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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F |
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管理番号 | 1317876 |
審判番号 | 不服2015-11206 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-15 |
確定日 | 2016-08-12 |
事件の表示 | 特願2011- 73636「透過型表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-208307〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年3月29日の出願(特願2011-73636号)であって、平成26年10月23日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、平成27年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、当審において、平成28年2月23日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年4月26日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされた。 第2 本願の請求項1の記載 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年4月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「透過型表示部と、前記透過型表示部を背面側から照明する面光源装置と、前記透過型表示部よりも出射側に設けられ、前記透過型表示部の非観察画面領域となる周縁部を被覆する枠状のベゼル部とを備える透過型表示装置であって、 前記面光源装置は、 導光板と、 前記導光板の少なくとも1つの側面に沿って配置された光源部と、 前記導光板と前記透過型表示部との間に少なくとも1枚設けられる光学シートと、 を備え、 少なくとも1枚設けられる前記光学シートのうちのいずれか1枚は、その光源部側の端部に、前記光源部の延在する方向に沿って遮光機能を有する帯状の遮光部が設けられ、 前記遮光部は、その画面中央側の端部が、前記ベゼル部の画面中央側の端部よりも画面外側に位置し、 前記遮光部の長手方向に平行かつ前記透過型表示部の観察画面に直交し、前記遮光部の前記導光板側の面であって画面中央側の端部となる点を通る平面と、前記遮光部の前記導光板側の面であって画面中央側の端部となる点及び前記ベゼル部の前記導光板側の面であって画面中央側の端部となる点を通る平面とがなす角度をθとするとき、 0.2≦tanθ≦0.9 を満たし、 前記遮光部は、前記導光板の前記光学シート側の面の一部に接するようにして、前記光学シートの導光板側の面に設けられ、その透過率が0.5%以下であり、 前記遮光部は、その幅方向において、一部が前記導光板よりも前記光源部側に突出し、前記光源部の前記光学シート側の面の全面を覆っていること、 を特徴とする透過型表示装置。」 第3 当審における拒絶理由 当審において(平成28年2月23日付けで)通知した、本願は特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に違反しているとした拒絶理由は、以下のとおりである。 「第1 特許法第36条第6項第1号違反の拒絶理由 1 拒絶理由の概要 平成27年6月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)の発明特定事項の記載では、本願において発明が解決しようとする課題が生じないものや、本願において発明が解決しようとする課題を解決することができないものまでをも含むものと認められることから、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載された事項を逸脱した発明を含むものであり、発明の詳細な説明によってサポートされたものということはできない。この点について以下に説明する。 なお、本願発明1において、 「前記遮光部の長手方向に平行かつ前記透過型表示部の観察画面に直交し、前記遮光部の前記導光板側の面であって画面中央側の端部となる点を通る平面と、前記遮光部の前記導光板側の面であって画面中央側の端部となる点及び前記ベゼル部の前記導光板側の面であって画面中央側の端部となる点を通る平面とがなす角度をθとするとき、 0.2≦tanθ≦0.9 を満たし、」 の発明特定事項が特定されているが、上記の角度「θ」については、本願の下記図面(【図4】)に記載されているとおりであり、以下においては、当該角度を単に「θ」と記載して用いる。 