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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1320071
審判番号 不服2014-19591  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-30 
確定日 2016-10-06 
事件の表示 特願2013-538990「充電ステーション情報更新システム及び充電ステーション情報更新方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日国際公開、WO2012/068089、平成25年12月 9日国内公表、特表2013-543979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年11月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年11月16日、米国:2010年12月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月26日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成26年7月1日)、これに対し、平成26年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年8月19日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年8月25日)、これに対し、平成27年10月26日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により平成27年12月15日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年12月22日)、これに対し、平成28年2月19日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.平成28年2月19日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年2月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
送電網から電力を得る充電ステーションに車両を繋ぐコネクタと
コネクタを通じて充電されるバッテリーと
を含む車両を備え、
そこで、コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、
車両のエンジンを切ると、車両の地理的な座標が知られるか、少なくとも判別されることによって、車両の位置が判別され、
コネクタに対する充電ステーションの互換性情報が判別され、
充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性が判別され、
車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両のトランスミッション装置を判別し、
そして、車両の位置に対応した高度情報を判定する車両の高度判定装置を備えた、充電ステーションの特徴を特定するシステム。
【請求項2】
車両が更に、
位置信号を受信するための位置信号受信機と
位置推定装置とを備え、
位置信号がもはや受信できなくなった後の移動に基づいた位置の変化を判定し、
コネクタが、最後に受信した位置信号と位置判定の変化に基礎をおく充電ステーションにつながり、車両位置を判定することによって、充電ステーションの位置を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
位置推定装置が、車輪の回転を基に走行した距離を判定するために車輪パルスユニットを用いるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
リモートサーバが、
リモート充電ステーションのデータベースと、
判定した充電ステーションの位置が、本質的に充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと合致しないときに、新しい充電ステーションの情報によってリモート充電ステーションのアップデートするためのアップデートモジュールと
を備えることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記位置信号が、GPS信号であることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
充電ステーションは、送電網から電力を得ながら、コネクタを介して車両のバッテリを充電するために、充電ステーションに車両をつなげるステップ、
車両のエンジンが切られたときに、コネクタを介してバッテリが充電を開始することを検出するとともに、車両の地形図的座標が知られており、車両の位置判定によって充電ステーション位置を判定し、車両の知られている地形図的座標、ジャイロスコープ、車輪パルスセンサーの少なくとも1つを使用して、充電ステーションと車両がと切断された後に起こる、距離、方向、高度の変化に基づいて、車両の位置の変化を特定することを備えるステップ、
充電ステーションとコネクタの互換性情報および充電ステーションが利用可能な充電ポートと、利用可能な充電ポートの予約可能性とともに予約可能であるかどうかとを示す、充電ステーションの利用可能性を含む、充電ステーションの特徴を判定するステップ、
車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ、特徴点と充電ステーション位置を車両によって送信されるステップ、
を備えた、充電ステーションの特徴を特定する方法。
【請求項7】
充電ステーション情報をリモートサーバで受信するステップと
