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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1315688
異議申立番号 異議2016-700304  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-12 
確定日 2016-06-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第5795929号発明「成形品取出機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5795929号の請求項1、3に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第5795929号の請求項1および3に係る特許についての出願は、平成23年10月4日に特許出願され、平成27年8月21日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人渡部 明美(以下、「特許異議申立人」という)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第5795929号の請求項1および3に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1および3に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである(以下、それぞれ「本件発明1」および「本件発明3」という。)。

「 【請求項1】
成形機の金型の開閉方向と直交する直交方向に前記成形機と並んで配置され、
設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームと、
前記金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために、前記固定フレームにガイドされて前記開閉方向に移動し且つ前記直交方向に移動する可動フレームとを備えて、前記成形機の金型から成形品を前記直交方向に取り出す成形品取出機であって、
前記固定フレームは、前記金型を交換する際に、前記成形機から離れて前記直交方向に全体的に位置が変えられることを可能にする取付機構を介して前記設置用構造部材に取り付けられており、
前記取付機構は、
前記固定フレームが取り付けられる取付プレートと、
前記取付プレートを前記直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、
手作業により操作される操作部を備え、前記取付プレートを所定位置に固定状態にすることと、前記固定状態を解除してスライド可能にすることを実現する手動操作型の固定機構とを備えていることを特徴とする成形品取出機。
【請求項3】
前記スライド支持機構は、前記設置用構造部材に固定された2本のスライドレールと、該2本のスライドレールにスライド可能に保持されて前記取付プレートに固定された複数のスライダとからなり、
前記固定機構は、前記2本のスライドレールの間に位置するように前記設置用構造部材に固定された第1の取付部材と、前記取付プレートが固定状態にあるときに前記第1の取付部材と当接するように前記取付プレートに固定された第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材とが当接している状態で、前記第1及び第2の取付部材を1本以上のネジ部材によりネジ止めする締結機構とからなる請求項1または2に記載の成形品取出機。」

3 特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の本件出願前に頒布された刊行物である甲第1?7号証を提出(主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として下記の甲第2号証ないし甲第7号証を提出)して、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により、取り消すべきである旨主張している。


甲第1号証:実願昭62-124340号(実開昭64-33348号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開2000-25078号公報
甲第3号証:特開2007-245436号公報
甲第4号証:特開2009-292066号公報
甲第5号証:特開2004-284105号公報
甲第6号証:特開平5-38091号公報
甲第7号証:特開平10-257806号公報

4 甲第1?7号証の記載
(1)甲第1号証
(1a)「前後方向に型開きされるダイカストマシンから製品を取出してこれを該ダイカストマシンの横側方の払出場所に払出す製品取出装置において、該ダイカストマシンと該払出場所との間に、該ダイカストマシンの型開き空間の横側部に位置する作動位置と該作動位置から離れた逃げ位置とに前後動自在な架台を設け、該架台上に垂直軸線回りに旋回可能で且つ直交3軸方向に移動可能な移動機構を搭載して、該移動機構に製品の把持具を取付けたことを特徴とするダイカストマシンにおける製品取出装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(1b)「・・・取出装置を上方の機枠に配置することから、装置のメンテナンス作業が面倒になり、・・・ダイカストマシンの金型交換作業や新規金型の試し打ちに際し取出装置が邪魔になって、作業性が悪くなる問題がある。」(考案が解決しようとする問題点)

(1c)「第1図及び第2図を参照して、(1)はダイカストマシンを示し、該マシン(1)は、固定プラテン(2)と、・・・可動プラテン(4)とに夫々固定型(5)と可動型(6)とを取付けて成るものとし、該可動型(6)を該固定型(5)に対し後方に片開きした状態で製品Wを取出して、これを該マシン(1)の横側方の払出場所(7)に待機するパレット(8)に載置し、・・・ダイカストマシン(1)と払出場所(7)との間に、該マシン(1)の型開き空間の横側部に位置する前方の作動位置Aと、該作動位置Aから離れた後方の逃げ位置Bとにシリンダ(9a)により滑動台(9b)上のガイドレール(9c)(9c)に沿って前後動される架台(9)を設け、該架台(9)上に垂直軸線回りに旋回可能で且つ直交3軸方向に移動可能な移動機構(10)を搭載して、該移動機構(10)に製品Wの把持具(11)を取付け、該把持具(11)を該移動機構(10)により移動させて上記した製品Wの取出とパレット(8)への移載とを行うようにした。」(4頁10行?5頁10行)

(1d)「該移動機構(10)は、前記架台(9)上に設けた、モータ(12a)によりギア列(12b)を介して垂直軸線回りに旋回される旋回台(12)と、該旋回台(12)の上面のガイド枠(13)に取付けたガイドバー(13a)(13a)に沿って図示しないシリンダにより前後動される第1スライド枠(14)と、該第1スライド枠(14)に取付けたガイドバー(14a)(14a)に沿って図示しないシリンダにより左右動される第2スライド枠(15)と、該第2スライド枠(15)に取付けたガイドバー(15a)(15a)に沿って図示しないシリンダにより左右動される第3スライド枠(16)と、該第3スライド枠(16)上のガイドバー(16a)(16a)に沿ってシリンダ(17a)により上下動される昇降枠(17)とから成るもので、該昇降枠(17)にモータ(18a)により水平軸線回りに回転されるアーム(18)を介して把持具(11)を取付けた。」(5頁11行?6頁6行)

(1e)「



(1f)




(1g)「ダイカストマシン(1)の稼働中は架台(9)を作動位置Aに前進させておき、・・・金型交換時や新規金型の試し打ちに際しては、架台(9)を逃げ位置Bに後退させ、型開き空間の横側部を作業用スペースとして空ける。」(6頁8行?7頁11行)

