記スライド片は、その側面を前記壁部の側面に対向配置させ、前記スライド方向と直交する方向のうち前記上片の上面に沿う方向への移動が前記壁部によって規制されて前記スライド方向にスライド移動するものであって、このスライド移動された位置で前記本体具の前記上片に対し固定されるもの」であるのに対し、 刊行物1発明には、そのような特定がない点。 [相違点2]: 本願補正発明は、「押圧受け具の前記スライド片が前記本体具の前記上片に対し固定されて、前記側片が前記浴槽の外側に位置するように前記本体具を前記浴槽の側壁の上端部に被せて配置した状態で、前記ハンドルノブを回し操作する際に、所定の力を加えると、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらない構成」であって、「前記側片の外側に配置して前記浴槽の外側に位置させるようになした」「回動伝達遮断機構」を有するのに対し、 刊行物1発明には、そのような特定がない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について (a)刊行物2発明は、上記「2(2)」のとおりであるから、垂下面12bを有する挾持補助材12の略凸条の上面12aの側面と、挾持基部11の逆凹部溝11bの側面とが対向配置されるように嵌合し、浴槽1の周縁部の内側の内壁面に挾持補助材12の垂下面12bをスライドさせてあてがい、また、浴槽1の周縁部の外側の外壁面に挾持基部11の枠体11aをあてがい、両者で浴槽1の周縁部を挾圧し、その状態で固定する技術を含んでいる。 (b)そうすると、刊行物1発明と刊行物2発明は、共に浴槽用の介助装置に関するものであり、介助装置を浴槽の縁に取り付けるという課題が共通しているから、刊行物1発明に刊行物2発明を適用し、内側支持部7bが垂下面となる挟持補助材に略凸条の上面を設け、天板7aに逆凹部溝を設け、上面と逆凹部溝を嵌合してスライドさせてから固定することは、当業者が容易になし得たことである。 (c)したがって、刊行物1発明において、刊行物2発明を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について (a)ネジの締め付け時に、部材の損傷や破損を防止するために、ハンドルにトルクリミッタを設けたネジを採用することは、原出願の出願日前に周知の技術である(以下、「周知技術」という。)。 例えば、実願平4-85458号(実開平6-43322号)のCD-ROMには、「本考案はネジの締め付け時において、該締め付け力が一定のトルク値を越えた時に空回りして、ネジの締め付けトルクが一定となるようにした調節ネジに関し」(【0001】)、「一定量のトルク値が加わるとネジが空回りしてネジの締め付けをそれ以上行えなくなるようにすることにより、従来のようにテンションゲージが不要になると共に調整作業が簡単で、かつ、熟練を要することなく調整が行え、また、回し過ぎによるネジの損傷、更には張り過ぎによるベルトの破損を防止できるトルクリミット付き調節ネジを提供せんとするにある」(【0004】)と記載されている。また図2を参照のこと。 特開2006-272717号公報には、「締め付けトルクの大きさが標準の大きさと比べて過大となった場合には、ドクターブレード62の刃先の波打ちの程度が大きくなってしまう。」(【0013】)、「締結ねじ40は、トルクリミッタ41と、このトルクリミッタ41に接続され、当該締結ねじ40を回転させるために用いられるハンドル42と、トルクリミッタ41に連結したねじ山部分43とを有し、上部ドクターホルダー30および下部ドクターホルダー31をねじ山部分43により予め設定された締め付けトルクで締結するようになっている。ここで、締め付けトルクとは、締結ねじ40を締め付ける時に必要な回転モーメントのことをいう。 トルクリミッタ41として、例えば負荷(締め付けトルク)が規定値以上に作用した場合、回転力を伝える継ぎ手部が滑ったり、離れたりするように設計されたトルク伝動制限器等が用いられる。」(【0030】)と記載されている。 (b)刊行物1の上記(1)(1-b)には、「最近の多くの浴槽の外側壁面が強度的に不十分であって、強く締め付けすぎると浴槽外壁面が破損する懸念があることから強く締め付けられないこと・・・という問題があり」(【0004】)と記載されている。 (c)そうすると、刊行物1発明において、浴槽外壁面が破損しないように、「ボルト軸の外側端部に形成されたハンドルノブ」に対して、「ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらないようにする回動伝達遮断機構」、「回動伝達遮断機構は、前記押圧受け具の前記スライド片が前記本体具の前記上片に対し固定されて、前記側片が前記浴槽の外側に位置するように前記本体具を前記浴槽の側壁の上端部に被せて配置した状態で、前記ハンドルノブを回し操作する際に、所定の力を加えると、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらない構成としたもの」である構成、及び、「回動伝達遮断機構を、前記側片の外側に配置して前記浴槽の外側に位置させるようになした」構成を採用することは、上記(a)の周知技術を採用することで、当業者が容易にし得たことである。 (d)したがって、刊行物1発明において周知技術を採用することで、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 本願補正発明が奏する効果について 上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物2発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 エ まとめ 以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 補正却下の決定についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成27年 2月 2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「浴槽の側壁の上端部に配置されるものであって、上片と前記上片の一側部から下方へ垂下する側片を設け、手摺りが設けられた本体具と、 前記側片の内側に設けられる押圧板と、 前記側片に設けられ、前記押圧板を前記側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドルと、 水平なスライド片とこのスライド片の一端から下方へ垂下して延設された受け片とを有し、前記スライド片が前記本体具の前記上片に取り付けられ、前記受け片が前記押圧板と対向配置された押圧受け具とを備え、 前記操作ハンドルは、前記側片に取り付けられた雌ねじ具を通して前記側片に挿通され、前記側片から内方に突出する側の端部に前記押圧板が連結されたボルト軸と、前記ボルト軸の前記側片から外方へ突出する側の端部に設けられ、前記ボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブと、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらないようにする回動伝達遮断機構とを有し、 前記押圧受け具の前記スライド片は、前記受け片が前記押圧板に対し近接離反するスライド方向と直交する方向のうち前記上片の上面に沿う方向への移動が規制されて前記スライド方向にスライド移動するものであって、このスライド移動された位置で前記本体具の前記上片に対し固定されるものであり、 前記回動伝達遮断機構は、前記押圧受け具の前記スライド片が前記本体具の前記上片に対し固定されて、前記側片が前記浴槽の外側に位置するように前記本体具を前記浴槽の側壁の上端部に被せて配置した状態で、前記ハンドルノブを回し操作する際に、所定の力を加えると、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらない構成としたものであって、 前記回動伝達遮断機構を、前記側片の外側に配置して前記浴槽の外側に位置させるようになしたことを特徴とする浴槽用手摺り。」 2 刊行物 (1)刊行物1に記載された発明 刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1記載の発明は、上記「第2 3(1)」に記載したとおりである。 (2)刊行物3に記載された発明 当審における平成27年 2月23日付けの拒絶の理由に引用した、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2003-125967号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (2-a)「【0005】 【作用】 本発明の浴槽手すり(1) では、天板(3) 下面に両方のアングル部材(4,5) を取付けているので、一方のアングル部材(4) と他方のアングル部材(5) とによる段差が生じることがなく、浴槽手すり(1) を浴槽に隙間なく取付けることが出来るので、取付けの安定性が非常に高い。 【0006】 【発明の実施の形態】 〔実施例1〕 本発明を図1?図6に示す一実施例によって説明する。本実施例では、図1?図4に示すように、浴槽手すり(1) は、所定個所に位置調節長穴(2) を有する天板(3) と、略中央から略直角に屈曲した一対のアングル部材(4,5) と、該天板(3) 上側において外側に跳ね上げ可能に取付けられる上板(6) とからなり、天板(3) の所定個所にはネジ穴(7) がそれぞれ設けられ、天板(3) の位置調節長穴(2) は、浴槽手すり(1) の左右調節方向の長穴として設けられているネジ摺動部(81)と、該ネジ摺動部(81)の両端においてネジ摺動部(81)に対して直角な方向に連なる穴として同じ方向にそれぞれ設けられるネジ係止部(82) とからなり、両方のアングル部材(4,5) の所定個所には、該天板(3) の位置調節長穴(2) 内において摺動または係止される位置調節ネジ(9) が螺着されている。」 (2-b)「【0021】 そして、アングル部材(4,5) の左右位置が固定されている場合には、図10(イ)に示すように、位置調節ネジ(9) は、天板(3) の位置調節長穴(2) 上の一端のネジ係止部(82)に係止された状態で、それぞれアングル部材(4,5) に螺着されている。アングル部材(4,5) の左右位置を調節する場合、図10(ロ)に示すように、一方または両方のアングル部材(4,5) の位置調節ネジ(9) をゆるめて、位置調節ネジ(9) の係止円柱部(92)を位置調節長穴(2) のネジ係止部(82)から取外し、該位置調節ネジ(9) のネジ部(91)を天板(3) の位置調節長穴(2) のネジ摺動部(81)内を摺動させながらアングル部材(4,5) を左右方向に移動させて、位置調節長穴(2) 上の他のネジ係止部(82)の位置で位置調節ネジ(9) を一方または両方のアングル部材(4,5) に螺着して、位置調節ネジ(9) の係止円柱部(92)を位置調節長穴(2) 上の他のネジ係止部(82)に適嵌させる。このようにすれば、位置調節ネジ(9) を取外すことなく、アングル部材(4,5) の左右位置を容易に調節することが出来る。」 (2-c)上記(2-b)の記載事項及び図9から、アングル部材は左右方向のみに移動させてから固定されることは明らかである。 上記の事項を総合すると、刊行物3には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物3発明」という。)。 「略中央から略直角に屈曲したアングル部材の位置調節ネジ9をゆるめて、該位置調節ネジ9のネジ部91を天板3の位置調節長穴2のネジ摺動部81内を摺動させながらアングル部材を左右方向のみに移動させて、位置調節ネジ9をアングル部材に螺着して、位置調節ネジ9を取外すことなくアングル部材の左右位置を調節する浴槽手すり。」 3 対比 本願発明は、前記「第2 1」及び「第2 2」で検討したとおり、本願補正発明から構成の一部(限定された構成)を省いたものである。 そして、本願発明と刊行物1発明とを対比する。 本願発明と刊行物1発明とは、「第2 3(3)」での検討をふまえると、 「浴槽の側壁の上端部に配置されるものであって、上片と前記上片の一側部から下方へ垂下する側片を設け、手摺りが設けられた本体具と、 前記側片の内側に設けられる押圧板と、 前記側片に設けられ、前記押圧板を前記側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドルと、 下方へ垂下して延設された受け片とを有し、前記受け片が前記押圧板と対向配置された押圧受け具とを備え、 前記操作ハンドルは、前記側片に取り付けられた雌ねじ具を通して前記側片に挿通され、前記側片から内方に突出する側の端部に前記押圧板が連結されたボルト軸と、前記ボルト軸の前記側片から外方へ突出する側の端部に設けられ、前記ボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブとを有する浴槽用手摺り。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]: 「受け片」に関して、 本願発明は、「水平なスライド片とこのスライド片の一端から下方へ垂下して延設され」、「スライド片が前記本体具の前記上片に取り付けられ」、「押圧受け具の前記スライド片は、前記受け片が前記押圧板に対し近接離反するスライド方向と直交する方向のうち前記上片の上面に沿う方向への移動が規制されて前記スライド方向にスライド移動するものであって、このスライド移動された位置で前記本体具の前記上片に対し固定されるもの」であるのに対し、 刊行物1発明には、そのような特定がない点。 [相違点2]: 本願発明は、「前記押圧受け具の前記スライド片が前記本体具の前記上片に対し固定されて、前記側片が前記浴槽の外側に位置するように前記本体具を前記浴槽の側壁の上端部に被せて配置した状態で、前記ハンドルノブを回し操作する際に、所定の力を加えると、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらない構成」であって、「前記側片の外側に配置して前記浴槽の外側に位置させるようになした」「回動伝達遮断機構」を有するのに対し、 刊行物1発明には、そのような特定がない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について (a)刊行物3発明は、上記「2(2)」のとおりであるから、略中央から略直角に屈曲したアングル部材を左右方向のみに移動させてから固定する技術を含んでいる。 (b)そうすると、刊行物1発明と刊行物3発明は、共に浴槽用の介助装置に関するものであり、介助装置を浴槽の縁に取り付けるという課題が共通しているから、刊行物1発明の内側支持部7bに、刊行物3発明の、略中央から略直角に屈曲したアングル部材を左右方向のみに移動させてから固定することを適用し、内側支持部7bが中央から直角に屈曲したアングル部材を左右方向のみに移動させてから固定することは、当業者が容易になし得たことである。 (c)したがって、刊行物1発明において、刊行物3発明を適用し、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について (a)ネジの締め付け時に、部材の損傷や破損を防止するために、ハンドルにトルクリミッタを設けたネジを採用することは、原出願の出願日前に周知の技術である(以下、「周知技術」という。)。 例えば、実願平4-85458号(実開平6-43322号)のCD-ROMには、「本考案はネジの締め付け時において、該締め付け力が一定のトルク値を越えた時に空回りして、ネジの締め付けトルクが一定となるようにした調節ネジに関し」(【0001】)、「一定量のトルク値が加わるとネジが空回りしてネジの締め付けをそれ以上行えなくなるようにすることにより、従来のようにテンションゲージが不要になると共に調整作業が簡単で、かつ、熟練を要することなく調整が行え、また、回し過ぎによるネジの損傷、更には張り過ぎによるベルトの破損を防止できるトルクリミット付き調節ネジを提供せんとするにある」(【0004】)と記載されている。また図2を参照のこと。 特開2006-272717号公報には、「締め付けトルクの大きさが標準の大きさと比べて過大となった場合には、ドクターブレード62の刃先の波打ちの程度が大きくなってしまう。」(【0013】)、「締結ねじ40は、トルクリミッタ41と、このトルクリミッタ41に接続され、当該締結ねじ40を回転させるために用いられるハンドル42と、トルクリミッタ41に連結したねじ山部分43とを有し、上部ドクターホルダー30および下部ドクターホルダー31をねじ山部分43により予め設定された締め付けトルクで締結するようになっている。ここで、締め付けトルクとは、締結ねじ40を締め付ける時に必要な回転モーメントのことをいう。 トルクリミッタ41として、例えば負荷(締め付けトルク)が規定値以上に作用した場合、回転力を伝える継ぎ手部が滑ったり、離れたりするように設計されたトルク伝動制限器等が用いられる。」(【0030】)と記載されている。 (b)刊行物1の上記第2 3(1)(1-b)には、「最近の多くの浴槽の外側壁面が強度的に不十分であって、強く締め付けすぎると浴槽外壁面が破損する懸念があることから強く締め付けられないこと・・・という問題があり」(【0004】)と記載されている。 (c)そうすると、刊行物1発明において、浴槽外壁面が破損しないように、「ボルト軸の外側端部に形成されたハンドルノブ」に対して、「ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらないようにする回動伝達遮断機構」、「回動伝達遮断機構は、前記押圧受け具の前記スライド片が前記本体具の前記上片に対し固定されて、前記側片が前記浴槽の外側に位置するように前記本体具を前記浴槽の側壁の上端部に被せて配置した状態で、前記ハンドルノブを回し操作する際に、所定の力を加えると、前記ハンドルノブを回し操作する回動力が前記ボルト軸に伝わらない構成としたもの」である構成、及び、「回動伝達遮断機構を、前記側片の外側に配置して前記浴槽の外側に位置させるようになした」構成を採用することは、上記(a)の周知技術を採用することで、当業者が容易にし得たことである。 (d)したがって、刊行物1発明において周知技術を採用することで、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 本願発明が奏する効果について 上記相違点1及び2に係る本願発明の構成が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物3発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 エ まとめ 以上のように、本願発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物3発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-26 |
結審通知日 | 2015-06-30 |
審決日 | 2015-07-15 |
出願番号 | 特願2011-194807(P2011-194807) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(A47K)
P 1 8・ 121- WZ (A47K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 油原 博 |
特許庁審判長 |
本郷 徹 |
特許庁審判官 |
門 良成 住田 秀弘 |
発明の名称 | 浴槽用手摺り |
代理人 | 木村 豊 |
代理人 | 水尻 勝久 |
代理人 | 北出 英敏 |
代理人 | 西川 惠清 |