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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1311363 |
審判番号 | 不服2015-1495 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-26 |
確定日 | 2016-02-19 |
事件の表示 | 特願2013-104459「組成物、複合体の製造方法及び光学部材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-219366〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年3月5日に出願した特願2008-55594号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年5月16日に新たな特許出願としたものであって、出願と同時に手続補正がなされ、平成26年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、同年4月28日付けで意見書が提出されたが、同年10月27日付けで拒絶査定がなされた。 本件は、これを不服として、平成27年1月26日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成27年1月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年1月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、そのうち本件補正後の特許請求の範囲の請求項4は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項4を限定的に減縮することを目的として下記のとおりに補正したものである。 「【請求項4】 凹凸のパターンが形成されたモールドと基板との間に挟み込まれた状態で光硬化性組成物に対して光を照射することにより光硬化層を形成する第1の工程と、 前記光硬化層から前記モールドを離型する第2の工程と、を含み、 前記基板は紫外線を吸収し、 前記光硬化性組成物は、1つのみの重合性基を含む第1の化合物と、2つの重合性基を含む第2の化合物と、を含み、 前記基板は、370nm未満の波長領域の全領域における各波長の光の透過率が10%以下であること、 を特徴とする複合体の製造方法。」 そこで、本件補正後の請求項4に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。 2 本件補正発明 本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項4に記載された上記のとおりのものである。 3 引用刊行物 (1)引用刊行物1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前である平成19年10月4日に頒布された「特開2007-256765号公報」(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。) ア 明細書の記載 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶表示装置などに好適に用いられる偏光フィルム積層体及びそれを用いた液晶表示装置に関するものである。」 「【0035】 上記のような特性を示す防眩層を構成する防眩面は、事実上平坦な面がない凹凸で覆い尽くされた形状である。このような表面形状を有する防眩面は、例えば、研磨された金属の表面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その金属の凹凸面に無電解ニッケルメッキを施して金型とし、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いで凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす方法によって、有利に製造できる。 【0036】 このようにして防眩層(防眩フィルム)を製造するのに好適な方法を、図6に基づいて説明する。図6は、金属板を用いた場合を例として、表面に凹凸を有する金型を作製し、さらにその凹凸をフィルムに転写して防眩フィルムを得るまでの工程を模式的に示した断面図である。図6の(A)は、鏡面研磨後の金属基板21の断面を示すもので、その表面に研磨面22が形成されている。このような鏡面研磨後の金属表面に微粒子をぶつけることで、表面に凹凸を形成する。図6の(B)は、微粒子をぶつけた後の金属基板21の断面模式図であり、微粒子がぶつけられることで、部分球面状の微細な凹面23が形成されている。さらに、こうして微粒子による凹凸が形成された面に、無電解ニッケルメッキを施すことにより、金属表面の凹凸形状をなまらせる。図6の(C)は、無電解ニッケルメッキを施した後の断面模式図であり、金属基板21に形成された微細な凹面上に、ニッケルメッキ層24が形成され、その表面26は、無電解ニッケルメッキにより、(B)の凹面23に比べてなまった状態、換言すれば凹凸形状が緩和された状態になっている。このように、金属の表面に微粒子をぶつけて形成される部分球面状の微細凹面23に、無電解ニッケルメッキを施すことにより、実質的に平坦部がなく、好ましい光学特性を示す防眩フィルムを得るのに好適な凹凸が形成された金属金型を得ることができる。 【0037】 図6の(D)は、(C)の無電解ニッケルメッキにより形成された金型の凹凸をフィルムに転写する状態を示す断面模式図であり、金属基板21上に形成されたニッケルメッキ層24の凹凸面に、樹脂層を形成して、その凹凸形状が転写されたフィルム11が得られる。