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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1315363
審判番号 不服2015-19123  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-23 
確定日 2016-06-21 
事件の表示 特願2013-250674「タッチペン、タッチペンを認識する電子装置及びその運用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月25日出願公開、特開2014-154140、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月4日(優先権主張、2013年2月7日、韓国)を出願日とする出願であって、平成27年6月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年10月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項8を
「外部に露出され、磁界の周波数変化をもとに操作可能に設置されるボタン手段を有するタッチペンを含む電子装置の制御方法において、
前記前記ボタン手段は、前記タッチペンの取手部分に一部が露出されたスライディングキーボタンを含んでおり、
前記スライディングキーボタンが、前記タッチペンの長手方向にスライディング動作が行われると、前記タッチペンが前記スライディング動作に応じた前記周波数の前記磁界を発生させる過程と、
前記タッチペンが入力された場合、タッチペンから放射される磁界の周波数を確認する過程と、
データテーブルを参照し、前記確認された周波数に対応する図形属性を抽出する過程と、
前記周波数に対応する図形属性に応じた図形を出力する過程と、
を含む方法。」から、
「外部に露出され、磁界の周波数変化をもとに操作可能に設置されるボタン手段を有するタッチペンを含む電子装置の制御方法において、
前記前記ボタン手段は、前記タッチペンの取手部分に一部が露出されたスライディングキーボタンを含んでおり、
前記スライディングキーボタンが、前記タッチペンの長手方向にスライディング動作が行われると、前記タッチペンが前記スライディング動作に応じた前記周波数の前記磁界を発生させる過程と、
前記タッチペンが入力された場合、タッチペンから放射される磁界の周波数を確認する過程と、
データテーブルを参照し、前記確認された周波数に対応する図形の大きさを抽出する過程と、
前記周波数に対応する図形の大きさの図形を出力する過程と、
を含む方法。」(下線は変更箇所を示す。)と変更する補正事項を含むものである。

2.補正の適否
上記補正事項の「周波数に対応する図形属性」を「周波数に対応する図形の大きさ」とし、「周波数に対応する図形属性に応じた図形を出力する」を「周波数に対応する図形の大きさの図形を出力する」とする補正は、「図形属性」を、その下位概念である「図形の大きさ」に限定するものであり、補正前の請求項8に記載された発明と補正後の請求項8に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の前記請求項8に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用した特開平5-233126号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は、当審において注目する部分を示す。)
「【0008】本発明は前述した従来の問題点に鑑み、複数の筆圧情報を入力し得るとともに、筆圧を検出するレンジを小さくすることなく、しかも位相角に対する筆圧情報を簡単に補正し得る座標入力装置を提供することを目的とする。
・・・中略・・・
【0010】
【作用】本発明の請求項1によれば、電波発生手段より複数の周波数の電波が発生すると、該電波のうち、スイッチ操作に応じて決定された位置指示器の同調回路の同調周波数に一致した周波数の電波のみ、該同調回路に同調、即ち受信されるが、該電波を受信した同調回路は同様な電波を発信、即ち反射する。反射された電波は電波検出手段で受信されるが、該受信された電波は座標検出手段に送出されて位置指示器による指示位置の座標値が検出され、また、位相角検出手段に送出されて位置指示器に加わる筆圧に応じた位相角が検出され、さらにまた、同調周波数判定手段にて位置指示器のスイッチ操作に応じて決定された同調周波数が判定される。また、請求項2によれば、モ-ド設定手段により同調周波数の判定結果に従う入力モ-ドに切替え設定される。」

