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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01Q 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01Q 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q |
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管理番号 | 1313892 |
審判番号 | 不服2015-12307 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-30 |
確定日 | 2016-05-10 |
事件の表示 | 特願2013-227918「自動車用アンテナユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112828、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成25年11月1日(優先権主張 平成24年11月2日)の出願であって,平成26年12月12日付けで拒絶理由が通知され,平成27年2月12日に意見書が提出され,同年3月24日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において同年12月14日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,平成28年2月12日に意見書と手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は,平28年2月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認める。 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「車両のルーフに載置するアンテナユニットであって, ベースプレートの上面に対して垂直に固定された絶縁体からなる支持部と, 前記支持部の側面に対して傾斜する面を有する導電性の平板部と,前記支持部に接触することで前記平板部の位置を規制する腕部とを備える主アンテナ部と,を有し, 前記腕部の前記ベースプレートに対する投影面積は,前記平板部の前記ベースプレートに対する投影面積よりも小さい ことを特徴するアンテナユニット。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1 ・引用文献1 ・備考 引用文献1の図32?35及び段落33に開示されている一対の背面部13eは,本願発明と同様な位置規制用腕部を構成している。 ・請求項2 ・引用文献1 ・備考 引用文献1の図32?35及び段落35の記載によれば,引用文献1記載の傘型アンテナはその上部で垂直支持部を挟持する構成が開示されている。一方,図43には垂直支持部を挟持する従来からの他の構造例が開示されており,挟持構造を従来例のような構造とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 <拒絶の理由を発見しない請求項> 請求項(3?5)に係る発明については,現時点では,拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2012-204996号公報 2 原査定の理由の判断 (1)引用例1の記載事項 上記引用例1には,「アンテナ装置」(発明の名称)に関連して次の事項が図面とともに記載されている。 ア 「【0021】 本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の構成を図1ないし図4に示す。ただし,図1は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す斜視図であり,図2は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す側面図であり,図3は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す上面図であり,図4は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す正面図である。 これらの図に示すように,本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は,車両のルーフに取り付けられるアンテナ装置とされており,アンテナベース11が下面に嵌合されたアンテナケース10を備えている。アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており,先端に行くほど細くなると共に,側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状(「シャークフィン形状」という)とされている。アンテナベース11が下面に嵌合されたアンテナケース10内に,後述するアンテナアセンブリが収納されている。アンテナベース11の下面からはアンテナ装置1を車体に取り付けるためのボルト部21aが突出するよう形成されている。このアンテナ装置1の長さは約151mm,幅が約63mm,高さが約66mmの小型で低姿勢のアンテナ装置とされ,AM放送とFM放送を受信することが可能とされている。 【0022】 本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の内部構成を図5および図6に示す。ただし,図5は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成をA-A断面図で示す側面図であり,図6は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を半断面図で示す斜視図である。なお,図6においては,コイル14を省略して示している。 