フィルム11は、熱可塑性の透明樹脂1枚で構成することができ、この場合は、熱可塑性樹脂フィルムを加熱状態で金型の凹凸面26に押し当て、熱プレスにより賦型すればよい。またフィルム11は、図6(D)に例示する如く、透明な基材フィルム12の表面に電離放射線硬化型樹脂層13を形成したもので構成することもでき、この場合は、電離放射線硬化型樹脂層13を金型の凹凸面26と接触させ、電離放射線を照射してその樹脂層13を硬化させることにより、金型の凹凸形状が電離放射線硬化型樹脂層13に転写される。これらのフィルムについては、後で詳しく説明する。図6の(E)は、(D)において金型上に形成されたフィルム11を金型から剥離した状態を示す断面模式図である。」 「【0049】 図6(C)のようにして表面に凹凸が形成された金属金型を用い、図6(D)に示すように、その凹凸形状をフィルム11の表面に転写して、防眩面を形成する。この際、任意の方法でフィルム表面に金型の形状を転写することができる。例えば、熱可塑性樹脂フィルムを、金型の凹凸面26に熱プレスし、熱可塑性樹脂フィルムの表面に金型の凹凸形状を転写する方法や、電離放射線硬化型樹脂を透明樹脂フィルムの表面に塗布し、未硬化状態でその電離放射線硬化型樹脂塗布層を金型の凹凸面26に密着させ、フィルム越しに電離放射線を照射して硬化させ、金型の凹凸形状26を転写する方法などが採用できる。転写後は、図6の(E)に示すように、金型からフィルムを剥離して、防眩フィルム11が得られる。表面の傷つき防止など、機械的強度の観点からは、電離放射線硬化型樹脂を用いる方法が好ましく採用される。 【0050】 このときに用いられる透明樹脂は、実質的に光学的な透明性を有するフィルムであればよい。具体的には、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートの如きセルロース系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリ塩化ビニルなどが例示される。シクロオレフィン系ポリマーは、ノルボルネンやジメタノオクタヒドロナフタレンのような環状オレフィンをモノマーとする樹脂であり、市販品としては、JSR株式会社から販売されている“アートン”、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノア”や“ゼオネックス”(いずれも商品名)などがある。 【0051】 これらの中で、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィン系ポリマーなどからなる熱可塑性を有する透明樹脂フィルムは、凹凸形状を有する金型に適当な温度でプレス又は圧着した後、剥離することで、金型表面の凹凸形状をフィルム表面に転写するのに用いることができる。また、透明フィルムとして偏光板を用い、直接偏光板表面に金型の凹凸形状を転写することもできる。 【0052】 一方、電離放射線硬化型樹脂を使用して形状を転写する場合の電離放射線硬化型樹脂としては、分子内に1個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましく用いられるが、防眩面の機械的強度を向上させるためには、3官能以上のアクリレート、すなわち、分子内に3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物が、より好ましく用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが例示される。また、防眩面に可撓性を付与して割れにくくするために、分子内にウレタン結合を有するアクリレート化合物も好ましく用いられる。具体的には、トリメチロールプロパンジアクリレートやペンタエリスリトールトリアクリレートの如き、分子内にアクリロイルオキシ基とともに少なくとも1個の水酸基を有する化合物2分子が、ヘキサメチレンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートの如きジイソシアネート化合物に付加した構造のウレタンアクリレートが例示される。この他、エーテルアクリレート系、エステルアクリレート系等、電離放射線によりラジカル重合を開始し、硬化するその他のアクリル系樹脂も用いることができる。 【0053】 また、エポキシ系やオキセタン系等、カチオン重合性の電離放射線硬化型樹脂も、硬化後に凹凸が賦型される樹脂として用いることができる。この場合は例えば、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼンやビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルの如きカチオン重合性多官能オキセタン化合物と、(4-メチルフェニル)〔4-(2-メチルプロピル)フェニル〕ヨードニウム ヘキサフルオロフォスフェートの如き光カチオン開始剤との混合物が用いられる。 【0054】 アクリル系の電離放射線硬化型樹脂を紫外線の照射により硬化させる場合は、紫外線の照射を受けたときにラジカルを発生し、重合・硬化反応を開始させるために、紫外線ラジカル開始剤が添加されて用いられる。紫外線の照射は、透明樹脂フィルム面側からなされるが、フィルムを透過することが可能な波長領域でラジカル反応を開始するために、可視域から紫外線域でラジカル反応を開始する開始剤が用いられる。 【0055】 紫外線照射によりラジカル反応を開始する紫外線ラジカル開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなどのほか、特に紫外線吸収剤を含有する透明樹脂フィルム越しに紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等、可視領域に吸収を持つリン系の光ラジカル開始剤が好適に用いられる。」 