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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1319767
審判番号 不服2015-2960  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-17 
確定日 2016-10-17 
事件の表示 特願2010-509515「ビデオ電気光学ディスプレイを駆動する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月27日国際公開、WO2008/144715、平成22年 8月19日国内公表、特表2010-528340、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願の手続の経緯は、次のとおり。
出願:平成20年5月21日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理 2007年5月21日(「優先日」という。)、米国)を伴う国際出願)
国内書面(翻訳文):平成21年11月20日
拒絶理由:平成24年4月18日
手続補正:平成24年10月22日
最後の拒絶理由:平成25年3月27日
手続補正(「補正1」という。):平成25年9月27日
最後の拒絶理由:平成26年3月27日
手続補正:平成26年9月30日
補正却下の決定:平成26年10月20日
(平成26年9月30日付けの手続補正について)
拒絶査定:平成26年10月20日
(平成26年3月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-3による)
拒絶査定不服審判:平成27年2月17日
補正書(「補正2」という。):平成27年2月17日
当審における拒絶理由:平成28年3月2日
補正書(「本件補正」という。):平成28年9月1日

第2 本件補正の適否について
本件補正により、本件補正後の請求項1、7では、電圧ドライバーが「該各ピクセルにおける該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと線形的に変化するように」駆動電圧を制御する点が発明特定事項とされた。
この点については、平成21年11月20日提出の国内書面(明細書の翻訳文)の段落 【0021】に「ディスプレイに用いられる電気光学媒体は、駆動されるとき、電気光学特性を各フレームの駆動の間ずっと連続的に変化させる。電気光学媒体は、駆動されるとき、その電気光学特性を各フレームの駆動の間ずっと実質的に直線的に変化させる。」と記載されていることから、上記発明特定事項に係る本件補正は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、本件補正に係る他の補正についても、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである(同法第184条の12第2項参照。)。

第3 本願発明
ア 本件補正後の本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線は、補正1に対する、本件補正による補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
双安定性ディスプレイ媒体と電圧ドライバーとを備える双安定性電気光学ディスプレイであって、該双安定性電気光学ディスプレイは、複数のピクセルを備えており、
該双安定性電気光学ディスプレイは、
該電圧ドライバーが、該双安定性ディスプレイ媒体に駆動電圧を提供することにより、毎秒13フレームから毎秒20フレームのフレームレートでビデオを表示するように該双安定性ディスプレイ媒体を駆動するように構成されていることを特徴とし、
該双安定性電気光学ディスプレイは、アクティブマトリクスディスプレイであり、
該電圧ドライバーは、該複数のピクセルのうち該ビデオの特定のフレーム中に状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと線形的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成され、
該双安定性ディスプレイ媒体は、電気泳動材料を備えており、該電気泳動材料は、流体の中に配置される複数の荷電粒子であって、電界の影響下にある該流体を通って移動する能力がある複数の荷電粒子を備えている、ディスプレイ。
【請求項2】
前記荷電粒子および前記流体は、複数のカプセルまたはマイクロセルの中に封じ込められている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記荷電粒子および前記流体は、高分子材料を備えている連続相によって囲まれた複数の分離した液滴として存在する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記流体は、気体状である、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
複数のピクセルを備えている双安定性電気光学ディスプレイを駆動してビデオを表示する方法であって、該双安定性電気光学ディスプレイは、双安定性電気光学媒体と電圧ドライバーとを備え、該方法は、
駆動電圧を該双安定性電気光学媒体に提供することにより、該電圧ドライバーが、該双安定性電気光学ディスプレイを毎秒13フレームから毎秒20フレームのフレームレート-で駆動することを包含し、
該双安定性電気光学ディスプレイは、アクティブマトリクスディスプレイであり、
該電圧ドライバーは、
該ディスプレイにおいて用いられる該双安定性電気光学媒体が駆動されるときに、該複数のピクセルのうち該ビデオの特定のフレーム中に状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該双安定性電気光学媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと線形的に変化するように、該駆動電圧を制御するように構成され、
該双安定性電気光学媒体は、電気泳動材料を備えており、該電気泳動材料は、流体の中に配置される複数の荷電粒子であって、電界の影響下にある該流体を通って移動する能力がある複数の荷電粒子を備えている、方法。
【請求項6】
前記荷電粒子および前記流体は、複数のカプセルまたはマイクロセルの中に封じ込められている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記荷電粒子および前記流体は、高分子材料を備えている連続相によって囲まれた複数の分離した液滴として存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記流体は、気体状である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のディスプレイを備える、電子ブックリーダー、ポータブルコンピューター、タブレットコンピューター、セルラ電話、スマートカード、標識、時計、棚札またはフラッシュドライブ。」