(2)甲第2号証
(2a)「【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の射出成形品の取出しおよび金型内面への離型剤噴射処理装置では、第1駆動手段6を射出成形機8の幅方向一方側に配置し、第2駆動手段7を第1駆動手段6に対向して射出成形機8の幅方向他方側に配置した構造、すなわち、射出成形機8から離れた位置に第1駆動手段6と第2駆動手段7を個別に対向して配置した構造になっているので、射出成形機8の設置スペースの他に、第1駆動手段6と第2駆動手段7それぞれの設置スペースが別途必要になり設置スペースを大きくしている。このため、工場内スペースに占める本装置の占有率が高くなって、他の機器の設置スペースや歩行ゾーンなどの確保に大きい影響をおよぼすとともに、場合によっては、スペース上の制約により設置不能な事態を招くおそれをも有している。また、射出成形機8から離れた位置に第1駆動手段6と第2駆動手段7が設置されることにより、金型と成形品把持部2および離型剤噴射ノズル4との相対位置を適正に設定するのが困難である。特に、金型と成形品把持部2は高精度な相対位置の設定を要求されるので、第1駆動手段6は綿密な精度出しを行って設置しなければならない煩わしさが有る。しかも、構造が複雑であるため電気的な制御系も複雑にならざるを得ず、これがイニシャルコストおよびランニングコストを高くする要因になっている。」(下線は、当審にて追加、以下同様)

(2b)「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、前記図8および図9で説明した従来例と同一もしくは相当部分に同一符号を付して説明する。図1および図2において、射出成形機8は、固定側プラテン9に取付けられた固定金型10と、この固定金型10に対して進退自在に設けられ、型締め時に固定金型10とともに射出成形キャビティ(図示省略)を形成する可動金型11とを備え、可動金型11は可動側プラテン12に取付けられ、該可動金型11はタイバー17を案内に進退移動する。
【0019】装置本体1は、固定側プラテン9の上面に載置固定することによって取付けられている。この装置本体1は、成形品把持部2を有する第1アーム3と、離型剤噴射ノズル4を有する第2アーム5と、これら第1アーム3および第2アーム5を制御手段14からの数値制御信号に基づいて金型の合わせ面に平行なY軸方向に進退移動させる第1駆動手段6と、第1アーム3および第2アーム5を制御手段14からの数値制御信号に基づいて金型の合わせ面に直交するX軸方向に進退移動させる第2駆動手段7と、この第2駆動手段7に組み込まれて第1アーム3および第2アーム5をそれぞれ機外では前記X軸方向に沿う第2姿勢に、金型の間ではY軸方向に沿う第1姿勢に変換する姿勢変換手段16とを備えている。
【0020】第1駆動手段6は、図2,図3および図4に示すように、Y軸方向にのびるY軸ビーム60と、このY軸ビーム60に複数のローラ61,61によるころがり接触状態でY軸方向に進退移動自在に跨乗するY軸移動ベース62、このY軸移動ベース62に一部を一体に結合したタイミングベルト63および第1駆動源として機能しタイミングベルト63を正逆方向に回転させる第1サーボモータ64を備えており、Y軸ビーム60の基端部は固定側プラテン9の上面に載置固定されているとともに、サーボモータドライバ-(制御手段)14からの数値制御信号により第1サーボモータ64が正逆回転する。
【0021】第2駆動手段7は、図2、図3および図4に示すように、X軸方向にのびるX軸ビーム70と、このX軸ビーム70に複数のローラ71,71によるころがり接触状態でX軸方向に進退移動自在に取付けられたX軸移動ベース72、このX軸移動ベース72に一部を一体に結合したタイミングベルト73および第2駆動源として機能しタイミングベルト73を正逆方向に回転させる第2サーボモータ74を備えており、X軸ビーム70の基端部はY軸移動ベース62に載置して締結固定されているとともに、サーボモータドライバ-(制御手段)14からの数値制御信号により第2サーボモータ74が正逆回転する。」

(2c)「



(2d)「



(3)甲第3号証
(3a)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、チャックを曲線移動させる際に、進入方向への移動と共に型締め方向への移動を開始するタイミングを設定するのに手間がかかる点にある。また、型締め方向に対するチャックの移動完了後に進入方向に対するチャックの移動が完了してチャックが金型に衝突して金型やチャックを損傷したり、成形品を傷付けて成形品不良を招く恐れがある点にある。更に、進入方向に対するチャックの移動が完了した後に型締め方向に対する移動が完了するように曲線移動終了位置をそれぞれ設定する作業に手間がかかる点にある。」

(3b)「【実施例】
【0011】
以下に実施形態を示す図に従って本発明を説明する。
図1及び図2に示すように、樹脂成形機1の本体3には所要の間隔をおいて設けられた固定側取付盤5及び可動側取付盤(図示せず)が設けられ、両者間に横架されたタイバー9には可動板11が樹脂成形機1の中心軸線と一致する型締め方向へ移動するように支持されている。該可動板11は本体3に設けられた油圧シリンダ、送りねじ等の型締め部材(図示せず)により固定側取付盤5に相対する型締め方向へ往復移動される。上記固定側取付盤5及び可動板11の相対面には一対の金型13・15がそれぞれ固定されている。
【0012】
一方、上記固定側取付盤5上には、成形品取出し機17の本体フレーム19が固定されている。該本体フレーム19は樹脂成形機1の中心軸線と直交する左右方向へ延出し、第1走行体21が樹脂成形機1の中心軸線と直交する左右方向へ往復移動するように支持されている。該第1走行体21には樹脂成形機1の中心軸線と一致する型締め方向(以下においては、型締め方向を前後方向とも称する。)へ延出する前後フレーム23が設けられ、該前後フレーム23には第2走行体25が前後方向へ往復移動するように支持されている。」