「【図4】 」 また、「θ」以外の上記【図4】に用いられる指標(A,B,C,A_(1),A_(2))についても、【図4】を参酌して理解し得るものとして,それぞれ、単に「A」,「B」,「C」,「A_(1)」,「A_(2)」と記載して用いる。 2 本願発明1の課題について まず、本願において発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明に次のように記載されている。 「【0005】 一般的に、透過型表示装置では、非観察画面領域となるLCDパネルの周縁部を覆う枠状の部材であり、LCDパネルを観察面側から保持するベゼルを備えている。 近年、透過型表示装置の大画面化や、薄型化等に伴い、各種部材の省スペース化が行われており、ベゼルに関しても、その幅(LCDパネルを被覆する幅)をより狭くしたり、厚みを薄くしたりする傾向にある。 しかし、このようなベゼルの狭幅化に伴い、エッジライト型の面光源装置を用いる透過型表示装置では、光源部からの光が光学シートの光源部側側面等から入射して観察画面から出射することにより、LCDパネルの観察画面の光源部側端部に光が漏れているように観察される光漏れを生じるという問題がある。 特許文献1,2には、このような理由によって生じる光漏れに対する対策は開示されていない。 【0006】 本発明の課題は、大画面化及びベゼルの狭幅化を実現しながら光漏れ等の表示不良を改善でき、良好な映像を表示できる透過型表示装置を提供することである。」(下線は当審で付したものである。) 上記の【0005】【0006】の記載によれば、本発明の課題は、「ベゼルの狭幅化に伴い生じる光漏れに対する対策」を施し、「大画面化及びベゼルの狭幅化を実現しながら光漏れ等の表示不良を改善」することにあるといえる。すなわち、本願発明1は「ベゼルの狭幅化」という技術的傾向を必須の前提とした上で「光漏れ等」を改善することを技術課題とする発明であるといえる。 3 「光漏れ等」について そして、上記の「光漏れ」が生じる原因について、発明の詳細な説明には、図面を用いて次の説明がなされている。 「【0045】 ここで、光漏れの発生の様子を説明する。 図5は、光漏れについて説明する図である。 図5では、遮光部を備えていない透過型表示装置1Bを示す。図5では、図4と同様に、透過型表示装置の観察画面(シート面)に直交し、かつ、画面上下方向に平行な断面(YZ平面)での光源部12近傍の様子を示している。 近年の透過型表示装置1の大画面化等にともなってベゼル18の幅を狭くする傾向になる。そのため、ベゼル18の幅が狭くなることにおり、図5に示すように、遮光部15を設けていない透過型表示装置1Bでは、光源部12からの光が、導光板13を透過せず、導光板13上の各光学シート(遮光部15を備えない第1プリズムシート14B,第2プリズムシート16,光拡散シート17)の光源部12側の端面から入射し、ベゼル18近傍から出射して観察される光漏れが生じる。 本実施形態では、上述のように、第1プリズムシート14に遮光部15を設けることにより、この光漏れの要因となる光を遮光し、光漏れを改善している。」(下線は当審において付したものである。) 「【図5】 」 上記の発明の詳細な説明及び図面の記載によれば、光源から放射される光がベゼルによって遮られないことによって光漏れが生じることがわかる。すなわち、光の放射位置である光源の画面中央側端部の位置とベゼルの画面中央側端部の位置の位置関係が光漏れに影響を与えるものであることは明らかである。 なお、上記【0045】においては、「導光板13を透過」しない「光源部12からの光」のみが「光漏れ」の原因になるかのように記載されているが、【0051】の【表1】の評価結果を参酌すれば、または、技術常識から、「導光板13を透過」する光についても、その透過する光路長の程度によっては、当然に「光漏れ」の原因になるものと考えられる。そうすると、導光板13の光源側端部の上を覆う遮光板の長さ(A_(2)(【図4】参照))も光漏れに影響を与えるものであることは明らかである。 4 本願発明1と本願において発明が解決しようとする課題との関係 これに対し、まず、本願発明1においては、「光源の画面中央側端部の位置とベゼルの画面中央側端部の位置の関係」が何ら特定されていないのであるから、ベゼルの狭幅化という前記の必須の技術的前提が何ら考慮されていない。