判定された充電ステーションの位置が、リモートサーバの充電ステーションデータベースに既に記憶されている充電ステーションと実質的に一致しない場合、新しい充電ステーションに関する情報で、前記リモート充電ステーションデータベースを更新するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両の地理的座標がGPS信号で表されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記充電ステーション情報は、充電電圧を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記送信装置は、前記充電ステーション情報モジュールが、充電ステーション情報が実質的に、前記充電ステーション情報モジュールに蓄積された情報に適合していないことを検知した時、前記充電ステーション情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記充電ステーションの特徴は、前記充電電圧を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記送信装置は、前記充電ステーション情報モジュールが、充電ステーション情報が実質的に、前記充電ステーション情報モジュールに蓄積された情報に適合していないことを検知した時、前記充電ステーションの特徴を送信することを特徴とする請求項6に記載の方法。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
送電網から電力を得る充電ステーションに車両を繋ぐコネクタと
コネクタを通じて充電されるバッテリーと
を含む車両を備え、
コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判されるように設定されるが、
車両のエンジンを切ると、車両の地理的な座標が知られるか、少なくとも判別されることによる、車両の位置、
コネクタに対する充電ステーションの互換性情報、
充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性、
車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両の送信処理、
そして、車両の位置に対応した高度情報を判別する車両の高度判別装置を備えた、充電ステーションの特徴を特定するシステム。
【請求項2】
車両が更に、
位置信号を受信するための位置信号受信機と
位置推定装置とを備え、
位置信号がもはや受信できなくなった後の移動に基づいた位置の変化を判別し、
コネクタが、最後に受信した位置信号と位置判別の変化に基礎をおく充電ステーションにつながり、車両位置を判別することによって、充電ステーションの位置を判別する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
位置推定装置が、車輪の回転を基に走行した距離を判別するために車輪パルスユニットを用いるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
リモートサーバが、
リモート充電ステーションのデータベースと、
判別した充電ステーションの位置が、充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと合致しないときに、新しい充電ステーションの情報によってリモート充電ステーションのアップデートするためのアップデートモジュールとを備えることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記位置信号が、GPS信号であることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
充電ステーションは、送電網から電力を得ながら、コネクタを介して車両のバッテリを充電するために、充電ステーションに車両をつなげるステップ、
車両のエンジンが切られたときに、コネクタを介してバッテリが充電を開始することを検出するとともに、車両の地理的な座標が知られており、車両の位置判別によって充電ステーション位置を判別し、車両の知られている地理的な座標、ジャイロスコープ、車輪パルスセンサーの少なくとも1つを使用して、充電ステーションと車両がと切断された後に起こる、距離、方向、高度の変化に基づいて、車両の位置の変化を特定することを備えるステップ、
充電ステーションとコネクタの互換性情報および充電ステーションが利用可能な充電ポートと、利用可能な充電ポートの予約可能性とともに予約可能であるかどうかとを示す、充電ステーションの利用可能性を含む、充電ステーションの特徴を判別するステップ、
車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ、特徴と充電ステーション位置を車両によって送信されるステップ、
を備えた、充電ステーションの特徴を特定する方法。
【請求項7】
充電ステーション情報をリモートサーバで受信するステップと
判別された充電ステーションの位置が、リモートサーバの充電ステーションデータベースに既に記憶されている充電ステーションの位置と一致しない場合、新しい充電ステーションに関する情報で、前記リモートサーバの充電ステーションデータベースを更新するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両の地理的座標がGPS信号で表されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記充電ステーション情報は、充電電圧を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
送信装置は、前記充電ステーション情報モジュールが、充電ステーション情報が、前記充電ステーション情報モジュールに蓄積された情報に適合していないことを検知した時、前記充電ステーション情報を送信することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記充電ステーションの特徴は、前記充電電圧を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
送信装置は、前記充電ステーション情報モジュールが、充電ステーション情報が、前記充電ステーション情報モジュールに蓄積された情報に適合していないことを検知した時、前記充電ステーションの特徴を送信することを特徴とする請求項6に記載の方法。」


