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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01C
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G01C
管理番号 1308653
審判番号 無効2015-800070  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-20 
確定日 2015-12-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4019528号発明「ナビゲーション装置および方法、並びに提供媒体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4019528号(請求項の数[6]、以下、「本件特許」という。)は、平成10年11月20日に特許出願された特願平10-330492号に係るものであって、その請求項1?6に係る発明について、平成19年10月5日に特許権の設定登録がなされた。
そして、平成27年3月20日に、本件特許の請求項1?6に係る発明の特許に対して、本件特許無効審判請求人(以下「請求人」という。)により本件特許無効審判〔無効2015-800070号〕が請求されたものであり、本件特許無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)により指定期間内の平成27年6月8日付けで審判事件答弁書が提出され、同年8月25日付けで被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、同年9月15日付けで請求人より口頭審理陳述要領書及び口頭審理陳述要領書(2)が提出され、同年9月15日に口頭審理が行われたものである。

第2 当事者の主張の概要
1.請求人の主張
請求人は、特許4019528号の請求項1?6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、以下の無効理由を主張した。

[無効理由1]
無効理由1-1:本件の請求項1?6に係る各特許発明は、甲第1号証に記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
無効理由1-2:本件の請求項1?6に係る各特許発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[無効理由2]
無効理由2-1:本件の請求項1?3、5及び6に係る各特許発明は、甲第3号証に記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
無効理由2-2:本件の請求項1?2、5及び6に係る各特許発明は、甲第3号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
無効理由2-3:本件の請求項3に係る特許発明は、甲第3号証に記載の発明、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
無効理由2-4:本件の請求項4に係る特許発明は、甲第3号証に記載の発明及び甲第1号証に記載の発明に基づいて、若しくは甲第3号証に記載の発明、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平5-297800号公報
甲第2号証:特開平9-304098号公報
甲第3号証:特開平9-190599号公報
甲第4号証:特開平6-68387号公報
甲第5号証:特開平8-292786号公報
甲第6号証:特開平9-297035号公報
甲第7号証:特開平9-34491号公報

2.被請求人の主張
これに対して、被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の無効理由に対して以下のように反論した。

[無効理由に対する反論]
請求人の主張する無効理由には理由がない。


第3 本件に係る発明
本件特許の請求項1?6に係る発明は特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。(「A:」?「E’’:」の文字は当審で付与。)
「【請求項1】
A:目的地までのルートを探索する探索手段と、
B:前記探索手段により探索された前記ルートのパターンを判定する判定手段と、
C:前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出手段と、
D:前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成手段と、
E:前記作成手段により作成された前記ルートの要約を出力する出力手段と
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
F:前記判定手段は、前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる道路の種類と交差点に基づいて判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
G:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
H:前記作成手段は、前記探索手段により探索された前記ルートの要約に、少なくとも、前記ルートに含まれる道路の入口と出口を含める
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
A’:目的地までのルートを探索する探索ステップと、
B’:前記探索ステップで探索された前記ルートのパターンを判定する判定ステップと、
C’:前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップと、
D’:前記抽出ステップで抽出された前記情報を、前記判定ステップで判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成ステップと、
E’:前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップと
を含むことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項6】
A’:目的地までのルートを探索する探索ステップと、
B’:前記探索ステップで探索された前記ルートのパターンを判定する判定ステップと、
C’:前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップと、
D’:前記抽出ステップで抽出された前記情報を、前記判定ステップで判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成ステップと、
E’’:前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップと
を含む処理をナビゲーション装置に実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムを提供することを特徴とする提供媒体。」(以下、「本件特許発明1」等という。)


第4 無効理由1-1についての当審の判断
1.各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、「経路案内装置」に関して、次の事項が記載されている。(下線部は当審が付与した。)
(ア)「【請求項1】道路を特定する道路特定情報、道路の種別を表す道路種別情報、道路が交差あるいは分岐する節点を特定する節点特定情報及び該節点における道路接続関係を表す道路接続情報を含む道路情報を記憶した記憶手段と、
道路地図上の2地点を入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された2地点の座標及び前記記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、該2地点を接続可能な道路を節点毎に選択してゆき、該2地点の一方の地点から他方の地点に至る経路を探索して、節点特定情報と道路特定情報との組合せからなる経路データを作成する経路探索手段と、
前記経路探索手段により探索された経路を構成する各節点毎に、該節点の前後の道路の関係及び該道路に対応する道路種別情報に基づいて該節点の価値を算出する価値算出手段と、
前記価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する要約手段と、
前記要約手段により要約された経路データに含まれる節点特定情報及び道路特定情報を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする経路案内装置。」
(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の経路案内装置では、画面に現在地の周辺が表示されるだけで、この画面からこの先どこで進路を変更してどちらの方面に進行すればよいのかを予想することができないため、運転者は常にディスプレイの画面に注意を向けていなければならないという問題点があった。
【0004】また、このような問題点が生じないようにするために、探索した経路に含まれる道路や交差点を特定する情報を表示することが考えられるが、すべての情報を表示したのでは、情報量が多すぎるためにかえって見にくくなる。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、現在地と目的地とを結ぶ経路を探索し、その探索した経路の全体を分かりやすく案内することのできる経路案内装置を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0008】上記外部記憶装置7には、全国を所定の大きさのブロック毎に分割し、その分割された各領域を1区画として作成された道路情報が記憶されている。道路情報には、道路網を構成する分岐点あるいは交差点(ノード)に関するノード情報と、各ノードに接続された道路(リンク)に関するリンク情報とが含まれている。各ノード及び各リンクは、図3に例示するように、各ノード毎,リンク毎に付されたノード番号(n01,n02,…)とリンク番号(l01,l02,…)とによって特定されるようになっている。
【0009】上記ノード情報は、図4に例示するように、ノードを特定するためのノード番号情報と、国道交差点等の交差点の種別を表すノード種別情報と、ノードの名称を表すノード名称情報と、そのノードに接続しているリンクを特定するための接続リンク情報と、そのノードで右折した場合に行くことができる名古屋駅,小牧等の場所の名称及び右折前後のリンクの関係を表す右折情報と、そのノードで左折した場合に行くことができる千種,小牧等の場所の名称及び左折前後のリンクの関係を表す左折情報と、通行規制の有無を表す通行規制情報と、そのノードの位置を表す位置情報等からなる。
【0010】また、上記リンク情報は、図5に例示するように、リンクを特定するためのリンク番号情報と、国道等の道路の種別を表すリンク種別情報と、道路の幅員を表す幅員情報と、該リンクの走行距離を表す距離情報と、該リンクが一方通行規制されているか否かを表す一方通行情報と、該リンクに接続された一方のノードを特定するための先頭接続ノード番号情報と、該リンクに接続された他方のノードを特定するための末尾接続ノード番号情報と、該リンクの名称を表すリンク名称情報等からなる。
【0011】更に、外部記憶装置7には、図6に示すように、高速出入口,有料出入口,国道交差点の如く、ノードの種別に対応して予め定められた係数を記憶したノード種別係数テーブルと、ノード名称の有無に対応して予め定められた係数を記憶したノード名称有無係数テーブルと、右左折の有無に対応して予め定められた係数を記憶した右左折係数テーブルとが格納されるとともに、図7に示すように、高速道路,国道,主要道の如く、道路の種別に対応して予め定められた係数を記憶したリンク種別係数テーブルと、道路の幅員に対応して予め定められた係数を記憶した幅員係数テーブルと、通行規制の有無に対応した予め定められた係数を記憶した通行規制係数テーブルと、一方通行規制の有無に対応して予め定められた係数を記憶した一方通行係数テーブルとが格納されている。各テーブルにおけるコスト係数は、走り易さを表す指標であり、情報価値係数は、情報の有用性の高さを表す指標である。」
(エ)「【0014】まず、図8に示すステップS100の経路探索処理を実施する。・・このために、図9に示すように、まず、ステップS101において・・する。
【0015】次に、・・・する。
【0018】・・・次に、ステップS109において、上記ステップS108におけるノードN2を特定するノード番号とノードN1からノードN2までのリンクを特定するリンク番号とを図示しない経路バッファに書き込む。・・・
【0022】・・・を行う。
【0023】このようにして、・・・最も走行し易い経路を探索する。次に、ステップS111において・・・して、経路スタッカに格納する。・・・現在地から目的地に至る経路が、ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られる。」
(オ)「【0024】現在地と目的地とを結ぶ経路が探索されると、次に、図8に示すステップS200において、経路スタック内のノード番号のデータの個数を計数する。次に、ステップS300において、ノード番号データの個数が10個以下であるか否かを判別する。ノード番号データの個数が10個以下である場合には、ステップS500に進んで、表示処理を行うが、ノード番号データの個数が、10個を超えている場合には、ステップS400に進んで、要約処理を行う。
【0025】この要約処理は、図10に示すように、まず、ステップS410において、経路スタック内の各ノード番号データについて、情報価値を算出する。この情報価値の算出は、図6に示す各テーブルの情報価値係数を用いて、下記式(2)により行う。
【0026】情報価値=ノード種別係数×ノード名称有無係数×右左折係数 …(2)
尚、広い道路から狭い道路に分岐する場合には、迷い易いので、その迷い易さを表す係数を予め定め、該係数を式(2)の右辺に乗ずるようにしてもよい。次に、ステップS420において、現在地ノード及び目的地ノードを除く各ノードについて算出した情報価値の内から最低の情報価値のノードを選び出す。
【0027】次に、ステップS430において、この最低の情報価値のノードで右折あるいは左折するかを、該ノードに対応するノード番号データの直前直後にあるリンク番号データに基づいて判別する。右折または左折するノードでなければ、ステップS460に進み、該最低情報価値のノードに対応したノード番号データを経路スタックから削除する。
【0028】一方、ステップS430において、右折または左折するノードであることを判別した場合には、ステップS440に進み、経路スタッカに格納された該最低の情報価値のノードに対応したノード番号データの直後にあるノード番号データを探し、双方のノード番号データ間にあるリンク番号データを削除する。
【0029】次に、ステップS450に進み、該最低の情報価値のノードに対応したノード番号データの直前にあるノード番号データを探し、双方のノード番号データ間にあるリンク番号データを削除する。そして、次に、ステップS460に進み、該最低の価値情報のノードに対応したノード番号データを経路スタックから削除する。
【0030】ステップS200,S300及びS400の動作を繰り返すことにより、情報価値の低い側から、順次ノード番号データ及びリンク番号データが削除される。このようにして、情報価値の低いノード番号データ等が削除された経路スタックの状態を図12(b)に示す。」
(カ)「【0031】このようにして、情報価値の高い10個のノードデータが得られた場合には、図8のステップS300からステップS500に進み、出力処理を実施する。出力処理では、まず、ステップS510において、経路スタックの先頭データ(現在地のノード番号データ)にポインタSPを置く。次に、ステップS520において、ポインタSPが指しているノード番号データを読み出し、表示装置9の表示制御部(図示せず)に出力する。
・・・
【0036】図13に示すように、表示装置9の画面には、現在地及び目的地の名称と、現在地から目的地までの経路上にある主要な分岐点の名称と、各分岐点間の距離と、各分岐点で進行すべき道路の名称と向かうべき方面を表す代表的な地名とが表示される。・・・
【0037】従って、運転者は、表示装置9に表示された案内を見て、進行しようとしている経路の全体を把握でき、走行中に表示される道路地図に注意していなくても、道路上に設置されている案内板をたよりに目的地に向かうことができる。・・・
【0038】
【発明の効果】以上のように、本発明では、2地点の一方の地点から他方の地点に至る経路を探索して、節点特定情報と道路特定情報との組合せからなる経路データを作成し、探索された経路を構成する各節点毎に、該節点の前後の道路の関係と、該道路に対応する道路種別情報とに基づいて、該節点の価値を算出し、算出した価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除して所定数の経路データに要約し、要約した経路データに含まれる節点特定情報及び道路特定情報を出力するようにした。従って、運転者は、出力された情報により、進行しようとしている経路の全体を把握でき、走行中に表示される道路地図に注意していなくても、道路上に設置されている案内板をたよりに容易に目的地に到達することができる。」

