• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60R
管理番号 1311868
異議申立番号 異議2015-700310  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-14 
確定日 2016-03-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第5739032号「車両用ウェザーストリップ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5739032号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5739032号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成26年3月5日に特許出願され、平成27年5月1日に特許の設定登録がされ、その後、本件特許に対し、特許異議申立人 井関勝守により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第5739032号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「車両に於けるドアインナーパネルと車体パネルとの間に介装されかつ開口部を閉止する該ドアインナーパネルに設置・固定されてなる長尺状又は定尺状の車両用ウェザーストリップであって、前記車両用ウェザーストリップは第1シールリップ部と、第2シールリップ部と、第3シールリップ部と、基体部とで構成され、前記第1ないし第3シールリップ部及び基体部は比重がSg0.4ないし0.8の柔軟性の樹脂であって、EPDMゴム又は熱可塑性樹脂で成形され、前記第1シールリップ部は外側面全体形状が略楕円形であって長さ方向に側面形状が略楕円状の第1中空部を貫通形成し、かつ頂点部分に側面が略山形状の突起を形成し、前記基体部と前記第1シールリップ部との間には側面が略四角形状の第2中空部を穿孔してなり、前記第2シールリップ部は側面が略L字状であって単一で構成すると共に前記車体パネルの開口部に弾接し前記基体部から延在して連結し、前記第3シールリップ部は前記基体部の左端から立上げた壁部の上端に形成した小突片と、前記基体部の底面の右方側の小突片と、該基体部の底面の左端側の小突片とでなり、前記基体部の底面の右方側の小突片と前記基体部の底面の左端側の小突片との間にクリップを係止・固定しかつ無端状であって単一で構成された車両用ウェザーストリップに於いて、前記第2シールリップ部に連らなりかつ前記ドアインナーパネルの開口部に弾接すると共に合成樹脂の高発泡スポンジ又は比重がSg0.1ないし0.4でなる柔軟性の樹脂ゴムで形成された柔軟性リップ部を有したことを特徴とする車両用ウェザーストリップ。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証:特開2014-20125号公報(以下「刊行物1」という。)及び甲第2号証:特開2001-97047号公報(以下「刊行物2」という。)を提出し、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべきものである旨主張している。

4 刊行物の記載
本件特許について出願前に頒布された刊行物である刊行物1及び刊行物2には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(1)刊行物1について
刊行物1には、「開口部に於けるクッション材の構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(刊1-1)
「【請求項3】
車両に於ける可動部材と固定部材との間に介装されかつ開口部を閉止する該可動部材又は該固定部材のいずれか一方に設置・固定されてなる長尺状又は定尺状のクッション材であって、前記クッション材は第1シールリップ部と、第2シールリップ部と、第3シールリップ部と、基体部とで構成され、前記第1ないし第3シールリップ部及び基体部は比重がSg0.4ないし0.8の柔軟性の樹脂(EPDM)であって、EPDMゴム又は熱可塑性樹脂で成形され、前記第1シールリップ部は外側面全体形状が略楕円形であって長さ方向に側面形状が略楕円状の第1中空部を貫通形成し、前記第2シールリップ部は側面が略L字状であって第1シールリップ部の本体部の右側から壁部を介して第1シールリップ部に連結し、前記第3シールリップ部の外方突出部分には円錐状の突起体で形成すると共に比重がSg0.1ないし0.4でなる柔軟性の樹脂(EPDM)ゴム又は合成樹脂の高発泡スポンジで形成された柔軟性リップ部を接合・配置し、前記基体部と前記壁部との間には側面が略四角形状の第2中空部を穿孔し、該基体部の底面には右方側に側面が山形状でなる短形の第1突片、該短形の第1突片の右横方向に側面が山形状の長形の第2突片を列設・形成し、前記基体部の底面の略中央部分には側面が山形状の小突起を形成し、前記基体部の底面には左方向側に前記第1突片と略同形状の山形突起を形成し、前記第3シールリップ部の外壁面と第2突片の外面との交点に側面が半円状の凹部を形成したことを特徴とする開口部に於けるクッション材の構造。」

