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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03B
管理番号 1311389
審判番号 不服2014-20745  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-14 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 特願2012-205640「水力発電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日出願公開、特開2014- 58944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判に係る出願(以下、「本願」と言う。)は、平成24年9月19日の出願であって、平成26年2月27日付けで通知された拒絶の理由に対して、平成26年4月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年7月9日付けで拒絶査定され(これの謄本の送達日は平成26年7月15日)、これに対し平成26年10月14日に本件審判が請求されたものであり、その後、当審において、平成27年9月15日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対し、平成27年11月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 平成27年11月24日付け手続補正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年11月24日付け手続補正書による補正を却下する。
[理由]
1.特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成27年11月24日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」と言う。)により、次のように補正された。
(1)本件補正前
「【請求項1】
流動する水面に下半側の一部が浸漬された状態で一定経路に沿って自由上下動可能に浮上支持され、水路の水位変動に応じて自重追従して上下動する水車と、
前記水車を横向きの軸心周りに回転自在に支承する支軸と、
前記水車の回転によって回転駆動される発電機構とを備えた水力発電装置であって、
前記水車は、密閉されたドラム形の中空体に形成されるとともに外周に多数の羽根を備えており、
前記水車の内部に前記発電機構が組み込まれており、
前記発電機構は、コイルステータを前記支軸に取り付け、マグネットを内周に備えた内部ロータを前記支軸に回転自在に遊嵌し、前記水車の内周に設けた大径の内歯ギヤと前記内部ロータに連結した中心ギヤとを、支軸に連結した固定支持板に軸支した中間ギヤを介して咬合連動するように形成されている、
ことを特徴とする水力発電装置。」
(平成26年4月22日付け手続補正書の記載のとおり。)
(2)本件補正後
「【請求項1】
水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結固定された中空の支軸であって、水車を横向きの軸心周りに回転自在に支承する支軸と、
前記支軸にベアリングを介して回転可能に支承され、流動する水面に下半側の一部が浸漬された状態で一定経路に沿って自由上下動可能に浮上支持され、水路の水位変動に応じて自重追従して上下動する前記水車と、
前記水車の回転によって回転駆動される発電機構とを備えた水力発電装置であって、
前記水車は、密閉されたドラム形の中空体に形成されるとともに外周に多数の羽根を備えており、
前記水車の内部に前記発電機構が組み込まれており、
前記発電機構は、コイルステータを前記支軸に取り付け、マグネットを内周に備えた内部ロータを前記支軸に回転自在に遊嵌し、前記水車の内周に設けた大径の内歯ギヤと前記内部ロータに連結した中心ギヤとを、支軸に連結した固定支持板に軸支した中間ギヤを介して咬合連動するように形成されている、
ことを特徴とする水力発電装置。」
(下線部は、補正により追加された記載を示す。)

2.本件補正の目的要件
特許請求の範囲の請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載されていた「水車を横向きの軸心周りに回転自在に支承する支軸」及び「流動する水面に下半側の一部が浸漬された状態で一定経路に沿って自由上下動可能に浮上支持され、水路の水位変動に応じて自重追従して上下動する水車」という発明特定事項に関して、「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結固定された中空の支軸であって、」という限定事項、及び、「前記支軸にベアリングを介して回転可能に支承され、」であるという限定事項を付加するものである。
そして、本件補正後の請求項1に記載された発明は、本件補正前の請求項1に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものでないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本願補正発明の独立特許要件