(キ)記載事項(ア)の「経路案内装置」は、「・・経路探索手段・・を備えた」ものであって、記載事項(エ)の「ステップS100の経路探索処理」を実施するものであり、「図9に示すように・・・ステップS109において、上記ステップS108におけるノードN2を特定するノード番号とノードN1からノードN2までのリンクを特定するリンク番号とを図示しない経路バッファに書き込む。・・このようにして、・・・最も走行し易い経路を探索・・経路スタッカに格納する。・・・現在地から目的地に至る経路が、ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られる。」ものであるので、ノードN2を特定するノード番号とノードN1からノードN2までのリンクを特定するリンク番号とを図示しない経路バッファに書き込む構成、及び、ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路を経路スタッカに格納する構成を備えるものといえる。

上記記載事項から、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「道路を特定する道路特定情報、道路の種別を表す道路種別情報、道路が交差あるいは分岐する節点を特定する節点特定情報及び該節点における道路接続関係を表す道路接続情報を含む道路情報を記憶した記憶手段と、
道路地図上の2地点を入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された2地点の座標及び前記記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、該2地点を接続可能な道路を節点毎に選択してゆき、該2地点の一方の地点から他方の地点に至る経路を探索して、節点特定情報と道路特定情報との組合せからなる経路データを作成する経路探索手段と、
前記経路探索手段により探索された経路を構成する各節点毎に、該節点の前後の道路の関係及び該道路に対応する道路種別情報に基づいて該節点の価値を算出する価値算出手段と、
前記価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する要約手段と、
前記要約手段により要約された経路データに含まれる節点特定情報及び道路特定情報を出力する出力手段と、
を備えた経路案内装置であって、
ノードN2を特定するノード番号とノードN1からノードN2までのリンクを特定するリンク番号とを図示しない経路バッファに書き込む構成、及び、ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路を経路スタッカに格納する構成を備え、
ノード番号データの個数が10個以下であるか否かを判別し、
ノード番号データの個数が10個以下である場合には、表示処理を行い、
ノード番号データの個数が、10個を超えている場合には、要約処理を行い、
要約処理は、現在地ノード及び目的地ノードを除く各ノードについて算出した情報価値の内から最低の情報価値のノードを選び出し、
右折または左折するノードでなければ、最低情報価値のノードに対応したノード番号データを経路スタックから削除し、
右折または左折するノードであることを判別した場合には、該最低の情報価値のノードに対応したノード番号データの直後にあるノード番号データを探し、双方のノード番号データ間にあるリンク番号データを削除し、
該最低の情報価値のノードに対応したノード番号データの直前にあるノード番号データを探し、双方のノード番号データ間にあるリンク番号データを削除し、
該最低の価値情報のノードに対応したノード番号データを経路スタックから削除するものである経路案内装置。」(以下、これを「甲第1号証記載の発明」という。)

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、「複数経路提供装置」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【要約】・・・
【解決手段】ライン22,23 は、推奨経路に対応するもので、道路種別ごとにまとめられた区間経路26?31を車両の走行順序に応じた順序で、かつ実際の距離割合に応じた割合でつなぎ合わせて作成されたものである。・・・
【効果】推奨経路の概要を表示しているから、推奨経路を選択する際に必要な情報を提供できる。」
(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来技術では、迂回経路を含む複数の経路情報のユーザへの提供の仕方としては、経路を道路地図上の道路に沿って表示したり、経路途中の交差点の模式図や残走行距離を表示したりするだけである。したがって、この提供の仕方からユーザが取得できる情報は、たとえば経路全体の形状、通過する交差点名や走行する方向、残走行距離というような情報のみである。そのため、複数経路のうち各経路がどのような特徴を有するのか把握することが難しく、経路選択のための情報としては十分とは言えなかった。
【0005】そこで、本発明の目的は、前述の技術的課題を解決し、複数経路のうちいずれかを選択でき、しかもその選択のためにユーザが必要とする情報を提供することができる複数経路提供装置を提供することである。」
(ウ)「【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、取得された複数の推奨経路を構成するリンクを、各推奨経路ごとに、予め定める道路属性の共通するもの同士でつなぎ合わせることにより、各道路属性に対応する区間経路を作成するための区間経路作成手段と、前記区間経路作成手段で作成された区間経路を車両の走行順序に応じた順序でつなぎ合わせ、推奨経路に対応する1つの表示用ラインを作成するためのライン作成手段と、このライン作成手段で作成された各表示用ラインを表示画面に道路属性を認識できる形態で表示するための表示制御手段とを含むことを特徴とする複数経路提供装置である。
【0007】本発明では、道路属性が共通するものリンク同士をつなぎ合わせて道路属性に対応する区間経路が作成され、当該区間経路が車両の走行順序に応じてつなぎ合わされて表示用ラインが作成される。当該表示用ラインは、道路属性を認識できる形態で表示画面に表示される。具体的には、道路属性ごとに色分けしたり、道路属性ごとに表示用ラインの幅を変えたりして表示される。
【0008】このように、推奨経路をユーザに選択させる場合に、当該推奨経路の道路属性に関する情報も同時にユーザに提供している。言い換えれば、推奨経路の概要を提供している。したがって、推奨経路の選択に必要な情報をユーザに提供できる。なお、道路属性には、道路種別、道路周辺の風景、車線数、有料道路か否か、信号密度などが考えられる。
【0009】請求項2記載の発明は、推奨経路全体の距離に対する前記区間経路作成手段で作成された区間経路の距離の割合、または推奨経路全体を車両で走行するのに必要な時間に対する前記区間経路作成手段で作成された区間経路を車両で走行するのに必要な時間の割合を求めるための割合演算手段をさらに含み、前記ライン作成手段は、表示用ラインの全長に対する区間経路の長さの割合が当該区間経路について前記割合演算手段で求められた距離または時間の割合とほぼ同じになるように、区間経路をつなぎ合わせて表示用ラインを作成するものであることを特徴とする請求項1記載の複数経路提供装置である。
【0010】本発明によれば、表示用ラインに占める各区間経路の割合が実際の推奨経路の距離または時間に対する割合に対応している。したがって、ユーザは、どの区間がどの程度長いかを判断することができる。そのため、推奨経路の概要をさらに詳細に提供できる。請求項3記載の発明は、推奨経路全体の距離に対する前記区間経路作成手段で作成された区間経路の距離の割合、または推奨経路全体を車両で走行するのに必要な時間に対する前記区間経路作成手段で作成された区間経路を車両で走行するのに必要な時間の割合を求めるための割合演算手段と、この割合演算手段で求められた距離または時間の割合が予め定めるしきい値以上であるか否かを判別するための判別手段とをさらに含み、前記ライン作成手段は、この判別手段での判別結果に基づいて、距離または時間の割合が前記しきい値以上である区間経路のみを用いて表示用ラインを作成するものであることを特徴とする請求項1記載の複数経路提供装置である。
【0011】本発明では、推奨経路全体に占める距離または時間の割合がしきい値未満の区間経路は表示用ラインから除外される。したがって、表示すべき情報量を少なくすることができる。そのため、ユーザの見やすい画面とすることができる。なお、前記除外される区間経路は、経路の概要を提供するのに不必要と思われるわずかな距離の経路に相当するものなので、除外しても特に不具合はないものと考えられる。
【0012】請求項4記載の発明は、推奨経路全体の距離に対する前記区間経路作成手段で作成された区間経路の距離の割合、または推奨経路全体を車両で走行するのに必要な時間に対する前記区間経路作成手段で作成された区間経路を車両で走行するのに必要な時間の割合を求めるための割合演算手段をさらに含み、前記ライン作成手段は、前記割合演算手段で求められた距離または時間の割合の上位n(nは自然数)位以上の区間経路を抽出し、当該区間経路のみを用いて表示用ラインを作成するものであることを特徴とする請求項1記載の複数経路提供装置である。
【0013】本発明によれば、推奨経路全体に占める距離または時間の割合が上位n位以上の区間経路のみでラインが構成される。すなわち、上位n位未満の区間経路はラインから除外される。したがって、前記請求項2記載の発明と同様に、表示すべき情報量を少なくすることができる。請求項5記載の発明は、前記ライン作成手段により直線で表すと1画面で表示しきれない表示用ラインが作成された場合に、表示画面をスクロールさせることができるスクロール手段をさらに含むことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の複数経路提供装置である。
【0014】本発明では、1画面で表示しきれない表示用ラインが作成された場合には表示画面をスクロールさせることができる。したがって、表示用ラインを強引に1画面中に収めようとしなくても、表示用ラインのすべてを見やすい大きさでユーザに示すことができる。請求項6記載の発明は、前記表示制御手段は、前記ライン作成手段により直線で表すと1画面で表示しきれない表示用ラインが作成された場合に、当該表示用ラインを複数段にして1画面中に収めて表示させるものであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の複数経路提供装置である。
【0015】本発明では、直線で表すと1画面で表示しきれない表示用ラインが作成された場合には、当該表示用ラインを複数段にして1画面中に収めて表示される。したがって、表示画面をスクロールさせなくても、1つの推奨経路の概要を一瞥するだけで視認できる。請求項7記載の発明は、前記表示制御手段は、前記ライン作成手段により作成された表示用ラインを表示する場合に、当該表示用ラインに対応する推奨経路が有する道路属性に応じた形態の文字または記号を表示用ラインに対応付けて表示するための手段をさらに含むものであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6記載の複数経路提供装置である。」
(エ)「【0026】ここに、ノードとは、一般に、道路の分岐点や折曲点を特定するための座標位置のことである。このうち、分岐点を表すノードを分岐点ノード、道路の折曲点(分岐点は除く。)を表すノードを補間点ノードということがある。ノードデータは、ノード番号、当該ノードに対応する隣接メッシュのノードのアドレス、ノードに接続されるリンクのアドレスからなる。
【0027】各分岐点ノードをつないだものがリンクである。リンクデータは、リンク番号、リンクの始点ノードおよび終点ノードのアドレス、リンクの距離、リンクを通過する方向、その方向におけるリンクコスト、道路種別、道路幅、一方通行や右折禁止、左折禁止、有料道路などの交通規制データからなる。また、地図専用ディスク9には、経路リンク情報テーブルが格納されている。経路リンク情報テーブルは、たとえば図2に示すようなものである。」
(オ)「【0037】その後、経路区分テーブルリスト作成処理を実行し、主に推奨経路の概要の一部である表示用ラインおよび道路名称を表示するときに使用される経路区分テーブルを作成する(ステップA4)。経路区分テーブルは、同じ道路種別および道路名称が連続する特徴区分テーブル同士をまとめたものである。すなわち、経路区分テーブルは、特徴区分テーブルを道路種別および道路名称でフィルタリングしたものと言える。」
(カ)「【0059】なお、以下では、この描画された表示用ライン、道路名称およびアイコンを総称して「推奨経路概要データ」と言うことにする。推奨経路概要データは、画面表示装置10の表示画面の上半分または下半分の領域に対応する描画エリア内に収まるように描画される。この第1の実施形態では、前述のように、推奨経路全体を1画面に収めることができ、しかも2つの推奨経路の概要を表示画面の上半分および下半分にそれぞれ表示する場合を想定しているためである。」
(キ)「【0083】次に、図18を参照し、この第2の実施形態にかかるフィルタリング処理について詳述する。この処理では、ナビゲーション装置本体3は、図8の経路区分テーブル作成処理で作成された経路区分テーブルのうちいずれかを取得し、当該経路区分テーブルから区間距離割合wを取得する(ステップJ1)。最初は、最小の通し番号に対応する経路区分テーブルが取得される。そして、この取得された区間距離割合wが予め定めるしきい値wTH(たとえばwTH=5(%) )以上であるか否かを判別する(ステップJ2)。
【0084】その結果、区間距離割合wがしきい値wTH以上であると判別されると、当経路区分テーブルに対応する該区間経路は比較的距離が長いと判断し、当該処理対象の経路区分テーブルを経路区分テーブルリストに保留する。その後、処理対象とされていない経路区分テーブルが残っているか否かを判別する(ステップJ5)。その結果、残っていると判別されると、次に小さい通し番号に対応する経路区分テーブルについて、前記ステップJ1,J2の処理を繰り返し実行する。
【0085】一方、前記ステップJ2での判別の結果、区間距離割合wがしきい値wTH未満であると判別されると、当該区間経路は非常に短い距離であると判断し、当該経路区分テーブル、および当該経路区分テーブルに対応する特徴区分テーブルを各リストから削除する(ステップJ3,J4)。」
(ク)「【0091】また、表示させるための情報量が少なくなるので、処理の高速化にも寄与できる。図20は、本発明の第3の実施形態にかかるナビゲーション装置において実行されるフィルタリング処理を説明するためのフローチャートである。前記第2の実施形態では、特徴区分テーブルおよび経路区分テーブルの各区間距離割合wがしきい値wTH以上であるか否かをフィルタリングの判断基準としている。一方、この第3実施形態では、フィルタリングの判断基準として、特徴区分テーブルおよび経路区分テーブルの各区間距離割合wのうち上位n(たとえばn=5)位以上であるか否かを採用している。」