イ 図面の記載 「【図6】 」 ウ 上記ア及びイの記載事項の考察 上記アの記載事項には、「紫外線照射によりラジカル反応を開始する紫外線ラジカル開始剤としては、・・・(略)・・・などのほか、特に紫外線吸収剤を含有する透明樹脂フィルム越しに紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合には、・・・(略)・・・可視領域に吸収を持つリン系の光ラジカル開始剤が好適に用いられる。」(【0055】)と記載されている。 この記載は、上記アの記載事項の【0035】ないし【0037】に記載された「防眩層(防眩フィルム)を製造するのに好適な方法」の一態様であることは明らかであって、このような場合には、【0037】記載の「電離放射線」、「基材フィルム12」及び「電離放射線硬化型樹脂13」は【0055】記載の「紫外線」、「透明樹脂フィルム」及び「紫外線硬化型樹脂」にそれぞれ該当する。 エ 引用例1記載の発明 上記ア及びイの記載事項並びに上記ウの考察によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「フィルム11は、透明樹脂フィルム12の表面に紫外線硬化型樹脂13を形成したもので構成され、紫外線硬化型樹脂13を金型の凹凸面26と接触させ、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂13を硬化させることにより、金型の凹凸形状が紫外線硬化型樹脂13に転写される工程と、 金型上に形成されたフィルム11を金型から剥離する工程と、を含み、 紫外線吸収剤を含有する透明樹脂フィルム12越しに紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂13を硬化させ、 紫外線硬化型樹脂13としては、分子内に1個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物が用いられ、可視領域に吸収を持つリン系の光ラジカル開始剤が添加される、 防眩フィルムの製造方法。」 (2)引用刊行物2 また、原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前である平成20年1月31日に頒布された「特開2008-19292号公報」(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。) ア 明細書の記載 「【技術分野】 【0001】 本発明は、光硬化性組成物およびそれを用いたパターン形成方法に関する。」 「【0038】 即ち、本発明の光硬化性組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに用いたときに、 (1)室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいづれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい。 (2)揮発性が少なく、皮膚刺激性が小さいため、作業者の安全性に優れる。 (3)硬化後の硬化膜は機械的性質に優れ、塗膜と基板の密着性に優れ、塗膜とモールドの離型性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる。 (4)光硬化後の体積収縮が小さく、モールド転写特性に優れるため、微細パターンの正確な賦型性が可能である。 (5)塗布均一性に優れるため、大型基板への塗布・微細加工分野などに適する。 (6)膜の光硬化速度が高いので、生産性が高い。 (7)エッチング加工精度、エッチング耐性などに優れるので、半導体デバイスやトランジスタなどの基板加工用エッチングレジストとして好適に用いることができる。 (8)エッチング後のレジスト剥離性に優れ、残渣を生じないため、エッチングレジストとして好適に用いることができる。 等の特徴を有するものとすることができる。 【0039】 まず、本発明の光硬化性組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。 本発明の光硬化性組成物は、25℃における粘度が3?18mPa・sの範囲である。 このような粘度とすることにより、硬化前の微細凹凸パターンの形成能、塗布適性およびその他の加工適性を付与でき、硬化後においては解像性、ラインエッジラフネス性、残膜特性、基板密着性或いは他の諸点において優れた塗膜物性を付与できる。ここで、最新レジスト材料ハンドブック、P1、103?104(2005年、情報機構出版)には、粘度を5mPa・s以下にすることが好ましいと記載されているが、本発明者らは鋭意検討した結果、組成物の粘度は、単純に低ければ良いというものではなく、特定の粘度範囲、すなわち3?18mPa・sの特定の粘度範囲を有する場合に限り、本発明の目的を達成できることを見出した。 すなわち、本発明の光硬化性組成物の粘度が3mPa・s未満では、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じる。具体的には、粘度を低くしすぎることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするため好ましくない。しかしながら、このような粘度の塗布性能への影響は、これまで一切開示されていなかった。 