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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02C
管理番号 1312339
審判番号 不服2015-1942  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-02 
確定日 2016-03-09 
事件の表示 特願2010-199434「ガスタービン発電プラントにおいて露点加熱のために燃料ガスに外部的にエネルギーを加えるシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日出願公開、特開2011- 58493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年9月7日(パリ条約による優先権主張2009年9月9日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成26年5月19日付けで拒絶理由が通知され、同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月30日付けで拒絶査定がされ、平成27年2月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年2月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年2月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成27年2月2日付けの手続補正の内容
平成27年2月2日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年8月21日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
ガスタービン電力プラントの電気始動ヒータ(300、430)において、
ガス燃料が貫流できるように構成された燃料ガス管(310)と、
前記燃料ガス管(310)の外部に巻かれ且つ該ガス管と接触しており、前記燃料ガス管(310)を通って流れる燃料ガスを過熱するよう構成された1以上の電気バンドヒータ(320)と、
前記電力プラントが始動モードにあるか否かを判定し、前記始動モードにおいて前記燃料ガスを過熱するように前記ヒータを制御するコントローラと、
を備え、
前記過熱は、前記燃料ガスが前記燃料ガス管(310)の下流側で膨張を生じるときに凝縮形成を実質的に阻止するように、前記燃料ガスの温度を十分に上昇させることとして定義される、
電気始動ヒータ(300、430)。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
ガスタービン電力プラントの電気始動ヒータ(300、430)において、
ガス燃料が貫流できるように構成された燃料ガス管(310)と、
前記燃料ガス管(310)の外部に巻かれ且つ該ガス管と接触しており、前記燃料ガス管(310)を通って流れる燃料ガスを過熱するよう構成された1以上の電気バンドヒータ(320)と、
前記電力プラントが始動モードにあるか否かを判定し、前記始動モードにおいて前記燃料ガスを過熱するように前記ヒータを制御するコントローラと、
前記燃料ガス管(310)の内部に設けられ、前記1以上のバンドヒータ(320)から前記燃料ガス管(310)を通って流れる燃料ガスへの熱伝達を促進するように構成された1以上のフィン(330)と、
を備え、
前記過熱は、前記燃料ガスが前記燃料ガス管(310)の下流側で膨張を生じるときに凝縮形成を実質的に阻止するように、前記燃料ガスの温度を十分に上昇させることとして定義され、
前記1以上のフィン(330)は、前記燃料ガス管(310)の内壁から、前記燃料ガス管(310)の中心とは異なる方向に延びる、
電気始動ヒータ(300、430)。」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記燃料ガス管(310)の内部に設けられ、前記1以上のバンドヒータ(320)から前記燃料ガス管(310)を通って流れる燃料ガスへの熱伝達を促進するように構成された1以上のフィン(330)と、」及び「前記1以上のフィン(330)は、前記燃料ガス管(310)の内壁から、前記燃料ガス管(310)の中心とは異なる方向に延びる、」という記載を加えることによって、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「燃料ガス管(310)」をさらに限定したものといえ、しかも、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。

(1)引用文献の記載等
ア 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開昭60-198337号公報(以下、「引用文献」という。)には、「ガスタービンの燃料系統加熱装置」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、順に「記載1a」ないし「記載1d」という。)がある。

1a 「本発明はガスタービンと蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備において、液化ガス燃料を供給する燃料配管の加熱や保温を効率的に行なえるようにした燃料系統加熱装置に関する。」(第2ページ左上欄第3ないし7行)

