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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1319541
審判番号 不服2015-1186  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-21 
確定日 2016-09-13 
事件の表示 特願2013-515523「RF測距支援局所的動き検知」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月22日国際公開、WO2011/159939、平成25年10月 3日国内公表、特表2013-537730〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、2011年(平成23年) 6月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2010年(平成22年) 6月16日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 1月 8日 :翻訳文の提出
平成25年12月26日付け:拒絶理由の通知
平成26年 4月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 9月26日付け:拒絶査定
平成27年 1月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成27年 8月31日付け:当審による拒絶理由の通知
平成28年 3月 7日 :意見書、手続補正書の提出

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年 3月 7日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「モバイルデバイスを移動させることによって前記モバイルデバイスに入力ジェスチャを提供するステップと、
前記入力ジェスチャにより生じた、ユーザの身体の局所的基準ノードに対する前記モバイルデバイスの移動を、前記モバイルデバイスと、前記局所的基準ノードの役割を果たし前記ユーザの身体の一部分とコロケートされた第2のデバイスとの間の1つまたは複数の無線周波数(RF)リンクに少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイスと前記第2のデバイスとの間の距離の1つまたは複数の特性を測定することによって検出するステップと、
前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値を少なくとも部分的に無視することによって、前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性を前記1つまたは複数のセンサ測定値に統合するステップと、
前記入力ジェスチャにより生じ前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性によって検出された、前記モバイルデバイスの前記移動に少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイス上にホスティングされた1つまたは複数のアプリケーションに作用するステップと
を含む方法。」

2.引用発明と技術事項
(1)引用発明
これに対して、当審の拒絶理由に引用された文献であり、本願の優先権主張の日前に公開された特開2005-352739号公報(平成17年12月22日公開。以下、「引用例1」という。)には、「携帯端末装置、入力システム、情報入力方法」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「【0001】
本発明は、使用者の指や手首の腱および腕の動きを測定することによって、使用者が意図する動作を行うことができる携帯端末装置、入力システム、情報入力方法に関する。」(3頁)

イ「【0014】
制御定義用メモリおよび制御手段を含む筐体と有線または無線で接続された子機がセンサを搭載してもよい。そのような構成によれば、使用者が腕に装着する装置は子機であるため、使用者が腕に装着する装置をより小型化することができる。」(4頁)

ウ「【0017】
本発明による入力システムは、複数種類の測定量または測定量の組み合わせのそれぞれに対応する入力情報を記憶する制御定義用メモリと、使用者の指および腕の動きを間接的に測定する複数のセンサが出力した測定量に応じた入力情報を制御定義用メモリから抽出し、抽出した入力情報に従って制御を実行する制御手段とを含む携帯端末装置と、携帯端末装置と有線または無線で接続された子機とを備え、携帯端末装置は、子機との距離を測定する距離測定手段を含み、携帯端末装置または子機は、使用者の腕に装着されるセンサを含むことを特徴とする。」(4頁)

エ「【0021】
さらに、本発明によれば、ジェスチャーなどの動きを検出して、何らかの対象物に触れることなく使用者が意図する制御を実行することができる。」(5頁)

オ「【0024】
図2は、本発明による携帯端末装置11の一構成例を示すブロック図である。携帯端末装置11は、携帯端末装置11の各部を制御するCPU(Central Processing Unit)(制御手段)12、情報を入力するキーボード19、キーボード19に入力された情報をCPU12に出力するキー入力部18、情報を表示する表示部22、表示部22を制御する表示制御部21、3次元の加速度ベクトルを測定する加速度センサ23、複数の圧電センサ25、圧電センサ25を制御し、圧電センサ25が測定した値をCPU12に出力する圧力入力部24、CPU12が実行する各種の制御プログラムや、かな文字変換等に使用される辞書等の固定的なデータを記憶するROM(Read Only Memory)14、CPU12がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを記憶する作業用メモリ15、圧電センサ25と加速度センサ23とが測定した値と、それに応じて実行するべき処理または入力するべき文字との関係の情報を記憶する制御定義用メモリ16、各センサが測定するタイミングを示す信号であるトリガをCPU12に出力するタイマ部17、CPU12と各部を接続するバス13を含む。
【0025】
作業用メモリ15は、例えば、RAM(Random Access Memory)によって実現される。加速度センサ23は、使用者の腕の3次元空間上における加速度ベクトルを測定し、3次元加速度センサによって実現されるが、2次元以下の空間の加速度ベクトルを測定するものでもよいし、例えば、複数の1次元の加速度センサを、それぞれが垂直方向の加速度を測定するように設置したものでもよい。
【0026】
制御定義用メモリ16は、例えば、不揮発性メモリによって実現される。なお、例えば、圧電センサ25と加速度センサ23とが測定する値、または、圧電センサ25と加速度センサ23とが測定する値の組み合わせにもとづいて、指、手首および腕の動きがパターン化され、携帯端末装置11の工場出荷時等に、制御定義用メモリ16は、パターン化された動きと、それに応じて実行すべき処理または入力すべき文字との関係を示す情報である動作入力情報を予め記憶している。また、使用者は、キーボード19を操作して、パターン化された動きと、それに応じて実行すべき処理または入力すべき文字との関係の情報である動作入力情報を、制御定義用メモリ16に記憶させてもよい。タイマ部17は、所定の時間間隔(例えば、10ms毎)で、トリガをCPU12に出力し、CPU12は、トリガが入力されると、加速度センサ23に加速度ベクトルを測定させ、圧力入力部24を介して圧電センサ25に接触圧を測定させる。なお、CPU12は、加速度センサ23および圧電センサ25が測定した測定量を用いて所定の演算を行い、演算によって得られた値に応じた動作入力情報を制御定義用メモリから抽出し、抽出した動作入力情報に従って処理を実行したり、文字を入力したりする制御を実行してもよい。
【0027】
携帯端末装置11は、例えば、携帯電話機やPHS端末、PDA(Personal DataAssistance、Personal Digital Assistants)等によって実現される。
【0028】
次に、実施の形態の動作について図面を参照して説明する。図3は、本発明の実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【0029】
携帯端末装置11の電源が投入されると、タイマ部17は、所定の時間間隔でトリガをCPU12に出力する。CPU12は、トリガが入力されると、加速度センサ23に加速度ベクトルを測定させ、圧力入力部24を介して圧電センサ25に接触圧を測定させる。このとき、使用者が、携帯端末装置11を装着した腕や指を動かすと、加速度センサ23は、加速度ベクトルを測定し、圧電センサ25は、腱の隆起による接触圧を測定する。圧電センサ25は、測定した接触圧を圧力入力部24に入力する。CPU12は、加速度センサ23が測定した加速度ベクトルを、作業用メモリ15に記憶させる(ステップS101)。さらに、CPU12は、圧電センサ25が圧力入力部24に入力した接触圧を、作業用メモリ15に記憶させる(ステップS102)。
【0030】
CPU12は、作業用メモリ15が記憶している加速度ベクトルおよび接触圧にもとづいて、使用者の指、手首および腕の動きをパターン認識し(ステップS103)、パターン認識した動きと、制御定義用メモリ16が記憶している動作入力情報とを比較し、動きのパターンを判別する(ステップS104)。
【0031】
CPU12は、パターン認識した動きと、制御定義用メモリ16が記憶している動作入力情報のパターン化した動きとが合致した場合、動作入力情報に従って、パターン化した動きに応じて実行するべき処理を行ったり、文字を入力したりする(ステップS105)。
【0032】
CPU12は、パターン認識した動きと、制御定義用メモリ16が記憶している動作入力情報のパターン化した動きとが合致しない場合、所定時間経過後(ステップS106)、ステップS101に戻る。
【0033】
以上、述べたように、この実施の形態によれば、指や手首の屈伸と、腕の移動または回転の組み合わせによって、使用者は、携帯端末装置11に対して、意図する操作または文字の入力を行うことができる。そのため、サイズの大きいキーボードやキーパッドが不要になり、携帯端末装置11をより小型化することができる。」(5?6頁)

カ「【0036】
また、使用者は、対象物に触れることなく操作または文字の入力を行うことができるので、ジェスチャーなどの動きを検出することができる。」(6?7頁)

キ「【0044】
また、制御定義用メモリ16は、手話による手と腕との動きにもとづく圧電センサ25と加速度センサ23とが測定した値と、それに対応する文字や単語との関係の情報を記憶してもよい。聴覚にハンディキャップを持つ人は、手話でコミュニケーションを行うのが一般的であるが、制御定義用メモリ16が、手話による手と腕との動きと、文字や単語との対応関係を示す情報を記憶していると、手話による手と腕との動きに応じて、携帯端末装置11に文字や単語を入力することができる。すると、聴覚にハンディキャップを持つ人が、携帯端末装置11に文字や単語を入力するために、新たな指や腕の動きを習得する必要がなくなる。」(7?8頁)

ク「【0046】
また、携帯端末装置11は、互いの距離を測定する機能を有し、有線または無線で接続された複数のユニットによって構成されてもよい。このとき、CPU12と、キーボード19と、キー入力部18と、表示部22と、表示制御部21と、ROM14と、作業用メモリ15と、制御定義用メモリ17と、タイマ部17とを含むユニット(以下、親機という。)は、例えば、音波によって他のユニット(以下、子機という。)との距離を測定する距離測定手段を含む。そして、制御定義用メモリ16は、手と腕との動きにもとづく圧電センサ25と加速度センサ23とが測定した値、および子機との間の距離と、それに対応する文字および処理との関係の情報を記憶してもよい。すると、指や手の動きに加えて、親機と子機との間の距離に応じて、携帯端末装置11が行う処理や文字を入力することができる。なお、このとき、各センサは、親機が搭載していても、子機が搭載していてもよく、複数のセンサの一部を親機が搭載し、複数のセンサの他の一部を子機が搭載していてもよい。また、距離測定手段を子機が搭載していてもよい。」(8頁)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a 上記アの【0001】、上記エの【0021】、上記カの【0036】、上記キの【0044】の記載によれば、手話、ジェスチャーなどの動きを検出して入力を行う情報入力方法が記載されている。

b 上記オの【0024】、上記クの【0046】の記載によれば、携帯端末装置は、親機と子機から構成され、親機がプログラムを実行するCPUを含むことは明らかである。

c 上記エの【0021】、上記オの【0029】、上記カの【0036】の記載によれば、携帯端末装置を装着した腕や指を動かすことによりジェスチャー入力を行うことは明らかであり、携帯端末装置の使用者からみれば、携帯端末装置に対し、ジェスチャーを提供すると言える。
また、上記クの【0046】の記載によれば、親機がCPUと、加速度センサ等の各センサを搭載してもよく、この場合、親機を動かすことによって、親機に入力を行うためのジェスチャーを提供することは明らかである。

d 上記エの【0021】、上記オの【0029】、上記カの【0036】の記載によれば、ジェスチャーにより生じた動きを検出することにより入力を行うこと、そして、上記クの【0046】の記載によれば、該入力を行うために、親機と子機の距離を測定することは明らかである。
また、上記イの【0014】、上記ウの【0017】の記載によれば、子機は使用者の腕に装着できることは明らかである。
そうすると、上記b及びcで検討したように、携帯端末装置を親機と子機から構成し、親機を動かすことによって入力を行う場合には、前記ジェスチャーにより生じた、前記親機の動きを検出して入力を行うため、前記親機と使用者の腕に装着される子機との距離を測定すると言える。

e 上記オの【0026】、上記クの【0046】の記載によれば、前記親機に搭載される加速度センサが測定した値、および前記親機に含まれる距離測定手段が測定した距離に応じて制御定義用メモリから動作入力情報を抽出し、抽出した動作入力情報に従ってCPUが処理を実行したり、文字を入力したりすることは明らかである。

以上を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「手話、ジェスチャーなどの動きを検出して入力を行う情報入力方法であって、
親機と子機から構成される携帯端末装置において、親機はプログラムを実行するCPUを含み、
親機を動かすことによって前記親機に入力を行うためのジェスチャーを提供し、
前記ジェスチャーにより生じた、前記親機の動きを検出して入力を行うため、前記親機と使用者の腕に装着される子機との距離を測定し、
前記親機に搭載される加速度センサが測定した値、および前記親機に含まれる距離測定手段が測定した距離に応じて制御定義用メモリから動作入力情報を抽出し、
抽出した動作入力情報に従ってCPUが処理を実行したり、文字を入力したりする方法。」

(2)技術事項
同じく当審の拒絶理由に引用された文献であり、本願の優先権主張の日前に公開された特開2010-34695号公報(平成22年2月12日公開。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ケ「【0030】
次に、動作情報入力部107が動作情報の取得を試みる(ステップS206)。ステップS213においてジェスチャが入力されていれば、応答者の意図認識部108は当該ジェスチャを認識し、処理はステップS208に進む(ステップS207)。一方、ステップS213においてジェスチャが入力されていなければ、応答者の意図認識部108はジェスチャを認識できず、処理はステップS203に戻る(ステップS207)。」(6頁)

コ『【0043】
以下、図7を用いて、加速度データを動作情報として利用する場合の、応答者の意図認識部108によるジェスチャ分類の一例を説明する。
応答者の意図認識部108は、応答者の頷き、あるいは、頷きを模した音声応答装置の動きを示す加速度データが得られれば応答者のジェスチャを「肯定」に分類する。具体的には、図7では高さ方向(y軸方向)の加速度データが-1cm/ms2を2回以上連続して下回れば、応答者の意図認識部108は応答者のジェスチャを「肯定」に分類している。
【0044】
応答者の意図認識部108は、応答者の首振り、あるいは、首振りを模した音声応答装置の動きを示す加速度データが得られれば応答者のジェスチャを「否定」に分類する。具体的には、図7では幅方向(x軸方向)の加速度データが-1cm/ms2を下回ること、或いは1cm/ms2を上回ることが2回以上連続すれば、応答者の意図認識部108は応答者のジェスチャを「否定」に分類している。
【0045】
その他、図7では奥行き方向(z軸方向)の加速度データ及び高さ方向の加速度データに基づき、応答者の意図認識部108は応答者のジェスチャを「保留」及び「問い返し」に夫々分類している。
【0046】
通常、日本人のジェスチャの傾向として「頷き」及び「首振り」は「肯定」及び「否定」を夫々示すので、前述したジェスチャ分類によれば、応答者の意図認識部108は応答者の自然な動作に基づいて当該応答者の意図を認識することが可能となる。また、外国人のジェスチャでは上記関係が逆転したりする等ジェスチャの傾向が異なる場合もあるので、応答者のジェスチャの傾向に合致するように判定条件が適宜変更されてもよい。
【0047】
また、判定条件の設定において、応答者が実際に発話した応答音声データと、当該発話時における加速度データとに基づく教師付き学習が利用されてもよい。応答者の意図認識部108は、上記応答音声データの音声認識結果に「はい」及び「そうです」等の肯定表現が含まれていれば加速度データを「肯定」の正解とし、「いいえ」及び「違います」等の否定表現が含まれていれば加速度データを「否定」の正解として、学習を行う。また、応答者の意図認識部108は、音声認識結果でなく応答音声データの韻律を利用して上記学習を行ってもよい。尚、上記学習は、多数の応答者を対象に行われてもよいし、特定の応答者を対象に行われてもよい。多数の応答者を対象とすれば万人向けの判定条件の設定が可能となり、特定の応答者を対象とすれば応答者に特有の癖や仕草等に対応しやすい。
【0048】
また、応答者の意図認識部108は、状況認識部109からの状況認識結果が「歩行中」、「走行中」または「電車で移動中」等のような応答者の移動を示す場合には、当該移動内容に応じた加速度データの変化量のパターン(典型的な加速度データ)を考慮してよい。即ち、動作情報入力部107からの加速度データをそのまま用いるのではなく、上記移動内容において典型的な加速度データを予めキャンセルすることにより、ジェスチャ分類の精度が向上する。』(8?9頁)

上記ケの【0030】、上記コの【0043】?【0048】の記載によれば、引用例2には、以下の発明(以下、「技術事項」という。)が記載されているものと認める。

『加速度データによるジェスチャの認識処理において、「歩行中」、「走行中」または「電車で移動中」等のような応答者の移動を示す場合には、上記移動内容において典型的な加速度データを予めキャンセルすることにより、ジェスチャ分類の精度を向上すること。』

3.対比
本願発明を引用発明と対比すると、

a 引用発明の「携帯端末装置」の「親機」は、本願発明の「モバイルデバイス」に含まれる。
また、引用発明の「動かすこと」は、本願発明の「移動させること」に相当する。
さらに、引用発明の「ジェスチャー」は、「前記親機に入力を行うための」ものであり、「入力ジェスチャー」と言えるから、引用発明の「親機を動かすことによって前記親機に入力を行うためのジェスチャーを提供」することは、本願発明の「モバイルデバイスを移動させることによって前記モバイルデバイスに入力ジェスチャを提供」することに含まれる。

b 引用発明の「親機」は、ジェスチャーにより生じた、前記親機の動きの検出に関して、子機との距離を測定するから、ジェスチャーにより生じた動きを、親機と子機との間の距離を測定することによって検出すると言える。
また、上記aの検討を踏まえれば、引用発明の「親機の動き」は、本願発明の「モバイルデバイスの移動」に含まれる。
さらに、引用発明の「子機」は、使用者の腕に装着されることから、使用者の身体の一部分である腕といった局所にコロケートされると言える。
そして、該装着される局所位置をノードと称することは任意である。
そうすると、引用発明の「子機」は、「ユーザの身体の局所的ノード」の「役割を果たし前記ユーザの身体の一部分とコロケートされた第2のデバイス」と言える。
ここで、本願発明の「距離の1つまたは複数の特性」に関し、本願明細書(翻訳文)の【0011】には、「通信デバイスに関する距離の1つまたは複数の特性(たとえば、測定された距離、距離の変化、距離の加速度および/または減速度など)」と、本願明細書(翻訳文)の【0013】には、「距離関係特性(たとえば、測定された距離、距離の変化など)」と記載されており、本願発明の「距離の1つまたは複数の特性」は、距離そのものを含むと解されるから、引用発明の「距離」は、本願発明の「距離の1つまたは複数の特性」に含まれる。
したがって、上記aの検討を踏まえれば、引用発明の「前記ジェスチャーにより生じた、前記親機の動きを検出して入力を行うため、前記親機と使用者の腕に装着される子機との距離を測定」することと、本願発明の「前記入力ジェスチャにより生じた、ユーザの身体の局所的基準ノードに対する前記モバイルデバイスの移動を、前記モバイルデバイスと、前記局所的基準ノードの役割を果たし前記ユーザの身体の一部分とコロケートされた第2のデバイスとの間の1つまたは複数の無線周波数(RF)リンクに少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイスと前記第2のデバイスとの間の距離の1つまたは複数の特性を測定することによって検出する」こととは、「前記入力ジェスチャにより生じた、前記モバイルデバイスの移動を、前記モバイルデバイスと、前記局所的ノードの役割を果たし前記ユーザの身体の一部分とコロケートされた第2のデバイスとの間の距離の1つまたは複数の特性を測定することによって検出する」ことである点で共通する。

c 本願発明の「慣性センサ」は、本願明細書(翻訳文)の【0013】における「慣性動きセンサ(たとえば、加速度計、磁力計など)」の記載によれば、加速度計を含むから、引用発明の「加速度センサ」は、本願発明の「慣性センサ」に含まれる。
ここで、本願発明の「モバイルデバイスによってサポートされる」ことに関し、本願明細書(翻訳文)の【0003】には、「モバイル通信デバイスは、いくつかのアプリケーションをサポートするために様々なセンサを含み得る。一般に、必ずしも必要ではないが、そのようなセンサは、物理現象をアナログおよび/またはデジタル電気信号に変換し得、(たとえば、スタンドアロン、外部などの)モバイル通信デバイスに組み込まれる(たとえば、内蔵など)か、または場合によってはモバイル通信デバイスによってサポートされ得る。たとえば、これらのセンサは、慣性または動きセンサ(たとえば、加速度計、ジャイロスコープ、コンパス、磁力計、比重計など)、周囲環境センサ(たとえば、周辺光検出器、近接センサ、振動センサ、温度計、カメラなど)、あるいはモバイル通信デバイスの様々な状態を測定することが可能な他のセンサを含み得る。」と記載されており、本願明細書(翻訳文)の【0004】には、「センサベースモバイル通信技術における一般的で急速に増大する市場傾向は、モバイル通信デバイスの動きの1つまたは複数の態様を認識し、そのような態様を、たとえば、動きベースまたは動き制御式のゲーム、ウェブページナビゲーション、イメージブラウジングなどにおける入力形態(たとえば、タスク指向(task-oriented)または報知的(informative)ハンドジェスチャー、リスト(wrist)ベースティルトジェスチャーなど)として使用し得る、アプリケーションを含む。一般に、必ずしも必要ではないが、これらの一般的な動きベースアプリケーションは、たとえば、モバイル通信デバイスが受ける重力の方向、空間配向、線形運動および/または角運動、および/または他の力または場を検知および/または測定し得る、1つまたは複数の内蔵慣性または動きセンサ(たとえば、加速度計、磁力計など)を利用する。」と記載されている。
上記【0003】の「センサ」が「モバイル通信デバイスによってサポートされ得る」旨の記載は、モバイル通信デバイスが加速度計などのセンサを含み得ることに関して説明を加えるものであり、また、上記【0004】の記載によれば、「センサ」が、モバイル通信デバイスの動き認識のために用いられることは明らかである。加速度計によりモバイル通信デバイスの動きを認識するためには、加速度計がモバイル通信デバイス上に設けられる必要があることを踏まえれば、本願発明の「慣性センサ」が「モバイルデバイスによってサポートされる」ことは、モバイルデバイスに搭載されることを含むと解されるから、引用発明の「搭載される」ことは、本願発明の「サポートされる」ことに含まれる。
そして、本願発明の「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値」は、「慣性センサ」、「周囲環境センサ」、またはそれらの任意の組合せのいずれであるのか、さらに、センサ測定値の個数が1つまたは複数であるのかについて任意選択的な特定がなされているから、引用発明の「前記親機に搭載される加速度センサが測定した値」は、本願発明の「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値」に含まれる。
さらに、上記bの検討を踏まえれば、引用発明の「距離」は、本願発明の「前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性」に含まれる。
また、引用発明の「制御定義用メモリから動作入力情報を抽出」することは、「加速度センサが測定した値」および「距離測定手段が測定した距離」の両者に応じてなされるものであるから、動作入力情報の上記抽出にあたって、「加速度センサが測定した値」と「離測定手段が測定した距離」を統合すると言える。
そうすると、引用発明の「前記親機に搭載される加速度センサが測定した値、および前記親機に含まれる距離測定手段が測定した距離に応じて制御定義用メモリから動作入力情報を抽出」することと、本願発明の「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値を少なくとも部分的に無視することによって、前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性を前記1つまたは複数のセンサ測定値に統合する」こととは、「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値に前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性を統合する」ことである点で共通する。

d 引用発明の「CPU」は、「抽出した動作入力情報」に従って処理を実行したり、文字を入力したりするものであるから、「CPU」が「プログラム」の実行により処理を行うものであることを考慮すると、「抽出した動作入力情報」に従って、プログラムを起動(実行)したり、実行されているプログラムに対する入力として文字等を入力したりすること、すなわち、「プログラム」に作用することは明らかである。
また、引用発明の上記「プログラム」は、「携帯端末装置」の「親機」で実行されるから、該「親機」上にホスティングされているということができる。
そして、引用発明の上記「抽出した動作入力情報」は、「前記親機に含まれる距離測定手段が測定した距離に応じて制御定義用メモリから」抽出したものであり、該測定した距離に少なくとも部分的に基づくから、上記bの検討を踏まえれば、「前記入力ジェスチャにより生じ前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性によって検出された、前記モバイルデバイスの前記移動に少なくとも部分的に基づ」くものと言える。
そうすると、引用発明の「抽出した動作入力情報に従ってCPUが処理を実行したり、文字を入力したりする」ことと、本願発明の「前記入力ジェスチャにより生じ前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性によって検出された、前記モバイルデバイスの前記移動に少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイス上にホスティングされた1つまたは複数のアプリケーションに作用する」こととは、「前記入力ジェスチャにより生じ前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性によって検出された、前記モバイルデバイスの前記移動に少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイス上にホスティングされた1つまたは複数のプログラムに作用する」ことである点で共通する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「モバイルデバイスを移動させることによって前記モバイルデバイスに入力ジェスチャを提供するステップと、
前記入力ジェスチャにより生じた、前記モバイルデバイスの移動を、前記モバイルデバイスと、前記局所的ノードの役割を果たし前記ユーザの身体の一部分とコロケートされた第2のデバイスとの間の距離の1つまたは複数の特性を測定することによって検出するステップと、
前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値に前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性を統合するステップと、
前記入力ジェスチャにより生じ前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性によって検出された、前記モバイルデバイスの前記移動に少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイス上にホスティングされた1つまたは複数のプログラムに作用するステップと
を含む方法。」

(相違点1)
一致点の「前記モバイルデバイス」と、「前記ユーザの身体の一部分とコロケートされた第2のデバイスとの間の距離の1つまたは複数の特性を測定する」ことに関し、本願発明では、「1つまたは複数の無線周波数(RF)リンクに少なくとも部分的に基づいて」測定するのに対し、引用発明では、「無線周波数(RF)リンク」に基づいて測定することについて明示されていない点。

(相違点2)
一致点の「モバイルデバイスの移動」の「検出」に関して、本願発明では、「ユーザの身体の局所的基準ノードに対する前記モバイルデバイスの移動」を検出するのに対して、引用発明では、子機を基準ノードとして、子機に対する動きを検出することについて明示されていない点。

(相違点3)
一致点の「1つまたは複数のセンサ測定値に前記距離の前記1つまたは複数の測定された特性を統合する」ことに関して、本願発明では、「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値を少なくとも部分的に無視することによって、」統合するのに対し、引用発明では、「センサ測定値を少なくとも部分的に無視することによって、」統合することについて明示されていない点。

(相違点4)
一致点の「前記モバイルデバイス上にホスティングされた1つまたは複数のプログラム」が、本願発明では、「アプリケーション」であるのに対し、引用発明では、「アプリケーション」であることについて明示されていない点。

4.検討
上記相違点1について検討すると、
引用発明の親機と子機とは無線接続されるものであり、無線周波数リンクに基づいて距離を測定する技術は周知(例えば、特開2005-301428号公報の【0069】?【0071】、【0073】参照)であるから、引用発明の距離の測定を、親機と子機との間の無線周波数リンクに基づいて行うことは当業者が適宜なし得る設計変更に過ぎない。
そうすると、上記「3.対比」の項のa及びbで検討したように、引用発明の「親機」は本願発明の「モバイルデバイス」に含まれ、引用発明の「子機」が本願発明の「第2のデバイス」に相当すること、また、本願発明の「距離の1つまたは複数の特性」には、「距離」そのものが含まれることを踏まえれば、本願発明のように、「前記モバイルデバイス」と、「前記ユーザの身体の一部分とコロケートされた第2のデバイスとの間の1つまたは複数の無線周波数(RF)リンクに少なくとも部分的に基づいて、前記モバイルデバイスと前記第2のデバイスとの間の距離の1つまたは複数の特性を測定する」ことは格別困難な事項とは言えない。

上記相違点2について検討すると、
引用発明の「親機」の動きの検出に関して、子機との距離を測定する場合に、「親機」と「子機」のいずれかが距離測定の基準となることは明らかであるから、引用発明の「子機」を基準と位置付け、親機の距離を測定し、子機に対する親機の動きを検出することは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
そうすると、上記「3.対比」の項のbで検討したように、引用発明の「子機」は、「ユーザの身体の局所的ノード」と言えることを踏まえれば、引用発明の「子機」を、本願発明のように「局所的基準ノード」とし、「ユーザの身体の局所的基準ノードに対する前記モバイルデバイスの移動」を検出することは格別困難な事項とは言えない。

上記相違点3について検討すると、
引用発明の「携帯端末装置」の「親機」は、使用者が携帯するものであり、その際に歩行、走行、電車などによる移動がなされ得るものであり、その場合、手話、ジェスチャーなどの動きを検出するために加速度センサを用いるから、上記移動による加速度成分がジェスチャー等の検出の妨げとなることは当業者にとって自明である。
そして、上記「2.引用発明と技術事項」の項中の「(2)技術事項」の項で述べたように、『加速度データによるジェスチャの認識処理において、「歩行中」、「走行中」または「電車で移動中」等のような応答者の移動を示す場合には、上記移動内容において典型的な加速度データを予めキャンセルすることにより、ジェスチャ分類の精度を向上すること。』は公知の技術事項である。
そうしてみると、引用発明において、ジェスチャーなどの動きを検出する際に、移動による加速度成分が該検出の妨げとならないようにするために、上記技術事項を適用し、「歩行中」、「走行中」または「電車で移動中」等のような応答者の移動を示す場合には、上記移動内容において典型的な加速度データを予めキャンセルすることは格別困難な事項とは言えない。
ここで、本願発明の「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値を少なくとも部分的に無視すること」は、部分的に無視するセンサ測定値のセンサが、「慣性センサ」、「周囲環境センサ」、またはそれらの任意の組合せのいずれのであるか、さらに、センサ測定値の個数が1つまたは複数であるかについて任意選択的な特定がなされているから、「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサを含む1つのセンサ測定値を少なくとも部分的に無視すること」を含むものである。
また、引用発明のジェスチャーなどの動きの検出において、上記移動内容において典型的な加速度データを予めキャンセルすることは、引用発明の加速度センサの測定した値の一部分である上記「移動内容において典型的な加速度データ」を無視することに他ならず、「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサを含む1つのセンサ測定値を少なくとも部分的に無視すること」と言える。
したがって、本願発明のように、「前記モバイルデバイスによってサポートされる慣性センサ、前記モバイルデバイスによってサポートされる周囲環境センサ、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数のセンサ測定値を少なくとも部分的に無視することによって、」統合することは、当業者が容易に想到し得たものである。

上記相違点4について検討すると、
携帯端末装置において、アプリケーションプログラムが文字等の入力を受け、処理を行うことは周知の技術であるので、引用発明の「プログラム」を「アプリケーション」とすることは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明及び引用例2に記載された技術事項及び周知技術から容易に予測できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて周知技術を勘案して当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-30 
結審通知日 2016-04-04 
審決日 2016-04-22 
出願番号 特願2013-515523(P2013-515523)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保田 亨介  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 坂本 聡生
林 毅
発明の名称 RF測距支援局所的動き検知  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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