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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1313017 |
審判番号 | 不服2015-8678 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-11 |
確定日 | 2016-03-31 |
事件の表示 | 特願2009-224495「蒸着ラベルおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年4月14日出願公開、特開2011-75641〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件出願は,平成21年9月29日の出願であって,平成25年6月24日付けの拒絶理由の通知に対して同年8月28日付けで手続補正書が提出され,平成26年3月17日付けの拒絶理由の通知に対して同年5月20日付けで手続補正書が提出され,平成27年2月27日付けで拒絶の査定がなされるとともに、平成26年5月20日付け手続補正書は却下された。 これに対し,平成27年5月11日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。 2 平成27年5月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年5月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1) 補正の内容 平成27年5月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲は, 「【請求項1】 紙基材の一方の面に、少なくともアルミ蒸着層、UVオフセットインキによる印刷層、オーバーコート層をこの順に設け、前記紙基材の他方の面のみに、カール防止剤層を設け、前記カール防止剤層がカゼインを含む蒸着ラベルと、 瓶とを備え、 前記蒸着ラベルの前記他方の面と瓶とを接着剤を介して貼り合わせたことを特徴とする 蒸着ラベル付き瓶。 【請求項2】 蒸着ラベル付き瓶の製造方法であって、 紙基材の一方の面に、少なくともアルミ蒸着層を設ける工程と、 前記紙基材の他方の面のみにカゼインを含むカール防止剤をグラビア方式あるいはロールコート方式により塗布してカール防止剤層を設ける工程と、 前記アルミ蒸着層の表面に、少なくともUVオフセットインキによる印刷層およびオーバーコート層をこの順にオフセット印刷により設け、多面付けされたウェブ状の蒸着ラベルを得る工程と、 前記多面付けされたウェブ状の蒸着ラベルを個々の蒸着ラベル寸法に打ち抜く工程と、 前記打ち抜かれた蒸着ラベルをラベラーのフィーダー部に積載し、そのフィーダー部から一枚ずつ取り出して、前記蒸着ラベルの前記他方の面に接着剤を塗布し、瓶に貼り合わせる工程と を具備することを特徴とする蒸着ラベル付き瓶の製造方法。 【請求項3】 前記カール防止剤がカゼインを5%以上20%以下含むことを特徴とする請求項2に記載の蒸着ラベル付き瓶の製造方法。 【請求項4】 請求項2または3に記載の方法で製造される蒸着ラベル付き瓶。」 と補正された。(下線は審決で付した。以下同じ。) 本件補正は,補正前(平成25年8月28日付け手続補正による補正)の請求項1において、「瓶を備え」ること、及び「前記蒸着ラベルの前記他方の面と瓶とを接着剤を介して貼り合わせ」たことを限定するものである。 しかしながら、補正前の請求項1には「瓶」なる構成は記載されておらず、本件補正は特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、特許法第17条の2第5項第2号に定める特許請求の範囲の減縮には該当しない。 また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 したがって、本件補正は特許法第17条の2第5項に定めるいずれの目的にも該当しないから、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 上記のとおり、本件補正は却下すべきものであるが、仮に特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正による請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について,以下念のため、検討する。 (2) 刊行物に記載された事項 平成26年3月17日付け拒絶の理由に引用し,本願の出願日前である平成5年10月15日に頒布された実願平4-23601(実開平5-75782号公報)のCD-ROM(以下「刊行物1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】紙基材上にアンダーコート層を介して金属蒸着層を設け、この金属蒸着層上に印刷層を、さらにこの印刷層上にオーバーコート層を設けたびん用ラベルであって、前記アンダーコート層及びオーバーコート層を、ポリアクリルアマイドエーテル系の水溶性かつ紫外線硬化型の樹脂であって、硬化後アルカリ可溶性であるものにより形成したことを特徴とするびん用ラベル。」 