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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D |
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管理番号 | 1309553 |
審判番号 | 不服2014-25634 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-15 |
確定日 | 2016-01-04 |
事件の表示 | 特願2012-552283「偏光フィルムを有する車両内表示装置用表示要素」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月18日国際公開、WO2011/098190、平成25年 5月23日国内公表、特表2013-519097〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成22年12月28日 (パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年2月10日、DE、及び2010年11月1日、DE、を伴う国際出願) 手続補正: 平成24年10月9日(以下、「補正1」という。) 拒絶理由通知 : 平成25年11月12日付け(発送日:同年同月19日) 手続補正: 平成26年2月10日 (以下、「補正2」という。) 拒絶査定: 平成26年9月5日付け(送達日:同年同月9日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成26年12月15日 手続補正: 平成26年12月15日(以下、「本件補正」という。) 第2 補正の却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正によって、特許請求の範囲は、以下のように補正された。 (補正前) 「【請求項1】 車両の表示装置用の表示要素(1)であって、 基板(1.1)と可撓性偏光フィルム(1.2)とから形成され、 前記可撓性偏光フィルムが前記基板に直接貼り付けられる、表示要素(1)。 【請求項2】 前記偏光フィルム(1.2)が前記基板の前面(1.1)に貼り付けられる、請求項1に記載の表示要素(1)。 【請求項3】 前記偏光フィルム(1.2)が不完全な、完全な、及び/又は接着による方法で前記基板(1.1)に貼り付けられる、請求項1又は2に記載の表示要素(1)。 【請求項4】 前記偏光フィルム(1.2)が前記基板(1.1)に接着される、請求項1?3のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項5】 前記偏光フィルム(1.2)が前記基板(1.1)上に積層される、請求項1?4のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項6】 前記偏光フィルム(1.2)が円偏光フィルムである、請求項1?5のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項7】 前記基板(1.1)が印刷される、請求項1?6のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項8】 前記基板(1.1)及び前記偏光フィルム(1.2)がほぼ同じ寸法を有する、請求項1?7のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項9】 前記表示要素(1)が少なくとも1つの光源によって背後から光を当てられる、請求項1?8のいずれか1項に記載の表示要素(1)を有する表示装置。 【請求項10】 前記表示装置が車両の多機能表示装置の構成要素である、請求項9に記載の表示装置。」 (補正後) 「【請求項1】 車両の表示装置用の表示要素(1)であって、 基板(1.1)と可撓性偏光フィルム(1.2)とから形成され、 前記可撓性偏光フィルムが円偏光フィルムであって前記基板に直接貼り付けられ、 前記表示要素(1)が少なくとも1つの光源によって背後から光を当てられ、前記少なくとも1つの光源はその照明のスイッチを入れる又は切ることによって前記表示要素が前記可撓性偏光フィルムを介して目に見えるように又は目に見えないようにする、表示要素(1)。 【請求項2】 前記偏光フィルム(1.2)が前記基板の前面(1.1)に貼り付けられる、請求項1に記載の表示要素(1)。 【請求項3】 前記偏光フィルム(1.2)が不完全な、完全な、及び/又は接着による方法で前記基板(1.1)に貼り付けられる、請求項1又は2に記載の表示要素(1)。 【請求項4】 前記偏光フィルム(1.2)が前記基板(1.1)に接着される、請求項1?3のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項5】 前記偏光フィルム(1.2)が前記基板(1.1)上に積層される、請求項1?4のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項6】 前記基板(1.1)が印刷される、請求項1?5のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項7】 前記基板(1.1)及び前記偏光フィルム(1.2)がほぼ同じ寸法を有する、請求項1?6のいずれか1項に記載の表示要素(1)。 【請求項8】 前記表示装置が車両の多機能表示装置の構成要素である、請求項1に記載の表示装置。」(下線は補正箇所。) 上記補正のうち補正後の請求項1についての補正は、補正前の請求項9に係る発明が「表示要素」ではなく「表示装置」に係る発明であることを踏まえると、補正前の請求項1を引用する請求項6を、「前記表示要素(1)が少なくとも1つの光源によって背後から光を当てられ、前記少なくとも1つの光源はその照明のスイッチを入れる又は切ることによって前記表示要素が前記可撓性偏光フィルムを介して目に見えるように又は目に見えないようにする、」と限定するものである。 