(3c)「



(3d)「



(4)甲第4号証
(4a)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、成形品取出機の高性能化や機能増加によって、成形品取出機用のコントローラ装置は多機能化・複雑化している。そのため従来は、予め定めた複数の動作モードから所望の動作モードをコントローラ装置で選択し、選択した動作モードで成形品取出機を動作させている。そのため動作モードの基本部分の設定変更を行う場合には、サービスマンを呼んで設定変更を行っていた。
【0004】
本発明の目的は、所望の動作モードの設定が簡単にできるコントローラ装置を備えた成形品取出機を提供することにある。」

(4b)「【0015】
以下図面を参照して、本発明の成形品取出機の実施の形態を詳細に説明する。図1は成形品取出機1を射出成形機11に取付けた状態の全体構成を示す斜視図であり、図2は、成形品取出機1の取出動作制御部23及びコントローラ装置5の内部構成を示すブロック図である。図1に示す成形品取出機1は、成形品取出機本体3及びコントローラ装置5から構成される。成形品取出機本体3は、トラバース型であって、基部9が射出成形機11の固定プラテン13に搭載固定されているとともに成形機11の長手方向に水平に直交したX軸方向に延設される横行アーム15と、横行アーム15に搭載され成形機11の長手方向であるY軸方向に延設されてサーボモータからなる第1駆動源M1(図1には図示せず)により横行アーム15上をX軸方向に進退移動する移動アーム17と、この移動アーム17に垂設されてサーボモータからなる第2駆動源M2(図1には図示せず)によりY軸方向に進退移動するとともに、サーボモータからなる第3駆動源M3(図1には図示せず)によりZ軸方向に昇降する昇降アーム19と、昇降アーム19の下端部に設けられて成形品を保持するアタッチメントヘッド21とを備えている。また、この成形品取出機本体3には、上記各アーム15,17,19等の動作制御を行う取出動作制御部23(図1には図示せず)が設けられ、この取出動作制御部23に手動操作装置としてのコントローラ装置5が接続されている。上記各アーム15,17,19と第1駆動源M1乃至第3駆動源M3によってアタッチメントヘッドを取り出し位置と待機位置との間で移動させるヘッド移動機構が構成されている。」

(4c)「



(5)甲第5号証
(5a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した旋回形成形品取出機は、スイングアームを旋回運動させた後に直線運動させる構造のため、金型内から成形品を取出すのに時間がかかっている。特に、この種の旋回形成形品取出機は、例えばCD、DVD等のディスク状成形品を取出すのに使用されるもので、1/10?1/100秒台の極めて短時間に成形品を取出す必要がある。
【0005】
また、上記した旋回形成形品取出機にあっては、電動モータの回転運動を、スイングアームの回転運動及び直線運動という2つの運動に変換する機構として、規制用カム溝及び駆動用カム溝の2つのカム溝を設けたカム部材と、夫々のカム溝を摺接するカムフォロアーとから構成されるカム機構を採用している。
【0006】
しかし、このカム機構を採用した場合にあっては、旋回運動を停止させる際や直線運動を停止させる際に、カム溝の端部にカムフォロアーを押し当てて移動規制する構造であるため、スイングアームの移動停止時における衝撃が大きくなっている。
【0007】
このため、移動停止時における衝撃によりカム機構が短時間に損傷し易く、取出機自体の耐久性が悪くなる問題を有していると共にスイングアーム停止時に発生する衝撃によりチャックから保持された成形品が脱落し易くなって取出し不良発生の要因となっていた。
【0008】
本発明は、上記した従来の欠点を解決するために発明されたもので、その課題とする処は、旋回アームの旋回運動及び直線運動を同時に行うことにより成形品取出し時間を大幅に短縮して高速取出しを可能にする旋回形成形品取出機を提供することにある。
【0009】
本発明の他の課題は、取出機自体の耐久性を高めることができると共に旋回アームの回動停止における衝撃を低減して取出し不良を防止することができる旋回形成形品取出機を提供することにある。」

(5b)「【0012】
【発明の実施形態】
以下に実施形態を示す図に従って本発明を説明する。
実施形態1
図1?図3において、旋回形成形品取出機1の固定ベース3は樹脂成形機の固定プラテン5の上面に固定される。該固定ベース3は固定プラテン5の上面から起立した後に樹脂成形機の可動プラテン(図示せず)側に向って延出する平面部3aと、該平面部3aの先端部にて垂下する固定部3bを有した形状に形成される。尚、上記固定ベース3は固定プラテン5の上面に対し、長孔を介してボルト止めすることにより軸線直交方向へ位置調整可能に固定される。」

(5c)「



(6)甲第6号証
(6a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来の技術では、直接、本体にテーブル等の移動体が取り付けられてワークが所望の位置に搬送される構成を採用している。従って、一旦、上記のように、ワークを搬送するために所望の位置決めをして設定した後に、移動位置の調整または変更、保守・点検等の作業を行う場合、前記設定された構成を分解して再構成しなければならず、非常に煩雑である。また、本体、移動体、駆動機構、駆動源等が、アクチュエータとして一体的に形成されているため、設置場所が限定され、現場での作業が行いにくい等の不都合もある。
【0004】本発明に係るアクチュエータは、構造部材と搬送部材とが個別、且つ着脱自在に構成され、所望のスペース内で自在に組み立てて構成することが可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、本発明は、直線的に延在し柱状に形成され、機能面に凹部が画成されて外枠を構成する構造部材と、前記凹部に、駆動源および該駆動源の駆動作用下にその長さ方向に直線的にまたは回転自在に変位する移動体が配置された移動部材とから構成されるアクチュエータであって、前記構造体と前記移動体とが個別に、且つ取付手段を介して着脱自在に形成されるとともに、前記構造体を複数個連結して組み立て自在に形成される手段を有することを特徴とする。」