イ 補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
双安定性ディスプレイ媒体と電圧ドライバーとを備える双安定性電気光学ディスプレイであって、
該双安定性電気光学ディスプレイは、
該電圧ドライバーが、該双安定性ディスプレイ媒体に駆動電圧を提供することにより、毎秒13フレームから毎秒20フレームのフレームレートでビデオを表示するように該双安定性ディスプレイ媒体を駆動するように構成されていることを特徴とし、
該電圧ドライバーは、該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学特性が該表示されたビデオの部分の各フレームの駆動の間ずっと連続的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成され、該表示されたビデオの該部分は、互いに異なる隣接するフレームを有している、ディスプレイ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
[理由1]
この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1に係る発明において、「各フレームの駆動の間ずっと連続的に変化するように該駆動電圧を制御する」という事項は、どのような駆動方法により達成可能であるのか、発明の詳細な説明に記載されていない。
請求項2?14に係る発明についても同様である。

[理由2]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1に係る発明において、「該表示されたビデオの部分の各フレームの駆動の間・・・」という発明特定事項があるが、「ビデオの部分」が何を指しているのかが明りょうではない。
請求項2?14に係る発明についても同様である。
よって、請求項1?14に係る発明は明確でない。

(2)請求項1に係る発明において、「互いに異なる隣接するフレーム」という発明特定事項があるが、「互いに異なる」とは「フレーム」の何が異なるのかが明りょうではない。
請求項2?14に係る発明についても同様である。
よって、請求項1?14に係る発明は明確でない。

[理由3]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


請求項1?14について
引用文献1:国際公開第2004/107031号
引用文献1(段落【0014】?【0018】及び図3(b)等参照)には、連続的な駆動電圧波形を採用した電気泳動方式等の画像表示装置の発明(以下「引用発明」という。)が記載されており、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
その余の構成については、設計的事項や周知技術・慣用技術等の付加ないし置換等に過ぎない。

2 原査定の理由の判断
(1)原査定の理由の[理由1]について
本件補正により、補正1により補正された請求項1の「該電圧ドライバーは、該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学特性が該表示されたビデオの部分の各フレームの駆動の間ずっと連続的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成され、」は、「該電圧ドライバーは、該複数のピクセルのうち該ビデオの特定のフレーム中に状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと線形的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成され、」と補正された。
そして、明細書の段落 【0021】及び 【0041】には、本件補正後の上記制御を実施するための駆動方法が記載されている。
よって、原査定の理由の[理由1]は、理由のないものとなった。

(2)原査定の理由の[理由2]について
本件補正により、補正1により補正された請求項1の「該表示されたビデオの該部分は、互いに異なる隣接するフレームを有している」は、「該双安定性電気光学ディスプレイは、複数のピクセルを備えており」、「該電圧ドライバーは、該複数のピクセルのうち該ビデオの特定のフレーム中に状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと」「変化するように該駆動電圧を制御するように構成され」、と補正された。
よって、補正1により補正された請求項1の「ビデオの該部分」が「互いに異なる隣接するフレーム」を有するとは、本件補正により、「フレーム中」の「ピクセル」が「状態遷移を受ける」、「ビデオの特定のフレーム」の意味であることが明確になった。
したがって、原査定の理由の[理由2]は、理由のないものとなった。

(3)原査定の理由の[理由3]について
ア 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第2004/107031号(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。
「[0011] 本発明の表示駆動方法の第 1発明及び第 2発明の好適例としては、交番電圧また は片極性電圧が、Sin波の形状で時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化すること、及び、交番電圧または片極性電圧が、台形波の形状または階段波の形状で時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化すること、及び、交番電圧または片極性電圧が、三角波の形状またはランプ波の形状で時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化することがある。いずれの場合も、本発明をさらに好適に実施することができる。」

