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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1315580
審判番号 不服2014-22112  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-31 
確定日 2016-06-09 
事件の表示 特願2010-250510号「空調システム及び建物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年5月31日出願公開,特開2012-102918号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年11月9日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 5月29日付け:拒絶理由の通知
平成26年 6月24日 :意見書,手続補正書の提出
平成26年 9月29日付け:拒絶査定
平成26年10月31日 :審判請求書の提出
平成27年12月 8日付け:拒絶理由の通知
平成28年 1月20日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成28年1月20日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものと認められるところ,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

「建物の床下空間に空調装置が設置されており,
前記空調装置は,下流側の冷暖房機能及び除湿機能を有する空調本体装置と,上流側の気液接触型の空気清浄装置とが通気可能に接続されて成り,
前記空調本体装置に設けられた排水管である分岐ドレインと,前記気液接触型の空気清浄装置に設けられた排水管である分岐ドレインとが,前記建物内において,排水管である共通のドレインで合流されており,
前記空調装置には,前記気液接触型の空気清浄装置側に,前記建物の床上空間に面して設けられた排気口と連通する内気吸込部が設けられており,前記空調本体装置側に前記建物の床上空間に面して設けられた給気口と連通する床上用吹出部が設けられていることを特徴とする空調システム。」

第3 引用発明
1 本願の出願前に外国において頒布され,平成27年12月8日付けで通知された拒絶の理由に引用された米国特許第5531801号明細書(以下「引用文献1」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。(・・・は,略のことを指す。以下同様。)

(1)「In carrying out principles of the present invention, in accordance with a preferred embodiment thereof, an air handling unit is provided that includes a housing having an inlet opening, an outlet opening, and an internal flow path extending between the inlet opening and the outlet opening, and blower means for sequentially flowing air inwardly through the inlet opening, through the internal flow path, and outwardly through the outlet opening. The air handling unit is representatively illustrated in both HVAC unit and air purification and controlled humidification unit embodiments.」(第2欄26行から36行)
(当審訳:本発明の原理を実施する際に,その好ましい実施形態によれば,空気処理ユニットは,入口開口,出口開口,入口開口と出口開口との間に延びる内部流路を有するハウジング,及び,入口開口から内部へ導き,内部流路を通って,出口開口から外部へ向かって,順次空気を流すための送風機を含む。空気処理ユニットは,典型的には,HVACユニットと空気浄化及び湿度調整ユニットの両方の実施形態が示されている。)

(2) 「Schematically depicted in FIGS. 1 and 2 is a heating, ventilation and air conditioning (HVAC) unit 10 incorporating therein a specially designed liquid spray air purification system 12 embodying principles of the present invention. HVAC unit 10 serves an interior space 14 disposed within a building 16 having an exterior wall 18 and a roof 20. The conditioned interior space 14 representatively has a vertical interior wall 22 and a ceiling 24 spaced downwardly apart from the roof 20. The unit 10 is supported within the space 26 between the roof 20 the ceiling 24, in a horizontal airflow orientation, on suitable support members 28, such as metal hanger rods or straps, secured to the roof structure.」(第4欄65行から第5欄9行)
(当審訳:図1及び図2に描かれた模式図は,本発明の原理を具体化する特別に設計された液体噴霧空気浄化システム12を組み込んだ加熱・換気および空調(HVAC)ユニット10である。HVACユニット10は,外壁18と屋根20を有する建物16内に配置された室内空間14に提供される。空調室内空間14は,典型的には,垂直な内壁22と屋根20から下方に離間した天井24を有している。HVACユニット10は,天井構造に固定された金属製ハンガーロッドやストラップなどの適当な支持部材28によって,略水平の空気流の向きに,屋根20と天井24の間の空間26に支持されている。)

