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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1306003
審判番号 不服2014-16929  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-26 
確定日 2015-09-28 
事件の表示 特願2011- 54534「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-191062〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年3月11日の出願であって、平成25年6月21日付けで拒絶理由が通知され、同年8月8日付けで意見書が提出されたが、平成26年5月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月26日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、手続補正がなされ、平成27年4月22日付けで拒絶理由が通知されたものの、審判請求人からの応答が無かったものである。

第2 本願発明

1.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年8月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも一方の主面に配線層を有する配線基板と、
前記配線基板の前記主面に実装された、2つ以上の半導体チップが所定の間隔をおいて重ねて配置され、かつ各半導体チップが互いにバンプを介して電気的に接続された半導体チップ積層体と、
前記半導体チップ積層体の各半導体チップ間に充填された樹脂材料であって、前記半導体チップ積層体の各半導体チップの側面の少なくとも一部を覆うアンダーフィル層と、
前記半導体チップ積層体の外側に被覆・形成されたモールド樹脂の硬化物であって、前記配線基板の主面側に設けられた封止層と
を備えた半導体装置であり、
前記アンダーフィル層は、アミン系の硬化剤を含む樹脂硬化物からなり、かつ前記樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)が65℃以上100℃以下(TMA法)であることを特徴とする半導体装置。」

2.引用例
当審の拒絶理由で引用した特開2010-141043号公報(以下、「引用例1」という。)には、「半導体装置」について、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高速化及び高密度実装化を実現するための方法として、チップ内に貫通電極を形成しバンプによるフリップチップ積層を行うCoC(チップオンチップ)構造が開発されつつある(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなCoC構造を有する半導体装置の一例の模式的な側断面図を図6に示す。また、図7に、図6中の破線で囲んだ部分の平面図を示す。
【0004】
半導体装置100は、配線基板108、半導体チップ102、レジン101、および貫通電極104を備えている。
【0005】
配線基板108の一方の主面上には接続パッド107が形成されており、一方の主面とは反対側の主面である他方の主面上には二次実装用バンプ109が形成されている。
【0006】
配線基板108上には、貫通電極104を有する半導体チップ102が複数積層されて実装されている。半導体チップ102は一方の面に回路面103が形成されている。最下層の半導体チップ102は、その貫通電極104と、配線基板108の接続パッド107とがバンプ106により接続されることでフリップチップ実装されている。また、この配線基板108上にフリップチップ実装された最下層の半導体チップ102上に、さらに半導体チップ102がフリップチップ実装されている。すなわち、最下層に配置された半導体チップ102の貫通電極104の回路面103側の部分と、積層される半導体チップ102における貫通電極104の回路面103とは反対側の部分とがバンプ106により接続されている。積層されている半導体チップ102同士は同様にしてフリップチップ実装されている。
【0007】
配線基板108と半導体チップ102との間の間隙、及び半導体チップ102との間の間隙には、アンダーフィル105が充填されている。このアンダーフィル105は、半導体チップ102の両主面を覆っている。なお、アンダーフィル105は、半導体チップ102の両主面だけでなく側面をも覆うように設けられている。
【0008】
配線基板108上にはレジン101も形成されている。このレジン101は、アンダーフィル105を介して、積層された複数の半導体チップ102を覆っている。レジン101を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等を用いることができる。」

イ.「【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の半導体装置は、配線基板と、第1の貫通電極を備え、配線基板に対して電気的に接続されている第1の半導体チップと、第2の貫通電極を備え、配線基板及び第1の半導体チップに対して電気的に接続されている、第1の半導体チップよりも平面寸法が大きい第2の半導体チップと、を有し、配線基板上に、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップが積層されており、第1の半導体チップに隣接して配置され、少なくとも第2の半導体チップと対面する位置に配置されているダミーチップを有する。」

