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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1318745
審判番号 不服2015-19178  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-23 
確定日 2016-09-13 
事件の表示 特願2012-524927「多元無線アクセス技術における測位のための支援データ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年2月17日国際公開、WO2011/020083、平成25年1月17日国内公表、特表2013-501944、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)8月14日(パリ条約による優先権主張2009年(平成21年)8月14日(以下、「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする国際出願であって、平成25年8月30日付け拒絶理由通知に対し平成26年3月3日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月2日付け拒絶理由通知(最後)に対し平成27年1月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同手続補正書でした補正について同年6月19日付けで補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定(同年同月23日謄本送達)がなされ、これに対して同年10月23日に拒絶査定不服審判が請求され同時に手続補正書が提出され(同手続補正書でした補正を、以下、「本件補正」という。)、平成28年4月14日に上申書が提出されたものである。

第2 本件補正の適否
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を以下のとおり補正するものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年3月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
移動局の推定位置を決定するための方法であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからロケーション情報を取得することと、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定することと、を備える方法。
【請求項2】
前記ロケーション情報を取得することは、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定することを備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定することは、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する前に第2のワイヤレスネットワークにアタッチすることをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信した後に第2のワイヤレスネットワークにアタッチすることをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信することは、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチすることと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のワイヤレスネットワークは、ロング・ターム・エボリューション(LTE)
ネットワークを備え、前記地上支援データは、観測到達時間差(OTDOA)測位方法の
ための支援データを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記地上支援データは、前記第1のワイヤレスネットワーク内の少なくとも基地局の間のタイミング関係と、絶対時刻と、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記地上支援データは、前記支援データの有効性の期間を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
移動局自体の推定位置を決定するための前記移動局であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信する受信機と、
前記第1の無線ネットワークからアンアタッチするための命令、前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからロケーション情報を取得するための命令、及び前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための命令を備えるプロセッサ及びメモリと、を備える移動局。
【請求項10】
前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づくタイミング測定値を備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための前記命令は、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための命令を備える、請求項9に記載の移動局。
【請求項11】
移動局自体の推定位置を決定するための前記移動局であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信する手段と、
前記第1の無線ネットワークからアンアタッチするための手段と、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからロケーション情報を取得する手段と、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定する手段と、を備える移動局。
【請求項12】
前記ロケーション情報を取得するための前記手段は、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定する手段を備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための前記手段は、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための手段を備える、請求項11に記載の移動局。
【請求項13】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信する前記手段は、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチする手段と、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する手段と、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチする手段と、を備える、請求項11に記載の移動局。
【請求項14】
プロセッサ及びメモリを備える移動局であって、
前記メモリは、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信することと、
前記第1の無線ネットワークからアンアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからロケーション情報を取得することと、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の推定位置を決定することと、の各命令を含む、移動局。
【請求項15】
前記ロケーション情報を取得する命令は、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定する命令を備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定する命令は、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定する命令を備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項16】
前記命令は、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する前に第2のワイヤレスネットワークにアタッチする命令をさらに備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項17】
前記命令は、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信した後に第2のワイヤレスネットワークにアタッチする命令をさらに備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項18】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信する前記命令は、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチすることと、の各命令を備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項19】
移動局によって使用される記憶されたプログラムコードを含む非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信するプログラムコードと、
前記第1の無線ネットワークからアンアタッチするプログラムコードと、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからロケーション情報を取得するプログラムコードと、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の推定位置を決定するプログラムコードと、を備えるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項20】
前記ロケーション情報を取得する前記プログラムコードは、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定するプログラムコードを備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するプログラムコードは、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するプログラムコードを備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項21】