「[0014] 本発明の第1発明及び第2発明の対象となる画像表示用パネルでは、対向する基 板間に少なくとも2種以上の粒子群または粉流体を封入した表示用パネルに電極を通じてその基板内に電荷が付与される。高電位電極側に向かっては低電位に帯電した粒子群または粉流体がクーロン力などによって引き寄せられ、また低電位電極側に向かっては高電位に帯電した粒子群または粉流体がクーロン力などによって引き寄せられ、それら粒子群または粉流体が電極間を往復運動することにより、画像表示がなされる。従って、粒子群または粉流体が、均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、表示用パネルを設計する必要がある。
[0015] 図1及び図2はそれぞれ本発明の対象となる画像表示用パネルの一例の構成を示す図である。図1に示す本発明の対象となる画像表示用パネルでは、帯電特性及び 光学的反射率の異なる2種類の粒子群(ここでは白色粒子群3Wと黒色粒子群3B)を、基板1、2間に封入し、封入した粒子群3に基板上に設けた電極5、6から電界を与えて、基板1、2と垂直方向に移動させることで画像表示を行っている。この方式では、図2に示すように、基板1、2間の空隙を隔壁4で区切って複数のセルを持った構造とし、その中に粒子群3を封入して画像表示用パネルを構成することもできる。基板上に設ける電極は基板の内外いずれの側でも良く、基板内部に埋め込んでも良い。また、以上の構成は、粒子群の代わりに粉流体を使用しても同じである。
[0016] 本発明の特徴は、上述した構成の画像表示パネルにおける画像の表示駆動方法にある。すなわち、上述した構成の画像表示パネルにおいて、粒子群を利用した例でも粉流体を利用した例でも、電極5、6の一方を接地電位とし、もう一方に、時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化する交番電圧または片極性電圧を印加する方法で電極5、6間に電圧を印加して、画像を表示することを特徴としている。なお、本発明において、印加する電圧を「時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化する交番電圧または片極性電圧」と定義したのは、従来のパルス状の矩形波のように、ある時点で電圧値が一瞬のうちに上昇/下降する形状、特に一瞬のうちに上昇(増大)する形状の電圧を除外するためである。また、交番電圧とは、GNDを交差する電圧のことをいい、片極性電圧とは、GNDを交差しない電圧のことをいう。
[0017] 図3(a)?(f)はそれぞれ従来例及び本発明例の表示駆動方法の一例を説明するための図である。図3(a)?(f)においては、いずれの例においても電極6の電位を接地電位としている。ここで、図3(a)に示す従来例では、パルス状の矩形波からなる交番電圧を電極5に印加している。これに対し、図3(b)に示す本発明例では、Sin波からなる交番電圧を電極5に印加している。また、図3(c)に示す本発明例では、台形波からなる交番電圧を電極5に印加している。さらに、図3(d)に示す本発明例では、階段波からなる交番電圧を電極5に印加している。さらにまた、図3(e)に示す本発明例では、ランプ波からなる交番電圧を電極5に印加している。また、図3(f)に示す本発明例では、三角波からなる交番電圧を電極5に印加している。
[0018] 以上の図3(a)?(f)に示す従来例及び本発明例の表示駆動方法のうち、図3(a)に示す従来例のパルス状の矩形波からなる交番電圧の場合と、図3(b)に示す本発明例のSin波からなる交番電圧の場合とについて、同じ周波数で白表示と黒表示を繰り返し、その濃度と反転回数との関係を求めた。結果を図4に示す。図4の結果から、本発明例のSin波で駆動すると黒表示、白表示のいずれにおいても反転を繰り 返すことによる濃度低下が小さいのに対し、従来例の矩形波では反転を繰り返すにつれて濃度低下が大きくなり、特に、黒濃度の低下が顕著であることがわかる。なお、図5に、図4と同様の例において、反転回数と白黒表示時の濃度差との関係を示す。これから、本発明例のSin波では反転を繰り返し行っても白黒表示時の濃度差の低下が小さいのに対し、従来例の矩形波では反転の繰り返しに従って白黒表示時の濃度差が大きく低下することがわかる。
[0019] 次に、図3(a)?(f)に示す従来例及び本発明例の表示駆動方法に従って、同じ周波数で白表示と黒表示を繰り返した場合の濃度差を測定した結果を、図6及び図7に示す。図6及び図7の結果からわかるように、本発明例はSin波のみならず台形波、階段波、及び、ランプ波、三角波の例でも、反転繰り返しによる白黒表示時の濃度差の低下が小さいのに対し、従来例の矩形波では反転の繰り返しに従って白黒表示時の濃度差が大きく低下することがわかる。また、本発明例のなかでは、Sin波と台形波、階段波、ランプ波、三角波とで特に大きな違いはないことがわかる。」

