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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1310138
審判番号 不服2013-21648  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-05 
確定日 2016-01-18 
事件の表示 特願2011-138977「蓄電装置を備えた熱電併給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日出願公開、特開2011-211902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月14日に出願した特願2001-567103号の一部を平成15年5月30日に新たに特願2003-154969号として出願し、さらにその一部を平成23年6月22日に新たな出願としたものであって、平成25年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年11月5日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同日付けで手続補正がなされ、当審により平成26年6月18日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成26年9月11日付けで拒絶理由が通知され、平成26年11月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月23日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年5月1日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し、平成27年7月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.平成27年7月6日付けの手続補正についての補正の却下の決定。
[補正の却下の決定の結論]
平成27年7月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、平成27年3月30日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりである。

「【請求項1】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯には、商用電力(2)は、第三のスイッチ(13)を閉にして、コンバータ(6)に送られ、直流に変換されて、蓄電装置(7)に貯えられ、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に、商用電力(2)は、交流の電力負荷(9)に直接供給される一方、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力は、インバータ(8)により交流に変換されて第二のスイッチ(12)を閉にして、商用電力(2)と発電装置(3)で発電した電力とともに、電力負荷(9)に供給され、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と商用電力(2)の合計電力は発電装置(3)で発電した電力より大きいことを特徴とする熱電供給システム。
ここに、特定出力C1=2/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項2】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯に、商用電力(2)は、第三のスイッチ(13)を閉にして、コンバータ(6)に送られ、直流に変換されて、蓄電装置(7)に貯えられることを特徴とする請求項1に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項3】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、
電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯に、商用電力(2)により電力を供給するとともに、商用電力(2)は、第三のスイッチ(13)を閉にして、コンバータ(6)に送られ、直流に変換されて、蓄電装置(7)に貯えられることを特徴とする請求項1?2に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項4】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、
電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯に、蓄電装置(7)に商用電力(2)を貯えることを特徴とする請求項1?3に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項5】
発電装置(3)が、ガスタービン、エンジンを構成要素とし、又は燃料電池であるとことを特徴とする請求項1?4に記載の熱電併給システム。
【請求項6】
発電装置(3)が交流発電装置又は直流発電装置であることを特徴とする請求項1?5に記載の熱電併給システム。
【請求項7】
蓄電装置(7)が、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以下の時間帯に、水を電気分解して水素と酸素を製造して貯蔵することを特徴とする請求項1?6に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C1=2/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項8】
蓄電装置(7)が、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、キャパシタのうちから選択される少なくとも1種又は2種以上を備えることを特徴とする請求項1?7に記載の熱電併給システム。
【請求項9】
発電装置(3)に含まれる排熱回収装置(4)から回収された発電装置(3)の排熱を、吸収式冷凍機、温水ボイラから選択される1種又は2種以上に供給することを特徴とする請求項1?8に記載の熱電併給システム。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。

「【請求項1】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯には、商用電力(2)は、第三のスイッチ(13)を閉にして、コンバータ(6)に送られ、直流に変換されて、蓄電装置(7)に貯えられ、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に、商用電力(2)は、交流の電力負荷(9)に直接供給される一方、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力は、インバータ(8)により交流に変換されて第二のスイッチ(12)を閉にして、商用電力(2)と発電装置(3)で発電した電力とともに、電力負荷(9)に供給され、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつであることを特徴とする熱電供給システム。
ここに、特定出力C1=2/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項2】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯に、商用電力(2)は、第三のスイッチ(13)を閉にして、コンバータ(6)に送られ、直流に変換されて、蓄電装置(7)に貯えられることを特徴とする請求項1に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項3】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、
電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯に、商用電力(2)により電力を供給するとともに、商用電力(2)は、第三のスイッチ(13)を閉にして、コンバータ(6)に送られ、直流に変換されて、蓄電装置(7)に貯えられることを特徴とする請求項1?2に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項4】
発電装置(3)と蓄電装置(7)とから構成される熱電併給システムにおいて、
電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯に、蓄電装置(7)に商用電力(2)を貯えることを特徴とする請求項1?3に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C2=1/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項5】
発電装置(3)が、ガスタービン、エンジンを構成要素とし、又は燃料電池であるとことを特徴とする請求項1?4に記載の熱電併給システム。
【請求項6】
発電装置(3)が交流発電装置又は直流発電装置であることを特徴とする請求項1?5に記載の熱電併給システム。
【請求項7】
蓄電装置(7)が、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以下の時間帯に、水を電気分解して水素と酸素を製造して貯蔵することを特徴とする請求項1?6に記載の熱電併給システム。
ここに、特定出力C1=2/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)
【請求項8】
蓄電装置(7)が、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、キャパシタのうちから選択される少なくとも1種又は2種以上を備えることを特徴とする請求項1?7に記載の熱電併給システム。
【請求項9】
発電装置(3)に含まれる排熱回収装置(4)から回収された発電装置(3)の排熱を、吸収式冷凍機、温水ボイラから選択される1種又は2種以上に供給することを特徴とする請求項1?8に記載の熱電併給システム。」