(刊1-2)
「【0033】
(前略)クッション材201は大概して第1シールリップ部20Aと、第2シールリップ部20Bと、第3シールリップ部20Cと、基体部20Dとで構成されている。該クッション材201は例えば可動部材21Aと固定部材22Aとの間に介装されかつ開口部Wを閉止する該可動部材21A又は固定部材22Aのいずれか一方に設置・固定されてなる。該可動部材21Aとしては自動車のドアパネル、サッシュドア、窓枠部又はリテーナ等であり開口部Wに隣接して設置されている。また該固定部材22Aとしては車体パネル、車体開口縁部、車体周壁部等である。
【0034】
前記第1ないし第3シールリップ部20A、20B、20C及び基体部20Dは柔軟性の樹脂(EPDM)例えば、ゴム又は合成樹脂のスポンジであって、EPDMゴム又は熱可塑性樹脂で成形され、すなわちエチレン・プロピレンゴムのスポンジ材で成形されている。例えば、比重がSg0.4ないし0.7(中略)。そして該第1シールリップ部20Aは外側面全体形状が略楕円形であって長さ方向に側面形状が略楕円状の第1中空部20bを貫通形成している。(中略)第2シールリップ部20Bは第1シールリップ部20Aの本体部20aの図1から見て右側から(中略)壁部20cを介して連結している。前記第3シールリップ部20Cの外方突出部分20fには柔軟性リップ部23を接合・配置している。該柔軟性リップ部23は例えば比重がSg0.1ないし0.4でなる極めて柔軟性の樹脂(EPDM)ゴム又は合成樹脂の高発泡スポンジで形成されており第3シールリップ部20Cの中間位置に円錐状の突起体で形成し外方突出部分20fに接合・配置し可動部材21Aを押込んだ際、該柔軟性リップ部23が固定部材22Aに押し潰され固定部材22Aの壁面に密着する。
【0035】
前記基体部20Dと前記壁部20cとの間には長さ方向に貫通しかつ側面が略四角形状の第2中空部20dを穿孔している。(中略)該基体部20Dは(中略)底面には右方側に位置し側面が山形状であって、(中略)短形の第1突片24、該短形の第1突片24の右横方向の位置に列設した側面が山形状(中略)の長形の第2突片25を形成している。前記基体部20Dの底面の略中央部分には側面が山形状の小突起26をクッション材201の長手方向に形成している。また、前記基体部20Dの底面には左方向側の位置に第1突片24と略同形状の山形突起27を形成している。(中略)ここで前記小突起26は例えば本発明に係るクッション材201を車体パネル等固定部材22Aに所定長さ毎に長さ方向にクリップ等の係止部品で固定する際、該係止部品の係合孔(図示せず)を穿孔するときの設定位置が確定でき、クッション材201の固定施工が簡便となり該クッション材201が固定部材22Aから離脱することがない。(後略)」

(刊1-3)
「【0037】
前記第2シールリップ部20Bは第3シールリップ部20Cの上方部と一体形成されてなり側面が略L字状に形成されてあって、(中略)下方部が第3シールリップ部20Cと一体に成形され(中略)このとき、第2中空部20dを変形し第1シールリップ部20Aの頂点部分に形成した側面が略山形状の突起29、第2シールリップ部20B及び前記柔軟性リップ部23を破線で示すように押し潰すこととなる。(後略)」