(3)甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、「カーロケータ装置」に関して、次の事項が記載されている。(下線部は当審が付与した。)
(ア)「【請求項5】地図データベースと、依頼客から配車要求及び配車位置,行き先等を受信する配車要求受信手段と、前記配車要求受信手段で受信した受信内容の配車位置と各々の車両の現在位置とから経路探索を行う経路探索手段と、前記経路探索手段の結果から配車位置及び経路指示を音声によって指示する案内音声作成手段と、前記案内音声作成手段からの音声情報を前記複数の配車車両のうちで最適な車両に対して通信により伝達する通信手段と、前記複数の配車車両へ指示する道順内容を人間の記憶できる程度の情報量に収めるために、分岐が多く情報量が多いときには、前記経路探索手段により得られた配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段とを有するセンター装置並びに車両の現在位置を検出する車両位置検出手段と、前記センター装置からの通信手段によって配車指示と経路案内を受信する通信手段とを有する複数の車両とから構成されることを特徴とするカーロケータ装置。
【請求項6】前記センター装置における前記経路探索手段は、車両位置から配車位置までを探索した経路結果から道順内容を作成する際に、分岐ごとの経由する道路,目標施設,各走行道路間の距離,所要時間等の情報の中で優先順位を付けておき、前記経路間引き手段はこの優先順位に従い道順内容を作成することを特徴とする請求項5記載のカーロケータ装置。
【請求項7】前記センター装置における前記経路探索手段は、得られた経路結果より、車両から配車までの途中に経由する道路や交差点,主要施設等の名称や車両の走行方向を前記地図データベースと対応付けることによって抜き出し、かつ各々の距離や所要時間等を計算して道順内容を得ることを特徴とする請求項5記載のカーロケータ装置。」
(イ)「【0009】また、センター装置における経路探索手段により得られた配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段を付加することにより、複雑な道順であっても人間が一度に記憶できる程度の情報量に適切に要約して案内できる。この結果、車載ディスプレイ上に地図を表示しなくても運転者の混乱を招かずに運転者へ的確な指示を与えることができる。」
(ウ)「【0017】(実施の形態2)図3は本発明の実施の形態2におけるカーロケータ装置の構成図であり、前記実施の形態1(図1)とほぼ同じ機能の部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0018】図3において、センター装置2における28は、複数の配車車両へ指示する道順内容を人間の記憶できる程度の情報量に収めるために、分岐が多く情報量が多いときに、経路探索手段21により得られた配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段である。
【0019】次に、上記実施の形態2の動作について説明する。実施の形態1との違いは、配車車両の特定後、配車位置までの経路結果から道順内容を作成する際に、ある所定の情報量を超えた場合、経路間引き手段28により途中の分岐情報や施設情報を間引いてから案内音声作成手段27により道順案内のための音声を作成するようにしたことである。
【0020】例えば、上記実施の形態1の動作例では、A交差点,abc小学校は案内し、その他の詳細内容(300m,N道路……)は省いて案内するようにするものである。このとき、経路探索手段21は道順内容を作成するときに予め経由する道路名,施設名等の分岐情報に予め優先順位を与えておき、経路間引き手段28は優先順位にしたがって道順内容を要約する。さらに、地点と所定半径を指定できるようにし、例えば配車位置周辺の案内を重点的に行うといったこともできる。
【0021】以上により、配車車両への指示を全て自動で行う中で、道順内容を一度で適切に伝達でき、複雑な道順であっても運転者の混乱を招かずにポイントのみを案内することができる。また、車両にディスプレイを搭載して案内する必要がなくなるので運転者の負荷が軽減でき、かつコスト削減の効果も有する。」

上記記載事項から、甲第3号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「地図データベースと、依頼客から配車要求及び配車位置,行き先等を受信する配車要求受信手段と、前記配車要求受信手段で受信した受信内容の配車位置と各々の車両の現在位置とから経路探索を行う経路探索手段と、前記経路探索手段の結果から配車位置及び経路指示を音声によって指示する案内音声作成手段と、前記案内音声作成手段からの音声情報を前記複数の配車車両のうちで最適な車両に対して通信により伝達する通信手段と、前記複数の配車車両へ指示する道順内容を人間の記憶できる程度の情報量に収めるために、分岐が多く情報量が多いときには、前記経路探索手段により得られた配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段とを有するセンター装置並びに車両の現在位置を検出する車両位置検出手段と、前記センター装置からの通信手段によって配車指示と経路案内を受信する通信手段とを有する複数の車両とから構成されるカーロケータ装置であって、
前記センター装置における前記経路探索手段は、車両位置から配車位置までを探索した経路結果から道順内容を作成する際に、分岐ごとの経由する道路,目標施設,各走行道路間の距離,所要時間等の情報の中で優先順位を付けておき、前記経路間引き手段はこの優先順位に従い道順内容を作成するものであり、
前記センター装置における前記経路探索手段は、得られた経路結果より、車両から配車までの途中に経由する道路や交差点,主要施設等の名称や車両の走行方向を前記地図データベースと対応付けることによって抜き出し、かつ各々の距離や所要時間等を計算して道順内容を得るものであり、
配車車両の特定後、配車位置までの経路結果から道順内容を作成する際に、ある所定の情報量を超えた場合、経路間引き手段28により途中の分岐情報や施設情報を間引いてから案内音声作成手段27により道順案内のための音声を作成するようにし、
A交差点,abc小学校は案内し、その他の詳細内容(300m,N道路……)は省いて案内するようにするものであり、このとき、経路探索手段21は道順内容を作成するときに予め経由する道路名,施設名等の分岐情報に予め優先順位を与えておき、経路間引き手段28は優先順位にしたがって道順内容を要約する、
カーロケータ装置。」(以下、これを「甲第3号証記載の発明」という。)

(4)甲第4号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、「車両用ナビゲーション装置」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【要約】・・・
【構成】ルート設定条件に基づいてルートを探索する経路算出部22と誘導案内に必要な表示指令や音声案内指令を行う経路案内制御部26を備え、該制御部には現在位置測定部12からの現在地情報により案内情報記憶部10aから読み出された目標情報に基づいて目標名を設定する目標名設定部26aが設けられている。表示部28は経路案内制御部からの表示指令により選択されたルートを全ルート図画面に表示し、同時に目標名を表示する。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】車両用ナビゲーション装置は、ルート設定時に使用する表示画面や誘導案内時に自動的または運転者の要求に応じて開かれる表示画面を備えている。ルート設定画面にてルート設定の条件を入力し、ルート探索を開始させると、ルートを含む詳しい地図が表示されたルート探索画面(ルート探索図)が開かれる。ルート探索が終了すると、全ルートが明瞭に識別できる形態でもって表示された全ルート表示画面(広域図)が開かれる。運転者は、広域図から現在地から目的地に至るルートのみを視覚的かつ感覚的にルートを認識し、把握することができる。その後、案内開始ボタンを押して誘導案内を開始させる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ルート探索の結果、途中まで運転者が慣れたルートをもっている場合がある。このような慣れたルートでの誘導案内は不要であり、その先の誘導案内で十分である。例えば、高速道路などの有料道路があるルートでは、乗降インターチェンジ(以下「インター」と記す)までのルートを熟知していれば、その熟知したルートを走行した方が余裕をもって運転することができる。しかし、従来のナビゲーション装置では、そのインターまでのルートを熟知している場合であっても、誘導案内が行われる。また全ルート表示のみなので、目的地までのルート上の目標をつかみにくいという不具合があった。本発明の目的は、ルート探索後の全ルート表示にてルート上の目標を名前で案内するようにした車両用ナビゲーション装置を提供することにある。」
(ウ)「【0005】
【発明の作用・効果】本発明によれば、ルート探索が終了すると、選択されたルート上に目標名を設定する。この目標名の案内情報を読み出し、全ルート図上に描画する。これにより、例えば高速道路などの有料道路を経由して目的地まで案内する場合、ルート上の目標として、高速道路の乗降インター名を表示することにより、そのインターまでの道のりを運転者が熟知している場合には、そこまでの案内は不要となり、運転者が慣れたルートで走行することができる。」
(エ)「【0009】経路案内制御部26は、経路算出部22にてルート探索し、その結果選択されたルートの表示指令を表示部28に出して全ルート図画面40に表示する。同時に、目標名設定部26aは、現在位置測定部12からの現在地情報により案内情報記憶部10aから読み出された目標情報に基づいて乗降インター名、トンネル名、橋名、著名に建物名などの目標名を設定し、この設定された目標名に対する全ルート図への描画を表示部28に指令すると共に、目標名の音声案内を音声制御部30に指令する。」
(オ)「【0013】ルート変更ボタン103を押すと、ルート変更設定画面(図示せず)が開かれ、この画面にて目的地、通過点、有料道路を通るか否かなどのルート変更条件を入力し、ルート探索を指示する。その結果、再度図2に示す全ルート図が表示される。図示の全ルート表示例では、有料道路を利用するルートで、乗るインターが”A IC”で、降りるインターが”B IC”であることを案内している。音声制御部30は、経路案内制御部からの音声案内指令により、音声記憶部32から読み出された音声、フレーズ、1つにまとまった文章、音等を合成してスピーカ34から出力する。この音声記憶部32には、ルート設定時の操作案内やルート上の目標名の音声案内データ、経路誘導中の音声案内に必要な案内音声データなどの音声案内データが圧縮されて記憶されている。また音声制御部30は、経路案内制御部26から全ルート表示が指令されると、全ルート画面に表示された目標名を、案内音声にて出力する。本例では、目標名の案内音声として、例えば”高速名古屋インターを通るルートです”が出力される。」
(カ)「【0014】次に演算部の目標名情報の案内処理について説明する。図3は、目標名情報として、乗降インター名を案内する処理フローを示す。なお、インターを「IC」で表す。まず、ルート探索を行って(S1)、選択されたルートに基づいて乗降IC名の設定処理を行う(S2)。次いでIC名の有無を判断し(S3)、IC名がない場合終了する。一方IC名がある場合は、その名前を全ルート図の画面に表示する。同時に、IC名の案内音声を出力する(S5)。図4は、乗降IC名の設定処理のフローチャートを示す。高速道路を通るかを判断し(S10)、高速を通る場合はどこのICで乗るかを判断する(S11)。乗るICがない、例えば高速道路上で経路案内を設定する場合は、降りるICのみがあるので、S15以降の降りるICの設定処理が行われる。乗るICがあれば、そのICの数を判定する(S12)。2つ以上の乗るICがある場合は、ルート上で現在地に一番近いICを乗るICに設定する(S13)。一つしかICがない場合は、そのICを乗るICに設定する(S14)。
【0015】同様に、降りるIC名の設定が行われる。すなわち、降りるICがあるか否かを判断し(S15)、降りるICがある場合はその数を判定する(S16)。2つ以上の降りるICがある場合は、ルート上で現在地に一番近いICを降りるICに設定する(S17)。一つしかICがない場合は、そのICを降りるICに設定する(S18)。」
(キ)図4には、(S17)に「ルート上で目的地に一番近いICを降りるICに設定」と記載されている。