一方、本発明の光硬化性組成物の粘度が18mPa・sを超えると微細な凹凸パターンを有するモールドを光硬化性組成物に密着させた場合、モールドの凹部のキャビティ内に組成物が流れにくくなり、大気が取り込まれやすくなるためバブル欠陥を引き起こしやすくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りやすくなる。また、最新レジスト材料ハンドブック、P1、103?104(2005年、情報機構出版)などにこれまでに開示されている光ナノインプリント組成物は、粘度がおよそ50mPa・sであるため、バブル欠陥や光硬化後にモールドの凹部に残渣が残りやすいなどの問題があったため、限られた用途にしか適用できなかった。例えば、半導体集積回路や液晶デイスプレイの薄膜トランジタなどの微細加工用途への展開は難しかった。本発明の光硬化性組成物は、これらの用途に好適に適用でき、その他の用途、例えば、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルター、オーバーコート層、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用できるようになった。」 「【0086】 次に、本発明の光硬化性組成物における、光ラジカル重合性単量体の好ましいブレンド形態について説明する。本発明の光硬化性組成物は、粘度が30mPa・s以下の重合性不飽和単量体(好ましくは、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する単量体、2個有する単量体および3個有する単量体のいずれか1種以上を含む。)を50質量%以上含むようにブレンドして用いる。 本発明において、不飽和結合含有基を1個有する光ラジカル重合性単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明の光硬化性組成物の粘度を下げるのに有効であり、全重合性化合物の好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは、60質量%以下の範囲で添加される。不飽和結合含有基を1個有する単量体の割合を、80質量%以下とすることにより、本発明の光硬化性組成物を硬化した硬化膜の機械的な強度、エッチング耐性、耐熱性がより良好となる傾向にあり、光ナノインプリントのモールド材として用いる場合には、モールドが膨潤してモールドが劣化するのを抑止できる傾向にあり好ましい。一方で、不飽和結合含有基を1個およびまたは2個有する単量体は、反応性希釈剤としてより良好であるため、不飽和結合含有基を1個または2個有する単量体が添加されることが好ましい。 不飽和結合含有基を2個有する単量体は、全重合性化合物の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは、70質量%以下の範囲で添加される。不飽和結合含有基を1個およびまたは2個有する単量体の割合は、全重合性化合物、好ましくは1?95質量%、より好ましくは3?95質量%、特に好ましくは、5?90質量%の範囲で添加される。不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは、60質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を本発明の粘度範囲により容易に調整することができ好ましい。」 「【0091】 本発明の光硬化性組成物には、光重合開始剤および/または光酸発生剤が用いられる。本発明に用いられる光重合開始剤および/または光酸発生剤は、全組成物中、質量比で0.1?15質量%含有し、好ましくは0.2?12質量%であり、さらに好ましくは、0.3?10質量%である。但し、他の光重合開始剤や光酸発生材と併用する場合は、それらの合計量が、前記範囲となる。 よって、本発明の光硬化性組成物は、ラジカル重合および/またはカチオン重合により光硬化可能なものおよび光硬化したものの両方を含む。 光重合開始剤および/または光酸発生剤の割合が0.1質量%未満では、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が劣るため好ましくない。一方、光重合開始剤および/または光酸発生剤の割合が15質量%を超えると、光透過性、着色性、取り扱い性などが劣化するため好ましくない。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等の光硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明の光硬化性組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。 【0092】 本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、反応形式の違い(例えば、ラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる。また、光重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上用いてもよい。」 「【0101】 本発明の重合開始のための光は、紫外光、近紫外光、遠紫外光、可視光、赤外光等の領域の波長の光または、電磁波だけでなく、放射線も含まれ、放射線には、例えば、マイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、更に全面露光することも可能である。 【0102】 本発明で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスを発生させないものは、モールドが汚染されにくく、モールドの洗浄頻度が減少したり、光硬化性組成物がモールド内で変形しにくいので転写パターン精度を劣化させにくい等の観点で好ましい。」 