(2-1)新規事項について
(ア)本件補正後の請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・コネクタに対する充電ステーションの互換性情報」と記載されており、互換性とは「機械、特にパソコンなどで、部品やソフトウェアが他機種と共通に使えること」を意味するから、或るコネクタが使用できる充電ステーションがどの充電ステーションであるかを示す情報を判別することとなる。
そこで、当該補正が、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下、「翻訳文等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等には、コネクタに対する充電ステーションの互換性情報との記載は一切無く、しかも、車両が充電ステーションでコネクタを介して充電を開始しても、当該コネクタが当該充電ステーションに用いることができることを判別できるのみで、コネクタに対する充電ステーションの互換性の判断はできない。
したがって、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・コネクタに対する充電ステーションの互換性情報」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、本件補正後の請求項6の「充電ステーションとコネクタの互換性情報」も同様である。

(イ)本件補正後の請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性」と記載されているから、車両が充電を開始してから、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性を判別することとなる。
そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等には、
a「充電ステーションモジュール218は、充電ステーションに関する情報を有しており、その情報は、住所や地理座標を含む位置情報、利用情報 (運行情報や予約情報)、そして、例えば、コネクタの型式や充電のタイプ(標準、早い、など)などの適合情報などである。」(【0024】)
b「他の実施形態においては、電気自動車のナビゲーションシステム/指示モジュール 216は、最終的な目的地への経路に沿ってドライバーを案内するとともに、その経路上にある様々な充電可能場所を提示することができる。また、電気自動車は、様々な充電ステーションを(その電気自動車が)利用可能かどうかチェックし、(その電気自動車が)利用可能な充電ポートを備えた充電ステーションへドライバーを案内する(すなわち、電気自動車の経路を定める)。」(【0033】)
と記載されているにすぎず、コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性を判別することは記載も示唆も無い。
したがって、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、本件補正後の請求項6の「充電ステーションとコネクタの互換性情報および充電ステーションが利用可能な充電ポートと、利用可能な充電ポートの予約可能性とともに予約可能であるかどうかとを示す、充電ステーションの利用可能性を含む、充電ステーションの特徴を判別するステップ」も同様である。

(ウ)本件補正後の請求項4には、「判別した充電ステーションの位置が、充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと合致しないときに、新しい充電ステーションの情報によってリモート充電ステーションのアップデートするためのアップデートモジュール」と記載されているから、判別した充電ステーションの位置が、充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと合致するとき以外は、新しい充電ステーションの情報によってリモート充電ステーションのアップデートするためのアップデートモジュールを有することとなる。
そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等には、
c「【請求項5】前記リモート充電ステーションデータベースと、前記受信した充電ステーションの位置が、前記充リモート充電ステーションデータベースの中に既に記憶されている充電ステーションに実質的に対応しないときに、新しい充電ステーションに関する情報によって、前記リモート充電ステーションデータベースを更新する更新モジュールと、を備えるリモートサーバーをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。」
d「【請求項11】前記充電ステーションの情報をリモートサーバで受信するステップと、前記受信した充電ステーションの位置が、前記リモート充電ステーションデータベースに既に記憶されている充電ステーションと実質的に一致しない場合、新しい充電ステーションに関する情報で、前記リモート充電ステーションデータベースを更新するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。」
e「【請求項17】前記充電ステーションの情報をリモートサーバで受信するステップと、前記受信した充電ステーションの位置が、前記リモート充電ステーションデータベースに既に存在する充電ステーションと実質的に一致しない場合、新しい充電ステーションに関する情報で、前記リモート充電ステーションデータベースを更新するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータが読取可能な持続的な記憶媒体。」
f「充電ステーション情報が既に記憶されている充電ステーションに一致していない場合(604)、充電ステーション更新モジュール114は、一番近い充電ステーションを特定、またはその位置を判定し(608)、一番近くの既知の充電ステーションと新しく特定された充電ステーション間の距離を判定する。一実施形態においては、充電ステーション更新モジュールは、現在の充電ステーションと、現在の充電ステーションと類似した特徴(例えば、同様のコネクタの型式、充電電圧など)を有するデータベース中の充電ステーションとを比較する。他の実施形態では、この比較処理は、全ての充電ステーションについて行われる。この距離が閾値(例えば5-50メートル)よりも小さい場合(612)、充電ステーション更新モジュール114は、その充電ステーションは、最も近い充電ステーションと同じものであるとみなし、ステップ602で受信した充電ステーション情報に基づいて、充電ステーション情報データベース112を更新する(606)。
この距離が閾値を超えている場合(612)、充電ステーション更新モジュール114は、 新しい充電ステーションの情報を受信したものとみなし、ステップ602で受信した充電ステーション情報に基づいて、充電ステーションデータベース112に新しい充電ステーションのレコードを作成する(614)。」(【0039】-【0040】)
と記載されているにすぎず、判別した充電ステーションの位置が、充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと実質的に合致するとき、即ち両ステーションの距離が閾値以下のときは、両ステーションは同じであるとみなしていたことの記載はあるものの、判別した充電ステーションの位置が、充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと合致するときのみ両ステーションは同じであるとみなし、両ステーションの距離が閾値以下であって両ステーションの位置が合致しないものを、新しい充電ステーションの情報によってリモート充電ステーションのアップデートするためのアップデートモジュールを備えることは記載も示唆も無い。
したがって、「判別した充電ステーションの位置が、充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと合致しないときに、新しい充電ステーションの情報によってリモート充電ステーションのアップデートするためのアップデートモジュール」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、本件補正後の請求項7の「判別された充電ステーションの位置が、リモートサーバの充電ステーションデータベースに既に記憶されている充電ステーションの位置と一致しない場合、新しい充電ステーションに関する情報で、前記リモートサーバの充電ステーションデータベースを更新するステップ」も同様である。


