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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01G
管理番号 1315966
審判番号 無効2015-800100  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-31 
確定日 2016-05-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5475536号発明「緑化装置及び緑化工法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5475536号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人ら(以下「被請求人」という。)が特許権者である特許第5475536号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、手続の経緯は、以下のとおりである。

平成22年 4月22日 本件出願(特願2010-98934号)
平成26年 2月14日 設定登録(特許第5475536号)
平成27年 3月31日 本件無効審判請求
平成27年 5月21日 審判請求書の手続補正書(方式)提出
請求人より上申書提出
平成27年 7月27日 被請求人より答弁書及び訂正請求書提出
平成27年 9月18日 請求人より弁駁書提出
平成27年11月 5日 審理事項通知書(起案日)
平成27年11月19日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年12月 4日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年12月15日 口頭審理
平成28年 1月 6日 請求人より上申書提出
平成28年 1月20日 被請求人より上申書提出

第2 本件発明
1 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下「本件特許発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
植物を生育する植生基盤が充填され、多面を有する緑化装置であって、
前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、
前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体と、
前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材と、
を備える緑化装置。
【請求項2】
前記ユニット及び前記連結体は、格子状又は複数孔を有する平板状の枠体と、該枠体の内側に配置され植生基盤を内包すると共に通気性を有するマットとを有する請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
前記ユニットは、上面のみが開放され、前記連結体は、前記ユニットとの接続可能な状態において、前記ユニットとの接続面と上面とが開放されている請求項1又は2に記載の緑化装置。
【請求項4】
前記ユニットは、前記連結体との接続面に設けられる仕切部であって、前記連結体と接続された際に取り外すことで、該ユニット内と該ユニットと連結体によって囲まれる空間とを連通させる仕切部を更に有する請求項1から3の何れか1項に記載の緑化装置。
【請求項5】
緑化装置を用いた緑化方法であって、
前記緑化装置の設置場所において、前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体とを、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材によって、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続工程と、
前記緑化装置に植生基盤を補充する植生基盤補充工程と、
を備える緑化装置を用いた緑化工法。」

2 本件訂正発明
本件特許について、平成27年7月27日に訂正請求書(当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)が提出されており、訂正後の本件特許の請求項1ないし5係る発明(以下「本件訂正発明1」などという。)は、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
植物を生育する植生基盤が充填され、多面を有する緑化装置であって、
前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、
前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体と、
前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材と、
を備える緑化装置。
【請求項2】
前記ユニット及び前記連結体は、格子状又は複数孔を有する平板状の枠体と、該枠体の内側に配置され植生基盤を内包すると共に通気性を有するマットとを有する請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
前記ユニットは、上面のみが開放され、前記連結体は、前記ユニットとの接続可能な状態において、前記ユニットとの接続面と上面とが開放されている請求項1又は2に記載の緑化装置。
【請求項4】
前記ユニットは、前記連結体との接続面に設けられる仕切部であって、前記連結体と接続された際に取り外すことで、該ユニット内と該ユニットと連結体によって囲まれる空間とを連通させる仕切部を更に有する請求項1から3の何れか1項に記載の緑化装置。
【請求項5】
緑化装置を用いた緑化方法であって、
前記緑化装置の設置場所において、前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体とを、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材によって、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続工程と、
前記緑化装置に植生基盤を補充する植生基盤補充工程と、
を備える緑化装置を用いた緑化工法。」

3 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下のとおり記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化装置及び緑化工法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやアスファルトによって形成される地面や、建造物の天端面などを緑化する種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、箱体に植生基盤を充填して植生した多面緑化体が開示されている。この多面緑化体は、箱体が、金網製であり、四角形の複数の側面を有している。また、箱体内の複数の側面に、基盤マットに植物を植生して予め製造した植生ブロックマットが収容されている。また、植生ブロックマットの内側には、無機質の植生基盤が充填され、箱体の複数の側面と上面には、植物が植えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4383971号公報
【特許文献2】特許第4437199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリートやアスファルトによって形成される地面や、建造物の天端面などを緑化する種々の技術が提案されている。例えば上記多面緑化体によれば、限られたスペースにおいてより多くの植生面積を提供することができる。多面緑化体は、設置場所とは異なる場所で予め製造し、完成した多面緑化体を運搬して設置場所に設置することができる。但し、多面緑化体が大型化すると運搬が困難となる。また、多面緑化体が大型化すると、設置場所に移動式クレーンなどの重機を搬入する必要があり、設置作業が大掛かりとなる。また、重機の搬入ができない設置場所も存在する。そこで、多面緑化体の運搬が困難である場合には、設置場所で組み立てる必要があるが、箱体、植生ブロックマット、植生基盤からなる多面緑化体を設置場所で組み立てると作業が煩雑となる。また、上記多面緑化体に限らず、緑化する規模が大きくなるにつれて一般的には現場施工となり、施工性に優れた技術の開発が望まれる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、従来よりも施工性に優れた緑化技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するため、多面を有する緑化装置の面のうちの少なくとも一面を、植物が予め植えられた植生面を有するユニットであって内部に植生基盤が充填されたユニットの上記植生面によって構成することとした。また、ユニットと、緑化装置を構成する他の部分としての連結体とを接続部材によって接続自在とした。
【0007】
詳細には、本発明は、植物を生育する植生基盤が充填され、多面を有する緑化装置であって、前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体と、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材と、を備える。
【0008】
本発明によれば、ユニットが植生面を有することから、設置場所において植物を植える手間を省くことができ、施工性が向上する。また、植物の植えつけは、熟練度によって完成後の見栄えや植物の生育に影響を与えることが懸念されるが、本発明ではユニットが植生面を有することからそのような懸念も解消される。また、植生面を備えることで設置当初から緑化効果を得ることができ、また、美観にも優れている。更に、ユニットと連結体とが接続自在、換言すると両者が分離自在であることから、運搬が容易となる。従って、従来移動式のクレーンなどの重機が必要とされた大型の緑化装置を設置する場合においても、重機を用いずに緑化装置を設置することができる。
【0009】
ここで、植生基盤とは、緑化装置に植えられる植物を生育するための土台を意味する。植生基盤は、保水性の高い軽量土壌を用いることが好ましいが、植物を生育できるものであればよい。植生基盤は、ユニット内には予め充填されているが、それ以外の領域、すなわちユニットと連結体によって囲まれる空間には、ユニットと連結体との接続後に充填(補充)される。ユニット内だけでなく、緑化装置内全てに植生基盤を充填することで植生される植物に対してより十分な水分を供給することが可能となる。
【0010】
本発明に係る緑化装置は、多面を有する。面数は、限定されないが、例えば、6面の場合、緑化装置は6面体となる。本発明では、多面のうちの少なくとも一面が、ユニットの植生面、すなわち予め植物が植えられた面によって形成されていればよく、複数面をユニットの植生面によって形成してもよい。例えば、面数を6面とし緑化装置を6面体とした場合、本発明に係る緑化装置は、正面と背面の2面をユニットの植生面で形成してもよい。本発明に係る緑化装置は、上記のようにユニットと連結体とを組み合わせることで構成されることから、従来技術によって構成される一体型のものと比べて運搬が容易となる。従って、本発明に係る緑化装置は、運搬が困難とされる大型の緑化装置として特に好適に用いることができる。
【0011】
本発明に係る緑化装置において、前記ユニット及び前記連結体は、格子状又は複数孔を有する平板状の枠体と、該枠体の内側に配置され植生基盤を内包すると共に通気性を有するマットとを備える構成とすることができる。枠体とは、ユニットや連結体を構成する構造体であり、植生基盤が充填されたユニットや連結体を支持する。枠体は、通気性と十分な強度を有していればよく、その態様は特に限定されない。マットは、枠体の内側に設けられ、植生基盤が外部へ漏れるのを防止する。接続部材の態様は特に限定されず、ユニットや連結体の枠体同士を接続できるものであればよい。枠体を格子状とする場合、接続部材は、螺旋状の接続部材によって構成することができる。螺旋状の接続部材を接続部材の軸方向を中心に回転させ、螺旋状の接続部材の先端をユニットの枠体と連結体の枠体とが接続された端部における格子に順次通していくことで、ユニットと連結体とを接続することが可能となる。なお、ユニットと連結体は、同じ枠体やマットで構成することが好ましいが、材質などが異なる枠体やマットで構成してもよい。
【0012】
なお、前記ユニットは、上面のみが開放され、前記連結体は、前記ユニットとの接続可能な状態において、前記ユニットとの接続面と上面とが開放された構造とすることができる。ユニットは、予め植生基盤が充填されている必要があるため、下面と側面の全てに枠体とマットを有している必要がある(連結体との接続面については、後述する仕切部でもよい。)。側面には、ユニットを6面体とした場合における正面や背面も含まれる。これに対し、連結体は、ユニットと接続された際に、緑化装置においてユニットが設けられる以外の面を形成できればよい。従って、連結体では、ユニットとの接続面について、枠体やマットを設ける必要はない。なお、連結体がユニットとの接続可能な状態とは、連結体がユニットと接続されると緑化装置が完成する状態にあることを意味する。連結体は、ユニットと異なり、設置場所において組み立てることも可能であり、各面を構成する枠体やマットを平面状のまま保管や運搬が可能である。従って、接続可能な状態の連結体には、平面状の枠体やマットそのものは含まれない。
【0013】
ここで、本発明に係る緑化装置において、前記ユニットは、前記連結体との接続面に設けられる仕切部であって、前記連結体と接続された際に取り外すことで、該ユニット内と該ユニットと連結体によって囲まれる空間とを連通させる仕切部を更に有する構成としてもよい。緑化装置の完成後は、ユニット内とユニットと連結体によって囲まれる空間とを連通させることで、緑化装置の設置後において、ユニット内に予め充填されている植生基盤からだけでなく、ユニット内とユニットと連結体によって囲まれる空間に充填される植生基盤からもユニットの植物に対して水分を供給することが可能となる。
【0014】
ここで、本発明は、上述した緑化装置を用いた緑化工法として特定することもできる。具体的には、本発明は、緑化装置を用いた緑化方法であって、前記緑化装置の設置場所において、前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体とを、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材によって、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続工程と、前記緑化装置に植生基盤を補充する植生基盤補充工程と、を備える。
【0015】
本発明によれば、設置場所において、植生面を有するユニットと連結体とを接続することで緑化装置を設置することができ、従来よりも施工性が向上される。また、植物の植えつけは、熟練度によって完成後の見栄えや植物の生育に影響を与えることが懸念されるが、本発明ではユニットが植生面を有することからそのような懸念も解消される。また、ユニットと連結体とが接続自在、換言すると両者が分離自在であることから、運搬が容易となる。
【0016】
なお、本発明に係る緑化工法は、ユニットや連結体を運搬する運搬工程や植生基盤が補充された緑化装置における植生面以外の面に植物を植えつける植生工程を更に備えるようにしてもよい。また、本発明に係る緑化工法は、前記連結体との接続面に設けられる仕切部であって、前記連結体と接続された際に取り外すことで、該ユニット内と該ユニットと連結体によって囲まれる空間とを連通させる仕切部を取り外す仕切部撤去工程を更に備えるようにしてもよい。なお、仕切部撤去工程は、接続工程の実行後かつ植生基盤補充工程の実行前、植生基盤補充工程の実行後、接続工程の実行後かつ植生基盤補充工程と平行して行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来よりも施工性に優れた緑化技術を提供することができる。
・・・(略)・・・
【0040】
<作用効果>
以上説明した実施形態に係る緑化装置1によれば、限られたスペースにおいてより多くの植生面積を提供することができ、また、ユニット2の正面に予め植物4が植えられている植生面20を有することから、設置場所において植物を植える手間を省くことができ、施工性が向上する。また、植物の植えつけは、熟練度によって完成後の見栄えや植物の生育に影響を与えることが懸念されるが、実施形態に係る緑化装置ではそのような懸念も解消される。また、植生面を備えることで設置当初から緑化効果を得ることができる。更に、ユニット2と連結体3とが接続自在、換言すると両者が分離自在であることから、運搬が容易となる。また、実施形態に係る緑化装置は、運搬が困難とされる大型の緑化装置として特に好適に用いることができる。」