「【実施例】 【0159】 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。 【0160】 本発明の実施例および比較例で用いた各単量体の略号は、以下の通りである。 <単量体> R-01: ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学社製) R-02: フェノキシエチルアクリレート(ライトアクリレートPO-A:共栄社油脂社製) R-03: イソボルニルアクリレート(アロニックスM-156:東亜合成社製) R-04: N-ビニル-2-ピロリドン(アロニックスM-150:東亜合成社製) R-05: N-アクリロイルモルフォリン(ACMO:興人社製) R-06: フェノキシヘキサエチレングリコールアセテート(AMP-60G:新中村化学社製) R-07: フェノキシジエチレングリコールアクリレート(アロニックスM-101:東亜合成社製) R-08: エトキシジエチレングリコールアクリレートライトアクリレートEC-A:共栄社化学社製) R-09: ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(カラヤッドMANDA:日本化薬社製) R-10: ポリエチレングリコールジアクリレート(ニューフロンティアPE-300:第一工業製薬社製) R-11: トリプロピレングリコールジアクリレート(カラヤッドTPGDA:日本化薬社製) R-12: エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR-454: 化薬サートマー社製) R-13: プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(ニューフロンティアTMP-3P:第一工業製薬社製) R-14: ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート(Ebercryl 40:ダイセルUCB社製) R-15: ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(カラヤッドDPHA:日本化薬社製) R-16: エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート(カヤマーPM-21:日本化薬社製) R-17: エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(フォトマー4160:サンノプコ社製) R-18: テトラヒドロフルフリルアクリレート(ビスコート#150:大阪有機化学社製) R-19: トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM-309:東亜合成社製) R-20: 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(フロンティアHDDA:第一工業製薬製) R-21: エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(SR-602:化薬サートマー社製) R-22: ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR-351:化薬サートマー社製) R-23: ビスフェノール系エポキシアクリレート(リポキシSP1509:昭和高分子社製) R-24: ウレタンアクリレート(ビームセット551B:荒川化学工業社製) R-25: エポキシアクリレート(エベクリル3701:ダイセルUCB社製) R-26: N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA:興人社製) R-27: エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(アロニックスM-211B:東亜合成社製) R-28: アクアロンRN-20:第一工業製薬社製 R-29: フェニルグリシジルエーテルエポキシアクリレート R-30: 4-アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン(MEDOL10:大阪有機工業社製) 【0161】 C-1: 3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(Cyracure-6105:ユニオンカーバイド社製) C-2: 1.2:8,9ジエポキシリモネン(セロキサイド3000:ダイセル化学工業製) C-3: 3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキタセン(OXT211:東亜合成社製) C-4: 3-エチル-3-ヒドロキシエチルオキセタン(OXT101:東亜合成社製) C-5: ジ[1-エチル(3-オキタセニル)メチルエーテル](OXT221:東亜合成社製) C-6: 主成分1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT-121:東亜合成社製) C-7: 3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT212:東亜合成社製) C-8: ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE:丸善石油化学社製) C-9: ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキセン(セロキサイド2000:ダイセル化学工業社製) C-10: トリエチレングリコールジビニルエーテル(RAPI-CURE DVE-3:アイエスビージャパン社製) C-11: エポキシ化亜麻仁油(Vikoflex9040:ATOFINA社製) 【0162】 本発明の実施例および比較例で用いた光重合開始剤、光酸発生剤の略号は、以下の通りである。 <光重合開始剤> P-1: 2,4,6-トリメチルベンゾイル-エトキシフェニル-ホスフィンオキシド(Lucirin TPO-L:BASF社製) P-2: 2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(Irgacure651:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) P-3: 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Darocure1173:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製) P-4: 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンの混合物(Darocure4265:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製) P-5: 2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1と2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンの混合物(Irgacure1300:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製) P-6: 1-[4-ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン(ESACUR1001M:日本シイベルヘグナー社製) P-7: 2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-」 (Irgacure-907:チバ・スペシャリティケミカルズ社製) P-8: ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製:Irgacure-184) 【0163】 <光酸発生剤> U-1: ダウケミカル社製:サイラキュアーUVI6990 U-2: みどり化学社製:DTS-102 【0164】 本発明の実施例および比較例で用いた界面活性剤、添加剤の略号は、以下の通りである。 <界面活性剤> W-1: フッ素系界面活性剤(トーケムプロダクツ社製:フッ素系界面活性剤) W-2: シリコーン系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:メガファックペインタッド31) W-3: フッ素・シリコーン系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:メガフアックR-08) W-4: フッ素・シリコーン系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:メガフアックXRB-4) W-5: アセチレングリコール系ノニオン界面活性剤 (信越化学工業社製:サーフィノール465) W-6: ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物 (竹本油脂社製:パイオニンP-1525) W-7: フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:F-173) W-8: フッ素系界面活性剤(住友スリーエム社製:FC-430) W-9: フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:メガファックF470) W-10:フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:メガファックEXP.TF907) 【0165】 <添加剤> A-01: 2-クロロチオキサントン A-02: 9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成工業社製) A-03: シランカップリング剤(ビニルトリエトキシシラン)(信越シリコーン製) A-04: シリコーンオイル(日本ユニカー社製:L-7001) A-05: 2-ジメチルアミノエチルベンゾエート A-06: ベンゾフェノン A-07: 4-ジメチルアミノ安息香酸エチル A-08: 変性ジメチルポリシロキサン(ビッグケミージャパン社製:BYK-307) A-09: 赤色225号(スダンIII) A-10: N-エチルジエタノールアミン A-11: プロピレンカーボネート(関東化学製) A-12: 分散剤(味の素ファインテクノ社製:PB822) A-13: CI Pigment Black 7(クラリアントジャパン製) 【0166】 <光硬化性組成物の評価> 実施例1?25および比較例1?20により得られた組成物の各々について、下記の評価方法に従って測定、評価した。 表1、表2は組成物に用いた重合性不飽和単量体(実施例、比較例)をそれぞれ示す。 表3、表4、表7は組成物に用いた重合性不飽和単量体の配合比(実施例)をそれぞれ示す。 表5、表8は組成物に用いた単量体、光重合開始剤、界面活性剤、添加剤の配合比(実施例、比較例)をそれぞれ示す。 表6、表9は、本発明の結果(実施例、比較例)をそれぞれ示す。 