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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1307646 |
審判番号 | 不服2014-9356 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-20 |
確定日 | 2015-11-11 |
事件の表示 | 特願2011-531174「標本を分類するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日国際公開、WO2010/042722、平成24年 3月 1日国内公表、特表2012-505413〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年10月8日の出願(パリ条約による優先権主張 2008年10月10日 (US)アメリカ合衆国)であって、平成25年2月19日付けで拒絶理由が通知され、同年5月24日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年6月12日付けで拒絶理由が通知され、同年12月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年1月14日付けで拒絶査定されたのに対し、平成26年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成26年5月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年5月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1) 本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲は次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 コンピュータ・システムにおいて標本容器の識別子を容器キャリアの識別子と関連付けることにより、標本容器のアイデンティティを標本容器を保持する容器キャリアのアイデンティティと結合させ、ここで、標本容器の識別子はバーコードであり、容器キャリアの識別子は無線自動識別(RFID)タグであり、ここで、容器キャリアのアイデンティティは標本容器のアイデンティティと一対一の関係で結合されており; 容器キャリアをコンベヤーベルト上で運搬することによって、標本容器を含有する容器キャリアを経路に沿って搬送し; RFIDリーダーで容器キャリアのRFIDタグを検出することによって、経路上の容器キャリアの位置を検出し;そして、 コンベヤー・ベルトの片側にあるプランジャーを作動させて、容器キャリアを、経路から、プランジャーに対してコンベヤー・ベルトの反対側にある対応する分類済みストリップへ振り分けることによって、容器キャリアの検出に基づいて標本に行われるべき処理に従って標本容器を分類する、 の各工程を含む方法。 【請求項2】 複数の標本容器が搬送および分類される、請求項1記載の方法。 【請求項3】 容器キャリアを標本容器に物理的に連結させることを更に含む、請求項1または2記載の方法。 【請求項4】 標本容器の分類が、容器キャリアを標本に必要とされる温度範囲に基づいて振り分けることを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。 【請求項5】 結合が、コンピュータ・システムにおいて標本容器の識別子を容器キャリアの識別子と関連付けることを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 【請求項6】 RFIDタグが、対応する分類済みストリップに対応する情報を含み、容器キャリアが、該対応する分類済みストリップに対して、プランジャーによって経路から振り分けられる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲は、平成25年12月17日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりである。 「【請求項1】 コンピュータ・システムにおいて標本容器の識別子を容器キャリアの識別子と関連付けることにより、標本容器のアイデンティティを標本容器を保持する容器キャリアのアイデンティティと結合させ、ここで、標本容器の識別子はバーコードであり、容器キャリアの識別子は無線自動識別(RFID)タグであり、ここで、容器キャリアのアイデンティティは標本容器のアイデンティティと一対一の関係で結合されており; 容器キャリアをコンベヤーベルト上で運搬することによって、標本容器を含有する容器キャリアを経路に沿って搬送し; RFIDリーダーで容器キャリアのRFIDタグを検出することによって、経路上の容器キャリアの位置を検出し;そして、 プランジャーを作動させて容器キャリアを経路から対応する分類済みストリップへ振り分けることによって、容器キャリアの検出に基づいて標本に行われるべき処理に従って標本容器を分類する、 の各工程を含む方法。 