第3 請求人の主張
1 請求人が主張する無効理由の概要
請求人は、本件特許発明1ないし5の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(平成27年5月21日付け手続補正書(方式)により補正された審判請求書、同年9月18日付け弁駁書、同年11月19日付け口頭審理陳述要領書、及び、平成28年1月6日付け上申書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。なお、請求人は、本件訂正の適否については争わず(第1回口頭審理調書を参照。)、訂正後の本件発明について訂正前と同様の無効理由を主張している。

(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2ないし5号証に記載の公知技術若しくは周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)本件訂正発明2ないし4について
本件訂正発明2ないし4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2ないし5号証に記載の公知技術若しくは周知技術、甲第6号証に記載の公知技術、及び、甲第7号証に記載の公知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(3)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2ないし5号証に記載の公知技術若しくは周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(証拠方法)
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:登録実用新案第3106160号公報
甲第2号証:特開2010-17160公報
甲第3号証:特開2007-40024公報
甲第4号証:特開2007-222015公報
甲第5号証:特開2008-118984公報
甲第6号証:特開2009-65974公報
甲第7号証:特開平7-322767号公報

2 具体的な主張
請求人は、訂正後の本件発明が当業者にとって容易に発明できたものであることについて、おおむね以下のとおり主張している。
(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1では、多面緑化される緑化装置の少なくとも一つの緑化面を、予め植物が植えられたユニットにより形成している。
これに対し、甲第1号証記載の発明では、多面緑化体用容器20の側面と底面を、一対の側網22,22とコ形網24とで形成し、側網22やコ形網24の側網部24aの内側に、予め植物が植えられた植生ブロックマット5を配置することで緑化面を形成しており、予め植物が植えられているのが植生ブロックマットでありユニットではない点が相違する。
しかしながら、甲第2号証には、多面緑化される装置の側面方向の緑化面を、内部に植生基盤32を充填し予め植栽された緑化ユニット30(多面緑化体30a,30b)により形成する技術が記載されている。また、甲第3号証には、横方向に長い多面緑化体としての防護柵10の緑化面を、内部に植生基盤40を充填し予め植栽された多面緑化体20を連結していくことで形成する技術が記載されている。
そもそも、緑化技術において、内部に植物育成用の基盤が充填されたユニットに予め植栽を施して取り扱うこと自体が、甲第2号証及び甲第3号証の他、甲第4号証及び甲第5号証を始めとして、多くの公知文献に記載されており、単なる周知技術である。
以上を考慮すると、本件訂正発明1は、甲第1号証の植生ブロックマット5と側網22を、甲第2号証の緑化ユニット30(多面緑化体30a,30b)や甲第3号証の多面緑化体20のように予め植栽されたユニットとして形成するか、又は、単に周知技術に基づいて予め植栽されたユニットとして形成したに過ぎない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2では、連結体とユニットにおいて、格子状又は複数孔を有する平板状の枠体の内側に通気性を有するマットを配置し、そのマットで植生基盤を内包している。
しかしながら、甲第6号証に記載の通気性を有する植栽マット状の植生基盤体を、甲第1号証記載の発明の植生ブロックマット5に適用するとともに、甲第2号証に記載の有孔構造の箱体31で成る緑化ユニット30や甲第3号証に記載の方形で網状の箱体30で成る多面緑化体20を、甲第1号証記載の発明の側網22と植生ブロックマット5とに適用して予めユニットとすると共に、その内側に甲第7号証に記載の通気性を有するシート材(マット)を設けて植生基材を内包する構成とすることは、当業者が容易に推考し得るものである。
(3)本件訂正発明3について
本件訂正発明3では、連結体はユニットとの接続面と上面とが開放され、ユニットは上面のみが開放されている。
しかしながら、甲第1号証記載の発明は、コ形網24において、側網22と接続する面と上面とが開放されている。また、甲第2号証には、緑化ユニット30の上口が開放していることが記載されている。さらに、甲第3号証には、多面緑化体20の上方が開口していることが記載されている。
(4)本件訂正発明4について
本件訂正発明4では、ユニットと連結体との接続面に仕切り部が設けられ、連結体と接続される際に取り外すことで内部が連通するようになっている。
これに対し、甲第1号証記載の発明には該当する構成は無い。
しかしながら、甲第7号証には、植栽ボックス1同士を相互に連結して大きくすることができ、連結する部分の側網を仕切網3として再利用できるということと、仕切網3が必須の構成では無いこととが記載されている。すなわち、甲第7号証には、植栽ボックス1同士を相互に連結して大きくする際に、連結する部分の側網を仕切網3として再利用せずに取り外すことが示唆されている。
(5)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の緑化装置を緑化工法にした上に、さらに植生基盤を補充する工程を追加したに過ぎない。
すなわち、本件訂正発明5は、本件訂正発明1と同等の部分については本件訂正発明1で述べたとおりであり、追加された工程(構成)については、甲第1号証記載の発明に該当する構成は無いが、甲第2号証に、緑化装置10において、緑化ユニット30(多面緑化体30a,30b)を設置した後に中央植栽領域30cに客土を充填することが記載されている。
以上を考慮すると、本件訂正発明5は、当業者が容易に想到できたものである。

3 被請求人の主張に対して
(1)甲第2号証について
甲第2号証の多面緑化体30a,30bは、基台20の上面に搭載されて大きな緑化装置10として形成される際に緑化を想定している面のみを予め選択的に緑化しており、また、多面緑化体30a,30bを基台20に設置した後にできる中央空間に客土を充填して別途植物を植えるものであるから、それぞれを単体で緑化装置として用いることは想定されていない(平成28年1月6日付け上申書2頁22行?3頁18行参照。)。
(2)甲第3号証について
甲第3号証の多面緑化体20は、防護柵10に組み込まれた際に緑化を想定している面のみを予め選択的に緑化しており、単体で用いることは想定されていない(平成28年1月6日付け上申書3頁19?25行参照。)。
(3)甲第1号証ないし甲第3号証の組合せについて
仮に、副引例である甲第2号証の多面緑化体30a,30bや甲第3号証の多面緑化体20が単体で緑化装置として機能するものであったとしても、甲第2号証や甲第3号証の発明の構成や効果には全く関係が無い設計事項程度の差異に過ぎず、これら甲第2号証や甲第3号証を主引例である甲第1号証に組み合わせることを考えた場合に阻害要因となる訳ではない。
つまり、甲第2号証の多面緑化体30a,30bや甲第3号証の多面緑化体20が単体で緑化装置として機能するものであることを根拠として、甲第1号証ないし甲第3号証の技術を組み合わせたとしても、本件訂正発明1を想到できない、という結論に至る論理展開自体が誤りである(平成28年1月6日付け上申書4頁下から2行目?5頁16行参照。)。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成27年7月27日付け審判事件答弁書、同年12月4日付け口頭審理陳述要領書、及び、平成28年1月20日付け上申書を参照。)。

