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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1318693
審判番号 不服2015-1957  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-02 
確定日 2016-08-26 
事件の表示 特願2013-501444「WiMAXネットワークにおいてモビリティ・イベント中にアクセス・サービス・ネットワーク機能エンティティを再配置する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月29日国際公開、WO2011/119797、平成25年 6月20日国内公表、特表2013-526112〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)3月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2010年(平成22年)3月25日 米国 2011年(平成23年)3月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成24年11月20日 :翻訳文の提出
平成25年12月16日付け:拒絶理由の通知
平成26年 3月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 9月30日付け:拒絶査定
平成27年 2月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年 2月 2日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された、

「 【請求項1】
ソースのアクセス・サービス・ネットワーク(ASN)からターゲットASNへと少なくとも2つの機能エンティティを表すコンテキスト情報を提供するステップを備え、前記少なくとも2つの機能エンティティは、ページング制御装置と、アクセス・オーセンティケータと、アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを含み、前記少なくとも2つの機能エンティティについての前記コンテキスト情報は、アクセス端末に関連づけられ、また前記ソースASNが前記ターゲットASNから再配置通知またはハンドオフ要求を受信することに応じて、提供され、前記ターゲットASNは、前記アクセス端末のための前記少なくとも2つの機能エンティティのインスタンスを生成するために、前記コンテキスト情報を使用するように構成されている、方法。
【請求項2】
前記コンテキスト情報を提供するステップは、前記再配置通知または前記ハンドオフ要求に関連づけられる前記アクセス端末についての前記ページング制御装置と、前記アクセス・オーセンティケータと、前記アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを表すコンテキスト情報を含む第1のメッセージを提供するステップを備える、請求項1に記載の方法。」

を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「 【請求項1】
ソースのアクセス・サービス・ネットワーク(ASN)からターゲットASNへと少なくとも2つの機能エンティティを表すコンテキスト情報を提供するステップを備え、前記少なくとも2つの機能エンティティは、ページング制御装置と、アクセス・オーセンティケータと、アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを含み、前記少なくとも2つの機能エンティティについての前記コンテキスト情報は、アクセス端末に関連づけられ、また前記ソースASNが前記ターゲットASNから再配置通知またはハンドオフ要求を受信することに応じて、提供され、前記ターゲットASNは、前記アクセス端末のための前記少なくとも2つの機能エンティティのインスタンスを生成するために、前記コンテキスト情報を使用するように構成されており、
前記コンテキスト情報を提供するステップは、前記再配置通知または前記ハンドオフ要求に関連づけられる前記アクセス端末についての前記ページング制御装置と、前記アクセス・オーセンティケータと、前記アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを表すコンテキスト情報を含む第1のメッセージを提供するステップを備え、
前記少なくとも2つの機能エンティティは、前記第1のメッセージに含まれている前記コンテキスト情報を使用して前記ターゲットASNに再配置される、方法。」(下線は、請求人が手続補正書において補正箇所を示すものとして付加したものを援用したものである。)に補正することを含むものである。

2.新規事項・シフト補正の有無について
上記補正の内容は、補正前の請求項1を削除して、補正前の請求項1を引用する請求項2を新たな請求項1とした上で、補正前の請求項1に記載された「前記少なくとも2つの機能エンティティ」が「前記第1のメッセージに含まれている前記コンテキスト情報を使用して前記ターゲットASNに再配置される」ことを限定するものである。

そうしてみると、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内になされた補正であり、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合し、また、同法第17条の2第4項(シフト補正)の規定に適合することも明らかである。

3.補正の目的について
上記補正は、上記「2.新規事項・シフト補正の有無について」の項で検討したように、発明を特定するために必要な事項を限定することにより特許請求の範囲を限定的に減縮するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

4.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正後の発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)補正後の発明
補正後の発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記「1.本件補正の内容」に示す補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

(2)引用発明
原査定の拒絶理由に引用された文献であり、本願の優先権主張の日前に公開された、国際公開第2010/020163号(2010年2月25日公開。以下、「引用例」という。)には、「METHOD AND DEVICE FOR ANCHOR DATA PATH FUNCTION ENTITY HANDOVER」(当審仮訳:アンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーのための方法及び装置)の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「

