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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H02M
審判 一部申し立て 2項進歩性  H02M
管理番号 1311804
異議申立番号 異議2015-700005  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-07-21 
確定日 2016-01-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第5697996号「ブリッジ回路及びその部品」の請求項1ないし21に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5697996号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第5697996号に係る出願は、2009年2月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年2月12日 米国;2009年2月9日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月20日に特許の設定登録がなされた。
これに対して、特許異議申立人より平成27年7月21日に、本件請求項1ないし21に係る発明(以下、本件請求項1に係る発明を「本件発明」という。)の特許について特許異議の申立てがなされ、平成27年8月24日付で補正指令が通知され(発送日:平成27年8月26日)、平成27年9月14日付で手続補正書が提出された。


2.本件発明
本件請求項1ないし21に係る発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ゲート、ソース、ドレイン及びチャネルを有する1つのトランジスタを有するハーフブリッジであり、
前記トランジスタは、
第1の動作モードにおいて、第1の方向の実質的な電圧を阻止し、
第2の動作モードにおいて、前記チャネルを介して前記第1の方向に実質的な電流を流し、
第3の動作モードにおいて、前記チャネルを介して反対方向に実質的な電流を流すように構成され、
前記第3の動作モードにおいて、前記ゲートは、前記ソースに対し、前記トランジスタの閾値電圧より低い電圧にバイアスされる、
ハーフブリッジ。
【請求項2】
前記ハーフブリッジは、少なくとも2つのトランジスタを含み、各トランジスタは、スイッチングトランジスタ及び逆並列ダイオードとして機能するように構成されている請求項1記載のハーフブリッジ。
【請求項3】
請求項1記載のハーフブリッジを複数備えるブリッジ回路。
【請求項4】
前記トランジスタのそれぞれのゲート電圧を個別に制御するように構成されたゲート駆動回路を更に備える請求項3記載のブリッジ回路。
【請求項5】
2つのトランジスタから構成され、前記トランジスタは、それぞれFET、HEMT、MESFET又はJFET素子である請求項1記載のハーフブリッジ。
【請求項6】
前記2つのトランジスタは、エンハンス型トランジスタである請求項5記載のハーフブリッジ。
【請求項7】
前記トランジスタは、エンハンス型III-Nトランジスタ又はSiC JFETトランジスタである請求項6記載のハーフブリッジ。
【請求項8】
請求項7記載のハーフブリッジを複数備えるブリッジ回路。
【請求項9】
前記トランジスタは、窒素面III-N HEMTである請求項6記載のハーフブリッジ。
【請求項10】
前記2つのトランジスタは、少なくとも2Vの閾値電圧を有する請求項6記載のハーフブリッジ。
【請求項11】
前記2つのトランジスタは、ソースからドレインに0.5?2eVの内部障壁を有する請求項6記載のハーフブリッジ。
【請求項12】
前記2つのトランジスタは、5mΩ-cm2未満のオン抵抗と、少なくとも600Vの降伏電圧とを有する請求項6記載のハーフブリッジ。
【請求項13】
前記2つのトランジスタは、10mΩ-cm2未満のオン抵抗と、少なくとも1200Vの降伏電圧とを有する請求項6記載のハーフブリッジ。
【請求項14】
請求項5記載のハーフブリッジを複数備えるブリッジ回路。
【請求項15】
前記ハーフブリッジのそれぞれの2つのトランジスタの間にノードがあり、前記ノードのそれぞれは、誘導負荷を介して互いに接続されている請求項14記載のブリッジ回路。
【請求項16】
前記ブリッジ回路は、ダイオードを含まない請求項14記載のブリッジ回路。
【請求項17】
前記ハーフブリッジは、ダイオードを含まない請求項1記載のハーフブリッジ。
【請求項18】
前記トランジスタは、第4の動作モードにおいて、前記チャネルを介して反対方向に実質的な電流を流すことができ、前記第4の動作モードにおいて、前記ゲートは、前記ソースに対し、前記トランジスタの閾値電圧より高い電圧にバイアスされる、請求項1記載のハーフブリッジ。
【請求項19】
前記トランジスタは、エンハンス型トランジスタである請求項1記載のハーフブリッジ。
【請求項20】
前記トランジスタは、III-Nトランジスタである請求項1又は19記載のハーフブリッジ。
【請求項21】
前記トランジスタは、III-N HEMTである請求項1又は19記載のハーフブリッジ。」


3.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、本件請求項1ないし21に係る特許を取り消すべきものとする旨の特許異議を申立て、証拠方法として、甲第1号証(650V3.1mΩcm^(2) GaN-based Monolithic Bidirectional Switch Using Normally-off Gate Injection Transistor,T.Morita et al.,International Electron Devices Meeting,2007,p.865-868)、甲第2号証(特開平11-220885号公報)、甲第3号証(国際公開第2007/136401号)、甲第4号証(High-Breakdown Enhancement-Mode AlGaN/GaN HEMTs with Integrated Slant Field-Plate,C.S.Suh et al.,International Electron Devices Meeting,2006,p.35.3.1-35.3.3)、甲第5号証(2007 IEEE International Electron Devices Meetingのプログラム)、甲第6号証(2006 IEEE International Electron Devices Meetingのプログラム)、甲第7号証(パワーMOSFET 活用の基礎と実際)、甲第8号証(国立国会図書館のホームページにおける甲第1号証のISBNサーチ結果)、甲第9号証(国立国会図書館のホームページにおける甲第4号証のISBNサーチ結果)、甲第10号証(IEEEのホームページにおける甲第1号証のISBNサーチ結果)を提出し、本件請求項1ないし8、11ないし12、14ないし21に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものであり、本件請求項1ないし21に係る発明は甲第1号証に記載された発明に甲第2号証等を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの請求項に係る特許はいずれも取り消すべきものと主張している。