1 本件訂正発明1について
甲第1号証は、L形網21,21、側網22,22の組立後に、植生ブロックマット5を配置し、植生基盤30を投入することを開示しているにすぎず、ユニットについて開示も示唆もなく、また、緑化装置の一部をユニットで構成し、他部をユニットとは異なる連結体で構成することについて開示も示唆もない。
甲第2号証は、緑化装置10を開示するが、多面緑化体同士30a?30dを接続して緑化装置10を構成することを開示するにすぎず、仮に、多面緑化体30a?30dが本件発明のユニットに相当するとしても、甲第2号証は、ユニット同士を接続することを開示しているにすぎない。また、甲第3号証は、防護柵10を開示するが、多面緑化体20同士を接続して防護柵を構成することを開示するにすぎず、多面緑化体20が本件発明の緑化装置に対応しており、仮に、多面緑化体20が本件発明のユニットに相当するとしても、甲第3号証は、ユニット同士を接続することを開示しているにすぎない。
甲第2号証及び甲第3号証は、甲第1号証の「多面緑化体」に相当する「多面緑化体」、換言すると、夫々が単体で緑化装置としての機能を有する「多面緑化体」を一つのユニットとして扱い、このようなユニットとしての「多面緑化体」を組み合わせることを開示しているにすぎない。「多面緑化体」の一部をユニット化すること、換言すると、本件訂正発明1のように、緑化装置の一部をユニットで構成し、他部をユニットとは異なる連結体で構成することについては、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第3号証の何れにも開示がない。甲第4号証ないし甲第7号証についても、同様である。
したがって、仮に甲第1号証ないし甲第7号証に記載の技術を組み合わせたとしても、本件訂正発明1に想到できるものではない。

2 本件訂正発明2ないし4について
本件訂正発明2ないし4は、いずれも本件訂正発明1を引用するものであるから、本件訂正発明2ないし4についても、甲第1号証ないし甲第7号証に記載の技術に基づいて容易に想到できるものではない。

3 本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1と同様の構成を備えるものであるから、本件訂正発明5についても、甲第1号証ないし甲第7号証に記載の技術に基づいて容易に想到できるものではない。

第5 本件訂正について
1 訂正内容
本件訂正は、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごと、または請求項ごとに訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1ないし4からなる一群の請求項を訂正するために、請求項1に「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体」とあるのを、「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を訂正するために、請求項5に「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体」とあるのを、「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体」について「ユニットとは異なる」ことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は、訂正前に特定されていた「連結体」についてより具体的に特定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許明細書(上記第2の3を参照。)には、
「なお、前記ユニットは、上面のみが開放され、前記連結体は、前記ユニットとの接続可能な状態において、前記ユニットとの接続面と上面とが開放された構造とすることができる。ユニットは、予め植生基盤が充填されている必要があるため、下面と側面の全てに枠体とマットを有している必要がある(連結体との接続面については、後述する仕切部でもよい。)。側面には、ユニットを6面体とした場合における正面や背面も含まれる。これに対し、連結体は、ユニットと接続された際に、緑化装置においてユニットが設けられる以外の面を形成できればよい。従って、連結体では、ユニットとの接続面について、枠体やマットを設ける必要はない。」(段落【0012】)
と記載されているように、連結体がユニットとは異なることが記載されていると認められる。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する連結体」について「ユニットとは異なる」ことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、訂正前に特定されていた「連結体」についてより具体的に特定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許明細書には、上記(1)ウで述べたように、連結体がユニットとは異なることが記載されていると認められる。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、結論のとおり、本件訂正を認める。

第6 無効理由についての当審の判断
1 本件発明について
上記のとおり、本件訂正は認められたので、本件発明は訂正されたものとなり、本件訂正発明1ないし5は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された上記第2の2のとおりのものである。

2 証拠について
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同様。)。
(ア)実用新案登録請求の範囲
「【請求項1】
薄厚の基盤マットに植物を植生した植生ブロックマットを収容すると共に、植生基盤を充填して複数の面に植生した多有孔構造の多面緑化体用容器であって、
一対のL形網と、
前記一対のL形網の側方を閉鎖する一対の側網と、
前記L形網と側網の突合せ箇所を連結する連結手段とよりなり、
前記L形網と側網の少なくとも側面部を凹凸状の網体で形成したことを特徴とする、
多面緑化体用容器。」
(イ)技術分野
「【0001】
本考案は多数の面に植物を立体的に植生するための多面緑化体用容器に関するものである。」
(ウ)背景技術
「【0002】
各種植物を植生する鉢容器としては、多種多様の形状や寸法のものが提案され、またその素材も陶器製、樹脂製、木製等多種多様である。
これら従来の鉢容器を構造的に見た場合は、周囲を周壁で囲み上部を開放した構造である点で共通している。」
(エ)考案が解決しようとする課題
「【0003】
従来の鉢容器にはつぎのような改善すべき点がある。
(1)植物を植生できる場所は、鉢容器上部の開放されたひとつの平面だけであるため、物足りなさを感じる。
(2)多種類の植物を植生したり、広い植生面積を得るためには、大形サイズの鉢容器を使用するか、或いは鉢容器の数を増やして対応しているが、何れの場合も広いスペースを必要とする。
【0004】
本考案は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、つぎの何れかひとつの多面緑化体用容器を提供することにある。
(1)複数面の植生に好適な多面緑化体用容器を提供すること。
(2)意匠性に優れた多面緑化体用容器を提供すること。
(3)植物の絡みつきがし易い多面緑化体用容器を提供すること。
(4)格納性や運搬性に優れた多面緑化体用容器を提供すること。
(5)移動が容易な多面緑化体用容器を提供すること。」
(オ)課題を解決するための手段
「【0005】
本考案に係る多面緑化体用容器は、薄厚の基盤マットに植物を植生した植生ブロックマットを収容すると共に、植生基盤を充填して複数の面に植生した多有孔構造の多面緑化体用容器であって、一対のL形網と、前記一対のL形網の側方を閉鎖する一対の側網と、前記L形網と側網の突合せ箇所を連結する連結手段とよりなり、前記L形網と側網の少なくとも側面部を凹凸状の網体で形成したことを特徴とするものである。
また本考案に係る多面緑化体用容器は、薄厚の基盤マットに植物を植生した植生ブロックマットを収容すると共に、植生基盤を充填して複数の面に植生した多有孔構造の多面緑化体用容器であって、一対の側網とひとつの底部を一体に形成したコ形網と、前記一対のL形網の側方を閉鎖する一対の側網と、前記コ形網と側網の突合せ箇所を連結する連結手段とよりなり、前記L形網と側網の少なくとも側面部を凹凸状の網体で形成したことを特徴とするものである。
また本考案は前記した何れかの多面緑化体用容器において、L形網と側網が、凹凸を有する複数の屈曲線材と複数の直線状線材とを交差させて形成した溶接金網製であることを特徴とするものである。
また本考案は前記した何れかの多面緑化体用容器において、連結手段が連結コイルであって、前記連結コイルの内径を、L形網と側網を夫々構成する縦線材の凹凸に内接可能な寸法に形成したことを特徴とするものである。
また本考案は前記した何れかの多面緑化体用容器において、底部の下面に走行輪を設けたことを特徴とするものである。」
(カ)考案の効果
「【0006】
本考案は少なくともつぎのひとつの効果を得ることができる。
(1)多面緑化体用容器の複数の側面面にも植物を立体的に植生できるので、多面緑化体に好適な専用容器を提供することが可能となる。
(2)単なる溶接金網ではなく凹凸形状を付与した溶接金網で形成することで、側面に線材の凹凸による厚みがでて、意匠性に優れているため、多面緑化体用容器を見る者に新鮮な印象を与えることができる。
(3)多面緑化体用容器の側面を凹凸状に形成することで、多面緑化体用容器の内側に収容する植生ブロックマットから溶接金網の凸部までの間に空間が形成されることになり、この空間を利用して蔦等の植物が線材に絡みつき易くなる。
(4)多面緑化体用容器を組み立て式に構成すると共に、L形網を積み重ね可能な形状にしたことで、多面緑化体用容器の格納性と運搬性がよくなる。
(5)多面緑化体用容器に走行輪を設けたことで、多面緑化体が多少重たくなっても容易に移動することができる。
(キ)考案を実施するための最良の形態
「【0007】
以下に図面を参照しながら本考案の最良の形態について説明する。
(1)多面緑化体
図1に多面緑化体の斜視図を示し、図2にその縦断面図を示す。
多面緑化体は有孔構造の多面緑化体用容器20と、多面緑化体用容器20の少なくとも側面の内側に設置した複数の植生ブロックマット5と、植生ブロックマット5の内方に充填した無機質の植生基盤30とよりなる。
以降に主要な構成部材について説明する。
【0008】
(2)多面緑化体用容器
多面緑化体用容器20は方形を呈する複数の側面と、これらの側面の下部を閉鎖する底面とを有する有孔構造の箱体で、所定の間隔を隔てて配置した縦横線の交差部を溶接した溶接金網で構成する。
【0009】
図3に例示した多面緑化体用容器20は、溶接金網製の一対のL形網21,21と、溶接金網製の一対の側網22,22と、連結手段23とよりなる。
L形網21は側面部21aと分割底部21bの一端を突き合わせたL字形の網体で、一対のL形網21,21の分割底部21bを相互に付き合わせたときに、一対の側面とひとつの底面を形成できるようになっている。
容器20の底部を二分した分割底部21bの分割位置は図示するように均等に分割にすると、複数のL形網21を積み重ねたときの出っ張りがなくなり格納や保管に便利である。底部を任意の位置で二分した異形のL形網21を組み合わせてもよい。
【0010】
L形網21の側面部21aと側網22は、縦横の一方の線材を凹凸形状に屈曲した屈曲線材で形成し、屈曲線材と交差方向に配置する線材を直線状線材で形成し、多面緑化体用容器20の側面が凹凸上を呈するように形成してある。本例ではL形網21の分割底部21bを平面状に形成した場合について示すが、側面と同様に凹凸状に形成してもよい。
【0011】
側網22の縦線下部は内側に屈曲して鉤部22aを形成し、この鉤部22aで一対の分割底部21b,21bの間に跨って掛止して連結し得るようになっている。
【0012】
なお、多面緑化体用容器20の素材はその他に、凹凸のない溶接金網や、一般の金網、エキスパンドメタル、有孔板等も使用可能である。
【0013】
(3)組立
一対のL形網21,21をコ字形に対向配置し、その開放部を一対の側網22,22で閉鎖する。側網22の下部の鉤部21aを一対の分割底部21b,21bに掛止する。
L形網21の側面部21aと側網22の両側縁を突合せた四箇所を連結コイルよりなる連結手段23を巻き付けて連結することで直方体に形成する。
図4に示すように突き合わせたL形網21の側面部21aと側網22の間を連結するにあたり、縦線の凹凸量に合わせて連結手段23の内径を予め設定しておき、縦線の凹凸部がコイル状の凹凸連結手段23に内接してガタツキのない状態で連結する。
【0014】
このようにして組み立てた多面緑化体用容器20内には、図2に示すように、植生ブロックマット5を収容し、多面緑化体用容器20の側面に配置する。植生ブロックマット5は薄厚の基盤マットに植物を植生したマット状物で、予め生育環境の整った場所で自然に近い形態で育成したものである。
側面21全面を植生ブロックマット5で囲ったら、その内側に無機質の植生基盤30を大量に投入して、多面緑化体用容器20の複数の面に植物を立体的に生やした多面緑化体を得る。
尚、無機質の植生基盤としては、例えば市販の無機質100%のアクアソイル(株式会社イケガミ社製)が好適である。
多面緑化体用容器20の各側面21に設置する複数の植生ブロックマット5の組み合わせは、同種植物の組み合わせ、異種植物の組み合わせの何れでもよい。
多面緑化体用容器20の上面は、植生ブロックマット5を水平に設置するか、または植生ブロックマット5とは別に無機質の植生基盤30に植物を直接植生するか、または何も植生しない。
【0015】
植生ブロックマット5は無機質の植生基盤30に植え替えられたことで、植物の根系が植生基盤30に徐々に進入し、植物は無機質の植生基盤30を基に時間をかけてゆっくりと健全に生育する。
【0016】
多面緑化体用容器20の側面を凹凸形状の溶接金網で厚みを持たせて形成してあるので、図5に拡大して示すように植生ブロックマット5の表面から溶接金網の凸部までの間に空間が形成されることになり、この空間を利用して蔦等の植物が、植生ブロックマット5の表面から離隔した縦横方向の線材に絡みつき易くなって、植物が生育するうえで良好な環境となる。
【0017】
(4)その他の形態1
図6に他の多面緑化体用容器20を示す。本例は同図の(a)に示すようなコ字形を呈する一対のコ形網24と、同図の(b)に示すような溶接金網製の一対の側網22と、既述した連結手段23とにより構成するもので、前記した実施の形態の図3で示したL形網21,21を一体に形成したものである。
コ形網24は一対の対向する側網部24a,24aとひとつの底部24bを具備する。
多面緑化体用容器20を溶接金網で形成することや、少なくとも側面に相当する部位を凹凸状に形成することは既述した形態と同様である。」