すなわち、本願発明1は、ベゼルの挟幅化という前提を欠き、そもそも、ベゼルが挟幅化されずにベゼルの幅(A+B(【図4】参照))が長く、そのため光がベゼルによって遮られて、光漏れの改善が必要のないものまで、すなわち、上記「2」の技術課題を生じる余地のないものをも含むことになる。 次に、例えば、光源がベゼル部や遮光部からLCDパネルの幅方向(図5のZ1及びZ2の方向)に離れていること、及び/又は、光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)が遮光部の画面中央側端部の位置と画面上下方向(図5のY1及びY2方向)において接近した位置にあることにより、本願発明1の上記「0.2≦tanθ≦0.9」という特定事項を含む発明特定事項に関わらず、光漏れが生ずるものを含むことになる。 さらに、例えば、導光板13の光源側端部の上を覆う遮光板の長さ(A_(2)(【図4】参照))が短いことにより、本願発明1の上記「0.2≦tanθ≦0.9」という特定事項を含む発明特定事項に関わらず、光漏れが生ずるものを含むことになる。 すなわち、本願において発明が解決しようとする課題を解決するものとするには、上記「0.2≦tanθ≦0.9」という特定事項を含む本願発明1の発明特定事項のみでは十分ではなく、他に、上記のように、ベゼル部の幅の長さ(A+B)、LCDパネルの幅方向における光源とベゼル部や遮光部の位置関係、画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と遮光部の画面中央側端部の位置と関係、導光板13の光源側端部の上を覆う遮光板の長さ(A_(2))などの事項を特定することが必要となる。 換言すれば、本願発明1において、上記「0.2≦tanθ≦0.9」という特定事項を含む本願発明1の発明特定事項のみによっては、必ずしも、本願において発明が解決しようとす課題を解決することができる発明であるということはできないことは明らかである。 5 結論 よって、本願発明1、及び、本願発明1を引用する本願の請求項2ないし8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された事項を逸脱した発明を含むこととなり、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。 第2 特許法第36条第4項第1号違反の拒絶理由 1 「光漏れ」について 上記「第1」で述べたように、本願発明1が本願において発明が解決しようとする課題を解決するには、上記「0.2≦tanθ≦0.9」という特定事項を含む本願発明1の発明特定事項のみでは十分ではなく、他に、上記のように、ベゼルの幅の長さ(A+B)、LCDパネルの幅方向における光源とベゼル部や遮光部の位置関係、画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と遮光部の画面中央側端部の位置と関係、導光板13の光源側端部の上を覆う遮光板の長さ(A_(2))などの事項を特定することが必要となる。 これに対して、発明の詳細な説明には、実施例として、【0046】?【0057】において遮光部の種類と厚さを変えて「光漏れ」及び「たわみや反り」を評価したもの、及び、【0058】?【0062】に「観察角度」と「B/C=tanθ」を変化させて「光漏れ」及び「明るさムラ」を評価したものが記載されているのみで、上記のベゼルの幅の長さ(A+B)、LCDパネルの幅方向における光源とベゼル部や遮光部の位置関係、画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と遮光部の画面中央側端部の位置と関係については記載がない。(なお、ベゼルの幅の長さ(A+B)の内の「A」の値、及び、導光板13の光源側端部の上を覆う遮光板の長さ(A_(2))については、【0047】に「幅A=6.0mm(A1=1.5mm、A2=4.5mm)」と記載されている。) したがって、「光漏れ」に関して、本願において発明が解決しようとする課題を解決するためには、上記のベゼルの幅の長さ(A+B)、LCDパネルの幅方向における光源とベゼル部や遮光部の位置関係、画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と遮光部の画面中央側端部の位置と関係について、種々の値を選択して試行する必要があり、過度の試行錯誤を要するものであるといえるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。 2 「明るさムラ」について 発明の詳細な説明の【0012】において、 「従って、光源部からの光が導光板を透過せずに光学シートの側面から入射して観察画面上に漏れる光漏れや、光源部近傍の画面端部が他の領域よりも著しく明るく観察される明るさムラを改善し、良好な映像を表示することができる。」