以上の記載事項及び図1、4から、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「車両に於ける可動部材21Aと固定部材22Aとの間に介装されかつ開口部を閉止する該可動部材21A又は該固定部材22Aのいずれか一方に設置・固定されてなる長尺状又は定尺状のクッション材201であって、前記クッション材201は第1シールリップ部20Aと、第2シールリップ部20Bと、第3シールリップ部20Cと、基体部20Dとで構成され、前記第1ないし第3シールリップ部20A、20B、20C及び基体部20Dは比重がSg0.4ないし0.8の柔軟性の樹脂(EPDM)であって、EPDMゴム又は熱可塑性樹脂で成形され、前記第1シールリップ部20Aは外側面全体形状が略楕円形であって長さ方向に側面形状が略楕円状の第1中空部20bを貫通形成し、かつ頂点部分に側面が略山形状の突起29を形成し、前記第2シールリップ部20Bは第3シールリップ部20Cの上方部と一体形成されてなり側面が略L字状であって、第1シールリップ部20Aの本体部の右側から壁部20cを介して第1シールリップ部20Aに連結し、前記第3シールリップ部20Cの外方突出部分には円錐状の突起体で形成すると共に比重がSg0.1ないし0.4でなる柔軟性の樹脂(EPDM)ゴム又は合成樹脂の高発泡スポンジで形成された柔軟性リップ部23を接合・配置し、前記基体部20Dと前記壁部20cとの間には側面が略四角形状の第2中空部20dを穿孔し、該基体部20Dの底面には右方側に側面が山形状でなる短形の第1突片24、該短形の第1突片の右横方向に側面が山形状の長形の第2突片25を列設・形成し、前記基体部の底面の略中央部分には、クリップ等の係止部品の係合孔を穿孔する側面が山形状の小突起26を形成し、前記基体部の底面には左方向側に前記第1突片24と略同形状の山形突起27を形成した開口部に於けるクッション材。」

(2)刊行物2について
刊行物2には、「ウェザストリップ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(刊2-1)
「【0011】
前記ウェザストリップ20は、横断面が略三角形状に形成された補助中空部22を有する基底部21と、前記補助中空部22の一部を画成し、且つ非クリップ辺22a及びクリップ辺22bよりも長い斜辺22cから突出する中空状シール部23と、前記斜辺22cの反中空状シール部側の端部から延伸するシールリップ部24とを具備して成る。(後略)」

5 対比
本件発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「可動部材21A」、「固定部材22A」及び「クッション材201」は、それぞれ本件発明の「ドアインナーパネル」、「車体パネル」及び「車両用ウェザーストリップ」に相当し、
引用発明の「第1シールリップ部20A」は、「外側面全体形状が略楕円形であって長さ方向に側面形状が略楕円状の第1中空部20bを貫通形成し、かつ頂点部分に側面が略山形状の突起29を形成」されていることからみて、本件発明の「外側面全体形状が略楕円形であって長さ方向に側面形状が略楕円状の第1中空部を貫通形成し、かつ頂点部分に側面が略山形状の突起を形成し」た「第1シールリップ部」に相当し、
引用発明の「第2シールリップ部20B」は、「側面が略L字状」であり、また、図1、4からみて、車体パネル22Aに弾接するとともに、第3シールリップ部20Cを介して基体部20Dに連結されることが明らかであるから、本件発明の「第2シールリップ部」と、「側面が略L字状であって単一で構成すると共に前記車体パネルの開口部に弾接し前記基体部に連結」される「第2’シールリップ部」の構成の限りで共通し、
引用発明の「柔軟性リップ部23」は、「比重がSg0.1ないし0.4でなる柔軟性の樹脂(EPDM)ゴム又は合成樹脂の高発泡スポンジで形成」され、また、図1、4からみて、ドアパネル21Aに弾接することが明らかであるから、本件発明の「柔軟性リップ部」と、「ドアインナーパネルの開口部に弾接すると共に合成樹脂の高発泡スポンジ又は比重がSg0.1ないし0.4でなる柔軟性の樹脂ゴムで形成された柔軟性リップ部を有した」限りで共通し、
引用発明の「第2中空部20d」は、「側面が略四角形状」であるとともに「基体部20Dと前記壁部20cとの間」に穿孔されるものであるから、「基体部と前記第1シールリップ部との間」に穿孔される本件発明の「第2中空部」と、「側面が略四角形状」であり「基体部と他の部位との間」に穿孔される限りで共通し、
引用発明の「基体部20Dの底面」に列設・形成した「第1突片24」及び「第2突片25」は、本件発明の「第3シールリップ部」を構成する「基体部の底面の右方側の小突片」に相当し、同じく「山形突起27」は「基体部の底面の左端側の小突片」に相当するから、引用発明の「第3シールリップ部」は、本件発明の「第3シールリップ部」と、「基体部の底面の右方側の小突片と、該基体部の底面の左端側の小突片と」を有する「第3’シールリップ部」の構成の限りで共通し、
引用発明では、「基体部の底面の略中央部分には、クリップ等の係止部品の係合孔を穿孔する側面が山形状の小突起26を形成」していることから、本件発明と同様に「基体部の底面の右方側の小突片と前記基体部の底面の左端側の小突片との間にクリップを係止・固定」しているものと認められ、
引用発明では、「クッション材201は第1シールリップ部20Aと、第2シールリップ部20Bと、第3シールリップ部20Cと、基体部20Dとで構成され、前記第1ないし第3シールリップ部20A、20B、20C及び基体部20Dは比重がSg0.4ないし0.8の柔軟性の樹脂(EPDM)であって、EPDMゴム又は熱可塑性樹脂で成形」されていることから、引用発明と本件発明とは、「第1シールリップ部と、第2’シールリップ部と、第3’シールリップ部と、基体部とで構成され、前記第1ないし第3シールリップ部及び基体部は比重がSg0.4ないし0.8の柔軟性の樹脂であって、EPDMゴム又は熱可塑性樹脂で成形」されている構成の限りで共通し、
引用発明の「クッション材201」(本件発明の「車両用ウェザーストリップ」に相当。)は、本件発明と同様に「無端状であって単一で構成」されていることは明らかである。

