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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C07D |
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管理番号 | 1314623 |
審判番号 | 訂正2016-390030 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2016-02-26 |
確定日 | 2016-04-28 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5721706号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5721706号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5721706号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2010年6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年12月18日及び2009年6月17日 いずれも米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成27年4月3日にその特許権の設定登録がされ、同年11月11日に訂正審判(訂正2015-390124)の請求がされ、同請求について平成28年2月15日付けで 「平成27年11月11日付け本件訂正審判請求において、特許第5721706号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5、8?9かならる一群の請求項、請求項6について訂正することを認める。 請求項7に係る訂正についての審判請求は成り立たない。」 との審決がされ、さらに平成28年2月26日に本件訂正審判が請求されたものである。 第2 本件審判請求の内容 1 審判請求の趣旨 本件審判請求の趣旨は、特許第5721706号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを認める、との審決を求めるものである。 2 訂正の内容 請求項7についての訂正の内容は次のとおりである。 [訂正事項1] 特許請求の範囲の請求項7に記載される式1070の化合物: 【化494】 を、式1070の化合物: 【化494】 に訂正する。 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項7に記載される式: 【化495】 を、式: 【化495】 に訂正する。 [訂正事項3] 特許請求の範囲の請求項7に記載される式: 【化497】 を、式: 【化497】 に訂正する。 第3 本件審判請求に対する当審の判断 1 訂正の目的について 訂正事項1?3は、それぞれ、請求項7に記載された【化494】、【化495】、【化497】で表される化合物について、ピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環との間の結合を上記第2の2の[訂正事項1]?[訂正事項3]に記載したとおりに訂正するものであるところ、いずれの訂正事項についても、それら訂正によって、上記ピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環の間の立体配置の限定がなかったのが、限定されることとなるから、いずれの訂正事項についても特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 2 新規事項の有無について 願書に添付した特許請求の範囲の請求項7には次の記載がある。 「【請求項7】 式1070の化合物: 【化494】 、またはその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、 i)式: 【化495】 の化合物を式 【化496】 の化合物と反応させ、式: 【化497】 の化合物を形成するステップと、 ii)トシル基を脱保護し、メチルエステル基を脱エステル化して、式1070の化合物を形成するステップとを含む、方法。」 訂正事項1?訂正事項3は、上記願書に添付した特許請求の範囲の請求項7に記載の【化494】、【化495】、【化497】で表される化合物について、ピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環との間の立体配置を特定するものであるから、この点について検討する。 願書に添付した明細書には、 「【1020】 (1070)(2S,3S)-3-((2-(5-フルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イル)アミノ)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸 【化385】 化合物1070は、化合物946および947の上記と同様の様式で作製した。」との記載があり、【表3ー08】には化合物1070の薬理学的試験、LCMS、NMRのデータが記載されているから、上記【化385】で表される式1070の化合物は願書に添付した明細書に記載された化合物であるといえるところ、該式1070の化合物は、訂正事項1に係る訂正後の【化494】で表される式1070の化合物と同一の化合物である。 また、請求項7に係る発明について、各ステップにおける反応において立体配置が保持されるのであれば、目的化合物である式1070の化合物を製造するために、その原料として訂正事項2に係る訂正後の【化495】で表される化合物を用いること、訂正事項3に係る訂正後の【化497】で表される化合物が形成されることは自明である。 そして、請求項7に係る発明の方法に関し、願書に添付した明細書には以下の記載がある。 