(2-2)目的要件について
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

(ア)本件補正後の請求項1のシステムは、コネクタとバッテリーを含む車両が、判別機能と高度判別装置を備えているから、請求人が平成28年2月19日付意見書で主張するように、本件補正前の請求項1に対応するものとして検討する。
(ア-1)本件補正前の請求項1は、「充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性が判別され」ており、充電ステーションの利用可能性の判別のために、充電ステーションの利用可能な充電ポートの予約可能性、即ち空き情報を用いて判別していたものが、本件補正後の請求項1は、「充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性」が判別されており、充電ステーションの利用可能性の判別のために、利用可能な充電ステーションの予約情報、即ち予約済情報を用いて判別しており、本件補正前の請求項1記載のどの構成を限定しても、本件補正後の請求項1に記載されたような、利用可能な充電ステーションの予約情報にはならないから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。
(ア-2)本件補正前の請求項1は、「車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両のトランスミッション装置を判別し」ており、「トランスミッション」とは「自動車などの歯車式変速装置」のことであるから、充電ステーション情報を送信するために車両の歯車式変速装置を判別していたものが、本件補正後の請求項1は、「車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両の送信処理」を判別しており、本件補正前の請求項1記載のどの構成を限定しても、本件補正後の請求項1に記載されたような、車両の送信処理の判別にはならないから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

(イ)本件補正後の請求項6を、本件補正後の請求項7、8、11、12に加え、本件補正後の請求項9、10が引用しているが、対応する本件補正前の請求項6を引用する請求項は本件補正前の請求項7、8、11、12のみであり、本件補正後の請求項6を引用する本件補正後の請求項9、10が存在するから、所謂増項補正に該当し、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)特許法第36条第4項及び第6項について
(ア)本件補正後の請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・コネクタに対する充電ステーションの互換性情報」とあり、互換性とは「機械、特にパソコンなどで、部品やソフトウェアが他機種と共通に使えること」を意味するが、車両が充電ステーションでコネクタを介して充電を開始しても、当該コネクタが当該充電ステーションに用いることができることを判別できるのみで、コネクタに対する充電ステーションの互換性の判断はできないから、コネクタに対する充電ステーションの互換性情報とは何を意味するのか明細書を参照しても構成を特定できず不明である。なお、本件補正後の請求項6も同様である。
(イ)本件補正後の請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性」と記載されているから、車両が充電を開始してから、車両は、充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ステーションの予約情報とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性を判別することとなるが、充電ステーションの利用可能性を判別するために、当該充電ステーション以外の充電ステーションを含んだ利用可能な充電ステーションの予約情報を用いており、何故或充電ステーションの利用可能性を判別するために他の充電ステーションの予約情報までを検討する必要があるのか明細書を参照しても不明である。
(ウ)本件補正後の請求項12には、「送信装置は、前記充電ステーション情報モジュールが、充電ステーション情報が、前記充電ステーション情報モジュールに蓄積された情報に適合していないことを検知した時、前記充電ステーションの特徴を送信することを特徴とする請求項6に記載の方法。」と記載されているが、充電ステーション情報が適合していないことを検知した時、充電ステーション情報ではなく何故充電ステーションの特徴を送信するのか明細書を参照しても不明である。しかも、本件補正後の請求項10は、充電ステーション情報が適合していないことを検知した時、充電ステーション情報を送信しており、充電ステーション情報が適合していないことを検知した時、何故充電ステーション情報を送信して充電ステーションの特徴を送信しないのか明細書を参照しても不明である。
(エ)本件補正後の請求項1-5のシステム、本件補正後の請求項6-12の方法は、充電ステーションの判別の際に、当該充電ステーションが何れのステーションであっても判別の対象となっているが、翻訳文等では、当該充電ステーションが自宅にある場合、充電ステーションデータベースに含めないように処理をしており(【0035】、【0042】)、自宅の充電ステーションが判別の対象とはなっておらず、充電ステーションの判別の際に、当該充電ステーションが何れのステーションであっても判別の対象とすることは、発明の詳細な説明に記載が無い。