ウ.「【0030】
第2の半導体チップ2同士の隙間、第2の半導体チップ2と第1の半導体チップ12との隙間、第2の半導体チップ2とダミーチップ11との隙間、第1の半導体チップ12と配線基板8との隙間、及びダミーチップ11と配線基板8との隙間にはアンダーフィル5が充填されている。また、アンダーフィル5は、第2の半導体チップ2、第1の半導体チップ12及びダミーチップ11の側面も被覆している。」

・上記ア(段落【0005】)及び図6によれば、配線基板108の一方の主面には接続パッド107が形成されている。

・上記ア(段落【0006】)及び図6によれば、配線基板108には半導体チップ102が複数積層されて実装されている。また、上記ア(段落【0006】),上記イ及び図6によれば、半導体チップ同士はバンプ106により電気的に接続されている。ここで、半導体チップ同士の間にはバンプが介在するから、半導体チップは所定の間隔をおいて積層されることとなる。

・上記ア(段落【0007】)、上記ウ及び図6には、半導体チップ同士の間隙にアンダーフィル105を充填すること、アンダーフィル105は半導体チップの側面を覆うことが記載されている。

・上記ア(段落【0008】)には、配線基板上にレジンを形成すること、アンダーフィルを介して積層された複数の半導体チップを前記レジンで覆うことが記載されている。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「少なくとも一方の主面に接続パッド107が形成された配線基板108と、
前記配線基板の前記主面に実装された2つ以上の半導体チップであって、各半導体チップが所定の間隔をおいて積層され、かつ各半導体チップが互いにバンプ106を介して電気的に接続される2つ以上の半導体チップと、
半導体チップ同士の間隙に充填され、半導体チップの側面も覆うように設けられたアンダーフィル105と、
積層された複数の半導体チップを覆い、配線基板108の主面に形成されるレジン101と
を備えた半導体装置。」

また、当審の拒絶理由で引用した国際公開第2008/123414号公報(以下、「引用例2」という。)には、「フリップチップ半導体パッケージ用の接続構造、ビルドアップ層材料、封止樹脂組成物および回路基板」について、図面とともに以下の事項が記載されている。

エ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
コア層およびビルドアップ層を備える回路基板と、前記回路基板に金属バンプを介して接続されている半導体素子と、前記半導体素子および前記回路基板の間に封入されている封止樹脂組成物と、を備えるフリップチップ半導体パッケージであって、前記封止樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が60℃以上150℃以下であり、室温からガラス転移温度までの線膨張係数は15ppm/℃以上35ppm/℃以下であり、前記ビルドアップ層の硬化物のガラス転移温度が170℃以上であり、ガラス転移温度以下の面方向の線膨張係数が40ppm/℃以下であり、前記コア層の少なくとも片側のビルドアップ層にスタックドビアを有するフリップチップ半導体パッケージ用の接続構造を用いることで半導体素子と封止樹脂組成物間の境界界面近傍の応力集中によるクラックや剥離の発生を確実に抑制または低減させることができる。」

オ.「【0014】
<封止樹脂組成物の組成について>
図1において、封止樹脂組成物4には、一形態として、次の特性を満たす樹脂が使用される。
(1)その硬化物のTMAにおけるガラス転移温度が60?150℃、より好ましくは70?115℃である樹脂。
(2)その硬化物の線膨張係数が15?35ppm/℃、より好ましくは20?35ppm/℃である樹脂。
線膨張係数は、例えばTMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて、10℃/分で昇温して評価することができる。
【0015】
このような特性を有する封止樹脂組成物4を用いると、半導体素子2と封止樹脂組成物4の線膨張率の差を低くすることができるため、境界界面近傍の応力集中によるクラックや剥離の発生を確実に抑制または低減を更に効果的に達成することができる。
封止樹脂組成物4の熱硬化収縮率は、回路基板1や半導体素子2の熱収縮率に比べて大きいので、環境温度などの変化により各構成部材が相反して反りが生じるため、特に各構成部材の境界近傍に応力が集中し、クラックの発生要因となりやすいという問題がある。そこで、上記の条件を満たすガラス転移温度や線膨張率が低い封止樹脂組成物4を用いることで、封止樹脂組成物4と回路基板1や半導体素子2との線膨張率などの違いから生じる熱応力を緩和することできるという効果が得られる。
また、図1において、封止樹脂組成物4は、少なくとも一種のエポキシ樹脂を含む樹脂であり、硬化剤、シランカップリング剤、および無機充填材を含有するものを使用することができる。このような封止樹脂組成物4は、信頼性向上に寄与する耐熱性や誘電特性などに優れるとともに、架橋密度の調節により硬化物のガラス転移温度や弾性率などを低くし、上記のような応力低減構造に寄与するものとすることが好ましい。
【0016】
ここで、封止樹脂組成物4について更に詳細に説明すると、上記封止樹脂組成物4は、熱硬化樹脂組成物であり、一形態としては、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)シランカップリング剤、および(D)無機充填材・フィラーを含有する液状エポキシ樹脂組成物の硬化物である。また、上記封止樹脂組成物4は、上記成分(A)?(D)に加えて、必要に応じて(E)その他の添加剤、を含有してもよい。以下、各成分について説明する。」