特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と言う。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126項第7項の規定に適合するか)について検討する。
(1)進歩性
ア.引用例
(ア)引用例1
当審において通知された拒絶の理由に引用された実願昭57-153074号(実開昭59-56385号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」と言う。)は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物であって、「水位追従式簡易水力発電装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
(a)「即ち、本考案は、これを図示の実施例に基づいて説明すれば、所定の位置へ繋止されるステー1に回転自在に支持され、水流を受けることによって回転運動を行うカーレントホイル2に、回転軸線に対し常時一定の吃水位を保持せしめるバランスフロート3を一体的に設ける一方、前記カーレントホイル2およびフロート3の何れかにダイナモ4を内装し、当該枢軸5との相対的回転によりダイナモ4を駆動せしめるようにしたことを特徴とする水位追従式簡易水力発電装置に係るものである。」(第2ページ第18行?第3ページ第8行)
(b)「これについて更に具体的説明をすると、本考案ではステー1として、通常、図示の如きパイプ材をコ形状に成形したものを用い、その両端をカーレントホイル2の枢軸5に連繋せしめるものとする。図中、11はステー1に内挿された送電ケーブルであって後述のダイナモの出力端子に接続されており、また12は河川に流ないように固定するための繋止部であって適当の箇所に水位を考慮して繋ぎとめられる。
つぎに、水流を受けることによって回転運動を行うカーレントホイル2としては、回転周面に均等に羽根板21を形成した型式のものが用いられ、通常、向流的に使用される。バランスフロート3は、かゝるカーレントホイル2に一体的に設けられるが、カーレントホイル2とバランスフロート3とは必ずしも同一回転運動を行わなければならない訳ではなく、装置全体のバランスを保ち得るようにフロート3がホイル2に結合されておればよいのである。第1図および第2図に示される実施例は、バランスフロート3自体の周面に羽根板21を放射状に均等に形成してカーレントホイル2とフロート3を同体にしたものであり、第3図および第4図に示される実施例はカーレントホイル2の両端にバランスフロート3を配設し、同フロート3はコ形ステー1に固定されてカーレントホイル3のみが回転するように構成したものである。」(第3ページ第9行?第4ページ第15行)
(c)「ダイナモ4は、カーレントホイル2またはバランスフロート3の何れに内装されてもよいが、通常はバランスフロートに内装される。その方が装置全体をコンパクトにできるからである。第1図に示される装置にあっては、カーレントホイル1の羽根板21が水流を受けるとバランスフロート3も同時に回転し、ステー1に固定された枢軸5との関係でダイナモ4が駆動されるようになっている。」(第4ページ第16行?第5ページ第4行)
(d)「本考案発電装置は概ね上記のように構成されるが、本考案は前述の実施例に限定されるものでは決してなく「実用新案登録請求の範囲」の記載内で種々の変形は可能であって、例えば、ダイナモ4の駆動部分に遊星歯車増速機構を内蔵させるといった構造変更は当然に予測している。」(第5ページ第10?15行)
(e)「以上のとうりの構成を有するので、本考案発電装置は身近に存在する河川に簡易に設置して所要の電力を得ることができるのであり、しかもその際、バランスフロートの働きにより河川の水量が増減して水位が変動してもこれに忠実に追従して一定の吃水位を保持するため発電量が頗る安定的なのである。」(第5ページ第16行?第6ページ第3行)
また、引用例1において、特に第1図及び第2図を用いて説明されている実施例に着目し、上述した記載事項と図面の記載内容を併せると、以下の事項を認めることができる。
(f)枢軸5は、カーレントホイル2を河川の水面に平行である軸心周りに回転自在に支持するものであること(特に、上記記載事項(a)及び第2図を参照。)
(g)カーレントホイル2は、枢軸5に回転自在に支持されるものであること(特に、上記記載事項(a)、記載事項(c)及び第1図を参照。)
(h)ダイナモ4は、カーレントホイル2の回転によって駆動されること(特に、上記記載事項(a)、記載事項(c)及び第1図を参照。)
(i)カーレントホイル2は、円筒形に形成されたバランスフロート3と同体であるとともに周面に多数の羽根板21を備えたものであること(特に、上記記載事項(b)、第1図及び第2図を参照。)
以上を踏まえ、本願補正発明の表現にならって整理すると、引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明1」と言う。)。
「カーレントホイル2を河川の水面に平行である軸心周りに回転自在に支持する枢軸5と、