」(第3頁第23行?第30行)
(当審仮訳:本発明の実施例は、MSが活性化状態(アクティブ)での例として、アンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの方法を説明する。本発明の実施例では、元のアクセスサービスネットワーク(図示ASN(a))は、ハンドオーバーする前のアンカーデータパス機能エンティティ(図示Old A-DPF)及びアンカーオーセンティケータ(図示Old A-Authenticator)が位置するアクセスサービスネットワークであり、目標アクセスサービスネットワーク(図示ASN(b))は、ハンドオーバーした後のアンカーデータパス機能エンティティ(図示New A-DPF)及びアンカーオーセンティケータ(図示New A-Authenticator)が位置するネットワークである。本発明の実施例が説明する初期のシーンでは、MSがアクセスするアクセスサービスネットワークは前記ASN(b)であるが、前記MSのアンカーデータパス機能エンティティ(A-DPF)及びアンカーオーセンティケータ(A-Authenticator)はハンドオーバーしておらず、依然として前記ASN(a)のOld A-DPF及びOld A-Authenticatorに位置する。)

イ 「

」(第3頁第32行?第4頁第2行)
(当審仮訳:ステップ301、前記ASN(b)によって、アンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーが開始されると、本ステップを実行する: 前記ASN(b)のGW(Gate Way。以下、ASN(b)GWという。)は、Anchor_DPF_HO_Trigger メッセージを前記ASN(a)のGW(以下、ASN(a)GWという。)に送り、前記Anchor_DPF_HO_Trigger メッセージは、前記ASN(a)にA-DPFのハンドオーバーを指示するために使用される。前記Anchor_DPF_HO_Trigger メッセージは、前記ASN(b)の外部エージェント気付けアドレス(Foreign Agent Care of Address、図示FA-CoA)を運ぶ。前記ASN(b)GW上に前記ASN(b)のFA-CoAを保存することは従来技術であるので、ここでは述べない。)

ウ 「

」(第4頁第3行?第6行)
(当審仮訳:ステップ302、前記ASN(a)GWに位置するPMIPクライアント(Proxy Mobile Internet Protocol Client、プロキシ モバイル インターネット プロトコル クライアント)が前記MSのために前記FA-CoAメッセージに基づいてRRQ(Registration Request、レジストレーション リクエスト)を生成する; 前記ASN(a)GWはAnchor_DPF_HO_Reqメッセージを前記ASN(b)GWに送信し、前記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージ中に前記RRQメッセージがカプセル化される。)

エ 「

」(第4頁第7行?第11行)
(当審仮訳:選択的には、前記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージ中に、例えば、MS Security History(端末セキュリティーヒストリー)メッセージのようなオーセンティケータのハンドオーバーに必要な情報を載せ、選択的には、オーセンティケータのハンドオーバーに必要な転送情報は以下の情報のいずれかを含んでもよい: MS Authorization Context(端末許可コンテキスト)、REG Context(登録コンテキスト)、Anchor MM Context(アンカーモビリティー管理コンテキスト)、Authenticator ID(オーセンティケータ識別子、前記オーセンティケータはMSのその時のオーセンティケータ、すなわち、ハンドオーバー前のアンカーオーセンティケータ)、BS ID(基地局識別子)。)

オ 「

」(第4頁第21行?第26行)
(当審仮訳:ステップ303、前記ASN(b)GWは、HA(Home Agent、ホームエージェント)に対し、RRQメッセージを転送し、PMIP登録を開始する。
ステップ304、前記HAは、ASN(b)GWにRRP(Registration Response、登録応答)メッセージを返信し、PMIP登録を完成する。
ステップ305、前記ASN(b)GWは、受信した前記RRPメッセージをAnchor_DPF_HO_Rspメッセージ中にカプセル化し、前記ASN(a)GWに送信する。)

カ 「

」(第4頁第27行?第30行)
(当審仮訳:ステップ306では、前記ASN(b)は、前記RRPメッセージに基づいて、前記PMIP登録の成功を確認し、前記ASN(b)GW上のDPFが前記New A-DPFになり、A-DPFがここにハンドオーバーすると完成する。前記ASN(a)GWは、前記MSによる現在のアクセスが位置する前記ASN(b)のBSにContext_Rptメッセージを送信し、前記Context_Rptメッセージ中には前記New A-DPFのアドレスが含まれる。前記New A-DPFは、前記ASN(b)GW上に位置するDPFである。前記ASN(a)GWが前記ASN(b)GW上のDPFのアドレスを知ることは従来技術である。)