(2)新規事項:平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(以下、特許法第17条の2第3項という。)に規定される要件について

(2-1)本件補正後の請求項1に係る発明は、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に」という特徴を有するものである。

(2-2)本件補正後の請求項1に係る発明は、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に、商用電力(2)は、交流の電力負荷(9)に直接供給される一方、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力は、インバータ(8)により交流に変換されて第二のスイッチ(12)を閉にして、商用電力(2)と発電装置(3)で発電した電力とともに、電力負荷(9)に供給され、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつである」という特徴を有するものである。

そこで、本件補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

(2-1)の記載事項について
「第一のスイッチ(11)」を「閉にして」という記載は、「第一のスイッチ(11)」を閉にするという動作を表すものであり、当然その前の状態は開状態であると解される。
当初明細書等においてスイッチの開閉について段落【0010】には、
「燃料1は、発電装置3に供給して、交流電力を発生させて、発生した電力をスイッチ11を閉(審決注:「開」は誤記)にして、交流の電力負荷9に供給する。一方、発電装置3において発生する排熱は熱回収装置4により回収されて、熱負荷5に熱供給される。
商用電力2は、交流の電力負荷9に直接供給される一方、電力負荷(電力消費)が少ない時間帯には、スイッチ13を閉にして(審決注:「開にしてし」は誤記)コンバータ6に送られ、直流に変換されて、蓄電装置7に貯えられる。蓄電装置7に貯えられた電力は、ピーク時間帯には、インバータ8により交流に変換されてスイッチ12を閉(審決注:「開」は誤記)にして、商用電力2と発電装置3で発電した電力とともに、電力負荷9に供給される。制御手段(図示せず)により、スイッチ11、スイッチ12を開閉して、商用電力2、発電装置3による電力、蓄電装置7に貯えられた電力の3系統の配分量を調整する。
この場合、制御手段、同期投入装置(図示せず)、スイッチ11、スイッチ12により、電力負荷に供給される電力は位相が一致するように制御される。
又、制御手段(図示せず)により、スイッチ13を開閉して、蓄電装置7への開始、停止を行う。」と記載されている。
上記記載を参照すると、第一のスイッチ(11)を開閉する動作は、発電装置3で発生させた電力を電力負荷に供給する時に、制御手段が行う制御動作である。
そうすると、本件補正後の請求項1に係る発明の「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には」、「第一のスイッチ(11)を閉にして」との記載は、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」であるという条件のもと、制御手段が第一のスイッチ(11)の開閉状態を変化させることにより、(つまり、「第一のスイッチ(11)を開から閉にして」)、発電装置(3)で発生している電力を、交流の電力負荷(9)に供給するように制御することといえる。
ここで、「特定出力C1以上の時間帯」でない時に、発電装置3から電力負荷9への電力供給の状態を示す記載として、当初明細書等の段落【0013】には、
「なお、本発明では、電力負荷の消費電力が特定出力C2以下であっても、電力負荷の消費電力が存在するのであり、それは、本発明の熱電併給システムによって発電した電力あるいは商用電力で賄えばよい。・・・・(途中省略)・・・・・なお、一般には、C0≧C1≧C2であり、以下、電力負荷の消費電力が特定値C3(C0≧C1≧C3≧C2)である場合の本熱電併給システムについて説明しよう。例えば、電力負荷の消費電力を商用電力のみで電力負荷に供給することができれば、電力負荷に供給することが一例として可能である。また、商用電力と蓄電装置に貯えた電力の両方で、あるいは商用電力と発電装置で発生した電力の両方で電力負荷に供給することも一例として可能である。」と記載されている。
この記載によると、電力負荷の消費電力が特定出力C2以下の場合、及び、特定値C3(C0≧C1≧C3≧C2)である場合にも、発電装置3から電力負荷9へ電力供給を行うことが示されており、発電装置3から電力負荷9へ供給を行うスイッチ11の状態について、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に」開閉状態を変化させることが特定されるものではない。
また、当初明細書等の記載全体を参照しても、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上でない時間帯において、第一のスイッチ(11)の開閉状態が特定されるものではない。
そうすると、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」以外に第一のスイッチ(11)の状態を特定することは新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明の、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に」という記載事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