したがって、本件補正後の請求項1-12の記載は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、本件補正後の請求項1-12の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、上記した平成27年10月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成27年12月15日付で通知した最後の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「理由1
平成27年10月26日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。

理由2
本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項1号、第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



●理由1について
(1)請求項1には、「コネクタに対する充電ステーションの互換性情報」と記載されているが、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「コネクタに対する充電ステーションの互換性情報」なる記載はなく、そのようなものが当初明細書等に記載されていたものとは認められない。
したがって、「コネクタに対する充電ステーションの互換性情報」を追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。
請求項6に記載された「充電ステーションとコネクタの互換性情報」も同様である。

(2)請求項1には、「利用可能な充電ポートの予約可能性」と記載されているが、当初明細書等には、段落【0024】に「充電ステーションに関する情報を有しており、その情報は、・・・利用情報 (運行情報や予約情報)、・・・である。」と記載されているのみであり、「利用可能な充電ポートの予約可能性」なるものが当初明細書等に記載されていたものとは認められない。
したがって、「利用可能な充電ポートの予約可能性」を追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。
請求項6に記載された「利用可能な充電ポートの予約可能性」も同様である。

(3)請求項1には、「車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両のトランスミッション装置を判別し」と記載されているが、「トランスミッション装置を判別」することは、当初明細書等には記載されていない。
したがって、「トランスミッション装置を判別」することを追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。


●理由2について
(1)請求項1に記載された「そこ」とは何を示すのかが不明である。

(2)請求項1において「次のことが判別される」と記載されているが、「次のこと」が具体的に何を意味するのかが不明である。「次のこと」に対応するものは名詞または名詞節で表現されるべきであるが、請求項1には対応するような名詞または名詞節は記載されていない。なお、「車両位置が判別され」、「互換性情報が判別され」等の記載は名詞節ではなく、「次のこと」に対応するものではない。

(3)請求項1には、「設定されるが、」と記載されているが、当該記載が当該記載の後のどの文章につながっているのかが不明であるため、この記載は日本語として意味が不明である。

(4)請求項1に記載された「車両の地理的な座標」には、高さ方向の座標も含まれるのか否かが不明である。仮に含まれる場合、請求項1に記載された「高度情報」との関係が不明である。

(5)請求項1には「車両の地理的な座標が知られるか、少なくとも判別される」と記載されているが、「知られる」と「判別される」の差異が不明である。

(6)請求項1に記載された「コネクタに対する充電ステーションの互換性情報」、「利用可能な充電ポート」、「利用可能な充電ポートの予約可能性」、「使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性」、「充電ステーション情報」、「充電ステーションの特徴」のそれぞれの定義及び差異が不明である(例えば、具体的に何がどのような状態であると、「互換性有り」、「利用可能」、「予約可能」、「使用可能」、「利用可能性有り」と言えるのかが不明である)。また、それぞれが、実施例における何に相当するものであるのかが不明である。

(7)請求項1には、「車両の位置が判別され」、「互換性情報が判別され」、「利用可能性が判別され」との記載があるが、システムにおける「判別」であるから機械が行うものであるから、これらの「判別」は、いずれも、どのような手段が、車両又は充電ステーションに関する情報のうちどのような情報を利用して、どのような基準を用いてその情報を判別し、どのような結果を出すことを意味するのかが不明である。
なお、これらの「判別」は、請求項1によれば「充電を開始」した後に行われるものであるので、充電を開始できない場合は「判別」を行わないものである。また、充電を開始できない場合に、「判別」に必要な情報を集める手法は当初明細書等に記載されていない。そうすると、上記「判別」は、「充電可能な充電ステーションにいる車両の位置」、「互換性があること」、「利用可能であること」を示すことができるものではあるが、「充電ができない充電ステーションにいる車両の位置」、「互換性がないこと」、「使用可能でないこと」を示すことができるものではないと考えられる。

(8)請求項1に記載された「充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性が判別され、」との記載は、文言の修飾関係、係り受けが不明であり、日本語として意味が不明である。