【請求項2】 複数の標本容器が搬送および分類される、請求項1記載の方法。 【請求項3】 容器キャリアを標本容器に物理的に連結させることを更に含む、請求項1または2記載の方法。 【請求項4】 標本容器の分類が、容器キャリアを標本に必要とされる温度範囲に基づいて振り分けることを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。 【請求項5】 結合が、コンピュータ・システムにおいて標本容器の識別子を容器キャリアの識別子と関連付けることを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。」 (3) 本件補正の内容 本件補正は、次の補正をしようとするものである。 ア 請求項6を新たに追加しようとする補正。 イ 本件補正前の請求項1において、「プランジャー」の位置を「コンベヤー・ベルトの反対側」に、「分類済みストリップ」の位置を「プランジャーに対して、コンベヤー・ベルトの反対側」に限定しようとする補正。 2 補正の適否について (1) 特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」の解釈について、 「同号にいう「特許請求の範囲の減縮」とは,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるものというべきであって,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そうであってみれば,増項補正,補正後の各請求項の記載により特定される各発明が,全体として,補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても,上述したような一対一又はこれに準ずるような対応関係がない限り,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しないというべきである。」(平成16年4月14日に知財高裁で言渡された平成15年行(ケ)230号判決参照)と判示される一方、 「同号は,かっこ書を含めてその要件を明確に規定しているのであるから,問題となる補正が同号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するといえるためには,それがいわゆる増項補正であるかどうかではなく,(1)特許請求の範囲の減縮であること,(2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,(3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること,という要件(以下,上記各要件を単に「(1)の要件」のようにいう。)を満たすことが必要であり,かつそれで十分であるというべきである。」(平成27年2月18日に知財高裁で言渡された平成26年(行ケ)第10057号判決参照)(原文では、要件を示す(1)(2)(3)は、丸数字)と判示されている。 (2) まず、平成15年(行ケ)230号判決の判示に従い、補正前の請求項と補正後の請求項とが,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものであるかどうかについて検討する。 本件補正の請求項1?6に係る発明のうち、請求項1?5に係る発明は、本件補正前の請求項1?5に係る発明と一対一またはこれに準ずるような対応関係を有している。しかし、本件補正の請求項6に係る発明については、本件補正の請求項6において限定されるRFIDタグに含まれる情報を発明特定事項とする本件補正前の請求項は存在しないから、本件補正前の請求項1?5に係る発明と一対一またはこれに準ずるような対応関係を有さないことは明らかである。 (3) 次に、平成26年(行ケ)第10057号判決の判示に従い、(1)特許請求の範囲の減縮であること,(2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,(3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることという要件を充たすものであるかどうか検討する。 まず、本件補正の請求項6について検討する。 補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるという要件((2)の要件)について 本件補正の請求項6の「RFIDタグが、対応する分類済みストリップに対応する情報を含み」という記載は、RFIDタグの含まれる情報を限定するものである。しかし、本件補正前の請求項1?5には、RFIDタグに含まれる情報を限定する記載は存在しないから、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、(2)の要件を充足しない。 (4) 以上のとおり、本件補正の請求項6を追加しようとする補正は、前記いずれの判決の判示に従って判断したとしても、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。 (5) また、本件補正の請求項6を追加しようとする補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれにも該当しないことも明らかである。 (6) したがって、請求項6を新たに追加しようとする補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない補正を含み、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、上記結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載した平成25年12月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されるとおりのものである。 2 引用例の記載事項及び引用例に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-354333号公報(以下「引用例1」という。原査定では「引用文献4」として引用されている。)、特開2005-300220号公報号公報(以下「引用例2」という。原査定では「引用文献1」として引用されている。)及び実願昭63-61099号(実開平1-167381号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。原査定では「引用文献2」として引用されている。)には、以下の事項及び発明が記載されている。(下線は、参考のために当審で付与したものである。) (1)引用例1の記載事項及び引用例1に記載された発明 ア 引用例1の記載事項 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、例えば血液などの検体を、検査項目などに応じて仕分けするための検体仕分けシステムに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、血液などの検体の仕分けは、検体容器外周面に貼られたバーコードラベル等を読取ることによって行なわれていた。バーコードラベル等は情報量が少ない上、情報の読取り書き込みが比較的面倒で大型な装置を必要とする難点があった。一方、円柱状ラックと称される搬送用の検体容器ホルダーの外周に金属製の標示用リングを装着し、ホルダーが所定位置まで搬送されてきたことを容易に検知可能とする手段が知られている(特許文献1参照)。」 (イ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】 特許文献1に示されている検体容器ホルダーは、金属製の標示用リングによってその存在を容易に検知し得る。しかし標示用リングに格別の情報が格納されている訳ではない。従って当該ホルダーが保持している検体容器内の検体に関する諸情報は、検体容器外周に貼られているバーコードラベル等から入手せざるを得ない。 【0005】 本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、検体容器ホルダーの存在を容易に検知可能であると共に、当該ホルダーで保持されている検体容器内の検体に関する諸情報をも同時に知り得る手段を備えた検体仕分けシステムを提供することにある。」 (ウ)「【0008】 【発明の実施の形態】 (第一実施形態) 図1は本発明の第一実施形態に係る検体仕分けシステムの構成を示す図である。図2は同実施形態に係る検体容器ホルダーの外観を示す斜視図である。 【0009】 図1において、1は試験管からなる検体容器であり、その中には例えば血液などの検体2が入っている。この検体容器1は通常円柱状ラックと呼ばれる搬送用の検体容器ホルダー10に対し、直立状態に保持された状態で、搬送レーン30により目的地まで搬送される。搬送レーン30は平行に対向配設された一対のエッジ部を有するガイドレール31と、このガイドレール31の底部長手方向に沿って矢印で示す方向に移送されるベルトコンベア32とからなる。」 (エ)「【0011】 ところで、検体容器ホルダー10の外周面の最上部位には、情報送受用タグ20が装着されている。この情報送受用タグ20は、カード状基板にアンテナとICチップとを埋め込んだものである。上記ICチップには、保持する検体容器内の検体2に関する諸情報が書き込まれている。そしてこの諸情報は、外部に適時読出し可能になっている。 【0012】 図1に説明を戻す。搬送レーン30の所定位置の側傍には、情報送受信機40が配置されている。この情報送受信機40は、送受信アンテナ41とデータ読取り書込み機42とからなる。データ読取り書込み機42はコントローラ50に接続されている。かくして情報送受信機40は、コントローラ50からの制御信号に基づいて動作制御され、送受信アンテナ41を介し所定周波数の電波を用いて前記情報送受用タグ20から検体2に関する諸情報を読取る。読取られた情報はコントローラ50に伝達される。」 (オ)「【0014】 コントローラ50は、データ読取り書込み機42により読取られた情報送受用タグ20からの検体2に関する諸情報に基づいてロボット60に所定の指示を与える。