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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
管理番号 1319197
異議申立番号 異議2016-700125  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-15 
確定日 2016-09-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第5766442号発明「サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5766442号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5766442の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成23年 1月 4日に特許出願され、平成27年 6月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人「細野 高良」により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年 4月28日付けで取消理由を通知し、同年 7月 7日付けで意見書が提出されたものである。


第2 当審の判断

1.特許法第36条第6項第2項について

特許権者は、取消理由通知において通知した理由(特許法第36条第6項第2項)に対して、乙第1?4号証(以下、「乙1?4」という。)を提出するとともに、意見書の第5 3 ア?オにおいて、本件特許明細書及び乙1?4の記載から、「相対密度」の算出に用いる「焼結密度」が「見掛け密度」ではなく「かさ密度」であることが明らかであることを主張し、第5 3 カにおいて、「焼結密度」を「見掛け密度」と仮定すると、実施例1の結果に矛盾が生じるため、「焼結密度」を「かさ密度」と解することが明白であることを主張している。

以下、「相対密度」の明確性について検討する。

本件特許明細書には相対密度の算出について、
「(1)相対密度
アルキメデス法で焼結密度を測定し、下式で算出した。
相対密度(%)=焼結密度〔g/cm^(3)〕/3.98〔g/cm^(3);αアルミナ理論焼結密度〕×100」(段落【0056】)と記載され、実施例1には、本件特許発明のαアルミナ焼結体の相対密度に関し、「得られたαアルミナ焼結体は、相対密度69%、閉気孔率0%、形状は円柱で、体積6cm^(3)であり」(段落【0063】)と記載されている。

ここで、「見かけ密度=試料の質量/(試料の固体部分の容積+閉気孔容積)」、「かさ密度=試料の質量/(試料の固体部分の容積+閉気孔容積+開気孔容積)」であり(例えば、甲8の「3.定義」等参照)、また、「理論密度=試料の質量/試料の固体部分の容積」であることは技術常識である。

まず、相対密度の算出に用いる「焼結密度」が「見かけ密度」であると仮定すると、
相対密度=見かけ密度/理論密度×100=[試料の固体部分の容積/(試料の固体部分の容積+閉気孔容積)]×100(段落【0056】(1)式参照)であるところ、実施例1で閉気孔率が0%であることから、上式の算出による相対密度は100%となり、実施例1の相対密度69%と矛盾する。

次に、相対密度の算出に用いる「焼結密度」が「かさ密度」であると仮定すると、
相対密度=かさ密度/理論密度×100=[試料の固体部分の容積/(試料の固体部分の容積+閉気孔容積+開気孔容積)]×100であり、実施例1で閉気孔率が0%であっても、相対密度が69%になり得るため(開気孔率が31%であれば相対密度が69%となる)、矛盾が生じない。

そうすると、実施例1の記載は「焼結密度」が「見かけ密度」ではなく「かさ密度」であるとすれば合理的に理解できる。そして、焼結密度がかさ密度であるものとして、本件特許明細書の記載全体を見ても矛盾する記載はない(なお、かさ密度がアルキメデス法で測定され得ることは、乙1?4に記載されているように技術常識である)。

よって、本件特許発明の相対密度の算出に用いる焼結密度が「かさ密度」であることは、本件特許明細書の記載及び技術常識に照らして明らかであり、本件特許発明1?3は特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

本件特許発明1?3に記載の「体積」についても同様である。

2.特許異議申立理由についての補足

特許異議申立人は、本件特許発明1?3は、甲第1?9号証(以下、「甲1?9」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの特許法第29条第2項に係る取消理由、及び、本件特許発明1?3は本件特許明細書の記載によりサポートされていないとの同法第36条第6項第1号に係る取消理由も主張している。
しかしながら、甲1は、「αアルミナ粉末」の相対密度、閉気孔率を開示するものであって、体積1cm^(3)以上に形成された「αアルミナ焼結体」に係るものではなく、甲2?9も体積1cm^(3)以上に形成された「αアルミナ焼結体」を所定の相対密度、閉気孔率とすることを開示するものでないから、本件特許発明1?3は、甲1?9に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものといえない。
また、本件特許明細書には、本件特許発明の実施例及び相対密度、閉気孔率の技術的意義等(段落【0010】?【0011】、【0014】)が記載され、それらの記載等からみて、本件特許発明1?3が本件特許明細書の記載によってサポートされていないといえない。
よって、同法第29条第2項及び第36条第6項第1号に係る理由は採用出来ない。


第3 むすび

以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-08-30 
出願番号 特願2011-128(P2011-128)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (C04B)
P 1 652・ 121- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 武重 竜男  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 山本 雄一
新居田 知生
登録日 2015-06-26 
登録番号 特許第5766442号(P5766442)
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体  
代理人 森住 憲一  
代理人 田中 光雄  
代理人 山田 卓二  

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