前記枢軸5に回転自在に支持され、河川の水位の変動に追従して一定の吃水位を保持するように繋止部12に繋止されるステー1に回転自在に支持される前記カーレントホイル2と、
前記カーレントホイル2の回転によって駆動されるダイナモ4とを備えた水位追従式簡易水力発電装置であって、
前記カーレントホイル2は、円筒形に形成されたバランスフロート3と同体であるとともに周面に多数の羽根板21を備えており、
前記カーレントホイル2の内部に前記ダイナモ4が内装されており、
前記ダイナモ4は、駆動部分に遊星歯車増速機構を内蔵する、
水位追従式簡易水力発電装置。」
(イ)引用例2
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭57-7350号(実開昭58-109567号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」と言う。)には、「水車式発電機の取り付け装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
(a)「3.考案の詳細な説明
河川敷地外両岸に、強固な支柱杭(1)を設け、両岸の支柱杭(1)に、強固なワイヤーロープ(2)を張り、強固なワイヤーロープ(2)内に、カラー(8)を取り付ける。
カラー(8)内に、硬材質のロッド(4)を取り付け、硬材質のロッド(4)の下端部に、水車式発電機(3)を取り付ける。
水車軸(5)の両端に、カラー(9)を取り付け、水流を集める作用と、浮力作用のある、硬材質のタンク(6)を取り付ける。
河川の水位(10)が変動しても、カラー(8)、カラー(9)が、時計の振り子の支点のように、自在に動いて、水位(10)が変動しても、水車の回転が一定に保たれる。」(第1ページ第17行?第2ページ第11行)
また、引用例2において、上述した記載事項と図面の記載内容を併せると、以下の事項を認めることができる。
(b)ロッド(4)の基端部がワイヤーロープ(2)周りにカラー(8)を介して揺動可能に遊嵌されること(特に、第1図及び第3図を参照。)
(c)左右のロッド(4)の下端部に亘って水平に水車軸(5)が連結されること(特に、第1図を参照。)
以上を踏まえ、本願補正発明の表現にならって整理すると、引用例2には、次の発明が記載されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明2」と言う。)。
「河川敷地外両岸に設けた支柱杭(1)に、強固なワイヤーロープ(2)が張られ、このワイヤーロープ(2)にロッド(4)の基端部がワイヤーロープ(2)周りに揺動可能に遊嵌され、左右のロッド(4)の下端部に亘って水平に連結された水車軸(5)を有する水車式発電機(3)。」
(ウ)引用例3
当審において通知された拒絶の理由に引用された本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-88073号公報(以下、「引用例3」と言う。)には、「発電制御方法およびそれを用いた発電装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発電制御方法およびそれを用いた発電装置に関する。さらに詳しくは、例えば自転車などの人力走行装置に搭載され車輪などの回転力を利用して発電を行うような、入力側の回転数が常に変動する発電機における発電電圧を制御するための発電制御方法およびそれを用いた発電装置に関する。」
(b)「【0017】
【作用】本発明は、前記の如く構成されているので、発電機の入力回転数が所定回転数を超えて上昇したときにも誘電コイルにおける誘導起電力の上昇を規定電圧以下に抑えることができる。これによって、特に人力走行装置が極低速度で運転されていても所定の発電電圧が確保されるようにされている発電機を備えた発電装置において、高速で運転された場合における発電電圧が規定電圧を超えないようにすることが可能となる。」
(c)「【0022】発電機10は、ロータ11とステータ12とを含み、ロータ11がステータ12の外側に配された、いわゆるアウタロータ形の発電機とされる。ロータ11は、ロータ磁石11aと、ロータ磁石11aが接着されるロータヨーク11bと、ロータヨーク11bと一体的に形成されかつハブ軸(車軸)Cに回転自在に支持されるロータ支持部材11cとを含む。
【0023】ロータ磁石11aは、図2に示すように、リング状の外形を有し、その円周方向にN極(網目模様で示す)およびS極(白抜きで示す)が等間隔で交互に並ぶように多数の磁極(例えば、24極)11cが形成されてなるものとされる。また、ロータ磁石11aは、磁力の強力な希土類磁石、例えばネオクエンチ-P(商品名)などのネオジムボンド磁石からなる永久磁石とされる。」
(d)「【0027】ロータヨーク11bおよびこれと一体形成されたロータ支持部材11cは、ハブ軸Cが嵌挿される中空軸13の外周面に形成された各段部13a,13bと係合し、軸方向所定位置で該中空軸13によって回転可能に支持される。」
(e)「【0028】次に、ロータ11の内側に配設されるステータ12を説明する。
【0029】図3に示すように、ステータ12は、中空軸13が挿嵌される軸挿通孔12aが穿設された、小径厚肉リング状のステータヨーク12bと、このステータヨーク12bの外周面から放射状に延びるように設けられる、各々にコイル導線(不図示である)が巻きつけられる縦長T字状の多数(例えば、24本)のステータコア12cとを備えてなるものとされる。