ロボット60は本体61とアーム部62とからなり、コントローラ50からの指示にしたがって搬送レーン30で搬送されてくる当該検体容器ホルダー10にて保持されている検体容器1の仕分け、すなわち検体2の仕分けを行なう。 【0015】 (実施形態における特徴点) [1]実施形態に示された検体仕分けシステムは、 検体容器1を保持する検体容器ホルダー10に情報送受用タグ20を装着し、当該検体容器ホルダー10を搬送する搬送レーン30の側傍に情報送受信機40を配置し、前記情報送受用タグ20と前記情報送受信機40との間の情報送受信に基づいて、前記検体容器ホルダー10により保持されている検体容器1の仕分けを行なうようにしたことを特徴としている。 【0016】 上記検体仕分けシステムにおいては、検体容器ホルダー10に情報送受用タグ20を装着し、この情報送受用タグ20と搬送レーン側傍に配置された情報送受信機40との間で情報送受信を行なうことにより、当該検体容器ホルダー10で保持されている検体容器1内の検体2に関する諸情報を得るようにしている。従って、検体容器ホルダー10の存在を検知できるのは勿論、当該ホルダー10で保持されている検体容器1内の検体2に関する諸情報をも同時に、しかも迅速且つ正確に得ることができる。 【0017】 [2]実施形態に示された検体仕分けシステムは、前記[1]に記載の検体仕分けシステムであって、前記情報送受用タグ20と前記情報送受用センサー40との間の情報送受信方式は、電波式であることを特徴としている。」 イ 引用例1に記載された発明の認定 上記ア(ア)ないし(オ)を含む引用例1全体の記載を総合すると、引用例1には、 「血液などの検体を、検査項目などに応じて仕分けするための、検体容器が通常円柱状ラックと呼ばれる搬送用の検体容器ホルダーに対し、直立状態に保持された状態で、搬送レーンにより目的地まで搬送される検体仕分けシステムによる仕分け方法であって、 搬送レーンはベルトコンベアを備え、検体容器ホルダーの外周面の最上部位には、カード状基板にアンテナとICチップとを埋め込んだ情報送受用タグが装着されており、上記ICチップには、保持する検体容器内の検体に関する諸情報が書き込まれており、搬送レーンの所定位置の側傍に配置された、送受信アンテナとデータ読取り書込み機とからなる情報送受信機により情報送受用タグの検体に関する諸情報を読取り、データ読取り書込み機に接続されたコントローラに読み取った諸情報を伝達し、コントローラはこの諸情報に基づいて本体とアーム部からなるロボットに指示を与え、この指示に従ってロボットにより検体容器の仕分けを行う検体仕分け方法。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (2)引用例2の記載事項 ア 「【0022】 ホルダ本体21は、例えば合成樹脂材料からなる略円筒体形状であって、検体11を収容する収容穴21aを備えている。検体11は、例えば検査対象としての一例である血液12と、血液12を収容する収容容器の一例である試験管13を含む概念である。試験管13の開口端には栓15が取り付けられている。試験管13の外周面には、記録情報の一例としてバーコード14が貼付されている。バーコード14は、検体11の整理番号や採血者の氏名などの情報などが記録されている。 【0023】 収容穴21aは、内部に外径の異なる複数種類の検体11を収容できるように径方向に伸縮する板ばね26を備え、検体11を垂直状態に保持する保持部を構成している。なお、保持部は、収容穴21aに板ばね26を備える構造に限定されるものではない。ようは、検体11をホルダ本体21に対して垂直に保持できればよい。」 イ「【0026】 ICチップ24は、ホルダ本体21の内部に設けられており、無線で制御装置16と信号の送受信をする。ICチップ24は、制御装置16の信号に基づいて、モータ22に駆動信号および駆動停止信号を出力する。また、ICチップ24は、保持確認センサと電気的に接続されており、検体11が保持されると、または検体11が取り出されると、それぞれの情報を制御装置16に送信する。」 ウ「【0046】 検体搬入部31では、制御装置16の制御によって、検体11が自走式検体ホルダ20に移載される。このとき、試験管13に貼付されたバーコード14が読み込み装置33に読み込まれる。読み込み装置33は、読み込んだ検体11の情報を制御装置16に送信する。制御装置16は、検体11の情報を受信すると、該情報を自走式検体ホルダ20のICチップ24に送信する。ICチップ24は、検体11の情報を受信すると、該情報を記憶する。なお、検体11は、例えば、処理部Aと、処理部Cとにおいて、処理を受ける必要があるものとする。」 エ「【0058】 また、自走式検体ホルダ20は、ICチップ24を内蔵して、検体11の情報を記憶することによって、それぞれ分岐部30a?30dに到達する度にバーコード14が読み込まれる必要がなくなる。つまり、自走式検体ホルダの搬送システム10は、バーコード14を読み込むために、自走式検体ホルダ20を回転させる必要がない。