「【0011】
【実施例】図1は本発明の座標入力装置の一実施例を示すもので、図中、1は位置検出装置、2は位置指示器、3はホストコンピュータ、4は表示装置である。
【0012】位置検出装置1は、所定の位置検出面1a上で操作される位置指示器2の同調回路に対して後述する予め設定された複数、ここでは3つの周波数の電波を送受信し、指示位置のx及びy座標値、位相角並びに実際に電波を受信した周波数、即ち同調周波数を検出し、これらをホストコンピュータ3に転送する如くなっている。なお、この位置検出装置1としては出願人の出願にかかる特願平1-282852号(特開平3-147012号公報参照)の位置検出装置を用いるものとする。
【0013】図2は位置指示器2の具体的な構成を示すもので、図中、21は筐体、22は芯体、23はコイル、24は可変容量コンデンサ、25は基板、26,27はスイッチユニット、28,29,30はコンデンサである。
【0014】筐体21は合成樹脂等の非金属素材からなる全体略ペン軸型をなしたもので、その先端側には芯体22を挿通し得る透孔が設けられている。芯体22は合成樹脂又はセラミックス等の非金属素材からなるもので、その一端22aが筐体21の透孔より外部に突出する如く収納されている。
【0015】コイル23は芯体22を摺動自在に挿通し得る透孔を備えたフェライトコア上に高周波抵抗の少ないリッツ線を巻回してなるもので、筐体21の先端部と可変容量コンデンサ24との間に保持されている。
【0016】可変容量コンデンサ24はハウジングと一体的に構成され、外部から加わる圧力又は変位に応じてその容量値がほぼ連続的に変化、ここでは増加するもので、出願人の出願にかかる特願平2-206774号に記載されたものが適当であるが、これに限られるものではない。該可変容量コンデンサ24には芯体22の一端22aが位置検出面1a等に押し付けられるとその他端を介して押圧力が加わる如くなっている。
【0017】基板25はスイッチユニット26及びコンデンサ28?30を搭載するとともに可変容量コンデンサ24及びコイル23の位置を固定するためのもので、その一側は可変容量コンデンサ24に固定され、他側はスイッチユニット27を介して筐体21の底部に当接する如くなっている。
【0018】スイッチユニット26は筐体21の外部に突出した操作部26aを押圧することによりオン動作する如くなっている。また、スイッチユニット27は筐体21の外部に突出した操作部27aをその先端に取付けたキャップ31を介して押圧することによりオン動作する如くなっている。
【0019】コンデンサ28?30は周知のチップコンデンサであり、図3に示すようにコンデンサ28は可変容量コンデンサ24とともにコイル23に接続され、また、コンデンサ29はスイッチユニット26を介してコンデンサ28と並列に接続され、さらにまた、コンデンサ30はスイッチユニット27を介してコンデンサ28と並列に接続されて周知の同調回路を構成する如くなっている。
【0020】ここで、前記同調回路の同調周波数はスイッチユニット26,27をいずれも動作させない状態、スイッチユニット26のみを動作させた状態及びスイッチユニット27のみを動作させた状態の3つの状態において、所定の位相角の範囲(ここでは-60°?60°)をもってそれぞれ位置検出装置1側にて検出可能で且つ互いに近接した周波数f1 、f2 及びf3 、例えば562.5kHz 、531.25kHz 及び500kHz に設定されている。
【0021】なお、前述した周波数は同調周波数の中心値であり、実際にはスイッチユニット26,27をいずれも動作させず且つ筆圧を全く加えない状態では位置検出装置1側にて562.5kHz の位相角60°として検出される周波数に設定されており、最大500gの筆圧を徐々に加えることにより位相角を-60°まで連続的に変化させることができるように設定されている。また、同様にスイッチユニット26のみを動作させ且つ筆圧を全く加えない状態では位置検出装置1側に531.25kHz の位相角60°として検出される周波数に設定されており、最大500gの筆圧を徐々に加えることにより位相角を-60°まで連続的に変化させることができるように設定されている。さらにまた、同様にスイッチユニット27のみを動作させ且つ筆圧を全く加えない状態では位置検出装置1側に500kHz の位相角60°として検出される周波数に設定されており、最大500gの筆圧を徐々に加えることにより位相角を-60°まで連続的に変化させることができるように設定されている。
【0022】図4は位置検出装置1で検出される指示位置のx及びy座標値、位相角並びに同調周波数の情報に基いて、指示位置に筆圧に応じて大きさの異なる第1の図形、例えば黒丸「●」を書込むモード、筆圧に応じて大きさの異なる第2の図形、例えば白丸「○」を書込むモード及び筆圧に応じて大きさの異なる所定の領域を消去するモードを実現する場合のホストコンピュータ3におけるプログラムの流れを示すものである。」