【0030】各ステータコア12cの軸部12dの横断面積Sは、自転車の高速走行時、つまり前輪が高速回転されている時に、発電機10の発電電圧が規定電圧を超えて上昇しないように、所定の断面積以下とされる。ここで、この所定段面積は例えばテスト走行などによって決定される。
【0031】この点について敷衍すると、ステータ12においては、各ステータコア12cにコイル導線が巻きつけられて発電機10の誘電コイルを構成しており、この各誘電コイルの誘導起電力は、電磁誘導の基本原理により、ロータ磁石11aの運動によって生じる各誘電コイルにおける磁界変化を打ち消すように、各誘電コイルが発生する磁束に相応したものとなる。したがって、ロータ磁石11aの回転速度がある程度以上に大きくなって各誘電コイルが発生する磁束の上昇が飽和するとき、各誘電コイルの誘導起電力の上昇もなくなる。」
(f)「【0034】次に、増速機20を説明する。
【0035】増速機20は、自転車前輪と多数のスポーク(不図示である)を介して接続され、前輪と一体的に回転するハブ体D(図1参照)の回転を増速して発電機10に伝達するものとされる。
【0036】増速機20は、具体的には、図4および図5に示すような遊星歯車機構21から構成される。遊星歯車機構21は、ハブ体Dの内周面に形成される、増速機20の入力軸としての内歯車21aと、複数の遊星歯車21bと、各遊星歯車21bを回転可能に支持するとともに中空軸11に固定されるキャリア21cと、ロータ11と連結される、増速機20の出力軸としての太陽歯車21dとを備えてなるものとされる。この場合、遊星歯車機構21を構成する歯車は合成樹脂製とされてなるのが、増速機20から発生する騒音を低減できるので好ましい。
【0037】しかして、かかる構成を有する本実施形態の発電装置Aは、自転車の走行により前輪が回転すると、この回転がスポークを介してハブ体Dに伝達され、ハブ体Dの回転が増速機20により増速されて発電機10に伝達され、この伝達された回転駆動力により発電機10のロータ磁石11aが回転され、ロータ磁石11aの回転により発電された電力がソリッド基板Sに設けられた素子により平滑化されて負荷、例えば前照灯に供給される。」
(g)「0041】以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではなく、種々改変が可能である。例えば、実施形態においては人力走行装置は自転車とされているが、人力走行装置は自転車に限定されるものではなく、各種人力走行装置とでき、例えば水上自転車とすることもできる。また、発電機はアウタロータ形とされているが、インナーロータ形とされてもよく、増速機は歯車による増速機構に代えてローラーによる増速機構とされてもよい。」
また、引用例3において、上述した記載事項と図面の記載内容を併せると、以下の事項を認めることができる。
(h)ハブ軸C及び中空軸13が一体的に組み合わされ、支軸を構成していること(特に、図1を参照。)
(i)ロータ磁石11aがロータヨーク11bの内周に接着されていること(特に、図1を参照。)
(j)内歯車21aと太陽歯車21dとが、遊星歯車21bを介して咬合連動すること(特に、第4図を参照。)
以上を踏まえ、本願補正発明の表現にならって整理すると、引用例3には、次の発明が記載されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明3」と言う。)。
「コイル導線が巻きつけられたステータコア12cを有するステータ12を支軸に挿嵌し、ロータ磁石11a、ロータ磁石11aを内周に接着したロータヨーク11b及びロータ支持部材11cからなるロータ11を前記支軸に回転自在に支持し、ハブ体Dの内周面に形成された内歯車21aと前記ロータ11に連結した太陽歯車21dとを、支軸に固定されたキャリア21cに回転可能に支持された遊星歯車21bを介して咬合連動するように形成されている発電機10。」
(エ)引用例4
当審において通知された拒絶の理由に引用された本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-106456号公報(以下、「引用例4」と言う。)には、「流体羽根一体型回転電機」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
(a)「【0021】ところで、図1および図2の実施例では、回転電機は界磁電流が供給可能な回転子巻線を有する同期発電機を例に挙げたが、界磁電流が供給可能な回転子巻線5の代わりに回転子上で短絡閉路した回転子巻線を形成すれば、かご形の誘導発電機として動作可能である。また、界磁電流が供給可能な回転子巻線5を施した回転子6の代わりに永久磁石を使用すれば、永久磁石形の同期発電機として動作可能である。なお、回転電機を誘導機または永久磁石形の同期機として動作させた場合、界磁電流を固定部側から回転子巻線5に界磁電流を供給する界磁電流供給装置8は省略可能である。」
(オ)引用例5
当審において通知された拒絶の理由に引用された本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭54-147213号(実開昭56-66163号)のマイクロフィルム(以下、「引用例5」と言う。)には、「流体発電装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