前記プログラムコードは、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する前に第2のワイヤレスネットワークにアタッチするプログラムコードをさらに備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項22】
前記プログラムコードは、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信した後に第2のワイヤレスネットワークにアタッチするプログラムコードをさらに備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項23】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信する前記プログラムコードは、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチすることと、の各プログラムコードを備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(下線は、補正箇所を示す。)。
「 【請求項1】
移動局の推定位置を決定するための方法であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報を取得することと、ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定することと、を備える方法。
【請求項2】
前記ロケーション情報を取得することは、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定することを備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定することは、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する前に第2のワイヤレスネットワークにアタッチすることをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信した後に第2のワイヤレスネットワークにアタッチすることをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信することは、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチすることと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のワイヤレスネットワークは、ロング・ターム・エボリューション(LTE)
ネットワークを備え、前記地上支援データは、観測到達時間差(OTDOA)測位方法のための支援データを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記地上支援データは、前記第1のワイヤレスネットワーク内の少なくとも基地局の間のタイミング関係と、絶対時刻と、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記地上支援データは、前記支援データの有効性の期間を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
移動局自体の推定位置を決定するための前記移動局であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信する受信機と、
前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチするための命令、前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報を取得するための命令、ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である、及び前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための命令を備えるプロセッサ及びメモリと、を備える移動局。
【請求項10】
前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づくタイミング測定値を備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための前記命令は、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための命令を備える、請求項9に記載の移動局。
【請求項11】
移動局自体の推定位置を決定するための前記移動局であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信する手段と、
前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチするための手段と、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報を取得する手段と、ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定する手段と、を備える移動局。
【請求項12】
前記ロケーション情報を取得するための前記手段は、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定する手段を備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための前記手段は、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するための手段を備える、請求項11に記載の移動局。
【請求項13】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信する前記手段は、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチする手段と、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する手段と、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチする手段と、を備える、請求項11に記載の移動局。
【請求項14】
プロセッサ及びメモリを備える移動局であって、
前記メモリは、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報を取得することと、ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の推定位置を決定することと、の各命令を含む、移動局。
【請求項15】
前記ロケーション情報を取得する命令は、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定する命令を備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定する命令は、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定する命令を備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項16】
前記命令は、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する前に第2のワイヤレスネットワークにアタッチする命令をさらに備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項17】
前記命令は、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信した後に第2のワイヤレスネットワークにアタッチする命令をさらに備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項18】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信する前記命令は、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチすることと、の各命令を備える、請求項14に記載の移動局。
【請求項19】
移動局によって使用される記憶されたプログラムコードを含む非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信するプログラムコードと、
前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチするプログラムコードと、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報を取得するプログラムコードと、ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の推定位置を決定するプログラムコードと、を備えるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項20】
前記ロケーション情報を取得する前記プログラムコードは、前記第1のワイヤレスネットワークからの前記地上支援データに基づいてタイミング測定値を決定するプログラムコードを備え、
前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するプログラムコードは、前記タイミング測定値に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定するプログラムコードを備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項21】
前記プログラムコードは、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信する前に第2のワイヤレスネットワークにアタッチするプログラムコードをさらに備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項22】
前記プログラムコードは、前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信した後に第2のワイヤレスネットワークにアタッチするプログラムコードをさらに備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項23】
前記第1のワイヤレスネットワークから支援データを受信する前記プログラムコードは、
前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチすることと、
前記第1のワイヤレスネットワークから前記支援データを受信することと、
前記第1のワイヤレスネットワークからデタッチすることと、の各プログラムコードを備える、請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」