(6b)「【0008】
【実施例】次に、本発明に係るアクチュエータについて好適な実施例を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0009】本発明の第1実施例に係るアクチュエータ10は、基本的に、図1に示すように、外枠を構成する構造体(構造部材)12と、エンコーダを有する、またはハーモニックドライブを用いたモータ14、ボールねじ16および移動体18等からなる移動部材20から構成される。図2は、図1の分解斜視図である。
【0010】構造体12は、内側の底部に2本のレール状の溝部22が画成され、内側の両側面に凹部24および外側側面に凹部26、28が長手方向に形成され、押し出し、引き抜き、金属射出成形または樹脂鋳造等により一体成形される。」

(6c)「【0014】まず、図2に示すように、フレーム部36にモータ14、ケーシング部30、ボールねじ16、移動体18、ボールねじ支持部34等が連設された移動部材20を構造体12に固定する。その際、フレーム部36に設けられたねじ穴40を通して、構造体12の底部に刻設された2本のレール状の溝部22にTナットまたはナット32を挿入し、ねじ38により締め付け、移動部材20を固定する。・・・【0015】以上のようにして、ワークを搬送するための位置決めをして設定した後、移動位置を再調節または変更する場合には、構造体12に固定されているフレーム部36のねじ38を緩めて、移動部材20を構造体12からその長さ方向に変位させることができる。この場合、構造体12を、例えば、作業盤等に固定した状態で移動部材20を移動させることができる。また、アクチュエータ10の保守・点検を行う場合には、構造体12のレール状の溝部22に嵌合させたねじ38を緩めて、構造体12から移動部材20を取り外して容易に保守・点検等を行うことができる。」

(6d)「



(7)甲第7号証
(7a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 田植機の多条苗載台の左右両側の複数条を中央側に折畳む折畳み機構を有し、苗載台下方に前後方向に長い植付けケースを左右に複数個配置し、植付けケースの左右両端部に植付け爪を具備する田植機において、外側位置の植付けケースに動力を伝達する連結パイプと該連結パイプ内部に収納される伝動軸とを伸縮可能に構成し、外側位置の植付けケースを非作業時に内側方向に移動可能にしたことを特徴とする田植機の植付け部の縮小構成。」

(7b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の植付け部の苗載台は、折畳まれることで左右幅を縮小して走行車の車幅以内に縮小されているが、苗載台下部に配置し、苗を圃場に植え付ける植付け爪の内で、左右端部に配置されている植付け爪は車幅より外側に位置するものとなっており、田植機を運搬する為に、トラックの荷台等に積載すると、この両端部の植付け爪を荷台側面等に接触させて、植付け爪を変形する可能性があるた。その為に、田植機を縮小させる際に、左右両端部の植付け爪の間隔を縮小させる必要があった。同様に多条苗載台を左右方向に摺動自在に載置する下部レールの左右両端部を車体幅より側方に突出させることのないようにする必要があった。」

(7c)「【0014】外側位置の前記植付けケース20に動力を伝達する連結パイプ40は、内側の植付けケース20に固設される固定パイプ40aと外側位置の植付けケース20に固設される伸縮パイプ40bより成り、固定パイプ40a内に伸縮パイプ40bを摺動自在に挿入している。また、前記伸縮パイプ40bの外周面にスプライン溝を穿孔し、該スプライン溝に係合する溝を固定パイプ40a内に形設することで、外側の植付けケース20が連結パイプ40を中心に回動することなく、植付けケース20を前後方向の水平を保った状態で移動することができる。
【0015】また、図4、図5に示すように、前記連結パイプ40内に収納されている伝動軸41は伸縮自在に構成されている。即ち、前記伝動軸41が断面形状を多角形とする多角形軸41aと、該多角形軸41aを嵌合する角パイプ軸41bより構成し、固定パイプ40a内に角パイプ軸41bを収納し、伸縮パイプ40b内に多角形軸41aが収納され、連結パイプ40を収縮させると、角パイプ軸41b内に多角形軸41aが挿入されている。尚、前記伝動軸41は、多角形軸41aと角パイプ軸41bに限定されるものでなく、スプライン軸にすることもできる。
【0016】また、前記連結パイプ40の固定パイプ40a外側端部にピン孔40cが開口され、該ピン孔40cにロックピン42が摺動自在に挿入されている。一方、前記伸縮パイプ40bの外側端部に、固定孔40dが開口されており、伸縮パイプ40bを固定パイプ40a内に挿入し、連結パイプ40が最も収縮された位置において、ピン孔40cと固定孔40dとの軸芯が一致し、ロックピン42を固定孔40d内に挿入することで、連結パイプ40の伸縮が「最収縮位置」において固定されている。」

