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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1308874
審判番号 不服2015-5157  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-17 
確定日 2016-01-12 
事件の表示 特願2011-69016「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-204698、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月26日の出願で、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年9月22日付け 拒絶理由通知
平成26年11月19日 意見書及び手続補正書提出
平成27年1月9日付け 拒絶査定
平成27年3月17日 本件審判請求

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、平成26年11月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項2ないし5にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1の記載は以下のとおりである(以下、本願請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

「【請求項1】
基板を減圧雰囲気下で処理する複数の処理室が周囲に設けられており、該処理室との間で基板を搬入出する搬送機構を内部に有する複数の真空搬送室と、
各真空搬送室に夫々設けられており、室内の雰囲気を大気雰囲気及び減圧雰囲気の間で切り替えることによって、該真空搬送室に対する基板の受け渡しを行うロードロック室と、
外部から供給された基板を一の前記ロードロック室へ搬送する第1大気搬送機構と、
該第1大気搬送機構から直接的に基板を受け取り、受け取った該基板を他の前記ロードロック室へ搬送する第2大気搬送機構と
を備え、
前記第2大気搬送機構は、
前記一のロードロックが設けられている真空搬送室の上側又は下側に配されており、
前記複数の真空搬送室及び各ロードロック室は、
前記第2大気搬送機構による基板の搬送方向に沿って直列的に配されていることを特徴とする基板処理装置。」

第3 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2004-349503号公報
引用文献2:特開2009-260087号公報

本願発明は、「真空搬送室」について「該処理室との間で基板を搬入出する搬送機構を内部に有する」と記載されている程度であり、引用文献1の「ロードロック室14D」は、真空処理室との間でウエハを搬入出する搬送アームを有するものであるとともに、真空状態となし得るものであるから、本願の「真空搬送室」に相当するということができる。また、仮に、引用文献1の「ロードロック室14D」が本願の「真空搬送室」に相当しないとしても、「ロードロック室」を「真空搬送室」に置換することは当業者が容易になし得る事項の範ちゅうに過ぎない。したがって、引用文献2記載の「第1走行領域」及び「第2走行領域」の配置構造を引用文献1記載の被処理体の処理システムに適用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

第4 当審の判断

1. 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、上記第3の引用文献1及び2には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(1) 引用文献1

ア. 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)
「被処理体を搬出入するロードポートを有して第1の方向に沿って設けた第1の大気圧搬送室と、
前記第1の大気圧搬送室内にその長手方向へ移動可能に設けられて前記被処理体を保持して搬送するための第1の搬送機構と、
前記第1の大気圧搬送室に、真空引き可能になされたロードロック室を介して接続されると共に、前記第1の大気圧搬送室に直交するように第2の方向に沿って設けられる第1の真空搬送室と、
前記第1の真空搬送室内にその長手方向へ移動可能に設けられて前記被処理体を保持して搬送するための第2の搬送機構と、
前記第1の大気圧搬送室に接続されると共に、前記第1の真空搬送室に沿って並行させて設けられる第2の大気圧搬送室と、
前記第2の大気圧搬送室内にその長手方向へ移動可能に設けられて前記被処理体を保持して搬送するための第3の搬送機構と、
前記第1の真空搬送室に接続された複数の真空処理室と、
前記第2の大気圧搬送室に、真空引き可能になされたロードロック室を介して接続された
少なくとも1つの真空処理室と、
を備えたことを特徴とする被処理体の処理システム。」(【特許請求の範囲】、【請求項4】)

(イ)
「・・・この第1の真空搬送室6は、真空状態と大気圧復帰状態とを迅速に実現することができるように真空引き可能になされたロードロック室14A(以下に説明するロードロック室は全てこのような特性を有する)と、この両側に設けられるゲートバルブGを介して上記第1の大気圧搬送室4の他方の側壁の略中央部に、これに直交するように接続して設けられる。・・・」(段落【0020】)