キ 「

」(第6頁第1行?第8行)
(当審仮訳:本発明の実施例が開示する方法を適用することによって、元のアクセスサービスネットワークASN(a)GWは、目標アクセスサービスネットワークのFA-CoAを得ることができ、かつ前記FA-CoAに基づいてMSのためにRRQメッセージを生成でき、前記ASN(a)GWによって、RRQメッセージがAnchor_DPF_HO_Reqメッセージ中にカプセル化されて、ASN(b)GWへ送信される。前記ASN(b)GW及びHAによってPMIP登録を行い、かつRRQメッセージがAnchor_DPF_HO_Reqメッセージ中にカプセル化されて前記ASN(a)GWに送信され、A-DPFのハンドオーバーが完成する。アンカーデータパス機能エンティティ及びオーセンティケータエンティティが、同一のゲートウェイに位置する場合に、前記方法は、従来技術に比べて、冗長な情報転送過程を省略し、通信資源を節約する。さらに、前記ASN(a)GWもまた前記A-DPFのハンドオーバー過程のメッセージ交換中に、A-Authenticatorの共同ハンドオーバーをトリガーし、ハンドオーバーした後のNew A-DPF及びNew A-Authenticatorが異なるエンティティに位置することを避け、さらに通信資源を節約する。)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a 上記ア、ウ、キの記載によれば、Anchor_DPF_HO_Reqメッセージを送信し、アンカーデータパス機能エンティティ及びアンカーオーセンティケータエンティティをハンドオーバーする方法が記載されている。

b 上記ウの記載によれば、Anchor_DPF_HO_Reqメッセージは、RRQメッセージを含み、元のアクセスサービスネットワーク(ASN(a))から目標ASN(b)へと送信される。
そして、上記ア、イ、ウ、オの記載によれば、上記RRQメッセージが、端末(MS)のアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの指示により目標ASN(b)の外部エージェント気付けアドレス(FA-CoA)に基づいて生成され、PMIP登録のためにホームエージェントに転送されることは明らかである。
また、上記ア、エ、キの記載によれば、上記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージは、アンカーオーセンティケータエンティティのハンドオーバーに必要な、端末のオーセンティケータのオーセンティケータIDを含むことも明らかである。

c 上記イ、ウの記載によれば、前記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージは、元のASN(a)が目標ASN(b)からのハンドオーバーの指示に用いられるAnchor_DPF_HO_Triggerメッセージを受信すると、送信されることは明らかである。

d 上記bの検討より、上記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージの送信では、端末のアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの指示により生成されたRRQメッセージと、アンカーオーセンティケータエンティティのハンドオーバーに必要な、端末のオーセンティケータのオーセンティケータIDとを含むAnchor_DPF_HO_Reqメッセージを送信すると言える。

e 上記ア、オ、カの記載によれば、RRQメッセージを使用して、PMIP登録がなされ、アンカーデータパス機能エンティティが目標ASN(b)にハンドオーバーされることは明らかである。
また、上記ア、エ、キの記載によれば、オーセンティケータIDを使用して、アンカーオーセンティケータエンティティが目標ASN(b)にハンドオーバーされることも明らかである。
そうすると、アンカーデータパス機能エンティティと、アンカーオーセンティケータエンティティは、Anchor_DPF_HO_Reqメッセージに含まれている上記RRQメッセージと、上記オーセンティケータIDを使用して目標ASN(b)にハンドオーバーされると言える。

以上を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「 元のアクセスサービスネットワーク(ASN(a))から目標ASN(b)へと、端末のアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの指示により目標ASN(b)の外部エージェント気付けアドレス(FA-CoA)に基づいて生成され、PMIP登録のためにホームエージェントに転送されるRRQメッセージと、アンカーオーセンティケータエンティティのハンドオーバーに必要な、端末のオーセンティケータのオーセンティケータIDとを含むAnchor_DPF_HO_Reqメッセージを送信し、前記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージは、元のASN(a)が目標ASN(b)からのハンドオーバーの指示に用いられるAnchor_DPF_HO_Triggerメッセージを受信すると、送信され、
上記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージの送信では、端末のアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの指示により生成された上記RRQメッセージと、アンカーオーセンティケータエンティティのハンドオーバーに必要な、端末のオーセンティケータのオーセンティケータIDとを含むAnchor_DPF_HO_Reqメッセージを送信し、アンカーデータパス機能エンティティと、アンカーオーセンティケータエンティティは、Anchor_DPF_HO_Reqメッセージに含まれている上記RRQメッセージと、上記オーセンティケータIDを使用して目標ASN(b)にハンドオーバーされる、方法。」

