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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1311779
審判番号 不服2015-4404  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-05 
確定日 2016-03-03 
事件の表示 特願2011- 99565「指針及び指針式装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日出願公開、特開2012-230054〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年4月27日
拒絶理由通知: 平成26年6月27日(発送日:同年7月1日)
手続補正: 平成26年8月1日(以下、「補正1」という。)
拒絶査定: 平成27年2月18日(送達日:同年同月24日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成27年3月5日
手続補正: 平成27年3月5日(以下、「本件補正」という。)


第2 補正の却下の決定

[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。

(補正前)
「指針であって、
回転軸に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に固定され、光源が出射した光を内部に導光して出射する、指示対象を指示する指示本体と、
前記指示本体を前記指針の視認者側から覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記指示本体が導光して出射した前記光を透過させて前記指針を発光させる透明部材を有し、
前記透明部材は、前記ベース部材を覆う軸中心部と、前記指示本体のベース部材から突出した部分を覆う指示部と、を有し、
前記指示部は、前記指示本体と間隔を空けて配置されると共に、前記指示本体を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有する、
ことを特徴とする指針。」

(補正後)
「指針であって、
回転軸に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に固定され、光源が出射した光を内部に導光して出射する、指示対象を指示する指示本体と、
前記指示本体を前記指針の視認者側から覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記指示本体が導光して出射した前記光を透過させて前記指針を発光させる透明部材を有し、
前記透明部材は、前記ベース部材を覆う軸中心部と、前記指示本体のベース部材から突出した部分を覆う指示部と、を有し、
前記指示部は、前記指示本体を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有すると共に、
前記凹部と前記指示本体との間には、前記指示本体が導光して出射した前記光が繰り返し反射されながら進む隙間部が形成されていることを特徴とする指針。」(下線は補正箇所。)

上記補正は、指示部が、「前記指示本体と間隔を空けて配置される」とされていたものを、「前記凹部と前記指示本体との間には、前記指示本体が導光して出射した前記光が繰り返し反射されながら進む隙間部が形成されている」として限定するものである。
よって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 検討
(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-240612号公報(以下「引用例1」という。)には、「線状発光装置及びこれを用いたメーター針」(【発明の名称】)の発明に関し、図面と共に次の事項(a)ないし(e)が記載されている。

(a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、線状発光装置及びこれを用いたメーター針、特に車載メーターのメーター針に関するものである。」

(b)
「【0019】
【発明の実施の形態】次に、この発明の実施形態について図面を参照しながら以下で説明する。図1は、この発明に従う線状発光装置を用いた代表例である車載メーターのメーター針の発光装置の一例を示す概略側面図であり、図1中の符号1はメーター針の発光装置、2は光源、3は発光体、4は反射面、5は発光面、7は光屈折面、そして9は光散乱手段である。
【0020】図1に示す線状発光装置1は、点状の光を発する光源2と、この光源2からの点状光が入射し線状の光として出射する発光体3とで主に構成されている。

・・・

【0022】発光体3は、光源2からの点状光を入射する光屈折面7を有する光導入部12と、この光導入部12に一体的に連結され、前記光導入部12に入射した光を反射させる反射面4、及びこの反射面4からの反射光を線状光として出射する発光面5を有する発光部13とを有している。
【0023】発光体3の代表的な形状としては、例えば図1に示すように、発光体3の発光部13が、略楔状をなし、その側面から見て、反射面4を底辺とし、この反射面4と対向する位置にある発光面5を斜辺とし、残りの辺を、前記光導入部12と連結され、光導入部12からの光を発光部13に入射する接合面14とする略三角形形状を有し、発光体3の光導入部12が、その側面から見て、略三角形状をなし、前記発光部13の反射面4の延在方向6に対して鋭角θをなして延びる光屈折面7と、前記発光部13の接合面14に連結される連結面15とを有しており、光源2からの点状光は、前記光屈折面7を通じて光導入部12に導入されることになる。」

(c)
「【0031】光散乱層9は、図7(a)に示すように、発光体3と一体的に形成する場合の他、図6及び図7(b)に示すように、発光体3に、光散乱層9を有する光散乱部材10を接着剤等で接合することによって形成してもよい。尚、後者の場合、接合面で光の散乱が多くなって、指向性が低下する傾向があるため、出射光の指向性を高める必要がある場合には、光散乱層と発光体との間に所定の隙間を設けることが好ましい。光散乱層と発光体との間に隙間を設ける方法としては、例えば、メーター針の場合には、図8に示すように、光散乱層9をメーター針のカバー20に装着しておき、発光体3を光散乱層9に対して所定間隔で位置できるようにメーター針のカバー20に嵌め合わせればよい。

