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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K |
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管理番号 | 1311566 |
審判番号 | 不服2015-14185 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-28 |
確定日 | 2016-03-22 |
事件の表示 | 特願2010-237507「ハイブリッド車両の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月10日出願公開、特開2012- 86798、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年10月22日の出願であって、平成26年5月8日付けで拒絶理由が通知され、同年7月4日に意見書が提出され、同年12月2日付けで再度拒絶理由が通知され、平成27年2月6日に意見書が提出されたが、同年6月25日付けで拒絶査定がされ、同年7月28日に拒絶査定審判請求がされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、同年11月25日に上申書が提出されたものである。 第2 本件補正の適否 1 本件補正の内容 平成28年7月28日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲については、本件補正により補正される前の下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものであり、明細書については、本件補正により補正される前の下記(3)に示す明細書の段落【0006】の記載を下記(4)に示す明細書の段落【0006】の記載へ補正するものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「請求項1】 動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、 電力源としてのバッテリと、 を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、 前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、 アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、 前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、 前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、 少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段と、 前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と、 を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 【請求項2】 動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、 電力源としてのバッテリと、 を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、 前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、 アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、 前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、 前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、 少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する移行要求手段と、 前記HEVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル戻し中と判定できる負のHEVモード移行禁止速度よりも小さいときは、HEVモードへの移行を禁止するHEVモード移行禁止手段と、 を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 【請求項3】 EVモードでの走行時に前記補正アクセル操作量が所定量以上となったときは、走行モードを強制的にHEVモードに移行する走行モード強制移行手段を備える、 ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、 電力源としてのバッテリと、 を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、 前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、 アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、 前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、 前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、 少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段と、 前記バッテリの蓄電量が強制発電停止量を上回ることで、走行モードを強制的にHEVモードに移行して行う強制発電が停止され、且つ前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と、 を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 【請求項2】 動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、 電力源としてのバッテリと、 を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、 前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、 アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、 前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、 前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、 少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する移行要求手段と、 