(下線は当審において付したものである。) と記載されていることなどから、本願の発明が解決しようとする課題に関する上記の【0006】に記載の「光漏れ等」は「光漏れ」のみならず「明るさムラ」を含むものであることがわかる。そして、当該「明るさムラ」について、発明の詳細な説明には、【0058】において 「ここで、明るさムラとは、観察画面の光源部12側の端部に、他の領域よりも極端に明るい領域が生じる観察画面内の明るさのムラをいう。これは、光漏れとは発生原因が異なり、ベゼル18の画面中央側端部での明暗差が顕著である場合に生じやすくなる。また、この明るさムラは、光漏れと同様に、観察画面の光源部12側端部に生じるが、光漏れよりも明るく、他の領域の明暗差が大きく観察されるものである。この明るさムラは、遮光部15によって遮光されるため、遮光部15近傍では光の落ち方が顕著になることによって、他の領域よりも極端に明るい領域がさらに際立つため、より認識され易くなる。」 と記載され、また、【0061】において 「なお、透過型表示装置において、tanθ=B/C<0.2となると、光漏れは改善されるが、明るさムラが観察されやすく理由としては、以下のような理由が考えられる。 光源部12側端部は、遮光部15により遮光されているため、遮光部15より画面中央側から光がLCDパネル11側へ多く出射する形態となる。透過型表示装置1がtanθ=B/C<0.2となる場合、画面上下方向における画面中央側のベゼル18端部と遮光部15端部の位置が近くなる傾向にある。そのため、ベゼル18の画面中央側端部近傍での明暗差が顕著となり、光源部12近傍の画面端部が必要以上に明るくなり、明るさムラとして感じられる。 しかし、透過型表示装置1が0.2≦tanθ=B/Cを満たす場合、画面上下方向における画面中央側のベゼル18端部と遮光部15端部の位置が離れる傾向にあり、LCDパネル11の画面上下方向の光源部12側端部から出射した光の一部は、ベゼル18の内側で反射する等して拡散される。これにより、ベゼル18の画面中央側端部近傍での明暗差が緩和され、明るさムラが低減されると考えられる。 また、透過型表示装置において、tanθ=B/C>0.9となると、明るさムラは改善されるが、光漏れが観察されやすくなるという現象が生じていた。この現象は、観察角度(画面中央を通る法線に対して水平方向になす角度)が小さい場合ほど顕著に発生していた。この理由は様々な要因が絡んで生じるものと思われる。」 と記載されている。 上記から、「明るさムラ」は「遮光部15端部の位置」における明暗差に起因するものといえる。 そして、「遮光部15端部の位置」における明暗差の視認の程度は、特に、観察角度が小さい場合においては、【図4】における光学シート(第1プリズムシート14,第2プリズムシート16、光拡散シート17)の具体的構成(それぞれの、具体的種類や厚さ)や、画面上下方向における遮光部とベゼル部の距離(C(【図4】参照))に依存することは、技術常識から当然であるといえるところ、発明の詳細な説明には、その点の記載がない。 したがって、「明るさムラ」に関して、本願において発明が解決しようとする課題を解決するためには、上記の光学シート(第1プリズムシート14,第2プリズムシート16、光拡散シート17)の具体的構成(それぞれの、具体的種類や厚さ)や、画面上下方向における遮光部とベゼル部の距離(C)について、種々の構成や値を選択して試行する必要があり、過度の試行錯誤を要するものであるといえるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。 3 結論 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできないから、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する、いわゆる実施可能要件に違反し、拒絶すべきものである。」 第4 請求人(出願人)の対応・主張 上記の拒絶理由に対して、請求人は、平成28年4月26日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1を上記「第2 本願の請求項1の記載」に記載したとおりに補正するとともに、同日付けで意見書を提出し、次のように主張している。 「本願は、本意見書と同日付け補正書によって、発明の解決しようとする課題を「光源部からの光が光学シートの光源部側側面等から入射して観察画面から出射する光漏れ等による表示不良を改善でき、良好な映像を表示」することとしております。 