・・・

【0033】光源2の配設位置は、発光体3の光導入部12に光を入射することができる位置であればよく、特に限定はしないが、例えば、光源3を、図1に示すように、発光体3の光導入部12の光屈折面7に対向させて配設すれば、メーター針のように発光体3が回転軸19を中心として回転移動した場合でも、この発光体3と一体的に移動することができ、相対的な位置関係は一定であるので、回転移動した場合においても、安定した輝度の光を発光面5から発することができるとともに、メーター針状に光源があるので、従来の構成に比べて省スペース化が図れる。」

(d)
「【0034】また、光源2は、図2に示すように、光伝送材料で構成したメーター針の回動軸19の下方位置に配設しても、図1と同様、回転移動した場合においても、安定した輝度の光を発光面5から発することができる。さらに、図3に示すように、発光体3の光導入部12の光屈折面7の対向位置に配設したプリズム16の下方位置に配設してもよい。」

(e)
「【0044】例えば、図19(a),(b)に示すように、発光面5と両側面23a,23bとで形成する稜に面取り部24a,24bを設けて発光面5を多面で構成することができるが、より好適には、図20(a),(b),(c)で示すように、反射面4と両側面23a,23bとで形成する稜に面取り部25a,25bを設けて反射面4を多面で構成する。尚、発光面5と反射面4の双方を多面で構成することもできる。」

また、図8からは、カバー20が、略楔状をなす発光体3の全体を覆う形状であり、またその光散乱層9は、発光体3の発光面5の全長にわたって設けられていることが読みとれる。
そうすると、上記記載(a)ないし(e)、及び図1,2,7,8,20の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「メーター針であって、
発光体3が回転軸19を中心として回転移動するように構成された、回転軸19を備える部材と、
光源2からの点状光が入射し線状の光として出射する発光体3と、
発光体3が光散乱層9に対して所定間隔で位置できるように嵌め合わせられる、光散乱層9の装着されたカバー20と、を備え、
前記カバー20には、発光体3の発光面5の全長にわたる光散乱層9が装着され、
前記光散乱層9が装着された前記カバー20は、略楔状をなす発光体3の全体を覆う形状であり、
前記光散乱層9と発光体3との間に所定の隙間が設けられていることを特徴とするメーター針。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「メーター針」は、本願補正発明の「指針」に相当する。
また、引用発明は「発光体3が回転軸19を中心として回転移動するように構成され」ているものであるから、その「回転軸19を備える部材」が、メーター針の駆動機構側の回転軸に固定されるものであることは明らかである。したがって、引用発明の「発光体3が回転軸19を中心として回転移動するように構成された、回転軸19を備える部材」は、本願補正発明の「回転軸に固定されるベース部材」に相当する。
次に、引用発明は「発光体3が回転軸19を中心として回転移動するように構成され」ているメーター針であるから、発光体3が「回転軸19を備える部材」に固定されて、指示対象を指示することも明らかであり、引用発明の「光源2からの点状光が入射し線状の光として出射する発光体3」は、本願補正発明の「前記ベース部材に固定され、光源が出射した光を内部に導光して出射する、指示対象を指示する指示本体」に相当する。
さらに、引用発明の「カバー20」が有する「光散乱層9」は、本願補正発明の「カバー部材」が有する「前記指示本体が導光して出射した前記光を透過させて前記指針を発光させる透明部材」に相当し、ここで「光散乱層9」が装着された「カバー20」が、メーター針の視認者側に配置されることは明らかであるから、引用発明における「発光体3が光散乱層9に対して所定間隔で位置できるように嵌め合わせられる、光散乱層9の装着されたカバー20と、を備え、前記カバー20には、発光体3の発光面5の全長にわたる光散乱層9が装着され」ている構成は、本願補正発明における「前記指示本体を前記指針の視認者側から覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記指示本体が導光して出射した前記光を透過させて前記指針を発光させる透明部材を有」する構成に相当する。
また、引用発明の「光散乱層9」は、「発光体3の発光面5の全長にわたる」ようにして「カバー20」に装着されるものであるから、引用発明の「前記カバー20には、発光体3の発光面5の全長にわたる光散乱層9が装着され」る構成と、本願補正発明における「前記透明部材は、前記ベース部材を覆う軸中心部と、前記指示本体のベース部材から突出した部分を覆う指示部と、を有」する構成とは、少なくとも共に「前記透明部材は、前記指示本体のベース部材から突出した部分を覆う指示部を有」する点で共通するものである。
さらに、引用発明において「前記光散乱層9が装着された前記カバー20は、略楔状をなす発光体3の全体を覆う形状であり、前記光散乱層9と発光体3との間に所定の隙間が設けられている」ことから、該カバー20が発光体3を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有し、また前記凹部と発光体3との間には、隙間が設けられていることが明らかであるから、引用発明の「前記光散乱層9が装着された前記カバー20は、略楔状をなす発光体3の全体を覆う形状であり、前記光散乱層9と発光体3との間に所定の隙間が設けられていること」と、本願補正発明における「前記指示部は、前記指示本体を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有すると共に、前記凹部と前記指示本体との間には、前記指示本体が導光して出射した前記光が繰り返し反射されながら進む隙間部が形成されていること」とは、共に「前記カバー部材は、前記指示本体を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有すると共に、前記凹部と前記指示本体との間には、隙間部が形成されていること」である点で共通する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「指針であって、
回転軸に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に固定され、光源が出射した光を内部に導光して出射する、指示対象を指示する指示本体と、
前記指示本体を前記指針の視認者側から覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記指示本体が導光して出射した前記光を透過させて前記指針を発光させる透明部材を有し、
前記透明部材は、前記指示本体のベース部材から突出した部分を覆う指示部を有し、
前記カバー部材は、前記指示本体を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有すると共に、
前記凹部と前記指示本体との間には、隙間部が形成されていることを特徴とする指針。」