a)「【0025】 ・・・ (項目154) 構造式(IA) 【化482】 により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、 i)化合物A 【化483】 を、化合物B 【化484】 と反応させ、構造式(XX) 【化485】 により表される化合物を形成するステップと、 ii)任意に、前記構造式(XX)の化合物のTs基を脱保護し、前記構造式(IA)の化合物を形成するステップと、を含み、 構造式(IA)および(XX)、ならびに化合物(A)および(B)の変数は、独立して、項目71?143のいずれか1項に定義される通りであり、 Tsはトシルである、方法。」 b)「(項目71) 構造式(IA) 【化456】 により表される化合物か、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、 Z^(1)は、-R^(*)、-F、・・・であり、 Z^(2)は、-R^(*)、・・・であり、 Z^(3)は、-H、・・・であって、・・・ R^(1)は、-H、・・・-S(O)_(2)-R’’・・・であり、 R^(2)は、-H;・・・であり、 R^(3)は、-H、-Cl、-F、・・・であり、 R^(4)は、 【化457】 環Aは、1つ以上のJ^(A)のインスタンスで任意にさらに置換されるC_(3)-C_(10)非芳香族炭素環、・・・であり、・・・ J^(A)・・・のそれぞれは、独立して、・・・Q^(1)-R^(5)から成る群より独立して選択されるか、・・・ Q^(1)は、独立して、結合、-O-、・・・、-CO_(2)-、・・・であり、 Q^(2)は、独立して、結合、-O-、・・・、-CO_(2)-、・・・であり、 ・・・ R^(5)は、i)-H、ii)1つ以上のJ^(C1)のインスタンスで任意に置換されるC_(1)-C_(6)脂肪族基、・・・であるか、あるいは ・・・ R^(8)およびR^(9)は、それぞれ、独立して、-H、・・・、ヒドロキシ、・・・、カルボキシ、・・・であるか、・・・ R^(11)、R^(12)、R^(13)、およびR^(14)は、それぞれ、独立して、-H、・・・、ヒドロキシ、・・・、カルボキシ、・・・であり、 ・・・ R^(*)は、独立して、i)-H、・・・であり、 ・・・ nおよびmは、環AおよびBが3?6員である場合、それぞれ、独立して、0または1であり、nおよびmは、環AおよびBが7?10員である場合、それぞれ、独立して、0、1、または2であり、 ・・・ xおよびyは、それぞれ、独立して、0、1、または2であり、 ・・・ zは、1または2であるが、 但し、・・・各Q^(2)およびQ^(3)が、独立して、結合である場合、R^(5)は、-HまたはC_(1)-C_(6)脂肪族基のいずれでもないことを条件とする、化合物。」 c)「【0282】 「脂環式」(または「炭素環」、または「カルボシクリル」、または「炭素環式」)とは、飽和され得る環系のみを含有するか、または1つ以上の不飽和の単位を含有し、3?14個の環炭素原子を有する、非芳香族炭素を指す。いくつかの実施形態において、炭素原子の数は、3?10個である。他の実施形態において、炭素原子の数は、4?7個である。また他の実施形態において、炭素原子の数は、5?6個である。本用語は、単環式、二環式、または多環式の縮合、スピロ、または架橋された炭素環式環系を含む。本用語は、炭素環式環が、1つ以上の非芳香族の炭素環式環もしくは複素環式環、または1つ以上の芳香族環、またはそれらの組み合わせに「縮合」され得る多環式環系も含み、ラジカルまたは結合点は、炭素環式環上にある。「縮合された」二環式環系は、2個の隣接する環原子を共有する2つの環を含む。架橋された二環式基は、3個、または4個の隣接する環原子を共有する2つの環を含む。」 願書に添付した明細書には、上記摘示a?cで示した調製方法を含む方法に相当する方法と解されるものとして具体的に以下の記載がある。 「一般的スキーム31: 【化332】 (a)2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン、アセトニトリル/イソプロパノール、還流、1.5時間。(b)5-クロロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、Pd(PPh_(3))_(4)、2M Na_(2)CO_(3)、アセトニトリル、120℃ マイクロ波 15分間、(c)TBAF、THF。 【0883】 (1R,2S,3S)-3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(31b)の形成。 ・・・ 【0884】 (1R,2S,3S)-3-(2-(5-クロロ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(31c)の形成。 アセトニトリル(6mL)中の5-クロロ-1-(p-トリルスルホニル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピロロ[2,3-b]ピリジン(0.22g、0.51mmol)および(1R,2S,3S)-3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオールである31b(0.08g、0.24mmol)の脱酸素化した溶液に、2M 炭酸ナトリウム(0.45mLの2M溶液、0.894mmol)およびPd(PPh_(3))_(4)(34.5mg、0.030mmol)を添加した。反応物を密閉し、マイクロ波中で、120℃まで15分間加熱した。反応物をEtOAcで希釈し、フロリジルを通して濾過した。溶液を粗製物になるまで濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM?20% MeOH/DCM)によって精製して、ピンク色固体として、化合物31c(0.11g)を得た。 LCMS滞留時間=3.8(M+1)532.2、(M-1)530.2。 【0885】 (1R,2S,3S)-3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(632)の形成。 