なお、「第一のスイッチ(11)を閉にして」という記載は、当審で平成27年5月1日付けで通知した最後の拒絶の理由(理由A.(1))において、平成27年3月30日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとして指摘したものである。
これに対し、請求人は、平成27年7月6日付け意見書において、
「(1)「第一のスイッチ(11)を閉にして、」について
審判官殿は「第一のスイッチ(11)を「閉にして」とは、閉にする動作を表し、その前の状態は「開」であったことを意味するから、C1以上でないときは、第一のスイッチ(11)は、開であったことを意味することから、C1以上でないときは、第一のスイッチ(11)は、開であったことを意味する。」旨説示されるが、「C1以上でないときは、第一のスイッチ(11)は、開であった」ことは、審判官殿の誤解である。
請求項1には、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、交流の電力負荷(9)に供給すること」が、本質的な事項であり、発電装置(3)で発生した電力を、交流の電力負荷(9)に供給する技術的手段として、第一のスイッチ(11)を閉にすることが必要であることが記載されているに過ぎません。電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上になった時刻t1に、第一のスイッチ(11)が開から閉になることは、請求項1には何ら記載されていません。電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上になった時刻t1より前の時刻(t1-Δt)に開から閉に切り替わっていればよく、必ずしもΔt=0の時刻t=t1で、第一のスイッチ(11)のスイッチが切り替わらなければならないということはありません。「第一のスイッチ(11)を「閉にして」の解釈としては、当初明細書の全ての記載を総合することにより、第一のスイッチ(11)が開から閉になるのは、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上になった時刻t1であると解する必要はなく、当該時刻t1より前の時刻(t1-Δt)に、開から閉になっていればよいと解すべきである。ここに、第一のスイッチ(11)の開閉の切り替え時期が明記されていない以上、Δtが0でなければならないと厳格に解すべきではない。してみれば、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上になった時点t1において、第一のスイッチ(11)が閉であったならば、時刻t1より前の時刻(t1-Δ)において、第一のスイッチ(11)は開から閉になっているのであるから、時刻t1では何ら第一のスイッチ(11)の開閉操作をすることなく、発電装置(3)で発生した電力を、交流の電力負荷(9)に供給すればよく、かかる解釈は、本発明の本質的事項にも合致している。ただし、上記時刻t1の直前に、第一のスイッチ(11)が開であったならば、時刻t1になったと同時に、第一のスイッチ(11)は開から閉に切り替えなければならない。このように解さなければ、「発電装置(3)で発生した電力を、交流の電力負荷(9)に供給する」との記載と矛盾を生じるからである。本発明の本質的事項は、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力と商用電力と蓄電装置(7)に貯えられた商用電力の3種類の電力により、交流の電力負荷(9)に供給することであり、第一のスイッチ(11)の開閉の解釈についても、本発明の本質的事項を念頭に入れて解釈すべきである。」と主張している。
しかし、「閉にして」という記載は、スイッチの開閉状態を変化させる動作を示すものであることは明らかであり、開閉状態を変化させない動作をも含むと解釈すべきとの主張は、スイッチの開閉状態を変化させる構成を新たに付加すると共に、開閉状態を変化させない構成をも含むと主張するものというほかはなく、請求人の上記主張は採用されない。