(a)「以下、この考案の一実施例を図について説明する。第4図?第6図において、(21)は軸受台で、河川水(22)の中にある支持台(23)に、締付部材(24)によつて着脱自在に取り付けられており、適宜高さの方向の取り付け位置が調整可能となつていると共に、軸受(25)を介して回転軸(26)を回転自在に支承している。(27)は中空状の固定子枠で、軸受台(21)にオーバハングの形で取り付けられ、内周部は回転軸(24)との間に間隙をもつた寸法となつており、外周部には固定子鉄心(28)を支持している。(29)は固定子巻線で、固定子鉄心(28)に備えられている。(30)は羽根車で、回転軸(24)の軸方向中央近傍に取り付けられ、内リング(31)を備えると共に、この内リング(31)の外周部に径方向に延びて取り付けられた羽根(32)から構成されている。(33)は回転子鉄心で、固定子鉄心(28)の外周部に所定の間隙をもつて配置され、上記羽根車(30)の内リング(31)の内周部に、羽根車(30)と一体化された形で支持されている。(34)は回転子巻線で、回転子鉄心(33)に備えられると共に、あらかじめ励磁電源に接続されて、回転子鉄心(33)を励磁している。」(第3ページ第14行?第4ページ第14行)
(b)「(1)上記実施例の回転子鉄心および回転子コイルのかわりに、永久磁石を使用してもよい。」(第7ページ第12?13行)
イ.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「カーレントホイル2」は本願補正発明の「水車」に相当する。以下同様に、「河川の水面に平行である軸心周り」は「横向きの軸心周り」に、「回転自在に支持する」態様は「回転自在に支承する」態様又は「回転可能に支承」する態様に、「枢軸5」は「支軸」に、「河川」は「水路」に、「駆動されるダイナモ4」は「回転駆動される発電機構」に、「水位追従式簡易水力発電装置」は「水力発電装置」に、「円筒形に形成されたバランスフロート3と同体である」態様は「密閉されたドラム形の中空体に形成される」態様に、「周面」は「外周」に、「羽根板21」は「羽根」に、「内装され」る態様は「組み込まれ」る態様に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明1の「河川の水位の変動に追従して一定の吃水位を保持するように繋止部12に繋止されるステー1に回転自在に支持される前記カーレントホイル2」は、本願補正発明の「流動する水面に下半側の一部が浸漬された状態で一定経路に沿って自由上下動可能に浮上支持され、水路の水位変動に自重追従して上下動する前記水車」に相当する。
(ウ)引用発明1の「駆動部分に遊星歯車増速機構を内蔵する」ダイナモ4(発電機構)と、本願補正発明の「コイルステータを前記支軸に取り付け、マグネットを内周に備えた内部ロータを前記支軸に回転自在に遊嵌し、前記水車の内周に設けた大径の内歯ギヤと前記内部ロータに連結した中心ギヤとを、支軸に連結した固定支持板に軸支した中間ギヤを介して咬合連動するように形成されている」発電機構とは、発電機構が「駆動部分に遊星歯車増速機構を有する」点で一致する。
以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水車を横向きの軸心周りに回転自在に支承する支軸と、
前記支軸に回転可能に支承され、流動する水面に下半側の一部が浸漬された状態で一定経路に沿って自由上下動可能に浮上支持され、水路の水位変動に応じて自重追従して上下動する前記水車と、
前記水車の回転によって回転駆動される発電機構とを備えた水力発電装置であって、
前記水車は、密閉されたドラム形の中空体に形成されるとともに外周に多数の羽根を備えており、
前記水車の内部に前記発電機構が組み込まれており、
前記発電機構は、駆動部分に遊星歯車増速機構を有する、
水力発電装置。」
<相違点1>
本願補正発明では、支軸が「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結固定された中空の支軸」であるのに対し、引用発明1では、支軸がそのように特定されたものではない点。
<相違点2>
水車の支軸への支承が、本願補正発明では「ベアリングを介して」行われるものであるのに対し、引用発明1では「ベアリングを介して」行われるものであると特定されていない点。
<相違点3>
本願補正発明の発電機構は、「コイルステータを前記支軸に取り付け、マグネットを内周に備えた内部ロータを前記支軸に回転自在に遊嵌し、前記水車の内周に設けた大径の内歯ギヤと前記内部ロータに連結した中心ギヤとを、支軸に連結した固定支持板に軸支した中間ギヤを介して咬合連動するように形成されている」ものであるのに対し、引用発明1の発電機構は、駆動部分に遊星歯車増速機構を有するものであるものの、その具体的な構成が特定されていない点。
ウ.判断
(ア)相違点1について
本願補正発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「河川敷地外両岸」は本願補正発明の「水路の両脇」に相当し、以下同様に、「支柱杭(1)」は「支持台」に、「ワイヤーロープ(2)」は「支点軸」に、「ロッド(4)」は「支持アーム」に、「枢軸(5)」は「支軸」に、「水車式発電機(3)」は「水力発電装置」それぞれ相当する。