前記HEVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル戻し中と判定できる負のHEVモード移行禁止速度よりも小さいときは、HEVモードへの移行を禁止するHEVモード移行禁止手段と、 EVモードでの走行時に前記補正アクセル操作量が、前記バッテリの蓄電量が最大となっている場合におけるエンジン始動線上のアクセル操作量以上となったときは、走行モードを強制的にHEVモードに移行する走行モード強制移行手段と、 を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 【請求項3】 EVモードでの走行時に前記補正アクセル操作量が所定量以上となったときは、走行モードを強制的にHEVモードに移行する走行モード強制移行手段を備える、 ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。) (3)本件補正前の明細書の段落【0006】 「【0006】 本発明は、動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、電力源としてのバッテリと、を備えるハイブリッド車両の制御装置である。そして、バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、少なくとも蓄電量及び補正アクセル操作量に基づいて、モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段と、EVモードへの移行要求があったときに、アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と、を備えることを特徴とする。」 (4)本件補正後の明細書の段落【0006】 「【0006】 本発明は、動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、電力源としてのバッテリと、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段と、前記バッテリの蓄電量が強制発電停止量を上回ることで、走行モードを強制的にHEVモードに移行して行う強制発電が停止され、且つ前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と、を備えることを特徴とする。」(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。) 2 本件補正の目的の適否、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものか否か及び発明の特別な技術的特徴を変更するものか否か 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の請求項1の「前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と」という記載を「前記バッテリの蓄電量が強制発電停止量を上回ることで、走行モードを強制的にHEVモードに移行して行う強制発電が停止され、且つ前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と」という記載にするものであり、「EVモード移行禁止手段」がEVモードへの移行を禁止する条件として「前記バッテリの蓄電量が強制発電停止量を上回ることで、走行モードを強制的にHEVモードに移行して行う強制発電が停止され」という限定を加えたものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 また、本件補正は、特許請求の範囲の請求項2については、「EVモードでの走行時に前記補正アクセル操作量が、前記バッテリの蓄電量が最大となっている場合におけるエンジン始動線上のアクセル操作量以上となったときは、走行モードを強制的にHEVモードに移行する走行モード強制移行手段と」という記載を加えることによって、本件補正前の請求項2に係る発明の「ハイブリッド車両の制御装置」という発明特定事項を限定するものであって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 さらに、本件補正は、特許請求の範囲の請求項3については、請求項2を補正したことに伴い、請求項1のみを引用するようにしたものであり、請求項1については、上記のとおり限定が加えられているので、本件補正前の請求項3に係る発明の発明特定事項を限定するものといえ、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項3に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲については、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、明細書については、特許請求の範囲を補正したことに伴い、特許請求の範囲との整合をとるためのものである。 さらに、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内においてしたものであるので、特許法第17条の2第3項に違反するものではないし、発明の特別な技術的特徴を変更するものでもないので、同法第17条の2第4項に違反するものでもない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に違反するものではない。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願補正発明1」ないし「本願補正発明3」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。 (1)引用文献の記載等 ア 引用文献1の記載等 (ア)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2008-126901号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ハイブリッド車両のモード切り替え制御装置」に関して、図面とともに概ね次の記載(以下、順に「記載a」ないし「記載f」という。)がある。 a 「【0001】 本発明は、エンジン以外にモータ/ジェネレータからの動力によっても走行することができ、モータ/ジェネレータからの動力のみにより走行する電気走行(EV)モードと、エンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力により走行可能なハイブリッド走行(HEV)モードとを有するハイブリッド車両に関し、特に、 前者のEVモードの選択領域を、運転者の加速意図の弱さに応じて拡大可能にしたハイブリッド車両のモード切り替え制御装置に関するものである。」(段落【0001】) b 「【0007】 特許文献2の提案技術は、アクセル開速度が逆に遅いとき、モード切り替え判定用の設定アクセル開度を大きくして前者の電気走行(EV)モード領域を広くし、その分、ハイブリッド走行(HEV)モード領域を狭くすることとなり、長い期間電気走行(EV)モードで走行することを希望する低アクセル開速度時にハイブリッド走行への切り替えが早期に行われる(EVモード走行が短い)との不満を解消させることができる。 