(3) 「A return air duct 48 is interconnected between the cabinet inlet end 34 of the HVAC unit 10 and a suitable return air grille 50 mounted on the underside of the ceiling 24. At the opposite end of the unit 10 a main supply air duct 52 is connected to the cabinet outlet end 36 and extends horizontally through the above-ceiling space 26 as best illustrated in FIG. 1. Spaced apart branch supply air ducts 54 are operatively interconnected between the bottom of the main supply air duct 52 and a series of supply air diffusers 56 mounted on the underside of the ceiling 24 of the conditioned space 22 as schematically illustrated in FIG. 1.」(第5欄51行から61行)
(当審訳:還気ダクト48は,HVACユニット10のキャビネット入口端34と天井24の下面に取り付けられた適当な還気グリル50との間に相互接続されている。HVACユニット10の反対側の端部で主給気ダクト52はキャビネット出口端36に接続され,天井裏空間26を水平に延びていることが図1に最も良く示されている。離間配置された分岐給気ダクト54は,主給気ダクト52の底部と,空調空間22(当審注:室内空間14の誤記と思われる。)の天井24の下面に取り付けられた一連の給気吹出口56との間に効果的に相互接続されていることが図1に概略的に示されている。)

(4) 「Referring again to FIG. 2, the air purification system 12 includes a horizontally oriented hollow rectangular metal housing 60 representatively disposed in an upwardly spaced apart relationship with the return air duct 48 and a rear end portion of the unit cabinet 32.」(第6欄21行から25行)
(当審訳:図2を再び参照すると,空気浄化システム12は,典型的には,還気ダクト48とHVACユニットの筐体32の後端部に対して上方に離間して配置された水平方向の中空の長方形の金属ハウジング60を含む。)

(5) 「As later described herein, a liquid sump pan structure 80 is positioned within the housing 60 beneath the air purification system components 70,72,74 and 76.」(第6欄34行から36行)
(当審訳:後述するように,水受皿80は,ハウジング60内で空気浄化システムの構成要素70,72,74及び76下に配置されている。)

(6) 「During operation of the main unit 10, simultaneous operation of the purification system air blower 78 draws return air 58 into the housing 60 sequentially through the a portion of the return air grille 50, the auxiliary return air duct 84 and the damper section 68.」(第6欄48行から52行)
(当審訳:HVACユニット10の動作時に,空気浄化システムの送風機78が同時に動作し,還気グリル50,補助還気ダクト84とダンパ部68の部分を通ってハウジング60に順次に還気58を引き込む。)

(7) 「The purified, now moisture-laden return air/outside air mixture is then drawn, via the aforementioned zigzag path, through the mist eliminator 74 which functions to mechanically remove a substantial portion of the moisture from the return air/outside air mixture. Water mechanically removed from the air in this manner is drained from the mist eliminator 74 and falls into the sump pan 80.」(第7欄64行から第8欄3行)
(当審訳:浄化された湿分の多い還気/外気の混合流は,還気/外気の混合流からかなりの部分の湿分を機械的に除去するように機能する水滴除去装置74を通って,前述のジグザグ経路を介して,引き込まれる。このようにして混合流から機械的に除去された水は,水滴除去装置74から排出され,水受皿80に落下される。)

(8) 「Turning now to FIGS. 3 and 4, the sump pan 80 has an open top side 104 and an overflow fitting 106 secured to a side wall of the sump pan, just beneath its open top side, and connected to a suitable drain line 108 that is tied into the building drainage system.」(第8欄12行から16行)
(当審訳:図3及び4を参照すると,水受皿80は,開放された上面104と,その開放された上面のすぐ下の水受皿の側壁に設けられたオーバーフロー用器具106とを有し,建物の排水システムに結合されている排水経路108に接続されている。)

(9) 「A drain pan 81 is positioned beneath the main cooling coil 46, to catch condensate dripping therefrom during operation of the HVAC unit 10a, and a condensate drain line 204 having a condensate pump 206 installed therein is interconnected between the drain pan 81 and the sump pan structure 80. During operation of the HVAC unit 10a, condensate received in the drain pan 81 is transferred into the sump pan structure 80, via the line 204, by the pump 206.」(第13欄1行から8行)
(当審訳:ドレンパン81は,主冷却コイル46の下に配置され,HVACユニット10aの動作中,そこから滴下する凝縮水を捕捉し,凝縮水ポンプ206を備えた凝縮水排水経路204は,ドレンパン81と水受皿80との間を相互接続している。HVACユニット10aの動作中,ドレンパン81で受けられた凝縮水は,凝縮水ポンプ206により,凝縮水排水経路204を介して,水受皿に送られる。)