「【0023】次に、前記装置の動作を説明する。
【0024】まず、位置検出装置1の位置検出面1a上において位置指示器2をその芯体22を下方に向けて接近させると、位置検出装置1にて指示位置のx及びy座標値、位相角並びに同調周波数が検出され、ホストコンピュータ3に転送される。ホストコンピュータ3では予め記憶した位置指示器2における筆圧と位置検出装置1における位相角との関係を表したテーブルに従って、転送されたデータのうちの位相角を筆圧情報に変換する。
【0025】この際、芯体22が位置検出面1aに接触していない状態ではその筆圧は0であるから、ホストコンピュータ3はいずれの同調周波数であるかに拘らず、表示装置4上の指示位置にカーソル、例えば「+」を表示させる。
【0026】次に、前記位置指示器2の芯体22を位置検出面1aに当接させ、その筆圧が50g以上になると、ホストコンピュータ3はその時の同調周波数を調べる。この際、位置指示器2のスイッチユニット26,27をいずれも動作させていなければ同調周波数は前述したようにf1 (=562.5kHz )であるから、その時の筆圧を前記第1の図形の広がり情報、ここでは該筆圧に比例する黒丸「●」の直径に変換し、図示しないフレームメモリ中の指示位置に前記直径を有する黒丸「●」の画像を描き、これを表示装置4上に表示させる。
【0027】前記処理は位置検出装置1よりデータが転送されている間繰返されるため、50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、指示位置の軌跡に沿って直径の異なる黒丸「●」の画像が連続的に並び、筆を使用した場合のような画像が得られる。
【0028】また、この際、位置指示器2のスイッチユニット26のみを動作させていれば同調周波数は前述したようにf2 (=531.25kHz )であるから、その時の筆圧を前記第2の図形の広がり情報、ここでは該筆圧に比例する白丸「○」の直径に変換し、図示しないフレームメモリ中の指示位置に前記直径を有する白丸「○」の画像を描き、これを表示装置4上に表示させる。
【0029】前記処理は位置検出装置1よりデータが転送されている間繰返されるため、50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、指示位置の軌跡に沿って直径の異なる白丸「○」の画像が連続的に並ぶ。
【0030】さらにまた、この際、位置指示器2のスイッチユニット27のみを動作させていれば同調周波数は前述したようにf3 (=500kHz )であるから、その時の筆圧を消去領域の広がり情報、ここでは該筆圧に比例する円の直径に変換し、図示しないフレームメモリ中の指示位置を中心とした前記直径を有する円の内部を消去し、これを表示装置4上に表示させる。
【0031】前記処理は位置検出装置1よりデータが転送されている間繰返されるため、50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、前記同様に指示位置の軌跡に沿い且つ筆圧に応じた幅を有する領域が消去される。
【0032】このように前記実施例によれば、位置指示器2を位置検出装置1に当接させて使用するのみで黒丸「●」を入力できるとともにその大きさを筆圧に応じて調節でき、また、スイッチユニット26を操作するのみで白丸「○」を入力できるとともにその大きさを筆圧に応じて調節でき、さらにまた、スイッチユニット27を操作するのみで消去操作ができるとともにその消去領域の大きさを調節できる。また、前述した目的の異なる複数の筆圧情報を位置指示器2の同調回路の中心周波数を変えることによって位置検出装置1側へ伝送するようになしたため、従来の一の周波数に対する位相角の範囲を分割したものの如く筆圧を検出し得るレンジが小さくなるようなことがなく、また、これによって一の筆圧に対する位相角が各周波数においてほぼ同一となるため、位相角と筆圧との変換を同一のテーブルを用いて行うことができるとともに、筆圧を加えている途中でスイッチユニット26又は27に対する操作状態を変化させてもそのまま継続して正しい筆圧情報を入力できる。」

そして、【0011】の記載によれば、座標入力装置は、位置検出装置1、位置指示器2、ホストコンピュータ3、表示装置4を備えており、【0023】?【0032】の記載によれば、当該座標入力装置は、ホストコンピュータ3により動作が制御されており、座標入力装置の制御方法が特定されているといえる。