よって、この補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2 検討 (1)引用例記載の事項・引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-208977号公報(以下「引用例」という。)には、「表示装置」(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項(a)ないし(b)が図面の図4ないし図6と共に記載されている。(下線は当審による。) (a) 「【0001】 本発明は、電界発光表示素子などの自発光型表示素子を備えた表示装置に関するものである。」 (b) 「【0027】 図4?図6に本発明の第2実施形態を示す。図4は電界発光表示素子1を備えた車両用の表示装置の正面図であり、図5はその断面図(図4に於けるB-B断面)である。図6は表示板および円偏光板の部分断面図である。なお、前記第1実施形態と同一もしくは相当箇所には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。 【0028】 本実施形態に於ける表示装置は、速度計20と回転計21を有している。なお、回転計21の説明は省略する。速度計20は、電界発光表示素子1と、電界発光表示素子1の前面側に設けられ車両の速度を現す目盛,数字,文字などの表示部22が施された表示板23と、表示部22を指し示す指針24と、指針24を回動させる表示器本体25と、表示板23の前面側に設けられた円偏光板3と、表示器本体25および電界発光表示素子1と電気的に接続され、表示器本体25や電界発光表示素子1を駆動する駆動回路などが搭載された硬質の回路基板5と、指針24および表示板23を照明する光源としての発光ダイオード26,26Aを備えている。 【0029】 また、表示板23と回路基板5との間に配置されたケース部材4と、回路基板5の裏面側を覆うカバー6と、円偏光板3の周縁前方側に配置され円偏光板3(表示板23)の可視領域を定める開口部7を有する例えば黒色の合成樹脂からなる見返し部材8と、円偏光板3の前方側を被う無色透明な合成樹脂からなる透視板9を備えている。なお、電界発光表示素子1および円偏光板3の基本的構造は前記第1実施形態と同じため、説明は省略する。また詳細は後述するが、図4に於いて、表示部22は表示板照明用の発光ダイオード26Aが点灯しない限り、視認されないものである。 ・・・ 【0032】 表示板23は、光透過性の基板31に透過性の表示部22および不透過性の地部32を設けた第1の表示領域S1と、表示部22および地部32を設けないことによって形成される第2の表示領域S2とを有するものである。基板31の材料としては、前記第1実施形態と同様に、ほぼ等方性の屈折率を持つ材料からなる例えば無色透明なアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などからなるが、着色されていても良い。基板31の裏面側に、表示部22となる箇所を除いて暗色系(黒色,濃灰,濃青,濃緑など)の遮光層19を設ける。この遮光層19を設けることによって地部32が形成され、遮光層19が設けられていない箇所が透過性の表示部22である。 ・・・ 【0037】 この様に、表示部22あるいは電界発光表示素子1の表示時,非表示時にかかわらず、前記第1実施形態と同様に、一体感のある表示装置を得ることができる。」 また、引用例の段落【0028】には、「・・・表示板23の前面側に設けられた円偏光板3」とあり、また図5,6の記載から見ても、この円偏光板が表示板の基板31の前面側に直接設けられていることは明らかである。 さらに、図5には、発光ダイオード26Aが、表示板の後方側に配置されていることが記載されている。 そうすると、上記記載(a)ないし(b)及び図4ないし6の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。 「車両用の表示装置の表示板および円偏光板であって、 表示板は表示部を設けた基板を有し、 前記円偏光板が前記基板の前面に直接設けられ、 前記表示板および円偏光板が、表示板の後方側に配置された発光ダイオードによって照明され、表示部は表示板照明用の発光ダイオードが点灯しない限り、視認されない、表示板および円偏光板。」(以下、「引用発明」という。) (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 まず、引用発明における「車両用の表示装置の表示板および円偏光板」は、本願補正発明の「車両の表示装置用の表示要素(1)」に相当する。 引用発明の「基板」は、本願補正発明の「基板」に相当し、引用発明の「円偏光板」と、本願補正発明の「可撓性偏光フィルム(1.2)」とは、共に「偏光部材」である点で共通するから、引用発明において「表示板および円偏光板」が「基板」を有する「表示板」と「円偏光板」とからなることと、本願補正発明において「基板(1.1)と可撓性偏光フィルム(1.2)とから形成され」ることとは、共に「基板と偏光部材とから形成され」る点で共通する。 引用発明において「前記円偏光板が前記基板の前面に直接設けられ」ることと、本願補正発明において「前記可撓性偏光フィルムが円偏光フィルムであって前記基板に直接貼り付けられ」ることとは、共に「前記偏光部材が円偏光部材であって前記基板に直接取り付けられ」ることである点で共通する。 引用発明の「前記表示板および円偏光板が、表示板の後方側に配置された発光ダイオードによって照明され」る点は、本願補正発明の「前記表示要素(1)が少なくとも1つの光源によって背後から光を当てられ」る点に相当する。 また、引用発明の「表示板照明用の発光ダイオード」は、「表示板の後方側に配置され」ているから、本願補正発明において「前記表示要素(1)」に「背後から光を当て」る「少なくとも1つの光源」に相当する。 次に、引用発明は「表示部は表示板照明用の発光ダイオードが点灯しない限り、視認されない」ものであるから、発光ダイオードを点灯する何らかのスイッチを備えていることは明らかである。したがって、引用発明の「表示部は表示板照明用の発光ダイオードが点灯しない限り、視認されない」点と、本願補正発明の「前記少なくとも1つの光源はその照明のスイッチを入れる又は切ることによって前記表示要素が前記可撓性偏光フィルムを介して目に見えるように又は目に見えないようにする」点とは、共に「前記少なくとも1つの光源はその照明のスイッチを入れる又は切ることによって前記表示要素が前記偏光部材を介して目に見えるように又は目に見えないようにする」点で共通する。 