(10) 「Illustrated in FIG. 6 is an alternate embodiment 10a of the HVAC unit 10 previously described in conjunction with FIGS. 1-4. HVAC unit 10a incorporates therein the same components as the unit 10, and additionally incorporates a modified air purification and controlled humidification unit 160a having therein various indicated components of the air purification and controlled humidification unit 160 previously described in conjunction with FIGS. 5A and 5B.」(第12欄23行から30行)
(当審訳:図6に示すものは,先に図1?4において説明されたHVACユニット10の代替実施形態10aである。HVACユニット10aは,HVACユニット10のようにその中に同一の構成要素を組み込んでおり,さらに,先に図5A,5Bにおいて説明された空気浄化湿度調整ユニット160の代替実施形態である空気浄化湿度調整ユニット160aが組み込まれている。)

(11) 「Further humidity control is provided to the air mixture 92/58 as it flows through ・・・ the cooling coils 46 when the unit 10a is operating in the summer.」(第13欄36行から39行)
(当審訳:さらに,湿度の調整は,・・・HVACユニット10が夏に稼働しているとき冷却コイル46を浄化された空気92と還気58の混合流が流れて行われる。)

(12) 上記(1)?(11)の記載事項において,特に図6に係る「HVACユニット10a」を備えた「空気処理ユニット」に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160aを組み込んだ加熱・換気および空調(HVAC)ユニット10aは,外壁18と屋根20を有する建物16内に配置された室内空間14に提供され,屋根20と天井24の間の空間26に支持されており,
湿度の調整は,HVACユニット10aの主冷却コイル46を浄化された空気92と還気58の混合流が流れて行われ,
HVACユニット10aの端部で主給気ダクト52がキャビネット出口端36に接続されており,離間配置された分岐給気ダクト54は,主給気ダクト52の底部と,室内空間14の天井24の下面に取り付けられた一連の給気吹出口56との間に効果的に相互接続されており,
液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160aは,還気ダクト48とHVACユニット10aの筐体32の後端部に対して上方に離間して配置された水平方向の中空の長方形の金属ハウジング60aを含み,
水滴除去装置74と水受皿80は,ハウジング60a内に配置され,
HVACユニット10aの動作時に,空気浄化システムの送風機78が同時に動作し,天井24の下面に取り付けられた還気グリル50,補助還気ダクト84とダンパ部68の部分を通ってハウジング60aに順次に還気58を引き込み,
浄化された湿分の多い還気58/外気90の混合流から水滴除去装置によって機械的に除去された水は,水滴除去装置74から排出され,水受皿80に落下され,
HVACユニット10aの動作中に主冷却コイル46の下に配置されたドレンパン81で受けられた凝縮水は,凝縮水ポンプ206を備えた凝縮水排水経路204を介して,水受皿80に送られ,
水受皿80は,建物の排水システムに結合されている排水経路108に接続されている,
液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160aを組み込んだHVACユニット10aを備えた空気処理ユニット」

2 本願の出願前に日本国内において頒布され,平成27年12月8日付けで通知された拒絶の理由に引用された特開2008-157585号公報(以下「引用文献4」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。

(1) 「【請求項1】
筐体内に,送風機によって吸込まれた空気を調和する熱交換器と,この熱交換器から流下したドレン水を受けるドレンパンと,このドレンパンに溜まったドレン水を汲み上げてドレンホースを介して外部に排出するドレンポンプと,前記熱交換器の下流側に配置され,活性酸素種を含む電解水が浸透し,前記吸込まれた空気に電解水を接触させて空気の除菌を行う気液接触部材とを備え,
この気液接触部材から流下した電解水を前記ドレンパンと異なる電解水受けに導き,この電解水受けを経た電解水を前記ドレンポンプの下流側で前記ドレン水と合流させたことを特徴とする空気調和装置。」

(2) 「【0018】
・・・ドレンポンプ27により汲み上げられたドレン水は,切り欠き部20fを通って筐体20の外に延びるドレン管(ドレンホース)27aにより,室内ユニット2の外部に排出される。」