(3)対比
補正後の発明を引用発明と対比すると、

a 引用発明の「元のアクセスサービスネットワーク(ASN(a))」、「目標ASN(b)」はそれぞれ補正後の発明の「ソースのアクセス・サービス・ネットワーク(ASN)」、「ターゲットASN」に相当する。
また、補正後の発明の「少なくとも2つの機能エンティティ」は、「ページング制御装置と、アクセス・オーセンティケータと、アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを含み」と、三者からの任意選択的な特定がなされているから、引用発明の「アンカーデータパス機能エンティティ」と、「アンカーオーセンティケータエンティティ」は、補正後の発明の「少なくとも2つの機能エンティティ」に含まれる。
ここで、引用発明の「RRQメッセージ」は、「端末のアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの指示により目標ASN(b)の外部エージェント気付けアドレス(FA-CoA)に基づいて生成され、PMIP登録のためにホームエージェントに転送される」から、当該「RRQメッセージ」が、アドレス等の情報を含み、当該情報がアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバー後のルーティングに用いられることは明らかである。
そして、補正後の発明の「少なくとも2つの機能エンティティを表すコンテキスト情報」は、本願明細書(翻訳文の段落【0020】)の記載によれば、「アンカー・データ・パス機能240を表すコンテキスト情報」として「データ・パスについてのルーティング情報」を含むから、引用発明の「RRQメッセージ」は、補正後の発明の「機能エンティティを表すコンテキスト情報」に含まれる。
さらに、補正後の発明の「少なくとも2つの機能エンティティを表すコンテキスト情報」は、本願明細書(翻訳文の段落【0019】)の記載によれば、「アンカー・オーセンティケータ235を表すコンテキスト情報」として「オーセンティケータID」を含むから、引用発明の「アンカーオーセンティケータエンティティのハンドオーバーに必要な、端末のオーセンティケータのオーセンティケータID」も、補正後の発明の「機能エンティティを表すコンテキスト情報」に含まれる。
そうすると、引用発明の「送信」が、補正後の発明の「提供」に含まれ、1つのステップとして行われることは明らかであることから、引用発明の「元のアクセスサービスネットワーク(ASN(a))から目標ASN(b)へと、端末のアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの指示により目標ASN(b)の外部エージェント気付けアドレス(FA-CoA)に基づいて生成され、PMIP登録のためにホームエージェントに転送されるRRQメッセージと、アンカーオーセンティケータエンティティのハンドオーバーに必要な、端末のオーセンティケータのオーセンティケータIDとを含むAnchor_DPF_HO_Reqメッセージを送信」することは、補正後の発明の「ソースのアクセス・サービス・ネットワーク(ASN)からターゲットASNへと少なくとも2つの機能エンティティを表すコンテキスト情報を提供するステップを備え、前記少なくとも2つの機能エンティティは、ページング制御装置と、アクセス・オーセンティケータと、アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを含」むことに含まれる。

b 引用発明の「ハンドオーバー」は、「端末のアンカーデータパス機能エンティティ」及び「アンカーオーセンティケータエンティティ」が元のASN(a)に配置されている状態から、目標ASN(b)に配置されている状態へと引き継ぐことを意味するから、これらのエンティティを目標ASN(b)において「再配置」するものと言える。
そして、本願明細書(翻訳文の段落【0030】)の記載によれば、補正後の発明の「再配置通知」は「メッセージ」であるから、引用発明の「ハンドオーバーの指示に用いられるAnchor_DPF_HO_Triggerメッセージ」と、補正後の発明の「再配置通知またはハンドオフ要求」とは、「再配置に関するメッセージ」である点で共通する。
そうすると、上記aの検討を踏まえれば、引用発明の「前記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージは、元のASN(a)が目標ASN(b)からのハンドオーバーの指示に用いられるAnchor_DPF_HO_Triggerメッセージを受信すると、送信され」ることと、補正後の発明の「前記少なくとも2つの機能エンティティについての前記コンテキスト情報は、アクセス端末に関連づけられ、また前記ソースASNが前記ターゲットASNから再配置通知またはハンドオフ要求を受信することに応じて、提供され」ることとは、「前記少なくとも2つの機能エンティティについての前記コンテキスト情報は、前記ソースASNが前記ターゲットASNから再配置に関するメッセージを受信することに応じて、提供され」ることである点で共通する。