【0008】 しかし上記提案技術のごとく、アクセル開速度に応じて異なるモード切り替え判定用の設定アクセル開度を使い分けるというのでは、この設定アクセル開度が車速毎の設定値であることとも相まって、設定アクセル開度に関するデータ量が多くなると共に、演算に要する時間も長くなって、コスト的に不利である。 【0009】 本発明は、従来のようにアクセル開速度に応じてモード切り替え判定用の設定アクセル開度を異ならせる手法に代わるモード切り替え制御により、上記データ量に関する問題や、演算時間に関する問題や、コスト上の問題を回避しつつ、運転者の加速意図を考慮したモード切り替え制御を実現し得るようにしたハイブリッド車両のモード切り替え制御装置を提案することを目的とする。」(段落【0007】ないし【0009】) c 「【0014】 以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。 図1は、本発明のモード切り替え制御装置を適用可能なハイブリッド駆動装置を具えたフロントエンジン・リヤホイールドライブ式ハイブリッド車両のパワートレーンを示し、1はエンジン、2は駆動車輪(後輪)である。 図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置し、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合してモータ/ジェネレータ5を設ける。」(段落【0014】) d 「【0026】 統合コントローラ20には、上記パワートレーンの動作点を決定するために、 エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ11からの信号と、 モータ/ジェネレータ回転数Nmを検出するモータ/ジェネレータ回転センサ12からの信号と、 変速機入力回転数Niを検出する入力回転センサ13からの信号と、 変速機出力回転数Noを検出する出力回転センサ14からの信号と、 エンジン1の要求負荷状態を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ15からの信号と、 モータ/ジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ16からの信号とを入力する。 【0027】 なお、上記したセンサのうち、エンジン回転センサ11、モータ/ジェネレータ回転センサ12、入力回転センサ13、および出力回転センサ14はそれぞれ、図1?3に示すように配置することができる。 【0028】 統合コントローラ20は、上記入力情報のうちアクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数No(車速VSP)から、運転者が希望している車両の駆動力を実現可能な運転モード(EVモード、HEVモード)を選択すると共に、目標エンジントルクtTe、目標モータ/ジェネレータトルクtTm、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1、および目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2をそれぞれ演算して駆動力制御を行う。 【0029】 ただし、運転者による要求負荷を表すアクセル開度APOについては、これをそのまま用いず、統合コントローラ20が後で詳述するごとく、検出された実アクセル開度APOに対して図5に示す通り1:1の関係を持つ通常の制御入力アクセル開度cAPOとなるような早開き特性αにより決定した大きな制御入力アクセル開度cAPOと、検出された実アクセル開度APOに対して同図に示す通り1:1未満の小さな制御入力アクセル開度cAPOとなるような遅開き特性βにより実アクセル開度APOを修正して得られる制御入力アクセル開度cAPOとを使い分けて上記のモード選択や駆動力制御に資するものとする。 なお遅開き特性βは、例えばアクセル開度APO=4/8未満の低開度領域でのみ上記の遅開き特性を持つものとし、それ以外の大開度領域では早開き特性αと同じ(APO=cAPO)特性を持つものとする。」(段落【0026】ないし【0029】) e 「【0040】 アクセル操作形態II-3の場合、アクセル開度APOが図7の設定アクセル開度APOa?APOb間におけるEV拡大領域内の値であっても、これが誤操作や運転者の癖に基づくものであることが多く、APO=APOa時におけるアクセル開速度ΔAPOの不変または低下により(アクセル開加速度ΔΔAPO≦0により)、図10に同符号II-3で示すごとくAPO f 「【0044】 この目的のため統合コントローラ20は図6の制御プログラムによりモード切り替えを実行する。 図6の制御プログラムは、アクセルペダルの踏み込みがなされた時に開始され、以下のようにモード切り替えを遂行するもので、ステップS11においては、車速VSPが図7に示すEV域拡大車速限界値VSPa未満の低車速か否かにより、EV域拡大車速域か否かをチェックする。 ステップS11で車速VSPが図7に示すEV域拡大車速限界値VSPa以上の高車速であると判定するときは、ステップS12において、車速VSPおよび図5の早開き特性αに基づく制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)の組み合わせが、図7の実線で示す基本境界線を挟んでEV領域にあるのか、HEV領域にあるのかをチェックする。 【0045】 ステップS12でHEV域と判定するときは、ステップS13において、図5の早開き特性αにより得られた制御入力アクセル開度cAPOに基づく車両の駆動力制御を行うと共に、同じく早開き特性αにより得られた制御入力アクセル開度cAPOに基づき図7の基本境界線を用いたモード切り替え制御によりHEV走行を行わせる。 ステップS12でEV域と判定するときは、ステップS14において、図5の早開き特性αにより得られた制御入力アクセル開度cAPOに基づく車両の駆動力制御を行うと共に、同じく早開き特性αにより得られた制御入力アクセル開度cAPOに基づき図7の基本境界線を用いたモード切り替え制御によりEV走行を行わせる。 ところで早開き特性αにより得られた制御入力アクセル開度cAPOは、実アクセル開度APOと同じ値であるため、また、図7の基本境界線が一般的なものであるため、早開き特性αにより得られた制御入力アクセル開度cAPOに基づく車両の駆動力制御は一般的な駆動力制御であり、また、この制御入力アクセル開度cAPOと、図7の基本境界線とに基づくモード切り替え制御も一般的なものである。 【0046】 ステップS11で車速VSPが図7に示すEV域拡大車速限界値VSPa未満の低車速であると判定するときは、EV域拡大要求車速域であることから制御をステップS15以降に進めて、本発明が狙いとするモード切り替え制御を以下のごとくに実行する。 先ずステップS15において、図9に対応するマップを基に車速VSPから、加速意図判定用の第1,2設定アクセル開速度ΔAPOa,ΔAPObを読み込んで求める。 