カ.「【0018】
封止樹脂組成物4に用いられる(B)硬化剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と共有結合を形成することが可能な官能基を1分子中に2個以上含むもの、ただし官能基が酸無水物基である場合には酸無水物基を1個以上含むものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。官能基としてはフェノール性水酸基、酸無水物基、アミノ基、具体例には、フェノール樹脂、酸無水物、1級アミン、2級アミンなどがある。
上記の硬化剤は、単独で用いても、同じ官能基を含む2種以上の硬化剤を配合して用いても良く、さらにポットライフやエポキシ樹脂との硬化性を損なわない範囲であれば、異なる官能基を含む硬化剤を2種以上配合して用いてもよい。半導体パッケージの封止用途を考慮すると、耐熱性、電気的機械的特性という観点からフェノール樹脂および芳香族ポリアミン型硬化剤が好ましい。更に密着性、耐湿性を兼ね備えるという観点からは芳香族ポリアミン型硬化剤が好ましい。(以下、省略)」

キ.「【0063】
<半導体パッケージについて>
次に、図1におけるフリップチップ半導体パッケージについて説明する。
本発明の一実施形態では、回路基板1の半導体素子接続用電極面と半導体素子2の電極面をフリップチップ接合する接合工程と、上記回路基板1と上記半導体素子2との間に封止樹脂組成物4を注入してアンダーフィル部を形成する封止工程を具備する。」

したがって、引用例2には、「半導体素子とアンダーフィル間の境界界面近傍の応力集中によるクラックや剥離の発生を確実に抑制または低減させること」(上記エ及びキ)、「アンダーフィルに用いられる硬化剤についてアミン系の硬化剤が好ましいこと」(上記カ及びキ)、「アンダーフィルのガラス転移温度をTMA法で70?115℃とすること」(上記オ(段落【0014】)及びキ)が記載されている。

さらに、当審の拒絶理由で引用した特開2010-111747号公報(以下、「引用例3」という。)には、「アンダーフィル剤組成物」について、以下の事項が記載されている。

ク.「【0002】
電気機器の小型化、軽量化、高機能化に伴い、半導体の実装方法もピン挿入タイプから表面実装が主流になっている。そのうちフリップチップは、有機基板の配線パターン面に複数個のバンプを介して半導体チップを接続する実装方式である。該接続を保護する等の目的で、有機基板と半導体チップとの隙間及びハンダバンプ間の隙間にアンダーフィル剤が充填される(特許文献1、2)。
【0003】
該アンダーフィル剤には、半導体チップ又は基板との界面で剥離が生じないこと、基板実装時にパッケージにクラックが入らないことが要求される。さらに、ハンダの鉛フリー化に伴い、低下したハンダの接着性を補うことも要求される。鉛フリーバンプも様々な種類のものが使用されているが、近年、銅ピラーバンプ(以下「銅バンプ」ともいう)とよばれる材料が主流になっている。」