2 補正の目的等
本件補正における請求項1についての補正は、補正前の請求項1にあった「前記第1のワイヤレスネットワークからロケーション情報」を、「前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報」に正すものであって、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。また、本件補正における請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ロケーション情報」の内容について、「ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正における請求項9についての補正は、補正前の請求項9にあった「前記第1の無線ネットワーク」及び「前記第1のワイヤレスネットワークからロケーション情報」を、それぞれ「前記第1のワイヤレスネットワーク」及び「前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報」に正すものであって、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。また、本件補正における請求項9についての補正は、補正前の請求項9に記載した発明を特定するために必要な事項である「ロケーション情報」の内容について、「ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である」という限定を付加するものであって、補正前の請求項9に記載された発明と補正後の請求項9に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正における、請求項11、14及び19についての補正、並びに、請求項1、9、11、14及び19をそれぞれ引用する、請求項2ないし8、10、12ないし13、15ないし18及び20ないし23についての補正も、同様に、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正及び同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の【0053】及び【0054】等の記載に基づくものであるから、特許法第17条の2第3項に違反するところはなく、さらに、本件補正は、同条第4項に違反するところもない。

3 独立特許要件
そこで、補正後の請求項1ないし23に記載されている事項により特定される発明(それぞれを、以下、「本件補正発明1」等という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明1ないし23は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用例
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2007-525093号公報(平成19年8月30日公表。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
a 「【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年6月27日に出願されたシリアル番号第60/483,094号の米国仮特許出願の利益(benefit)に関係し、この利益を主張する。
本発明は、ポジション決定システム(position determination system)に関し、特に、無線通信信号を使用するハイブリッドポジショニング(hybrid positioning)に関する。」


b 「【0018】
本発明の少なくとも一実施例は、情報、例えば、SPS観測結果、無線ネットワーク観測結果、地形高度情報(terrain elevation information)、及びその他、を組み合わせ、移動局用のポジションソリューションを得るために、2以上の無線ネットワークのアクセスポイントから伝送されてきた無線信号を使用する。本発明の一実施例において、ハイブリッドポジションシステムの移動局は、移動局でのSPS信号の取得、測定のための時間刻印(time stamping)、及び他の操作において支援するために、2以上の無線ネットワーク(双方向通信において)のアクセスポイントで情報を転送する。本発明の一実施例においては、ハイブリッドポジションシステムの移動局は、1以上の無線ネットワークを使用して遠隔サーバと通信している間に、異なる無線ネットワークのアクセスポイントからの信号を使用して測定を行う。」

c 「【0019】
一般的に、無線ネットワークのセクターの識別、ロケーション、及びサービスエリアを記述する情報は、基地局アルマナックに保存され、単一無線ネットワークを使用するハイブリッドポジショニングシステムにおいて使用されてきている。然しながら、異なる無線ネットワーク(例、異なるサービスプロバイダ、或いは異なるタイプのネットワーク)が重なり合うサービスエリアを有するときは、たとえ、異なる無線ネットワークのアクセスポイントから伝送されてきた無線信号が空中にあり、移動局にとって利用可能であったとしても、典型的な移動局は、異なる無線ネットワークのアクセスポイント用のそのような情報にはアクセスして入手することはできない。これは通常、移動局は、一無線ネットワークにアクセスすることに許可を与えられ或いは権限を与えられるが、別の無線ネットワークに対してはそうではないからである。これの1つの単純な例は、第一無線ネットワーク(例、Verizon Wirelessのようなサービスプロバイダによって操作される携帯電話ネットワーク)へのアクセスは権限を与えられているが、第二無線ネットワーク(例、Sprint‘s cell phone network)への、或いは、第三ネットワーク(例、Wi-Fi“Hotspot”)へのアクセスは、権限を与えられていない。」

d 「【0023】
図4は、本発明の一実施例によるハイブリッドポジショニングシステム(hybrid positioning system)の一例を示す。図4において、移動局407は、無線ネットワークAの無線アクセスポイント403と、無線ネットワークBの無線アクセスポイント405と、の両方から伝送されてくる空中の信号を、ポジション決定のために、利用する。本発明の一実施例においては、移動局は、SPS衛星(例、GPS衛星、なお図4においては示されていない)からのSPS信号を受信する受信機を含む。無線ネットワークA及びBのうちの何れか若しくは両方からの無線信号(及びSPS信号)に基づくタイミング測定(例、擬似範囲、往復時間、信号到達時間、信号到達時間差)が移動局のポジションを決定するために使用されてもよい。概して、無線ネットワークA及びBの各々は多数のアクセスポイント(例、無線アクセスポイント403や405のような携帯電話基地局)を含む、ということが理解される。無線ネットワークA及びBは、異なるサービスプロバイダによって操作される同じタイプのエアインタフェースを使用してもよいし、或いは、それらは同じ通信プロトコルで但し異なる周波数で操作してもよい。然しながら、無線ネットワークA及びBは又、同じサービスプロバイダ或いは異なるサービスプロバイダによって操作される、異なるタイプのエアインタフェース(例、TDMA、GSM、CDMA、W-CDMA、UMTS、TD-SCDMA、IDEN、HDR、bluetooth、UWB、IEEE802.11、或いは同様なネットワーク)を使用することもできる。」