イ 「【0010】 上記金属蒸着層としてはアルミニウム、金、銀、亜鉛などの金属が使用できる。」 ウ 「【0011】 上記印刷層を形成するインキとしては金属板用UV硬化型インキ(無溶剤タイプ)のものが好ましいが、水溶性のUV硬化型インキあるいは油性インキなどを使用することもできる。」 エ 「 【0013】 【実施例】 次に本考案の実施例について説明するが、本考案はこれによって限定されるものではない。 実施例1 次に、図1を参照しつつ説明する。坪量50g/m2 のクラフト紙を紙基材1とし、これにクレーを10g/m2 コートしてクレーコート層2を設け、この層の上面に、ポリアクリルアマイドエーテル系樹脂からなる水溶性UV硬化ワニスCML-536(オーストラリア国、Monocure Pty, Limited 製、半透明白色で、25℃での粘度は35,000?40,000cP、固形分は樹脂100%)を40℃に加温し、粘度を調整して無溶剤でグラビアコーターにより樹脂分10g/m2 で塗工し、UV硬化を行ってアンダーコート層3を設けた。次に、このアンダーコート層3上に真空蒸着装置によりアルミニウムを0.05μmの膜厚で蒸着して金属蒸着層4とし、この金属蒸着層4上に、水溶性でUV硬化型のグラビアインキ(上記モノキュア社製)により印刷層5を設け、さらにこの印刷層5上に上記水溶性UV硬化ワニスを上記と同じ要領で樹脂分12g/m2 で塗工し、UV硬化を行ってオーバーコート層6とした。このようにして作成したびん用ラベルの断面構造は図1に示すとおりである。 【0014】 上記びん用ラベルのオーバーコート層6は、高い光沢及び引っ掻き強度(耐摩耗性)を有し、また、印刷層5では網点面積の増分やストライキスルーなどはほとんど発生していなかった。 【0015】 上記ラベルの裏面側全面(紙基材1)に、アルカリ可溶性のカゼイン系接着剤を塗布してビールびんに貼りつけ、24時間自然乾燥の後温度70℃、濃度4%のカセイソーダ水溶液中にこのビールびんを浸漬したところ、5分以内にラベルを剥離することができた。 【0016】 実施例2 実施例1で使用したものと同じ紙基材上に、ポリアクリルアマイドエーテル系樹脂からなる水溶性UV硬化ワニスCF-435HB(上記モノキュア社製、薄い琥珀色で、25℃での粘度は350cP、固形分は樹脂100%)を室温でロールコーターにより樹脂分10g/m2 で塗工し、UV硬化を行ってアンダーコート層を設けた。次に、このアンダーコート層上に真空蒸着装置によりアルミニウムを0.05μmの膜厚で蒸着して金属蒸着層とし、この金属蒸着層上に、従来公知の金属板用UV硬化型インキを使用し平板印刷機により印刷層を設け、さらにこの印刷層上に上記水溶性UV硬化ワニスを上記と同じ要領で樹脂分12g/m2 で塗工し、UV硬化を行ってオーバーコート層とした。 【0017】 このようにして得られたびん用ラベルの外観、引っ掻き強度や印刷の仕上り状態は実施例1と同等であり、また、実施例1と同じ要領でラベルの剥離性を調べたところ、5分以内に剥離が可能であった。」 【図1】から、紙基材1の一方の面上にアンダーコート層3、金属蒸着層4、印刷層5、オーバーコート層6が、この順に形成されていることが看て取れる。 刊行物1の上記記載事項を含め,刊行物1の全記載を総合すると,刊行物1には, 「紙基材の一方の面上に、アルミニウムを使用した金属蒸着層を設け、この金属蒸着層上に金属板用UV硬化型インキを使用し平板印刷機による印刷層を設け、さらにこの印刷層上にオーバーコート層を設けたびん用ラベルと、 前記ラベルの裏面側全面に、アルカリ可溶性のカゼイン系接着剤を塗布して貼りつけたビールびん。」 の発明が開示されていると認めることができる。(以下,この発明を「刊行物1発明」という。) 平成26年3月17日付け拒絶の理由に引用し,本願の出願日前である平成16年2月19日に頒布された特開2004-50703号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 オ 「【0020】 このラベル基材12の裏面には、障壁層20を介して、粘着剤層22が形成されている。 障壁層20は、粘着剤層22の成分がラベル基材12及びアンダー層14を通して感熱記録層16に拡散することを防止するとともに、カールを防止する機能を備える。 【0021】 障壁層20としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテルなどの水溶性樹脂またはエマルジョンの一種類以上を選択して使用することができる。」 カ 「【0022】 前記した感熱記録ラベル10は、所定の形状、例えば、方形、円形、楕円形などの平面形状を備えたものとして成形され、粘着剤層22の接着力によって、使用前においては、その表面に剥離剤を塗布されたセパレータ24に適宜な間隔をおいて連続して仮着されたラベル連続体として用いられる。」 刊行物2の上記記載事項を含め,刊行物2の全記載を総合すると,刊行物2には以下の発明(以下,「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。 「ラベル基材12の裏面には、カゼインを使用した障壁層20を介して、粘着剤層22が形成され、前記障壁層20は、カールを防止する機能を備えるラベル連続体。」 (3) 対比 本願の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明1」という。)