c 引用発明の「端末のアンカーデータパス機能エンティティ」のハンドオーバーに関する「RRQメッセージ」は、特定の端末に対するデータパスの設定に関するものであることは明らかである。
また、引用発明の「アンカーオーセンティケータエンティティ」のハンドオーバーに関する「端末のオーセンティケータのオーセンティケータID」も特定の端末のオーセンティケーション(認証)に関するものであることは明らかである。
そうすると、上記「RRQメッセージ」及び「オーセンティケータID」は、特定の端末についてのものと言える。
さらに、引用発明の「端末」は、補正後の発明の「アクセス端末」に相当するから、上記aの検討を踏まえれば、引用発明の「RRQメッセージ」及び「オーセンティケータID」は、補正後の発明の「前記アクセス端末についての前記ページング制御装置と、前記アクセス・オーセンティケータと、前記アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを表すコンテキスト情報」に含まれる。
したがって、引用発明の「上記Anchor_DPF_HO_Reqメッセージの送信では、端末のアンカーデータパス機能エンティティのハンドオーバーの指示により生成された上記RRQメッセージと、アンカーオーセンティケータエンティティのハンドオーバーに必要な、端末のオーセンティケータのオーセンティケータIDとを含むAnchor_DPF_HO_Reqメッセージを送信」することと、補正後の発明の「前記コンテキスト情報を提供するステップは、前記再配置通知または前記ハンドオフ要求に関連づけられる前記アクセス端末についての前記ページング制御装置と、前記アクセス・オーセンティケータと、前記アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを表すコンテキスト情報を含む第1のメッセージを提供」することとは、「前記コンテキスト情報を提供するステップは、前記アクセス端末についての前記ページング制御装置と、前記アクセス・オーセンティケータと、前記アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを表すコンテキスト情報を含む第1のメッセージを提供」することである点で共通する。

d 上記bで検討したように、引用発明の「ハンドオーバー」は、「再配置」することと言えるから、上記a、cの検討と同様に、引用発明の「アンカーデータパス機能エンティティと、アンカーオーセンティケータエンティティは、Anchor_DPF_HO_Reqメッセージに含まれている上記RRQメッセージと、上記オーセンティケータIDを使用して目標ASN(b)にハンドオーバーされる」ことは、補正後の発明の「前記少なくとも2つの機能エンティティは、前記第1のメッセージに含まれている前記コンテキスト情報を使用して前記ターゲットASNに再配置される」ことに含まれる。

以上を総合すると、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 ソースのアクセス・サービス・ネットワーク(ASN)からターゲットASNへと少なくとも2つの機能エンティティを表すコンテキスト情報を提供するステップを備え、前記少なくとも2つの機能エンティティは、ページング制御装置と、アクセス・オーセンティケータと、アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを含み、前記少なくとも2つの機能エンティティについての前記コンテキスト情報は、前記ソースASNが前記ターゲットASNから再配置に関するメッセージを受信することに応じて、提供され、
前記コンテキスト情報を提供するステップは、前記アクセス端末についての前記ページング制御装置と、前記アクセス・オーセンティケータと、前記アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを表すコンテキスト情報を含む第1のメッセージを提供するステップを備え、
前記少なくとも2つの機能エンティティは、前記第1のメッセージに含まれている前記コンテキスト情報を使用して前記ターゲットASNに再配置される、方法。」

(相違点1)
一致点の「前記少なくとも2つの機能エンティティについての前記コンテキスト情報」は、補正後の発明では、「アクセス端末に関連づけられ」るのに対し、引用発明では、「アクセス端末に関連づけられ」ることについて明示されていない点。

(相違点2)
一致点の「再配置に関するメッセージ」が、補正後の発明では、「再配置通知またはハンドオフ要求」であるのに対し、引用発明では、「Anchor_DPF_HO_Trigger」である点。

(相違点3)
補正後の発明では、「前記ターゲットASNは、前記アクセス端末のための前記少なくとも2つの機能エンティティのインスタンスを生成するために、前記コンテキスト情報を使用するように構成され」ているのに対し、引用発明では、「インスタンスを生成」することについて明示されていない点。