(9)請求項1には「車両のトランスミッション装置を判別し」と記載されているが、この「判別」は、具体的にどのような手段を用いてどのような情報を収集し、どのような基準を用いてその情報を判別し、どのような結果を出すことを意味するのかが不明である。また、「車両の充電ステーション情報モジュール」と「リモートサーバ」をどのように選択するのかが不明である。

(10)請求項1に記載された「システム」は「高度判定装置」を備えることが記載されているが、この「高度判定装置」と請求項1に記載されたその他の構成との関係が不明であり、「高度判定装置」の「システム」における役割が不明である(請求項1に係る発明は、「高度判定装置」を備えているだけである。)。

(11)請求項1には、「充電ステーションの特徴を特定する」と記載されているが、具体的にどのような処理を行うと「充電ステーションの特徴」を「特定」したことになるのかが不明である。

(12)請求項1に記載された「システム」には、「充電ステーション」及び「リモートサーバ」が含まれるのか否かが不明である。仮に「リモートサーバ」が含まれる場合、請求項1の記載からは「リモートサーバ」はどこにどのような目的で設置されるものかが不明であり、どのようなものが発明の範囲に含まれるのかが特定できず、発明が不明確である。

(13)請求項1は、「車両」が種々の「判別」をすることを記載していると思われるが、出願時の技術常識を踏まえると、車両は「判別」を行うための構成を通常備えていないから、請求項1に係る発明は、どのように実施されるものであるのかが不明であって、発明が不明確である。

(14)請求項2における「コネクタが、最後に受信した位置信号と位置判定の変化に基礎をおく充電ステーションにつながり、車両位置を判定することによって、充電ステーションの位置を判定する、」との記載は、日本語として意味が不明である。

(15)請求項2における「車両位置」の「判定」と、請求項1の「車両の位置」の「判別」の関係及び相違が不明である。

(16)請求項4には「本質的に」と記載されているが、「本質的である」ものと「本質的でない」もの差異が不明であるから、請求項4に係る発明は不明確である。

(17)請求項6に記載された「充電ステーションは、送電網から電力を得ながら、コネクタを介して車両のバッテリを充電するために、充電ステーションに車両をつなげるステップ、」との記載は、日本語として意味が不明である。また、当該ステップは何が行うものであるのかが不明(ステップを行う主体が不明)である。

(18)請求項6に記載された「車両の地形図的座標」と請求項1に記載された「車両の地理的な座標」は表現が異なるから異なるものを意味していると思われるが、それぞれの定義及び差異が不明である。

(19)請求項6における、「車両の地形図的座標」が知られていることと、「車両の位置判定」の相違及び関係が不明である。

(20)請求項6には、「車両の知られている地形図的座標、ジャイロスコープ、車輪パルスセンサーの少なくとも1つを使用して、充電ステーションと車両がと切断された後に起こる、距離、方向、高度の変化に基づいて、車両の位置の変化を特定する」と記載されているが、「少なくとも1つ」とあるので「ジャイロスコープ」又は「車輪パルスセンサー」のいずれか1つのみでもよいことになるが、いずれか1つのみで、どのように距離、方向、高度の変化を検知することができるのか、また、どのように車両の位置の変化を特定することができるのかが不明である。さらに、「充電ステーションと車両がと切断された後」のいずれの時における「車両の位置」の変化を特定するのかが不明である。なお、「車両がと」との記載は誤記であると思われる。

(21)請求項6に記載された「充電ステーションとコネクタの互換性情報」、「充電ステーションが利用可能な充電ポートと、利用可能な充電ポートの予約可能性」、「予約可能であるかどうかとを示す、充電ステーションの利用可能性」のそれぞれの定義及び差異が不明である(例えば、何がどのような状態であると「互換性有り」、「利用可能」、「予約可能」、「使用可能」、「利用可能性有り」と言えるのかが不明である。)。また、実施例における何に対応するものであるかも不明である。

(22)請求項6には「充電ステーションの特徴を判定する」と記載されているが、この「判定」とは、何が具体的にどのような手段を用いてどのような情報を収集し、どのような基準を用いてその情報を判定し、どのような結果を出すことを意味するのかが不明である。
なお、充電を開始できない場合に、「判定」に必要な情報を集める手法は当初明細書等に記載されていない。そうすると、上記「判定」は、「互換性があること」、「利用可能であること」を示すことができるものではあるが、「互換性がないこと」、「使用可能でないこと」を示すことができるものではないと考えられる。