イ 甲第1号証に記載の発明の認定
甲第1号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「多面緑化体用容器20と、多面緑化体用容器20の少なくとも側面の内側に設置した複数の植生ブロックマット5と、植生ブロックマット5の内方に充填した植物を生育する植生基盤30とからなる多面緑化体であって、
多面緑化体用容器20は、一対の対向する側網部24a,24aとひとつの底部24bを具備するコ形網24と、一対の側網22と、コ形網24と側網22とを連結する連結手段23とからなる、方形を呈する複数の側面と底面とを有する有孔構造の箱体であり、
植生ブロックマット5は基盤マットに植物を予め植生したものである、
多面緑化体。」

(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
多面的な緑化面を有する緑化ユニットと、前記緑化ユニットを搭載した基台とを具備した緑化装置であって、
前記基台に、該基台の下面と床面との間に流体キャスタを介装可能な凹部を形成したことを特徴とする、
緑化装置。
【請求項2】
請求項1において、前記緑化ユニットが少なくとも2面の緑化面を有する複数の多面緑化体で構成され、前記多面緑化体を単位として交換可能であることを特徴とする、緑化装置。
【請求項3】
請求項2において、前記緑化ユニットが、少なくとも2面の緑化面を有する複数の多面緑化体を閉鎖形状に組立て、前記複数の多面緑化体の内方に中央植栽領域を形成したことを特徴とする、緑化装置。」
(イ)技術分野
「【0001】
本発明は緑化装置とその移動方法に関するものである。」
(ウ)発明が解決しようとする課題
「【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、少なくともつぎのひとつの緑化装置とその移動方法を提供することにある。
(1)緑化装置が大重量であっても、安全、低コスト、短時間に移動できること。
(2)大型重機や専門オペレータを必要とせずに、緑化装置を何時でも誰でもスムーズに任意の場所に移動できること。
(3)緑化装置を設置した場所の有効活用が図れること。
(4)草花類や木本類の混生と交換に適しているだけでなく、緑化装置の据付面積に対する緑化面積が卓越して立体的で多様な緑化の景観を提供できること。」
(エ)発明の効果
「【0008】
本発明は次の特有の効果を得ることができる。
(1)取扱操作が簡単な流体キャスタを使用して大重量の緑化装置を簡単に浮上させることができるから、緑化装置を安全、低コスト、短時間に移動することができる。
(3)大型重機や専門オペレータを必要とせずに、緑化装置を何時でも誰でもスムーズに任意の場所に移動することができる。
(4)緑化装置の移動が簡単であるから、緑化装置を設置した場所の有効活用を図ることができる。
(5)移動可能な緑化装置は少なくとも2面の緑化面を有する複数の多面緑化体で構成されるから、草花類や木本類の混生に適しているだけでなく、多面緑化体の単位で部分的な交換も可能であり、移動可能な緑化装置としてはこれまでにない立体的で多様な緑化の景観を提供できることが可能となる。」
(オ)発明を実施するための最良の形態
「【0010】
(1)緑化装置
図1?3に本発明に係る緑化装置10の一例を示す。
緑化装置10は大規模緑化に適した装置であって、流体キャスタ50を介装可能な基台20と、基台20に搭載した緑化ユニット30とにより構成される。
本発明では緑化ユニット30を複数の多面緑化体30a,30bの組合せ体で構成する場合について説明するが、各種公知の緑化ユニットを適用してもよい。
以下に各構成部材について詳述する。
【0011】
(2)基台
基台20は緑化ユニット30を搭載して支承可能な板体であり、その平面形状に制約は特にないが、緑化ユニット30の底面形状と略同形に形成することが望ましい。
緑化装置10全体の横移動に対処するため、基台20の下面の周縁部を窪ませて凹部21が形成してある。
凹部21は基台20の下面と床40との間に流体キャスタ50を介装セットするための設置空間として機能するものであるから、流体キャスタ50の高さより僅かに大きい寸法で凹設される。
また本例では、凹部21を基台20の下面の周縁部に連続して形成した場合について説明するが、基台20の下面の周縁部の複数の箇所に部分的に形成してもよい。
・・・(略)・・・
【0014】
(3)緑化ユニット
図2に基台20を省略した緑化ユニット30の一例を示す。
緑化ユニット30は草花類や木本類の多面的な植生が可能な構造体である。
多面的な植生とは、複数の植生面を有する意味である。
本例で多面的な植生を図るため、複数種類の多面緑化体30a,30bを組み合わせて緑化ユニット30を構成する場合について説明する。
緑化ユニット30を複数の多面緑化体30a,30bで構成するのは、緑化ユニット30の部分的な交換を可能とするためである。
このように構成することで、設置場所に応じたきめ細かい緑化空間を提供できる。
【0015】
具体的には、緑化ユニット30の平面形状が井桁状を呈するように、基台20の上面に複数種類の多面緑化体30a,30bを隣接させて搭載するとともに、複数の多面緑化体30a,30bで囲んだ中央空間を中央植栽領域30cとして利用する。
両多面緑化体30a,30bは、環境の整った別の場所で、所定の緑化面に植生させて予め製作したものを使用することも可能である。
予め緑化面に合うサイズでマット状に製作した緑化マットを使用してもよい。
中央植栽領域30cは、基台20の上面に複数種類の多面緑化体30a,30bを搭載して中央空間を形成した後に、該空間内に客土して植生する。
複数の多面緑化体30a,30bで囲まれた中央植栽領域30cには、予め緑化した多面緑化体(図示を省略)を置くことも可能であり、或いは客土して植生又は植栽することも可能である。
【0016】
[多面緑化体]
多面緑化体30a,30bは、少なくとも2面の緑化面を有する緑化体であり、上口を開放した有孔構造の箱体31と、箱体31に収容した植生基盤32と、箱体31の複数の面に植生した植物とにより構成される。
【0017】
緑化ユニット30の角部に設置する多面緑化体30aは、隣り合う二つの側面と上面とを緑化面として形成し、また多面緑化体30a,30aの間に設置予定の残りの多面緑化体30bは、一つの側面と上面とを緑化面として形成している。
各多面緑化体30a,30bの緑化面となる側面は、図示するように裾広がりとなるように傾斜させて形成するが、鉛直に形成してもよい。
尚、図2においては、図示の簡略化の目的で、一部の多面緑化体30a,30bに緑化面を表記し、他の多面緑化体30a,30bについての図示を省略している。
【0018】
各多面緑化体30a,30bを構成する箱体31は、例えばパネル状を呈する溶接金網等を組合わせて植生基盤32を収容要可能な箱状に製作したもので、少なくとも四つの側面を有する。箱体31の底面は設けてもよいが、省略する場合もある。
また、各箱体31の底部は、図1に示すように基台20と嵌合可能な形状に形成しておくと、各多面緑化体30a,30bと基台20との一体性が高まるとともに、基台20の目隠し効果を期待できる。
【0019】
また、図1において、基台20の上面は遮水シート33で覆い、さらに必要に応じて流出防止マット、灌水タンク等の設備も併せて搭載する。
【0020】
(4)流体キャスタ
図3に基台20の凹部21に複数の流体キャスタ50を配置した一例を示す。
流体キャスタ50は所定の間隔を隔てて基台20の対称位置に設けることが望ましい。
流体キャスタ50の設置数や設置位置は、浮上対象の緑化装置10の大きさと重量等を考慮して適宜選択する。
【0021】
緑化装置10の全体を浮上させるための流体キャスタ50は、例えばキャスタ本体の底部中央に設けられた円盤状の支持部材51と、支持部材51の周囲に設けられたタイヤチューブ状のトーラスバッグ52とを具備する。
支持部材51はトーラスバッグ52に直接荷重がかからないように保護している。
【0022】
トーラスバッグ52は配管53を介してコンプレッサ等の流体供給手段54と連通していて、流体供給手段54からトラースバッグ52へエア等の流体を供給できるようになっている。
流体キャスタ50としては、エアーキャスタが好適であるが、その他にはウォーターキャスター、オイルキャスター等、他の流体を用いた流体キャスターを用いてもよい。
【0023】
本発明は緑化装置10の持上げ手段として流体キャスタ50を採用するものである。
流体キャスタ50を採用した理由は、緑化装置10の持上げ量をできるだけ小さくして緑化装置10の姿勢の安定性を確保するためと、流体キャスタ50の操作方法が簡単で誰でも簡単安全に使用することができるからである。」