次のステップS16においては、図5の早開き特性αに基づく制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)が図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaを超えた時におけるアクセル開速度ΔAPOと、ステップS15で求めた加速意図判定用第1設定アクセル開速度ΔAPOaとを対比し、ΔAPO<ΔAPOaであって弱い加速意図を表す加速意図I(図8,9参照)か、ΔAPO≧ΔAPOaであって標準的または強い加速意図を表す加速意図IIまたはIII(図8,9参照)かをチェックする。 【0047】 ステップS16で弱い加速意図を表す加速意図Iであると判定するときは、ステップS17において、図5の遅開き特性βにより求めた制御入力アクセル開度cAPOに基づく駆動力制御を行う。 次のステップS18においては、図5の遅開き特性βにより求めた制御入力アクセル開度cAPOが、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOa未満(APO I-2のアクセル操作形態である場合(例えば図10に同符号I-2で示すアクセル操作である場合)、ステップS20において、図5の遅開き特性βにより求めた制御入力アクセル開度cAPOと、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaとに基づくモード切り替え制御によりEV走行を行わせる。 【0048】 従って、弱い加速意図を表す加速意図Iである場合、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaに基づくモード切り替え制御であっても、実アクセル開度APOの代わりに遅開き特性βにより求めた制御入力アクセル開度cAPOを用いることから、実質上EV領域を図7に破線で示すEV拡大境界線まで拡大したと等価なモード切り替えが行われることとなり、ステップS17で遅開き特性βにより求めた制御入力アクセル開度cAPOに基づく駆動力制御と相まって、弱い加速意図に符合する長時間のEV走行を可能にしたモード切り替えを実現することができる。 またこの作用効果を達成するのに、図7に破線で示すようなEV拡大境界線を設定するのではなく、要求負荷を表すアクセル開度APOの代わりに、これをアクセル開速度ΔAPO(加速意図)の弱さに応じ小さくなる遅開き特性βで修正して求めた制御入力アクセル開度cAPOを用いることとしたから、 従来のようにモード切り替えの判定基準となるアクセル開度設定値を加速意図に応じ異ならせる場合の問題、つまり、データ量が多くなったり、演算に要する時間が長くなって、コスト的に不利になるという問題を生ずることなく、上記の作用効果を達成することができる。 【0049】 ステップS16でアクセル開速度ΔAPOが加速意図判定用第1設定アクセル開速度ΔAPOa(ステップS15)以上であると判定する、標準的または強い加速意図を表す加速意図IIまたはIII(図8,9参照)である場合は、 ステップS21において、図5の早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)に基づく駆動力制御を行うことにより、駆動力不足になるのを防止すると共に、制御をステップS22以降に進めて以下のようなモード切り替え制御を行う。 【0050】 ステップS22においては、アクセル開速度ΔAPOが加速意図判定用第1,2設定アクセル開速度ΔAPOa,ΔAPOb(ステップS15)間の標準的な速度であって、中くらいの加速意図を表す加速意図II(図8,9参照)であるのか、それともアクセル開速度ΔAPOが加速意図判定用第2設定アクセル開速度ΔAPOb(ステップS15)以上の速い速度であって、強い加速意図を表す加速意図III(図8,9参照)であるのかをチェックする。 【0051】 中くらいの加速意図を表す加速意図IIである場合、ステップS23において、図5の早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)が、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOa未満か否かにより、アクセル操作形態が図8におけるII-1か、それ以外のII-2?4かをチェックする。 II-1のアクセル操作形態である場合、ステップS14において、図5の早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPOと、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaとに基づくモード切り替え制御によりEV走行を行わせる。 【0052】 ステップS23でアクセル操作形態が図8におけるII-2?4であると判定する場合、ステップS24において、図5の早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)が、設定アクセル開度APOa,APOb間の値か、設定アクセル開度APOb以上かをチェックし、設定アクセル開度APOa,APOb間の値であれば更にステップS25において、前記アクセル開速度ΔAPOの時間変化割合であるアクセル開加速度ΔΔAPOが0以下か否かをチェックする。 【0053】 ステップS24で図5の早開き特性αに基づく制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)が、設定アクセル開度APOa,APOb間の値であると判定し、且つ、ステップS25でアクセル開加速度ΔΔAPOが正値を超えていると判定する場合、つまり、アクセル操作形態が図8におけるII-2である場合、制御をステップS13に進め、図5の早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)と、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaとに基づくモード切り替え制御によりHEV走行を行わせる。 かかるアクセル操作形態II-2においては、アクセル開度APOが図7の設定アクセル開度APOa?APOb間における値であっても、APO=APOa時におけるアクセル開速度ΔAPOが上昇していて(ΔΔAPO>0)、図10に同符号II-2で示すようにAPO>APObのHEV領域に入る可能性が強く、上記のようにHEVモードでの走行を行わせることとする。 【0054】 ステップS24で図5の早開き特性αに基づく制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)が、設定アクセル開度APOa,APOb間の値であると判定し、且つ、ステップS25でアクセル開加速度ΔΔAPOが0以下と判定する場合、つまり、アクセル操作形態が図8におけるII-3である場合、制御をステップS26に進め、図5の遅開き特性βにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOよりも小さい値)と、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaとに基づくモード切り替え制御によりEV走行を行わせる。 