(3) 「【0036】
・・・排水トレー62に貯留した電解水は,排水ポンプ63の吸込ノズル63Aを介して汲み上げられる。排水ポンプ63の排水管65は,上記ドレンポンプ27の下流側に形成された接続部(合流部)66でドレン管27aに接続されており,排水ポンプ63によって汲み上げられた電解水は,接続部66でドレン水と合流してドレン管27aを通じて室内ユニット2の外部に排出される。」

(4) 「【0037】
・・・また,室内ユニット2の外部に延ばして設ける配管がドレン管27aの1本で済むため,配管構成の簡素化を図ることができるとともに,施工コストの低減を図ることができる。」

(5) 上記(1)?(4)の記載事項を総合すると,引用文献4には,室内ユニット2の外部に延ばして設ける配管がドレン管の1本で済むため,配管構成の簡素化を図ることができるとともに,施工コストの低減を図ることができるように,「空気を調和する熱交換器から流下したドレン水は,ドレン管(ドレンホース)27aにより,室内ユニット2の外部に排出されるとともに,空気の除菌を行う気液接触部材から流下した電解水は,排水管65が接続部(合流部)66でドレン管27aに接続されており,電解水は,接続部66でドレン水と合流してドレン管27aを通じて室内ユニット2の外部に排出される」排水構造が記載されている。

第4 対比
(1) 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると,「液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160a」で浄化された空気92が「加熱・換気および空調(HVAC)ユニット10a」の「筐体32」内に送られることからみて,「液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160a」が上流側に,「HVACユニット10a」が下流側に配置されていることは明らかであり,さらに,「HVACユニット10a」が「湿度の調整」も行っていることから,引用発明の「HVACユニット10a」は,本願発明の「下流側の冷暖房機能及び除湿機能を有する空調本体装置」に相当し,引用発明の「液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160a」は,本願発明の「上流側の気液接触型の空気清浄装置」に相当する。そして,引用発明の「液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160aを組み込んだHVACユニット10a」は,本願発明の「空調本体装置」と「空気清浄装置」とが通気可能に接続されて成る「空調装置」に相当する。
また,引用発明の「凝縮水排水経路204」は,「HVACユニット10a」の「主冷却コイル46の下に配置されたドレンパン81で受けられた凝縮水」を排水しているから,本願発明の「空調本体装置に設けられた排水管である分岐ドレイン」に相当し,引用発明の「排水経路108」は,液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160aのハウジング60a内に配置された「水受皿80」を「建物の排水システム」に接続しているから,本願発明の「気液接触型の空気清浄装置に設けられた排水管である分岐ドレイン」に相当する。
さらに,居住空間に面して設けられた排気口と連通する限りにおいて,引用発明の「還気グリル50」は,本願発明の「排気口」に相当する。同様に,居住空間に面して設けられた給気口と連通する限りにおいて,引用発明の「給気吹出口56」が,本願発明の「給気口」に相当する。
そして,引用発明の「液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160aを組み込んだHVACユニット10aを備えた空気処理ユニット」は,本願発明の「空調システム」に相当する。

(2)一致点
したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致している。

「建物の空間に空調装置が設置されており,
前記空調装置は,下流側の冷暖房機能及び除湿機能を有する空調本体装置と,上流側の気液接触型の空気清浄装置とが通気可能に接続されて成り,
前記空調本体装置に設けられた排水管である分岐ドレインと,前記気液接触型の空気清浄装置に設けられた排水管である分岐ドレインとが設けられ,
前記空調装置には,前記気液接触型の空気清浄装置側に,前記建物の居住空間に面して設けられた排気口と連通する内気吸込部が設けられており,前記空調本体装置側に前記建物の居住空間に面して設けられた給気口と連通する吹出部が設けられている空調システム。」

(3)相違点
そして,本願発明と引用発明とは,以下の点で相違している

ア 相違点1
空調装置並びに排気口及び給気口に関し,本願発明は,空調装置が「建物の床下空間」に設置されるとともに,「排気口」と「給気口」とが「建物の床上空間に面して設けられ」ているのに対して,引用発明は,HVACユニット10aが「屋根20と天井24の間の空間26」に設置されるとともに,「還気グリル50」と「給気吹出口56」とが「建物16内に配置された室内空間14」の「天井24の下面」に取り付けられている点。