したがって、本願請求項1の発明は、ベゼルの狭幅化に関係なく、光学シートの光源部側側面等から入射する光が起因となる光漏れ等を抑制するため、ベゼルの幅寸法(A+B)の特定は必要ないものと思料致します。 また、拒絶理由通知において、「導光板13の光源側端部の上を覆う遮光板の長さ(A2(【図4】参照))も光漏れに影響を与えるものであることは明らかである。」と指摘されております。 ここで、遮光部により覆われる導光板の領域(A2)において、光源から出射して導光板内に入射した光のうち、遮光部により覆われる導光板の領域(A2)に入射した光のほとんどは、導光板の上面(+Z2側の面)において全反射して導光板内に戻されることとなるため、漏れ光にはなりません。 具体的には、遮光部により覆われる導光板の領域(A2)は、導光板の上面(Z2側の面)の光源側(入光面側)の領域であるので、導光板の入光面から入射した光は、導光板の上面と、導光板及び遮光部間に介在する微少な空気層との界面によって全反射しやすくなる傾向となります。そのため、遮光部が無い場合であっても、導光板に入射した光が導光板の上面の上記領域(A2)から出射する量は、微少になります。 例えば、本願明細書中において、導光板はアクリル樹脂により形成されているため、その屈折率は1.49となります。この場合、導光板の上面と空気界面との全反射角度は42.15°となりますが、仮に、入光面から入射角89°(入光面の法線方向に対して斜め上方に89°傾斜した角度)で光源の光が入光した場合、その光は、導光板の上面への入射角度(上面の法線方向に対する角度)が47.9°以上となるので、上述の全反射角度を超えることとなり、遮光部により覆われる導光板の領域(A2)から出光する光は非常に微少な量となります。 したがって、遮光部により覆われる導光板の領域(A2)は、漏れ光に与える影響が非常に少ないものと判断でき、本願請求項1の発明の特定に、長さA2の特定は必要ないものと思料致します。 また、上述の本願請求項1の補正により、遮光部の透過率は、0.5%以下としているため、遮光部を透過する光を極力抑制しており、このことからも、本願請求項1の特定に、長さA2の特定は必要ないものと思料致します。 ここで、拒絶理由通知において、「ベゼルが挟幅化されずにベゼルの幅(A+B(【図4】参照))が長く、そのため光がベゼルによって遮られて、光漏れの改善が必要のないものまで、すなわち、上記「2」の技術課題を生じる余地のないものをも含むことになる。」と指摘されておりますが、本願請求項1の発明は、本願明細書中の[0059](表2)にも記載されておりますように、θ(B/C)が大きくなりすぎると光漏れが生じます。この光漏れは、遮光部により覆われる導光板の領域の長さA2が極端に大きい場合でも生じるものと思料致します。 これは、導光板は、背面に設けられたパターン等によって導光板内に入射した光を出光しておりますが、ベゼルの長さBの幅が大きくなりすぎると、厚み方向におけるベゼル及び導光板間に出光する光の総量が多くなりすぎてしまい、ベゼル及び導光板間における迷光が増大し、光漏れの発生要因になるものと考えられます。 したがって、本願請求項1の発明は、光漏れの改善が必要ないものまで含むものではありません。 また、本願請求項1において、「前記光学シートのうちのいずれか1枚は、その光源部側の端部に、前記光源部の延在する方向に沿って遮光機能を有する帯状の遮光部が設けられ、前記遮光部は、その画面中央側の端部が、前記ベゼル部の画面中央側の端部よりも画面外側に位置し」と記載され、また、「前記遮光部は、前記導光板の前記光学シート側の面の一部に接するようにして、前記光学シートの導光板側の面に設けられ、その透過率が0.5%以下であり、前記遮光部は、その幅方向において、一部が前記導光板よりも前記光源部側に突出し、前記光源部の前記光学シート側の面の全面を覆っている」と記載されておりますので、本願請求項1の発明は、「LCDパネルの幅方向における光源と、ベゼル部や遮光部との位置関係」については、特定されております。 また、光源部が「前記導光板の少なくとも1つの側面に沿って配置され」ておりますので、本願請求項1の発明は、「画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と、遮光部の画面中央側端部の位置との関係」も特定されております。 本拒絶理由通知において、明るさムラは、観察角度が小さい場合においては、光学シートの具体的種類や、厚さ、遮光部とベゼル部の距離Cに依存することは技術常識から当然である旨指摘されております。 ここで、光学シートの種類や厚み等に応じて、明るさムラの要因となる明暗差の生じ具合は変動してしまいますが、本願請求項1の発明は、用いられる光学シートの種類や厚みに関係なく、tanθの範囲を満たせば、tanθの範囲外である場合に比して明るさムラの発生を抑制することができます。 