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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1316266 |
審判番号 | 不服2014-24818 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-04 |
確定日 | 2016-07-19 |
事件の表示 | 特願2009-502218「光検出器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日国際公開、WO2007/113502、平成21年 9月 3日国内公表、特表2009-531847、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2007年3月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2006年3月31日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月15日付けで拒絶理由が通知され、平成25年2月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成26年5月1日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年7月31日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、これに対し、同年12月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がされ、平成27年11月18日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年5月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)及び誤訳訂正(以下、「本件誤訳訂正」という。)がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-17に係る発明は、平成28年5月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 光信号を搬送する光子を、対応する電気信号を搬送する電荷キャリアに変換する吸収体を含む、連続的に設けられた能動導波路と、 電気信号を搬送する電荷キャリアを輸送し、加速させるキャリア収集層と、 前記キャリア収集層にじかに隣接し、かつ5つよりも少ないモードを持続させる副導波路であって、前記副導波路は光信号を搬送する光子を受信し、かつ前記能動導波路とエバネッセント結合する、副導波路と、 電極としての機能を果たし、かつ伝送線路の一部を構成する複数の金属コンタクトとを備える光検出器であって、 前記光検出器は、進行波構造を有し、前記進行波構造は、前記金属コンタクトの特性と、前記能動導波路、前記キャリア収集層、及び前記副導波路の材料の特性とに基づいて計算できる前記電極の間隔によって画定されるものであり、 前記光検出器は、前記光検出器に沿った電気信号の位相速度が前記能動導波路における光信号の位相速度とほぼ整合するように構成される、光検出器。」(下線は、請求人が付したとおりである。) 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1 特開2001-68717号公報 「引用文献1の段落【0028】等に開示されているように、引用文献1の「pin型光検出器」は導波路構造であるから、引用文献1の『pin型光検出器』は本願請求項1に係る発明の『能動導波路』に相当する。 また、引用文献1の『導波路』は、本願請求項1の『副導波路』に相当し、引用文献1の段落【0029】には、引用文献1の能動導波路と副導波路とがエバネッセント結合することが示唆されていると認められる。」 2 原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の優先日前に頒布された特開2001-68717号公報公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。 (ア)「【0028】本発明に係わる進行波型半導体光検出器の構造は以下のとおりである。進行波型半導体光検出器の導波路の層構造は、クラッド層/コア層/クラッド層のうちコア層厚を導波路の全層厚の1/8前後に留め、コア層下のクラッド層厚を大きく上部のクラッド層厚を小さくした非対称構造とする。導波路は上部のクラッド層の一部を取り除いて作製する。導波路上に周期的に配置された複数のpin型光検出器では、pin層のうちn型層及びp型層の屈折率が、コア層の屈折率以上であり、かつInGaAs光吸収層の屈折率よりも小さいようにする。これにより、pin型光検出器を導波路構造とし、pin型光検出器のある領域での平均の屈折率を大きくする。加えて、pin型光検出器でコア層上のクラッド層と光吸収層に挟まれた層(例えばn型層)の導波路方向の長さを、InGaAs光吸収層の長さより大きくし、その光吸収層から導波路方向にはみ出すようにこの層を設け、InGaAs光吸収層の前後にこの層の一部が導波路上にある様にする。各pin型光検出器の電極は、CPS電極或いはCPW電極に接続される。 