(7d)「



5 対比・判断
(1)本件発明1について

ア 甲第1号証記載の発明について
上記摘記事項(1a)には、前後方向に型開きされるダイカストマシンから製品を取出してこれを該ダイカストマシンの横側方の払出場所に払出す製品取出装置において、該ダイカストマシンと該払出場所との間に、該ダイカストマシンの型開き空間の横側部に位置する作動位置と該作動位置から離れた逃げ位置とに前後動自在な架台を設け、該架台上に垂直軸線回りに旋回可能で且つ直交3軸方向に移動可能な移動機構を搭載して、該移動機構に製品の把持具を取付けたダイカストマシンにおける製品取出装置が記載されている。
摘記(1c)には、図に示した具体的装置の説明として、ダイカストマシン(1)は、固定型(5)と可動型(6)とを取付けて成り、該可動型(6)を該固定型(5)に対し後方に片開きした状態で製品Wを取出して、これを該マシン(1)の横側方の払出場所(7)に待機するパレット(8)に載置し、ダイカストマシン(1)と払出場所(7)との間に、該マシン(1)の型開き空間の横側部に位置する前方の作動位置Aと、該作動位置Aから離れた後方の逃げ位置Bとに滑動台(9b)上のガイドレール(9c)(9c)に沿って前後動される架台(9)を設け、該架台(9)上に垂直軸線回りに旋回可能で且つ直交3軸方向に移動可能な移動機構(10)を搭載して、該移動機構(10)に製品Wの把持具(11)を取付け、該把持具(11)を該移動機構(10)により移動させて上記した製品Wの取出とパレット(1)への移載とを行うようにしたことが記載されている。
摘記(1d)には、図に示した移動機構の具体的構造の説明として、移動機構(10)は、架台(9)上に設けた、垂直軸線回りに旋回される旋回台(12)と、該旋回台(12)の上面のガイド枠(13)に取付けたガイドバー(13a)(13a)に沿って前後動される第1スライド枠(14)と、該第1スライド枠(14)に取付けたガイドバー(14a)(14a)に沿って左右動される第2スライド枠(15)と、該第2スライド枠(15)に取付けたガイドバー(15a)(15a)に沿って左右動される第3スライド枠(16)と、該第3スライド枠(16)上のガイドバー(16a)(16a)に沿って上下動される昇降枠(17)とから成るもので、該昇降枠(17)に水平軸線回りに回転されるアーム(18)を介して把持具(11)を取付けたことが記載されている。

したがって、甲第1号証には、「前後方向に型開きされるダイカストマシンから製品を取出してこれを該ダイカストマシンの横側方の払出場所に払出す製品取出装置において、該ダイカストマシンと該払出場所との間に、該マシンの型開き空間の横側部に位置する前方の作動位置Aと、該作動位置Aから離れた後方の逃げ位置Bとに滑動台上のガイドレールに沿って前後動される架台(9)を設け、該架台上に設けた移動機構(10)が、垂直軸線回りに旋回される旋回台(12)と、該旋回台の上面のガイド枠(13)に取付けたガイドバーに沿って前後動される第1スライド枠(14)と、該第1スライド枠(14)に取付けたガイドバーに沿って左右動される第2スライド枠(15)と、該第2スライド枠(15)に取付けたガイドバーに沿って左右動される第3スライド枠(16)と、該第3スライド枠(16)上のガイドバーに沿って上下動される昇降枠(17)とから成り、該昇降枠(17)に水平軸線回りに回転されるアーム(18)を介して把持具(11)を取付けた、垂直軸線回りに旋回可能で且つ直交3軸方向に移動可能な前記移動機構を搭載したダイカストマシンにおける製品取出装置」(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

イ 対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「前後方向に型開きされるダイカストマシンから製品を取出してこれを該ダイカストマシンの横側方の払出場所に払出す製品取出装置」で「該ダイカストマシンと該払出場所との間に、・・・前後動自在な架台を設け」た「製品取出装置」は、本件発明1の「成形機の金型の開閉方向と直交する直交方向に前記成形機と並んで配置され」た「成形品取出機」に相当し、引用発明の「前後動」「左右動」は、それぞれ、本件発明1の「金型の開閉方向」「に移動」すること、「金型の開閉方向と直交する直交方向に移動する」ことに相当し、引用発明の「第2スライド枠(15)」は、前後動しながら、ダイカストマシンから製品を取出す把持具(11)を左右動させている点を考慮すると、本件発明1の「金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために、」「前記開閉方向に移動し且つ前記直交方向に移動する可動フレーム」に相当するといえる。
そして、引用発明の「架台(9)」「製品Wの把持具(11)」は、それぞれ、本件発明1の「設置用構造部材」「金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメント」に相当し、引用発明の「製品Wの把持具(11)を取付けられ、垂直軸線回りに旋回可能で且つ直交3軸方向に移動可能な移動機構(10)」は、本件発明1の「金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために」「前記開閉方向に移動し且つ前記直交方向に移動する可動フレーム」「を備え」たものである限りにおいて、一致している。

したがって、本件発明1と引用発明とは、「成形機の金型の開閉方向と直交する直交方向に前記成形機と並んで配置され、
前記金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために、前記開閉方向に移動し且つ前記直交方向に移動する可動フレームとを備えて、前記成形機の金型から成形品を前記直交方向に取り出す成形品取出機」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:固定フレームに関して、本件発明1では、設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームを備えているのに対して、引用発明では、架台に直接、製品Wの把持具(11)を移動可能な移動機構が取り付けられていて、開閉方向に延びる固定フレームに相当する部材を備えていない点

相違点2:金型交換の際の成形品取出機の待避手段として、本件発明1では、固定フレームが、金型を交換する際に、成形機から離れて金型開閉方向と直交方向に全体的に位置が変えられることを可能にする取付機構を介して設置用構造部材に取り付けられているのに対して、引用発明では、ダイカストマシンと払出場所との間に設けた架台自体が、該マシンの型開き空間の横側部に位置する前方の作動位置Aと、該作動位置Aから離れた後方の逃げ位置Bとに滑動台上のガイドレールに沿って金型開閉方向に前後動する点

