• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60K
管理番号 1319099
審判番号 不服2015-10436  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-03 
確定日 2016-09-07 
事件の表示 特願2012-535741号「車両用ドライブトレイン」拒絶査定不服審判事件〔平成23年5月5日国際公開、WO2011/051138、平成25年3月7日国内公表、特表2013-508221号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2009年10月26日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月25日に国内書面が提出され、平成24年6月22日に明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出されるとともに、平成24年6月29日に手続補正書が提出され、平成25年6月12日付けで拒絶理由が通知され、平成25年9月13日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年3月7日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成26年6月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年1月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成27年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成27年12月9日付けで当審による拒絶理由が通知され、平成28年3月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成26年6月10日提出の手続補正書により補正された明細書及び平成28年3月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに平成24年6月22日提出の図面の翻訳文からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
内燃機関(1)及び無段変速機(4)を備えて内燃機関走行を可能とすると共に,少なくとも1つの電気機械(6)を備えて電気走行を可能とした車両用ドライブトレインにおいて,電気機械(6)が,無段変速機(4)及び内燃機関側駆動系の部品から分離された状態での電気走行を可能とするように被動側に結合可能であり,ドライブトレインが被動側に少なくとも1つの2段変速機(7)を付加的に備え,該2段変速機(7)の入力ギヤが電気機械(6)に,該2段変速機(7)の出力ギヤが車軸差動装置(8)にそれぞれ関連し、
前記内燃機関側駆動系の部品は、内燃機関走行時に前記無段変速機(4)によって駆動され、かつ、電気走行時に前記電気機械(6)が電気走行のために駆動することを必要としない部品であり、
電気機械(6)が,少なくとも1つのシフト要素(9,10)により無段変速機(4)の出力軸(5)から分離可能とされており、
前記シフト要素(9,10)は、シフト爪を有し、
無段変速機(4)の出力軸(5)と電気機械(6)の出力軸とが同軸上に配置されていることを特徴とするドライブトレイン。」

第3 刊行物
1.刊行物
(1)刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布され、当審による拒絶理由において引用された刊行物である特開2001-78307号公報(以下、「刊行物」という。)には図面とともに次の記載がある。

1a)「【0019】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態であるハイブリッド自動車の構成を図1を参照して説明する。図1には、ハイブリッド自動車の動力伝達系と、この動力伝達系を制御するための制御系とが示されている。
【0020】まず、動力伝達系の構成を説明する。エンジンEの出力軸は、サブモータ1を介してオイル・ポンプ2に連結されている。サブモータ1は、エンジンEの起動やアシスト等を行う。オイル・ポンプ2は、エンジンEの駆動力によって油圧を発生させ、油圧制御装置24を介して、CVT4の変速を行う。
【0021】エンジンEの出力軸は、さらに、自動車の前後進を切り替えるためのプラネタリー・ギア3に連結されている。このプラネタリー・ギア3は、図示していないセレクトレバーと機械的に連結されており、このセレクトレバーの操作により、自動車の前後進が切り替えられる。
【0022】プラネタリー・ギア3の出力軸は、無段変速を行うCVT4に内蔵された駆動側プーリ5に連結されている。CVT4は、前記駆動側プーリ5の他に、金属ベルト6、被動側プーリ7、側室8および9を内蔵している。駆動側プーリ5と被動側プーリ7とには、両プーリにまたがる共通の金属ベルト6が巻き付けられていて、両プーリ間で動力が伝達されるようになっている。
【0023】駆動側プーリ5および被動側プーリ7の側面には、それぞれ、各プーリへの金属ベルト6の巻き付き径を変化させるための側室8および9が設けられている。巻き付き径は、側室8および9に加えられる油圧によって、各プーリの幅が変化し、ベルトとプーリとの斜面接点が移動することによって変化する。側室8および9に加えられる油圧は、前記オイル・ポンプ2によって発生される。
【0024】CVT4に内蔵された被動側プーリ7は、クラッチ10に内蔵された係合要素11に連結されている。クラッチ10には、前記係合要素11と共に、この係合要素11と対をなす係合要素12と、これらの係合要素11および12を結合あるいは分離させるクラッチ制御用アクチュエータ13とが内蔵されている。
【0025】クラッチ10に内蔵された係合要素12は、最終減速機14およびギア15と連結されている。最終減速機14は、デファレンシャル・ギア16と噛み合わされている。デファレンシャル・ギア16は、車軸17を介して、自動車の駆動輪Wと連結されている。
【0026】前記ギア15は、ギア18と噛み合わされていて、このギア18は、メインモータ19の回転軸に連結されている。」(段落【0019】ないし【0026】)

1b)「【0038】ここで、メインモータ19の駆動力で自動車を走行させる場合、すなわちモータ走行の場合には、クラッチ10が切られている。すなわち、クラッチ10に内蔵された係合要素11と12とが分離されていて、両係合要素間で回転は伝達されない。従って、最終減速機14の回転の伝達は、クラッチ10で切断され、CVT4に伝達されることはない。
【0039】従って、最終減速機14の回転は、デファレンシャル・ギア16のみに伝達され、伝達された回転は、車軸17を介して駆動輪Wに伝達される。以上の動作によって、メインモータ19によって駆動輪Wが駆動され、自動車が走行する。」(段落【0038】ないし【0039】)

(2)上記(1)及び図1の記載から以下の事項が分かる。

2a)図1からは、ハイブリッド自動車の動力伝達系が、ギア15及びギア18と最終減速機14からなる歯車群を備えており、歯車群の入力側がメインモータ19であって、歯車群の出力側がデファレンシャルギア16であることが看取できる。