イ 相違点2
本願発明は,「前記空調本体装置に設けられた排水管である分岐ドレインと,前記気液接触型の空気清浄装置に設けられた排水管である分岐ドレインとが,前記建物内において,排水管である共通のドレインで合流されて」いるのに対して,引用発明は,「凝縮水排水経路204」は,「ドレンパン81」と「水受皿80」に接続し,「排水経路108」は「水受皿80」と「建物の排水システム」を接続している点。

第5 判断
上記各相違点について検討する。
1 相違点1について
引用発明の「HVACユニット10a」は,「屋根20と天井24の間の空間26」に設置されたものであるが,この「空間26」は,本願発明の「床下空間」と同様に,「建物」内の居住空間以外の「空間」にあたる。そして,空調装置が設置される居住空間以外の建物内の「空間」として,「床下空間」は,特開2010-243142号公報(請求項1,図1,3等参照),特開2010-181096公報(【0045】?【0047】参照)に例示されるように,本願出願前から周知の事項である。
そして,建物内の空調装置の設置場所は,建物の構造や必要な住宅設備の設置場所等に応じて設計上適宜に決められることが一般的であるところ,「空間26」に設置された引用発明の「HVACユニット10a」を,居住空間以外の「空間」である点で軌を一にする「床下空間」に設置する程度のことは,当業者が容易に設計変更し得ることあり,引用発明の「HVACユニット10a」を「床下空間」に設置するに際して,居住空間に対して還気及び給気がなされるように,引用発明の「還気グリル50」と「給気吹出口56」とを「建物の床上空間に面して設け」るようにすることも,「HVACユニット10a」の設置場所に合わせて当然考慮される設計事項にすぎない。
よって,上記相違点1において本願発明のようになすことは,当業者が容易になし得ることである。

2 相違点2について
上記相違点2における本願発明の効果は,「空調により生ずる結露水などの水と,気液接触型の空気清浄装置により生ずる汚染水とを効率的に排水することができる」ことにあり(【0005】),引用発明の排水構造も,「HVACユニット10a」からの凝縮水と「液体噴霧空気浄化湿度調整ユニット160a」から排出される水とを「水受皿80」を介して合流させて「建物の排水システム」に排水しているところ,効率的な排水経路を構成しているものといえるから,その効果について格別な差はない。
一方,引用文献4記載の「ドレン管(ドレンホース)27a」は,本願発明の「空調装置本体に設けられた排水管である分岐ドレイン」に相当し,引用文献4記載の「排水管65」は,本願発明の「気液接触型の空気清浄装置に設けられた排水管である分岐ドレイン」に相当する。そして,引用文献4記載の「排水管65が接続部(合流部)66でドレン管27aに接続されており」,「ドレン管27aを通じて室内ユニット2の外部に排出される」ことは,本願発明の「前記空調本体装置に設けられた排水管である分岐ドレインと,前記気液接触型の空気清浄装置に設けられた排水管である分岐ドレインとが,前記建物内において,排水管である共通のドレインで合流され」ることに相当するといえる。
よって,引用文献4には,上記相違点2に係る本願発明の排水経路構成が記載されており,その排水経路も効率的な排水経路の構成といえるものである。
そして,効率的な排水経路の構成として,水受皿を介するようにするか,排水管を分岐させるようにするかは,空調装置本体と空気清浄装置の配置関係等を考慮して設計上適宜に選択し得る程度の事項であることを踏まえれば,引用発明の排水経路の構成について,同じく効率的な排水経路の構成である引用文献4記載のものに変更し,「HVACユニット10a」からの「凝縮水排水経路204」を「排水経路108」に合流させること,すなわち,上記相違点2において本願発明のようになすことは,当業者が容易になし得ることである。

3 本願発明の奏する効果について
そして,本願発明の全体構成により奏される作用効果についてみても,引用発明,引用文献4記載の事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献4記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-18 
結審通知日 2016-03-22 
審決日 2016-04-19 
出願番号 特願2010-250510(P2010-250510)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 俊二  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 鳥居 稔
永石 哲也
発明の名称 空調システム及び建物  
代理人 西脇 民雄  
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所  
代理人 西脇 怜史  

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