(5)甲第5号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、「音声合成装置」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0006】
【実施例】図1は、本発明が適用される一実施例としての、音声インターフェースを用いた車載用ナビゲーションシステムの概念図で、図中、1はGPS(全世界測伝システム)、2は地図データベース、3はナビゲーションシステム、4は音声認識装置、5は音声合成装置、6はユーザで、周知のように、ユーザ6は、例えば、目的地への最短経路について、音声を用いてナビゲーションシステム3に問い合わせを行い、これを音声認識装置4が認識し、ナビゲーションシステム3が解釈可能な形式に変換した後、ナビゲーションシステム3は現在位置をGPS1で確認し、地図データベース2をもとに最適経路と到着予定時刻を計算し、ナビゲーションシステムの形式で音声合成装置5に伝える。音声合成装置5では、ナビゲーションシステム3より伝えられた情報をもとにユーザ6に提示するための音声情報を作成し、例えば、「ルート提示(市ヶ尾、国道246号線、10:00、渋谷)」から「現在位置の市ヶ尾近辺なら国道246号線を通って10時頃に渋谷近辺に到着します」と発声する。
【0007】図2は、車載用ナビゲーションシステムにおける、音声合成装置の情報提示用文章の作成ルールを示したもので、例えば、ルート提示が(A,B,C,D)ならば、「“現在位置”のA、“近辺”ならBを通って、C“頃に”、D“近辺に”到達します」と発生する。また、位置提示(A)ならば、「“現在位置は”、A“近辺です”」と発生する。このルールによれば、地名にはかならず「近辺」(キンペン)という名詞が接続して発声され、時刻には必ず「頃」(ゴロ)という名詞が接続して発声されることがわかる。」

(6)甲第6号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、「交差点案内装置」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】道路地図データを記憶する道路地図記憶手段と、予め設定された経路に沿って車両が走行する際に、前記経路上の交差点を案内するための案内情報を記憶する案内情報記憶手段と、車両が案内対象交差点に近づいたときに前記案内情報記憶手段によって記憶された案内情報を報知する報知手段とを備えた交差点案内装置であって、
各交差点の固有名称または各交差点に接続している道路の固有名称、および各交差点にある施設の名称を記憶する名称記憶手段と、
前記施設に対応し、当該施設を表すマークを記憶するマーク記憶手段と、
従前に車両が通過した交差点を記憶する通過交差点記憶手段と、
案内対象交差点が前記通過交差点記憶手段によって記憶された通過交差点であるか否かを判別する判別手段とを含み、
前記報知手段は、
前記判別手段による判別の結果、案内対象交差点が前記通過交差点である場合には、前記名称記憶手段によって記憶された、当該交差点の固有名称、および当該交差点に接続している道路の固有名称のうちの少なくともいずれか一方の固有名称に基づいて案内対象交差点の案内情報を報知し、前記案内対象交差点が前記通過交差点でない場合には、前記名称記憶手段によって記憶された施設の名称、または前記マーク記憶手段によって記憶された施設のマークに基づいて案内対象交差点の案内情報を報知するものであることを特徴とする交差点案内装置。」
(イ)「【0055】ステップS6の判別の結果、案内対象交差点に対応する進入リンクが走行軌跡データに含まれておれば、すなわち案内対象交差点が従前に走行した軌跡上にある交差点であれば、再び交差点情報テーブルを参照してその進入リンクに対応する交差点の固有名称、および接続道路の固有名称を読み出す。すなわち、上記ディスクDは、この場合、名称記憶手段として機能する。
【0056】そして、これらの各固有名称が制御部6からマンマシンインターフェース部8へ送られる。たとえば、案内対象交差点の固有名称が「本町4丁目」であって、その交差点につながる道路が「中央大通り」であると、音声出力装置11からは「△△△の交差点を右折して□□□に進入して下さい」等の定型的な文の「△△△」の部分に「本町4丁目」を、「□□□」の部分に「中央大通り」をそれぞれ当てはめて、「本町4丁目の交差点を右折して中央大通りに進入して下さい」等のメッセージが音声として音声出力装置11から出力される(ステップS7)。」
(ウ)「【0059】一方、ステップS6において、案内対象交差点が従前に走行した軌跡上にない場合、交差点情報テーブル(表1参照)から当該交差点に対応する施設の普通名称等が読み出され、制御部6からマンマシンインターフェース部8へ送られる。そして、このとき読み出された施設に対応するランドマークの画像データおよび位置座標データがディスクDから読み出され、制御部6からマンマシンインターフェース部8へ送られる。
【0060】このとき、たとえば読み出された施設が「高架」であったとすると、音声出力装置11からは「◇◇のある交差点を右折して下さい」等の定型的な文の「◇◇」の部分に「高架」を当てはめて、「高架のある交差点を右折して下さい」等の音声が音声出力装置11から出力される(ステップS8)。」

(7)甲第7号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、「音声合成装置および音声合成方法、並びにナビゲーションシステム」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項8】少なくとも地図に関する情報である地図情報を記憶している地図情報記憶手段と、
現在地を測定する測定手段と、
前記地図情報記憶手段の記憶内容および前記測定手段の測定結果に対応して、所定の情報を出力する出力手段とを備えるナビゲーションシステムであって、
前記出力手段が、前記所定の情報を合成音で出力する音声合成手段を含んで構成され、
前記所定の情報が、定型文を構成する単語を、所定の単語に置き換えた文である置き換え文であるとき、
前記音声合成手段は、
前記所定の単語のアクセントに関する情報であるアクセント情報を記憶しているアクセント情報記憶手段と、
前記所定の単語のアクセント情報を、前記アクセント情報記憶手段から検索する検索手段と、
前記検索手段の検索結果に基づいて、前記置き換え文のアクセントを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定されたアクセントを有する前記置き換え文に対応する合成音を生成する生成手段とを有し、
前記アクセント情報記憶手段は、前記定型文を構成する単語との置き換えを行ったときに、そのアクセント型が平板型以外になる前記所定の単語の前記アクセント情報を記憶しており、
前記決定手段は、前記検索手段が前記アクセント情報を検索することができなかったとき、前記置き換え文中の前記所定の単語のアクセント型を平板型に決定することを特徴とするナビゲーションシステム。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】従来の音声合成装置には、定型文の単語を置き換えて合成音(合成音声)を出力するものがある。即ち、例えばカーナビゲーションシステムなどに適用される音声合成装置では、例えば「ここは、○○付近です。」などというような頻繁に使用される文を定型文として記憶しておき、○○の部分を、地名に置き換えた置き換え文に対応する合成音を出力することで、運転者に、現在地を報知するようになされている。」
(ウ)「【0038】図2は、図1の音声合成装置7の構成例を示している。この音声合成装置7は、定型文の単語を、置換単語(入力単語)(所定の単語)に置き換えて、上述したような合成音を生成するようになされている。即ち、制御部2から音声合成装置7に対しては、音声合成に必要な情報としての、例えば用いる定型文を特定するための特定情報(定型文パターン入力)と、CD-ROM3に記録されている地名などとしての、置換単語(単語入力)とが供給されるようになされている。具体的には、例えば、上述したような合成音「北品川付近です。」を生成する場合には、「○○付近です。」という定型文と、○○と置き換えられる置換単語「北品川」とが供給される。なお、特定情報は、定型文読み韻律情報選択部11に、置換単語は、単語アクセント検索部13に、それぞれ入力されるようになされている。
【0039】定型文読み韻律情報選択部11は、制御部2から特定情報を受信し、その特定情報により特定される定型文に関する情報を、定型文パターン記憶部12から読み出し、定型文読み韻律情報生成部15に供給するようになされている。定型文パターン記憶部12は、ナビゲーションシステムにおいて頻繁に使用される文である定型文(例えば、上述したような「○○付近です。」の他、「○○交差点を右(左)に曲がって下さい。」や、「あと、○kmで○○(目的地など)付近です。」、「次は、○○交差点です。」など)に関する情報としての、例えば音韻情報(読み)および韻律情報(例えば、定型文のフレーズの開始位置や、定型文を構成する単語(形態素)のアクセント核位置、定型文に挿入するポーズの位置など)(以下、適宜、定型文の音韻情報および韻律情報の両方を含めて、定型文パターンという)を記憶している。」

2.本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との対比
本件特許発明1と甲第1号証記載の発明を対比する。
(a)甲第1号証記載の発明の「入力手段により入力された2地点の座標及び前記記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、該2地点を接続可能な道路を節点毎に選択してゆき、該2地点の一方の地点から他方の地点に至る経路を探索して、節点特定情報と道路特定情報との組合せからなる経路データを作成する経路探索手段」は、本件特許発明1の「目的地までのルートを探索する探索手段」に相当する。
(b)「パターン」とは、請求人が審判請求書「IV(2)(2-3)(2-3-1)」で「・・一般に、「型」、「類型」、「様式」を意味するものである・・(「広辞苑」第六版)」と主張するとおりのものと解せるので、本件特許発明1の「ルートのパターン」は、ルートの「型」、「類型」、「様式」を意味するものと認められる。
そうすると、甲第1号証記載の発明の「ノード番号データの個数が10個以下である」類型や、「ノード番号データの個数が、10個を超えている」類型は、「ノード番号データの個数」という観点で類型化された結果であるので、それぞれ、本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当する。
そして、甲第1号証記載の発明の「ノード番号データの個数が10個以下であるか否かを判別」する構成は、本件特許発明1の「前記探索手段により探索された前記ルートのパターンを判定する判定手段」に相当する。
(c)甲第1号証記載の発明の「ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路を経路スタッカに格納する構成」は、本件特許発明1の「前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出手段」に相当する。
(d)甲第1号証記載の発明の「前記価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する要約手段」と、本件特許発明1の「前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成手段」とは、「ルートの要約を作成する作成手段」である点で共通する。
(e)甲第1号証記載の発明の「要約手段により要約された経路データに含まれる節点特定情報及び道路特定情報を出力する出力手段」は、本件特許発明1の「前記作成手段により作成された前記ルートの要約を出力する出力手段」に相当する。
(f)甲第1号証記載の発明の「経路案内装置」は、本件特許発明1の「ナビゲーション装置」に相当する。