イ 甲第2号証に記載の技術事項の認定
甲第2号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

「流体キャスタ50を介装可能な基台20と、複数の多面緑化体30a,30bとからなる緑化装置10であって、
多面緑化体30a,30bは、少なくとも2面の緑化面を有する緑化体であり、上口を開放した有孔構造の箱体31と、箱体31に収容した植生基盤32と、箱体31の複数の面に植生した植物とにより構成され、
基台20の上面に複数種類の多面緑化体30a,30bを隣接させて搭載するとともに、複数の多面緑化体30a,30bで囲んだ中央空間を形成し、該空間内に客土して植生する、
緑化装置10。」

(3)甲第3号証について
ア 甲第3号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
歩行者または車両の通行を区画する防護柵であって、
複数の多面緑化体で構成され、
前記多面緑化体が、有孔構造の箱体と、箱体に収容した植生基盤と、箱体の複数の面に予め植生した植物とからなり、
隣り合う各多面緑化体を隣接させて横列状に配置して構成したことを特徴とする、
防護柵。」
(イ)技術分野
「【0001】
発明は車道と歩道の間や車道間等に設置されるに関し、より詳細には安全性と環境性に貢献できる防護柵に関するものである。」
(ウ)発明が解決しようとする課題
「【0004】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、少なくともつぎのひとつの分離体を提供することにある。
(a)低コストで設置できること。
(b)設置直後から緑化効果と横断防止効果を発揮できること。
(c)多機能な防護柵を提供すること。」
(エ)発明の効果
「【0006】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を得ることができる。
(a)生育環境の整った場所で予め量産しておいた多面緑化体を、設置予定現場へ搬入して設置するだけの作業で防護柵の施工が完了するため、従来のガードフェンスの設置工と比較して、低コストに設置できる。」
(オ)発明を実施するための最良の形態
「【0008】
(1)防護柵
図1に歩道Aと車道Bの間に防護柵10を設置した一例を示す。
防護柵10は図示した以外に、歩道A上に設置して歩行者通行帯と自転車走行帯に区分けする用途に用いたり、或いは車道Bの中央分離帯として設置してもよい。
防護柵10は複数の多面緑化体20を列設して構成される。
【0009】
(2)多面緑化体
多面緑化体20は底面を除いた複数の面に植物(木本類を含む)21を植生した緑化ブロックで、有孔構造の箱体30と、箱体30に収容した植生基盤40とにより構成される。
車両の衝突時に各多面緑化体20が容易に横移動しないだけの自重を確保できるように、多面緑化体20の全体寸法が適宜の大きさに設計される。
以降に多面緑化体20の詳細について説明する。
【0010】
[箱体]
箱体30は図2に示すように、矩形の底面31と、底面に周囲に相対向させて立設した複数の側面32と、上口に被せる蓋33とを具備する。
本例の箱体30について説明すると、側面32はその下部に縦線の下部が同一方向に揃えた折曲加工が成されてフック36が形成されていて、この側面32のフック36を掛け止めして底面31と連結して立設すると共に、側面32と側面の突合せ箇所を連結コイル等の連結具34で接続して立方形に形成する。
箱体30は上記した形態に限定されるものではなく、公知の各種形態を適用することができる。
【0011】
箱体30を構成する相対向する一対の側面32の下部と底面31には、フォークリフトのフォーク間隔に合わせて二つの凹部35,35が互いに平行に形成されている。これは重量の重たい多面緑化体20をフォークリフトで取り扱えるようにするためである。
【0012】
箱体30の側面32を構成する素材としては、縦横線の一方の線材を連続して凹凸形状に屈曲して形成し、この屈曲した複数の屈曲線材と複数の直線状線材とを交差させ、各交差部を溶接した溶接金網が使用可能である。
箱体30の素材はその他に、凹凸のない溶接金網、一般金網、動物防護用特殊金網、エキスパンドメタル、有孔板等が使用可能である。
また箱体30の平面形状は四角形に限定されず、四角形以外の多角形、円形、楕円形等を含むものである。
また、蓋33は必須ではなく省略する場合もある。
【0013】
[植生基盤]
植生基盤40は植物の生育基盤材としてだけでなく、多面緑化体20に所定の重量を与えて安定性を確保するために機能と、衝撃を減衰する緩衝機能といった複数の機能を併有するもので、例えば一般土壌の他に、礫や各種廃棄物を粒状化処理したものや、天然もの、高分子系の吸水材を混入させたものである。
【0014】
栄養的には貧栄養が望ましい。貧栄養とは、植物21の枯死に直結する栄養不足を意味するものではなく、例えば鉱物イオンを含む要素を混合させておいて、植物21の生育を強制的(積極的)に阻害する基盤状態を意味する。
【0015】
本例では植物21の設置に植生マット22を使用する場合について説明するが、植生基盤40に直接植生してもよいことは勿論である。
【0016】
植生マット22はハウスや路地を問わず生育環境の整った場所で時間を十分にかけて薄厚に生育したもので、植物21の生育がし易いこと、異種の植物21を組み合わせても確実に植生できること、植物のストックが利くこと、設置現場に応じた植物の選択が可能であること等の利点がある。
【0017】
植物21は草本類、木本類、竹類などの公知の植物のいずれか一種または複数種を組み合わせて植生するものとし、貧栄養で厳しい環境に対応可能な野草、ツタ植物、コケ等が望ましい。
【0018】
(3)多面緑化体の製造方法
多面緑化体20は、防護柵10の設置現場とは別の生育環境の整った場所で製作してストックしておく。
多面緑化体20の製造方法について説明すると、まず立体に組み立てた箱体30内に植生マット22を縦向きにして収容した後、その内側に植生基盤40を投入する。
植生予定面は多面緑化体20の配列形態に応じて、多面緑化体20の露出する面を対象に行い、露出しない面は箱体30の内側に基盤流出防止用のシート(図示せず)を配置しておく。
箱体20の各側面21を緑化する植物21の組み合わせは、同種植物の組み合わせ、異種植物の組み合わせの何れでもよい。
また箱体30の上面は、植物21を植生するか、または何も植生しない。
これにより、箱体30の複数の面に植物21を立体的に生やした多面緑化体20を得る。
・・・(略)・・・
【0023】
誤って車両が防護柵10に衝突した場合には、自重により多面緑化体20が容易に移動する心配がない。
多面緑化体20を構成する箱体30の変形抵抗と内部の植生基盤材40の緩衝作用により衝突エネルギーを効果的に減衰できて、歩行者や運転者に対して安全である。
緩衝効率を高めるため、各多面緑化体20の間を、相互に力の伝達が可能なように物理的に連結しておく場合もある。
さらに防護柵10は上面だけでなく複数の側面も緑化面として形成されるので、据付面積に対して緑化面積が大幅に卓越する。そのため、平面的に緑化した場合と比べてCO2の削減効果や温暖化現象抑制効果の面で優位である。
また防護柵10はその上面の一部にテーブルやベンチを兼ねた板を載せて休憩地として活用することも可能である。
【0024】
(6)その他の形態
以上は箱体30に植生基盤40を収容して緑化させた多面緑化体20の集合体により防護柵を構成した場合について説明したが、箱体30に砕石やこれに類した重量物を収容した多面体のみで防護柵を構成したり、多面緑化体20と多面体を併用して防護柵を構成する場合もある。
本例のように緑化しない多面体を使用することで、横断防止効果を犠牲にすることなく、全体の施工コストの低減を図ることができる。」

イ 甲第3号証に記載の技術事項の認定
甲第3号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

「複数の多面緑化体20を連結して構成された防護柵であって、
多面緑化体20は、底面を除いた複数の面に植物21を植生した緑化ブロックで、矩形の底面31と複数の側面32とからなる有孔構造の箱体30と、箱体30に収容した植生基盤40と、箱体の複数の面に予め植生した植物とからなる、
防護柵。」