そして、引用発明2の「河川敷地外両岸に設けた支柱杭(1)に、強固なワイヤーロープ(2)が張られ」る態様は、本願補正発明の「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され」る態様に相当し、引用発明2の「このワイヤーロープ(2)にロッド(4)の基端部がワイヤーロープ(2)周りに揺動可能に遊嵌され」る態様は、本願補正発明の「この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され」る態様に相当する。また、引用発明2の「左右のロッド(4)の下端部に亘って水平に連結された水車軸(5)」は、本願補正発明の「左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結固定された中空の支軸」と、「左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結された支軸」である点で一致する。
したがって、引用発明2を本願補正発明の表現にならって整理すると、引用発明2は以下の発明であるとも言える。
「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結された支軸を有する水力発電装置。」
ここで、引用発明1は、水力発電装置の水車を、「流動する水面に下半側の一部が浸漬された状態で一定経路に沿って自由上下動可能に浮上支持され、水路の水位変動に応じて自重追従して上下動する」ものとするために、繋止部12に繋止されるステー1を備えるものである。
一方、引用発明2は、引用例2に「河川の水位(10)が変動しても、カラー(8)、カラー(9)が、時計の振り子の支点のように、自在に動いて、水位(10)が変動しても、水車の回転が一定に保たれる。」(第2ページ第8?11行)と記載されているように、水力発電装置の水車に、引用発明1の水車と同様な動作を行わせるものであり、そのような動作を行わせるために、「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結された支軸」を備えるものである。
引用発明1と引用発明2は、ともに水流に浮上させた水車を用いて発電を行うものであるという点で共通する技術分野に属するものであり、また、水車を、流動する水面に下半側の一部が浸漬された状態で一定経路に沿って自由上下動可能に浮上支持し、水路の水位変動に応じて自重追従して上下動させるために、どのような構成を採用するかは、当業者が適宜決定できる程度の事項であるから、引用発明1において、繋止部12に繋止されるステー1に替えて、引用発明2の「支持台」、「支点軸」及び「支持アーム」を用いる構成を採用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、引用発明1における「支軸(枢軸5)」が、「水車(カーレントホイル2)を・・・回転自在に支承する」ものであることを踏まえれば、引用発明2の「支持台」、「支点軸」及び「支持アーム」を引用発明1に適用した際に、「支軸(枢軸5)」を「支持アーム」に「連結固定」することは、当業者が当然に行うことである。
また、引用発明1において、「発電機構(ダイナモ4)」で発電された電力は、「支軸(枢軸5)」及びステー1を介して送電する必要があることは当業者にとって自明であるから、送電のために必要な送電ケーブルを「支軸(枢軸5)」内に挿通させること、すなわち、送電ケーブルを挿通させることができるように「支軸(枢軸5)」を中空とすることは、当業者にとって容易である。
(イ)相違点2について
回転体を支軸に回転自在に支承するにあたり、ベアリング(転がり軸受、滑り軸受等)を用いることは、機械一般の分野における例示するまでもない慣用技術である。そして、「水車を横向きの軸心周りに回転自在に支承する支軸」を備えるものである引用発明1に、上記慣用技術を適用して、水車の支軸への支承をベアリングを介して行うものとし、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)相違点3について
引用発明1は、発電機構(ダイナモ4)についてその具体的な構成を特定していないが、当業者は、この発電機構については、引用発明1を具現化する際に、公知技術の中から適宜採用し得るものである。
したがって、当業者は、引用例4(段落0021、図2、図3等参照。)及び引用例5(第3ページ第14行?第4ページ第14行、第7ページ第12?13行、第4?6図参照。)に記載されているような、流体により回転する羽根車の内部に設ける発電機構であって、中心部に配置されたコイルステータと、マグネットを内周に備えたロータとから構成した周知の発電機構(以下、この周知の発電機構を「周知技術」と言う。)を、引用発明1の発電機構として採用し得るものであるし、また、上記周知技術と同様の構成を有し、さらに、引用発明1と同様に遊星歯車増幅機構を内蔵したものである、引用発明3の発電機構の採用も考慮し得るものである。