e 「【0041】
図9は、本発明の一実施例による、サーバと通信するために2つの無線ネットワークを使用したハイブリッドポジション決定の方法を示す。操作821は、移動局で、1以上のSPS衛星から伝送されてくるSPS信号と、2以上の無線ネットワークの複数の無線アクセスポイントから伝送されてくる無線信号とを受け取る。移動局は、SPS信号獲得において支援するために(例、移動局のインビュー衛星用のドップラー周波数偏移を抽出するために、移動局のローカルオシレータを調整するために、測定を時間刻印するための時間インジケータを取得するために)、1以上の無線ネットワークからの受信された無線信号を使用できる。移動局は、インビュー衛星までの疑似範囲を決定するためにSPS信号を使用し、又、移動局は、アクセスポイントを識別し、ポジション決定のために無線アクセスポイントまでの範囲測定を決定するために、無線アクセスポイントからの無線信号を使用する。これらの受信された信号は、典型的には、衛星の送信機及び無線アクセスポイントからのブロードキャスト(broadcast)であり、これらを使用することを選択するどの移動局も利用できる。操作823は、移動局と第一無線ネットワーク(例、無線ローカルエリアネットワーク)のアクセスポイントを使用するサーバとの間で第一情報(例、SPSメッセージの記録)を伝達授受する。操作825は、移動局と第二無線ネットワーク(例、無線携帯電話ネットワーク)のアクセスポイントを使用するサーバとの間で第二情報(例、インビューSPS衛星用のドップラー周波数偏移、衛星軌道データ)を伝達授受する。操作827は、第一情報及び第二情報の伝達授受から移動局のポジションを決定する。典型的には、使用する通信パスを選択するときには、利用可能性、サービスエリア、費用、データ速度、及び使い易さが考慮される。更に、移動局は、異なるロケーションでは異なる通信パスを使用してもよい。例えば、移動局が無線LAN(例、ホームネットワーク)のサービスエリア内にあるとき、移動局は、無線携帯電話システムの基地局を経由する必要のない情報(例、ドップラー周波数偏移)をサーバと通信するために、無線LAN(例、インターネット経由で)を使用し;基地局に関係する情報(例、無線携帯電話システムの基地局までの往復時間測定)を伝送するために、無線携帯電話システムの基地局を使用してもよい。更なる例では、移動局は、通信コスト及び利用可能性によって通信するために、無線携帯電話システム又は無線LANの何れを使用するか選択できる。本発明の一実施例においては、移動局は、一連のルール(例、利用可能性、コスト、優先度、及びその他)に従い通信パスを自動的に決定し、このルールは、移動局のユーザによって指定されることが出来、或いは、無線ネットワークのうちの1つによりデフォルトセッティングとしてセットされることもできる。」

f 「【0046】
図13は、本発明の方法の別の例である。この例においては、移動局は、操作931において、移動局にとってアクセスできる(例、無線通信の範囲内で)第一無線ネットワークの第一無線アクセスポイントの識別情報を取得する。この識別情報は、MACアドレス(例、Ethernet(登録商標)ローカルエリアネットワーク用)或いは携帯電話基地局(例、「セルタワー」)識別子であってもよい。操作933において、移動局は、第二無線ネットワークの第二無線アクセスポイント経由で、ポジション決定操作の間に、識別情報をサーバ(例、ロケーションサーバ)に伝送する。この例では、第二無線ネットワークは第一無線ネットワークとは異なる(例、異なるエアインタフェース、異なるサービスプロバイダ、等)。このあと、操作935においては、サーバは、第一無線アクセスポイントのロケーションを決定するために、第一無線アクセスポイントの識別情報を使用する(これは、例えば図14において説明されているような方法を通して採取されていた/収集されていたかもしれない)。サーバは又、操作935において、移動局のポジションを決定するために、他のデータ(例、移動局に内蔵されているGPS受信機で決定され、そのあとサーバに伝送されるSPS疑似範囲)を使用してもよい。サーバは、例えば、移動局のポジションを決定するために、SPS疑似範囲と、無線アクセスポイントからの信号の測定とを組み合わせてもよい。或いは、SPS疑似範囲は、無線アクセスポイントの知られているロケーションと組み合わせられてもよい(特に、より短い信号範囲を有する無線LANの場合において)。操作935の別の代替においては、サーバは、支援データ(例、第一無線アクセスポイントのロケーション、又、ことによっては他のデータ、例えば、移動局を考慮したSPS衛星用ドップラーデータ、等)を移動局に提供してもよい、しかし、サーバは、移動局のポジションを計算しない;寧ろ、移動局が、少なくともいくつかの利用可能な測定(例、SPS疑似範囲、範囲測定、或いは、1又は全ての利用可能な無線ネットワークの無線アクセスポイントに関係する、他の測定)及びサーバからの利用可能な支援データを使って、ポジションソリューションを実行する(perform the position solution)。