したがって、本件発明と引用発明とは、

「車両に於けるドアインナーパネルと車体パネルとの間に介装されかつ開口部を閉止する該ドアインナーパネルに設置・固定されてなる長尺状又は定尺状の車両用ウェザーストリップであって、前記車両用ウェザーストリップは第1シールリップ部と、第2’シールリップ部と、第3’シールリップ部と、基体部とで構成され、前記第1、第2’、第3’シールリップ部及び基体部は比重がSg0.4ないし0.8の柔軟性の樹脂であって、EPDMゴム又は熱可塑性樹脂で成形され、前記第1シールリップ部は外側面全体形状が略楕円形であって長さ方向に側面形状が略楕円状の第1中空部を貫通形成し、かつ頂点部分に側面が略山形状の突起を形成し、基体部と他の部位との間に略四角形状の第2中空部を穿孔してなり、第2’シールリップ部は側面が略L字状であって単一で構成すると共に前記車体パネルの開口部に弾接し前記基体部に連結し、前記第3’シールリップ部は前記基体部の底面の右方側の小突片と、該基体部の底面の左端側の小突片とを有し、前記基体部の底面の右方側の小突片と前記基体部の底面の左端側の小突片との間にクリップを係止・固定しかつ無端状であって単一で構成された車両用ウェザーストリップに於いて、ドアインナーパネルの開口部に弾接すると共に合成樹脂の高発泡スポンジ又は比重がSg0.1ないし0.4でなる柔軟性の樹脂ゴムで形成された柔軟性リップ部を有した車両用ウェザーストリップ。」

である点で一致し、次の点でそれぞれ相違する。

相違点1
本件発明では、「第2’シールリップ部」が、「基体部から延在して連結」している「第2シールリップ部」であるのに対し、引用発明では、「基体部20Dから延在」せず、「第3シールリップ部20Cを介して基体部20Dに連結」している「第2シールリップ部20B」である点。

相違点2
本件発明では、「柔軟性リップ部」が、「第2シールリップ部に連らなり」形成されている「柔軟性リップ」であるのに対し、引用発明では、「第3シールリップ部20Cの外方突出部分」に形成されている「柔軟性リップ部23」である点。

相違点3
本件発明では、「第2中空部」が「基体部と前記第1シールリップ部との間」に設けられているのに対して、引用発明では「基体部20Dと前記壁部20cとの間」に設けられている点。

相違点4
本件発明では、「第3’シールリップ部」が、「基体部の左端から立上げた壁部の上端に形成した小突片」を有する「第3シールリップ部」であるのに対し、引用発明では、そのような小突片を有するとはされていない点。