したがって、上記下線部及び関連する記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「位置検出装置1、位置指示器2、ホストコンピュータ3、表示装置4を備える座標入力装置の制御方法であって、
位置検出装置1は、所定の位置検出面1a上で操作される位置指示器2の同調回路に対して設定された3つの周波数の電波を送受信し、指示位置のx及びy座標値、位相角並びに実際に電波を受信した同調周波数を検出し、これらをホストコンピュータ3に転送するようになっており、
位置指示器2は、筐体21、芯体22、コイル23、可変容量コンデンサ24、基板25、スイッチユニット26,27、はコンデンサ28,29,30を備え、
筐体21は全体略ペン軸型をなしたもので、その先端側には芯体22を挿通し得る透孔が設けられ、その一端22aが筐体21の透孔より外部に突出する如く収納されており、コイル23は芯体22を摺動自在に挿通し得る透孔を備えたフェライトコア上に高周波抵抗の少ないリッツ線を巻回してなるもので、筐体21の先端部と可変容量コンデンサ24との間に保持されており、
可変容量コンデンサ24はハウジングと一体的に構成され、芯体22の一端22aが位置検出面1a等に押し付けられてその他端を介して押圧力が加わるとその容量値がほぼ連続的に変化するものであり、押圧力(筆圧)を徐々に加えることにより同調周波数の位相角を60°から-60°まで連続的に変化させることができ、
スイッチユニット26は筐体21の外部に突出した操作部26aを押圧することによりオン動作し、スイッチユニット27は筐体21の外部に突出した操作部27aをその先端に取付けたキャップ31を介して押圧することによりオン動作するものであり、
コンデンサ28?30はチップコンデンサであり、コンデンサ28は可変容量コンデンサ24とともにコイル23に接続され、また、コンデンサ29はスイッチユニット26を介してコンデンサ28と並列に接続され、さらにまた、コンデンサ30はスイッチユニット27を介してコンデンサ28と並列に接続されて同調回路を構成し、前記同調回路の同調周波数はスイッチユニット26,27をいずれも動作させない状態、スイッチユニット26のみを動作させた状態及びスイッチユニット27のみを動作させた状態の3つの状態において、所定の位相角の範囲(ここでは-60°?60°)をもってそれぞれ位置検出装置1側にて検出可能で且つ互いに近接した周波数f1 、f2 及びf3 、例えば562.5kHz 、531.25kHz 及び500kHz に設定されており、
位置検出装置1の位置検出面1a上において位置指示器2をその芯体22を下方に向けて接近させると、位置検出装置1にて指示位置のx及びy座標値、位相角並びに同調周波数が検出され、ホストコンピュータ3に転送され、ホストコンピュータ3では予め記憶した位置指示器2における筆圧と位置検出装置1における位相角との関係を表したテーブルに従って、転送されたデータのうちの位相角を筆圧情報に変換し、
芯体22が位置検出面1aに接触していない状態ではその筆圧は0であるから、ホストコンピュータ3はいずれの同調周波数であるかに拘らず、表示装置4上の指示位置にカーソル、例えば「+」を表示させ、
前記位置指示器2の芯体22を位置検出面1aに当接させ、その筆圧が50g以上になると、ホストコンピュータ3はその時の同調周波数を調べ、位置指示器2のスイッチユニット26,27をいずれも動作させていなければ同調周波数はf1 (=562.5kHz )であるから、その時の筆圧を第1の図形の広がり情報、即ち該筆圧に比例する黒丸「●」の直径に変換し、フレームメモリ中の指示位置に前記直径を有する黒丸「●」の画像を描き、表示装置4上に表示し、前記処理は位置検出装置1よりデータが転送されている間繰返され、50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、指示位置の軌跡に沿って直径の異なる黒丸「●」の画像が連続的に並び、筆を使用した場合のような画像が得られ、
位置指示器2のスイッチユニット26のみを動作させていれば同調周波数はf2 (=531.25kHz )であるから、その時の筆圧を第2の図形の広がり情報、即ち該筆圧に比例する白丸「○」の直径に変換し、フレームメモリ中の指示位置に前記直径を有する白丸「○」の画像を描き、これを表示装置4上に表示させ、前記処理は位置検出装置1よりデータが転送されている間繰返されるため、50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、指示位置の軌跡に沿って直径の異なる白丸「○」の画像が連続的に並び、
位置指示器2のスイッチユニット27のみを動作させていれば同調周波数は前述したようにf3 (=500kHz )であるから、その時の筆圧を消去領域の広がり情報、該筆圧に比例する円の直径に変換し、フレームメモリ中の指示位置を中心とした前記直径を有する円の内部を消去し、これを表示装置4上に表示させ、前記処理は位置検出装置1よりデータが転送されている間繰返されるため、50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、指示位置の軌跡に沿い且つ筆圧に応じた幅を有する領域を消去する、
座標入力装置の制御方法。」