(ウ)
「・・・各ロードロック室14D、14Eは、先のロードロック室14Aよりもその寸法が長く設定されており、内部に少なくとも2枚のウエハを保持できるように例えば前後に2ヵ所のウエハ載置部(図示せず)が設けられる。そして、これらのウエハ載置部間に屈伸及び旋回が可能になされた搬送アーム64D、64Eが設けられており・・・」(段落【0025】)

(エ)
「・・・このロードロック室14A内のウエハWを第2の搬送機構36を用いて第1の真空搬送室6内へ取り込む。・・・」(段落【0028】)

(オ)
「・・・ウエハWは、この第1の真空搬送室6の他端部に設けたロードロック室14Bに搬出され、・・・」(段落【0030】)


(カ)
「・・・第2の大気圧搬送室10内へ取り込まれたこのウエハWは、この第2の大気圧搬送室10に接続されたロードロック室14D、14Eのいずれか一方へ第3の搬送機構54を用いて搬入され、このロードロック室14D、或いは14Eへ搬入されたウエハWは圧力調整後に、搬送アーム64D、或いは64Eを用いて真空処理室12D、或いは12Eへ搬入されてここで所定の処理が施される。処理後のウエハWは上記とは逆の経路を経て第2の大気圧搬送室10側に戻されることになる。・・・」(段落【0031】)

(キ)
「・・・ウエハWに対して最初に真空処理室12D、12Eで処理を行う場合には、ウエハWは、概略的には、・・・ロードロック室14B→第1の真空搬送室6→・・・→ロードロック室14A・・・の順で移送される。・・・」(段落【0033】)

(ク)
「図5に示すように、この第3実施例では、図1に示す第1実施例中の大気圧バッファ搬送室8及びバッファ用搬送機構44を設けず、その分、第2の大気圧搬送室10及び案内レール56の各長さを延長させて第1の大気圧搬送室4の側壁に連通するように接続している。・・・この中継載置台80にウエハWを一時的に保持させることにより、第1と第3の搬送機構20、54との間でウエハWの受け渡しをバッファ的に弾力を持たせながら行い得るようになっている。」(段落【0044】)

(ケ)
「請求項4に係る発明によれば、被処理体を搬出入するロードポートを有する第1の大気圧搬送室に対して直交するように第1の真空搬送室と第2の大気圧搬送室をそれぞれ連結して設け、上記第1の真空搬送室に、例えば大気に晒されることなく連続搬送を行うことが望ましい処理を行う複数の真空処理室をそれぞれ接続して設け、第2の大気圧搬送室に例えば処理の前後に大気に晒されても影響を与えない真空処理室を接続して設けるようにしたので、例えば大気に晒されることなく連続搬送を行うことが望ましい処理は第1の真空搬送室に接続した真空処理室で連続的に行い、処理の前後に大気に晒されても影響を与えない処理は第2の大気圧搬送室に接続した真空処理室で行うことができる。従って、処理システム全体の占有スペースと装置コストをそれぞれ削減でき、しかもスループットも高く維持することができる。」(段落【0048】)

(コ)
上記摘記事項(エ)及び(キ)の記載並びに【図5】の図示から、ロードロック室14Aは、第1の真空搬送室6との間でウエハWの受け渡しを行う機能を有することは明らかである。また、「ロードポート」は囲まれた空間とそれをとりまく外部との間でウエハを搬出入するためのものであることは技術常識を踏まえると、「被処理体を搬出入するロードポート」(上記摘記事項(ア))により搬入された「被処理体」である「ウエハW」は、処理システムの外部から供給されたものであることは明らかである。
【図5】


(サ)
上記摘記事項(ア)の「第1の真空搬送室に沿って並行させて設けられる第2の大気圧搬送室」及び「第2の大気圧搬送室に、真空引き可能になされたロードロック室を介して接続」との記載並びに【図5】の図示から、第1の真空搬送室6とロードロック室14Dは鉛直方向略同一の高さに配置されていることは明らかである。