(2-2)の記載事項について
「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつ」電力負荷(9)に供給することは、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に」行われるものである。
ここで、当初明細書等の段落【0013】には、
「電力負荷を消費電力を電力計(電力負荷の前に設置される)で測定して、測定した電力が特定出力より特定出力C1以上の場合には、商用電力と発電装置の電力(通常は効率の良い最高出力の70%程度の出力)、蓄電装置に貯えられた電力により、電力負荷に電力を供給する。
例えば、特定出力C1を2/3*C0(ここに、C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値とする。)とする。熱電併給システムにおいて、このように設定することにより、電力負荷が2/3*C0?C0の時間帯は、蓄電装置に貯えられた商用電力と発電装置による電力により例えば1/3*C0を賄い、残りを商用電力で賄うようにすることができる。本熱電併給システムによれば、ピーク時間帯でも、1/3*C0以下の商用電力しかバックアップ電力を必要としない。」と記載されている。
この記載においては、電力負荷の消費電力が特定出力C1以上の場合に、蓄電装置に貯えられた商用電力と発電装置による電力と商用電力との3つの電力を、電力負荷に供給することは示されているが、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつ電力負荷(9)に供給することは示されていない。
また、当初明細書等の記載全体を参照しても、電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつ電力負荷(9)に供給することは明らかでない。
したがって、上記(2-2)の記載事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

本件補正後の請求項1に係る発明は、当初明細書等に記載した事項の範囲のものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)目的要件について
本件補正が、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、特許法第17条の2第4項という。)の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。

特許法第17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。

本件補正の前後で請求項数は変わっておらず、また、本件補正は請求項1のみ補正するものであって、請求項2?9の記載は、本件補正の前後で同じであるから、本件補正前の請求項1は、本件補正後の請求項1に一応対応する。
そこで、本件補正前後の請求項1の記載事項について検討すると、本件補正前の請求項1の「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に、商用電力(2)は、交流の電力負荷(9)に直接供給される一方、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力は、インバータ(8)により交流に変換されて第二のスイッチ(12)を閉にして、商用電力(2)と発電装置(3)で発電した電力とともに、電力負荷(9)に供給され、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と商用電力(2)の合計電力は発電装置(3)で発電した電力より大きい」の構成が、本件補正後の請求項1は「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に、商用電力(2)は、交流の電力負荷(9)に直接供給される一方、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力は、インバータ(8)により交流に変換されて第二のスイッチ(12)を閉にして、商用電力(2)と発電装置(3)で発電した電力とともに、電力負荷(9)に供給され、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつであること」に変更された。

本件補正後の請求項1の「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつであること」は、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)と」の合計が、常にC0ということになる。
したがって、本件補正前の請求項1は、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と商用電力(2)の合計電力は発電装置(3)で発電した電力より大きい」ものである「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」における電力負荷(9)への供給電力を、本件補正後の請求項1は「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつ」であり、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」に「C0」を電力負荷(9)の供給電力とする構成に変更しており、負荷がC0?C1であったものが、負荷が常にC0に変更されている。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。
また、本件補正は請求項の削除を目的としたものでも、誤記の訂正を目的としたものでも、明りょうでない記載の釈明を目的としたものでもない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合していない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(以下、それぞれ特許法第17条の2第5項、同法第126条第5項という。))について以下に検討する。

(1)特許法第36条についての検討
(1-1)本件補正後の請求項1には、「C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。」という記載、また、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」及び「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C2以下の時間帯」という記載がそのまま存在する。