(イ)よって、上記(ア)a及びfの記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「無線通信信号を使用するハイブリッドポジショニングの方法であって、
移動局は、移動局にとってアクセスできる第一無線ネットワークの第一無線アクセスポイントの識別情報を取得し、
移動局は、第一無線ネットワークとは異なる第二無線ネットワークの第二無線アクセスポイント経由で、ポジション決定操作の間に、識別情報をサーバに伝送し、
サーバは、第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データを移動局に提供するが、サーバは、移動局のポジションを計算せず、
移動局は、1又は全ての利用可能な無線ネットワークの無線アクセスポイントに関係する測定等の少なくともいくつかの利用可能な測定、及びサーバからの利用可能な支援データを使って、ポジションソリューションを実行する、方法。」

(ウ)さらに、上記(ア)bの記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。
「移動局用のポジションソリューションを得るために2以上の無線ネットワークのアクセスポイントから伝送されてきた無線信号を使用するハイブリッドポジションシステムの移動局において、移動局での支援のために2以上の無線ネットワーク(双方向通信において)のアクセスポイントで情報を転送する一方、1以上の無線ネットワークを使用して遠隔サーバと通信している間に、異なる無線ネットワークのアクセスポイントからの信号を使用して測定を行う」点。

(エ)上記(ア)cの記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。
「ハイブリッドポジショニングシステムにおいて、無線ネットワークのセクターの識別、ロケーション、及びサービスエリアを記述する情報が使用されるところ、移動局は、一無線ネットワークにアクセスすることに許可を与えられ或いは権限を与えられるが、別の無線ネットワークに対してはそうではないため、異なる無線ネットワークのアクセスポイント用のそのような情報にはアクセスして入手することができない」点。

(オ)上記(ア)dの記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。
「ハイブリッドポジショニングシステムにおいて、異なるサービスプロバイダによって操作される無線ネットワークA及びBは、各々が多数のアクセスポイントを含み、移動局は、無線ネットワークAの無線アクセスポイントと、無線ネットワークBの無線アクセスポイントと、の両方から伝送されてくる無線信号に基づくタイミング測定(例、擬似範囲、往復時間、信号到達時間、信号到達時間差)を、移動局のポジションを決定するために使用する」点。

(カ)上記(ア)eの記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。
「サーバと通信するために2つの無線ネットワークを使用したハイブリッドポジション決定の方法であって、利用可能性等を考慮して使用する通信パスを選択し、移動局と第一無線ネットワークのアクセスポイントを使用するサーバとの間で第一情報を伝達授受する一方、移動局と第二無線ネットワークのアクセスポイントを使用するサーバとの間で第二情報を伝達授受し、第一情報及び第二情報の伝達授受から移動局のポジションを決定する」点。