1b 「ガスタービン発電設備は、近年エネルギー節減の観点から、ガスタービンと、その排熱を利用する蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備として多用される傾向にある。
第1図は従来のコンバインドサイクル発電設備の一例として高圧および低圧の2種類の蒸気タービンを併用した設備を示す。
同図において、給気管1から供給された大気はコンプレッサー2で圧縮された後、燃焼器3に導入され、燃料配管4から燃料止め弁5および燃料制御弁6を通して供給される燃化ガスに混合されてこれを燃焼させる。この燃焼によって発生した高温の排ガスはガスタービン7に導入され、ガスタービン7およびこれに直結した発電機8を駆動した後、排ガス管9を通して排熱回収ボイラ10に導かれる。
排熱回収ボイラ10では導入された排ガスの熱を利用してボイラ水を加熱し、高温の蒸気を発生させる。コンバインドサイクルでは、熱効率を上げるため、蒸気条件の異なる2種類以上の蒸気を発生させるのが通例である。
排熱回収ボイラ10で発生した高圧蒸気は高圧蒸気管11を通り、高圧蒸気止め弁12および高圧蒸気加減弁13を経て高圧蒸気タービン14に導入される。また、低圧蒸気は低圧蒸気管15を通り、低圧蒸気止め弁16および低圧蒸気加減弁17を経た後、高圧蒸気タービン14の最終段落からの排気と共に、低圧蒸気タービン18に導入される。
高圧蒸気タービン14および低圧蒸気タービン18には発電機19が直結されており、これらを駆動した蒸気は復水器20に導入され、冷却されて復水となる。21および22は蒸気タービン14,18の中間段落に接続した抽気ラインを示す。」(第2ページ左上欄第9行ないし左下欄第1行)

1c 「従来、ガスタービン7の燃料としては軽油や灯油等の液体燃料が多用されていたが、最近ではエネルギー資源の輸送技術や液化技術等の進歩に伴い、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)等の液化ガスが使用されるようになつてきた。
液化ガス、例えばLPGをガスタービンの燃料として使用する場合には、LPGの露点温度が20気圧で102℃と高く、常温下では燃料配管4内で液化凝縮を起こして燃料止め弁5や燃料制御弁6を浸食させたり、燃焼器3内での不均一な流量分布に伴う局所的な燃焼ガスの異常高温化を招来する等のおそれがある。
このため、第2図に示すように、燃料配管4に蒸気トレース配管23を添設し、これに連結管24を介して補助ボイラ25を接続し、いかなる運転状態においてもLPGが液化しないよう、その露点以上の温度に加熱保温を行なうようにしている。第2図中、26は燃料供給装置を示す。」(第2ページ左下欄第2ないし19行)

1d 「第4図は本発明の他の実施例を示す。この実施例では、第1図や第3図における補助ボイラ25は使用されておらず、替りに、電気ヒータを備えた複合管33が使用されている。
複合管33は、第5図に示すように、燃料配管4に蒸気トレース配管23とシーズヒータ線等の電気ヒータ34を沿わせて、適当間隔毎にバインド線35で結束し、これらを、カルシウムシリケート等から成る熱絶縁層36で包みこみ、スチール線37でバインドし、その外側に、鋼板等を円筒状に彎曲成形して端部をかしめたシース38を被覆して構成されている。
第4図において、複合管33の電気ヒータ34にはリード線39を介して電源装置40が接続されている。この電源装置は、メタル温度検出器31からの検出信号に基いて作動する調節器41によつて制御され、電気ヒータ34をオン・オフ制御する。
第4図および第5図に示す実施例においては、プラントの起動時に蒸気タービン側の蒸気源を利用できない場合に、電気ヒータ34に通電し、燃料配管4を加熱または保温し、蒸気タービン側の蒸気源を利用できる場合には、第3図につき説明したと同様に蒸気源からのトレース用蒸気による温度制御を行なう。」(第3ページ右下欄第18行ないし第4ページ右上欄第1行)

イ 引用文献の記載事項
記載1aないし1d及び図面の記載から、引用文献には、次の事項(以下、順に「記載事項2a」ないし「記載事項2f」という。)が記載されていると認める。

2a 記載1a及び記載1dの「第4図および第5図に示す実施例においては、プラントの起動時に蒸気タービン側の蒸気源を利用できない場合に、電気ヒータ34に通電し、燃料配管4を加熱または保温し、蒸気タービン側の蒸気源を利用できる場合には、第3図につき説明したと同様に蒸気源からのトレース用蒸気による温度制御を行なう。」並びに図面によると、引用文献には、ガスタービンと蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備のプラントの電気ヒータ34が記載されている。