かかるアクセル操作形態II-3においては、アクセル開度APOが図7の設定アクセル開度APOa?APOb間における値であっても、これが誤操作や運転者の癖に基づくものであることが多く、APO=APOa時におけるアクセル開速度ΔAPOの不変または低下により(ΔΔAPO≦0により)、図10に同符号II-3で示すごとくAPO ステップS24で図5の早開き特性αに基づく制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)が、設定アクセル開度APOb以上であると判定する場合、つまり、アクセル操作形態が図8におけるII-4である場合、制御をステップS13に進め、図5の早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)と、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaとに基づくモード切り替え制御によりHEV走行を行わせる。 かかるアクセル操作形態II-4においては、アクセル開度APOが図7の設定アクセル開度APOb以上であって、図10に同符号II-4で示すようにAPO>APObのHEV領域に入っていることから、HEVモードでの走行を行わせる。 【0056】 ステップS22でアクセル開速度ΔAPOが加速意図判定用第2設定アクセル開速度ΔAPOb以上の速度であると判定する場合、つまり、図8における強い加速意図を表す加速意図III(アクセル操作形態III-1)である場合、制御をステップS13に進め、図5の早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)と、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaとに基づくモード切り替え制御によりHEV走行を行わせる。 なお、このアクセル操作形態III-1においては、図10に同符号III-1で示すようにAPO>APObのHEV領域に入ることが確かであるし、強い加速意図に呼応して早期にHEVモードでの走行に移行させるのがよいことから、早開き特性αにより求めた制御入力アクセル開度cAPO(実アクセル開度APOと同値)が、図7の実線で示す基本境界線上における設定アクセル開度APOaよりも所定値だけ小さな別の設定値になった時にHEVモードでの走行へ移行させるようにしてもよい。」(段落【0044】ないし【0056】) (イ)引用発明 記載aないしf及び図面を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「動力源としてのエンジン1及びモータ/ジェネレータ5と、 モータ/ジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9と、 を備えるハイブリッド車両のモード切り替え制御装置であって、 前記バッテリ9のバッテリ蓄電状態SOCを検出する蓄電状態センサ16と、 アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ15と、 アクセル開速度ΔAPOを算出するアクセル開速度ΔAPO算出手段と、 遅開き特性βによりアクセル開度APOを修正して得られる制御入力アクセル開度cAPOを算出する制御入力アクセル開度cAPO算出手段と、 少なくとも前記バッテリ蓄電状態SOC及び制御入力アクセル開度cAPOに基づいて、前記モータ/ジェネレータ5のみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジン1を動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する制御プログラムと、 を備えるハイブリッド車両のモード切り替え制御装置。」 イ 引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2010-234872号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「ハイブリッド車およびその制御方法」に関して、図面とともに概ね次の記載(以下、まとめて「引用文献2の記載」という。)がある。 ・「【0004】 走行用の動力を出力可能なエンジンと電動機とを備え、エンジンの間欠運転を伴って走行するハイブリッド車では、通常、アクセル操作量やこれに基づいて設定される車両の要求パワーなどとエンジンの始動用の閾値や運転停止用の閾値とを比較した結果に応じてエンジンを間欠運転しながら走行するが、発進時や、カーブの多い山岳路を走行するときなどには、アクセル開度の頻繁な変更によってエンジンの始動や運転停止が短時間に頻繁に行なわれる可能性がある。 【0005】 本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、内燃機関の始動や運転停止が頻繁に行なわれるのを抑制することを主目的とする。」(段落【0004】及び【0005】) ・「【0022】 次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。 【0023】 駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。 ・・・(略)・・・ 【0039】 ステップS130で開度変化頻繁フラグF1が値0のときで、車速変化率ΔVが閾値ΔVref未満でアクセル変化率ΔAccが閾値ΔAref1より大きいときや、車速変化率ΔVが閾値ΔVref以上でアクセル変化率ΔAccが閾値ΔAref2より小さいときには、開度変化頻繁条件が成立したと判断し、開度変化頻繁条件が成立してからの時間である条件成立後時間tjの計時を開始すると共に(ステップS170)、開度変化頻繁フラグF1に値1を設定し(ステップS180)、条件成立後時間tjを所定時間tjref(例えば、数百msecや1secなど)と比較する(ステップS190)。 【0040】 いま、条件成立後時間tjの計時を開始した直後を考えているから、条件成立後時間tjは所定時間tjref未満であるため、エンジン22が運転中であるか否かを判定し(ステップS320)、エンジン22が運転中ではない、即ちエンジン22が運転停止されていると判定されたときには、前述したステップS250,S260,S380?S400の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。こうした制御により、エンジン22の運転停止中に開度変化頻繁条件が成立したときには、条件成立後時間tjが所定時間tjref未満の間は、エンジン22の運転停止を継続してモータMG2からバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。 【0041】 一方、ステップS320でエンジン22が運転中であると判定されたときには、後述の推定車速Vestが設定されたか否かを示す推定車速設定フラグF2の値を調べ(ステップS330)、推定車速設定フラグF2が値0のときには、車速Vと車速変化率ΔVとに基づいて、開度変化頻繁条件が成立してから所定時間tjrefが経過したときの車速として推定される推定車速Vestを次式(7)により計算すると共に(ステップS340)、推定車速設定フラグF2に値1を設定する(ステップS350)。