6 判断
上記各相違点について検討する。

(1)相違点1、2について
引用発明では、「第2シールリップ部20B」は「第3シールリップ部20Cを介して基体部20Dに連結」されており、また、「柔軟性リップ部23」は「第3シールリップ部20Cの外方突出部分」に形成されているが、これらの構造を、本件発明のように変更することは、刊行物2にも開示されておらず、また何ら合理性もないため、引用発明について、これらの相違点に係る本件発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
なお、引用発明の「第2シールリップ部20B」及び「第3シールリップ部20C」の全体が、本件発明の「第2シールリップ部」に対応すると解した場合には、本件発明のように「第2シールリップ部」が「基体部から延在して連結」し、「柔軟性リップ部」が「第2リップ部に連なり」形成されるとも解し得るが、一方その場合には、「第2シールリップ部」は「側面が略L字状」ではなくなるため、引用発明において、「第2シールリップ部」及び「第3シールリップ部」の全体を「側面が略L字状」にするとの構造変更が必要になるが、このようなことは刊行物2にも開示されておらず、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(2)相違点3について
本件発明の「第2中空部」が設けられている、「基体部と前記第1シールリップ部との間」とは、「基体部」と「第1シールリップ部」が不連続であることを前提として、それら両部位の間を意味すると解されるが、引用発明の「基体部」は、図1からみて「第1シールリップ部」と連続しているものであるから、それらには、本件発明でいう「間」は存在しない。
したがって、「基体部」と「第1シールリップ部」の「間」に「第2中空部」を設けるようにするには、まず「基体部」と「第1シールリップ部」に「間」を設けるべく、両部位が連続しない構造に変更する必要があるが、このような構造変更を行った上で、「基体部」と「第1シールリップ部」の「間」に「第2中空部」を設けるようにすることは、刊行物2にも開示されておらず、また何ら合理性もないため、引用発明について、相違点3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
なお、刊行物1の記載事項(刊1-2)での「第2シールリップ部20Bは第1シールリップ部20Aの本体部20aの図1から見て右側から(中略)壁部20cを介して連結している。」等の記載からみて、引用発明において、「壁部20c」を「第1シールリップ部」の一部と解することもできない。

(3)相違点4について
刊行物2の記載事項(刊2-1)及び図1からみて、異議申立人が主張するように、刊行物2には「基体部の左端から立上げた壁部の上端に形成した小突起と、基体部の底面の右方側の小突片と、該基体部の底面の左端側の小突片とを有した車両用ウェザーストリップ」の技術的事項が記載されているといえる。
また異議申立人は、刊行物1に記載された発明と、刊行物2に記載された発明とは、自動車のウェザーストリップにおいて車内外の気密性及び水密性を高めるもので、同一の技術分野に含まれるものであるので、刊行物1と刊行物2に記載された事項を組み合わせることの困難性はない旨の主張をしている。
しかしながら、引用発明の「基体部の左端」には、図1からみて「第1シールリップ部」が連続しているものであるから、引用発明と刊行物2に記載された技術的事項を単に組み合わせるだけでは、相違点4に係る本願発明の構成を備えるようにはできない。すなわち、「基体部の左端」に「壁部」を立上げるためには、「第1シールリップ部」を別の部位に移動する構造変更が必要になるが、このような構造の変更を行った上で、「基体部の左端から立上げた壁部の上端に形成した小突片」を設けることは、刊行物2にも開示されておらず、また何らの合理性もないため、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
なお、刊行物1の図4の「ドアパネル21A」と刊行物2の図1の「ドアパネルDP」の形状を比較すると明らかなように、両者では、ウェザーストリップが設けられるドアインナーパネルの形状が異なるものであり、また、ウェザーストリップの最適形状は、設けられるドアインナーパネルの形状により異なるべきものであることも、当業者にとって技術常識というべきであるから、単に同一の技術分野に含まれるだけで、刊行物1と刊行物2に記載された事項を組み合わせることに困難性がない旨の異議申立人の主張も採用することができない。

7 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-02-22 
出願番号 特願2014-42650(P2014-42650)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B60R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 成彦  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 氏原 康宏
上尾 敬彦
登録日 2015-05-01 
登録番号 特許第5739032号(P5739032)
権利者 化成工業株式会社
発明の名称 車両用ウェザーストリップ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