2b 記載1bの「同図において、給気管1から供給された大気はコンプレッサー2で圧縮された後、燃焼器3に導入され、燃料配管4から燃料止め弁5および燃料制御弁6を通して供給される燃化ガスに混合されてこれを燃焼させる。」、記載1cの「液化ガス、例えばLPGをガスタービンの燃料として使用する場合には、LPGの露点温度が20気圧で102℃と高く、常温下では燃料配管4内で液化凝縮を起こして燃料止め弁5や燃料制御弁6を浸食させたり、燃焼器3内での不均一な流量分布に伴う局所的な燃焼ガスの異常高温化を招来する等のおそれがある。
このため、第2図に示すように、燃料配管4に蒸気トレース配管23を添設し、これに連結管24を介して補助ボイラ25を接続し、いかなる運転状態においてもLPGが液化しないよう、その露点以上の温度に加熱保温を行なうようにしている。」及び図面を記載事項2aとあわせてみると、引用文献には、液化ガスが貫流できるように構成された燃料配管4が記載されている。

2c 記載1dの「複合管33は、第5図に示すように、燃料配管4に蒸気トレース配管23とシーズヒータ線等の電気ヒータ34を沿わせて、適当間隔毎にバインド線35で結束し、これらを、カルシウムシリケート等から成る熱絶縁層36で包みこみ、スチール線37でバインドし、その外側に、鋼板等を円筒状に彎曲成形して端部をかしめたシース38を被覆して構成されている。」及び図面を記載事項2a及び2bとあわせてみると、引用文献には、燃料配管4と電気ヒータ34が接触していることが記載されている。

2d 記載1dの「第4図および第5図に示す実施例においては、プラントの起動時に蒸気タービン側の蒸気源を利用できない場合に、電気ヒータ34に通電し、燃料配管4を加熱または保温し、蒸気タービン側の蒸気源を利用できる場合には、第3図につき説明したと同様に蒸気源からのトレース用蒸気による温度制御を行なう。」及び図面を記載事項2aないし2cとあわせてみると、引用文献には、燃料配管4と接触しており、燃料配管4を通って流れる液化ガスを加熱するよう構成された電気ヒータ34が記載されている。

2e 記載1dの「第4図および第5図に示す実施例においては、プラントの起動時に蒸気タービン側の蒸気源を利用できない場合に、電気ヒータ34に通電し、燃料配管4を加熱または保温し、蒸気タービン側の蒸気源を利用できる場合には、第3図につき説明したと同様に蒸気源からのトレース用蒸気による温度制御を行なう。」及び図面を記載事項2aないし2dとあわせてみると、引用文献には、ガスタービンと蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備のプラントの起動時に蒸気タービン側の蒸気源を利用できない場合に電気ヒータ34に通電し、燃料配管4を加熱するように電気ヒータ34を制御する装置が記載されている。

2f 記載1cの「液化ガス、例えばLPG」及び「このため、第2図に示すように、燃料配管4に蒸気トレース配管23を添設し、これに連結管24を介して補助ボイラ25を接続し、いかなる運転状態においてもLPGが液化しないよう、その露点以上の温度に加熱保温を行なうようにしている。」並びに図面を記載事項2aないし2eとあわせてみると、引用文献には、いかなる運転状態においても液化ガスが液化しないよう、その露点以上の温度に加熱することとしていることが記載されている。