なお、次回以降にこのルーチンが実行されたときには、ステップS330で推定車速設定フラグF2が値1であるから、ステップS340,S350の処理は実行されない。 【0042】 Vest=V+ΔV・tjref (7) 【0043】 続いて、推定車速Vestに基づいてエンジン22の自立運転用の目標回転数Ne*を設定すると共に設定した目標回転数Ne*をエンジン22を自立運転するための制御信号(自立運転信号)と共にエンジンECU24に送信し(ステップS360)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定してこれをモータECU40に送信し(ステップS370)、前述したステップS380?S400の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。この場合の目標回転数Ne*は、実施例では、推定車速Vestとエンジン22の目標回転数Ne*との関係を予め定めて目標回転数設定用マップとして記憶しておき、推定車速Vestが与えられると記憶したマップから対応する目標回転数Ne*を導出して設定するものとした。目標回転数設定用マップの一例を図7に示す。エンジン22の目標回転数Ne*は、図示するように、推定車速Vestが高いほど大きくなる傾向に設定するものとした。この理由については後述する。こうした制御により、エンジン22の運転中に開度変化頻繁条件が成立したときには、条件成立後時間tjが所定時間tjref未満の間は、推定車速Vestが高いほど高くなる傾向の回転数でエンジン22を自立運転しながらモータMG2からバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。 【0044】 ステップS130で開度変化頻繁フラグF1が値1のときには、車速変化率ΔVやアクセル変化率ΔAccに拘わらず(前述したステップS140?S160の処理を実行せず)、条件成立後時間tjを所定時間tjrefと比較し(ステップS190)、条件成立後時間tjが所定時間tjref未満のときには、前述したステップS320以降の処理を実行する。そして、条件成立後時間tjが所定時間tjref以上になると、開度変化頻繁フラグF1と推定車速設定フラグF2とに共に値0を設定し(ステップS200)、ステップS210以降の処理を実行する。即ち、エンジン22の運転中に開度変化頻繁条件が成立したときには、条件成立後時間tjが所定時間tjref未満の間はエンジン22を自立運転する共に条件成立後時間tjが所定時間tjref以上になったときにはアクセル開度Accに応じてエンジン22を間欠運転し、エンジン22の運転停止中に開度開度変化頻繁条件が成立したときには、条件成立後時間tjが所定時間tjref未満の間はエンジン22の運転停止を継続すると共に条件成立後時間tjが所定時間tjref以上になったときにはアクセル開度Accに応じてエンジン22を間欠運転するのである。前述したように、発進時やカーブの多い山岳路を走行するときなどには、アクセルペダル83の比較的大きな踏み増しや踏み戻しが頻繁に行なわれることがあるため、各時点でのアクセル開度Accに応じてエンジン22を間欠運転すると、エンジン22の始動や運転停止が頻繁に行なわれる可能性がある。実施例では、このことを考慮して、開度変化頻繁条件が成立したときには、条件成立後時間tjが所定時間tjref未満の間は運転停止中のエンジン22の始動や運転中のエンジン22の運転停止は行なわず、条件成立後時間tjが所定時間tjref以上になったときにアクセル開度Accに応じてエンジン22を間欠運転するものとした。これにより、エンジン22の始動や運転停止が頻繁に行なわれるのを抑制することができる。しかも、前述したように、エンジン22の運転中に開度変化頻繁条件が成立したときに、条件成立後時間tjが所定時間tjref未満の間は、推定車速Vestが高いほど高くなる傾向の回転数でエンジン22を自立運転するから、条件成立後時間tjが所定時間tjref以上になったときに運転者が加速要求を行なっているとき(アクセル開度Accが比較的大きいとき)にその加速要求により迅速に対応することができる。これらの結果、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。」(段落【0022】ないし【0044】) ウ 引用文献3の記載 本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2006-50846号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「組電池の容量調整装置」に関して、図面とともに概ね次の記載(以下、まとめて「引用文献3の記載」という。)がある。 ・「【0004】 しかしながら、従来の容量調整装置をハイブリッド車に搭載して使用する場合、車両のアイドル(アイドリング)中に容量調整を行う場合には、エンジンを動力源として発電を行う必要があるために、アイドルストップを行うことができず、また、容量調整を行う際にアイドルストップを行うと、セル電圧をバイパス作動電圧より高くすることができず、容量調整を行うことができなくなるという問題があった。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明による組電池の容量調整装置は、セル間の容量調整を行う場合に、アイドルストップが行われる可能性がないと判定されると、組電池の電圧が第1の目標充電電圧に達するように組電池の充電を制御し、アイドルストップが行われる可能性があると判定されると、組電池の電圧が第1の目標充電電圧より高い第2の目標充電電圧に達するように、組電池の充電を制御することを特徴とする。 【発明の効果】 【0006】 本発明による組電池の容量調整装置によれば、セル間の容量調整を行う場合に、アイドルストップが行われる可能性がある場合の目標充電電圧を、アイドルストップが行われる可能性がない場合の目標充電電圧に比べて高い値に設定するので、容量調整を行う場合でもアイドルストップを行うことができる。 【発明を実施するための最良の形態】」(段落【0004】ないし【0006】) ・「【0016】 通常の充放電モードによる制御では、運転者の運転状況に応じて、モータ5およびモータ12の力行運転/回生運転が決定されるとともに、組電池1のSOCに応じて、モータ12の発電状態およびエンジン11のアイドルストップの有無が決定される。例えば、25(%)≦SOC<45(%)の範囲では、図4に示すように、エンジン11を動力源として、モータ12による発電を優先した走行発電制御が行われる。また、アイドルストップ条件が成立した場合でもアイドルストップは行われずに、エンジン11を動力源として、モータ12による発電が行われる。なお、SOCが35%以下になると、組電池1の出力を制限する制御が行われる。 【0017】 45(%)≦SOC<65(%)の範囲では、エンジン11を動力源としてモータ12による発電が行われるが、エンジン11の燃費を優先した走行発電制御が行われるとともに、アイドルストップ条件が成立した場合には、エンジン11を一時的に停止させるアイドルストップが行われる。また、SOCが55%を越えると、エンジン11を動力源とした発電を制限する制御が行われる。 