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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61F |
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管理番号 | 1314334 |
異議申立番号 | 異議2015-700162 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-11-10 |
確定日 | 2016-04-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5717672号「吸収性物品」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5717672号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5717672号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成24年2月29日に特許出願され、平成27年3月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人荒井夏代により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年1月13日付けで取消理由を通知し、平成28年3月18日付けで意見書が提出され、平成28年4月7日付けで特許異議申立人より上申書が提出されたものである。 2.本件発明 本件請求項1ないし10に係る発明は、以下のとおりである。 【請求項1】 液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記液透過性のトップシート及び液不透過性のバックシートの間の吸収体とを有する吸収性物品であって、 前記液透過性のトップシートが、肌当接面に、凸部と、凹部とを含む凹凸構造を有し、 そして 前記液透過性のトップシートが、排泄口当接域において、少なくとも前記凸部に、40℃における0.01?80mm^(2)/sの動粘度と、0.01?4.0質量%の抱水率と、1,000未満の重量平均分子量とを有する血液滑性付与剤を含む、 ことを特徴とする、前記吸収性物品。 【請求項2】 前記血液滑性付与剤が、0.00?0.60のIOBをさらに有する、請求項1に記載の吸収性物品。 【請求項3】 前記血液滑性付与剤が、次の(i)?(iii)、 (i)炭化水素、 (ii) (ii-1)炭化水素部分と、(ii-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び (iii) (iii-1)炭化水素部分と、(iii-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii-3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、 並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、 ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない、 請求項1又は2に記載の吸収性物品。 【請求項4】 前記血液滑性付与剤が、次の(i’)?(iii’)、 (i’)炭化水素、 (ii’) (ii’-1)炭化水素部分と、(ii’-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び (iii’) (iii’-1)炭化水素部分と、(iii’-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’-3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、 並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、 ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない、 請求項1?3のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項5】 前記血液滑性付与剤が、次の(A)?(F)、 (A) (A1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2?4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル、 (B) (B1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2?4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル、 (C) (C1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2?4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル、 (D)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、エーテル結合(-O-)、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、及びカーボネート結合(-OCOO-)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物、 (E)ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル、及び (F)鎖状炭化水素、 並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1?4のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項6】 前記血液滑性付与剤が、(a_(1))鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a_(2))鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a_(3))鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b_(1))鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b_(2))鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b_(3))鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c_(1))4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c_(2))3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c_(3))2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d_(1))脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d_(2))ジアルキルケトン、(d_(3))脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d_(4))ジアルキルカーボネート、(e_(1))ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコール、(e_(2))ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e_(3))ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、及び(f_(1))鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1?5のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項7】 前記液透過性のトップシートが、肌当接面に、複数の畝部と、複数の溝部とを含む畝溝構造を有し、少なくとも前記畝部が、前記血液滑性付与剤を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項8】 前記液透過性のトップシートが、少なくとも前記液透過性のトップシートを圧搾することにより形成された圧搾部を有する、請求項1?7のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項9】 前記液透過性のトップシートが、不織布又は織布であり、前記血液滑性付与剤が、前記不織布又は織布の繊維の表面に付着している、請求項1?8のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項10】 生理用ナプキン又はパンティーライナーである、請求項1?9のいずれか一項に記載の吸収性物品。 3.取消理由の概要 当審において、請求項1ないし10に係る特許に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 甲1.特表2010-533535号公報 甲2.米国特許第5968025号明細書 甲3.特開2011-110122号公報 甲4.特開2003-192563号公報 甲5.特表2009-531121号公報 取消理由1:甲1に、甲2、3を適用し容易。 取消理由2:甲1に、甲4、3を適用し容易。 取消理由3:甲1に、甲5、3を適用し容易。 4.甲1の記載 甲1には、本件請求項1に照らすと、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記液透過性のトップシート及び液不透過性のバックシートの間の吸収体とを有する吸収性物品であって、 前記液透過性のトップシートが、肌当接面に、凸部と、凹部とを含む凹凸構造を有し、 そして 前記液透過性のトップシートが、排泄口当接域において、少なくとも前記凸部に、ローションを含む、 前記吸収性物品。」 5.判断 (1)総論 請求項1に係る発明と甲1発明とを対比すると、トップシートの排泄口当接域において、凸部に含まれるものが、請求項1に係る発明は、「40℃における0.01?80mm^(2)/sの動粘度と、0.01?4.0質量%の抱水率と、1,000未満の重量平均分子量とを有する血液滑性付与剤」であるが、甲1発明は、「ローション」である点で相違する。 相違点について検討する。 請求項1に係る発明の「血液滑性付与剤」は、本件明細書の段落0030?0032の記載からみて、経血との親和性を有し経血とともに凹部に滑落し吸収体への迅速な移行のためのものである。そのため、その適用部位も、トップシートの「排泄口当接域」に特定されている。 甲1発明の「ローション」は、甲1の段落0148?0149の記載からみて、エモリエント(皮膚軟化剤)及び固定化剤を必須成分として含み、スキンケア、皮膚の快適性のためのものであり、親水性界面活性剤は任意成分である。 すなわち、甲1発明の「ローション」と、請求項1に係る発明の「血液滑性付与剤」とは、技術的意義が異なる。 そして、請求項1に係る特許に対して通知した取消理由1ないし3は、甲1発明に、それぞれ、甲2、甲4、甲5を適用し容易というものであったから、以下、検討する。 (2)取消理由1:甲2の適用について 甲2には、エモリエントとして、甲2の第11欄4?31行に示されるごとく、多くの例示がある。 甲1発明の「ローション」を、甲2記載の「ミリスチン酸イソプロピル」に置き換え、請求項1に係る発明とするには、特別な動機が必要と解されるところ、そのような動機を見出すことはできない。 (3)取消理由2:甲4の適用について 甲4には、エモリエントとして、甲4の段落0009に示されるごとく、多くの例示がある。 甲1発明の「ローション」を、甲4記載の「パールリーム6」、「ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール」、又は「トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル」に置き換え、請求項1に係る発明とするには、特別な動機が必要と解されるところ、そのような動機を見出すことはできない。 (4)取消理由3:甲5の適用について 甲5には、エモリエントとして、甲5の段落0046に示されるごとく、多くの例示がある。 甲1発明の「ローション」を、甲5記載の「シトロネロール」に置き換え、請求項1に係る発明とするには、特別な動機が必要と解されるところ、そのような動機を見出すことはできない。 (5)小括 よって、取消理由1ないし3のいずれによっても、請求項1に係る発明について、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 (6)請求項2ないし10に係る発明について 請求項2ないし10に係る発明は、いずれも請求項1を引用しており、請求項1に係る発明の構成を全て含む。 よって、同様の理由により、請求項2ないし10に係る発明について、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 6.むすび したがって、上記取消理由1ないし3によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことができない。 また、他に請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-04-21 |
出願番号 | 特願2012-44354(P2012-44354) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 笹木 俊男 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
山田 由希子 千葉 成就 |
登録日 | 2015-03-27 |
登録番号 | 特許第5717672号(P5717672) |
権利者 | ユニ・チャーム株式会社 |
発明の名称 | 吸収性物品 |
代理人 | 蛯谷 厚志 |
代理人 | 奥野 剛規 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 藤本 健治 |
代理人 | 上野 美紀 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 鈴木 康義 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 鈴木 啓靖 |
代理人 | 出野 知 |
代理人 | 小野田 浩之 |
代理人 | 胡田 尚則 |