イ 引用例2
(ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2008/112819号(2008年(平成20年9月18日国際公開。以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある(括弧内は当審訳である。)。
「[0084] Location server 150 may provide assistance data to terminal 110.(ロケーションサーバ150は、端末110に支援データを提供しうる。) The assistance data may be satellite/navigation data to assist terminal 110 with making measurements of satellites, terrestrial assistance data to assist terminal 110 with making measurements for terrestrial stations, e.g., base stations/cells, WLAN access points (APs), etc.(支援データは、端末110が衛星を測定するのを支援するための衛星/ナビゲーションデータや、端末110が例えば基地局/セル、WLANアクセスポイント(AP)といった地上ステーションを測定するのを支援する地上支援データなどでありうる。)・・・The assistance data may also or instead enable terminal 110 to perform measurements of satellite and base station signals without further assistance from location server 150 and to send the signal measurements at any later time to location server 150 or some other entity to provide or obtain location.(支援データは、さらに又は代わりに、端末110が、位置を提供又は取得するために、位置特定サーバ150からの更なる支援がなくても衛星及び基地局の信号の測定を行い、その後いつでも位置特定サーバ150又は他の何らかのエンティティに信号の測定値を送ることを可能にしうる。) The capability to provide assistance data may be referred to as eXTended Receiver Assistance (XTRA).(支援データを提供する能力は、拡張された受信機支援(XTRA)と称されうる。)」

(イ)よって、引用例2には、次の技術が記載されている。
「ロケーションサーバが端末に提供する支援データは、端末が地上ステーションを測定するのを支援する地上支援データであって、支援データは、端末が位置を取得するために、基地局の信号の測定を行うことを可能にする」技術。

(3)対比・判断
ア 本件補正発明1について
(ア)本件補正発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「第一無線ネットワーク」は、本件補正発明1の「第1のワイヤレスネットワーク」に相当し、引用発明の「第一無線ネットワークの第一無線アクセスポイント」は、本件補正発明1の「第1のワイヤレスネットワーク」の「基地局」に相当する。そして、引用発明の「第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データ」と、本件補正発明1の「前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データ」とは、「前記第1のワイヤレスネットワークにおける」「基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データ」である点で共通する。よって、引用発明において、「移動局は、移動局にとってアクセスできる第一無線ネットワークの第一無線アクセスポイントの識別情報を取得し、移動局は、第一無線ネットワークとは異なる第二無線ネットワークの第二無線アクセスポイント経由で、ポジション決定操作の間に、識別情報をサーバに伝送し、サーバは、第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データを移動局に提供する」ことと、本件補正発明1において、「第1のワイヤレスネットワークから、前記第1のワイヤレスネットワークにおける複数の基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを受信すること」とは、「前記第1のワイヤレスネットワークにおける基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを取得すること」の点で共通する。

b 引用発明において、「1又は全ての利用可能な無線ネットワークの無線アクセスポイントに関係する測定等の少なくともいくつかの利用可能な測定」によって測定値の情報を取得し、当該取得した測定値の情報に基づいて「ポジションソリューションを実行」していることも、明らかであるから、引用発明において、「1又は全ての利用可能な無線ネットワークの無線アクセスポイントに関係する測定等の少なくともいくつかの利用可能な測定」によって取得した測定値の情報と、本件補正発明1において、「前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である」「ロケーション情報」とは、ワイヤレスネットワークの基地局に関係する測定値の情報である点で共通する。よって、引用発明において、「1又は全ての利用可能な無線ネットワークの無線アクセスポイントに関係する測定等の少なくともいくつかの利用可能な測定」をすることと、本件補正発明1において、「前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報を取得すること」であって、「ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である」こととは、「ワイヤレスネットワークの基地局に関係する測定値の情報を取得すること」の点で共通するといえる。

c 引用発明において、「サーバは、移動局のポジションを計算せず」に、「移動局」が、「ポジションソリューションを実行する」とされているのであるから、「移動局」によって「実行」される「ポジションソリューション」が、「移動局のポジション」に関するものであることは、明らかである。よって、引用発明において、「移動局は、1又は全ての利用可能な無線ネットワークの無線アクセスポイントに関係する測定等の少なくともいくつかの利用可能な測定、及びサーバからの利用可能な支援データを使って、ポジションソリューションを実行する」ことと、本件補正発明1において、「前記ロケーション情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定すること」とは、「前記測定値の情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定すること」の点で共通するといえる。