イ そうすると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内に、認定に用いた引用箇所を示す。)。
「帯電特性及び光学的反射率の異なる2種類の粒子群(ここでは白色粒子群3Wと黒色粒子群3B)を、基板1、2間に封入し、封入した粒子群3に基板上に設けた電極5、6から電界を与えて、基板1、2と垂直方向に移動させることで画像表示を行なう画像表示用パネルであって、基板1、2間の空隙を隔壁4で区切って複数のセルを持った構造とし、その中に粒子群3を封入して画像表示用パネルを構成し([0015])、
電極5、6の一方を接地電位とし、もう一方に、時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化する交番電圧または片極性電圧を印加する方法で電極5、6間に電圧を印加して、画像を表示するが、ここで、交番電圧とは、GNDを交差する電圧のことをいい、片極性電圧とは、GNDを交差しない電圧のことをいい([0016])、交番電圧または片極性電圧が、Sin波の形状で時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化すること、及び、交番電圧または片極性電圧が、台形波の形状または階段波の形状で時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化すること、及び、交番電圧または片極性電圧が、三角波の形状またはランプ波の形状で時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化することがあり([0011])、
Sin波のみならず台形波、階段波、及び、ランプ波、三角波の例でも、反転繰り返しによる白黒表示時の濃度差の低下が小さい([0019])、
画像表示用パネル。」

ウ 対比・判断
(請求項1に係る発明について)
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比する。
(ア)駆動電圧の印加を電圧ドライバーによって行うことは自明のことであるから、引用発明における「帯電特性及び光学的反射率の異なる2種類の粒子群(ここでは白色粒子群3Wと黒色粒子群3B)を、基板1、2間に封入し、封入した粒子群3に基板上に設けた電極5、6から電界を与えて、基板1、2と垂直方向に移動させることで画像表示を行なう画像表示用パネル」と、本願発明における「双安定性ディスプレイ媒体と電圧ドライバーとを備える双安定性電気光学ディスプレイ」とは、「ディスプレイ媒体と電圧ドライバーとを備える電気光学ディスプレイ」の点で共通する。
(イ)引用発明の「画像表示用パネル」が、「基板1、2間の空隙を隔壁4で区切って複数のセルを持った構造とし、その中に粒子群3を封入して画像表示用パネルを構成」していることが、本願発明における「該電気光学ディスプレイは、複数のピクセルを備えて」いることに相当する。
(ウ)引用発明に示された「電極5、6の一方を接地電位とし、もう一方に、時間とともに少なくとも増大過程で電圧値が徐々に変化する交番電圧または片極性電圧を印加する方法」のうち、「交番電圧または片極性電圧」が「Sin波の形状」または「三角波の形状」の場合には、時間とともに「増大過程」だけでなく、減少過程でも「電圧値が徐々に変化する」こと、及び、これにより「濃度」が連続的に変化することは明らかである。
そして、駆動電圧の印加を電圧ドライバーによって行うことは自明のことであるから、引用発明において「基板1、2間の空隙を隔壁4で区切って複数のセルを持った構造」とし、「電極5、6の一方を接地電位とし」、「交番電圧または片極性電圧」として「Sin波の形状」または「三角波の形状」を用いる場合と、本願発明における「該電圧ドライバーは、該複数のピクセルのうち該ビデオの特定のフレーム中に状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと線形的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成され」ることとは、「該電圧ドライバーは、該複数のピクセルのうち、状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと連続的に変化するように該駆動電圧を制御する」点で共通する。
(エ)引用発明における「粒子群」が流体の中に配置されていること、及び「粒子群」が「帯電特性」により、電界を与えられると帯電することは明らかであるから、引用発明の「基板1、2間に封入」された媒体が、「帯電特性及び光学的反射率の異なる2種類の粒子群(ここでは白色粒子群3Wと黒色粒子群3B)」を備え、該「粒子群」が、「基板1、2間に封入し、封入した粒子群3に基板上に設けた電極5、6から電界を与えて、基板1、2と垂直方向に移動させること」ができる粒子群であることと、本願発明における「該双安定性ディスプレイ媒体は、電気泳動材料を備えており、該電気泳動材料は、流体の中に配置される複数の荷電粒子であって、電界の影響下にある該流体を通って移動する能力がある複数の荷電粒子を備えている」こととは、「該ディスプレイ媒体は、流体の中に配置される複数の荷電粒子であって、電界の影響下にある該流体を通って移動する能力がある複数の荷電粒子を備えている」点で共通する。