(相違点4)
一致点の「前記アクセス端末についての前記ページング制御装置と、前記アクセス・オーセンティケータと、前記アンカー・データ・パス機能とのうちの少なくとも2つを表すコンテキスト情報を含む第1のメッセージ」に関して、「前記アクセス端末」が、補正後の発明では、「前記再配置通知または前記ハンドオフ要求に関連づけられる」のに対し、引用発明では、「前記再配置通知または前記ハンドオフ要求に関連づけられる」ことについて明示されていない点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
上記「(3)対比」の項のcで検討したように、引用発明の「端末のアンカーデータパス機能エンティティ」のハンドオーバーに関する「RRQメッセージ」と、「アンカーオーセンティケータエンティティ」のハンドオーバーに関する「端末のオーセンティケータのオーセンティケータID」は、特定の端末に関するものと言えるから、単に、これら「RRQメッセージ」及び「オーセンティケータID」を端末に関連づけること、すなわち「前記少なくとも2つの機能エンティティについての前記コンテキスト情報」が「アクセス端末に関連づけられ」るものとすることは、当業者が当然になし得る事項にすぎない。

上記相違点2について検討する。
引用発明の「Anchor_DPF_HO_Triggerメッセージ」は、当該信号の名称からみて、アンカーデータパス機能をハンドオーバー、すなわち再配置(上記「(3)対比」の項のb参照)するトリガーということができる。
そして、このトリガー(Trigger)を通知ないし要求と称して用いることは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

上記相違点3について検討する。
引用発明の「目標ASN(b)」は、「アンカーデータパス機能」と「アンカーオーセンティケータ」の2つの機能エンティティのハンドオーバーのために、「RRQメッセージ」及び「オーセンティケータID」を使用するように構成されているから、「少なくとも2つの機能エンティティ」のハンドオーバーの「ために、前記コンテキスト情報を使用するように構成され」ていると言える。
そして、情報通信分野の技術常識に照らし、各機能エンティティの処理を行う実体として、インスタンスを生成し、これにより機能を実現できることは、当業者にとって自明であるから、引用発明の「目標ASN(b)」において各機能エンティティのインスタンスを生成し、これが各機能エンティティの機能を実現するようにハンドオーバーを行うことに格別の困難性はない。
したがって、補正後の発明のように、「前記ターゲットASNは、前記アクセス端末のための前記少なくとも2つの機能エンティティのインスタンスを生成するために、前記コンテキスト情報を使用するように構成され」ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点4について検討する。
技術常識に照らし、引用発明の「ハンドオーバー」が端末の移動に伴うものであること、そして、該「ハンドオーバー」に関する「Anchor_DPF_HO_Trigger」が、特定の端末の移動に関連して送信されることは明らかである。

してみれば、「Anchor_DPF_HO_Trigger」に端末が関連付けられるようにすることは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

そして、相違点2に関して検討したように、このトリガー(Trigger)を通知ないし要求と称して用いる場合には、再配置の通知ないし要求に端末が関連付けられることとなる。

したがって、補正後の発明のように、「前記アクセス端末」が「前記再配置通知または前記ハンドオフ要求に関連づけられる」ようにすることは格別困難な事項ではない。

また、補正後の発明が奏する効果も引用発明から容易に予測できる範囲内のものである。

よって、上記補正後の発明は上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

5.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項の規定により準用する特許法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年 2月 2日に提出された手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし10に係る発明は、平成26年 3月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1.本件補正の内容」の項に記載したとおりである。

2.引用発明
引用発明は上記「第2 補正却下の決定」の項中の「4.独立特許要件について」の項で「引用発明」として認定したとおりである。

3.対比・判断
上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2.新規事項・シフト補正の有無について」及び「3.補正の目的について」で検討したように、本件補正は、補正前の請求項1を削除して、補正前の請求項1を引用する請求項2を新たな請求項1とした上で、補正前の請求項1に記載された「前記少なくとも2つの機能エンティティ」が「前記第1のメッセージに含まれている前記コンテキスト情報を使用して前記ターゲットASNに再配置される」ことを限定するものである。

そうすると、本願発明は補正後の発明から、「前記少なくとも2つの機能エンティティ」に関する上記限定を除いたものであり、本願発明に対して本件補正に係る上記限定を行った補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「4.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願発明はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-18 
結審通知日 2016-03-22 
審決日 2016-04-15 
出願番号 特願2013-501444(P2013-501444)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 哲齋藤 浩兵  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 萩原 義則
坂本 聡生
発明の名称 WiMAXネットワークにおいてモビリティ・イベント中にアクセス・サービス・ネットワーク機能エンティティを再配置する方法  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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