THF中の(1R,2S,3S)-3-(2-(5-クロロ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオールである31c(0.11g、0.21mmol)の溶液に、TBAF(0.23g、0.84mmol)を添加した。反応物を室温で1時間熟成させ、1NのHCl(1mL)で反応停止させ、逆相クロマトグラフィー(5?70% MeCN/0.1% TFA入りのH_(2)O)によって精製した。生成物を、SPE重炭酸塩のカートリッジ上で脱塩し、濃縮乾固し、次いで、MeOHで粉砕して、18mgの化合物632を得た。 ^(1)H NMR(300MHz,MeOH-d4)δ8.42(s,1H)、7.90(s,1H)、7.82(s,1H)、7.70(s,1H)、4.15(m,1H)、3.95(m,1H)、3.70(m,1H)、1.75(m,5H)、1.50(m,1H)ppm。 LCMS滞留時間=3.0(M+1)378.2、(M-1)376.0。 一般的スキーム32: 【化333】 (a)2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン、アセトニトリル、イソプロパノール、還流 1.5時間。(b)5-クロロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、Pd(PPh_(3))_(4)、2M Na_(2)CO_(3)、アセトニトリル、120℃ マイクロ波、15分間、(c)TBAF、THF 【0886】 (1S,2S,3S)-3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(32b)の形成。 ・・・ 【0887】 (1S,2S,3S)-3-(2-(5-クロロ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(32c)の形成。 化合物32b(0.03g、0.11mmol)を使用することを除いては、化合物31cの方法に従って、化合物32c(0.06g、0.11mmol)を得た。 LCMS滞留時間=3.9(M+1)532.2、(M-1)530.3。 【0888】 (1S,2S,3S)-3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(615)の形成。 化合物32c(0.06g、0.11mmol)を使用することを除いては、化合物624の方法に従って、白色固体として、化合物615(0.015g、0.035mmol)を得た。 ^(1)H NMR(300MHz,MeOH-d4)δ8.83(s,1H)、8.51(s,1H)、8.40(s,1H)、8.30(s,1H)、4.00(bs,2H)、0.60-0.90(m,4H)、0.50(m,2H)ppm. LCMS滞留時間=3.7(M+1)378.3、(M-1)376.3。 一般的スキーム33 【化334】 (a)2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン、アセトニトリル、イソプロパノール、還流 1.5時間。(b)5-クロロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、Pd(PPh_(3))_(4)、2M Na_(2)CO_(3)、アセトニトリル、120℃ マイクロ波、15分間、(c)TBAF、THF。 【0889】 (1R,2R,3S)-3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(33b)の形成。 ・・・ 【0890】 (1R,2R,3S)-3-(2-(5-クロロ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(33c)の形成。 化合物33b(0.07g、0.26mmol)を使用することを除いては、化合物31cの方法に従って、化合物33c(0.008g、0.015mmol)を得た。溶媒として、アセトニトリルではなく、DMEを使用した。 LCMS滞留時間=4.2(M+1)532.3,(M-1)530.3。 【0891】 (1R,2R,3S)-3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)シクロヘキサン-1,2-ジオール(625)の形成。 化合物33c(0.008g、0.015mmolを使用することを除いては、化合物624の方法に従って、化合物625(0.005g、0.012mmol)を得た。 ^(1)H NMR(300MHz,MeOH-d4)δ8.80(s,1H)、8.48(s,1H)、8.40(s,1H)、8.20(s,1H)、4.5(m,1H)、3.55(m,2H)、2.12(m,2H)、1.95(m,1H)、1.61(m,2H)、1.58(m,1H)ppm。 LCMS滞留時間=2.4(M+1)378.2、(M-1)376.2。」 そして、一般的スキーム31は、上記摘示a?cの化合物A及び化合物XXにおいて、Z^(1)=-F、Z^(2)=-R^(*)、R^(*)=-H、R^(4)=(1R、2S、3S)-1,2-ジヒドロキシ-シクロヘキサン-3-イル(R^(4)が【化457】の最初の基、環Aがシクロヘキサン環、R^(5)=R^(8)=R^(9)=-H、Q^(1)=Q^(2)=-O-、n=x=0)、化合物B及び化合物XXにおいて、R^(2)=-H、R^(3)=-Cl、Z^(3)=-Hである化合物についてのものであり、一般的スキーム32は、上記R^(4)がR^(4)=(1S、2S、3S)-1,2-ジヒドロキシ-シクロヘキサン-3-イルである以外は一般的スキーム31と同様の化合物、一般的スキーム33は上記R^(4)がR^(4)=(1R、2R、3S)-1,2-ジヒドロキシ-シクロヘキサン-3-イルである以外は一般的スキーム31と同様の化合物についてのものである。 一方、訂正事項1?訂正事項3に係る訂正後の請求項7に係る発明の方法は、上記摘示a?cの化合物A及び化合物XXにおいて、Z^(1)=-F、Z^(2)=-R^(*)、R^(*)=-H、R^(4)=(2S、3S)-2-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル(R^(4)が【化457】の最初の基、環Aがビシクロ[2.2.2]オクタン環、R^(5)=メチル、R^(8)=R^(9)=-H、Q^(2)=-CO_(2)-、n=x=0)、化合物B及び化合物XXにおいて、R^(2)=-H、R^(3)=F、Z^(3)=-Hである化合物についてのものである。 