それゆえ、自走式検体ホルダ20を回転させる機構を別途に必要としないので、自走式検体ホルダの搬送システム10は、構成を簡素化することができる。」 (3)引用例3の記載事項 ア「この考案は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、採血された検体の検査別仕分け作業を、全く人手を介することなく自動化することにより、この種の作業性を大幅に簡便化・迅速化でき、また、血液接触感染を確実に防止することもできる安全な容器自動仕分け装置を提供しようとするものである。」(明細書第2頁第16行?第3頁第3行) イ「この採血管自動仕分け装置Aは、ホルダ1に保持された採血管2を所要数ストックする採血管供給部Bと、この採血管供給部Bから採血管2を移送路Rに沿って一本ずつ下流側へ移送する手段(図示せず)と、この移送路Rの中途部に配設された採血管識別手段Cと、この採血管識別手段Cの下流側に配設された自動栓抜装置Dと、この自動栓抜装置Dの下流側に形成された複数の検査別仕分けストッカー部Eと、上記移送路Rを流れる採血管2を上記採血管識別手段Cからの情報に基き所定の検査別仕分けストッカー部Eへと移送する手段(図示せず)と、採血管2が抜き取られた上記ホルダ1を採血管供給部Bへと戻すホルダ戻しラインGと、から構成されている。」(明細書第4頁第14行?第5頁8行) ウ「この移送路Rは、公知の無端ベルトコンベアで形成されており、その駆動タイミングは、各供給移送路10と同期して駆動するように前記制御装置によって駆動制御される。」(明細書第6頁第2?5行) エ「生化学検査用採血管ストッカー部22と蛋白分画用採血管ストッカー部23及び用手法用採血管ストッカー部24は、図示の実施例では夫々35本のホルダ1がストックできる3本のベルトコンベアで構成されており、各ストッカー部22、23、24の入口まで移送され到達した上記各ホルダ1は、例えば、アクチュエータ等で構成されてなる図示外の押圧機構によって移送路Rから各ストッカー部22、23、24へと押し込まれストックされる。」(明細書第11頁第4?13行) 3 本願発明と引用発明との対比 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「検体容器」、「検体容器ホルダー」、「搬送レーン」、及び「ベルトコンベア」は、本願発明の「標本容器」、「容器キャリア」、「経路」、及び「コンベアーベルト」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「検体容器」を「保持」した状態の「検体ホルダー」を、「搬送レーン」の「ベルトコンベア」によって「搬送」することは、本願発明の「容器キャリアをコンベヤーベルト上で運搬することによって、標本容器を含有する容器キャリアを経路に沿って搬送」することに相当する。 イ 引用発明の「カード状基板にアンテナとICチップとを埋め込んだ情報送受用タグ」及び「送受信アンテナとデータ読取り書込み機とからなる情報送受信機」は、本願発明の「容器キャリアの識別子」である「無線自動識別(RFID)タグ」及び「RFIDリーダー」にそれぞれ相当する。そして、引用発明が、「情報送受用タグ」の「諸情報」を読み取ることで「検体容器ホルダー」の存在を検知していることは明らかであるから、引用発明の「搬送レーンの所定位置の側傍に配置された、送受信アンテナとデータ読取り書込み機とからなる情報送受信機により情報送受用タグの検体に関する諸情報を読取」ることと、本願発明の「RFIDリーダーで容器キャリアのRFIDタグを検出することによって、経路上の容器キャリアの位置を検出」することとは、「RFIDリーダーで容器キャリアのRFIDタグを検出することによって、経路上の容器キャリアを検出」する点で共通する。 ウ 引用発明の「血液などの検体を、検査項目などに応じて仕分けするため」に「データ読取り書込み機に接続されたコントローラに読み取った諸情報を伝達し、コントローラはこの諸情報に基づいて本体部とアーム部からなるロボットに指示を与え、この指示に従ってロボットにより検体容器の仕分けを行う」ことと、本願発明の「プランジャーを作動させて容器キャリアを経路から対応する分類済みストリップへ振り分けることによって、容器キャリアの検出に基づいて標本に行われるべき処理に従って標本容器を分類する」こととは、「容器キャリアの検出に基づいて標本に行われるべき処理に従って標本容器を分類する」点で共通する。 以上から、本願発明と引用発明とは、次の(2)に記載する点で一致し、続く(3)に記載する各点で相違する。 (2)一致点 本願発明と引用発明とは、 「容器キャリアの識別子は無線自動識別(RFID)タグであり、 容器キャリアをコンベヤーベルト上で運搬することによって、標本容器を含有する容器キャリアを経路に沿って搬送し; RFIDリーダーで容器キャリアのRFIDタグを検出することによって、経路上の容器キャリアを検出し;そして、 容器キャリアの検出に基づいて標本に行われるべき処理に従って標本容器を分類する、 の各工程を含む方法。」 という点が一致する。 (3)相違点 ア 「標本容器」と「識別子は無線自動識別(RFID)タグであ」る「容器キャリア」の関係について、本願発明は、「コンピュータ・システムにおいて標本容器の識別子を容器キャリアの識別子と関連付けることにより、標本容器のアイデンティティを標本容器を保持する容器キャリアのアイデンティティと結合させ、ここで、標本容器の識別子はバーコードであり、」「ここで、容器キャリアのアイデンティティは標本容器のアイデンティティと一対一の関係で結合されて」いるのに対して、引用発明は、(本願発明の「標本容器」に相当する)検体容器がバーコードの識別子を有するか不明であり、検体容器のアイデンティティと(本願発明の「容器キャリア」に相当する)検体容器ホルダーのアイデンティティの両アイデンティティの扱いについても不明である点。 イ RFIDリーダーで容器キャリアのRFIDタグを検出することによる、経路上の容器キャリアの検出に関して、本願発明は、容器キャリアの位置を検出しているのに対して、引用発明は、(本願発明の「容器キャリア」に相当する)検体容器ホルダーの位置を検出しているか不明である点。 ウ 標本容器の分類について、本願発明は、「プランジャーを作動させて容器キャリアを経路から対応する分類済みストリップへ振り分ける」のに対して、引用発明は、ロボットにより仕分けを行う点。 4 相違点についての判断 (1)相違点アについて 血液などの検体の採取時に、検体容器ホルダーにセットされた検体容器ではなく、検体容器単体で扱い、どの被検者からの検体であるかを特定するために、標本容器にバーコードラベル等を設け、このバーコードにより仕分けを行うことは慣用的な方法であり、このことは、上記2(1)ア(ア)で摘記した引用例1の段落【0002】の記載等からも把握でき、本件請求人も明細書の翻訳文の段落【0044】?【0045】において「従来の工程」として自認している。そして、上記2(2)ア?エに摘記したように引用例2には、(本願発明の「標本容器」に相当する)試験管に貼付されたバーコードに記録された情報を、制御装置(本願発明の「コンピュータ・システム」に相当する)等を用いて(本願発明の「容器キャリア」に相当する)ホルダ本体のICチップにも記録することで、バーコードの情報とICチップの情報を対応させ、試験管の仕分けをICチップの情報読み出しによって行うようにすることで、システム構成の簡便化を図る技術が記載されている。 引用発明においても、検体の採取時に検体がどの被検者のものかを特定する必要があることは自明な課題であるから、検体容器に識別子を設けることは当業者が当然なすべきことあって、その具体的手段として引用例2に記載の上記技術を適用して、検体容器にバーコードを設けるとともに、バーコードの情報と(本願発明の「無線自動識別(RFID)タグ」に相当する)情報送受用タグの情報を対応付けて仕分けを行うことは当業者が容易になし得ることである。その際、具体的な対応付け方法として、搬送時にバーコードとRFIDタグを併用して、両者のバーコードとRFIDのIDを一対一に対応付けてコンピュータで管理することは一般的な物品の管理方法として、分野を問わず広く行われている周知技術(例えば、特開2006-69726号公報、特表2008-508164号公報、特開2005-346614号公報を参照。)であることに鑑みると、(検体容器の識別子である)バーコードと(検体容器ホルダーの識別子である)情報送受用タグのIDをコンピュータ・システムで対応付けることによって、検体容器のアイデンティティと検体容器ホルダーのアイデンティティを一対一の関係で結合することは適宜なし得ることにすぎない。 (2)相違点イについて 引用発明は、ロボットにより仕分けを行うものであり、ロボットのアーム部により検体容器ホルダーを把持できるように、検体容器ホルダーの位置を適切に把握する必要があることは明らかであるから、引用発明における情報送受信用タグの検出による検体容器ホルダーの検出において、情報送受信機による情報送受用タグの検出可能領域とベルトコンベアの速度を踏まえて、(本願発明の「経路」に相当する)搬送レーン上の(本願発明の「容器キャリア」に相当する)検体容器ホルダーの位置を検出することは当業者が適宜なし得ることである。 (3)相違点ウについて 上記2(3)ア?エに摘記したように引用例3には、仕分け作業を簡便化・迅速化するためにベルトコンベアで移相される採血管のホルダをアクチュエータ等で構成される押圧機構によって検査別のストッカーに押し込んで仕分けする技術が記載されている。 引用発明において、仕分け作業を簡便化・迅速化するために引用例3のような押圧機構による仕分けに変更することは当業者が適宜なし得る設計変更にすぎず、搬送装置における押圧機構としてプランジャーは極めて一般的なものである。 してみると、引用発明において、プランジャーを作動させて(本願発明の「容器キャリア」に相当する)検体容器ホルダーを(本願発明の「経路」に相当する)搬送レーンから対応する(本願発明の「分類済みのストリップ」に対応する)検査別のストッカーに振り分けることは、当業者が容易に想到しうることである。 