相違点3:固定フレームの取付機構として、本件発明1では、固定フレームが取り付けられる取付プレートと、前記取付プレートを前記直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、手作業により操作される操作部を備え、前記取付プレートを所定位置に固定状態にすることと、前記固定状態を解除してスライド可能にすることを実現する手動操作型の固定機構とを備えていると特定しているのに対して、引用発明では、そのような固定フレームの取り付け機構を備えていない点

相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(ア)相違点1の判断について
甲第2号証には、摘記(2b)に「【0019】装置本体1は、固定側プラテン9の上面に載置固定することによって取付けられている。この装置本体1は、成形品把持部2を有する第1アーム3と、・・・これら第1アーム3・・・金型の合わせ面に平行なY軸方向に進退移動させる第1駆動手段6と、第1アーム3・・・からの数値制御信号に基づいて金型の合わせ面に直交するX軸方向に進退移動させる第2駆動手段7と、・・・を備えている。・・・【0020】第1駆動手段6は、図2,図3および図4に示すように、Y軸方向にのびるY軸ビーム60と、このY軸ビーム60に複数のローラ61,61によるころがり接触状態でY軸方向に進退移動自在に跨乗するY軸移動ベース62、・・・Y軸ビーム60の基端部は固定側プラテン9の上面に載置固定されている・・・【0021】第2駆動手段7は、図2、図3および図4に示すように、X軸方向にのびるX軸ビーム70と、このX軸ビーム70に複数のローラ71,71によるころがり接触状態でX軸方向に進退移動自在に取付けられたX軸移動ベース72、・・・を備えており、X軸ビーム70の基端部はY軸移動ベース62に載置して締結固定されている」と記載され、装置本体は、成形機の固定側プラテンの上面に基端部を載置固定したY軸方向にのびるY軸ビーム60が成形品把持部2を有する第1アーム3を第1駆動手段、第2駆動手段によって、金型の合わせ面に平行なY軸方向、金型の合わせ面に直交するX軸方向に進退移動されることが示されている。
甲第3号証には、摘記(3b)に、「上記固定側取付盤5上には、成形品取出し機17の本体フレーム19が固定されている。該本体フレーム19は樹脂成形機1の中心軸線と直交する左右方向へ延出し、第1走行体21が樹脂成形機1の中心軸線と直交する左右方向へ往復移動するように支持されている。該第1走行体21には樹脂成形機1の中心軸線と一致する型締め方向(以下においては、型締め方向を前後方向とも称する。)へ延出する前後フレーム23が設けられ、該前後フレーム23には第2走行体25が前後方向へ往復移動するよように支持されている。」と記載されているように、成形品取出し機は、固定側取付盤5上に本体フレーム19が固定され、樹脂成形機1の中心軸線と直交する左右方向へ延出して設けられ、該第1走行体21、第2走行体25によって、チャック29が取り付けられた上下アームを樹脂成形機1の中心軸線と直交する左右方向及び型締め方向に往復移動させることが示されている。
甲第4号証には、「成形品取出機本体3は、トラバース型であって、基部9が射出成形機11の固定プラテン13に搭載固定されているとともに成形機11の長手方向に水平に直交したX軸方向に延設される横行アーム15と、横行アーム15に搭載され成形機11の長手方向であるY軸方向に延設されて・・・横行アーム15上をX軸方向に進退移動する移動アーム17と、・・・この移動アーム17に垂設されて・・・Y軸方向に進退移動するとともに、・・・Z軸方向に昇降する昇降アーム19と、昇降アーム19の下端部に設けられて成形品を保持するアタッチメントヘッド21とを備えている。」と記載されているように、成形品取出機本体は、基部9が射出成形機11の固定プラテン13に搭載固定され、長手方向に水平に直交したX軸方向に延設される横行アーム15を設け、アタッチメントヘッド21を備えた昇降アーム19をX軸Y軸X軸方向に進退移動させることが示されている。
引用発明は、摘記(1b)に記載されるように、取出装置を上方の機枠に配置することによる装置のメンテナンス作業の問題、ダイカストマシンの金型交換作業や新規金型の試し打ちに際し取出装置が邪魔になって作業性が悪くなる問題を解決するため、該マシンの型開き空間の横側部に位置する前方の作動位置と、該作動位置から離れた後方の逃げ位置とに前後動可能な架台を設けたものであるから、架台を固定し、架台上に開閉方向に延びる固定フレームに相当する部材を設けることは、作業空間を設けるという引用発明の機能を果たさなくなる構造変更であるので、そのような変更の動機付けはない。
また、甲第2?4号証は、いずれも取出し装置を、成形機の金型設置用の固定プラテン上に搭載固定された成形機の金型の開閉方向と直交方向に延びる固定部材が設けられ、該固定部材上に、金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために移動する可動フレームを設けた装置が記載されており、固定部材は、成形機に設けてあり、金型の開閉方向と直交方向にならざる得ないし、引用発明の設置用構造部材に相当する架台上に取り付けられて金型の開閉方向に延びる固定フレームを設ける構成とはならない。
そして、甲第2号証は、摘記(2a)から、全体としての設置スペースが大きくなることを問題とし、甲第3号証は、摘記(3a)から、成形品取出アタッチメントであるチャックの曲線移動を設定する作業の手間を問題とし、甲第4号証は、摘記(4a)から、成形品取出機の所望の動作モードの設定が簡単にできるコントローラを備えた装置を提供することを目的としていることも考慮すると、なおさら成形機と取出装置が別体となった引用発明に対して、甲第2?4号証の技術的事項を適用することはできないといえる。

その他、甲第5?7号証にも、設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームに関する記載はないので、引用発明において、相違点1に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到するものとはいえない。