本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は,AMラジオ帯と,76?90MHzあるいは88?108MHzのFMラジオ帯とを受信できるアンテナ装置とされている。アンテナ装置1は,樹脂製のアンテナケース10と,このアンテナケース10の下面に嵌合されている樹脂製の絶縁ベース20と金属製の導電ベース21とからなるアンテナベース11とを備えている。アンテナベース11において,導電ベース21は絶縁ベース20より一回り小さく長さが短く形成されており,絶縁ベース20上の前側から中央の若干後側までの位置に配置されて,絶縁ベース20に対して導電ベース21の後端が前後に若干移動可能に固着されている。アンテナベース11の上面の中央から後側には,樹脂製の矩形状の枠からなるエレメントホルダー12が立設して取り付けられていると共に,導電ベース21上にアンプ基板16がほぼ水平に取り付けられている。 【0023】 アンテナベース11における導電ベース21の下面からは,アンテナ装置1を車両に取り付けるためのボルト部21aが突出するよう形成されている。このボルト部21aの貫通孔と,その後側に形成されたケーブル引出口から,受信信号等を出力する複数本のケーブルが導出される。エレメントホルダー12は矩形状の枠部から構成され,枠部の上部には傘型エレメント13を支持する挟持部が形成されている。また,エレメントホルダー12の前側の立設している枠の内側に,傘型エレメント13に直列に接続されてFM周波数に共振させるための1μH?3μH程度のコイル14が保持されている。このコイル14の上端から導出されているリード線は傘型エレメント13の端子に接続され,コイル14の下端から導出されているリード線は給電ターミナル15に接続されている。給電ターミナル15は,図示するように折曲されており上部がエレメントホルダー12の前側の立設している枠のコイル14に対向する面に固着されており,下端の端子がアンプ基板16の入力端子に接続されている。これにより,コイル14が直列に接続された傘型エレメント13で受信されたAM/FM受信信号がアンプ基板16に組まれたアンプで増幅されるようになる。なお,傘型エレメント13とコイル14とからなるアンテナは,AMラジオ帯においては非共振アンテナとして動作する。」 イ 「【0033】 次に,傘型エレメント13の構成を示す下面図を図32に示し,傘型エレメント13およびコイル14のエレメントホルダー12への組み付けの態様を示す斜視図を図33に示し,傘型エレメント13をエレメントホルダー12へ組み付けた態様を示す側面図を図34に示し,傘型エレメント13をエレメントホルダー12へ組み付けた態様をF-F断面図で示す正面図を図35に示す。 これらの図に示すように,傘型エレメント13は平坦に形成された頂部13aを有し,この頂部13aから両側に傾斜した屋根状の傾斜部が形成されている。傾斜部のほぼ中央にはスリット13dが一カ所だけ形成されており,スリット13dより前側が第1傾斜部13bとされ,スリット13dより後側が第2傾斜部13cとされている。また,第2傾斜部13cの後端の側縁を折曲した一対の背面部13eが形成されている。第1傾斜部13bが形成されている頂部13aの傾斜角は,第2傾斜部13cが形成されている頂部13aの傾斜角より大きくされている。傘型エレメント13は,所定の形状に切り抜いた薄い金属板を折り曲げることにより形成されており,頂部13bの中央から下方向に伸びる折り返し部13fが形成されている。この折り返し部13fから横方向に端子13gが形成されていると共に,第2傾斜部13cの内側の折り返し部13fにエレメントホルダー12の係合突起12hが係合可能な係合窓が形成されている。 なお,本発明にかかるアンテナ装置1においては,アンテナケース10にボスを設けていないことから,傘型エレメント13とボスとの干渉を防止する必要がなく,傘型エレメント13の形状を簡易とすることができる。」 上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,上記引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「車両のルーフに載置するアンテナ装置1であって, 樹脂製の絶縁ベース20と金属製の導電ベース21とからなるアンテナベース11の上面に立設して取り付けられた樹脂製の矩形状の枠からなるエレメントホルダー12と, 前記エレメントホルダー12の側面に対して傾斜する面を有する導電性の第1傾斜部13b及び導電性の第2傾斜部13cと,背面部13eとを備える傘型エレメント13と, を有するアンテナ装置1。」 (2)対比 本願発明と引用発明とを対比するに, a 引用発明の「樹脂製の絶縁ベース20と金属製の導電ベース21とからなるアンテナベース11」,「樹脂製の矩形状の枠からなるエレメントホルダー12」,「エレメントホルダー12の側面に対して傾斜する面を有する導電性の第1傾斜部13b及び導電性の第2傾斜部13c」は,それぞれ本願発明の「ベースプレート」,「絶縁体からなる支持部」,「支持部の側面に対して傾斜する面を有する導電性の平板部」に含まれる。 b 後述する相違点を除き,引用発明の「傘型エレメント13」は本願発明の「主アンテナ部」に相当する。 c 引用発明の「アンテナ装置1」は「アンテナユニット」といい得る装置である。 そうすると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (一致点) 「車両のルーフに載置するアンテナユニットであって, ベースプレートの上面に対して垂直に固定された絶縁体からなる支持部と, 前記支持部の側面に対して傾斜する面を有する導電性の平板部を備える主アンテナ部と, を有するアンテナユニット。」 (相違点) 一致点の「主アンテナ部」に関し, 本願発明の「主アンテナ部」は,「前記支持部に接触することで前記平板部の位置を規制する腕部」を備え,「前記腕部の前記ベースプレートに対する投影面積は,前記平板部の前記ベースプレートに対する投影面積よりも小さい」のに対し, 引用発明の「傘型エレメント13」は,「背面部13e」を備えるものの,その構成および機能は明らかではない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 引用発明の「背面部13e」に関し,引用例1には図面による開示以外に「また,第2傾斜部13cの後端の側縁を折曲した一対の背面部13eが形成されている。」