ここで、本願補正発明とこの引用発明3とを対比すると、引用発明3の「コイル導線が巻きつけられたステータコア12cを有するステータ12」は本願補正発明の「コイルステータ」に相当し、以下同様に、「挿嵌」する態様は「取り付け」る態様に、「ロータ磁石11a、ロータ磁石11aを内周に接着したロータヨーク11b及びロータ支持部材11cからなるロータ11」は「マグネットを内周に備えた内部ロータ」に、「回転自在に支持」する態様は「回転自在に遊嵌」する態様に、「内歯車21a」は「内歯ギヤ」に、「前記ロータ11に連結した太陽歯車21d」は「前記内部ロータに連結した中心ギヤ」に、「支軸に固定されたキャリア21cに回転可能に支持された遊星歯車21b」は「支軸に連結した固定支持板に軸支した中間ギヤ」に、「発電機10」は「発電機構」に、それぞれ相当する。
また、引用発明3の「ハブ体Dの内周面に形成された内歯車21a」と、本願補正発明の「前記水車の内周に設けた大径の内歯ギヤ」とは、「回転体の内周に設けた大径の内歯ギヤ」である点で一致する。
したがって、引用発明3を本願補正発明の表現にならって整理すると、引用発明3は以下の発明であるとも言える。
「コイルステータを支軸に取り付け、マグネットを内周に備えた内部ロータを前記支軸に回転自在に遊嵌し、回転体の内周に設けた大径の内歯ギヤと前記内部ロータに連結した中心ギヤとを、支軸に連結した固定支持板に軸支した中間ギヤを介して咬合連動するように形成されている発電機構。」
そうすると、引用発明1の遊星歯車増速機構を内蔵した発電機構(ダイナモ4)の具体的構成として、引用発明3の遊星歯車増速機構を内蔵した発電機構の構成を採用し、本願補正発明の相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、引用発明1に引用発明3の発電機構を採用した際に、引用発明3における「回転体」を引用発明1の「水車(カーレントホイル2)」とすることは、当業者が当然に行うことである。
(エ)効果について
請求人は、平成27年11月24日付け意見書において、本件補正発明について、「○水位が変動する開放された水路などにおいても簡単に設置して安定した水力発電を行うことができる、○水位の変動に拘わらず安定した発電を行うことができる、○簡素な構造で水車の浸漬深さを安定維持することができる、○装置全体の小型化を図ることができる、○発電機構における出力を高めることができる等の優れた作用効果を奏するものであり、開放された水路に簡単に設置できる小型水力発電装置として、実用上、極めて優れた利点を有しております。」と主張しているが、主張されている効果は、いずれも、引用発明1、引用発明2、引用発明3、引用例4及び引用例5に記載された周知技術、及び、慣用技術からみて、格別顕著なものであるとは言えない。
すなわち、本件補正発明の発明特定事項により奏される効果は、引用発明1、引用発明2、引用発明3、引用例4及び引用例5に記載された周知技術、及び、慣用技術からみて、格別顕著であるとは言えない。
エ.小括
したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、引用発明3、引用例4及び引用例5に記載された周知技術、及び、慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(2)記載要件
本願補正発明における「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結固定された中空の支軸であって、水車を横向きの軸心周りに回転自在に支承する支軸」との発明特定事項は、本願補正発明が、(a)「支持台」、「支点軸」、「支持アーム」及び「支軸」を備えることを示しているのか、(b)「支持台」、「支点軸」及び「支持アーム」を備える必要はなく、「支軸」が「支持台」、「支点軸」及び「支持アーム」に直接的又は間接的に連結されることに適したものであることを示しているのか(「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結固定された」との文章は「中空の支軸」を修飾するものと理解できるため。)、(c)その他の技術的事項を意味するのかが不明である。
したがって、本願補正発明が特許請求の範囲に記載された本件特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.請求人の主張について
請求人は、平成27年11月24日付けの意見書で以下のように主張している。
「なお、今回の拒絶理由通知書には、この拒絶理由通知は最後の拒絶理由通知である旨が示されており、この理由として、「この拒絶理由通知は、最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものである。」
と記載されています。
しかしながら、本件の手続補正書は、審査部において平成26年2月27日付けで通知された「最初の拒絶理由通知」に対して、平成26年4月22日に提出したものであって、「最後の拒絶理由通知」に対する応答として提出したものではありません。
さらに、今回の拒絶理由通知は、引用文献1?4が、上記「最初の拒絶理由通知」で引用された引用文献1?4(1.特開2007-040217号公報、2.特開2011-202605号公報、3.特開2003-193952号公報及び4.特開2010-112194号公報)とは全く異なっており、さらに、主引用例、論理構成も別異のものですので、今回の拒絶理由通知を「最後の拒絶理由通知」として厳しい補正の制限を課すのは、審判請求人にとって著しく不利益となると思慮いたします。(最初は最適の引用文献を提示せず補正の制限をかけた上で、最適の引用文献を提示するといった運用は、審査の迅速性が重視される審査部ではある程度やむを得ないとしても、審判部においては配慮されるべきものと思慮いたします。)」
上記主張についての審判合議体の見解を述べる。
まず、上記「今回の拒絶理由通知書」(平成27年9月15日付けの拒絶理由通知書)に「・・・最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって・・・」と記載されていた点は、この拒絶理由通知書以前に「最後の拒絶理由通知」が通知されていないことも踏まえれば、「最初の拒絶理由通知」の誤記であったことは明白である。
次に、上記「今回の拒絶理由通知書」で引用された証拠(引用)文献及び拒絶の理由の論理構成が、平成26年2月27日付けの拒絶理由通知書(以下、「前回の拒絶理由通知書」と言う。)で引用されたものと別異のものである、という点については、前回の拒絶理由通知書は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された発明に対して拒絶の理由を通知したものであって、当該請求項1?4に記載された発明特定事項の内容を踏まえれば、その通知で示された証拠(引用)文献及び論理構成は、ともに妥当なものである。そして、上記「今回の拒絶の理由通知書」は、その妥当な拒絶の理由の通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知したものであるから、「最後」の拒絶の理由の通知としたことは妥当であり、請求人に著しい不利益を生じさせたとも言えない。
したがって、平成27年9月15日付けの拒絶の理由の通知は、「最後」の拒絶の理由の通知とすることが相当である。

5.まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、独立特許要件を欠くものである。
よって、このような請求項1の記載に係る補正を含んだ本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年4月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(「第2.1.(1)」参照。以下、同請求項に係る発明を「本願発明」と言う。)。

2.引用例
当審において通知された拒絶の理由に引用された引用例1(実願昭57-153074号(実開昭59-56385号)のマイクロフィルム)、引用例3(特開2003-88073公報)、引用例4(特開2002-106456号公報)、引用例5(実願昭54-147213号(実開昭56-66163号)のマイクロフィルム)の記載事項及び「引用発明1」は、「第2.3.(1)ア.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、「第2.3.(1)」で検討した本願補正発明から、「水路の両脇に設置固定した支持台に亘って支点軸が水平に横架固定され、この支点軸に支持アームの基端部が支点軸心周りに上下揺動可能に遊嵌され、左右の支持アームの遊端部に亘って水平に連結固定された中空の支軸であって、」という限定事項、及び、「前記支軸にベアリングを介して回転可能に支承され、」であるという限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明1を対比すれば、本願補正発明と引用発明1を対比したときの「相違点3」と同じ相違点があり、その相違点についての判断は、「第2.3.(1)ウ.(ウ)に記載したところと異なるものではなく、また、本願発明の発明特定事項によりもたらされる効果は、引用発明1、引用発明3、引用例4及び引用例5に記載された周知技術からみて、格別顕著なものであるとは言えない。
したがって、本願発明も、本願補正発明と同様に、引用発明1、引用発明3、引用例4及び引用例5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明3、引用例4及び引用例5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-18 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-07 
出願番号 特願2012-205640(P2012-205640)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F03B)
P 1 8・ 537- WZ (F03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏原 郁昭  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 松永 謙一
新海 岳
発明の名称 水力発電装置  
代理人 小林 均  
代理人 林 司  
代理人 野口 武男  

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