イ.対比
補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「位置指示器2」は、その「筐体21」が「全体略ペン軸型をなしたもの」であり、「芯体22を位置検出面1aに当接」させると「位置検出装置1にて指示位置のx及びy座標値」が検出されるから、補正発明の「タッチペン」に相当する。
そして、引用発明のスイッチユニット26の筐体21の外部に突出した「操作部26a」及びスイッチユニット27の筐体21の外部に突出した「操作部27a」は、押圧するとスイッチユニットを動作させ、スイッチユニット26、27の動作状態に応じて「位置指示器2」の同調周波数を周波数f1 、f2 及びf3に変化させるから、補正発明のタッチペンが有する「外部に露出され、磁界の周波数変化をもとに操作可能に設置されるボタン手段」とタッチペンが有する「外部に露出され、周波数変化をもとに操作可能に設置されるボタン手段」である点では共通する。

(イ)引用発明において、スイッチユニット26、27の動作状態に応じて同調回路の同調周波数をf1 、f2、f3に変化させ、位置検出装置1からの電波が、周波数f1 、f2 、f3にいずれかに同調する過程は、補正発明の「スライディングキーボタンが、前記タッチペンの長手方向にスライディング動作が行われると、前記タッチペンが前記スライディング動作に応じた前記周波数の前記磁界を発生させる過程」と「前記タッチペンのボタン手段に対する動作が行われると、前記タッチペンが前記動作に応じた前記周波数を発生させる過程」である点では共通するといえる。

(ウ)引用発明の「前記位置指示器2の芯体22を位置検出面1aに当接させ、その筆圧が50g以上になると、ホストコンピュータ3はその時の同調周波数を調べ」ることは、補正発明の「前記タッチペンが入力された場合、タッチペンから放出される磁界の周波数を確認する過程」と「前記タッチペンが入力された場合、タッチペンから放出される周波数を確認する過程」である点では共通するといえる。

(エ)引用発明の同調周波数がf1 (=562.5kHz )の時の「筆圧を第1の図形の広がり情報、即ち該筆圧に比例する黒丸「●」の直径に変換」すること、及び同調周波数がf2 (=531.25kHz )の時の「筆圧を第2の図形の広がり情報、即ち該筆圧に比例する白丸「○」の直径に変換」することは、補正発明の「データテーブルを参照し、前記確認された周波数に対応する図形の大きさを抽出する過程」と「図形の大きさを抽出する過程」である点では共通するといえる。

(オ)引用発明の「50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、指示位置の軌跡に沿って直径の異なる黒丸「●」の画像が連続的」に並ばせること、及び「前記処理は位置検出装置1よりデータが転送されている間繰返されるため、50?500gの範囲内で筆圧を変えながら位置指示器2を移動させると、指示位置の軌跡に沿って直径の異なる白丸「○」の画像が連続的」に並ばせることは、補正発明の「前記周波数に対応する図形の大きさの図形を出力する過程」と「前記図形の大きさの図形を出力する過程」である点では共通するといえる。

(カ)引用発明の「座標入力装置の制御方法」は、補正発明と同様な「タッチペンを含む電子装置の制御方法」といい得るものである。

そうすると、両者は、次の点で一致する。
「外部に露出され、周波数変化をもとに操作可能に設置されるボタン手段を有するタッチペンを含む電子装置の制御方法において、
前記タッチペンのボタン手段に対する動作が行われると、前記タッチペンが前記動作に応じた前記周波数を発生させる過程と、
前記タッチペンが入力された場合、タッチペンから放出される周波数を確認する過程と、
図形の大きさを抽出する過程と、
前記図形の大きさの図形を出力する過程と、
を含む方法。」