以上より、本願請求項1の発明は、ベゼルの幅寸法(A+B)、遮光部により覆われる導光板の領域の長さA2の特定が不要であり、tanθの範囲と、LCDパネルの幅方向における光源とベゼル部や遮光部との位置関係と、画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と、遮光部の画面中央側端部の位置との関係とが特定されており、これらの関係を満たすことで、光漏れ等の発生を抑制しているので、発明が解決することができないものまでを含むものでなく、特許法第36条第6項第1号に違反するものではありません。 また、本願請求項1の発明は、本願の発明の詳細な説明に明確にかつ十分に記載されているものですので、特許法第36条第4項第1号に違反するものではありません。」 第5 当審の判断 上記「第4 請求人(出願人)の対応・主張」に記載された手続補正及び意見書における請求人の主張を踏まえ、当審拒絶理由について再度検討する。 1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)違反の拒絶理由について (1)本願発明の技術課題、及び、当該技術課題を勘案した拒絶理由について ア 本願発明の技術課題に関する請求人の主張について 請求人は、平成28年4月26日付けの手続補正により明細書の発明の詳細な説明の【0006】段落の記載を補正した上で、本願発明の技術課題について、「本願請求項1の発明は、ベゼルの狭幅化に関係なく、光学シートの光源部側側面等から入射する光が起因となる光漏れ等を抑制する」ものである旨を主張する。(意見書第2ページ第17?18行) しかしながら、明細書の発明の詳細な説明全体の記載から(例えば、上記「第3 当審における拒絶理由」の中で「第1 特許法第36条第6項第1号違反の拒絶理由」の「2 本願発明1の課題について」でも摘記されている【0005】、【0045】段落の記載参照)、透過型表示装置の大画面化等にともなうベゼルの挟幅化によって光源からの光が漏れるという技術課題が生じ、本願発明は、そのベゼルの挟幅化に伴う光漏れ防止するべくなされたものであることは明らかである。 また、技術常識から考えても、ベゼルの幅が非常に大きいものにおいては、光漏れが問題となる蓋然性は低く、上記のような光漏れの防止の必要もないものとなるといえる。 したがって、本願発明における光漏れの防止という技術課題は、ベゼルの挟幅化を前提としていることは明らかであり、請求人の「本願発明の技術課題」が「ベゼルの狭幅化に関係ない」旨の主張は、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づかない主張であり、採用することはできない。 イ 本願発明が技術課題を生じる余地のないものまで含むものである点 当審拒絶理由における、本願発明の特定では、ベゼルの挟幅化の前提を欠き、ベゼルの幅が長いことによって、そもそも光漏れの改善の必要のないものまで含むという指摘に対し、請求人は、「光漏れは、遮光部により覆われる導光板の領域の長さA2が極端に大きい場合でも生じる」(意見書第3ページ第5?6行)と述べ、その理由として、「導光板は、背面に設けられたパターン等によって導光板内に入射した光を出光しておりますが、ベゼルの長さBの幅が大きくなりすぎると、厚み方向におけるベゼル及び導光板間に出光する光の総量が多くなりすぎてしまい、ベゼル及び導光板間における迷光が増大し、光漏れの発生要因になる」(意見書第3ページ第7?10行)と主張する。 しかしながら、本願の明細書及び図面で規定されている「光漏れ」となる光は、本願明細書の発明の詳細な説明の【0045】及び図面の【図5】( 上記「第3 当審における拒絶理由」の「2 本願発明1の課題について」参照)にも説明されているように、光源から直接出射してユーザに観察される光であって、上記の「ベゼル及び導光板間における迷光」のような光は、含まれるものではないことは、明細書の発明の詳細な説明の記載から明らかである。(なお、上記の請求人の主張における「導光板内に入射した光」については、導光坂内で拡散され、表示のための照明光となり、これが「光漏れ」の原因になることはない。) したがって、請求人の上記主張は、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づかない主張であり、採用することができない。 