(4)甲第4号証について
ア 甲第4号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第4号証には、次の事項が記載されている。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
植栽が施される培土基盤と該培土基盤を保持する枠部材を備える緑化ユニットを、構造物の壁面に沿って設置して該構造物に緑化を施すための壁面緑化システムであって、
断面略凹状を呈する複数の樋部材が、それぞれ開口部側を上方に向けた状態で略水平方向に延設され、上下方向に所定の間隔をあけつつ前記構造物の壁面に支持されており、前記枠部材が前記樋部材に着脱可能に支持されて前記上下方向に隣り合う一対の前記樋部材の間に前記緑化ユニットが設置されることを特徴とする壁面緑化システム。」
(イ)技術分野
「【0001】
本発明は、構造物の壁面に緑化を施すための壁面緑化システムに関する。」
(ウ)発明が解決しようとする課題
「【0010】
本発明は、上記事情を鑑み、構造物の壁面の任意の位置に緑化を施すことができ、デザインの自由度に優れるとともに、メンテナンスにも柔軟に対応可能な壁面緑化システムを提供することを目的とする。」
(エ)発明の効果
「【0019】
本発明の壁面緑化システムにおいては、枠部材を着脱可能に支持する樋部材が、断面略凹状を呈し、水平方向に延設されて構造物の壁面に支持され、上下方向に所定の間隔をあけて複数設けられることにより、延設する樋部材の任意の位置に緑化ユニットを設置することができ、構造物の壁面に緑化を施すデザインの自由度を高くすることができる。また、緑化ユニットが着脱可能とされるため、個々の緑化ユニットを個別にメンテナンスすることができ、構造物の壁面を塗り替える場合などにおいても、緑化ユニットを容易に取り外して柔軟に対応することが可能になる。さらに、緑化ユニットを構造物の壁面に沿って設置できるため、植物選定の自由度を高くすることもできる。」
(オ)発明を実施するための最良の形態
「【0030】
緑化ユニット2は、植栽が施される4つの培土基盤5と、4つの培土基盤5を保持する枠部材6とから構成されている。・・・(略)・・・」
「【0031】
ここで、この培土基盤5に植栽される植物は、例えばコケ、セダム、蔓性植物などが好ましいが特に限定を必要とするものではない。また、植物を培土基盤5に植栽する手法は、直接培土基盤5に播種して植物を生育させたり、例えば予め培土基盤5に窪みを設けてこの窪みにポット苗を植栽するようにしてもよい。」
「【0036】
はじめに、構造物Tの壁面T1に複数の樋部材1を設置した段階で、壁面T1を緑化するデザインに応じた樋部材1の任意の位置に緑化ユニット2を設置してゆく。このとき、樋部材1の他方の側壁部1cに設けられた複数の支持部材4のうち、緑化ユニット2を設置する位置に対応した支持部材4に、枠部材6の引掛部6eを引っ掛けるという簡易な操作で緑化ユニット2が設置される。また、緑化ユニット2の培土基盤5が主成分に無機質発泡体を備えて形成され、かつこの培土基盤5を保持する枠部材6が鋼線からなる格子状の篭状に形成されているため、緑化ユニット2は軽量化され、その設置作業が容易なものとされる。ついで、このように、壁面T1の緑化デザインに応じた部分に簡便に複数の緑化ユニット2を設置した段階で、灌水チューブ3を設置する。このとき、緑化ユニット2の培土基盤5の上端5aと緑化ユニット2を支持する上方の樋部材1の間を通して誘導するという簡易な操作により灌水チューブ3が設置される。このように、灌水チューブ3を設置した段階で構造物Tの壁面緑化の施工が完了する。」

イ 甲第4号証に記載の技術事項の認定
甲第4号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

「緑化ユニット2を、構造物の壁面に沿って設置して該構造物に緑化を施すための壁面緑化システムであって、
緑化ユニット2は、予めポット苗が植栽された培土基盤5と、培土基盤5を保持する枠部材6とから構成されている、
壁面緑化システム。」

(5)甲第5号証について
ア 甲第5号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第5号証には、次の事項が記載されている。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
予め植物が植生され且つ水平横架材に取外し可能に係留される緑化パネルと交換可能な緑化ユニットであって、
植栽ポットに植栽した植物を収容可能な植物収容領域を画成し且つ少なくとも前面が開放した方形の容器本体と、該容器本体の前面に取付けられる蓋体部分とから構成され、
前記容器本体は、該容器本体を前記横架材に取外し可能に係留する係留手段と、前記蓋体部分を前記容器本体によって支持するための支持機構とを有し、
前記蓋体部分は、前記容器本体の前面から所定間隔を隔てて配置される前面格子と、該前面格子を取外し可能に前記支持機構に係止する係止機構と、前記前面と前記前面格子との間隔を保持するように前記前面格子の背面下部に配置された格子状膨出部分とから構成され、
植物が前記緑化ユニットの前面側に成長し、前記前面格子から垂下し又は該前面格子を登攀するのを可能にする生育空間が前記前面と前記前面格子との間に画成されたことを特徴とする緑化ユニット。」
(イ)技術分野
「【0001】
本発明は、緑化ユニットに関するものであり、より詳細には、予め植物が植生され且つ水平横架材に取外し可能に係留される緑化パネルと交換可能な緑化ユニットに関するものである。」
(ウ)発明が解決しようとする課題
「【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、農場等で育成した植物とともに緑化目的の建築物等に輸送され、前述の壁面緑化用構造体の骨組に容易に取付けられるとともに、上記緑化パネルとの整合性及び互換性を有する緑化ユニットを提供することにある。」
(エ)発明の効果
「【0014】
本発明によれば、農場等で育成した植物とともに緑化目的の建築物等に輸送され、壁面緑化用構造体の骨組に容易に取付けられるとともに、前述の緑化パネルとの整合性及び互換性を有する緑化ユニットが提供される。」
(オ)発明を実施するための最良の形態
「【0024】
緑化構造体1は、建築物等の壁面に沿って設置された鋼製骨組2と、骨組2に着脱可能に取付けられた緑化パネル3とから構成される。・・・(略)・・・」
「【0026】
図2(B)には、緑化ユニット3の構造が示されている。各緑化パネル3は、正面視正方形の緑化基盤10と、基盤10を囲む正面視正方形の枠体11とから構成される。基盤10は、ピートモス(植物遺体の繊維)を主材とした直方体形状の成形体からなり、概ね30cm(幅)×30cm (高さ)×8?10cm(奥行)程度の寸法を有する。植物Pは、農場等において基盤10に植栽される。枠体11は、前後一対の方形枠12と、方形枠12を相互連結する上下一対の連結部材13とから構成される。各方形枠12は、鋼製帯板を方形に組付けた一体枠からなり、連結部材13は、溶接又はボルト等の固着手段によって方形枠12の縦地部分内側面に固着される。連結部材13は、鋼製帯板の加工品からなり、図2に示すように、枠体11の背後において方形枠12の左右の垂直縦地部分を架橋するように水平に延びる。左右一対の下向き鋼製フック14が、連結部材13の背面に固定される。方形枠12、連結部材13及びフック14は、好ましくは、ステンレス鋼の加工品からなる。」

イ 甲第5号証に記載の技術事項の認定
甲第5号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

「建築物等の壁面に沿って設置された骨組2と、
骨組2に着脱可能に取付けられた緑化パネル3とからなる緑化構造体であって、
各緑化パネル3は、植物Pが農場等において植栽された緑化基盤10と、基盤10を囲む正面視正方形の枠体11とからなる、
緑化構造体。」

(6)甲第6号証について
ア 甲第6号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第6号証には、次の事項が記載されている。
(ア)技術分野
「【0001】
本発明は、シースコア(sheath-core)型のポリエステル短繊維と人工土壌とを混合して植生基盤体を製造するか、繊維性物質、ホットメルト(hot melt)および残余量の床土よりなる植生基盤体およびその製造方法に関する。より詳しくは、市販用人工土壌、繊維物質およびホットメルトを混合して団粒構造(crumbled structure)を有するスポンジ型の網構造を形成して人工土壌に結合力を与えることにより、植物の生長に好適な条件を提供する一方、重量が軽く、必要によっては寿命が半永久的となるかまたは短期日に分解可能な植生基盤体およびその製造方法に関する。」
(イ)背景技術
「【0002】
植生基盤体とは、植物が芽生え根付いて生育を可能にする人工土壌で製作した基盤体をいう。
・・・(略)・・・
【0004】
一般に使用される植生基盤体としては、植生マットがある。・・・(略)・・・
【0005】
植生マットにおいて考慮すべき主要事項は、まず、マットまたは基盤体の最小限の機械的な枠の維持および容易な取り扱い、次に植物の生長に好適な通気性、吸水性、排水性および養分吸着性、最後に重量および寿命がある。
【0006】
植生マットの基本原料となる床土の特性は、次のような条件、すなわち、(1)好適な保水力および保肥力、(2)根呼吸を助けるための最適の通気性、(3)無菌、無虫および種を含まないこと、(4)弱酸性?中性の酸度維持、(5)均一な物理化学性、(6)好適かつ均一な床土粒子のサイズ、(7)容易な取り扱い、および(8)ブロック形成(根のもつれ状態)の優秀性などを備えるべきである。」

(7)甲第7号証について
ア 甲第7号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第7号証には、次の事項が記載されている。
(ア)産業上の利用分野
「【0001】
本発明は、緑化工法に関し、より詳細には、各種花壇、都市公園、屋上庭園、住宅用柵などに用いられる植栽ボックスに関するものである。」
(イ)本発明の目的
「【0004】
<イ>本発明は、取扱性の良い植栽ボックスを提供することにある。
<ロ>本発明は、組立可能な植栽ボックスを提供することにある。
<ハ>本発明は、拡張性のある植栽ボックスを提供することにある。
<ニ>本発明は、変形可能な植栽ボックスを提供することにある。」
(ウ)問題点を解決するための手段
「【0005】
本発明は、植生基材を収容し、草木類を植栽する植栽ボックスにおいて、上面を解放した網製の函体と、該函体の内側に取付け、植生基材を保持するシート材とを備えたことを特徴とする、植栽ボックス、・・・(略)・・・」
(エ)実施例
「【0007】<ロ>函体(図2)
函体2は、底網21と側網23からなる箱体である。側網23は連結棒41で連結して底網21に立設する。また、側網23は相互に連結コイル43で連結する。必要な場合には、函体内に仕切網3を配置し、側網23と連結コイル43で連結する。」
「【0010】<ホ>仕切網(図2)
仕切網3は、函体2の内部に配置され、内部の空間を仕切るもので、側網23に連結される。仕切網3の目合は、裏面の側網23''' と同程度にするとよい。なお、仕切網3は必須の要素ではなく、函体2が小形で側網23のはらみ出しの恐れがない場合は省略することができる。」
「【0012】<ト>シート材(図6)
シート材5は、不織布など植生基材11を収容するシート状物であり、函体内側に取付けられる。特に、不織布の場合は、水分を通過できるので、内部の植生基材11に水が溜まり過ぎることがなく、しかも、保水性や通気性があるので、植生基材11に適度な水分と空気を供給することができる。不織布は、例えば10mmの厚さを有している。」
「【0014】所定の大きさの植栽ボックス1を組み合わせて大きな植栽ボックス1に連結することができる。例えば、正面の幅が200mm、奥行きが100mmの植栽ボックス1を1ユニットとして、各ユニットを横方向に併設し、連結コイル43を用いて正面幅の長い植栽ボックス1に連結することができる。この場合、ユニット相互に隣接する端面の側網は、共有して仕切網3として利用することができる。又、底網21を斜めに切断して、ユニット相互を連結すると、上方から見ると湾曲した植栽ボックス1を得ることができる。」