一致点:
そうすると、両者は、
「目的地までのルートを探索する探索手段と、
前記探索手段により探索された前記ルートのパターンを判定する判定手段と、
前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出手段と、
ルートの要約を作成する作成手段と、
前記作成手段により作成された前記ルートの要約を出力する出力手段と
を備えるナビゲーション装置。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:ルートの要約を作成する作成手段が、本件特許発明1は、「前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する」ものであるのに対し、甲第1号証記載の発明は、「価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する要約手段」である点。

3.相違点1についての検討
そこで、上記相違点1について検討する。

(1)まず、甲第1号証記載の発明の「前記価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する要約手段」における要約処理は、「ノード番号データを経路スタックから削除し、・・・リンク番号データを削除し、・・・リンク番号データを削除し、・・・ノード番号データを経路スタックから削除するもの」であるから、甲第1号証記載の発明における要約処理は、「抽出された情報」を「パターン」(「型」、「類型」、「様式」を意味するもの)に適用するという概念を有しているものとは言えず、さらに言えば、経路スタックデータ(「抽出された前記情報」に相当)を「ノード番号データの個数が10個以下である」という類型や「ノード番号データの個数が、10個を超えている」という類型に適用することは全く想定されていない。

(2)請求人は、審判請求書の「IV(2)(2-3)発明特定事項D」において、「本件特許発明1の『抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用』する構成は、引用発明1には見られない特段の作用効果を奏するものとは到底言い得ず、また仮にあったとしてもそのような限定が特許請求の範囲に記載されているわけでもないから、『ルートの要約』を作成する手段である以上の格別の技術的意義は有しない。したがって、両者の技術的意義からしても、引用発明1における『抽出されたノード情報、道路接続情報及び道路情報を、判定されたノード及び/又は道路の削除の要否に適用して』経路の要約を作成する構成は、本件特許発明1の『前記判定手段により判定された前記パターンに適用して』ルートの要約を作成する構成に相当する。」旨主張し、「IV(2)(2-4)(2-4-4)」において、「・・・上記相違点において、本件特許発明1が、『予め記憶されているテンプレートの中から、前記判定手段により判定された前記パターンに対応するテンプレートを読み出し、このテンプレートに、前記抽出手段により抽出された情報を結合させる』のに対し、引用発明1が、『抽出された情報(ノード情報、道路接続情報及び道路情報)を、判定されたノード及び/又は道路の削除の要否に適用する』構成であるところ、両者はいずれも主要でない(優先順位の低い)経路情報中のノード及び/又は道路の情報を除外していくものであってその技術的意義は共通するから上記相違点は実質的相違点とはいえない。」旨主張している。
しかし、本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点は、上記2.に記載した相違点1なる具体的な構成であって、「ルートの要約」を作成するための具体的構成が異なる以上、基本的に構成の相違による作用効果の差異を生ずるものであって、仮に両者が「主要でない(優先順位の低い)経路情報中のノード及び/又は道路の情報を除外していくもの」である点で部分的に共通するものであったとしても、具体的構成が異なる以上、相違点を単純に「実質的相違点とはいえない」とすることはできない。

(3)また、請求人は、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書の「5.I(2)(2-1)」において、「要約処理は、図10に示すように、まず、ステップS410において、経路スクック中の各ノード番号データについて、情報価値を算出する。この情報価値の算出は、図6に示す各テーブルの情報価値係数を用いて、下記式(2)により行う。
情報価値=ノード種別係数×ノード名称有無係数×右左折係数・・・(2)
・・・次に、ステップS420において、現在地ノード及び目的地ノードを除く各ノードについて算出した情報価値の中から最低の情報価値のノードを選び出す。
次に、ステップS430において、この最低の情報価値のノードで右折あるいは左折するかを、該ノードに対応するノード番号データの直前直後にあるリンク番号データに基づいて判別する。右折または左折するノードでなければ、ステップS460に進み、該最低情報価値のノードに対応したノード番号データを経路スタックから削除する。
一方、ステップS430において、右折または左折するノードであることを判別した場合には、ステップS440に進み、経路スタッカに格納された該最低の情報価値のノードに対応したノード番号データの直後にあるノード番号データを探し、双方のノード番号データ間にあるリンク番号データを削除する。
次に、ステップS450に進み、該最低の情報価値のノードに対応したノード番号データの直前にあるノード番号データを探し、双方のノード番号データの間にあるリンク番号データを削除する。そして、次に、ステップS460に進み、該最低の価値情報のノードに対応したノード番号データを経路スタックから削除する。
ステップS200,S300及びS400の動作を繰り返すことにより、情報価値の低い側から、順次ノード番号データ及びリンク番号データが削除される。」(甲第1号証【0024】乃至【0030】)ことが、「本件特許発明1の発明特定事項Dに相当する引用発明1の構成D:『要約手段』」である旨主張している。
しかし、甲第1号証【0024】乃至【0030】の記載事項は、上記2.(d)に記載した様に、「ルートの要約を作成する作成手段」といえるものではあるものの、検索された現実のノード番号データ及びリンク番号データを削除して要約するものであって、「抽出手段により抽出された前記情報」(甲第1号証記載の発明の「ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路」)を、「前記判定手段により判定された前記パターン」(甲第1号証記載の発明の「ノード番号データの個数が10個以下である」及び「ノード番号データの個数が、10個を超えている」という類型)に適用して要約を作成するものとはいえない。

(4)また、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書(2)の「5.I(1)第1の対応記載」において、「ノード番号データの個数が10個より多く要約処理を実行する」、「ノード番号データの個数が10個以下で要約処理を実行しない」のいずれかのパターンが構成要件Bのパターンに相当する旨主張している。
しかし、要約処理を実行するか否かのパターンは、処理のパターンとはいえても、「ルートのパターン」(換言すると、「ルートの類型」)といえるものではないし、さらに、「ノード番号データの個数が10個以下である場合には、表示処理を行」う場合はその後に要約処理を行うものではなく、「ノード番号データの個数が、10個を超えている場合には、要約処理を行」う場合も、要約処理を実行するか否かのパターンは、本件特許発明1の構成要件Dの「・・抽出された前記情報(甲第1号証記載の発明の「ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路」)を、・・適用して・・ルートの要約を作成する」ための、「前記パターン」(換言すると、「ルートの類型」)に対応するものでもない。

(5)また、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書(2)の「5.I(1)第2の対応記載」において、「甲第1号証では、記載事項B?Dの上記削除処理を、経路スタック中のノード番号データの数が10個になるまで繰り返すことで、ノード番号データ(10個以下)及びリンク番号データの経路スタック中の組み合わせ乃至集合を判定している・・・甲第1号証において、『抽出された前記情報』に適用される『前記パターン』は、『ノード番号データ及びリンク番号データの経路スタック中の組み合わせ』のパターンである」旨主張している。
しかし、甲第1号証【0031】乃至【0038】の記載で表示される「ノード番号データ及びリンク番号データの経路スタック中の組み合わせ」(具体的には、【0036】の「現在地及び目的地の名称と、現在地から目的地までの経路上にある主要な分岐点の名称と、各分岐点間の距離と、各分岐点で進行すべき道路の名称と向かうべき方面を表す代表的な地名」)は、探索され要約された経路自体であって、経路の類型ではないので「ルートのパターン」といえるものではないし、さらに、「ノード番号データ及びリンク番号データの経路スタック中の組み合わせ」は、本件特許発明1の構成要件Dの「・・抽出された前記情報(甲第1号証記載の発明の「ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路」)を、・・適用して・・ルートの要約を作成する」ための、「前記パターン」(換言すると、「ルートの類型」)に対応するものでもない。

(6)また、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書(2)の「5.I(1)第3の対応記載」において、「甲第1号証においては、経路スタック中に格納されているノード番号データ及びリンク番号データから、探索されたルートに含まれる全ノードのそれぞれについて判定された『ノード種別』、『ノード名称有無』、『右左折(有無)』のパターンを用いて、ノード番号データが10個になるまで削除処理を繰り返し、ノード番号データが10個以下になった場合に(甲第1号証【0025】?【0030】、図12(b))、対応するノード情報(図4)及び道路情報(リンク情報:図5)を読み出して、表示装置に表示している(甲第1号証【0031】?【0038】。・・・甲第1号証において、『抽出された前記情報』に適用される『前記パターン』は、探索されたルートに含まれる全ノードのそれぞれについて判定された『ノード種別』、『メード名称有無』、『右左折(有無)』のパターン(経路スクック中の全ノードについてのパターン)である(構成要件D)。」旨主張している。
しかし、甲第1号証【0025】?【0030】の「ノード種別」、「ノード名称有無」、「右左折(有無)」は、削除処理に用いられる判断基準であって、経路の類型ではないので「ルートのパターン」(換言すると「ルートの類型」)といえるものではないし、仮に、ルートのパターンと言えるとしても、「ノード種別」、「ノード名称有無」、「右左折(有無)」は、本件特許発明1の構成要件Dの「・・抽出された前記情報(甲第1号証記載の発明の「ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路」)を、・・適用して・・ルートの要約を作成する」ための、「前記パターン」(換言すると、「ルートの類型」)に対応するものでもない。

(7)そして、本件特許発明は、本件特許発明1の構成要件A?Eを備えることで、特許明細書記載の「探索されたルートの概略を簡単にかつ迅速に知ることができる」ものである。

(8)そうすると、請求人の主張を検討してみても、相違点1は、相違点というほかなく、かつ、実質的にも相違点であることに変わりはない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

4.本件特許発明2?4に係る判断
本件特許発明2は、本件特許発明1にさらに
「F:前記判定手段は、前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる道路の種類と交差点に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であり、
本件特許発明3は、本件特許発明2にさらに
「G:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であり、
本件特許発明4は、本件特許発明1にさらに
「H:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であるので、本件特許発明2?4と甲第1号証記載の発明とは、少なくとも上記相違点1で相違するものである。
そして、上記3.の如く、請求人が具体的に主張した理由を検討しても、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるということはできないので、本件特許発明2?4も同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

5.本件特許発明5及び6に係る判断
(1)本件特許発明5及び6と甲第1号証記載の発明を対比する。
(a)甲第1号証記載の発明の「入力手段により入力された2地点の座標及び前記記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、該2地点を接続可能な道路を節点毎に選択してゆき、該2地点の一方の地点から他方の地点に至る経路を探索して、節点特定情報と道路特定情報との組合せからなる経路データを作成する」は、本件特許発明5及び6の「目的地までのルートを探索する探索ステップ」に相当する。
(b)甲第1号証記載の発明の「ノード番号データの個数が10個以下であるか否かを判別」は、本件特許発明5及び6の「前記探索ステップで探索された前記ルートのパターンを判定する判定ステップ」に相当する。
(c)甲第1号証記載の発明の「ノード番号とリンク番号とを組み合わせた状態で得られた経路を経路スタッカに格納する」は、本件特許発明5及び6の「前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップ」に相当する。
(d)甲第1号証記載の発明の「前記価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する」と、本件特許発明5及び6の「前記抽出ステップで抽出された前記情報を、前記判定ステップで判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成ステップ」とは、「ルートの要約を作成する作成ステップ」である点で共通する。
(e)甲第1号証記載の発明の「要約手段により要約された経路データに含まれる節点特定情報及び道路特定情報を出力」は、本件特許発明5及び6の「前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップ」に相当する。
(f)甲第1号証記載の発明の「経路案内」は、本件特許発明5の「ナビゲーション方法」に相当する。
また、甲第1号証記載の発明の「経路案内装置」は、コンピュータを用いて具現化されるのが通常であるので、実質的に本件特許発明6の「処理をナビゲーション装置に実行させるコンピュータ」に相当する。
そして、経路案内装置のコンピュータが実行プログラムにより動作すること、実行プログラムが、プログラムを提供する提供媒体により提供されることが技術常識であることを考慮すると、甲第1号証記載の発明の「経路案内装置」の実行プログラムの提供手段は、本件特許発明6の「処理をナビゲーション装置に実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムを提供する」「提供媒体」に相当する。