特許異議申立人は、甲第2号証の「X軸ビーム70」、甲第3号証の「前後フレーム23」、甲第4号証の「移動アーム17」を本件発明1の「金型」の「開閉方向に延びる固定フレーム」に相当する旨の主張をしているが、それらの部材は、上述のとおり、金型設置用の固定プラテン上に搭載固定された成形機と一体化された装置の部材であって、本件発明1の「成形品取出機」の「設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレーム」に相当するとはいえない。

(イ)相違点2の判断について
引用発明は、相違点1で述べたとおり、取出装置を上方の機枠に配置することによる装置のメンテナンス作業の問題、ダイカストマシンの金型交換作業や新規金型の試し打ちに際し取出装置が邪魔になって作業性が悪くなる問題を解決するため、該マシンの型開き空間の横側部に位置する前方の作動位置と、該作動位置から離れた後方の逃げ位置とに前後動可能な架台を設けたものであるから、架台を固定し、架台上に開閉方向に延びる固定フレームに相当する部材を設けることは、作業空間を設けるという引用発明の機能を果たさなくなる構造変更であるので、そのような変更の動機付けはない。
さらに、架台上に開閉方向に延びる固定フレームに相当する部材を設ける動機付けがない上に、架台上に開閉方向に延びる固定フレームに相当する部材を、前記金型を交換する際に、前記成形機から離れて前記直交方向に全体的に位置が変えられることを可能にする取付機構を介して設置用構造部材に取り付けるようにすることは、引用発明の架台部分を金型開閉方向に移動させることと、移動対象、移動方向ともに異なった根本的に異なる手段あるため、その点でも変更の動機付けはない。
そして、相違点1で述べたとおり、甲第2?4号証の取出装置は、成形機の金型設置用の固定プラテン上に搭載固定された成形機の金型の開閉方向と直交方向に延びる固定部材が設けられ、該固定部材上に、金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために移動する可動フレームを設けた装置が記載されており、可動フレームをガイドし、成形品取出アタッチメントを移動させるために移動する可動フレームをガイドする固定フレームに相当する部材は成形機に固定され、延びる方向も異なっているのであるから、例え甲第2?4号証の取出装置の技術的事項を適用しても、開閉方向に延びる固定フレームに相当する部材を、前記金型を交換する際に、前記成形機から離れて前記直交方向に全体的に位置が変えられることを可能にする取付機構を介して設置用構造部材に取り付ける構成とすることはできない。
その他、甲第5?7号証にも、設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームに関する記載や金型を交換する際に、前記成形機から離れて前記直交方向に全体的に位置が変えられることを可能にする取付機構を介して設置用構造部材に固定フレームを取り付ける構成に関する記載はないので、引用発明において、相違点2に係る構成を備えることも、当業者が容易に想到するものとはいえない。

(ウ)相違点3の判断について
甲第5号証には、摘記(5b)に、「旋回形成形品取出機1の固定ベース3は樹脂成形機の固定プラテン5の上面に固定される。該固定ベース3は固定プラテン5の上面から起立した後に樹脂成形機の可動プラテン(図示せず)側に向って延出する平面部3aと、該平面部3aの先端部にて垂下する固定部3bを有した形状に形成される。尚、上記固定ベース3は固定プラテン5の上面に対し、長孔を介してボルト止めすることにより軸線直交方向へ位置調整可能に固定される」と記載されるように、旋回成形品取出機1の固定ベース3を樹脂成形機の固定プラテン5の上面に固定すること、固定プラテン5の上面に対し、長孔を介してボルト止めすることにより軸線直交方向へ位置調整可能に固定することが記載されている。
しかしながら、旋回成形品取出機の固定ベースを樹脂成形機の固定プラテンの上面に固定し、位置の長孔を用いて微調整を可能にすることを前提とするものであり、摘記(5a)に記載のとおり、旋回アームの旋回運動及び直線運動を同時に行うことにより成形品取出し時間を大幅に短縮して高速取出しを可能にし、取出機自体の耐久性を高めることができると共に旋回アームの回動停止における衝撃を低減して取出し不良を防止することを目的としたものであることも考慮すると、本件発明1のような、設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームに関して述べたものではないし、固定フレームが取り付けられる取付プレートや取付プレートのスライド支持機構や手動操作型の固定機構に関して述べたものともいえない。
甲第6号証には、摘記(6b)摘記(6c)に、「アクチュエータ10は、基本的に、図1に示すように、外枠を構成する構造体(構造部材)12と、・・・移動体18等からなる移動部材20から構成され、移動体18、ボールねじ支持部34等が連設された移動部材20を構造体12に固定する。その際、フレーム部36に設けられたねじ穴40を通して、構造体12の底部に刻設された2本のレール状の溝部22にTナットまたはナット32を挿入し、ねじ38により締め付け、移動部材20を固定する。・・・ワークを搬送するための位置決めをして設定した後、移動位置を再調節または変更する場合には、構造体12に固定されているフレーム部36のねじ38を緩めて、移動部材20を構造体12からその長さ方向に変位させることができ、・・・構造体12から移動部材20を取り外して容易に保守・点検等を行うことができる。」と記載されるように、アクチュエータの構造として、構造体(構造部材)に対して、移動部材をねじ固定したりねじ38を緩めて移動位置を再調整することが記載されている。
しかしながら、甲第6号証は、摘記(6a)に記載されるとおり、ワーク搬送のためのアクチュエータの構造に関して、構造部材と搬送部材とが個別、且つ着脱自在に構成され、所望のスペース内で自在に組み立てて構成することが可能なアクチュエータを提供することを前提とするものであり、本件発明1の可動フレームの構造に関するものといえ、設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームに関して述べたものではないし、固定フレームが取り付けられる取付プレートや取付プレートのスライド支持機構や手動操作型の固定機構に関して述べたものともいえない。