【0018】 65(%)≦SOC<85(%)の範囲では、エンジン11を動力源とした発電は行われず、車両の減速エネルギー等を利用した回生発電制御のみが行われる。また、アイドルストップ条件が成立した場合には、アイドルストップが行われる。なお、SOCが75%を越えると、回生発電量の制限が開始される。」(段落【0016】ないし【0018】) (2)本願補正発明1についての判断 ア 対比 本願補正発明1と引用発明を対比する。 引用発明における「エンジン1」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願補正発明1における「エンジン」に相当し、以下、同様に、「モータ/ジェネレータ5」は「モータジェネレータ」に、「モータ/ジェネレータ5用の電力を蓄電しておく」は「電力源としての」に、「バッテリ9」は「バッテリ」に、「ハイブリッド車両のモード切り替え制御装置」は「ハイブリッド車両の制御装置」に、「バッテリ蓄電状態SOC」は「蓄電量」に、「蓄電状態センサ16」は「蓄電量検出手段」に、「アクセル開度APO」は「アクセル操作量」に、「アクセル開度センサ15」は「アクセル操作量検出手段」に、「アクセル開速度ΔAPO」は(「前記アクセル操作量に基づいて」「算出する」)「アクセル操作速度」に、「アクセル開速度ΔAPO算出手段」は「アクセル操作速度算出手段」に、「遅開き特性βによりアクセル開度APOを修正して得られる制御入力アクセル開度cAPO」は「前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量」に、「制御入力アクセル開度cAPO算出手段」は「補正アクセル操作量算出手段」に、「EVモード」は「EVモード」に、「HEVモード」は「HEVモード」に、「制御プログラム」は「走行モード移行要求手段」に、それぞれ、相当する。 したがって、本願補正発明1と引用発明は、 「動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、 電力源としてのバッテリと、 を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、 前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、 アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、 前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、 前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、 少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段と、 を備えるハイブリッド車両の制御装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願補正発明1においては、「前記バッテリの蓄電量が強制発電停止量を上回ることで、走行モードを強制的にHEVモードに移行して行う強制発電が停止され、且つ前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と」を備えるのに対し、引用発明においては、そうでない点(以下、「相違点1」という。)。 イ 相違点1についての判断 そこで、相違点1について、以下に検討する。 引用文献1の上記記載a及びbによると、引用発明の解決しようとする課題は、「データ量に関する問題や、演算時間に関する問題や、コスト上の問題を回避しつつ、運転者の加速意図を考慮したモード切り替え制御を実現し得るようにしたハイブリッド車両のモード切り替え制御装置を提案する」ことであり、本願補正発明1の解決しようとする課題(本願明細書の「【0004】ここで、バッテリ蓄電量の低下を抑制するには、前述した車速ごとに設定されているアクセル操作量の閾値を、バッテリ蓄電量が低下するにつれて小さくすることが望ましい。しかしながら、このようにバッテリ蓄電量に応じてアクセル操作量の閾値を変化させようとすると、バッテリ蓄電量の低下時に走行モードの切り替えが頻繁に発生し、運転性が悪化するという問題点があった。 【0005】 本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、走行モードの切り替えが頻発に発生するのを抑制し、運転性を向上させることを目的とする。」(段落【0004】及び【0005】)を参照。)とは異なるものである。 また、引用文献1の上記記載fの「かかるアクセル操作形態II-3においては、アクセル開度APOが図7の設定アクセル開度APOa?APOb間における値であっても、これが誤操作や運転者の癖に基づくものであることが多く、APO=APOa時におけるアクセル開速度ΔAPOの不変または低下により(ΔΔAPO≦0により)、図10に同符号II-3で示すごとくAPO さらに、引用文献2の記載によると、引用文献2には、アクセル変化率ΔAccが変化しても、所定時間はエンジンの運転停止や運転始動を行わないようにする技術が記載されているといえるが、相違点1に係る本願補正発明1の発明特定事項、特に「前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止する」という発明特定事項については、記載も示唆もされていない。 さらにまた、引用文献3の記載によると、引用文献3には、電池のSOCに応じて、モータによる発電を優先した走行発電制御、エンジンの燃費を有線した走行発電制御及び車両の減速エネルギー等を利用した回生発電制御を行うようにする技術が記載されているといえるが、相違点1に係る本願補正発明1の発明特定事項、特に「前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止する」という発明特定事項については、記載も示唆もされていない。 したがって、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明1の発明特定事項を採用する動機付けはなく、相違点1に係る本願補正発明1の発明特定事項を想到することが当業者にとって容易になし得る設計的事項であったとはいえないし、また、引用発明において、引用文献2及び3記載の技術を適用して、当業者が請求項1に係る本願補正発明1の発明特定事項を想到することができたともいえない。 ウ 本願補正発明1についての判断のまとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、引用発明並びに引用文献2及び3記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 また、他に本願補正発明1を拒絶する理由も発見しない。 したがって、本願補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができたものである。 (3)本願補正発明2についての判断 ア 対比 本願補正発明2と引用発明を対比する。 