一致点:
(g)そうすると、本件特許発明5と甲第1号証記載の発明とは、
「目的地までのルートを探索する探索ステップと、
前記探索ステップで探索された前記ルートのパターンを判定する判定ステップと、
前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップと、
ルートの要約を作成する作成ステップと、
前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップと
を含むナビゲーション方法。」
で一致し、次の相違点1’で相違する。

相違点1’:ルートの要約を作成する作成ステップが、本件特許発明5及び6は、「前記抽出ステップで抽出された前記情報を、前記判定ステップで判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する」ものであるのに対し、甲第1号証記載の発明は、「価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する」ものである点。

(h)また、本件特許発明6と甲第1号証記載の発明とは、
「目的地までのルートを探索する探索ステップと、
前記探索ステップで探索された前記ルートのパターンを判定する判定ステップと、
前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップと、
ルートの要約を作成する作成ステップと、
前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップと
を含む処理をナビゲーション装置に実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムを提供する提供媒体。」
で一致し、上記相違点1’で相違する。

(2)相違点1’についての検討
そこで、上記相違点1’について検討する。
ア.まず、甲第1号証記載の発明の「・・要約手段」の要約処理は、前記「3.」の「(1)」に記載したように、甲第1号証記載の発明における要約処理は、「抽出された情報」を「パターン」(「型」、「類型」、「様式」を意味するもの)に適用するという概念を有しているものとは言えず、さらに言えば、経路スタックデータ(「抽出された前記情報」に相当)を「ノード番号データの個数が10個以下である」という類型や、「ノード番号データの個数が、10個を超えている」という類型に適用することは全く想定されていない。
請求人は、審判請求書の「IV(2)(2-8)」において、「本件特許発明5は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を方法発明として規定した点でのみ相違するから、(2-1)、(2-1-1)、(2-1-2)における本件特許発明1についての対比判断と同様の理由により、発明特定事項A’?E’につき両者に相違点は存しない。よって、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された引用発明2と同一である。」旨、また、同「IV(2)(2-9)」において、「本件特許発明6は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を提供媒体発明として規定した点でのみ相違するから、(2-1)、(2-1-1)、(2-1-2)における本件特許発明1についての対比判断と同様の理由により、発明特定事項A’?D’、E”につき両者に相違点は存しない。よって、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された引用発明3と同一である。」旨主張している。
しかし、本件特許発明5及び6と甲第1号証記載の発明との相違点は、上記(1)に記載した相違点1’なる具体的な構成であって、「ルートの要約」を作成するための具体的構成が異なる以上、基本的に構成の相違による作用効果の差異を生ずるものであって、仮に両者が「主要でない(優先順位の低い)経路情報中のノード及び/又は道路の情報を除外していくもの」である点で部分的に共通するものであったとしても、具体的構成が異なる以上、相違点を「実質的相違点とはいえない。」とすることはできない。

イ.また、前記「3.」の「(1)」?「(6)」で検討した点については、相違点1’においても同様である。

ウ.そうすると、請求人の主張を検討してみても、相違点1’は、相違点というほかなく、かつ、実質的にも相違点であることに変わりはない。
したがって、本件特許発明5及び6は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。


第5 無効理由1-2についての当審の判断
1.本件特許発明1に係る判断
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明の一致点、相違点は上記第4 2.に示したとおりである。
そこで、上記相違点1について検討する。

(1)まず、(a)請求人は、審判請求書の「IV(2)(2-4)(2-4-4)」において、「・・・本件特許発明1における『ルートの要約』を作成するための具体的手段である『テンプレートに、抽出された情報を結合させる』構成自体も、周知例4ないし周知例6に示されているとおり、周知の構成に過ぎないから、周知例4ないし周知例6を引用発明1に適用すれば容易に得られる構成に過ぎず、引用発明1の構成と異なる特段の作用効果を奏するものではない。
・・・上記相違点に係る構成は、引用発明1に周知例を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。」(なお審判請求書における周知例1?周知例6は、甲第2号証?甲第7号証。以下同様。)旨主張している。
(b)しかし、仮に、「テンプレートに、抽出された情報を結合させる」構成自体が周知のものであったとしても、そのことをもって直ちに、甲第1号証記載の発明の「価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する要約手段」を、「前記判定手段により判定された前記パターンに適用して」ルートの要約を作成するという具現化手法の異なるものに変更することが、当業者が容易になし得たとは言えない。

(2)また、(a)請求人は、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書の「5.I(6)」において、「本件特許発明1の発明特定事項B、Dは、・・甲第1号証に記載の発明(引用発明1)に甲第4号証に記載された事項を適用することにより、・・容易に想到できるものに過ぎない。」とし、同「5.I(6)(6-1-2-2)」で、「抽出された経路情報を『テンプレート』に適用する処理は、甲第5号証?甲第7号証に記載されているように、周知慣用技術に過ぎないということになる。
ここで、甲第4号証には、音声出力(テンプレートを用いるのは技術常識である)と表示出力の双方の態様が記載されているから、甲第4号証に記載された事項を周知例に示される技術常識に基づき解釈すれば、『抽出された情報を判定されたパターンに適用して』要約を作成する構成は、甲第4号証に記載されているに等しい事項、ないし特段の技術的意義のない適宜選択し得る設計事項に過ぎないということになる。」とし、
同日付口頭審理陳述要領書(2)の「5.I(3)」で、「甲第4号証において、判定される『前記パターン』は、探索されたルート全体の『高速道路を通るか否か』、『乗降ICの有無』、『乗降ICの数』のパターンである(構成要件B)。
そして、甲第4号証においては、S10?S12の判定結果、及びS15?S16の判定結果により、ルート上の目標名の組み合わせ(乗降IC名、トンネル名、橋名、著名な建物名等)が作成され、出力される。
すなわち、甲第4号証では、探索されたルートに含まれる情報(構成要件C)(構成要件Dにおける『抽出された前記情報』)に、判定されたルート全体の『高速道路を通るか否か』、『乗降ICの有無』、『乗降ICの数』のパターンを適用し、設定されたルート上の目標名の組み合わせ(乗降IC名、トンネル名、橋名、著名な建物名等)を要約として出力しているから、甲第4号証において、『抽出された前記情報』に適用される『前記パターン』は、ルート全体の『高速道路を通るか否か』、『乗降ICの有無』、『乗降ICの数』のパターンである(構成要件D)。」と説明している。
(b)そこで、請求人が具体的に主張した理由について検討する。
まず、甲第1号証記載の発明において、本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当するものは、上記「第4 2.(b)」に記載した様に「ノード番号データの個数が10個以下である」類型や、「ノード番号データの個数が、10個を超えている」類型である。
それに対して、甲第4号証において請求人が本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当するものとしているのは、探索されたルート全体の「高速道路を通るか否か」、「乗降ICの有無」、「乗降ICの数」のパターンである。
そうすると、甲第1号証記載の発明と甲第4号証とでは、本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当するものが異質であって、甲第1号証に積極的な動機付けが存在しない以上、当業者が両者を置換しようと考えるようなものではない。
(c)また、甲第4号証に、音声出力も含めてテンプレートに関する具体的記載は発見できない。
さらに、抽出された経路情報をテンプレートに適用する処理が周知慣用技術であったとしても、また仮に甲第4号証の音声出力がテンプレートを用いてなされているとしても、そのことが、上記(b)の甲第1号証記載の発明の「ノード番号データの個数が10個以下である」類型や、「ノード番号データの個数が、10個を超えている」類型(本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当するもの)を、甲第4号証の「高速道路を通るか否か」、「乗降ICの有無」、「乗降ICの数」に置換しようと考える動機付けとなるとはいえない。
(d)なお、甲第2?4号証は、請求人が主張するように、「探索された目的地までのルートの概要を、例えば、画面表示なら一覧性を以って一画面に表示できるよう短縮化する、音声出力なら一度に記憶できる長さの音声に短縮化する、など、ユーザにとって簡単に分かりやすい情報量に短縮化して提示するとの課題は、周知な課題に過ぎない。
かつ、かかる周知な課題を解決する手段として、探索されたルートの情報を何らか短くまとめる(短縮化する)、すなわちその情報量を少なくして『ルートの要約』を作成する構成もまた、周知の構成、周知の課題解決手段に過ぎない。」ことを証明する為の証拠であるが、この周知の課題及び周知の構成を、甲第1号証記載の発明に適用したとしても、適用された発明が、抽出された情報にパターンを適用して要約を作成する相違点1に係る構成を備えたものになるとはいえない。また、甲第5?7号証は、「探索された経路の情報を出力するために、予め複数記憶されたテンプレート(定型文)から所定のテンプレート(定型文パターン)を取り出して、これに経路の情報(道路情報、ノード(分岐点)情報等)を適用して出力する構成が記載されており、かかる構成が周知であること」を証明する為の証拠であるが、甲第5?7号証には、この周知の構成における「テンプレート(定型文パターン)」を、検索手段により検索されたルートを判定する判定手段によって判定される「パターン」と同一とすることまでは示されていないから、この周知の構成を甲第1号証記載の発明に適用しても、適用された発明が相違点1に係る構成を備えたものになるとはいえない。(いずれも審判請求書IV(2)(2-4)(2-4-4))

(3)そうすると、甲第1?7号証のすべてを参酌しても、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。

2.本件特許発明2?4に係る判断
本件特許発明2は、本件特許発明1にさらに
「F:前記判定手段は、前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる道路の種類と交差点に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であり、
本件特許発明3は、本件特許発明2にさらに
「G:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であり、
本件特許発明4は、本件特許発明1にさらに
「H:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であるので、本件特許発明2?4と甲第1号証記載の発明とは、少なくとも上記相違点1で相違するものである。
そして、上記1.の如く、請求人が具体的に主張した理由を検討しても、本件特許発明1は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものということはできないので、本件特許発明2?4も同様に、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本件特許発明5及び6に係る判断
本件特許発明5及び6と甲第1号証に記載された発明の一致点、相違点は上記「第4 5.」に示したとおりである。
そこで、上記相違点1’について検討する。

(1)まず、(a)請求人は、審判請求書の「IV(2)(2-8)」において、「本件特許発明5は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を方法発明として規定した点でのみ相違するから、(2-4)における本件特許発明1の進歩性欠如と同様の理由により、本件特許発明5は、引用発明2に周知例1ないし6を適用して当業者が容易になし得たものである。」旨、また、同「IV(2)(2-9)」において、「本件特許発明6は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を提供媒体発明として規定した点でのみ相違するから、(2-4)における本件特許発明1の進歩性欠如と同様の理由により、本件特許発明6は、引用発明3に周知例1ないし6を適用して当業者が容易になし得たものである。」旨主張している。
(b)しかし、「(2-4)における本件特許発明1の進歩性欠如・・の理由」については、前記「1.(1)」で既に検討したとおりであって、甲第1号証記載の発明の「価値算出手段により算出された価値情報に基づいて、経路データを価値の低いものから削除してゆき、所定数の経路データに要約する要約手段」を、「前記判定手段により判定された前記パターンに適用して」ルートの要約を作成するという具現化手法の異なるものに変更することが、当業者が容易になし得たとは言えない。