ウ 課題を解決するために特定が必要である事項について 本願明細書の【0059】段落の【表2】において、B/C(=tanθ)の値による「光漏れ」を評価するに当たり、B/C(=tanθ)の値の変化とともに、光源の位置(ベゼル又は遮光部と光源との距離)も変化させたのでは、B/C(=tanθ)の値だけでなく光源の位置(ベゼル又は遮光部と光源との距離)によっても光漏れが生じるか否かが変わることは明らかであり、B/C(=tanθ)の値のみを要因として光漏れの有無を評価することはできない。 したがって、本願発明が技術的に意味を有する、すなわち、課題解決し得るものであることを理解し得るものとするには、光源の、ベゼルと遮光部に対しての位置関係(ベゼル又は遮光部と光源との距離)の特定も必要であるといえる。 同様に、上記【表2】においてB/C(=tanθ)の値による「光漏れ」を正しく評価するには、遮光部の長さA(A1,A2)やベゼルの長さA+Bも一定であることが必要とされる。 さらに補足すると、光源の、ベゼルと遮光部に対しての位置(上下方向及び水平方向における位置)によっては、ベゼルや遮光部の長さが短かすぎることによって、B/C(=tanθ)の値の値にかかわらず、技術課題を解決できない場合や、ベゼルや遮光部の長さが長すぎることによって、B/C(=tanθ)の値の値にかかわらず、技術課題が生じ得ないものも含まれることになり、このような事態を避けるために、ベゼルや遮光部の長さについての特定は、課題解決との関係で特定が必須の事項である。 以上のとおりであるから、当審拒絶理由において 「本願において発明が解決しようとする課題を解決するものとするには、上記「0.2≦tanθ≦0.9」という特定事項を含む本願発明1の発明特定事項のみでは十分ではなく、他に、上記のように、ベゼル部の幅の長さ(A+B)、LCDパネルの幅方向における光源とベゼル部や遮光部の位置関係、画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と遮光部の画面中央側端部の位置と関係、導光板13の光源側端部の上を覆う遮光板の長さ(A2)などの事項を特定することが必要となる。」 としたことには合理性がある。 エ 小活 以上のとおりであり、当審拒絶理由における「発明特定事項の記載では、本願において発明が解決しようとする課題が生じないものや、本願において発明が解決しようとする課題を解決することができないものまでをも含むものと認められることから、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載された事項を逸脱した発明を含むものであり、発明の詳細な説明によってサポートされたものということはできない」とする拒絶理由は、平成28年4月26日付けの手続補正による、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の補正、及び、同日付で提出された意見書における請求人の主張を踏まえても、解消されていない。 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)違反に関する請求人のその他の主張について ア 遮光部により覆われる導光板の領域(A2)の影響に関する主張 請求人は、意見書(第2ページ第20?41行)において、導光板に入射した光は導光板上面と空気界面で全反射され、導光板上面から出射する量は微小になるため遮光部により覆われる導光板の領域(A2)の影響は非常に小さい旨を主張する。 上記の請求人の主張によれば、導光板の上面から漏れる光は極微小であって導光板上面には遮光部は不必要であることになるが、これは、遮光部に導光板上面と重なる部分が存在することを前提とする本願発明の趣旨と矛盾する。 また、導光板上面が少しでも遮光部に覆われていれば(すなわち、光源側の導光板のない部分(A1の部分)が完全に遮光で覆われてさえいれば)、導光板の上面から光漏れが生じることはないことになるが、これは明細書の発明の詳細な説明の【0058】及び【0059】の【表2】の結果(光漏れが生じることを示す結果)の記載と矛盾している。 すなわち、【0058】に示されているように、遮光部により覆われる導光板上面の領域(A2=4.5mm)が存在し、光源側の導光板のない部分(A1=1.5mmの部分)が完全に遮光で覆われているにもかかわらず、【0059】の【表2】に開示されているように、B/Cの値が1に近づけば光漏れが生じることは明らかである。 よって、請求人の上記主張は、明細書の発明の詳細な説明の記載と矛盾した記載であるということができ、採用することはできない。 イ 光源とベゼルや遮光部との位置関係は本願発明に特定されている旨の主張 また、意見書(第3ページ第14?25行)において、光源とベゼルや遮光部との位置関係は本願発明に特定されている旨を主張する。