ウ 引用発明
記載1aないし1c、記載事項2aないし2f及び図面の記載を整理すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「ガスタービンと蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備のプラントの電気ヒータ34において、
液化ガスが貫流できるように構成された燃料配管4と
前記燃料配管4と接触しており、前記燃料配管4を通って流れる液化ガスを加熱するよう構成された電気ヒータ34と、
前記ガスタービンと蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備のプラントの起動時に蒸気タービン側の蒸気源を利用できない場合に前記電気ヒータ34に通電し、前記燃料配管4を加熱するように前記電気ヒータ34を制御する装置と、
を備え、
いかなる運転状態においても液化ガスが液化しないよう、その露点以上の温度に加熱する、
電気ヒータ34。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明における「ガスタービンと蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備のプラント」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「ガスタービン電力プラント」に相当し、以下、同様に、「電気ヒータ34」は「電気始動ヒータ(300、430)」に相当する。
また、引用発明における「液化ガス」は、記載1cによると、いかなる運転状態においても液化しないように加熱保温されているから、本願補正発明における「ガス燃料」及び「燃料ガス」に相当する。
さらに、引用発明における「燃料配管4」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「燃料ガス管(310)」に相当し、以下、同様に、「加熱」は「過熱」に相当する。
さらにまた、上記相当関係を踏まえると、引用発明における「前記燃料配管4と接触しており、前記燃料配管4を通って流れる液化ガスを加熱するよう構成された電気ヒータ34」は、本願補正発明における「前記燃料ガス管(310)の外部に巻かれ且つ該ガス管と接触しており、前記燃料ガス管(310)を通って流れる燃料ガスを過熱するよう構成された1以上の電気バンドヒータ(320)」と、「前記燃料ガス管と接触しており、前記燃料ガス管を通って流れる燃料ガスを加熱するよう構成された1以上の電気ヒータ」という限りにおいて一致する。
さらにまた、上記相当関係を踏まえると、引用発明における「前記ガスタービンと蒸気タービンとを組合せたコンバインドサイクル発電設備のプラントの起動時に蒸気タービン側の蒸気源を利用できない場合に前記電気ヒータ34に通電し、前記燃料配管4を加熱するように前記電気ヒータ34を制御する装置」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「前記電力プラントが始動モードにあるか否かを判定し、前記始動モードにおいて前記燃料ガスを過熱するように前記ヒータを制御するコントローラ」に相当する。
さらにまた、上記相当関係を踏まえると、引用発明における「いかなる運転状態においても液化ガスが液化しないよう、その露点以上の温度に加熱する」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「前記過熱は、前記燃料ガスが前記燃料ガス管(310)の下流側で膨張を生じるときに凝縮形成を実質的に阻止するように、前記燃料ガスの温度を十分に上昇させることとして定義され」に相当する。

したがって、両者は、
「ガスタービン電力プラントの電気始動ヒータにおいて、
ガス燃料が貫流できるように構成された燃料ガス管と、
前記燃料ガス管と接触しており、前記燃料ガス管を通って流れる燃料ガスを過熱するよう構成された1以上の電気ヒータと、
前記電力プラントが始動モードにあるか否かを判定し、前記始動モードにおいて前記燃料ガスを過熱するように前記ヒータを制御するコントローラと、
を備え、
前記過熱は、前記燃料ガスが前記燃料ガス管の下流側で膨張を生じるときに凝縮形成を実質的に阻止するように、前記燃料ガスの温度を十分に上昇させることとして定義される、
電気始動ヒータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

ア 相違点1
「前記燃料ガス管と接触しており、前記燃料ガス管を通って流れる燃料ガスを加熱するよう構成された1以上の電気ヒータ」に関して、本願補正発明においては、「前記燃料ガス管(310)の外部に巻かれ且つ該ガス管と接触しており、前記燃料ガス管(310)を通って流れる燃料ガスを過熱するよう構成された1以上の電気バンドヒータ(320)」であるのに対し、引用発明においては、「前記燃料配管4と接触しており、前記燃料配管4を通って流れる液化ガスを加熱するよう構成された電気ヒータ34」である点(以下、「相違点1」という。)。

イ 相違点2
本願補正発明においては、「前記燃料ガス管(310)の内部に設けられ、前記1以上のバンドヒータ(320)から前記燃料ガス管(310)を通って流れる燃料ガスへの熱伝達を促進するように構成された1以上のフィン(330)」であって「前記1以上のフィン(330)は、前記燃料ガス管(310)の内壁から、前記燃料ガス管(310)の中心とは異なる方向に延びる」ものを備えているのに対し、引用発明においては、そうでない点(以下、「相違点2」という。)。

(3)相違点についての判断
そこで、相違点1及び2について、以下に検討する。

ア 相違点1について
ガスタービンへ供給する燃料ガスを加熱するヒータとして、ガスタービンへ供給する燃料ガス管の外部に巻かれ且つ該ガス管と接触している燃料ガス管のヒータは、本願優先日前に周知(必要であれば、下記ア-1等を参照。以下、「周知技術1」という。)である。
そして、引用発明における「電気ヒータ34」は、「液化ガス」を加熱するものであればよいことは明らかであるから、引用発明において、周知技術1を適用し、「前記燃料配管4と接触しており、前記燃料配管4を通って流れる燃化ガスを加熱するよう構成された電気ヒータ34」に代えて、ガスタービンへ供給する燃料ガス管の外部に巻かれ且つ該ガス管と接触している燃料ガス管のヒータを使用するようにして、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ア-1 特開昭63-227932号公報の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開昭63-227932号公報には、「高圧燃料ガス製造装置」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。)。

