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審決分類 審判 査定不服 1項1号公知 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1311103
審判番号 不服2012-20798  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-22 
確定日 2016-02-10 
事件の表示 特願2008-550487「脂肪の減少を促進するための組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月19日国際公開、WO2007/082231、平成21年 6月18日国内公表、特表2009-523174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、国際出願日である平成19年1月10日(優先権主張 平成18年1月10日 (US)アメリカ合衆国)を出願日とする特許願であって、平成23年10月11日付で拒絶理由が通知され、平成24年2月13日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年5月1日に上申書が提出されたが、同年6月19日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、平成25年1月26日付けで前置報告書が作成され、当審において、同年12月13日付けで審尋がなされたのに対し、平成26年3月17日に回答書が提出され、同年8月18日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月19日に意見書とともに手続補正書が提出され、さらに、同年4月6日付けで拒絶理由が通知され、同年8月7日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし19に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明19」という。また、本願発明1ないし本願発明19をまとめて「本願発明」ともいう。)は、平成27年8月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、本願発明11は、下記のとおりのものと認められる。

「成体の動物において、当該動物の除脂肪筋肉の量を維持し又は増加しながら脂肪の減少を促進するための組成物であって、全リシンの代謝可能エネルギーに対する比が6ないし10g/Mcalであり、かつ、タンパク質の含量が少なくとも50.4%であり、脂肪の含量が18.8%以上であり、そして、繊維の含量が1.6%以下である、
ここにおいて、前記成体の動物はイヌ又はネコである、
前記組成物。」

第3.当審の拒絶理由
当審において平成27年4月6日付で通知した拒絶の理由は、この出願の請求項12?19に係る発明(当審注:本願発明11?17に対応する。)は、この出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるので、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない(以下「理由A」という。)、及び、 この出願は、特許請求の範囲の請求項12(当審注:本願発明11に対応する。)に「代謝可能エネルギー」と記載されているが、定義が明確ではない点で不備があるので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから特許を受けることができない(以下「理由B」という。)、というものである。

第4.当審の判断
1. 理由Bについて
(1)
本願明細書には代謝可能エネルギーについて以下の記載がある。

「[0025] 食餌(又は食餌が単一の組成物からなる場合は組成物)の代謝可能エネルギー(ME)は、糞、尿、及び可燃性ガス中に排出されるエネルギーを差引いた後の食餌(又は組成物)の消費において動物にとって利用可能なエネルギーである。代謝可能エネルギー値は、AAFCOによって確立されたプロトコルによって決定される。」(段落【0021】)

また、平成27年8月7日提出の意見書(1頁33行?3頁下から12行)において、下記(a)ないし(f)の主張をしている。

(a)
「本願明細書の段落0021に記載のAAFCOによって確立されたプロトコルについて、参考資料1をご参照ください。」
(b)
出所等が不明で「AAFCO Protocol for Determination of Metabolizable Energy of Dog and Cat Foods」(当審訳:イヌ及びネコ用の食餌の代謝可能エネルギーを決定するためのAAFCOのプロトコル。)、および、「4. ME of the food is then calculated as GE minus FE snd UE」(当審訳:食餌のMEは、GE-FE-UEで計算される。)との記載がある参考資料1(【表1】)
(c)
「代謝可能エネルギーを決定するための最も正確な方補う(当審注:「方法」の誤記と認める。)は、食餌研究を介したものですが、そのような研究はかなり労力がかかります。よって、AAFCOは、ペットフィード(当審注:「ペットフード」の誤記と認める。)の代謝可能エネルギーの評価に、粗タンパク質、粗脂肪及びタンスか物(当審注:「炭水化物」の誤記と認める。)に関する、固定エネルギー値及び消化性係数に基づいた予測方程式を推奨しています。」
(d)
「本願の明細書及び特許請求の範囲で特に明記していない場合には、「代謝可能エネルギー」はこの予測方程式で算出された値を意味します。」
(e)
「消化性平均値は、複数回の試験によって決定されました。エネルギー値も、繰り返し試験によって決定されています。Atwater Factorは、%消化性にエネルギー値を掛けることによって決定されています。
【表2】
(中略)
ペットフード中の脂肪、タンパク質及び炭水化物の%に、それぞれに対応するAtwater Factorを掛け、それらを合計し、さらに10倍して(×10)を、代謝可能エネルギーを算出しました。」
(f)
「ME(kcal/kg)=10[(3.5×CP)+(8.5×CF)+(3.5×NFE)]」、「ME=代謝可能エネルギー」、「CP=%粗タンパク質」、「CF=%粗脂肪t(当審注:CF=%粗脂肪の誤記と認める。)」、「NFE=%窒素無し抽出物(炭水化物)」と記載されている表(【表3】)

(2)
発明の詳細な説明には、本願発明11の「代謝可能エネルギー」について「AAFCOによって確立されたプロトコルによって決定される」(段落【0021】)と記載されているのみであって、その定義を具体的に説明した記載は、ない。
また、平成27年8月7日提出の意見書において「本願明細書の段落0021に記載のAAFCOによって確立されたプロトコルについて、参考資料1をご参照ください。」(上記(1)(a)を参照。)と主張しているが、参考資料1には、「ME」(当審注:代謝可能エネルギー)がGE-FE-UEで計算される旨記載されている(上記(1)(b))に止まり、AAFCOがペットフィードの代謝可能エネルギーの評価に、粗タンパク質、粗脂肪及びタンスか物に関する、固定エネルギー値及び消化性係数に基づいた予測方程式を推奨していること(上記(1)(c))や、当該予測方程式がどのようなものなのかについての具体的な記載はない。
さらに、発明の詳細な説明には、「本願の明細書及び特許請求の範囲で特に明記していない場合には、「代謝可能エネルギー」はこの予測方程式で算出された値を意味します。」(上記(1)(d))との主張の根拠となる記載も見いだせないから、この主張も採用できない。