したがって、摘示a?cに記載された方法について、一般的スキーム31?33に係る化合物と訂正事項1?訂正事項3に係る訂正後の請求項7に係る発明の方法に係る化合物は、願書に添付した明細書に同様に適用できるものとして記載されている。 ここで、上記スキーム31?33に記載された反応は、いずれもシクロアルカンに結合する各基の立体配置が特定されたピリミジン-3-イル-アミノ-シクロアルカン構造を有する化合物と1-(p-トリルスルホニル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピロロ[2,3-b]ピリジン構造を有する化合物を反応させて、立体配置を保持した(2-(1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-ピリミジン-4-イルアミノ)シクロアルカン構造を有する化合物を生成し、さらに、立体配置を保持したままトシル基を脱離させる反応である。 そして、訂正事項1?訂正事項3に係る訂正後の請求項7に係る発明において、【化495】の化合物を【化496】の化合物と反応させ、【化497】の化合物を形成し、さらにトシル基を脱保護する点については、これと同様の反応であるから、当該反応について立体配置を保持したまま反応することは願書に添付した明細書に記載されているに等しい事項であるといえる。 さらに、願書に添付した明細書には、以下の記載がある。 「一般的スキーム53 【化382】 (a)H_(2)、Pd-C、MeOH、(b)Na_(2)CO_(3)、THF-CH_(3)CN、135℃、(c)NaOMe、MeOH、DCM、(d)NaOH、MeOH、THF。 【1014】 (+/-)-2,3-トランス-メチル3-ニトロビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボキシレート(53a)の形成 ・・・ 【1017】 (+/-)-2,3-トランス-エンド-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d)および (+/-)-2,3-トランス-エキソ-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d) MeOH(3mL)およびCH_(2)Cl_(2)(1mL)中のトランス-エンド-およびトランス-エキソ-メチル3-(2-(5-クロロ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレートである53c(0.18g、0.31mmol)の溶液に、NaOMe(3mLの25%w/v、13.88mmol)を添加した。90秒間後、NH_(4)Cl溶液(5mL)を添加して、反応を停止させた。混合物をNH_(4)Cl水溶液(半飽和)とEtOAcに分配した。水層を再抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na_(2)SO_(4)上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO_(2)、0?15% MeOH-DCM、勾配)により、混合物として、所望の生成物を得た。(白色固体):112mgの1H NMRは、所望の生成物が、エンドおよびエキソ異性体の混合物(エンド:エキソ=84 :16)として存在することを示し、これを加水分解ステップに進めた。 (+/-)-2,3-トランス-エキソ-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d):副異性体(エキソ):LC/MS(方法:m117)滞留時間=3.17分間、(M+H)416.27。 (+/-)-2,3-トランス-エンド-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d):主異性体(エンド):LC/MS(方法:m117)滞留時間=3.49分間、(M+H)416.27。 【化383】 【1018】 (946)(+/-)-2,3-トランス-エンド-3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸および (947)(+/-)-2,3-トランス-エキソ-3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸 THF(0.60mL)およびMeOH(0.10mL)中の、出発メチルエステルである53d(0.076g、0.183mmol)(84:16=エンド:エキソ)の撹拌した溶液に、NaOH(0.10mLの2M、0.201mmol)を添加した。反応の進行をTLCによってモニターした。30分間後、さらにNaOH(0.18mLの2M溶液、0.37 mmol)およびMeOH(0.18mL)を添加した。混合物を、室温でさらに16時間撹拌した。混合物をHCl(1M)で中和させ、真空中で濃縮した。分取HPLCによる精製により、塩酸塩として、52mgの主異性体(946)および11mgの副異性体(947)を得た。 (946)主(エンド)異性体:^(1)H NMR(300MHz,MeOD)δ8.82(d,J=2.2Hz,1H)、8.48(s,1H)、8.39(d,J=2.2Hz,1H)、8.31(d,J=5.6Hz,1H)、5.11(m,1H)、2.85(br s,1H)、2.68(br s,1H)、2.62(d,J=4.8Hz,1H)、1.92(d,J=10.1Hz,1H)、および1.77-1.51(m,5H)ppm;LC/MS滞留時間=3.51、(M+H)402.32。 (947)副(エキソ)異性体:^(1)H NMR(300MHz,MeOD)δ8.87(d,J=2.1Hz,1H)、8.48(s,1H)、8.39(d,J=1.9Hz,1H)、8.30(d,J=5.7Hz,1H)、4.73(d,J=3.3Hz,1H)、3.12(m,1H)、2.76(br s,1H)、2.56(d,J=4.2Hz,1H)、1.86(d,J=9.5Hz,2H)、1.79-1.49(複合体 m,2H)、および1.51(組み込み d,J=10.4Hz,2H)ppm;LC/MS滞留時間=3.42、(M+H)402.32。 ・・・ 【1020】 (1070)(2S,3S)-3-((2-(5-フルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イル)アミノ)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸 【化385】 化合物1070は、化合物946および947の上記と同様の様式で作製した。」 この記載によれば、化合物1070は化合物946と同様に製造されるところ、化合物946は、ビシクロアルカン環の置換基の立体配置を保持したまま、対応する化合物(化合物53c)のトシル基を脱離させ化合物53dを生成した後、ビシクロアルカン環に結合するメチルオキシカルボニル基をカルボキシル基とするものであるから、化合物1070についても立体配置を保持した同様の反応(トシル基を脱離させる反応、すなわちトシル基を脱保護する反応、及びビシクロアルカン環に結合するメチルオキシカルボニル基をカルボキシル基とする反応、すなわちメチルエステル基を脱エステル化する反応)により製造されることが記載されているといえる。 以上のことから、訂正事項1?訂正事項3に係る訂正後の請求項7に係る発明は、願書に添付した明細書に記載されているに等しい事項であるといえる。 したがって、訂正事項1?訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。 3 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無及び独立特許要件について 訂正事項1?訂正事項3について、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、これら訂正事項に係る訂正後における請求項7に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由はない。 4 まとめ したがって、訂正事項1?訂正事項3は、いずれも、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。 第4 むすび 以上のとおりであるから、請求項7に係る訂正事項1?訂正事項3は、いずれも、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものであるから、請求項7について訂正することを認める。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 式: 【化489】 の化合物またはその薬学的に許容される塩。 【請求項2】 請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体、アジュバント、もしくはビヒクルを含む、薬学的組成物。 【請求項3】 生体外の生物学的試料中におけるインフルエンザAウイルスの量を減少させる方法であって、前記生物学的試料に有効量の請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩あるいは請求項2に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。 【請求項4】 患者におけるインフルエンザAウイルスを減少させる薬剤の製造のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。 【請求項5】 患者におけるインフルエンザAウイルス感染を低下させる薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。 【請求項6】 式1070の化合物: 【化490】 、またはその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、 i)式: 【化491】 を有する化合物を 【化492】 と反応させ、式: 【化493】 を有する化合物を形成するステップと、 ii)トシル基を脱保護し、メチルエステル基を脱エステル化して、式1070の化合物を形成するステップとを含む、方法。 【請求項7】 式1070の化合物: 【化494】 、またはその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、 i)式: 【化495】 の化合物を式 【化496】 の化合物と反応させ、式: 【化497】 の化合物を形成するステップと、 ii)トシル基を脱保護し、メチルエステル基を脱エステル化して、式1070の化合物を形成するステップとを含む、方法。 【請求項8】 患者におけるインフルエンザAウイルスを減少させるための組成物であって、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、組成物。 【請求項9】 患者におけるインフルエンザAウイルス感染を低下させるための組成物であって、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2016-03-24 |
結審通知日 | 2016-03-28 |
審決日 | 2016-04-18 |
出願番号 | 特願2012-516299(P2012-516299) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(C07D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 近藤 政克 |
特許庁審判長 |
中田 とし子 |
特許庁審判官 |
冨永 保 辰己 雅夫 |
登録日 | 2015-04-03 |
登録番号 | 特許第5721706号(P5721706) |
発明の名称 | インフルエンザウイルス複製の阻害剤 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 森下 夏樹 |