しかしながら、請求人が、特定されていると主張する位置関係は、本願の図面の【図4】及び【図5】(上記「第3 当審における拒絶理由」の「2 本願発明1の課題について」参照)におけるY(Y1,Y2)方向に関する位置関係であって、ベゼル又は遮光部と光源との距離の位置関係ではない。 これに対し、上記(1)の「ウ」でも指摘したように、ベゼル又は遮光部と光源との距離の特定も必要であるといえる。そして、その点については、当審拒絶理由においても、 「光源がベゼル部や遮光部からLCDパネルの幅方向(図5のZ1及びZ2の方向)に離れていること、及び/又は、光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)が遮光部の画面中央側端部の位置と画面上下方向(図5のY1及びY2方向)において接近した位置にあることにより、本願発明1の上記「0.2≦tanθ≦0.9」という特定事項を含む発明特定事項に関わらず、光漏れが生ずるものを含むことになる。」 と記載されており、光源とベゼル又は遮光部との距離の特定が必要であることも指摘している。 そして、本願発明においては、光源とベゼルや遮光部との距離の特定がなされておらず、上記の拒絶理由に、理由がないと主張するための特定はなされていないといわざるを得ない。よって、上記請求人の主張は採用することができない。 2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)違反の拒絶理由について (1)「光漏れ」について 当審拒絶理由において、 「本願において発明が解決しようとする課題を解決するためには、上記のベゼルの幅の長さ(A+B)、LCDパネルの幅方向における光源とベゼル部や遮光部の位置関係、画面上下方向における光源の画面中央側端部の位置(光の放射位置)と遮光部の画面中央側端部の位置と関係について、種々の値を選択して試行する必要があり、過度の試行錯誤を要するものであるといえるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。」 という指摘をしたが、これに対しては、請求人は何らの反論(主張・立証)もなされていない。 (2)「明るさムラ」について 当審拒絶理由における、明るさムラは、観察角度が小さい場合においては、光学シートの具体的種類や、厚さ、遮光部とベゼル部の距離Cに依存することは技術常識から当然である旨の指摘に対し、請求人は、「ここで、光学シートの種類や厚み等に応じて、明るさムラの要因となる明暗差の生じ具合は変動してしまいますが、本願請求項1の発明は、用いられる光学シートの種類や厚みに関係なく、tanθの範囲を満たせば、tanθの範囲外である場合に比して明るさムラの発生を抑制することができます。」(意見書第3ページ第18?21行)と主張している。 しかしながら、上記主張は、何らの証拠も示すことなくなされた主張で、その主張の根拠が不明であるから、採用することができない。 3 まとめ したがって、上記「第4 請求人(出願人)の対応・主張」に記載された手続補正及び意見書における請求人の主張を勘案しても、当審拒絶理由における、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)違反、及び、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)違反の拒絶理由は解消されない。 第6 結言 以上のとおりであり、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないから拒絶すべきものである。 また、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないから拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-07 |
結審通知日 | 2016-06-14 |
審決日 | 2016-06-28 |
出願番号 | 特願2011-73636(P2011-73636) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(G09F)
P 1 8・ 537- WZ (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐竹 政彦、田辺 正樹 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 松川 直樹 |
発明の名称 | 透過型表示装置 |
代理人 | 正林 真之 |
代理人 | 鎌田 久男 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 芝 哲央 |