【0167】 <粘度測定> 粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE-80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。 測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上は30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpm、60mPa・s以上120mPa・s未満は5rpm、120mPa・s以上は1rpmもしくは0.5rpmで、それぞれ、行った。 【0168】 <光硬化速度の測定> 光硬化性の測定は、高圧水銀灯を光源に用い、モノマーの810cm^(-1)の吸収の変化をフーリエ変換型赤外分光装置(FT-IR)を用いて、硬化反応速度(モノマー消費率)をリアルタイムで行った。Aは、硬化反応速度が0.2/秒以上の場合を表し、Bは、硬化反応速度が0.2/秒未満の場合を表す。」 「【0194】 【表1】 」 「【0196】 【表3】 」 4 対比 ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「透明樹脂フィルム12」、「紫外線硬化型樹脂13」、「硬化さ」れた「紫外線硬化型樹脂13」、「金型」、「紫外線」、「アクリロイルオキシ基」、及び、「防眩フィルム」は、本件補正発明の「基板」、「光硬化性組成物」からなる層、「光硬化層」、「モールド」、「光」、「重合性基」、及び、「複合体」に相当する。 (2)引用発明の「フィルム11は、透明樹脂フィルム12の表面に紫外線硬化型樹脂13を形成したもので構成され、紫外線硬化型樹脂13を金型の凹凸面26と接触させ、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂13を硬化させることにより、金型の凹凸形状が紫外線硬化型樹脂13に転写される工程」は、本件補正発明の「凹凸のパターンが形成されたモールドと基板との間に挟み込まれた状態で光硬化性組成物に対して光を照射することにより光硬化層を形成する第1の工程」に相当する。 (3)引用発明の「フィルム11は、透明樹脂フィルム12の表面に紫外線硬化型樹脂13を形成したもので構成され、紫外線硬化型樹脂13を金型の凹凸面26と接触させ」るものであるから、引用発明の「金型上に形成されたフィルム11を金型から剥離する工程」は、本件補正発明の「光硬化層から前記モールドを離型する第2の工程」に相当する。 (4)引用発明の「透明樹脂フィルム12」が「紫外線吸収剤を含有する」構成は、本件補正発明の「基板は紫外線を吸収」する構成に相当する。 (5)引用発明の「紫外線硬化型樹脂13としては、分子内に1個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物が用いられ」る構成と、本件補正発明の「光硬化性組成物は、1つのみの重合性基を含む第1の化合物と、2つの重合性基を含む第2の化合物と、を含」む構成とは、「光硬化性組成物は、1つ以上の重合性基を含む化合物を含」む構成で一致する。 (6)引用発明の「防眩フィルムの製造方法」は、本件補正発明の「複合体の製造方法」に相当する。 上記(1)ないし(6)の点から、本件補正発明と引用発明は、 「凹凸のパターンが形成されたモールドと基板との間に挟み込まれた状態で光硬化性組成物に対して光を照射することにより光硬化層を形成する第1の工程と、 前記光硬化層から前記モールドを離型する第2の工程と、を含み、 前記基板は紫外線を吸収し、 前記光硬化性組成物は、1つ以上の重合性基を含む化合物を含む、 複合体の製造方法。」 で一致し、以下ア及びイの点で相違する。 (相違点) ア 「光硬化性組成物」の1つ以上の重合性基を含む化合物が、本件補正発明は、「1つのみの重合性基を含む第1の化合物と、2つの重合性基を含む第2の化合物」であるのに対し、引用発明は、「分子内に1個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物」である点。 イ 本件補正発明は、「基板は、370nm未満の波長領域の全領域における各波長の光の透過率が10%以下である」のに対し、引用発明は、「透明樹脂フィルム12」が「紫外線吸収剤を含有する」ものの、370nm未満の波長領域の全領域における各波長の光の透過率が不明である点。 5 当審の判断 以下、上記相違点について検討する。 (上記アの相違点について) 光ナノプリントリソグラフィに用いられる、光学部品用の光硬化性組成物において、高圧水銀灯を光源として光硬化し、エチレン性不飽和結合基を1個有する重合性不飽和単量体、エチレン性不飽和結合基を2個有する重合性不飽和単量体、及び、エチレン性不飽和結合基を3個以上有する重合性不飽和単量体をブレンドした光硬化性組成物が、引用例2に記載(【0038】、【0039】、【0086】、【0159】?【0168】、【表1】、【表3】参照。)されている。 そして、本願の明細書の実施例(【0042】?【0050】)には、「光重合性基を有する化合物としてテトラヒドロフルフリルアクリレート」、「ポリエチレングリコールジアクリレート」、「トリメチロールプロパンテトラアクリレート」を配合することが記載されているものの、これらの物質は、実施例のみならず比較例においても同じ物質が用いられているし、さらに、これらの実施例は、本願発明のように「光硬化性組成物」として、「1つのみの重合性基を含む第1の化合物と、2つの重合性基を含む第2の化合物」を含むだけではなく、「トリメチロールプロパンテトラアクリレート」も配合されたものであり、本願明細書に、本願発明の「光硬化性組成物」として「1つのみの重合性基を含む第1の化合物と、2つの重合性基を含む第2の化合物と、を含」む構成の技術的意義が記載されているとはいえない。 