d 「無線通信信号を使用するハイブリッドポジショニングの方法」は、次の相違点は除いて、本願発明の「移動局の推定位置を決定するための方法」に相当するといえる。

(イ)以上のことから、本件補正発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
a 一致点
「移動局の推定位置を決定するための方法であって、
前記第1のワイヤレスネットワークにおける基地局のための支援データを備える前記第1のワイヤレスネットワークのための地上支援データを備える支援データを取得することと、
ワイヤレスネットワークの基地局に関係する測定値の情報を取得することと、
前記測定値の情報に基づいて前記移動局の前記推定位置を決定することと、を備える方法。」

b 相違点
(a)相違点1
第1のワイヤレスネットワークにおける基地局のための支援データが、本件補正発明1では、「複数の基地局のための」ものであるのに対し、引用発明では、「支援データ」に関する「第一無線アクセスポイント」が複数である点について示されていない点。

(b)相違点2
支援データの取得が、本件補正発明1では、「第1のワイヤレスネットワークから」「受信すること」によってなされるのに対し、引用発明では、「移動局は、移動局にとってアクセスできる第一無線ネットワークの第一無線アクセスポイントの識別情報を取得し、移動局は、第一無線ネットワークとは異なる第二無線ネットワークの第二無線アクセスポイント経由で、ポジション決定操作の間に、識別情報をサーバに伝送し」、それにより「サーバ」から「移動局に提供」されてなされる点。

(c)相違点3
本件補正発明1では、「前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチする」のに対し、引用発明では、「第一無線ネットワーク」からアンアタッチする点について示されていない点。

(d)相違点4
ワイヤレスネットワークの基地局に関係する測定値の情報が、本件補正発明1では、「前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて」「取得」される「前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報」であって、「ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である」のに対し、引用発明では、「1又は全ての利用可能な無線ネットワークの無線アクセスポイントに関係する測定等の少なくともいくつかの利用可能な測定」によって取得されるものの、当該測定がどのようになされるかについては示されていない点。

(ウ)判断
a 以下、上記相違点について検討する。
(a)相違点1について
無線ネットワークを用いた位置決定において、複数のアクセスポイントからの信号を用いることは、きわめて一般的なことである(引用例1にあっても、「ハイブリッドポジショニングシステムにおいて、異なるサービスプロバイダによって操作される無線ネットワークA及びBは、各々が多数のアクセスポイントを含」む点(上記(2)ア(オ))が記載されているとおりである。)から、引用発明における「ポジションソリューション」のための「支援データ」を、複数の「第一無線アクセスポイント」に関するものとし、上記相違点1に係る本件補正発明1の構成とすることは、当業者が容易になしえたことである。

(b)相違点2について
引用例1には、「無線ネットワークのセクターの識別、ロケーション、及びサービスエリアを記述する情報」に関し、「移動局は、一無線ネットワークにアクセスすることに許可を与えられ或いは権限を与えられるが、別の無線ネットワークに対してはそうではないため、異なる無線ネットワークのアクセスポイント用のそのような情報にはアクセスして入手することができない」点(上記(2)ア(エ))が記載され、一方で、「利用可能性等を考慮して使用する通信パスを選択し、移動局と第一無線ネットワークのアクセスポイントを使用するサーバとの間で第一情報を伝達授受する一方、移動局と第二無線ネットワークのアクセスポイントを使用するサーバとの間で第二情報を伝達授受」する点(上記(2)ア(カ))も記載されており、引用例1中のこれらの記載は、引用発明における「第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データ」について、異なる無線ネットワーク経由だとアクセスし入手することができない場合があること、そして、そのような場合には、利用可能性等を考慮して通信パスを選択し、アクセス可能な無線ネットワークのアクセスポイントを使用するサーバとの間で情報を伝達授受して入手すればよいことについて、示唆するものといえる。
よって、引用発明において、「第一無線ネットワークとは異なる第二無線ネットワークの第二無線アクセスポイント経由」では、「第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データ」を入手することができない場合に、「第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データ」を、「第二無線ネットワークの第二無線アクセスポイント経由」ではなく、「第一無線ネットワークの第一無線アクセスポイント」を使用するサーバとの間で伝達授受して取得する(すなわち、「第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データ」を「第一無線ネットワーク」から受信することによって取得する)ようにし、上記相違点2に係る本件補正発明1の構成とすることは、当業者が容易になしえたことである。