してみると、両者の実質的な一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「車両の表示装置用の表示要素であって、 基板と偏光部材とから形成され、 前記偏光部材が円偏光部材であって前記基板に直接取り付けられ、 前記表示要素が少なくとも1つの光源によって背後から光を当てられ、前記少なくとも1つの光源はその照明のスイッチを入れる又は切ることによって前記表示要素が前記偏光部材を介して目に見えるように又は目に見えないようにする、表示要素。」 (相違点) 本願補正発明では円偏光部材が「可撓性偏光フィルム」であって、基板に貼り付けられるのに対し、引用発明では、単に「円偏光板」とされているに過ぎず、可撓性のあるフィルム形状であって、基板の前面に貼り付けられているか否かは不明である点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 例えば、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-127885号公報(引用例の段落【0003】で【特許文献2】として参照されているもの)や、特開2002-184566号公報には、それぞれ以下のように記載されている。(下線は当審による。) 特開平9-127885号公報 「【0102】図18及び図19は、本発明を有機EL素子に適用した第2及び第3の実施例をそれぞれ示す要部の拡大断面図である。 ・・・ 【0107】従って、図18又は図19の有機EL素子の作製において、基板6上にフィルム状の円偏光板49を貼り付けた後、上記の方法により、温度80℃以下で、 150nm厚、40Ω/cm^(2) のITO透明電極を形成することが可能であるから、この温度条件下では円偏光板49のフィルム耐熱性は十分であり、円偏光板49は変質することなく素子内に保持されることになる。」 特開2002-184566号公報 「【0043】本実施形態では偏光特性を有する可撓性基材として、偏光フィルム2と位相差フィルムであるλ/4フィルム1を組合せた円偏光フィルム6を挙げる。図2は外光が第2電極で反射する様子とエレクトロルミネッセンス層4で発光した自発光光がエレクトロルミネッセンス素子外へ出光する様子を模式的に表した図である。なお、同図紙面上側では外光がエレクトロルミネッセンス素子に入光し、第2電極にて反射する様子を説明の都合上まとめて表し、同図紙面下側ではエレクトロルミネッセンス層からの自発光光がエレクトロルミネッセンス素子外に出光する様子を説明の都合上まとめたが、実際は表示面内の同じ位置で外光の反射も自発光光の出光も行われている。 ・・・ 【0046】従って外光の影響を防ぐことができるEL素子を提供することができる。」 これらの記載からも明らかなように、可撓性のある円偏光フィルムを用い、これを貼り付けることは周知技術である。そして引用発明と該周知技術とは円偏光板を用いる技術である点で同じ技術分野に属するから、引用発明に該周知技術を用い、引用発明において円偏光板を可撓性のある円偏光フィルムとし、これを基板の前面に貼り付けるようにして、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。 よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 まとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1を引用する請求項6に係る発明は、補正2によって補正された特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、該請求項6を独立請求項の形式に書き下したものは次のとおりである。 「車両の表示装置用の表示要素(1)であって、 基板(1.1)と可撓性偏光フィルム(1.2)とから形成され、 前記可撓性偏光フィルムが前記基板に直接貼り付けられ、 前記偏光フィルム(1.2)が円偏向フィルムである、表示要素(1)。」(以下「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-208977号公報(引用例)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用例記載の事項・引用発明 引用例に記載されている事項及び引用発明は、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(1)引用例記載の事項・引用発明」に示したとおりである。 4 判断 本願発明は、表現上の相違を除けば、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明から、「前記表示要素(1)が少なくとも1つの光源によって背後から光を当てられ、前記少なくとも1つの光源はその照明のスイッチを入れる又は切ることによって前記表示要素が前記可撓性偏光フィルムを介して目に見えるように又は目に見えないようにする、」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に上記本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(3)判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-03 |
結審通知日 | 2015-08-04 |
審決日 | 2015-08-17 |
出願番号 | 特願2012-552283(P2012-552283) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 里村 利光 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 中塚 直樹 |
発明の名称 | 偏光フィルムを有する車両内表示装置用表示要素 |
代理人 | 原 裕子 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 三好 秀和 |