イ. 引用発明
上記ア.の摘記事項(ア)ないし(ケ)、【図5】並びに認定事項(コ)及び(サ)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の真空処理室12A、12B、12Cが周囲に設けられており、該真空処理室12A、12B、12Cとの間でウエハWを搬入出する第2の搬送機構36を内部に有する第1の真空搬送室6と
真空処理室12Dとの間でウエハWを搬入出する搬送アーム64Dを有するロードロック室14Dと、
第1の真空搬送室6に設けられ、ウエハWの受け渡しを行うため、真空状態と大気圧復帰状態とを迅速に実現することができるように真空引き可能になされたロードロック室14Aと、
外部から供給されたウエハWを一の前記ロードロック室14Aへ搬送する第1の搬送機構20と、
該第1の搬送機構20から中継載置台80にウエハWを一時的に保持させることによりウエハWを受け取り、受け取った該ウエハWを他の前記ロードロック室14Dへ搬送する第3の搬送機構54とを備え、
前記第3の搬送機構54は、
前記一のロードロック室14Aが設けられている第1の真空搬送室6に沿って並行させて配されており、
前記第1の真空搬送室6と前記ロードロック室14Dは、鉛直方向略同一の高さに設けられており、
前記第1の真空搬送室6と前記ロードロック室14Dは、第3の搬送機構54によるウエハWの搬送方向に沿って直列的に配されている
被処理体の処理システム2」

(2) 引用文献2

ア. 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)
「本発明は、半導体ウエハ・・・などの基板に対して処理を施す基板処理装置である。」(段落【0001】)

(イ)
「・・・上下方向に積層配置された第1走行領域および第2走行領域を、第1主搬送ロボットおよび第2主搬送ロボットがそれぞれ走行する。・・・」(段落【0026】)

(ウ)
「・・・制御装置70は、走行駆動機構27を制御して、インデクサロボット6を、キャリヤCに対向するアクセス位置までインデクサ搬送路5を移動させる。・・・制御装置70は、アーム進退駆動機構24を制御して、支持棚44に支持された未処理の基板Wの下方に第2ハンド18Bを進出させるとともに(図8(b)参照)、昇降駆動機構26を制御して、第2ハンド18Bを上昇させることにより、キャリヤCの支持棚44から未処理の基板Wをすくい取る(図8(c)参照)。」(段落【0054】及び【0055】)

(エ)
「制御装置70は、・・・昇降駆動機構26を制御して、インデクサロボット6を、第1基板受け渡し台14に対向するアクセス位置(第1主搬送ロボット12とほぼ同じ高さ)まで上昇させる。」(段落【0058】)

(オ)
「・・・制御装置70は、昇降駆動機構26を制御して、第2ハンド18Bを、第2基板受け渡し台15に対向させる。・・・昇降駆動機構26を制御して、第2ハンド18Bを下降させることにより、第2基板受け渡し台15に未処理の基板Wが載置される(図9(e)参照)。・・・」(段落【0061】)

イ. 引用文献2記載事項
上記ア.の摘記事項(ア)ないし(オ)を整理すると、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「第1主搬送ロボットの走行する第1走行領域が、第2主搬送ロボットの走行する第2走行領域の上側に配されており、
基板を昇降させる昇降駆動機構26を有し、基板の受け渡し行うインデクサロボットを備える基板処理装置」