3 本件訂正発明1について
(1)本件訂正発明1と甲1発明との対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、
甲1発明の「多面緑化体」は、「方形を呈する複数の側面と底面とを有する有孔構造の箱体」である「多面緑化体用容器20」と、「基盤マットに植物を予め植生した」「植生ブロックマット5」とを備えたものであるから、本件訂正発明1の「多面を有する緑化装置」に相当し、
また、甲1発明の「植物を生育する植生基盤30」を「充填した」ことは、本件訂正発明1の「植物を生育する植生基盤が充填され」たことに相当する。
したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点1ないし3で相違する。

(一致点)
「植物を生育する植生基盤が充填され、多面を有する緑化装置。」

(相違点1)
本件訂正発明1は、「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」を備えているのに対し、
甲1発明は、「多面緑化体用容器20」の側面である「側網部24a,24a」と「側網22」の内側に「基盤マットに植物を予め植生した」「植生ブロックマット5」を設置したものであるが、予め植物が植えられているのが「植生ブロックマット5」でありユニットではない点。

(相違点2)
本件訂正発明1は、「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体」を備えているのに対し、
甲1発明は、「一対の対向する側網部24a,24aとひとつの底部24bを具備するコ形網24」と「一対の側網22」とを備えるものであって、「コ形網24」は「側網22」が設けられる面以外の面を形成するものであるが、予め植物が植えられているユニットと接続自在ではない点。

(相違点3)
本件訂正発明1は、「(前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填された)ユニット」と「(該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる)連結体」とを接続する「接続部材」を備えているのに対し、
甲1発明は、「コ形網24」と「側網22」とを「連結手段23」により連結するものであるが、連結手段23が接続するのが予め植物が植えられているユニットではない点。

(2)相違点1ないし3に係る判断
ア 当審の判断
(ア)本件発明について
本件発明は、本件特許明細書(上記第2の3を参照。)に記載されているように、
「多面緑化体は、設置場所とは異なる場所で予め製造し、完成した多面緑化体を運搬して設置場所に設置することができる。但し、多面緑化体が大型化すると運搬が困難となる。また、多面緑化体が大型化すると、設置場所に移動式クレーンなどの重機を搬入する必要があり、設置作業が大掛かりとなる。また、重機の搬入ができない設置場所も存在する。そこで、多面緑化体の運搬が困難である場合には、設置場所で組み立てる必要があるが、箱体、植生ブロックマット、植生基盤からなる多面緑化体を設置場所で組み立てると作業が煩雑となる。」(段落【0004】)との課題を解決するために、
「多面を有する緑化装置の面のうちの少なくとも一面を、植物が予め植えられた植生面を有するユニットであって内部に植生基盤が充填されたユニットの上記植生面によって構成することとした。また、ユニットと、緑化装置を構成する他の部分としての連結体とを接続部材によって接続自在とした。」(段落【0006】)ものであって、
「ユニットが植生面を有することから、設置場所において植物を植える手間を省くことができ、施工性が向上する。また、植物の植えつけは、熟練度によって完成後の見栄えや植物の生育に影響を与えることが懸念されるが、本発明ではユニットが植生面を有することからそのような懸念も解消される。また、植生面を備えることで設置当初から緑化効果を得ることができ、また、美観にも優れている。更に、ユニットと連結体とが接続自在、換言すると両者が分離自在であることから、運搬が容易となる。従って、従来移動式のクレーンなどの重機が必要とされた大型の緑化装置を設置する場合においても、重機を用いずに緑化装置を設置することができる。」(段落【0008】)、「本発明に係る緑化装置は、上記のようにユニットと連結体とを組み合わせることで構成されることから、従来技術によって構成される一体型のものと比べて運搬が容易となる。」(段落【0010】)との作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明の緑化装置は、設置場所とは異なる場所で予め製造し、完成したものではなく、接続自在(分離自在)な「(緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に植生基盤が充填された)ユニット」と「(ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる)連結体」とから構成されたものであって、運搬及び組み立て作業を容易にするとの作用効果を奏するものといえる。

(イ)甲第2号証について
甲第2号証には、上記2(2)アで摘記したように、
「本発明は緑化装置とその移動方法に関するもの」(段落【0001】)であって、
「目的とするところは、・・・(略)・・・
(1)緑化装置が大重量であっても、安全、低コスト、短時間に移動できること。
(2)大型重機や専門オペレータを必要とせずに、緑化装置を何時でも誰でもスムーズに任意の場所に移動できること。
(3)緑化装置を設置した場所の有効活用が図れること。
(4)草花類や木本類の混生と交換に適しているだけでなく、緑化装置の据付面積に対する緑化面積が卓越して立体的で多様な緑化の景観を提供できること。」(段落【0005】)であり、
上記2(2)イで述べたように次のとおりの甲2技術が記載されていると認められる。
「流体キャスタ50を介装可能な基台20と、複数の多面緑化体30a,30bとからなる緑化装置10であって、
多面緑化体30a,30bは、少なくとも2面の緑化面を有する緑化体であり、上口を開放した有孔構造の箱体31と、箱体31に収容した植生基盤32と、箱体31の複数の面に植生した植物とにより構成され、
基台20の上面に複数種類の多面緑化体30a,30bを隣接させて搭載するとともに、複数の多面緑化体30a,30bで囲んだ中央空間を形成し、該空間内に客土して植生する、
緑化装置10。」
すなわち、甲第2号証には、複数の「多面緑化体30a,30b」からなる「緑化装置10」が記載されている。
そして、甲第2号証に記載の「多面緑化体30a,30b」は、「少なくとも2面の緑化面を有する緑化体であり、上口を開放した有孔構造の箱体31と、箱体31に収容した植生基盤32と、箱体31の複数の面に植生した植物とにより構成され」ているから、甲1発明の「複数の側面と底面とを有する有孔構造の箱体」である「多面緑化体用容器20」と、「植物を予め植生した」「多面緑化体用容器20の少なくとも側面の内側に設置した複数の植生ブロックマット5」と、「植生ブロックマット5の内方に充填した植物を生育する植生基盤30」とからなる「多面緑化体」、及び、本件訂正発明1の「植物を生育する植生基盤が充填され、多面を有する緑化装置」に相当するものであって、本件訂正発明1の緑化装置を構成する「ユニット」に相当するものではないといえる。
したがって、甲第2号証には、本件訂正発明1の「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」に相当する構成が記載されていない。

(ウ)甲第3号証について
甲第3号証には、上記2(3)アで摘記したように、
「発明は車道と歩道の間や車道間等に設置されるに関し、より詳細には安全性と環境性に貢献できる防護柵に関するもの」(段落【0001】)であって、
「目的とするところは、・・・(略)・・・分離体を・・・(略)・・・
(a)低コストで設置できること。
(b)設置直後から緑化効果と横断防止効果を発揮できること。
(c)多機能な防護柵を提供すること。」(段落【0004】)であり、
上記2(3)イで述べたように次のとおりの甲3技術が記載されていると認められる。
「複数の多面緑化体20を連結して構成された防護柵であって、
多面緑化体20は、底面を除いた複数の面に植物21を植生した緑化ブロックで、矩形の底面31と複数の側面32とからなる有孔構造の箱体30と、箱体30に収容した植生基盤40と、箱体の複数の面に予め植生した植物とからなる、
防護柵。」
すなわち、甲第3号証には、複数の「多面緑化体20」を連結して構成される「防護柵」が記載されている。
そして、甲第3号証に記載の「多面緑化体20」は、「底面を除いた複数の面に植物21を植生した緑化ブロックで、矩形の底面31と複数の側面32とからなる有孔構造の箱体30と、箱体30に収容した植生基盤40と、箱体の複数の面に予め植生した植物とからなる」から、甲1発明の「複数の側面と底面とを有する有孔構造の箱体」である「多面緑化体用容器20」と、「植物を予め植生した」「多面緑化体用容器20の少なくとも側面の内側に設置した複数の植生ブロックマット5」と、「植生ブロックマット5の内方に充填した植物を生育する植生基盤30」とからなる「多面緑化体」、及び、本件訂正発明1の「植物を生育する植生基盤が充填され、多面を有する緑化装置」に相当するものであって、本件訂正発明1の緑化装置を構成する「ユニット」に相当するものではないといえる。
したがって、甲第3号証には、本件訂正発明1の「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」に相当する構成が記載されていない。

(エ)甲第4号証について
甲第4号証には、上記2(4)アで摘記したように、
「本発明は、構造物の壁面に緑化を施すための壁面緑化システムに関する」(段落【0001】)ものであって、
「構造物の壁面の任意の位置に緑化を施すことができ、デザインの自由度に優れるとともに、メンテナンスにも柔軟に対応可能な壁面緑化システムを提供することを目的とする。」(段落【0010】)ものであり、
上記2(4)イで述べたように次のとおりの甲4技術が記載されていると認められる。
「緑化ユニット2を、構造物の壁面に沿って設置して該構造物に緑化を施すための壁面緑化システムであって、
緑化ユニット2は、予めポット苗が植栽された培土基盤5と、培土基盤5を保持する枠部材6とから構成されている、
壁面緑化システム。」
すなわち、甲第4号証には、予めポット苗が植栽された培土基盤5と、培土基盤5を保持する枠部材6とから構成されている「緑化ユニット2」が記載されている。
しかしながら、甲第4号証に記載の「緑化ユニット2」は、多面を有する緑化装置の一面を形成するものではないから、甲第4号証には、本件訂正発明1の「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」に相当する構成が記載されていない。