その他、甲第2?4、7号証にも、固定フレームの取付機構として、固定フレームが取り付けられる取付プレートと、前記取付プレートを前記直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、手作業により操作される操作部を備え、前記取付プレートを所定位置に固定状態にすることと、前記固定状態を解除してスライド可能にすることを実現する手動操作型の固定機構に関する記載はないので、引用発明において、相違点3に係る構成を備えることも、当業者が容易に想到するものとはいえない。

エ 効果について
本願明細書【0008】【0022】に示されるように、本件発明1は、成形機から直交方向に離れた固定フレームと成形機との間に開平方向全体に従来よりも広い作業スペースを確保でき、固定フレームを直交方向に変位させることを可能にする取付機構は、安価なものでも位置決め精度が高いため、固定フレームを高い精度で定位置に戻すことができるとの効果を奏しているといえ、このような効果は、甲第1?7号証の記載から、当業者が容易に予測し得たものとはいえない。

オ 小括
甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載された発明に基いて、本件発明1を、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)本件発明3について
ア 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1において、スライド支持機構及び固定機構に関して、さらに特定し、前記スライド支持機構に関しては、「前記設置用構造部材に固定された2本のスライドレールと、該2本のスライドレールにスライド可能に保持されて前記取付プレートに固定された複数のスライダとからな」ることを、前記固定機構に関しては、「前記2本のスライドレールの間に位置するように前記設置用構造部材に固定された第1の取付部材と、前記取付プレートが固定状態にあるときに前記第1の取付部材と当接するように前記取付プレートに固定された第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材とが当接している状態で、前記第1及び第2の取付部材を1本以上のネジ部材によりネジ止めする締結機構とからなる」ことをそれぞれ限定した発明である。

イ 対比
したがって、本件発明3と引用発明を対比すると、前記相違点1?3以外に、以下の相違点4が認定できる。

相違点4:前記取付プレートを前記直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、手動操作型の固定機構に関して、本件発明3においては、前記スライド支持機構は、前記設置用構造部材に固定された2本のスライドレールと、該2本のスライドレールにスライド可能に保持されて前記取付プレートに固定された複数のスライダとからなり、
前記固定機構は、前記2本のスライドレールの間に位置するように前記設置用構造部材に固定された第1の取付部材と、前記取付プレートが固定状態にあるときに前記第1の取付部材と当接するように前記取付プレートに固定された第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材とが当接している状態で、前記第1及び第2の取付部材を1本以上のネジ部材によりネジ止めする締結機構とからなると特定されているのに対して、
引用発明においては、設置用構造部材に取り付けられて金型記開閉方向に延びる固定フレームが存在せず、固定フレームを取付けるための、取付プレートを前記直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構や、手動操作型の固定機構が存在しない点。

相違点の判断
相違点1?3が引用発明から当業者が容易に想到し得ないことは、本件発明1において、検討したとおりであるが、相違点4に関して、甲第7号証には、田植機の植付け部の縮小構成として(摘記(7a))、田植機を運搬する為に、トラックの荷台等に積載すると、この両端部の植付け爪を荷台側面等に接触させて、植付け爪を変形する可能性があるため、田植機を縮小させる際に、左右両端部の植付け爪の間隔を縮小させる必要があり、多条苗載台を左右方向に摺動自在に載置する下部レールの左右両端部を車体幅より側方に突出させることのないようにする必要があるところ(摘記(7b))、「前記連結パイプ40の固定パイプ40a外側端部にピン孔40cが開口され、該ピン孔40cにロックピン42が摺動自在に挿入されている。一方、前記伸縮パイプ40bの外側端部に、固定孔40dが開口されており、伸縮パイプ40bを固定パイプ40a内に挿入し、連結パイプ40が最も収縮された位置において、ピン孔40cと固定孔40dとの軸芯が一致し、ロックピン42を固定孔40d内に挿入することで、連結パイプ40の伸縮が「最収縮位置」において固定されている。」との田植機の植付け部の縮小構成に関する記載がある。

しかしながら、甲第7号証には、固定フレームの取付プレートを金型開閉方向の直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構や手動操作型の固定機構に関して記載がなく、ましてや、該スライド支持機構として、設置用構造部材に固定された2本のスライドレール、2本のスライドレールにスライド可能に保持されて前記取付プレートに固定された複数のスライダが存在することや、該固定機構として、前記2本のスライドレールの間に位置するように前記設置用構造部材に固定された第1の取付部材と、前記取付プレートが固定状態にあるときに前記第1の取付部材と当接するように前記取付プレートに固定された第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材とが当接している状態で、前記第1及び第2の取付部材を1本以上のネジ部材によりネジ止めする締結機構に関しては、まったく記載がない。

また、そのような構成は、甲第2?6号証にも記載がなく、引用発明において、固定フレームが取り付けられる取付プレートと、前記取付プレートを前記直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、手作業により操作される操作部を備え、前記取付プレートを所定位置に固定状態にすることと、前記固定状態を解除してスライド可能にすることを実現する手動操作型の固定機構とを備えた構成とすることも当業者が容易になし得たものとはいえない。

したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び3の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-06-14 
出願番号 特願2011-220361(P2011-220361)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 佐藤 健史
瀬良 聡機
登録日 2015-08-21 
登録番号 特許第5795929号(P5795929)
権利者 株式会社ユーシン精機
発明の名称 成形品取出機  
代理人 西浦 ▲嗣▼晴  

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