と刊行物1発明とを対比する。 後者の「アルミニウムを使用した金属蒸着層」は,前者の「アルミ蒸着層」に相当する。 以下同様に,「ビールびん」は,「瓶」に, 「アルカリ可溶性のカゼイン系接着剤」は,「接着剤」に,それぞれ相当する。 前者の「蒸着ラベル」は、ラベルが「蒸着層」を有していることに、後者の「びん用ラベル」は、ラベルを貼付する対象物が「びん」であることに、それぞれ主眼をおいて「ラベル」をとらえたものであって、前者のラベルが「瓶」に貼付されること、後者のラベルが「蒸着層」を有していることを考え合わせると、後者の「びん用ラベル」が前者の「蒸着ラベル」に相当することは自明である。 後者の「ラベルの裏面側」とは、「紙基材の一方の面」を「ラベルの表面側」とした場合の「裏面側」であることは明らかであるから、後者の「ラベルの裏面側」は、前者の「紙基材の他方の面」もしくは「蒸着ラベルの前記他方の面」に相当することは自明である。 以上のことから,両者は, 〈一致点〉 「紙基材の一方の面に、少なくともアルミ蒸着層、印刷層、オーバーコート層をこの順に設けた蒸着ラベルと、 瓶とを備え、 前記蒸着ラベルの前記他方の面と瓶とを接着剤を介して貼り合わせた蒸着ラベル付き瓶」 である点で一致し,以下の点で相違している。 相違点1 印刷層に関して,本願補正発明では「UVオフセットインキによる印刷層」であるのに対して,刊行物1発明においては,「金属板用UV硬化型インキを使用し平板印刷機による印刷層」である点。 相違点2 本願補正発明において「紙基材の他方の面のみに、カール防止剤層を設け、前記カール防止剤層がカゼインを含」んでいるのに対して,刊行物1発明のラベルは「カール防止剤層」を有するものではない点。 (4) 判断 相違点1について 本願補正発明のUVオフセットインキは、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、オフセット印刷に用いられるUVインキであることを限定している以外の技術的意義を理解することができず、オフセット印刷の大半が平版印刷であることを考え合わせると、刊行物1発明で用いられる金属板用UV硬化型インキは平版印刷によって印刷層を形成しているのであるから、相違点1に係る本願補正発明の構成は、刊行物1発明に実質的に記載されているか、刊行物1発明から当業者が容易に想到し得る程度のものである。 相違点2について 刊行物2発明における「カゼインを使用した障壁層20」は,カールを防止する機能を備えるものであるから、「カール防止層」といえる。 そして、本願補正発明が解決しようとする「UVオフセット印刷で用いられるUVニスやUVオフセットインキは塗膜収縮力が大きいため、印刷後の蒸着ラベルをラベル寸法に打ち抜いた後、蒸着ラベルが印刷表面側に紙がカールしてしまうという」という課題は、当該技術分野において周知の課題である。(必要ならば、特開2003-231339号公報の段落【0013】「基材1にパールインキが印刷されると、パールインキ層2内で樹脂分の収縮が生じるので、インキ面を内側にして反り(カール)が生じる。この現象はパールインキが酸化重合型、紫外線硬化型のいずれの場合にも発生するが、一般的に紫外線硬化型インキの方が硬化収縮の度合いが大きく顕著である。」を参照されたい。) とすれば、刊行物1発明の金属板用UV硬化型インキを使用し平板印刷機による印刷層を設けたびん用ラベルにおいて、該ラベルにカールが生じることは、当業者であれば容易に認識しうる課題であり、該課題を解決するために刊行物2発明に記載されたカゼインを使用したカール防止層を用いて、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることに、何ら技術的困難性はなく,適用した結果,格別の作用,効果が生じるとも認められないので,相違点2に係る本願補正発明の構成は,刊行物1発明と刊行物2発明とから,当業者が容易に想到し得たものである。 以上のように,本願補正発明は,刊行物1発明,刊行物2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本願補正発明は,平成27年5月11日付けの手続補正による補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、特許法第29条第2項の規定により,その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5) 本願補正発明についてのまとめ したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について (1) 本願発明及び刊行物1に記載された発明 平成27年5月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,請求項に係る発明は,平成25年8月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。 そして,その請求項1により特定される発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 紙基材の一方の面に、少なくともアルミ蒸着層、UVオフセットインキによる印刷層、オーバーコート層をこの順に設け、前記紙基材の他方の面のみに、カール防止剤層を設け、前記カール防止剤層がカゼインを含むことを特徴とする蒸着ラベル。」 