2. 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「真空処理室12A、12B、12C、12D」は本願発明の「減圧雰囲気下で処理する」「処理室」に相当し、以下同様に、「ウエハW」は「基板」に、「真空状態と大気圧復帰状態とを迅速に実現することができるように真空引き可能になされた」は「室内の雰囲気を大気雰囲気及び減圧雰囲気の間で切り替える」に、「一のロードロック室14A」は「一のロードロック室」に、「第1の搬送機構20」は「第1大気搬送機構」に、「第3の搬送機構54」は「第2大気搬送機構」に、「一のロードロック室14Aが設けられている第1の真空搬送室6」は「一のロードロック室が設けられている真空搬送室」に、「被処理体の処理システム2」は「基板処理装置」に相当する。
また、引用発明の「第1の真空搬送室6」には「ロードロック室14A」が設けられていることは、本願発明の「ロードロック室」が「真空搬送室に設けられて」いることに相当する。

そうすると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「基板を減圧雰囲気下で処理する処理室が周囲に設けられており、該処理室との間で基板を搬入出する搬送機構を内部に有する真空搬送室と、
真空搬送室に設けられており、室内の雰囲気を大気雰囲気及び減圧雰囲気の間で切り替えることによって、該真空搬送室に対する基板の受け渡しを行うロードロック室と、
外部から供給された基板を一の前記ロードロック室へ搬送する第1大気搬送機構と、
該第1大気搬送機構から基板を受け取る第2大気搬送機構と
を備え、
前記真空搬送室、前記一のロードロック室は、
前記第2大気搬送機構による基板の搬送方向に沿って直列的に配されている 基板処理装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、「真空搬送室」が複数設けられていて、かつ、当該複数の「真空搬送室」及び各「ロードロック室」は、「第2大気搬送機構による基板の搬送方向に沿って直列的に配されている」のに対し、引用発明の「真空搬送室」が複数設けられていない点。
<相違点2>
本願発明の「第2大気搬送機構は、一のロードロックが設けられている真空搬送室」の上側又は下側に配されて」いて、「第1大気搬送機構」から「直接的に基板を受け取」るものであるのに対し、引用発明の「第3の搬送機構54」は「第1の真空搬送室6」に沿って「並行させて配されて」いて、「第1の搬送機構20」から「中継載置台80にウエハWを一時的に保持させることによりウエハWを受け取」るものである点。

4. 判断

(1) 相違点1について
相違点1について検討する。引用文献1には、「真空搬送室」を複数設けかつ、当該複数の「真空搬送室」及び各「ロードロック室」を、「第2大気搬送機構による基板の搬送方向に沿って直列的に配」することの記載も示唆もない。
また、引用発明の「ロードロック室14D」の内部に「搬送アーム64」が設けられているとしても、ロードロック室は、真空状態と大気圧状態とを切り替えて実現するものであるのに対し、「真空搬送室」は、真空状態を維持するものであるから、引用発明の「ロードロック室14D」を、「真空搬送室」に置き換えることは、その動機に欠け、むしろ、阻害事由が存在すると言わざるを得ない。
そして、引用文献2記載事項や他の文献にも「真空搬送室」を複数設けかつ、当該複数の「真空搬送室」及び各「ロードロック室」を、「第2大気搬送機構による基板の搬送方向に沿って直列的に配」することは記載あるいは示唆されていない。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る事項を備えることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。

(2) 相違点2について
引用文献2記載事項は、「第1走行領域」を「第2走行領域」の上側に配するものであって、二つの「走行領域」を上下に配置するものであることが理解できる。しかし、引用発明において、「第3の搬送機構54」と、「第2の搬送機構36」を有する「第1の真空搬送室6」とを上下に配置することは、引用文献2記載事項を適用することで当業者が容易になし得たとしても、「ロードロック室14A」までをも、上下に配置することが容易であるとまでいうことはできない。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る事項を備えることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。

(2) 本願特許請求の範囲の請求項2ないし5に係る発明について
本願特許請求の範囲の請求項2ないし5に係る発明は、本願発明を直接あるいは間接に引用するものであって、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-12-21 
出願番号 特願2011-69016(P2011-69016)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 影山 直洋大山 健  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 久保 克彦
刈間 宏信
発明の名称 基板処理装置  
代理人 河野 登夫  
代理人 河野 英仁  

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