他方、補正発明と引用発明は次の点で相違する。
<相違点1>
補正発明では、タッチペンが有するボタン手段は、「磁界の周波数変化をもとに操作可能」に設置され、「タッチペンの取手部分に一部が露出したスライディングキーボタン」を含むのに対し、引用発明では、スイッチユニット26、27の操作部26a、27aは、「磁界の周波数変化をもとに操作可能」に設置されるものではなく、「タッチペンの取手部分に一部が露出したスライディングキーボタン」を含むものでもない点。

<相違点2>
補正発明の「ボタン手段に対する動作に応じた周波数を発生させる過程」は、「スライディングキーボタンが、前記タッチペンの長手方向にスライディング動作が行われると、前記タッチペンが前記スライディング動作に応じた前記周波数の前記磁界を発生させる過程」であるのに対し、引用発明の「ボタン手段に対する動作に応じた周波数を発生させる過程」は、「スイッチユニット26、27の動作状態に応じて同調回路の同調周波数をf1 、f2、f3に変化させ、位置検出装置1からの電波が、周波数f1 、f2 、f3にいずれかに同調する過程」であって、「スライディングキーボタンが、前記タッチペンの長手方向にスライディング動作が行われると、前記タッチペンが前記スライディング動作に応じた前記周波数の前記磁界を発生させる過程」ではない点。

<相違点3>
補正発明の「図形の大きさを抽出する過程」は、「「タッチペンから放射される周波数を確認する過程で確認された周波数」、換言すれば「タッチペンが発生するスライディングキーボタンのスライディング動作に応じた周波数」に対応する図形の大きさを抽出する過程」であるのに対し、引用発明の「図形の大きさを抽出する過程」は、同調周波数の位相角から得られる「筆圧情報を図形の広がり情報に変換する過程」であって、「タッチペンが発生するスライディングキーボタンのスライディング動作に応じた周波数に対応する図形の大きさを抽出する過程」ではない点。

<相違点4>
補正発明の「図形の大きさを抽出する過程」は、「データテーブルを参照」するものであるのに対し、引用発明の「図形の大きさを抽出する過程」は、引用発明の「図形の大きさを抽出する過程」は、データテーブルを参照するものには特定されていない点。

ウ.判断
・相違点3について
引用発明は、刊行物1の段落【0008】等の記載から明らかなように、「複数の筆圧情報」を利用することを前提とした発明であって、引用発明の同調周波数の位相角から得られる「筆圧情報を図形の広がり情報に変換する過程」は、その「複数の筆圧情報」により図形の大きさを抽出するものといえる。
したがって、引用発明自体には、同調周波数の位相角から得られる「筆圧情報を図形の広がり情報に変換する過程」を、筆圧情報を利用しない過程である「タッチペンが発生するスライディングキーボタンのスライディング動作に応じた周波数に対応する図形の大きさを抽出する過程」のような過程に変えることについての動機付けはない。

また、原査定及び前置報告書で引用したいずれの刊行物も、「タッチペンが発生するスライディングキーボタンのスライディング動作に応じた周波数に対応する図形の大きさを抽出する過程」に相当する過程を示すものではない。
したがって、原査定及び前置報告書で引用したいずれの刊行物を考慮しても、引用発明において、相違点3に係る補正発明の構成を採用することが容易になし得たこととはいえない。

ほかに、引用発明において上記相違点3に係る補正発明の構成を採用することが、当業者が容易になし得たことというべき理由は見当たらない。

以上のとおりであるから、補正発明は、その他の相違点について検討するまでもなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ほかに、補正発明を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。
本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?18に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-06-07 
出願番号 特願2013-250674(P2013-250674)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 海江田 章裕上嶋 裕樹  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 和田 志郎
山澤 宏
発明の名称 タッチペン、タッチペンを認識する電子装置及びその運用方法  
代理人 山下 託嗣  

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