一方,原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-23601(実開平5-75782号公報)のCD-ROM(刊行物1),特開2004-50703号公報(刊行物2)に記載された事項は,前記「2 (2)」に記載したとおりであり、刊行物1及び2に記載された発明は以下のとおりのものである。 刊行物1に記載された発明:「紙基材の一方の面上に、アルミニウムを使用した金属蒸着層を設け、この金属蒸着層上に金属板用UV硬化型インキを使用し平板印刷機による印刷層を設け、さらにこの印刷層上にオーバーコート層を設けたびん用ラベル。」 刊行物2に記載された発明:「ラベル基材12の裏面には、カゼインを使用した障壁層20を介して、粘着剤層22が形成され、前記障壁層20は、カールを防止する機能を備えるラベル連続体。」 (2) 対比・判断 本願の請求項1に記載された発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。 後者の「アルミニウムを使用した金属蒸着層」は,前者の「アルミ蒸着層」に相当する。 前者の「蒸着ラベル」は、ラベルが「蒸着層」を有していることに、後者の「びん用ラベル」は、ラベルを貼付する対象物が「びん」であることに、それぞれ主眼をおいて「ラベル」をとらえたものであって、前者のラベルが「瓶」に貼付されること、後者のラベルが「蒸着層」を有していることを考え合わせると、後者の「びん用ラベル」が前者の「蒸着ラベル」に相当することは自明である。 以上のことから,両者は, 〈一致点〉 「紙基材の一方の面に、少なくともアルミ蒸着層、印刷層、オーバーコート層をこの順に設けた蒸着ラベル。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 相違点1 印刷層に関して,本願補正発明では「UVオフセットインキによる印刷層」であるのに対して,刊行物1発明においては,「金属板用UV硬化型インキを使用し平板印刷機による印刷層」である点。 相違点2 本願補正発明において「紙基材の他方の面のみに、カール防止剤層を設け、前記カール防止剤層がカゼインを含」んでいるのに対して,刊行物1発明のラベルは「カール防止剤層」を有するものではない点。 以下、相違点について判断する。 相違点1について 本願補正発明のUVオフセットインキは、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、オフセット印刷に用いられるUVインキであることを限定している以外の技術的意義を理解することができず、オフセット印刷の大半が平版印刷であることを考え合わせると、刊行物1発明で用いられる金属板用UV硬化型インキは平版印刷によって印刷層を形成しているのであるから、相違点1に係る本願補正発明の構成は、刊行物1発明に実質的に記載されているか、刊行物1発明から当業者が容易に想到し得る程度のものである。 相違点2について 刊行物2発明における「カゼインを使用した障壁層20」は,カールを防止する機能を備えるものであるから、「カール防止層」といえる。 そして、本願補正発明が解決しようとする「UVオフセット印刷で用いられるUVニスやUVオフセットインキは塗膜収縮力が大きいため、印刷後の蒸着ラベルをラベル寸法に打ち抜いた後、蒸着ラベルが印刷表面側に紙がカールしてしまうという」という課題は、当該技術分野において周知の課題である。(必要ならば、特開2003-231339号公報の段落【0013】「基材1にパールインキが印刷されると、パールインキ層2内で樹脂分の収縮が生じるので、インキ面を内側にして反り(カール)が生じる。この現象はパールインキが酸化重合型、紫外線硬化型のいずれの場合にも発生するが、一般的に紫外線硬化型インキの方が硬化収縮の度合いが大きく顕著である。」を参照されたい。) とすれば、刊行物1発明の金属板用UV硬化型インキを使用し平板印刷機による印刷層を設けたびん用ラベルにおいて、該ラベルにカールが生じることは、当業者であれば容易に認識しうる課題であり、該課題を解決するために刊行物2発明に記載されたカゼインを使用したカール防止層を用いて、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることに、何ら技術的困難性はなく,適用した結果,格別の作用,効果が生じるとも認められないので,相違点2に係る本願補正発明の構成は,刊行物1発明と刊行物2発明とから,当業者が容易に想到し得たものである。 以上のように,本願補正発明は,刊行物1発明,刊行物2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1発明,刊行物2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-01-25 |
結審通知日 | 2016-01-26 |
審決日 | 2016-02-12 |
出願番号 | 特願2009-224495(P2009-224495) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 砂川 充 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 吉村 尚 |
発明の名称 | 蒸着ラベル付き瓶およびその製造方法 |