引用発明における「エンジン1」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願補正発明2における「エンジン」に相当し、以下、同様に、「モータ/ジェネレータ5」は「モータジェネレータ」に、「モータ/ジェネレータ5用の電力を蓄電しておく」は「電力源としての」に、「バッテリ9」は「バッテリ」に、「ハイブリッド車両のモード切り替え制御装置」は「ハイブリッド車両の制御装置」に、「バッテリ蓄電状態SOC」は「蓄電量」に、「蓄電状態センサ16」は「蓄電量検出手段」に、「アクセル開度APO」は「アクセル操作量」に、「アクセル開度センサ15」は「アクセル操作量検出手段」に、「アクセル開速度ΔAPO」は「前記アクセル操作量に基づいて」「算出する」「アクセル操作速度」に、「アクセル開速度ΔAPO算出手段」は「アクセル操作速度算出手段」に、「遅開き特性βによりアクセル開度APOを修正して得られる制御入力アクセル開度cAPO」は「前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量」に、「制御入力アクセル開度cAPO算出手段」は「補正アクセル操作量算出手段」に、「EVモード」は「EVモード」に、「HEVモード」は「HEVモード」に、「制御プログラム」は「移行要求手段」に、それぞれ、相当する。 したがって、本願補正発明2と引用発明は、 「動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、 電力源としてのバッテリと、 を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、 前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、 アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、 前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、 前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、 少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する移行要求手段と、 を備えるハイブリッド車両の制御装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本願補正発明2においては、「前記HEVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル戻し中と判定できる負のHEVモード移行禁止速度よりも小さいときは、HEVモードへの移行を禁止するHEVモード移行禁止手段と、 EVモードでの走行時に前記補正アクセル操作量が、前記バッテリの蓄電量が最大となっている場合におけるエンジン始動線上のアクセル操作量以上となったときは、走行モードを強制的にHEVモードに移行する走行モード強制移行手段と」を備えるのに対し、引用発明においては、そうでない点(以下、「相違点2」という。)。 イ 相違点2についての判断 そこで、相違点2について、以下に検討する。 引用文献1の上記記載fの「かかるアクセル操作形態II-3においては、アクセル開度APOが図7の設定アクセル開度APOa?APOb間における値であっても、これが誤操作や運転者の癖に基づくものであることが多く、APO=APOa時におけるアクセル開速度ΔAPOの不変または低下により(ΔΔAPO≦0により)、図10に同符号II-3で示すごとくAPO 【0005】 本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、走行モードの切り替えが頻発に発生するのを抑制し、運転性を向上させることを目的とする。」(段落【0004】及び【0005】)を参照。)とは異なるものである。 さらに、引用文献2及び3に記載されている技術は、上記第2 3(2)イのとおりであるから、相違点2に係る本願補正発明2の発明特定事項、特に「前記HEVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル戻し中と判定できる負のHEVモード移行禁止速度よりも小さいときは、HEVモードへの移行を禁止するHEVモード移行禁止手段」という発明特定事項については、引用文献2及び3には、記載も示唆もされていない。 したがって、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明2の発明特定事項を採用する動機付けがなく、相違点2に係る本願補正発明2の発明特定事項を想到することが当業者が容易になし得る設計的事項であったとはいえないし、また、引用発明において、引用文献2及び3記載の技術を適用して、当業者が請求項2に係る本願補正発明2の発明特定事項を想到することができたともいえない。 ウ 本願補正発明2についての判断のまとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明2は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、引用発明並びに引用文献2及び3記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 また、他に本願補正発明2を拒絶する理由も発見しない。 したがって、本願補正発明2は、特許出願の際独立して特許を受けることができたものである。 (4)本願補正発明3についての判断 本件補正後の請求項3は請求項1を引用するものであるから、本願補正発明3は、本願補正発明1に限定を加えたものである。 したがって、本願補正発明3は、本願補正発明1と同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、引用発明並びに引用文献2及び3記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 また、他に本願補正発明3を拒絶する理由も発見しない。 よって、本願補正発明3は、特許出願の際独立して特許を受けることができたものである。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に違反するものではなく、適法にされたものである。 第3 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり適法にされたものであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、上記第2 1(2)の【請求項1】ないし【請求項3】のとおりのものであると認める。 そして、本願については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-03-07 |
出願番号 | 特願2010-237507(P2010-237507) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山村 和人、本庄 亮太郎、田中 将一、▲高▼木 真顕 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
松下 聡 加藤 友也 |
発明の名称 | ハイブリッド車両の制御装置 |
代理人 | 飯田 雅昭 |
代理人 | 後藤 政喜 |