なお、上記(1)(e)ないし(f)の主張は、上記(1)(a)ないし(d)の主張が採用されることを前提に「この予測方程式」が具体的には、「ME(kcal/kg)=10[(3.5×CP)+(8.5×CF)+(3.5×NFE)]」である旨の主張であると認められるが、上記のとおり、その前提となる上記(1)(a)ないし(d)の主張が採用できないので、さらに検討するまでもなく、上記(1)(e)ないし(f)の主張は、採用できない。
また、本願発明11は、平成27年8月7日提出の手続補正書によって補正された結果、「成体の動物」が「イヌ又はネコ」に限定されているので、「ME(kcal/kg)=10[(3.5×CP)+(8.5×CF)+(3.5×NFE)]」という予測方程式が、「成体の動物」が「イヌ又はネコ」である場合に使用できるものであることを要するが、この点に関し何も釈明が無く、自明でもない。

(3)
以上のとおりであるので、この出願は、特許請求の範囲の請求項11の「代謝可能エネルギー」の定義が明確ではない点で、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。


2. 理由Aについて
本願発明11の「代謝可能エネルギー」の定義が明確ではない(上記1.参照。)が、仮に、平成27年8月7日提出の意見書において請求人が、本願発明11の「代謝可能エネルギー」に関する予測方程式であると主張する「ME(kcal/kg)=10[(3.5×CP)+(8.5×CF)+(3.5×NFE)]」で表されるものであるとして、以下、検討する。

五訂増補日本食品標準成分表(文部科学省)(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/002/011.pdf)および、日本食品標準成分表準拠 アミノ酸成分表2010(文部科学省)(http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2010/12/27/1299015_10.pdf)によれば、「うし[ひき肉]生」の成分は、100g当たり、水分 64.5g、タンパク質 19.0g、脂質 15.1g、炭水化物 0.5g、リジン1500mgが含まれている。
これは乾燥物基準では、タンパク質53.5%(=19.0/(1-0.645))、脂質42.5%、炭水化物1.4%、リジン42.3g/kgであるから、(代謝可能エネルギー(kcal/kg)=10[3.5*(タンパク質の%)+8.5*(脂質の%)+3.5*(炭水化物の%)]で計算すると、5534kcal/kgであり、したがって、全リシンの代謝可能エネルギーに対する比は、7.6g/Mcal(=42.3/5.534)となる。

本願発明11と「うし[ひき肉]生」を対比する。
「うし[ひき肉]生」は、タンパク質、脂質、炭水化物、などからなる組成物であるから、本願発明11の「組成物」を満足する。
本願発明11の「組成物」は、具体的には「食品組成物」であり(本願発明17)、「動物」に「給餌」されるものである(本願発明18)。また、本願発明11の「イヌ又はネコ」は、食肉目のメンバー(必要であれば、段落【0014】を参照。)であり、すなわち、生肉を食べる動物である。そうすると、「うし[ひき肉]生」は、本願発明11の「ここにおいて、前記成体の動物はイヌ又はネコである、前記組成物。」を満足する。
「うし[ひき肉]生」は、乾燥物基準では、タンパク質53.5%、脂質42.5%、炭水化物1.4%、リジン42.3g/kgであり、線維を含まず、全リシンの代謝可能エネルギーに対する比は、7.6g/Mcalであるから、本願発明11の「全リシンの代謝可能エネルギーに対する比が6ないし10g/Mcalであり、かつ、タンパク質の含量が少なくとも50.4%であり、脂肪の含量が18.8%以上であり、そして、繊維の含量が1.6%以下である、前記組成物」を満足する。
本願発明11の「当該動物の除脂肪筋肉の量を維持し又は増加しながら脂肪の減少を促進する」は、本願発明11の「全リシンの代謝可能エネルギーに対する比が6ないし10g/Mcalであり、かつ、タンパク質の含量が少なくとも50.4%であり、脂肪の含量が18.8%以上であり、そして、繊維の含量が1.6%以下である組成物」を「成体の動物」に給餌した際に奏される効果に関する事項であって、本願発明11の「組成物」の構成(含有成分の種類や含有割合)を限定するものではないと認められる。したがって、「うし[ひき肉]生」は、本願発明11の「当該動物の除脂肪筋肉の量を維持し又は増加しながら脂肪の減少を促進する」を満足する。

そうすると、「うし[ひき肉]生」は、本願発明11の全ての発明を特定するための事項を満足するから、本願発明11と一致し相違するところはない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができないものであり、また、本願の請求項11に係る発明は、公然知られた発明であるので、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、これらの理由により拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-10 
結審通知日 2015-09-11 
審決日 2015-09-30 
出願番号 特願2008-550487(P2008-550487)
審決分類 P 1 8・ 111- WZ (A61K)
P 1 8・ 537- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川嵜 洋祐  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 前田 佳与子
安藤 倫世
発明の名称 脂肪の減少を促進するための組成物及び方法  
代理人 星野 修  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  

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