なお、本願発明のストリップについて、発明の詳細な説明を参酌して、実施例のような長尺なトレイ状のものであると解釈しても、引用発明おいて、検査別のストッカーに振り分ける際のストッカーの具体的構成は、仕分け装置や検査装置などの検査関連システム全体の作業態様等を考慮して、当業者が適宜決定しうる設計的事項であり、本願実施例のような平らな底面を有する長尺なトレイ状のものとすることは当業者が適宜なしうることにすぎない。 (4)本願発明が奏する作用効果 本願発明によって奏される効果は、引用例1ないし引用例3の記載事項や周知技術の奏する作用効果から予想される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものではない。 (5)請求人の主張について 請求人は、審判請求の理由において、「そもそも、引用文献4においては、情報送受用タグを付されているのは検体容器ホルダのみであり、検体容器には付されていません。しかも、引用文献4はバーコードの欠点を解決するためになされた発明ですから(引用文献4段落0002など)、引用文献4には、あえて本願発明のように標本容器にバーコードを使用させようとする動機付けは存在しません。」と主張している。しかし、この主張でいう引用文献4、つまり、本審決における引用例1は、バーコードによる仕分けを改良するものであるが、仕分けにバーコードを用いないことを示すにとどまり、検体採取時の検体の特定にも用いられるバーコードの存在まで否定するものではない。むしろ、検体採取した後、検体仕分け時や検査時に検体容器ホルダーに検体容器を収容するという一般的な検査態様を考慮すると、検体容器ホルダー収容前の検体容器の同定には何らかの識別子が必要であることは明らかであるから、バーコードを設ける積極的な動機付けを内在しているというべきである。よって、請求人の上記主張は採用できない。 また、審判請求の理由において、「コンベヤー・ベルト上のRFIDの情報に基づいて分類しているため、効率的で早いプロセスとなり、引用文献4に記載の発明と比較して、コストも抑えられます(RFIDタグは、引用文献4で使用される情報送受用タグと比較して、データ送信上効率的であり、コストもかかりません)。」とも主張している。しかし、本願発明は、RFIDの具体的構造を限定するものではなく、引用発明における「カード状基板にアンテナとICチップとを埋め込んだ情報送受用タグ」も、アンテナとICチップを有したタグであり、一般的にRFIDタグと呼ばれるタグに分類されるものであるから、出願人の上記主張は採用できない。 さらに、審判請求の理由においては、本願発明と引用発明におけるコンベアを用いた仕分けとロボットアームにより仕分けの差異についても主張しているが、この点は、上記相違点(3)に検討したとおりである。 (6)まとめ よって、本願発明は、引用発明、引用例2及び3の記載事項、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 平成26年5月20日付け手続補正書の請求項1に係る発明について 第2のとおり、平成26年5月20日にされた手続補正は却下されるが、念のため、平成26年5月20日付け手続補正書の請求項1に係る発明(以下「補正本願発明」という)についても検討しておく。 補正本願発明は、上記第2[理由]1(1)に記載した平成26年5月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されるとおりのものであり、「コンベヤー・ベルトの片側にあるプランジャーを作動させて、容器キャリアを、経路から、プランジャーに対してコンベヤー・ベルトの反対側にある対応する分類済みストリップへ振り分ける」(下線部は補正箇所を示す。)と、本願発明における「プランジャー」と「分類済みストック」の位置を限定したものである。 しかしながら、引用例3の第1図から、搬送路Rの片側に各ストッカー部が設けることが把握でき、プランジャーはプランジャーによって物品を移動させる方向の反対側に設けることが一般的であることを踏まえると、上記限定事項は、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 よって、補正本願発明も、引用発明、引用例2及び3の記載事項、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上の通りであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-10 |
結審通知日 | 2015-06-16 |
審決日 | 2015-06-29 |
出願番号 | 特願2011-531174(P2011-531174) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
P 1 8・ 572- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷 潮 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
松本 隆彦 ▲高▼橋 祐介 |
発明の名称 | 標本を分類するシステムおよび方法 |
代理人 | 北野 健 |
代理人 | 金本 恵子 |
代理人 | 伊藤 奈月 |
代理人 | 松任谷 優子 |
代理人 | 田中 玲子 |
代理人 | 大野 聖二 |