・「こうして得られた高圧燃料ガスは電気テープヒータ4Aが巻装されたガス供給パイプ4を通じて保温されながらガスタービンユニット5に供給され、この中の燃焼器にて空気と混合され、燃焼される。図中6は発電機である。」(第2ページ左下欄第7ないし12行)

イ 相違点2について
熱交換を促進するために、管内部にフィンを設けることは、本願優先日前に周知(必要であれば、下記イ-1ないしイ-5等を参照。以下、「周知技術2」という。)である。
また、管内部にフィンを設ける際に、その延びる方向をどのようにするかは、当業者が適宜決めるべき設計的事項であるし、フィンを管内壁から、管の中心とは異なる方向に延ばすことは、下記イ-3ないしイ-5に記載されている。
したがって、引用発明において、熱交換を促進するために、周知技術2を適用し、「燃料配管4」の内部に「燃料配管4」の内壁から、「燃料配管4」の中心とは異なる方向に延びる1以上のフィンを設けるようにして、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

イ-1 特開2002-39696号公報の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2002-39696号公報には、「フィンチューブ及びその製造方法」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図9(a)に示すような従来のフィンチューブでは、内管部材100内の流体通路100aにおいて、内管部材内周面付近を流れる流体は有効に冷却されるが、Pで示すような流体通路中心部付近を流れる流体は冷却されにくいといった問題がある。なお、かかる問題は、流体通路100a内を流れる流体の境膜伝熱係数が小さいとき、例えば該流体が気体あるいは高粘性液であるときにはとくに顕在化する。そこで、このような問題を解決するために、図9(b)に示すように、内管部材100’の内周面(内壁)に管内側縦フィン100bが設けられたフィンチューブが用いられることがある。」(段落【0005】)

イ-2 特開2004-191035号公報の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2004-191035号公報には、「樹脂管を内層した伝熱管」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0032】
上記樹脂材を用いた図1、図2に示す実施例1を詳細に説明すると、(1)は伝熱管で、ステンレス鋼管その他の金属管(2)の内部に、該金属管(2)とほぼ同一長さとする円筒形の樹脂管(3)を配設している。伝熱管(1)の製造工程を説明すると、まず樹脂管(3)は、図1に示す如く、金属管(2)とほぼ同一長さで、金属管(2)の内径とほぼ同一の外径とする円筒形で、この円筒形の基板(4)の内周面に、軸方向に長尺な6本のフィン(5)を、樹脂管(3)の内部空間を分割する事のないよう基板(4)と一体に形成している。また、各フィン(5)は、両表面に軸方向に長尺な凹溝(6)を複数設けて、フィン(5)の表面積を広くするとともに、伝熱管(1)内を流動するEGRガス等の流体の乱流化を図っている。
・・・(略)・・・
【0034】
このように、本発明の伝熱管(1)は、熱伝導性に優れる金属管(2)内に、樹脂管(3)の内部空間を分割する事のないフィン(5)を突設する事で伝熱面積を増大させ熱伝導性を高めた樹脂管(3)を挿入配設しているので、金属材製のフィン部材等を挿入配設した従来の伝熱管と同等若しくはそれ以上の熱伝導性を得る事ができる。従って、樹脂材を使用しても伝熱管(1)の熱交換性能を低下させる事なく、より廉価で軽量な伝熱管(1)を得る事ができる。また、樹脂材は加工が容易であるから、フィン(5)やフィン(5)の両表面に形成する凹溝(6)を、金属材では製作が困難な複雑な形状でより多く形成する事ができ、熱交換性能の更なる向上が可能となるとともに、容易な製作が可能となる。」(段落【0032】ないし【0034】)