(2)また、前記「1.」の「(2)」で検討した点については、相違点1’においても同様である。

(3)そうすると、甲第1?7号証のすべてを参酌しても、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、本件特許発明5?6の相違点1’に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。


第6 無効理由2-1についての当審の判断
1.各甲号証の記載事項
各甲号証の記載事項は、前記「第4 (1)」に記載したとおりである。

2.本件特許発明1と甲第3号証記載の発明との対比
本件特許発明1と甲第3号証記載の発明を対比する。
(a)甲第3号証記載の発明の「配車位置と各々の車両の現在位置とから経路探索を行う経路探索手段」は、本件特許発明1の「目的地までのルートを探索する探索手段」に相当する。
(b)甲第3号証記載の発明の「センター装置における前記経路探索手段」の「得られた経路結果より、車両から配車までの途中に経由する道路や交差点,主要施設等の名称や車両の走行方向を前記地図データベースと対応付けることによって抜き出」す構成は、本件特許発明1の「前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出手段」に相当する。
(c)甲第3号証記載の発明の「配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段」と、本件特許発明1の「前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成手段」とは、前者が「優先順位にしたがって道順内容を要約する」ものであって、ルートの要約を作成するといえるものであるので、両者は「ルートの要約を作成する作成手段」である点で共通する。
(d)甲第3号証記載の発明の「複数の車両」は、「センター装置からの通信手段によって配車指示と経路案内を受信する通信手段とを有する」ものであって、受信した「配車指示と経路案内」を音声出力する出力手段を有することは自明である。そして、該出力手段は、本件特許発明1の「前記作成手段により作成された前記ルートの要約を出力する出力手段」に相当する。
(e)甲第3号証記載の発明の「カーロケータ装置」は、「配車位置及び経路指示を音声によって指示する・・案内音声作成手段からの音声情報を前記複数の配車車両のうちで最適な車両に対して通信により伝達する」ものであって、経路指示、すなわち、ナビゲーションを行うものであるので、本件特許発明1の「ナビゲーション装置」に相当する。

一致点:
そうすると、両者は、
「目的地までのルートを探索する探索手段と、
前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出手段と、
ルートの要約を作成する作成手段と、
前記作成手段により作成された前記ルートの要約を出力する出力手段と
を備えるナビゲーション装置。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点2:本件特許発明1は、「探索手段により探索された前記ルートのパターンを判定する判定手段」を備え、ルートの要約を作成する作成手段が、「前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する」ものであるのに対し、甲第3号証記載の発明は、「配車車両へ指示する道順内容を人間の記憶できる程度の情報量に収めるために、分岐が多く情報量が多いときには、前記経路探索手段により得られた配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段」を有し、「経路探索手段は、車両位置から配車位置までを探索した経路結果から道順内容を作成する際に、分岐ごとの経由する道路,目標施設,各走行道路間の距離,所要時間等の情報の中で優先順位を付けておき、前記経路間引き手段はこの優先順位に従い道順内容を作成」し、「A交差点,abc小学校は案内し、その他の詳細内容(300m,N道路……)は省いて案内するように」したものである点。

3.相違点2についての検討
そこで、上記相違点2について検討する。

(1)まず、(a)請求人は、審判請求書の「IV(3)(3-3)発明特定事項B」において、「引用発明4の判定手段は、『探索された経路に含まれる分岐情報を間引くか否かを判定する』ものであり、経路に含まれる交差点、道路名及び施設名等の分岐情報を間引くか否かの類型(パターン)を判定するものであるから、本件特許発明1における『ルートのパターンの判定』に他ならない。また、引用発明4では、『探索された経路中の交差点、道路名及び施設名等の分岐情報に与えられた優先順位に従い』間引くか否かを判定するものであるが、本件特許発明1では、上記のとおりいかなる情報に基づいてどのような基準で『ルートのパターンを判定する』ものであるかは何ら限定されていないから、引用発明4の態様を排除するものではなく、したがって本件特許発明1の『ルートのパターンを判定する』構成は引用発明4の態様を当然に含むものである。」旨、同じく「IV(3)(3-3)発明特定事項D○5」において、「本件特許発明1において『ルートの要約』は、『前記判定手段により判定された前記パターンに適用して』作成されるものであるところ、引用発明4における『探索された経路に含まれる分岐情報を間引くか否かを判定する』構成が、経路に含まれるノード及び/又は道路の情報をその有する属性によりその類型(パターン)を判定するものであって、文言上、本件特許発明1の『パターンを判定する』構成に相当することは、上記発明特定事項Bについてで述べたとおりである。したがって、本件特許発明1の『抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して』ルートの要約を作成する構成は、引用発明4の『探索された経路中の交差点、道路名及び施設名等の分岐情報に与えられた優先順位に従い』経路の要約を作成する構成を包含するものである。」旨主張し、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書(2)の「5.I(2)」において、「甲第3号証では、探索された経路結果が、『分岐が多く情報量が多いか』否か、のいずれに属するかの『類型』を判別して、前者の場合にのみ所定情報量内の大まかな道順案内に要約する処理を行っているから、甲第3号証において、判定される『前記パターン』は、『分岐が多く情報量が多く、要約処理を実行する』又は『分岐・情報量が所定量内で要約処理を実行しない』のいずれかのパターンである(構成要件B)。」旨主張している。
(b)しかし、要約処理を実行するか否かは、処理のパターンとはいえても、「ルートのパターン」(換言すると、「ルートの類型」)といえるものではない。
さらに、発明特定事項Dに関しては、甲第3号証記載の発明は、「分岐が多く情報量が多いとき」以外の場合はその後に要約処理を行うものではなく、「分岐が多く情報量が多いとき」に、もっぱら、現実の「経路間引き手段28により途中の分岐情報や施設情報」(唯一のもの)を「間引いてから案内音声作成手段27により道順案内のための音声を作成する」、具体的には「A交差点,abc小学校は案内し、その他の詳細内容(300m,N道路……)は省いて案内する」ものであって、本件特許発明1の構成要件Dの「・・抽出された前記情報を、・・前記パターン(換言すると、「ルートの類型」)に適用して」ルートの要約を作成する構成を備えるものともいえない。

(2)本件特許発明は、本件特許発明1の構成要件A?Eを備えることで、特許明細書記載の「探索されたルートの概略を簡単にかつ迅速に知ることができる」ものである。

(3)そうすると、請求人の主張を検討してみても、相違点2は、相違点というほかなく、かつ、実質的にも相違点であることに変わりはない。
したがって、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。

4.本件特許発明2?3に係る判断
本件特許発明2は、本件特許発明1にさらに
「F:前記判定手段は、前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる道路の種類と交差点に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であり、
本件特許発明3は、本件特許発明2にさらに
「G:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であるので、本件特許発明2?3と甲第3号証記載の発明とは、少なくとも上記相違点2で相違するものである。
そして、上記3.の如く、請求人が具体的に主張した理由を検討しても、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明であるということはできないので、本件特許発明2?3も同様に、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。

5.本件特許発明5及び6に係る判断
(1)本件特許発明5及び6と甲第3号証記載の発明を対比する。
(a)甲第3号証記載の発明の「配車位置と各々の車両の現在位置とから経路探索を行う」ことは、本件特許発明5及び6の「目的地までのルートを探索する探索ステップ」に相当する。
(b)甲第3号証記載の発明の「センター装置における前記経路探索手段」の「得られた経路結果より、車両から配車までの途中に経由する道路や交差点,主要施設等の名称や車両の走行方向を前記地図データベースと対応付けることによって抜き出」すことは、本件特許発明5及び6の「前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップ」に相当する。
(c)甲第3号証記載の発明の「配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する」ことと、本件特許発明5及び6の「前記抽出ステップで抽出された前記情報を、前記判定ステップで判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成ステップ」とは、前者が「優先順位にしたがって道順内容を要約する」ものであって、ルートの要約を作成するといえるものであるので、両者は「ルートの要約を作成する作成ステップ」である点で共通する。
(d)甲第3号証記載の発明の「複数の車両」は、「センター装置からの通信手段によって配車指示と経路案内を受信する通信手段とを有する」ものであって、受信した「配車指示と経路案内」を音声出力することが自明である。そして、該出力することは、本件特許発明5及び6の「前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップ」に相当する。
(e)甲第3号証記載の発明の「カーロケータ装置」は、「配車位置及び経路指示を音声によって指示する・・案内音声作成手段からの音声情報を前記複数の配車車両のうちで最適な車両に対して通信により伝達する」ものであって、経路指示、すなわち、ナビゲーションを行うものであるので、甲第3号証記載の発明の「カーロケータ装置」の動作は、本件特許発明5の「ナビゲーション方法」に相当する。
また、甲第3号証記載の発明の「カーロケータ装置」は、コンピュータを用いて具現化されるのが通常であるので、実質的に本件特許発明6の「処理をナビゲーション装置に実行させるコンピュータ」に相当する。
そして、カーロケータ装置のコンピュータが実行プログラムにより動作すること、実行プログラムが、プログラムを提供する提供媒体により提供されることが技術常識であることを考慮すると、甲第3号証記載の発明の「カーロケータ装置」の実行プログラムの提供手段は、本件特許発明6の「処理をナビゲーション装置に実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムを提供する」「提供媒体」に相当する。

一致点:
(g)そうすると、本件特許発明5と甲第3号証記載の発明とは、
「目的地までのルートを探索する探索ステップと、
前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップと、
ルートの要約を作成する作成ステップと、
前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップと
を含むナビゲーション方法。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点2’:本件特許発明5は、「探索ステップで探索された前記ルートのパターンを判定する判定ステップ」を備え、ルートの要約を作成する作成ステップが、「前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する」ものであるのに対し、甲第3号証記載の発明は、「配車車両へ指示する道順内容を人間の記憶できる程度の情報量に収めるために、分岐が多く情報量が多いときには、前記経路探索手段により得られた配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段」を有し、「経路探索手段は、車両位置から配車位置までを探索した経路結果から道順内容を作成する際に、分岐ごとの経由する道路,目標施設,各走行道路間の距離,所要時間等の情報の中で優先順位を付けておき、前記経路間引き手段はこの優先順位に従い道順内容を作成」し、「A交差点,abc小学校は案内し、その他の詳細内容(300m,N道路……)は省いて案内するように」したものである点。

(h)また、本件特許発明6と甲第3号証記載の発明とは、
「目的地までのルートを探索する探索ステップと、
前記探索ステップで探索された前記ルートに含まれる情報を抽出する抽出ステップと、
ルートの要約を作成する作成ステップと、
前記作成ステップで作成された前記ルートの要約を出力する出力ステップと
を含む処理をナビゲーション装置に実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムを提供する提供媒体。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点2’’:本件特許発明5は、「探索ステップで探索された前記ルートのパターンを判定する判定ステップ」を備え、ルートの要約を作成する作成ステップが、「前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する」ものであるのに対し、甲第3号証記載の発明は、「配車車両へ指示する道順内容を人間の記憶できる程度の情報量に収めるために、分岐が多く情報量が多いときには、前記経路探索手段により得られた配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段」を有し、「経路探索手段は、車両位置から配車位置までを探索した経路結果から道順内容を作成する際に、分岐ごとの経由する道路,目標施設,各走行道路間の距離,所要時間等の情報の中で優先順位を付けておき、前記経路間引き手段はこの優先順位に従い道順内容を作成」し、「A交差点,abc小学校は案内し、その他の詳細内容(300m,N道路……)は省いて案内するように」したものである点。