【0029】前記の構成により、本発明では、導波路内を伝搬する光の閉じ込めを弱め、逆にpin型光検出器が配置された導波路上ではpin型光検出器の各層と伝搬する光の結合を強める。」 (イ)「【0038】本発明の実施形態では、進行波電極としてCPS電極を用い、下部にn型層、上部にp型層を設けた構造を有するpin型光検出器を用いた進行波型半導体光検出器を実施形態(実施例)1とし、また、CPW電極を用いpin型光検出器の構造に下部にp型層、上部にn型層を設けた構造を有するpin型光検出器を用いた進行波型半導体光検出器を実施形態(実施例)1として説明する。 【0039】(実施形態1)図1は、本発明による実施形態1の進行波型半導体光検出器の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すA-A’面で切った断面図である。 【0040】まず、図1の進行波型半導体光検出器の構成を説明する。この進行波型半導体光検出器は、半絶縁性のInPからなる基板101上にノンドープのInAlAsからなるバッファ層102を備え、その上にノンドープのInAlGaAsからなる下部クラッド層103、ノンドープのInAlGaAsからなるコア層104、ノンドープのInAlGaAsからなる上部クラッド層105を有し、上部クラッド層105の一部をエッチングにより取り除いて形成した導波路を備えている。 【0041】さらに、この進行波型半導体光検出器は、コア層104と同等の屈折率3.42のInAlGaAsからなるn型層106及びp型層108、ノンドープのInGaAsからなる光吸収層107で構成されたpin型光検出器が導波路上に周期的に配置されている。 【0042】図1及び図2は、3個のpin型光検出器が導波路上に配置された場合である。下部クラッド層103/コア層104/上部クラッド層105の構造は、InAlGaAsの組成を変え屈折率を変化させ作製する。例えば、InAlGaAsではクラッド層及びコア層の組成を、In_(0.52)Al_(0.37)Ga_(0.11)As、In_(0.52)Al_(0.18)Ga_(0.3)Asとする。屈折率は、クラッド層103及び105で3.28、コア層104で3.42である。InGaAs光吸収層107の屈折率の実部は3.6であり、n型層106及びp型層108の屈折率3.42より大きいため各pin型光検出器は導波路構造となる。 【0043】また、本実施形態1では、上部クラッド層105と光吸収層107に挟まれた層(ここではn型層106)の導波路方向の長さを、光吸収層107よりも大きくし、その光吸収層から導波路方向にはみ出すようにこの層を設け、かつ光吸収層107の前後にこの層がある領域(図2上にLで示される領域)を設ける。すなわち、光吸収層107をn型層上の中心位置に設け、光吸収層107の前後に長さLのn型層のはみ出し領域を持たせる。このLの領域は、導波路からの光吸収をより向上させるための光吸収補助領域である。 【0044】pin型光検出器のAuGeNi/Auよりなるn型電極110は、導波路横のn型層106上に設け、AuZn/Auよりなるp電極109はpin型光検出器上部のp型層108上に形成される。 【0045】各pin型光検出器のn型電極110及びp型電極109は導波路に平行して設けたTi/Pt/AuよりなるCPS電極112に接続され進行波型半導体光検出器を構成する。なお、CPS電極112は、絶縁膜111上に設ける。」 (ウ)「【0072】また、本発明の各実施の形態では、pin型光検出器の場合に限ったが、導波路構造の単一走行キャリアー(UTC)型光検出器(T.Ishibashi et.al.:IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS VOL.10,NO.3,412(1998))を用いて進行波型半導体光検出器を構成しても良い。UTC型光検出器は、pin型光検出器のノンドープのInGaAsからなる光吸収層をp型のInGaAsに置き換えることで可能であり、導波路構造もn型及びp型のInGaAsPからなる層を用いることで可能である。」 (エ)図1は、次のものである。 イ 引用発明 上記アによれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「導波路上に周期的に配置された複数のpin型光検出器であって、 前記pin型光検出器を導波路構造とし、 各pin型光検出器の電極は、Ti/Pt/AuよりなるCPS電極或いはCPW電極に接続され、 前記の構成により、導波路内を伝搬する光の閉じ込めを弱め、逆にpin型光検出器が配置された導波路上ではpin型光検出器の各層と伝搬する光の結合を強める、 進行波型半導体光検出器。」 (2)対比 ア 本願発明と引用発明とを対比すると、 「光信号を搬送する光子を、対応する電気信号を搬送する電荷キャリアに変換する吸収体を含む、能動導波路と、 電極としての機能を果たし、かつ伝送線路の一部を構成する複数の金属コンタクトとを備える光検出器であって、 前記光検出器は、進行波構造を有する、光検出器。」 の点で一致している。 イ 他方、本願発明と引用発明は、下記(ア)ないし(ウ)の点で相違する。 (ア)本願発明の「能動導波路」は、「連続的に設けられた」ものであるのに対して、引用発明の「pin型光検出器」は、「導波路上に周期的に配置された複数のpin型光検出器」からなる点(以下、「相違点1」という。)