よって、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「ディスプレイ媒体と電圧ドライバーとを備える電気光学ディスプレイであって、該電気光学ディスプレイは、複数のピクセルを備えており、
該電圧ドライバーは、該複数のピクセルのうち該状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと連続的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成され、
該ディスプレイ媒体は、流体の中に配置される複数の荷電粒子であって、電界の影響下にある該流体を通って移動する能力がある複数の荷電粒子を備えている、ディスプレイ。」

(相違点1)
本願発明1では、「ディスプレイ媒体」が、「電気泳動材料を備え」た「双安定性」のものであって、電気光学ディスプレイが、「双安定性」の「アクティブマトリクスディスプレイであ」るのに対し、引用発明では、「基板1、2間に封入」された媒体が、電気泳動材料を備えた双安定性のものである否か、明らかでなく、また、「画像表示用パネル」がアクティブマトリクスディスプレイであるか否かも不明である点。

(相違点2)
本願発明1では、「該電圧ドライバーが、該双安定性ディスプレイ媒体に駆動電圧を提供することにより、毎秒13フレームから毎秒20フレームのフレームレートでビデオを表示するように該双安定性ディスプレイ媒体を駆動するように構成されて」いるのに対し、引用発明では、駆動電圧の印加を電圧ドライバーによって行うことは自明であるものの、ビデオを表示するフレームレートは特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1では、「該電圧ドライバーは、該複数のピクセルのうち該ビデオの特定のフレーム中に状態遷移を受ける各ピクセルについて、該各ピクセルにおける該双安定性ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと線形的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成され」ているのに対し、引用発明では、駆動電圧の印加を電圧ドライバーによって行うことは自明であって、「基板1、2間の空隙を隔壁4で区切って複数のセルを持った構造」とし、「電極5、6の一方を接地電位とし、もう一方に」、「交番電圧または片極性電圧」として、「Sin波の形状」または「三角波の形状」を用いる場合には、時間とともに、「増大過程」だけでなく減少過程でも「電圧値が徐々に変化」し、これにより、「濃度」が連続的に変化することは明らかであるものの、該複数のセルを持った構造のうち、ビデオの特定のフレーム中に状態遷移を受ける各セルを持った構造について、該各セルを持った構造における該ディスプレイ媒体の電気光学濃度が該特定のフレームの駆動の間ずっと線形的に変化するように該駆動電圧を制御するように構成されているか、明らかでない点。

そこで、上記相違点について検討すると、上記(相違点2)に係る本願発明1の構成ないし(相違点3)に係る本願発明1の構成は、引用例1に記載も示唆もされていない事項であるから、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、上記(相違点1)について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

(請求項2ないし4に係る発明について)
請求項2ないし4に係る発明は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

(請求項5ないし8に係る発明について)
請求項5ないし8に係る発明は、請求項1に係る「複数のピクセルを備え」、「ビデオを表示する」「双安定性電気光学ディスプレイ」についての発明を、「複数のピクセルを備えている双安定性電気光学ディスプレイを駆動してビデオを表示する方法」として表現したものであるから、上記「(請求項1に係る発明について)」及び「(請求項2ないし4に係る発明について)」に記載したのと同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

(請求項9に係る発明について)
請求項9は、「請求項1に記載のディスプレイを備える、電子ブックリーダー、ポータブルコンピューター、タブレットコンピューター、セルラ電話、スマートカード、標識、時計、棚札またはフラッシュドライブ」に係る発明であるから、上記「(請求項1に係る発明について)」に記載したのと同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

(4)小括
したがって、原査定の拒絶の理由はいずれも理由のないものである。
よって、原査定の理由により本願を拒絶することはできない。

第5 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


「実質的」との用語は意味が曖昧であるので、補正2によって補正された特許請求の範囲の請求項1の「実質的に線形的に変化するように」との記載では、電圧ドライバーにおける駆動電圧の制御の仕方が明確でない。
請求項5についても同様である。

2 当審の拒絶理由の判断
本件補正により、補正2によって補正された特許請求の範囲の請求項1、5における「実質的に線形的に変化するように」との記載は、「線形的に変化するように」と補正された。
よって、請求項1、5の記載は明確なものとなった。
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由、及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-10-05 
出願番号 特願2010-509515(P2010-509515)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G09G)
P 1 8・ 536- WY (G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 酒井 伸芳
清水 稔
発明の名称 ビデオ電気光学ディスプレイを駆動する方法  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  

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