(2)相違点2’及び2’’についての検討
そこで、上記相違点2’及び2’’について検討する。
ア.まず、請求人は、審判請求書の「IV(3)(3-8)」において、「本件特許発明5は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を方法発明として規定した点でのみ相違するから、(3-1)、(3-1-1)、(3-1-2)における本件特許発明1についての対比判断と同様の理由により、発明特定事項A’?E’につき両者に相違点は存しない。よって、本件特許発明5は、甲第3号証に記載された引用発明2と同一である。」旨、また、同「IV(3)(3-9)」において、「本件特許発明6は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を提供媒体発明として規定した点でのみ相違するから、(3-1)、(3-1-1)、(3-1-2)における本件特許発明1についての対比判断と同様の理由により、発明特定事項A’?D’、E”につき両者に相違点は存しない。よって、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された引用発明3と同一である。」旨主張している。
しかし、本件特許発明5及び6と甲第3号証記載の発明との相違点は、上記(1)に記載した相違点2’及び2’’なる具体的な構成であって、前記「3.」の「(1)」?「(3)」で検討したのと同様に、本件特許発明5及び6は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。


第7 無効理由2-2?無効理由2-4についての当審の判断
1.本件特許発明1に係る判断
本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明の一致点、相違点は上記第6 2.に示したとおりである。
そこで、上記相違点2について検討する。

(1)まず、(a)請求人は、審判請求書の「IV(3)(3-4)(3-4-3)」?「(3-4-4)」において、「・・・本件特許発明1における『ルートの要約』を作成するための具体的手段である『テンプレートに、抽出された情報を結合させる』構成自体も、周知例4?周知例6に示されているとおり、周知の構成に過ぎないから、周知例4?周知例6を引用発明4に適用すれば容易に得られる構成に過ぎず、引用発明4の構成と異なる特段の作用効果を奏するものではない。
そして、引用発明4(甲第3号証に記載の発明)と、上記周知例とは、車両の目的地までの経路を探索してその経路を表示させるというナビゲーションに関する技術として共通の技術分野に属し、またその基本的構成、作用効果を共通とし、また適用により引用発明4の所期の作用効果を奏さなくなる等の特段の阻害要因も見当たらないから、引用発明4に上記周知例を適用することは当業者にとって何ら困難性はない。
・・・引用発明4に、周知例1、周知例3から周知例6を適用することで、本件特許発明1に想到することは、当業者が容易になし得たことに過ぎない。」旨主張している。
(b)しかし、仮に、「探索された目的地までのルートの概要を、例えば、画面表示なら一覧性を以って一画面に表示できるよう短縮化する、音声出力なら一度に記憶できる長さの音声に短縮化する、など、ユーザにとって簡単に分かりやすい情報量に短縮化して提示するとの課題は、周知な課題に過ぎない。」「かかる周知な課題を解決する手段として、探索されたルートの情報を何らか短くまとめる(短縮化する)、すなわちその情報量を少なくして『ルートの要約』を作成する構成もまた、周知の構成、周知の課題解決手段に過ぎない。」「『ルートの要約』を作成するには、『主要』でない(優先順位の低い)道路及び/又はノード(分岐点)の情報を省く(除外する)ことで実現できることもまた、上記各周知例に照らして周知である」「探索された経路の情報を出力するために、予め複数記憶されたテンプレート(定型文)から所定のテンプレート(定型文パターン)を取り出して、これに経路の情報(道路情報、ノード(分岐点)情報等)を適用して出力する構成・・・が周知である」(審判請求書の(3-4-3)」)としても、そのことをもって直ちに、甲第3号証記載の発明の「配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段」を、「前記判定手段により判定された前記パターンに適用して」ルートの要約を作成するという具現化手法の異なるものに変更することが、当業者が容易になし得たとは言えない。

(2)また、(a)請求人は、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書の「5.I(6)」において、「本件特許発明1の発明特定事項B、Dは、・・甲第3号証に記載の発明(引用発明4)に甲第4号証に記載された事項を適用することにより、容易に想到できるものに過ぎない。」とし、同「5.I(6)(6-2-2-2)」で、「甲第4号証には、上記相違点1及び2がいずれも記載されている、ないし記載されているに等しい。従って、甲第3号証に記載の引用発明4に、甲第4号証に記載されたA.?C.を適用することにより、本件特許発明1の構成か得られるものである。」とし、
同日付口頭審理陳述要領書(2)の「5.I(3)」で、「甲第4号証において、判定される『前記パターン』は、探索されたルート全体の『高速道路を通るか否か』、『乗降ICの有無」、『乗降ICの数』のパターンである(構成要件B)。
そして、甲第4号証においては、S10?S12の判定結果、及びS15?S16の判定結果により、ルート上の目標名の組み合わせ(乗降IC名、トンネル名、橋名、著名な建物名等)が作成され、出力される。
すなわち、甲第4号証では、探索されたルートに含まれる情報(構成要件C)(構成要件Dにおける『抽出された前記情報』)に、判定されたルート全体の『高速道路を通るか否か』、『乗降ICの有無』、『乗降ICの数』のパターンを適用し、設定されたルート上の目標名の組み合わせ(乗降IC名、トンネル名、橋名、著名な建物名等)を要約として出力しているから、甲第4号証において、『抽出された前記情報』に適用される『前記パターン』は、ルート全体の『高速道路を通るか否か』、『乗降ICの有無』、『乗降ICの数』のパターンである(構成要件D)。」と説明している。
(b)そこで、請求人が具体的に主張した理由について検討する。
まず、請求人の主張によると甲第3号証記載の発明において、本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当するものは、「『分岐が多く情報量が多く、要約処理を実行する』又は『分岐・情報量が所定量内で要約処理を実行しない』のいずれかのパターン」(平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書(2)の「5.I(2)」)、すなわち、要約処理を実行するか否かである。
それに対して、甲第4号証において請求人が本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当するものとしているのは、探索されたルート全体の「高速道路を通るか否か」、「乗降ICの有無」、「乗降ICの数」のパターンである。
そうすると、甲第3号証記載の発明と甲第4号証とでは、本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に対応するものが異質であって、甲第3号証記載の発明の「『分岐が多く情報量が多く、要約処理を実行する』又は『分岐・情報量が所定量内で要約処理を実行しない』のいずれかのパターン」を、甲第4号証の「高速道路を通るか否か」、「乗降ICの有無」、「乗降ICの数」のパターンに置き換える必要性は存在せず、甲第3号証に積極的な動機付けが存在しない以上、当業者が両者を置換しようと考えるようなものではない。
(c)また、抽出された経路情報をテンプレートに適用する処理が周知慣用技術であったとしても、また仮に甲第4号証の音声出力がテンプレートを用いてなされているとしても、そのことが、上記(b)の甲第3号証記載の発明の「分岐が多く情報量が多く、要約処理を実行する」又は「分岐・情報量が所定量内で要約処理を実行しない」のいずれかのパターン(請求人が本件特許発明1の「探索手段により探索された前記ルートのパターン」に相当すると主張するもの)を、甲第4号証の「高速道路を通るか否か」、「乗降ICの有無」、「乗降ICの数」に置換しようと考える動機付けとなるとはいえない。

(3)そうすると、甲第1?7号証のすべてを参酌しても、甲第3号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。

2.本件特許発明2に係る判断
本件特許発明2は、本件特許発明1にさらに
「F:前記判定手段は、前記探索手段により探索された前記ルートに含まれる道路の種類と交差点に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であるので、本件特許発明2と甲第3号証記載の発明とは、少なくとも上記相違点2で相違するものである。
そして、上記1.の如く、請求人が具体的に主張した理由を検討しても、本件特許発明1は、甲第3号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものということはできないので、本件特許発明2も同様に、甲第3号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本件特許発明3及び4に係る判断
(1)本件特許発明3は、本件特許発明2にさらに
「G:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であり、
本件特許発明4は、本件特許発明1にさらに
「H:前記判定手段は、前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か、前記道路の数、前記道路の位置、または前記道路が全体に占める割合に基づいて判定を行う」
との限定を付したした発明であるので、本件特許発明3及び4と甲第3号証記載の発明とは、少なくとも上記相違点2相違するものである。
(2)請求人は、審判請求書の「IV(3)(3-7)(3-7-1)」において、「甲第1号証には、削除されなかったノード/道路の情報は出力される経路の要約に含まれることが記載されており(甲第1号証【0036】、図12、図13)、ノードの種別には『高速出入口、有料出入口』の情報を含むから(【0011】)、甲第1号証は、本件特許発明4の構成を開示する。」旨、平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書の「5.I(1)」において、「甲第1号証には、少なくとも、『前記道路が有料道路であるか否か、国道であるか否か』に基づいて判定する構成が記載されているから、本件特許発明3の発明特定事項が記載されている。」旨主張している。
(3)しかし、甲第3号証記載の発明は、上記「第4 2.」「3.」に記載した様に、相違点2に係る、本件特許発明1の「前記抽出手段により抽出された前記情報を、前記判定手段により判定された前記パターンに適用して、前記ルートの要約を作成する作成手段」を備えるものではない。
そして、上記1.の如く、請求人が具体的に主張した理由を検討しても、本件特許発明1は、甲第3号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、さらに、上記(2)の主張を検討しても、そのことが変わるものではないので、本件特許発明1は、甲第3号証に記載の発明、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものということはできないので、本件特許発明3及び4も同様に、甲第3号証に記載の発明及び甲第1号証に記載の発明に基づいて、若しくは甲第3号証に記載の発明、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本件特許発明5及び6に係る判断
本件特許発明5及び6と甲第3号証に記載された発明の一致点、相違点は上記「第6 5.」に示したとおりである。
そこで、上記相違点2’及び2’’について検討する。

(1)まず、(a)請求人は、審判請求書の「IV(3)(3-8)」において、「本件特許発明5は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を方法発明として規定した点でのみ相違するから、(3-4)における本件特許発明1の進歩性欠如と同様の理由により、本件特許発明5は、引用発明5に周知例1、周知例3?6を適用して当業者が容易になし得たものである。」旨、また、同「IV(3)(3-9)」において、「本件特許発明6は、実質的に、装置発明である本件特許発明1を提供媒体発明として規定した点でのみ相違するから、(3-4)における本件特許発明1の進歩性欠如と同様の理由により、本件特許発明6は、引用発明6に周知例1、周知例3?6を適用して当業者が容易になし得たものである。」旨主張している。
(b)しかし、「(3-4)における本件特許発明1の進歩性欠如・・の理由」については、前記「1.(1)」で既に検討したとおりであって、甲第3号証記載の発明の「配車車両位置から配車位置までの経路結果から所定情報量内の大まかな道順内容に要約する経路間引き手段」を、「前記判定手段により判定された前記パターンに適用して」ルートの要約を作成するという具現化手法の異なるものに変更することが、当業者が容易になし得たとは言えない。

(2)また、前記「1.」の「(2)」で検討した点については、相違点2’及び2’’においてもあてはまる。

(3)そうすると、甲第1?7号証のすべてを参酌しても、甲第3号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第4号証?甲第7号証の周知慣用技術に基づいて、本件特許発明5?6の相違点2’及び2’’に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。


第8 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1?6に係る特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-19 
結審通知日 2015-10-21 
審決日 2015-11-05 
出願番号 特願平10-330492
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G01C)
P 1 113・ 113- Y (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 晋司  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 松永 謙一
中川 真一
登録日 2007-10-05 
登録番号 特許第4019528号(P4019528)
発明の名称 ナビゲーション装置および方法、並びに提供媒体  
代理人 富岡 英次  
代理人 豊島 匠二  
代理人 松野 仁彦  
代理人 越柴 絵里  
代理人 佐竹 勝一  

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