2b)上記(1)1b)及び図1の記載から、CVT4の出力軸は、エンジンEの駆動力による走行時にCVT4によって駆動され、かつ、モータ走行時にメインモータ19がモータ走行のために駆動することを必要としない部品であることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1の記載を総合すると、刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「エンジンE及びCVT4を備えてエンジンEの駆動力による走行を可能とすると共に、少なくとも1つのメインモータ19を備えてモータ走行を可能としたハイブリッド自動車の動力伝達系において、メインモータ19が、CVT4及びCVT4の出力軸から回転が伝達されない状態でのモータ走行を可能とするように駆動輪W側に回転を伝達可能であり、
ハイブリッド自動車の動力伝達系がギア15及びギア18と最終減速機14とからなる歯車群を備え、歯車群の入力側がメインモータ19であり、歯車群の出力側がデファレンシャル・ギア16に、それぞれ結合し、
CVT4の出力軸は、エンジンEの駆動力による走行時にCVT4によって駆動され、かつ、モータ走行時にメインモータ19がモータ走行のために駆動することを必要としない部品であり、
メインモータ19が、クラッチ10によりCVT4の出力軸から回転が伝達されない状態となることが可能であるハイブリッド自動車の動力伝達系。」

第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「エンジンE」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「CVT4」は「無段変速機」に、「エンジンEの駆動力による走行」は「内燃機関走行」に、「メインモータ19」は「電気機械」に、「モータ走行」は「電気走行」に、「ハイブリッド自動車の動力伝達系」は「車両用ドライブトレイン」又は「ドライブトレイン」に、「CVT4の出力軸」は「内燃機関側駆動系の部品」に、「回転が伝達されない状態」は「分離された状態」に、「駆動輪W側」は「被動側」に、「回転を伝達可能」は「結合可能」に、「備え」は「付加的に備え」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「ギア15及びギア18と最終減速機14とからなる歯車群」は、図1等からみて、歯車の組が2組連なったものであるから、本願発明の「2段変速機」に相当する。
そして、「歯車群の入力側」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、「2段変速機の入力ギア」に相当し、以下同様に、「歯車群の出力側」は「2段変速機の出力ギア」に、「デファレンシャル・ギア16」は「車軸作動装置」に、「それぞれ結合し」は「それぞれ関連し」に、「回転が伝達されない状態となることが可能」は「分離可能」に、それぞれ相当する。
さらに、引用発明における「クラッチ10」と本願発明における「シフト爪を有」する、「シフト要素」とは、「駆動力断接手段」という限りにおいて一致する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「内燃機関及び無段変速機を備えて内燃機関走行を可能とすると共に、少なくとも1つの電気機械を備えて電気走行を可能とした車両用ドライブトレインにおいて、電気機械が、無段変速機及び内燃機関側駆動系の部品から分離された状態での電気走行を可能とするように被動側に結合可能であり、ドライブトレインが被動側に少なくとも1つの2段変速機を付加的に備え、2段変速機の入力ギヤが電気機械に、2段変速機の出力ギヤが車軸差動装置にそれぞれ関連し、
内燃機関側駆動系の部品は、内燃機関走行時に無段変速機によって駆動され、かつ、電気走行時に前記電気機械が電気走行のために駆動することを必要としない部品であり、
電気機械が,少なくとも1つの駆動力断接手段により無段変速機の出力軸から分離可能とされている、ドライブトレイン。」

[相違点1]
駆動力断接手段に関して、本願発明においては、「シフト要素」であって、シフト爪を有するものであるのに対して、引用発明においては、「クラッチ10」であって、シフト爪を有するものか不明である点。

[相違点2]
本願発明においては、無段変速機(4)の出力軸(5)と電気機械(6)の出力軸とが同軸上に配置されているのに対して、引用発明においては、CVT4の出力軸とメインモータ19の出力軸が同軸上に配置されているか不明な点。

上記相違点について判断する。

[相違点1について]
本願発明における「シフト要素」とは、本願明細書の段落【0019】には、「・・シフト要素9,好適にはシフト爪により・・結合可能」と記載されていることや、本願の図1に示されたシフト要素の形状を併せみると、シフト要素の接離方向に延びるシフト爪を有するものであって、シフト爪の接離により駆動力を断接する、駆動力断接手段であると認められる。
そして、シフト爪を有し、シフト爪の接離により駆動力を断接するドッグクラッチ等の駆動力断接手段は、例を挙げるまでもなく周知であって、引用発明の「クラッチ10」とは、駆動力を断接するという共通の機能を備えるものであるから、引用発明の「クラッチ10」に代えて、周知の、シフト爪を有し、シフト爪の接離により駆動力を断接するドッグクラッチ等の駆動力断接手段を採用することにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2について]
引用発明において、CVT4の出力軸をメインモータ19の出力軸と同軸上に配置することは、例えば、国際公開第2005-108143号(FIG.1等参照)にみられるように格別なことではなく、コンパクト化などの一般的な課題のもとで、当業者が適宜なし得る設計事項であると認める。

そして、本願発明を全体としてみても、引用発明から予測される以上の格別な効果を奏すると認めることはできない。

第5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-01 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-25 
出願番号 特願2012-535741(P2012-535741)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (B60K)
P 1 8・ 121- WZ (B60K)
P 1 8・ 537- WZ (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼木 真顕  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 松下 聡
金澤 俊郎
発明の名称 車両用ドライブトレイン  
代理人 吉澤 雄郎  
代理人 杉村 憲司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