4.判断
(1)甲第1号証の頒布日
甲第1号証の頒布日について、甲第1号証にはそれを特定するのに十分な記載はない。甲第1号証には、「2007」、「DECEMBER 10-12,2007」等の記載はあるが、これらはIEEE(通称「米国電気電子学会」)が2007年12月10日?12日に会合が開かれたことを示すのみで、甲第1号証がいつ頒布されたかを示すものではない。
甲第1号証の頒布日を補強する証拠として、甲第8号証、甲第10号証が提出されている。甲第8号証は国立国会図書館のホームページにおける甲第1号証のISBNサーチ結果であり、当該サーチ結果の甲第8号証に出版年と記載されているが、この記載は出版年そのものを保証しているものではないから、甲第8号証をもって甲第1号証の頒布日を確定することはできない。また甲第10号証はIEEEのホームページにおける甲第1号証のISBNサーチ結果であり、当該サーチ結果の甲第10号証には出版年が記載されていないから、甲第10号証をもって甲第1号証の頒布日を確定することはできない。
そうすると、甲第1号証が本件特許に係る出願の最先の優先日である2008年2月12日までに頒布されたことが何ら示されていないから、甲第1号証は最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に該当せず、本件請求項1ないし8、11ないし12、14ないし21に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるとすることはできず、本件請求項1ないし21に係る発明は甲第1号証に記載された発明に甲第2号証等を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


(2)新規性進歩性
上記したように、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし21に係る発明に係る特許を取り消すべきものとすることはできないが、仮に、甲第1号証が最先の優先日である2008年2月12日までに頒布されたものであったとして、本件発明の新規性進歩性を更に判断する。

(2-1)トランジスタ
本件請求項1には「ゲート、ソース、ドレイン及びチャネルを有する1つのトランジスタ」と記載され、発明の詳細な説明及び図面を参照すると、トランジスタはゲート、ソース、ドレインが各々1つずつのものを想定しており、又、通常ゲート、ソース、ドレインが2つ(複数)ある場合は2つ(複数)ある旨の記載がされているから、本件請求項1の「ゲート、ソース、ドレイン」は各々1つずつであるごく一般的なトランジスタであると解することができる。
しかし、甲第1号証記載のものは、図2、図3を参照するとゲートが2つあることを前提としたものであることが明らかであるから、ゲートが1つである本件発明と同一であるということはできず、又、甲第1号証記載のものにおいて、2つのゲートを1つにすればトランジスタが動作できなくなるから、甲第1号証記載のものの2つのゲートを1つにして本件発明のようにすることは当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

(2-2)ハーフブリッジ
甲第1号証記載のものは、図1に示されるようにACACマトリクスコンバータが対象であり、ACACマトリクスコンバータのスイッチは双方向スイッチ、即ち例を挙げればトランジスタを逆並列接続したスイッチであるから、双方向スイッチはハーフブリッジを構成するものではなく、本件発明と同一であるということはできない。
また、甲第1号証の序論には、「図1に示すACACマトリクスコンバータについて、ACモータ駆動システムに使われる従来のDCリンク型ACACコンバータを置き換えたいという強い動機付けの下、鋭意検討した。」と記載されている。つまり、従来のDCリンク型ACACコンバータはハーフブリッジを用いるものであるが、甲第1号証記載のものは、このハーフブリッジを用いる従来のDCリンク型ACACコンバータをACACマトリクスコンバータに置き換えたいという強い動機付けがあるのであるから、甲第1号証記載のもののACACマトリクスコンバータの双方向スイッチを従来のDCリンク型ACACコンバータを採用してハーフブリッジとすることには阻害要因が有るというべきで、甲第1号証記載のものの双方向スイッチをハーフブリッジにして本件発明のようにすることは当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2-3)第3の動作モード
本件発明の第3の動作モードとは、チャネルを介して反対方向に実質的な電流を流すモードであり、甲第1号証表2のダイオードモードが一応これに相当する。しかし、本件発明の第3の動作モードでは、ゲートはソースに対しトランジスタの閾値電圧より低い電圧にバイアスされなければならない。特許異議申立人が主張するように、甲第1号証記載のものの閾値電圧は1.5Vであるから、図9のダイオードモードにおいて、2つのゲートの内一方は5V、他方は0Vが印加されることは、5Vが印加されるゲートは閾値電圧を超えた電圧が印加されることを意味し、本件発明と同一であるということはできない。2つのゲートに閾値電圧より低い0Vを印加すれば、双方向スイッチはオフ、即ち本件発明の第1の動作モードとなるから、甲第1号証記載のものにおいて、ゲートをソースに対しトランジスタの閾値電圧より低い電圧にバイアスして第3の動作モードとすることはできず、甲第1号証記載のものにおいて、ゲートをソースに対しトランジスタの閾値電圧より低い電圧にバイアスして第3の動作モードとして本件発明のようにすることは当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。


5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし21に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし21に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2015-12-22 
出願番号 特願2010-546867(P2010-546867)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H02M)
P 1 652・ 113- Y (H02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河村 勝也  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
登録日 2015-02-20 
登録番号 特許第5697996号(P5697996)
権利者 トランスフォーム インコーポレーテッド
発明の名称 ブリッジ回路及びその部品  
代理人 平木 祐輔  
代理人 松丸 秀和  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 頭師 教文  
代理人 関谷 三男  

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