(相違点)
相違点1:本願補正発明において、透明部材は、「ベース部材を覆う軸中心部」を有するとされているのに対し、引用発明においてはそのような構成は有していない点。

相違点2:本願補正発明において、「透明部材」の「指示部」が、指示本体を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有するとされているのに対し、引用発明において、略楔状をなす発光体3の全体を覆う形状として凹部を形成しているのは、光散乱層9(透明部材)を有する「カバー20」(カバー部材)である点。

相違点3:本願補正発明において、凹部と指示本体との間の隙間部は「前記指示本体が導光して出射した前記光が繰り返し反射されながら進む」ものとされているのに対し、引用発明の隙間においてはそのような特定は行われていない点。

(3)判断
ア 相違点1について
例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-281010号公報(以下、「引用例2」という。)においても「被覆部材12」の「指示部12a」として記載されているように、特に指針が回転軸上にも導光部材を配置している場合に、透明部材がその導光部材上にも配置され、「ベース部材を覆う軸中心部」を有するように構成されることは周知技術である。引用例1にも段落【0034】及び図2に、回転軸上に導光部材(発光体)が配置された例が開示されており、上記周知技術を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。

イ 相違点2について
引用発明の「カバー20」のように、光を透過する部分と遮光部分とを備える部材を形成するに際し、例えば全体を透明部材で形成して塗布層によりその一部を遮光部分とするような手法は、特に例を示すまでも無く周知な技術であって、これを引用発明の「カバー20」に適用して、その全体を透明部材で形成するようになし、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。

ウ 相違点3について
引用発明においても「前記光散乱層9と発光体3との間に所定の隙間が設けられている」のであるから、技術常識からみて、該隙間に入射した発光体からの光が全て光散乱層に入射することは考えられず、該隙間を「繰り返し反射されながら進む」光成分があることは明らかである。したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「指針であって、
回転軸に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に固定され、光源が出射した光を内部に導光して出射する、指示対象を指示する指示本体と、
前記指示本体を前記指針の視認者側から覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記指示本体が導光して出射した前記光を透過させて前記指針を発光させる透明部材を有し、
前記透明部材は、前記ベース部材を覆う軸中心部と、前記指示本体のベース部材から突出した部分を覆う指示部と、を有し、
前記指示部は、前記指示本体と間隔を空けて配置されると共に、前記指示本体を収納するための、下側に開口した形状の凹部を有する、
ことを特徴とする指針。」(以下「本願発明」という。)

2 判断
本願発明は、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明において、指示部の構成を「前記凹部と前記指示本体との間には、前記指示本体が導光して出射した前記光が繰り返し反射されながら進む隙間部が形成されている」として限定することを省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(3)判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-04 
結審通知日 2016-01-07 
審決日 2016-01-20 
出願番号 特願2011-99565(P2011-99565)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榮永 雅夫  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 中塚 直樹
森 竜介
発明の名称 指針及び指針式装置  

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