イ-3 特開2001-227413号公報の記載
本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2001-227413号公報には、「多管式EGRガス冷却装置」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0008】本発明は上記した従来の多管式熱交換器の問題を解決するためになされたもので、伝熱管の内部に設けるフィンを管体と一体化構造とすることによって、組立て工数の削減とコスト低減をはかるとともに、管体の伝熱性能を高め、安定した熱交換率が得られる多管式EGRガス冷却装置を提供しようとするものである。」(段落【0008】)

・「【0019】図6に示す伝熱管2fは内部に管壁部2f-1と一体で管径方向で内側に突出しかつ管軸方向に連続した、管径方向に長い二股状のフィン部2f-2、2f-3を有するもので、その製造方法はフープ材をロール成形によって円筒状に成形する際、該フープ材の両端をそれぞれ内側へ二股状に折曲げてフィン部2f-2、2f-3を形成し、その継目部をTIG溶接法などを用いて接合することにより製造される。2f-4は溶接ビードである。」(段落【0019】)

イ-4 特開2005-42941号公報の記載
本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2005-42941号公報には、「伝熱管並びにこの伝熱管を組み付けた熱交換器」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「【0022】
【作用】本発明は上述の如く構成したものであり、第1の発明の伝熱管は熱伝導性に優れる金属製の素管内に、金属材製の一方フィンと他方フィンとを配設しているので、伝熱管の伝熱面積を増大させる事ができる。また、一方フィンと他方フィンとは、各々の一方片と他方片との先端側の4箇所で、素管の内周面と少なくとも板厚分の面積で面接触しているので、従来の2箇所での接触に比較して素管と一方フィン及び他方フィンとの接触面積が多くなり、熱伝導性を向上させる事ができる。また、従来の螺旋状のフィン部材に比べて、流体への圧力抵抗が過度に大きくならず、所定の流量の流体を円滑に流動させる事ができる。従って、伝熱管の吸熱特性や放熱特性が向上し、伝熱管を介した内外流体の熱交換を効率的に行う事が可能となり、熱交換性能に優れた伝熱管を得る事ができる。
・・・(略)・・・
【0028】
【実施例】
以下、本発明の伝熱管を、自動車のクールドEGRシステムのEGRガス冷却装置に組み込んだ実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は第1実施例の伝熱管の斜視図で、一方片と他方片とを設けた端面L字形の一方フィンと他方フィンとを、略十文字形に素管内に挿入配設している。また、一方片と他方片に、円形の貫通孔を設けている。図2は図1の端面図である。また、図3は第2実施例の一方片の拡大斜視図で、一方片にコ字形の隆起部を設けて、貫通孔及び凹凸を形成している。」(段落【0022】ないし【0028】)

イ-5 実願昭58-83427号(実開昭59-191086号)のマイクロフィルムの記載
本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である実願昭58-83427号(実開昭59-191086号)のマイクロフィルムには、「熱交換管」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「この考案の目的は、伝熱面積を拡大して熱交換率の飛躍的向上を図りかつ高温強度に優れた熱交換管を提供することにある。」(明細書第1ページ第14ないし16行)

・「さらに第4図に示す内フイン(4)は、1つの平板(7)と、断面逆V形の折曲板(8)とからなる。」(明細書第4ページ第14ないし16行)

ウ 効果について
そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2からみて格別顕著な効果を奏するともいえない。

(4)むすび
したがって、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-3 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし20に係る発明は、願書に最初に添付された明細書、平成26年8月21日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)のとおりである。

2 引用文献の記載等
引用文献の記載、記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2 2-2(1)ア、イ及びウのとおりである。

3 対比・判断
上記第2[理由]2 2-1で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記第2[理由]2 2-2(2)ないし(4)のとおり、引用発明並びに周知技術1及び2(周知技術1及び2については、上記第2[理由]2 2-2(3)ア及びイを参照。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、周知技術2は上記限定に対して引用されたものであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-07 
結審通知日 2015-10-13 
審決日 2015-10-27 
出願番号 特願2010-199434(P2010-199434)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02C)
P 1 8・ 121- Z (F02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬戸 康平後藤 泰輔  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 加藤 友也
金澤 俊郎
発明の名称 ガスタービン発電プラントにおいて露点加熱のために燃料ガスに外部的にエネルギーを加えるシステム及び方法  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  

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