そうすると、引用発明の「紫外線硬化型樹脂13」として、引用例2記載の光硬化性組成物を採用して、上記アの相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を構成することは、適宜なし得た設計的事項であるといわざるえない。 (上記イの相違点について) 引用発明は、「紫外線吸収剤を含有する透明樹脂フィルム12越しに紫外線を照射して電離放射線硬化型樹脂層13を硬化させ、電離放射線硬化型樹脂13としては、」「可視領域に吸収を持つリン系の光ラジカル開始剤が添加される」ものであるから、フィルム11の透明樹脂フィルム12は、照射する紫外線のうち、紫外線領域をカットして可視領域により電離放射線硬化型樹脂層13を硬化させるものである。 そうすると、引用発明において、電離放射線硬化型樹脂層13が硬化する光の波長帯域等に応じて、370nm未満の波長領域の全領域における各波長の光の透過率が10%以下として、上記イの相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を構成することは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 上記ア及びイの相違点については以上のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2記載の事項から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。 よって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 6 本件補正についての補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成27年1月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年5月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された次のとおりのものである。 「【請求項4】 凹凸のパターンが形成されたモールドと基板との間に挟み込まれた状態で光硬化性組成物に対して光を照射することにより光硬化層を形成する第1の工程と、 前記光硬化層から前記モールドを離型する第2の工程と、を含み、 前記基板は紫外線を吸収し、 前記光硬化性組成物は、1つのみの重合性基を含む第1の化合物と、2つの重合性基を含む第2の化合物と、を含むこと、 を特徴とする複合体の製造方法。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された引用刊行物1、2及びその記載事項、並びに、引用発明は、上記「第2」[理由]「3」に記載したとおりである。 3 対比及び当審の判断 本願発明は、本件補正発明の発明特定事項である「基板は、370nm未満の波長領域の全領域における各波長の光の透過率が10%以下である」構成を省いたものである。 ここで、本願発明の発明特定事項を全て含み、上記構成を限定した本件補正発明が、上記「第2」[理由]「4」及び「5」に記載したとおり、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 付言 平成26年2月20日付けの拒絶理由通知書には、以下のとおり記載されている。 「 理 由 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1、4-8 ・引用文献等 1-3 ・備考 引用文献1には、・・・(略)・・・が記載されている。・・・(略)・・・参照。 引用文献2には、・・・(略)・・・が記載されている。・・・(略)・・・参照。 引用文献3には、・・・(略)・・・が記載されている。・・・(略)・・・参照。 引用文献1の段落[0203]には、光硬化性組成物の用途として光学フィルム等が記載されており、引用文献2、3に記載されるような光学フィルム(複合体)の製造に用いることは、当業者であれば容易に想到し得た技術的事項であり、紫外線吸収剤で吸収されない波長領域(370nm以上)の光に活性を有する光重合開始剤を選択することは、当然考慮すべき設計変更にすぎない。 ・・・(略)・・・ 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2008-019292号公報 2.特開2007-256765号公報 3.特開2007-313888号公報 (以下略)」 本審決における引用例1及び2は、それぞれ上記拒絶理由通知書における引用文献2及び1であるところ、上記拒絶理由通知書は、「引用文献1の段落[0203]には、・・・(略)・・・が記載されており、引用文献2、3に記載されるような光学フィルム(複合体)の製造に用いることは、当業者であれば容易に想到し得た技術的事項であ」る旨述べているから、引用文献2、3記載の発明である「光学フィルム(複合体)の製造」に対し、引用文献1記載の発明の「光硬化性組成物」を用いることが、「当業者であれば容易に想到し得た技術的事項であ」ると述べたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-12-10 |
結審通知日 | 2015-12-16 |
審決日 | 2016-01-04 |
出願番号 | 特願2013-104459(P2013-104459) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡戸 正義、秋田 将行 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 今浦 陽恵 |
発明の名称 | 組成物、複合体の製造方法及び光学部材の製造方法 |
代理人 | 栗原 浩之 |