(1-1)の記載についての検討
本件補正後の請求項1の「一日の熱電併給システムのピーク電力値」についてみると、本件の「熱電供給システム」は、明細書の段落【0006】の「(3)熱電併給システム 熱電併給システムとは、発電装置による電力を供給するとともに、発電設備運転により生じる排熱を回収して熱を供給するシステムであり、電力消費地に設置することを必要とする分散型システムであり、特に小型化低コスト化を図って広範囲に普及させることが求められるシステムである。本発明の熱電併給システムは、例えば、出力が数百?500kW級のもの、あるいは出力2kW以下の高分子電解質型燃料電池(家庭用)からなり、10kW以下の蓄電装置を備えたもの等がある。」の記載を参照すれば、「出力が数百?500kW級のもの、あるいは出力2kW以下の高分子電解質型燃料電池(家庭用)」のような規模の「熱電供給システム」を前提としたものである。
例えば、同程度の規模の熱電供給システムにおける一日の電力負荷の変動の一例を挙げるとすると、特開平3-74147号公報の第6図には50kW程度の負荷の日変動が示され、特開2001-112176号公報の図2には、家庭とされる4kW程度の負荷の日変動が示されているが、これらに示される負荷の日変動は、それぞれが熱電供給システムの使用者それぞれに応じた特徴を持つものであって、当然、家庭用のごとく、熱電供給システムの規模が小さくなればなるほど、負荷一つ一つの影響が大きくなり、負荷のすべてが毎日使われることはあり得ないように、昨日、今日、明日と日が変われば、「電力値」が変化することは明らかなものといえ、また、熱電供給システムの規模が小さくなればなるほど、使用される時刻にもばらつきが生じると考えられることから、一日のうちのどの時点で「ピーク」が生じるかも日々変化するものといえる。
したがって、本件の「熱電供給システム」の「一日の熱電併給システムのピーク電力値」とは、そもそもどのようなものか明確でない。

また、「一日の熱電併給システムのピーク電力値」であり、「一定期間のデータから設定される」とされる「C0」についても、過去の一定期間のデータに基づき予め設定された値なのか、一定期間のデータを測定しながら設定される値なのか等明確でない。
「C0」が、過去の一定期間のデータに基づき予め設定された値であるとすると、「一定期間」とは、どのような期間にわたる一定期間であるのか、また、「一日」とされる日とどのような関係を有するのか不明である。例えば、過去10月のデータの平均としてC0を与えられたとして、「一日の熱電併給システムのピーク電力値」をどのように設定することができるのか、発明の詳細な説明の記載を参照しても記載されておらず、どのように設定して、どのように電力の供給を制御することができるのか不明である。
一方、「C0」が、一定期間のデータを測定しながら設定される値であるとすると、一日のピーク電力値は、一日が終了しないと決定しないものであり、現時刻における負荷の変動にどのように対応するのか、発明の詳細な説明を参照しても記載されておらず、どのように設定して、どのように電力の供給を制御することができるのか不明である。

さらに、「一日の熱電併給システムのピーク電力値」である「C0」に基づき設定される「特定出力C1以上の時間帯」について、「特定出力C1以上」となっている時間のみが「特定出力C1以上の時間帯」であるのか、あるいは、時間帯が設定されれば、「特定出力C1以上」でない場合を含むのか不明であり、「特定出力C2以下の時間帯」についても、「特定出力C2以下」となっている時間のみが「特定出力C2以下の時間帯」であるのか、あるいは、時間帯が設定されれば「特定出力C2以下」でない場合を含むのか不明である。

(1-2)本件補正後の請求項1には、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に、商用電力(2)は、交流の電力負荷(9)に直接供給される一方、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力は、インバータ(8)により交流に変換されて第二のスイッチ(12)を閉にして、商用電力(2)と発電装置(3)で発電した電力とともに、電力負荷(9)に供給され、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつであることを特徴とする熱電供給システム。
ここに、特定出力C1=2/3*C0(C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値である。熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。)」と記載されている。

(1-2)の記載についての検討
本件補正後の請求項1に記載される「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」は、電力負荷(9)の消費電力がC1以上であるから、ピーク電力値であるC0には達しない場合を含むものである。
しかし、蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつを供給するということは、合計された供給電力はC0ということになり、電力負荷(9)の消費電力が、ピーク電力値であるC0に達しない場合でも、C0の電力を供給するものとして記載され、不明なものとなっている。
また、発明の詳細な説明には、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」に、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつを供給する」ことは記載されておらず、また、当業者が「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」に、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と発電装置(3)で発電した電力と商用電力(2)とが、1/3*C0ずつを供給する」ことを実施することができる程度に記載されているものでもない。