(c)相違点3及び4について
上記相違点3及び4については、技術的なつながりを考慮し、以下、まとめて検討する。
引用例1には、「移動局での支援のために2以上の無線ネットワーク(双方向通信において)のアクセスポイントで情報を転送する一方、1以上の無線ネットワークを使用して遠隔サーバと通信している間に、異なる無線ネットワークのアクセスポイントからの信号を使用して測定を行う」点(上記(2)ア(ウ))、及び、「移動局は、無線ネットワークAの無線アクセスポイントと、無線ネットワークBの無線アクセスポイントと、の両方から伝送されてくる無線信号に基づくタイミング測定(例、擬似範囲、往復時間、信号到達時間、信号到達時間差)を、移動局のポジションを決定するために使用する」点(上記(2)ア(オ))についても、記載されており、引用例1中のこれらの記載は、引用発明における「ポジションソリューション」のための測定を、サーバと通信している無線ネットワークとは異なる無線ネットワークのアクセスポイントから伝送されてくる無線信号に基づくタイミング測定としてもよいことについて、示唆するものといえる。
そして、地上ステーションからの信号の測定を支援データに基づいて行うことは、周知技術といえる(例えば引用例2に、「ロケーションサーバが端末に提供する支援データは、端末が地上ステーションを測定するのを支援する地上支援データであって、支援データは、端末が位置を取得するために、基地局の信号の測定を行うことを可能にする」技術(上記(2)イ(イ))が記載されているとおりである。)から、引用発明における「ポジションソリューション」のための測定を、「支援データ」に基づいて行うことも、当業者が適宜なしえたことであるといえる。
しかしながら、「第一無線ネットワーク」からアンアタッチした上で、「第一無線ネットワーク」にアタッチされていない間に、「第一無線アクセスポイントのロケーション等の支援データ」に基づいて「第一無線ネットワーク」の「第一無線アクセスポイント」と「移動局」との間で通信される信号のためのタイミング測定値を取得する点については、原査定の拒絶の理由で引用されたいずれの引用例にも記載されていないから、引用発明において、たとえ引用例1に記載された他の技術的事項及び引用例2に記載された技術を考慮したとしても、上記相違点3及び4に係る本件補正発明1の構成とすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。

b 以上のとおり、上記相違点1ないし4のうち、上記相違点3及び4に係る本件補正発明1の構成とすることについて、当業者が容易になしえたことであるとはいえないから、本件補正発明1は、引用発明、引用例1に記載された他の技術的事項及び引用例2に記載された技術(以下、「引用発明等」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件補正発明2ないし23について
本件補正発明9、11、14及び19は、いずれも、本件補正発明1と同様に、上記相違点3及び4に係る構成、すなわち「前記第1のワイヤレスネットワークからアンアタッチする」点、及び、「前記第1のワイヤレスネットワークにアタッチされていない間に、前記第1のワイヤレスネットワークのための前記地上支援データに基づいて前記第1のワイヤレスネットワークからのロケーション情報を取得」し、「ここにおいて、前記ロケーション情報は、前記第1のワイヤレスネットワークの基地局と、前記移動局との間で通信される信号のためのタイミング測定値である」点を、発明特定事項に含むものであるから、本件補正発明1について検討したのと同様に、引用発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本件補正発明1、9、11、14及び19が、引用発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件補正発明1、9、11、14及び19を、それぞれさらに限定したものである、本件補正発明2ないし8、10、12ないし13、15ないし18及び20ないし23も、引用発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件補正発明1ないし23について、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。

(5)よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

4 小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし23に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されたとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-29 
出願番号 特願2012-524927(P2012-524927)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 久  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 大和田 有軌
酒井 伸芳
発明の名称 多元無線アクセス技術における測位のための支援データ  
代理人 井関 守三  
代理人 奥村 元宏  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  

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