したがって、引用例3には、アンダーフィル剤と半導体チップとの界面で剥離が生じないことが要求される旨記載されている。

また、当審の拒絶理由で引用した特開2007-335740号公報(以下、「引用例4」という。)には、「半導体装置および半導体装置の製造方法」について、図面とともに以下の事項が記載されている。

ケ.「【0005】
しかしながら、半導体チップとアンダーフィルとの接合状態によっては、半導体チップとアンダーフィルとが接する領域において剥離する可能性がある。例えば、使用により半導体チップが発熱を繰り返すことでアンダーフィルと接する領域に発生する応力が繰り返し変化し、剥離を起こしやすくすることが考えられる。また、封止樹脂を用いて半導体チップをモールド成形により封止する際に、使用する型の形状や成型方法によって、半導体チップとアンダーフィルとが接する領域に力が加わることで剥離を起こしやすくすることも考えられる。」

コ.「【0025】
具体的には、本実施の形態に係る封止樹脂層40は、半導体チップ30の裏面が封止樹脂層40から露出するように、半導体チップ30の側面30aをフィレット70aを介して封止する封止部40aと、側面30aにはみ出したフィレット70aの上方の領域に設けられ、封止樹脂層40の上面40bより低い凹部40cとを有する。
【0026】
これにより、封止樹脂層40は、封止樹脂層40の上面40bより低い凹部40cが設けれているので、フィレット70aの上方の封止樹脂層40の量が少なくなり、例えば、基板が反った場合には、フィレット70aが封止樹脂層40から受ける力が減少し、半導体チップ30からアンダーフィル70に含まれるフィレット70aが剥離することを抑制することができる。その結果、半導体装置10における半導体チップ30を適切に保護し、半導体チップ30が周囲の環境から受ける影響を抑制することができるので、半導体チップ30の動作安定性が向上する。」

したがって、引用例4には、半導体チップとアンダーフィルとの剥離を抑制することが記載されている。

3.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「接続パッド」は、本願発明の「配線層」に相当する。

b.引用発明の「レジン」は、本願発明の「モールド樹脂の硬化物」に相当する。

c.本願発明は、アンダーフィル層が、「アミン系の硬化剤を含む樹脂硬化物からなり、かつ前記樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)が65℃以上100℃以下」であるのに対し、引用発明はアンダーフィルの硬化剤及びガラス転移温度を特定していない。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「少なくとも一方の主面に配線層を有する配線基板と、
前記配線基板の前記主面に実装された、2つ以上の半導体チップが所定の間隔をおいて重ねて配置され、かつ各半導体チップが互いにバンプを介して電気的に接続された半導体チップ積層体と、
前記半導体チップ積層体の各半導体チップ間に充填された樹脂材料であって、前記半導体チップ積層体の各半導体チップの側面の少なくとも一部を覆うアンダーフィル層と、
前記半導体チップ積層体の外側に被覆・形成されたモールド樹脂の硬化物であって、前記配線基板の主面側に設けられた封止層と
を備えた半導体装置。」

(相違点)
アンダーフィル層について、本願発明は「アミン系の硬化剤を含む樹脂硬化物からなり、かつ前記樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)が65℃以上100℃以下(TMA法)」であるのに対し、引用発明は硬化剤及びガラス転移温度を特定していない点。

そこで、上記相違点について検討する。
半導体装置において、アンダーフィル層と半導体チップとの界面で剥離が生じないようにすることは、引用例3,4に記載されているように周知の課題である。そして、アンダーフィル層と半導体チップ積層体を有する引用発明において、周知の課題を解決するために、引用例2に記載のアンダーフィル層に用いられる硬化剤としてアミン系の硬化剤を採用し、アンダーフィル層のガラス転移温度をTMA法で70?115℃とする構成を採用し、相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-27 
結審通知日 2015-07-31 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2011-54534(P2011-54534)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 水野 恵雄
ゆずりは 広行
発明の名称 半導体装置  
代理人 石川 隆史  
代理人 大西 邦幸  
代理人 黒田 久美子  
代理人 野木 新治  
代理人 原 拓実  
代理人 高橋 拓也  

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