。 (イ)本願発明の「光検出器」は、「電気信号を搬送する電荷キャリアを輸送し、加速させるキャリア収集層」及び「前記キャリア収集層にじかに隣接し、かつ5つよりも少ないモードを持続させる副導波路であって、前記副導波路は光信号を搬送する光子を受信し、かつ前記能動導波路とエバネッセント結合する、副導波路」を備えるのに対して、引用発明の「進行波型半導体光検出器」は、このような「キャリア収集層」と「副導波路」を備えない点(以下、「相違点2」という。)。 (ウ)本願発明の「光検出器」は、「前記進行波構造」が、「前記金属コンタクトの特性と、前記能動導波路、前記キャリア収集層、及び前記副導波路の材料の特性とに基づいて計算できる前記電極の間隔によって画定されるものであり」、「前記光検出器に沿った電気信号の位相速度が前記能動導波路における光信号の位相速度とほぼ整合するように構成される」のに対して、引用発明の「進行波型半導体光検出器」は、このようなものと特定されない点(以下、「相違点3」という。)。 (3)判断 ア 事案に鑑みて、まず、相違点2について検討する。 引用文献の「【0029】前記の構成により、本発明では、導波路内を伝搬する光の閉じ込めを弱め、逆にpin型光検出器が配置された導波路上ではpin型光検出器の各層と伝搬する光の結合を強める。」という記載からは、「pin型光検出器の各層」と「導波路」とは、光の伝搬について結合している程度のことは理解できても、両者がエバネッセント結合しているとまではいうことができない。 そして、引用発明において、「導波路」又は「pin型光検出器の各層」に、「エバネッセント結合する、副導波路」を設けることは想定されていない。 したがって、本願発明の上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に基いて、当業者が容易に想到したものであるとはいうことができない。 イ よって、相違点1、3について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。 ウ また、本願の請求項2-17に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 エ よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)本願請求項1の『別の導波路』について ア 本願請求項1に係る発明は、『能動導波路』と、『副導波路』と、『別の導波路を含む進行波構造』を備えることを発明特定事項とする。 イ しかしながら、請求項1の記載では、当該『別の導波路を含む進行波構造』は、『副導波路』を特定するものなのか、更に別の導波路を備え、その導波路を特定するものであるのか、明確ではない。 (なお、平成26年5月1日付けの意見書及び審判請求書の主張は、『副導波路』と『能動導波路』以外に第3の『導波路』があるかのような主張であるが、本願明細書には、このような、『副導波路』と『能動導波路』以外の第3の『導波路』を備える旨の記載は見当たらず、明細書の記載に基づかない主張と思われる。なお、原文は『a further waveguide』であって、『別の導波路』との訳が適切ではなく、『副導波路』が上記『進行波構造』を有すると思われる。) ウ 請求項1の従属項である請求項2ないし17に係る発明も、請求項1と同様に不明確である。」 2 当審拒絶理由の判断 (1)本件誤訳訂正によって、本願の発明の詳細な説明の段落【0008】及び【0011】における「別の導波路」との記載は、「さらなる導波路」に訂正された。 (2)本件補正により、 補正前に「別の導波路を含む進行波構造であって、前記別の導波路は、前記別の導波路に沿った電気信号の位相速度が能動導波路における光信号の位相速度とほぼ整合するように構成される、進行波構造」であったものが、 「電極としての機能を果たし、かつ伝送線路の一部を構成する複数の金属コンタクトとを備える光検出器であって、 前記光検出器は、進行波構造を有し、前記進行波構造は、前記金属コンタクトの特性と、前記能動導波路、前記キャリア収集層、及び前記副導波路の材料の特性とに基づいて計算できる前記電極の間隔によって画定されるものであり、 前記光検出器は、前記光検出器に沿った電気信号の位相速度が前記能動導波路における光信号の位相速度とほぼ整合するように構成される」と補正して(下線は当審が付した。)、「別の導波路」を、「さらなる導波路」を意味する「金属コンタクト」に補正された。 このことにより、請求項1に係る発明は明確となった。 また、請求項2ないし17に係る発明も明確となった。 よって、当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-07-04 |
出願番号 | 特願2009-502218(P2009-502218) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山本 元彦 |
特許庁審判長 |
川端 修 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 松川 直樹 |
発明の名称 | 光検出器 |
代理人 | 松丸 秀和 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 関谷 三男 |
代理人 | 渡辺 敏章 |