なお、当審で平成27年5月1日付けで通知した最後の拒絶の理由(理由B.)では、「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」として、請求項1に、「熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。」とあるがどのようなものか明確でなく、「熱電併給システムのピーク電力値」に基づき設定される「特定出力C1以上の時間帯」及び「特定出力C2以下の時間帯」についても依然として明確でない点を指摘して拒絶の理由を通知した。
これに対し、請求人は、平成27年7月6日付け意見書において、
「当業者は、本発明に係る、熱電供給システムの需要電力の日変動曲線を把握しており、物件1(需要電力の日変動曲線)のB図において、需要電力のピーク値C0が、需要電力の日変動曲線の頂点P0の値である。そして、明日の需要電力のピーク値C0は、当業者であるならば、一定期間のデータから予測して設定可能である(人が今日のデータから明日の需要電力の日変動曲線を予測して、そこからC0を設定してもよい。)。当業者が、明日の需要電力の日変動曲線が予想できるのにも拘わらず、需要電力のピーク値C0が予測できず、設定することができないということはあり得ない。してみれば、需要電力のピーク値C0は、予測値としては明確に定まっており、不明瞭記載ではないと思料いたします。なお、需要電力のピーク値C0の設定は、日変動曲線のパターンに左右されることなく、単に、明日の需要電力のピーク値C0を予測すれば、設定可能です。」と主張している。
しかし、そもそも、熱電供給システムの需要電力の日変動曲線を把握し、一定期間のデータから予測して「熱電併給システムのピーク電力値」を設定する等の技術的事項は、請求項に記載されている事項ではないし、発明の詳細な説明にも記載されていないものである。
仮に、熱電供給システムの需要電力の日変動曲線を把握して、需要電力のピーク値C0を求めるものであるとしても、本件補正後の請求項1は、「熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。」と記載されるものであり、ピーク電力値を設定するデータが取得される「一定期間」について、日変動曲線の頂点が設定できるような期間であるとも、需要電力の日変動曲線が予想できるような期間であるとも特定されておらず、また、過去の熱電供給システムの需要電力の日変動曲線を把握したとしても、明日の需要電力の日変動曲線の予想を行うことは、たとえ当業者といえども容易になし得ることができるというものではない。
例えば、請求人は「物件1」として、電力系統全体の需要電力の変動を示しているが、本件の「熱電供給システム」が前提とするような、家庭用に近い小規模のシステムであれば、負荷のすべてがいつも同じようなパターンで使用されることはあり得ず、日々「電力値」や「ピーク」がばらつくから、電力系統全体の需要電力のような単純な動きとなるものではなく、「熱電併給システムのピーク電力値」に対応した特有の予測を行わなければならないことは明らかであるから、電力系統全体の需要電力の変動を示したとしても、本件の「熱電供給システム」のピーク電力値が予測可能であることの根拠とはなり得ない。
また、請求人は「需要電力のピーク値C0の設定は、日変動曲線のパターンに左右されることなく、単に、明日の需要電力のピーク値C0を予測すれば、設定可能」であるとも主張しているが、これは、本件補正後の請求項1の「一定期間のデータから設定される」という事項との関係を明確なものとするものとは認められない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。

したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、また、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、また、本願補正発明の記載が明確でないから、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び、第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、「2.[理由I](1)」に記載した平成27年3月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成27年5月1日付けで通知した最後の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

「理由A.平成27年3月30日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(1)補正前の請求項1の「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉状態にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に」の記載は、補正により「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に」と変更された。
ここで、C1以上で第一のスイッチ(11)を「閉にして」とは、閉にする動作を表し、その前の状態は「開」であったことを意味するから、C1以上でないときは、第一のスイッチ(11)は「開」であることを特定するものである。
そこで、当該補正が、願書に最初に添附した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものか検討する。
・・・・・ 途中省略 ・・・・・
これらの記載によると、ピーク時間帯以外の時間帯における、発電装置3から電力負荷9への電力供給の状態は特定されておらず、当然、発電装置3から電力負荷9へ供給を行うスイッチ11の開閉の状態についても特定されるものではない。
そうすると、「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯」以外の第一のスイッチ(11)の状態を開とすることは新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、当該補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

(2)請求項1には、補正により「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と商用電力(2)の合計電力は発電装置(3)で発電した電力より大きい」との事項が付加された。
そこで、当該補正によって付加された事項が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものか検討する。