(段落【0033】)と記載されているのみである。 当該記載及び図面の【図32】の記載によれば,「背面部13e」は第2傾斜部13cの後端に設けられていることが読み取れ,また,図面の【図34】の記載によれば,上記第2傾斜部13cの後端を含む部分はエレメントホルダー12よりも後方(図の左側)にずれてはみ出ていることが読み取れるから,上記「背面部13e」はエレメントホルダー12に接触するものとは認められない。 そうすると,引用発明の「背面部13e」は,エレメントホルダー12に接触することで第2傾斜部13cの位置を規制する部材とはなり得ないことが明らかであるから,本願発明の「前記支持部に接触することで前記平板部の位置を規制する腕部」に相当するものではなく,また,そのような「腕部」を引用発明の「傘型エレメント13」に設けることが当業者にとり容易であるとも認められない。 さらに,本願発明の「前記腕部の前記ベースプレートに対する投影面積は,前記平板部の前記ベースプレートに対する投影面積よりも小さい」という構成も,引用例1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。 (4)小括 したがって,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 また,請求項2ないし5は,いずれも請求項1を直接的または間接的に引用する請求項であるから,当該請求項に係る発明も同様に,引用発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえない。 よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由 A (明確性要件)本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 B (実施可能要件)本件出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 【請求項1】「前記ベースプレートとの対向面積が前記平板部よりも小さい腕部」に関し, 上記記載では,「腕部とベースプレートとの対向面積」が「平板部の面積」よりも小さいと解される。 いっぽう,明細書には「何れの場合においても,個々の腕の車両ルーフとの対向面積は,ルーフ等との間に生じる無効容量を低減するために,平板部の車両ルーフに対する対向面積よりも狭い必要がある。」(段落【0016】)と記載されているが,「車両ルーフ」と「ベースプレート」がほぼ同位置にあることを参酌すると,上記段落【0016】の記載は「腕とベースプレートとの対向面積」は「平板部のベースプレートに対する対向面積」よりも小さいと解される。 そうすると,【請求項1】の「前記ベースプレートとの対向面積が前記平板部よりも小さい腕部」の記載では,「腕とベースプレートとの対向面積」を何と比較しているのかが不明瞭である(明確性要件違反)。 請求項1を引用する請求項2?5についても同様である。 また,そもそも上記段落【0016】の「平板部の車両ルーフに対する対向面積」の記載では「対向面積」の定義が不明瞭であるが,「無効容量を低減するために」と記載されていることから「平板部の車両ルーフに対する対向面積」は無効容量を決定する要因であることが窺えるものの,「平板部」は「車両ルーフ」に対して傾斜して配置されており,両者間の無効容量を決定する「平板部の車両ルーフに対する対向面積」が平板部のどの部分の面積を指すのかが不明である。 したがって,発明の詳細な説明には,【請求項1】「前記ベースプレートとの対向面積が前記平板部よりも小さい腕部」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない(実施可能要件違反)。 2 当審拒絶理由の判断 (1)平成28年2月12日に提出された手続補正書による手続補正によって,補正前の請求項1の「前記支持部に接触することで前記平板部の位置を規制し,前記ベースプレートとの対向面積が前記平板部よりも小さい腕部」は,「前記支持部に接触することで前記平板部の位置を規制する腕部」であって「前記腕部の前記ベースプレートに対する投影面積は,前記平板部の前記ベースプレートに対する投影面積よりも小さい」と補正された。 これにより,「前記腕部の前記ベースプレートに対する投影面積」と「前記平板部の前記ベースプレートに対する投影面積」とを比較していることが明確になった。 よって,当審拒絶理由Aは解消した。 (2)平成28年2月12日に提出された手続補正書による手続補正によって,補正前の請求項1および明細書の段落【0016】の「との対向面積」が「に対する投影面積」と補正された。 これにより,本願の発明の詳細な説明は,本願の請求項1ないし5に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとなった。 よって,当審拒絶理由Bは解消した。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-04-19 |
出願番号 | 特願2013-227918(P2013-227918) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01Q)
P 1 8・ 537- WY (H01Q) P 1 8・ 536- WY (H01Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 角田 慎治 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
坂本 聡生 新川 圭二 |
発明の名称 | 自動車用アンテナユニット |
代理人 | 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ |