ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G |
---|---|
管理番号 | 1319544 |
審判番号 | 不服2015-18819 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-19 |
確定日 | 2016-09-13 |
事件の表示 | 特願2011-500071「製造品目を識別、証明、追尾及び追跡するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月24日国際公開、WO2009/115207、平成23年 6月 9日国内公表、特表2011-517437〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、2009年3月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年3月17日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成22年9月17日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成22年11月1日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成22年11月18日に手続補正書が提出され、平成25年6月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成26年1月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年7月31日付けで再び拒絶理由が通知され、これに対して平成27年2月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年6月15日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年10月19日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、平成27年11月24日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。 2.本件発明 本件出願の請求項1ないし11に係る発明は、願書に最初に添付した明細書及び図面並びに平成27年2月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 各々が2又はそれ以上のユニットを収容するのに適した容器内の製造品目を識別する方法であって、 個々のユニットを一意のユニット識別子に関連付けるステップと、 個々のユニットを一意に識別するステップと、 個々の容器に収容すべき2又はそれ以上のユニットを割り当てるステップと、 個々の容器を一意に識別するステップと、 前記容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲を個々の容器ごとに決定するステップと、 個々の容器の容器識別子をデータベースに記憶するステップと、 を含み、個々の容器識別子が、前記容器に割り当てられたユニットの前記ユニット識別子を2又はそれ以上含んだ前記1又はそれ以上の範囲と前記データベース内で連結される、 こと特徴とする方法。」 3.刊行物に記載された発明 (1)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2005/115890号(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 a)「[0044] まず、図1を参照して本発明の第1実施例における製品管理システムの概略構成を説明する。本例の製品管理システムは、物流対象となる製品の生産を行う遠隔地の生産工場2に設置された生産管理システム2aと、当該生産工場2で生産された製品を入庫格納し、これを出荷まで管理する管理倉庫3に設置された管理倉庫システム3aと、生産管理システム2aに発注指示を行なったり、管理倉庫システム3aに出荷指示等を行なう管理部署1に設置された基幹システム1aとを有している。」(段落[0044]) b)「[0048] また生産管理システム2aは、自身の保有する制御プログラムの機能として、生産ラインで一定数の製品Pが出荷される毎に、読取処理装置58の読取機能及び通信機能を利用して、生産工場番号,生産ライン番号,製品ロット番号,生産日等の各々の製品Pの特徴を示す製品情報を含み、さらに前記製品ロット番号と、一乃至複数の製品Sを収容梱包するカートンCを識別特定するカートンID情報と、管理倉庫3への出荷の際に前記一乃至複数のカートンCを貨物単位で包装するケースSを識別特定する貨物識別情報とを紐付け(関連付け)、さらに好ましくは、これらの情報から輸出に際し必要な出荷品目リスト59や送り状であるインボイス60などの出荷書類を作成し、この出荷書類に関する書類情報を紐付けて、これを記憶媒体の一部又は全部に区画形成された生産情報記憶手段(図示せず)に事前出荷情報として記憶させる事前出荷情報作成手段11と、前記事前出荷情報を出荷先である管理倉庫3の管理倉庫システム3aに通信手段51を介して転送する事前出荷情報転送手段12と、前記製品Sを特定するロット番号情報,カートンID情報,貨物識別情報のいずれかを担持したバーコード52をラベル53の表面に印刷させるために、生産管理システム2aに従属する任意のバーコード印刷機54に印刷指令を与えるバーコード印刷指令手段13とを備えている。」(段落[0048]) c)「[0057] これとは別に、前記バーコード印刷指令手段13は、固有のカートンID情報に対応したバーコード52と、固有の貨物識別情報に対応したバーコード52をラベル53に印刷出力させており、カートンID情報を含むバーコード52付きのラベル53が、予め個々のカートンCに貼付されるとともに、貨物識別情報を含むバーコード52付きのラベルが、予め個々のケースSに貼付されている。なお、個々のカートンCやケースSの形状については特に限定されない。」(段落[0057] ) d)「[0058] 次いで、一乃至複数の製品PをカートンCに梱包する際に、予めそのカートンCの外部に貼り付けられたラベル53の表面と、当該カートンCに梱包される製品Pの外部に貼り付けられたラベル53の表面を、読取処理装置58でスキャンすることにより、バーコード52に含まれるカートンID情報と製品ロット番号が生産管理システム2aにデータ転送される。生産管理システム2aの事前出荷情報作成手段11は、読取処理装置58で読み取ったカートンID情報と製品ロット番号を関連付けて記憶格納する。その後、生産出荷に際して、一乃至複数のカートンCをケースSに梱包する際には、予めそのケースSの外部に貼り付けられたラベル53の表面と、当該ケースSに梱包される製品Pの外部に貼り付けられたラベル53の表面を、読取処理装置58でスキャンすることにより、バーコード52に含まれる貨物識別情報とカートンID情報が生産管理システム2aにデータ転送される。事前出荷情報作成手段11は、前記製品ロット番号に加えて、読取処理装置58で読み取った貨物識別情報とカートンID情報を関連付けて記憶格納する。」(段落[0058]) e)「[0059] これを図2に基づき具体的に説明すると、先ず生産ラインで特定のカートンCに複数の製品Pを梱包する際に、各製品Pに設けたバーコード52と、これを梱包するカートンCに設けたバーコード52を、順に読取処理装置58でスキャンする。ここで、例えば当該カートンCのカートンID情報が「MA300004」なる英文字と数字の組み合わせであるとすると、このカートンID情報「MA300004」と各製品Pの個々の製品ロット番号が、事前出荷情報作成手段11で関連付けられる。さらに、生産出荷に際して、「MA300001」?「MA300004」なるカートンID情報を持つ4つのカートンCを、1つの貨物単位であるケースSに梱包する場合は、これらのカートンCに設けたバーコード52と、これを梱包するケースSに設けたバーコード52を、順に読取処理装置58でなぞってスキャンする。ケースSに設けたバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)が、例えば「01」なる数字であるとすると、事前出荷情報作成手段11は、この「01」なる貨物識別情報と、「MA300001」?「MA300004」なるカートンID情報を関連付けて記憶格納する。こうすることで、貨物識別情報,カートンID情報,製品ロット番号情報が相互に紐付けされ、例えば貨物識別情報やカートンID情報を検索条件に指定すれば、それに関連付けられた製品ロット情報から該当する製品情報を抽出して、梱包されている個々の製品Pの製品情報や数量などを、いちいち開封することなく簡単に取得できるようになる。」(段落[0059]) f)「[0060] ここで図2に示すように、例えば「01」?「03」なる貨物識別情報を個々に持つ3個のケースSを、管理倉庫3に輸出出荷する場合を考えると、事前出荷情報作成手段11は、これらの出荷対象である3個のケースSに関して、出荷品目リスト59やインボイス60などの出荷書類を作成し、この出荷書類に関する書類情報を前記貨物識別情報「01」?「03」に紐付けて、これらを事前出荷情報として記憶する。つまり事前出荷情報は、相互に関連付けられた貨物識別情報,書類情報,カートンID情報,製品ロット番号情報と、当該製品ロット番号を含む製品情報を含んでいる。」(段落[0060]) (2)上記(1)及び図面の記載より分かること イ)上記(1)a)、b)、e)及びf)並びに[図1]及び[図2]の記載によれば、製品管理システムが有する生産管理システム2aは、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの製品情報等を、ケースSを開封することなく取得することを可能とすることが分かる。また、(1)b)、e)及びf)によれば、ケースSを開封することなく取得することが可能となる、ケースSに梱包されている生産された個々の製品Pの製品情報が、生産管理システム2aの備える事前出荷情報作成手段11が作成し、個々のケースの貨物識別情報に紐付けて記憶した、ケース出荷品目リスト59を含む出荷書類に関する書類情報を含むことは明らかである。してみると、製品管理システムが有する生産管理システム2aは、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を含む製品情報等を取得することを可能とすることが分かる。 ロ)上記イ)について、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を含む製品情報等を取得する結果、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法が使用可能となることが明らかである。 ハ)上記(1)b)、c)及びd)並びに[図2]の記載を、上記ロ)とあわせてみると、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で使用可能となる、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法は、個々のカートンCに、個々のカートンCを識別特定するカートンID情報を含むバーコード52付きのラベル53を貼付すること、及び、個々のカートンCに貼付されたラベル53の表面の、個々のカートンCを識別特定するカートンID情報を含むバーコード52を読取処理装置58でスキャンすることを、それぞれ含むことが分かる。 ニ)上記(1)d)及び[図2]の記載を、上記ロ)とあわせてみると、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で使用可能となる、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法は、複数のカートンCを個々のケースSに梱包することを含むことが分かる。 ホ)上記(1)c)及びe)並びに[図2]の記載を、上記ロ)とあわせてみると、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で使用可能となる、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法は、個々のケースSに貨物識別情報(ケースマーク)を含むバーコード52付きのラベル53を貼付するとともに、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面の貨物識別情報(ケースマーク)を含むバーコード52を読取処理装置58でスキャンすることを含むことが分かる。 ヘ)上記(1)d)及びe)並びに[図2]の記載を、上記ロ)とあわせてみると、「MA300001」?「MA300004」は連続番号といえるから、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で使用可能となる、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法は、個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報について、連続番号を割り当て、それら個々のカートンID情報のすべてを記憶格納するよう、個々のケースSごとに定めることを含むことが分かる。 ト)上記(1)d)及びe)並びに[図2]の記載を、上記ロ)及びホ)とあわせてみると、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で使用可能となる、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法は、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面の貨物識別情報(ケースマーク)を含むバーコード52を読取処理装置58でスキャンし、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)を生産管理システム2aにデータ転送し、記憶格納することを含むことが分かる。ここで、技術常識をあわせてみると、貨物識別情報(ケースマーク)がデータベースに記憶格納されることは明らかである。してみると、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で使用可能となる、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法は、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面の貨物識別情報(ケースマーク)をデータベースに記憶格納することを含むことが分かる。 チ)上記(1)d)及びe)並びに[図2]の記載を、上記ロ)、ハ)、ホ)、ヘ)及びト)とあわせてみると、製品管理システムが有する生産管理システム2aの下で使用可能となる、複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法においては、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)が、個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報であって、連続番号が割り当てられ、それら個々のカートンID情報のすべてが記憶格納されるよう、個々のケースSごとに定められた個々のカートンID情報のすべてと、関連付けられてデータベースに記憶格納されることが分かる。 (3)刊行物1に記載された発明 したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されていると認める。 <刊行物1に記載された発明> 「複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法であって、 個々のカートンCに、個々のカートンCを識別特定するカートンID情報を含むバーコード52付きのラベル53を貼付することと、 個々のカートンCに貼付されたラベル53の表面の、個々のカートンCを識別特定するカートンID情報を含むバーコード52を読取処理装置58でスキャンすることと、 複数のカートンCを個々のケースSに梱包することと、 個々のケースSに貨物識別情報(ケースマーク)を含むバーコード52付きのラベル53を貼付するとともに、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面の貨物識別情報(ケースマーク)を含むバーコード52を読取処理装置58でスキャンすることと、 個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報について、連続番号を割り当て、それら個々のカートンID情報のすべてを記憶格納するよう、個々のケースSごとに定めることと、 個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)をデータベースに記憶格納することと、 を含み、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)が、個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報であって、連続番号が割り当てられ、それら個々のカートンID情報のすべてが記憶格納されるよう、個々のケースSごとに定められた個々のカートンID情報のすべてと、関連付けられてデータベースに記憶格納される、 方法。」 4.対比・判断 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明における「カートンC」、「梱包する」、「ケースS」、「生産された個々の製品Pの品目」、「カートンID情報」、「貨物識別情報(ケースマーク)」及び「データベース」は、その技術的意義からみて、それぞれ、本件発明における「ユニット」、「収容する」、「容器」、「製造品目」、「ユニット識別子」、「容器識別子」及び「データベース」に相当する。 また、前述の相当関係を踏まえると、刊行物1に記載された発明における「複数のカートンCを梱包する個々のケースSに梱包されている、生産された個々の製品Pの品目を識別する方法」、「個々のカートンCに、個々のカートンCを識別特定するカートンID情報を含むバーコード52付きのラベル53を貼付すること」、「個々のカートンCに貼付されたラベル53の表面の、個々のカートンCを識別特定するカートンID情報を含むバーコード52を読取処理装置58でスキャンすること」、「複数のカートンCを個々のケースSに梱包すること」、「個々のケースSに貨物識別情報(ケースマーク)を含むバーコード52付きのラベル53を貼付するとともに、個々のケースSに貼付されたラベル53の表面の貨物識別情報(ケースマーク)を含むバーコード52を読取処理装置58でスキャンすること」及び「個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)をデータベースに記憶格納すること」は、その技術的意義からみて、それぞれ、本件発明における「各々が2又はそれ以上のユニットを収容するのに適した容器内の製造品目を識別する方法」、「個々のユニットを一意のユニット識別子に関連付けるステップ」、「個々のユニットを一意に識別するステップ」、「個々の容器に収容すべき2又はそれ以上のユニットを割り当てるステップ」、「個々の容器を一意に識別するステップ」及び「個々の容器の容器識別子をデータベースに記憶するステップ」に相当する。 そして、前述の相当関係を踏まえると、刊行物1に記載された発明における「個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報について、連続番号を割り当て、それら個々のカートンID情報のすべてを記憶格納するよう、個々のケースSごとに定めること」は、その技術的意義からみて、「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合を個々の容器ごとに決定するステップ」という限りにおいて、本件発明における「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲を個々の容器ごとに決定するステップ」に相当する。 また、前述の相当関係を踏まえると、刊行物1に記載された発明における「個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)が、個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報であって、連続番号が割り当てられ、それら個々のカートンID情報のすべてが記憶格納されるよう、個々のケースSごとに定められた個々のカートンID情報のすべてと、関連付けられてデータベースに記憶格納される」は、その技術的意義からみて、「個々の容器識別子が、容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合とデータベース内で連結される」という限りにおいて、「個々の容器識別子が、容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲とデータベース内で連結される」に相当する。 してみると、本件発明と刊行物1に記載された発明とは、 「各々が2又はそれ以上のユニットを収容するのに適した容器内の製造品目を識別する方法であって、 個々のユニットを一意のユニット識別子に関連付けるステップと、 個々のユニットを一意に識別するステップと、 個々の容器に収容すべき2又はそれ以上のユニットを割り当てるステップと、 個々の容器を一意に識別するステップと、 前記容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合を個々の容器ごとに決定するステップと、 個々の容器の容器識別子をデータベースに記憶するステップと、 を含み、個々の容器識別子が、前記容器に割り当てられたユニットの前記ユニット識別子を2又はそれ以上含んだ前記1又はそれ以上の集合と前記データベース内で連結される、 方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合を個々の容器ごとに決定するステップ」及び「個々の容器識別子が、前記容器に割り当てられたユニットの前記ユニット識別子を2又はそれ以上含んだ前記1又はそれ以上の集合と前記データベース内で連結される」に関し、 本件発明においては、「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲を個々の容器ごとに決定するステップ」及び「個々の容器識別子が、容器に割り当てられたユニットの前記ユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲とデータベース内で連結される」であるのに対し、 刊行物1に記載された発明においては、「個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報について、連続番号を割り当て、それら個々のカートンID情報のすべてを記憶格納するよう、個々のケースSごとに定めること」及び「個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)が、個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報であって、連続番号が割り当てられ、それら個々のカートンID情報のすべてが記憶格納されるよう、個々のケースSごとに定められた個々のカートンID情報のすべてと、関連付けられてデータベースに記憶格納される」である点(以下、「相違点」という。)。 上記相違点について検討する。 ここで、本件発明における「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲を個々の容器ごとに決定するステップ」及び「個々の容器識別子が、容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲とデータベース内で連結される」なる発明特定事項は、特に「ユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲」なる記載が「範囲」という一般的かつ抽象的な用語を用いて記載されているため、それぞれ具体的にいかなる技術的内容を意味するものであるかについて、本件出願の明細書の記載等を考慮しつつ解釈する必要がある。 そこで、本件出願の明細書における発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の段落【0055】における「本発明では、必要なデータ記憶量が著しく削減される。」との記載、及び、上記の「範囲」なる用語について詳述されている、発明の詳細な説明の段落【0059】における「いずれのカートンが出荷ケースに割り当てられるかに応じて、割り当てられるカートンの生産細目の範囲が定められる」なる記載を、平成26年1月6日に提出された意見書の「3.3 理由3(第29条第2項違反)について」における「本願請求項1に係る発明の1つの特徴は・・・・・中略・・・・・当該特徴は、1つ1つのユニット識別子が個々の容器識別子に個別に連結される(対になる)ものではなく、ユニット識別子の範囲が個々の容器識別子に連結されるものであります。このことは、当初明細書の段落[0059]に記載の表に明確に示されています。段落[0059]に記載の表では、出荷ケース識別子のコピーを個々のカウンタ値と共に記憶するのではなく、個々の出荷ケース識別子は、カウンタ値の1又はそれ以上の範囲に関連付けられています。 容器識別子をユニット識別子の範囲に関連付けることで、コンテナ識別子を記憶しなければならない回数を減らすことができ、それにより、システム全体の必要なデータ記憶容量を減らすことができます。」なる記載とあわせて参酌すると、 本件発明における「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲を個々の容器ごとに決定するステップ」及び「個々の容器識別子が、容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲とデータベース内で連結される」なる発明特定事項は、それぞれ、具体的には、 「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合について、当該集合それぞれに含まれる個々のユニット識別子のすべてではなく、それら個々のユニット識別子に連続番号を割り当て、それら連続番号のうちの始端と終端が割り当てられたユニット識別子のみを記憶するよう、個々の容器ごとに決定する」及び「個々の容器識別子が、容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合であって、当該集合それぞれに含まれる個々のユニット識別子のすべてではなく、それら個々のユニット識別子に連続番号を割り当て、それら連続番号のうちの始端と終端が割り当てられたユニット識別子のみを記憶するよう、個々の容器ごとに決定された、1又はそれ以上の集合と、データベース内で連結される」を意味するものと解される。 してみると、上記相違点は、実質的に、以下の点に集約できる。 「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子」であって、「それら個々のユニット識別子に連続番号を割り当て」たものを「2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合」について、本件発明においては、「それら連続番号のうちの始端と終端が割り当てられたユニット識別子のみを記憶するよう、個々の容器ごとに決定する」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、「それら個々のカートンID情報のすべてを記憶格納するよう、個々のケースSごとに定める」点。 この点について検討すると、原査定において示されているように、データ処理技術一般において、「記憶するデータを削減するため」という課題は、本件出願の優先日前に周知の課題であり、該課題を解決すべく、「連続番号が割り当てられた複数の識別情報を特定の情報に関連付ける際、それら連続番号のうちの始端と終端が割り当てられた識別情報のみを記憶・格納すること」は、本件出願の優先日前に周知の技術(例えば、原査定において例証のために示された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-69247号公報の段落【0010】及び特開2007-18355号公報の段落【0056】等参照。以下、「周知技術」という。)である。 そして、このようなデータ処理技術一般における周知技術は、データの処理及び管理を伴う、刊行物1に記載された発明の属する生産管理の技術分野におけるデータ処理においても適用可能なものであり、その適用を妨げる特段の事情も認められない。 これに関連して、請求人は、平成27年11月24日に提出された審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)(以下、「手続補正書(方式)」という。)において、「本願発明が属する技術分野は、生産ライン管理、すなわち、生産管理、製品の追跡及び証明であり、当業者は、本願発明のように、非常に膨大な量生産された製品に対する証明システムを実現するという技術的課題(当初明細書の段落[0008]等参照)を解決する手段として、技術分野の共通性のない、引用文献2に記載の「車両用ナビゲーション装置」及び引用文献3に記載の「回収代行システム」に係る技術を適用することを、容易に想到することはできないと思料する。」と主張している(ここでの引用文献2及び引用文献3は、それぞれ、当該周知技術の例証として前記した特開平8-69247号公報及び特開2007-18355号公報である。)。しかし、当該周知技術は、データ処理技術一般における技術であって、適用対象となる個別の技術がデータの処理及び管理を伴うものである以上、当該個別の技術そのものについて特段の事情がない限り、適用対象となる個別の技術の属する技術分野にかかわらず適用可能なものであるといえる。してみると、例証として前記した各文献において、当該周知技術の例証として前記した各刊行物に記載の発明が、単に刊行物1に記載された発明とは異なる技術分野に属することを主たる根拠とする請求人による当該主張は、十分な根拠があるものということはできず、採用することはできない。 してみると、刊行物1に記載された発明において、周知技術を適用して、「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子」であって、「それら個々のユニット識別子に連続番号を割り当て」たものを「2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の集合」について、「それら個々のカートンID情報のすべてを記憶格納するよう、個々のケースSごとに定める」ことに替えて、「それら連続番号のうちの始端と終端が割り当てられたユニット識別子のみを記憶するよう、個々の容器ごとに決定する」ようにして、 刊行物1に記載された発明における「個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報について、連続番号を割り当て、それら個々のカートンID情報のすべてを記憶格納するよう、個々のケースSごとに定めること」及び「個々のケースSに貼付されたラベル53の表面のバーコード52に含まれる貨物識別情報(ケースマーク)が、個々のケースSに梱包される複数のカートンCのそれぞれを識別特定する個々のカートンID情報であって、連続番号が割り当てられ、それら個々のカートンID情報のすべてが記憶格納されるよう、個々のケースSごとに定められた個々のカートンID情報のすべてと、関連付けられてデータベースに記憶格納される」を、それぞれ、 「容器に割り当てられたユニットのユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲を個々の容器ごとに決定するステップ」及び「個々の容器識別子が、容器に割り当てられたユニットの前記ユニット識別子を2又はそれ以上含んだ1又はそれ以上の範囲とデータベース内で連結される」として、上記相違点に係る本件発明の発明特定事項とすることは、 当業者であれば容易に想到できたことである。 なお、請求人は、手続補正書(方式)において、「引用文献1に記載されたタイプのシステムは、種類が多い製品に対して、非常に適切に働くものであるが、当該システムを、本願発明のように、同一の種類の、非常に大量に生産された製品向けに、特に、複数のケースにおける複数のたばこの複数のカートン向けに実装することは、現実的に可能ではない。 引用文献1に記載の製品管理方法の障害(本願発明のように構成しようとする際の問題点)は、記憶すべきデータの量、および、データ記憶を行うために送信されるデータの量である。」と主張する(ここでの引用文献1は、審決における刊行物1である。)。しかし、請求人は、本件発明の実施例に基づいて主張するにとどまり、刊行物1に記載された発明を「同一の種類の、非常に大量に生産された製品向けに、特に、複数のケースにおける複数のたばこの複数のカートン向けに実装することは、現実的に可能ではない」ことの具体的な理由を述べていない。加えて、本件出願の請求項1には、「同一の種類の、非常に大量に生産された製品向けに、特に、複数のケースにおける複数のたばこの複数のカートン向けに実装すること」について何ら記載されていないから、請求人の当該主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではないので、請求人による当該主張は採用できない。 そして、本件発明は、全体としてみても、刊行物1に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 5.むすび 以上のとおり、本件発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-03-30 |
結審通知日 | 2016-04-04 |
審決日 | 2016-04-22 |
出願番号 | 特願2011-500071(P2011-500071) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65G)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土井 伸次、八板 直人、大野 明良 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
嶋田 研司 槙原 進 |
発明の名称 | 製造品目を識別、証明、追尾及び追跡するための方法及び装置 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 工藤 嘉晃 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 西島 孝喜 |