当初明細書等に、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力」,「商用電力(2)」,「発電装置(3)で発電した電力」の関係が示されているのは、段落【0013】に、「電力負荷を消費電力を電力計(電力負荷の前に設置される)で測定して、測定した電力が特定出力より特定出力C1以上の場合には、商用電力と発電装置の電力(通常は効率の良い最高出力の70%程度の出力)、蓄電装置に貯えられた電力により、電力負荷に電力を供給する。例えば、特定出力C1を2/3*C0(ここに、C0は、一日の熱電併給システムのピーク電力値とする。)とする。熱電併給システムにおいて、このように設定することにより、電力負荷が2/3*C0?C0の時間帯は、蓄電装置に貯えられた商用電力と発電装置による電力により例えば1/3*C0を賄い、残りを商用電力で賄うようにすることができる。本熱電併給システムによれば、ピーク時間帯でも、1/3*C0以下の商用電力しかバックアップ電力を必要としない。」とあるのみである。
ここにおいて、「ピーク時間帯でも、1/3*C0以下の商用電力しかバックアップ電力を必要としない。」との記載は、ピーク時間帯であっても、商用電力が1/3*C0よりも大きくならないよう、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力」及び「発電装置(3)で発電した電力」を用いて商用電力の使用が大きくならないようにすることを示すものといえる。
しかし、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と商用電力(2)の合計電力」が「発電装置による電力」よりも大きいことが示されているものでも、示唆されているものでもない。
そうすると、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と商用電力(2)の合計電力は発電装置(3)で発電した電力より大きい」ことは新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、当該補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

理由B.この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。



請求項1には、「熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。」とあるが、どのようなものか明確でない。そして、「熱電併給システムのピーク電力値」に基づき設定される、「特定出力C1以上の時間帯」及び「特定出力C2以下の時間帯」についても依然として明確でない。
(請求項1を引用する請求項2-9についても同様。) 」

(2)最後の拒絶の理由についての判断
(ア)拒絶の理由A.について
(1)平成27年3月30日付けでした手続補正により、本件補正前の請求項1の「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉状態にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に」の記載は、補正により「電力負荷(9)の消費電力が特定出力C1以上の時間帯には、発電装置(3)で発生した電力を、第一のスイッチ(11)を閉にして、交流の電力負荷(9)に供給すると共に」と変更された点については、前記2.[理由I](2)「(2-1)の記載事項について」で検討したとおりである。

(2)平成27年3月30日付けでした手続補正により、「蓄電装置(7)に貯えられた商用電力と商用電力(2)の合計電力は発電装置(3)で発電した電力より大きい」との事項が付加された点についての検討は、上記拒絶理由に示したとおりであり、この検討内容は妥当なものと認める。
当該補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

以上より、平成27年3月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項は、平成27年5月1日付けの最後の拒絶理由の理由A.に示したとおり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
したがって、平成27年3月30日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(イ)拒絶の理由B.について
「熱電併給システムのピーク電力値とは、電力負荷(9)に供給される電力値であり、一定期間のデータから設定される。」との記載、また、「熱電併給システムのピーク電力値」に基づき設定される、「特定出力C1以上の時間帯」及び「特定出力C2以下の時間帯」と記載される事項を有する請求項1に係る発明は、その実施をすることができる程度に発明の詳細な説明に記載されたものでなく、請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものでもなく、また、請求項1に係る発明が明確に記載されたものでもないことは、前記2.[理由II](1)「(1-1)の記載について」で検討したとおりである。

したがって、平成27年3月30日付け手続補正書に係る発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の請求項1ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。

(3)まとめ
以上のとおり、平成27年3月30日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、本願明細書、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。

したがって、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-29 
結審通知日 2015-11-10 
審決日 2015-11-24 
出願番号 特願2011-138977(P2011-138977)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (H02J)
P 1 8・ 561- WZ (H02J)
P 1 8・ 575- WZ (H02J)
P 1 8・ 57- WZ (H02J)
P 1 8・ 537- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 矢島 伸一
藤井 昇
発明の名称 蓄電装置を備えた熱電併給システム  
代理人 佐藤 富徳  

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