(オ)甲第5号証について
甲第5号証には、上記2(5)アで摘記したように、
「本発明は、緑化ユニットに関するものであり、より詳細には、予め植物が植生され且つ水平横架材に取外し可能に係留される緑化パネルと交換可能な緑化ユニットに関するもの」(段落【0001】)であって、
「目的とするところは、農場等で育成した植物とともに緑化目的の建築物等に輸送され、前述の壁面緑化用構造体の骨組に容易に取付けられるとともに、上記緑化パネルとの整合性及び互換性を有する緑化ユニットを提供する」(段落【0007】)ものであり、
上記2(4)イで述べたように次のとおりの甲5技術が記載されていると認められる。
「建築物等の壁面に沿って設置された骨組2と、
骨組2に着脱可能に取付けられた緑化パネル3とからなる緑化構造体であって、
各緑化パネル3は、植物Pが農場等において植栽された緑化基盤10と、基盤10を囲む正面視正方形の枠体11とからなる、
緑化構造体。」
すなわち、甲第5号証には、植物Pが農場等において植栽された緑化基盤10と、基盤10を囲む正面視正方形の枠体11とから構成されている「緑化パネル3」が記載されている。
しかしながら、甲第5号証に記載の「緑化パネル3」は、多面を有する緑化装置の一面を形成するものではないから、甲第5号証には、本件訂正発明1の「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」に相当する構成が記載されていない。

(カ)相違点1について
本件訂正発明1は、「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」を備えているところ、上記(イ)ないし(オ)で述べたように、甲第2ないし5号証には、そのような「ユニット」が記載されていない。すなわち、甲第2ないし5号証には、多面緑化体の一部を更にユニット化するような技術思想は開示されていない。
また、甲第2号証に記載の「多面緑化体30a,30b」や甲第3号証に記載の「多面緑化体20」は、上記(イ)及び(ウ)で述べたように、甲1発明の「多面緑化体」に相当するものであるから、甲1発明の「多面緑化体」を構成する「側網22」と「植生ブロックマット5」に代えて甲2技術や甲3技術を適用する動機付けはない。
さらに、甲第2ないし5号証に記載されているように、予め植栽された多面緑化体や緑化ユニットが本件出願前から周知であったとしても、甲1発明の「多面緑化体」を構成する「側網22」と「植生ブロックマット5」に代えてそのような周知技術を適用する動機付けはない。
よって、甲1発明において本件訂正発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(キ)相違点2及び3について
甲1発明は、「側網22」が設けられる面以外の面を形成する「コ形網24」や、「コ形網24」と「側網22」とを連結する「連結手段23」を備えている。
しかしながら、上記(カ)で検討したように、甲1発明において、本件訂正発明1の相違点1に係る構成である「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」を備えることは、当業者が容易に想到し得ないから、本件訂正発明1の上記相違点2及び3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

イ 請求人の主張について
(ア)甲第2及び3号証について
a 請求人は、甲第2号証の多面緑化体30a,30b、及び、甲第3号証の多面緑化体20は、それぞれを単体で緑化装置として用いることは想定されていないと主張している。
b しかしながら、上記ア(イ)及び(ウ)で述べたように、甲第2号証に記載の「多面緑化体30a,30b」、及び、甲第3号証に記載の「多面緑化体20」は、甲1発明の「多面緑化体」や本件訂正発明1の「緑化装置」に相当するものであって、本件訂正発明1の緑化装置を構成する「ユニット」に相当するものではない。甲第2号証に記載の「緑化装置10」は、甲1発明の「多面緑化体」に相当する「多面緑化体30a,30b」と「基台20」を組み合わせたものであり、また、甲第3号証に記載の「防護柵10」は、甲1発明の「多面緑化体」に相当する「多面緑化体20」を組み合わせたものである。
また、甲第2及び3号証において、複数の「多面緑化体30a,30b」や「多面緑化体20」が組み合わせて用いられているとしても、当業者であれば、「多面緑化体30a,30b」や「多面緑化体20」が、その構造からみて、甲1発明の「多面緑化体」に相当するものと認識でき、単体で緑化装置として用いることが着想できるといえる。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(イ)ユニットとすることについて
a 請求人は、甲第2号証の多面緑化体30a,30bや甲第3号証の多面緑化体20が単体で緑化装置として機能するものであったとしても、甲第2号証や甲第3号証の発明の構成や効果には全く関係が無い設計事項程度の差異に過ぎず、これら甲第2号証や甲第3号証を主引例である甲第1号証に組み合わせることを考えた場合に阻害要因となる訳ではなく、また、緑化技術において、内部に植物育成用の基盤が充填されたユニットに予め植栽を施して取り扱うこと自体が、単なる周知技術であることを考慮すると、本件訂正発明1は、甲第1号証の植生ブロックマット5と側網22を、単に周知技術に基づいて予め植栽されたユニットとして形成したに過ぎないと主張している。
b しかしながら、上記ア(カ)で述べたように、甲第2号証に記載の「多面緑化体30a,30b」や甲第3号証に記載の「多面緑化体20」は、甲1発明の「多面緑化体」に相当するものであるから、当業者であっても、甲1発明の「多面緑化体」の一部の構成である「側網22」と「植生ブロックマット5」に代えて上記「多面緑化体30a,30b」や「多面緑化体20」を適用することが容易に着想できるとはいえない。
また、甲第2ないし5号証に記載されている多面緑化体や緑化ユニットは、予め植栽されたものではあるが、多面緑化体の一部を予め植栽されたユニットにする技術が開示されたものではないから、当業者であっても、甲1発明の「多面緑化体」を構成する「側網22」と「植生ブロックマット5」を、予め植栽された「ユニット」とすることが容易に想到できるとはいえない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1発明、及び、甲第2ないし5号証に記載の公知技術若しくは周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が本件特許出願前に容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件訂正発明1についての特許は、無効とすべきものではない。

4 本件訂正発明2ないし4について
本件訂正発明2ないし4は、本件訂正発明1を引用し、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
なお、甲第6及び7号証は、本件訂正発明2ないし4で限定された事項に対して示された証拠であって、甲第6号証には、上記2(6)で摘記したように「シースコア(sheath-core)型のポリエステル短繊維と人工土壌とを混合して植生基盤体を製造するか、繊維性物質、ホットメルト(hot melt)および残余量の床土よりなる植生基盤体およびその製造方法」(段落【0001】)に関する発明が記載されており、また、甲第7号証には、上記2(7)で摘記したように「緑化工法に関し、より詳細には、各種花壇、都市公園、屋上庭園、住宅用柵などに用いられる植栽ボックス」(段落【0001】)に関する発明が記載されているが、緑化装置において、「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」を備えることは、何ら記載されていない。
よって、本件訂正発明2ないし4は、甲1発明、甲第2ないし5号証に記載の公知技術若しくは周知技術、甲第6号証に記載の公知技術、及び、甲第7号証に記載の公知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が本件特許出願前に容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件訂正発明2ないし4についての特許は、無効とすべきものではない。

5 本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、「緑化装置を用いた緑化方法」であって、「前記緑化装置の設置場所において、前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体とを、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材によって、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続工程」を有するものである。
すなわち、本件訂正発明5においても、本件訂正発明1と同様に、「前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニット」と、「前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体」と、「前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材」とを備えるものであるといえる。
したがって、本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
よって、本件訂正発明5は、甲1発明、及び、甲第2ないし5号証に記載の公知技術若しくは周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件特許出願前に容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件訂正発明5についての特許は、無効とすべきものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1ないし5は、請求人が提出した証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明1ないし5に係る特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を生育する植生基盤が充填され、多面を有する緑化装置であって、
前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、
前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体と、
前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材と、
を備える緑化装置。
【請求項2】
前記ユニット及び前記連結体は、格子状又は複数孔を有する平板状の枠体と、該枠体の内側に配置され植生基盤を内包すると共に通気性を有するマットとを有する請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
前記ユニットは、上面のみが開放され、前記連結体は、前記ユニットとの接続可能な状態において、前記ユニットとの接続面と上面とが開放されている請求項1又は2に記載の緑化装置。
【請求項4】
前記ユニットは、前記連結体との接続面に設けられる仕切部であって、前記連結体と接続された際に取り外すことで、該ユニット内と該ユニットと連結体によって囲まれる空間とを連通させる仕切部を更に有する請求項1から3の何れか1項に記載の緑化装置。
【請求項5】
緑化装置を用いた緑化方法であって、
前記緑化装置の設置場所において、前記緑化装置の多面のうちの少なくとも一面を形成するユニットであって、植物が予め植えられた植生面を有し、かつ、内部に前記植生基盤が充填されたユニットと、前記ユニットと接続自在であり、かつ、該ユニットが設けられる面以外の面を形成する該ユニットとは異なる連結体とを、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続部材によって、前記ユニットと前記連結体とを接続する接続工程と、
前記緑化装置に植生基盤を補充する植生基盤補充工程と、
を備える緑化装置を用いた緑化工法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-03-07 
結審通知日 2016-03-09 
審決日 2016-03-23 
出願番号 特願2010-98934(P2010-98934)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 靖典  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2014-02-14 
登録番号 特許第5475536号(P5475536)
発明の名称 緑化装置及び緑化工法  
代理人 香坂 薫  
代理人 本間 博行  
代理人 関根 武彦  
代理人 本間 博行  
代理人 関根 武彦  
代理人 香坂 薫  
代理人 香坂 薫  
代理人 和久田 純一  
代理人 和久田 純一  
代理人 関根 武彦  
代理人 本間 博行  
代理人 和久田 純一  

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