(23)請求項6に記載された「充電ステーションの特徴」と「特徴点」は、表現が異なるから、異なるものを意味すると思われるが、それぞれの定義及び差異が不明である。

(24)請求項6には、「特徴点と充電ステーション位置を車両によって送信される」と記載されているが、「車両の位置の変化」が送信されることは記載されていない。したがって、請求項6に係る発明において「車両の位置の変化」を特定することの意味が不明である。

(25)請求項6には「車両の充電ステーション情報モジュール・・・へ、車両によって送信されるステップ、」と記載されているが、「充電ステーション情報モジュール」は車両内に配置されている構成であるから、車両によって車両自身の構成に送信するという表現は、日本語として意味が不明である。

(26)請求項6には、「充電ステーションの特徴を特定する」と記載されているが、具体的にどのような処理を行うと「充電ステーションの特徴」を「特定」したことになるのかが不明である。

(27)請求項6に係る方法の発明は、請求項1に係る物の発明と対応していないため、両者の関係が不明確であり、結果として、発明が不明確となっている。

(28)請求項7に記載された「充電ステーション情報」、「充電ステーションの位置」、「充電ステーションに関する情報」のそれぞれの定義及び差異が不明である。また、これらの情報と、請求項6に記載された情報との関係が不明である。

(29)請求項7には、「充電ステーションの位置が・・・充電ステーションと・・・一致しない場合」と記載されているが、「位置」と「充電ステーション」をどのように比較するのかが不明である(「位置」と比較されるものは「位置」であるべきである。)。

(30)請求項7には「実質的に」と記載されているが、「実質的である」ものと「実質的でない」もの差異が不明であるから、請求項7に係る発明は不明確である。

(31)請求項7には「前記リモート充電ステーションデータベース」と記載されているが、この記載以前には、「リモートサーバの充電ステーションデータベース」との記載はあるが、「リモート充電ステーションデータベース」との記載はない。したがって、「前記リモート充電ステーションデータベース」との記載は意味が不明である。

(32)請求項8には「前記車両の地理的座標」と記載されているが、この記載以前には「車両の地理的座標」との記載はないから、この記載は意味が不明である。また、請求項6には「車両の地形的座標」と記載されているが、これらは表現が異なるから異なるものを意味していると思われる。しかしこれらの定義及び差異が不明である。

(33)請求項9及び11に記載された「充電電圧」は、充電ステーションが充電用に出力可能な電圧を意味するのか、車両が充電可能な電圧を意味するのか、その他を意味するのかが不明である。

(34)請求項9及び10には「請求項1に記載の方法」と記載されているが、請求項1に係る発明は物の発明であるから、この記載は意味が不明である。

(35)請求項10及び12には「前記送信装置」と記載されているが、この記載以前に「送信装置」との記載はないから、この記載は意味が不明である。

(36)請求項10及び12には「実質的に」と記載されているが、「実質的である」ものと「実質的でない」もの差異が不明であるから、請求項10に係る発明は不明確である。

(37)請求項10及び12には「適合していないことを検知」と記載されているが、「適合」しているか否かは何をどのように判断することを言うのかが不明である(情報の保存形式を比較するのか、情報の内容を比較するのか、それ以外の処理を行うのかが不明である。)。

(38)請求項10には、「前記充電ステーション情報を送信する」と記載されているが、送信先が不明であり、発明が不明確である。

(39)請求項12には、「前記充電ステーションの特徴を送信する」と記載されているが、送信先が不明であり、発明が不明確である。

(40)請求項1?12に係る発明は、自宅で充電しているか否かを判別することを含まないシステム又は方法の発明であるが、発明の詳細な説明には、そのようなシステム又は方法は記載されておらず、請求項1?12に係る発明は、発明の詳細な説明の記載と対応していない。」


(2)当審の最後の拒絶の理由についての判断
(ア)理由1について
(ア-1)請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・コネクタに対する充電ステーションの互換性情報が判別され」と記載されており、互換性とは「機械、特にパソコンなどで、部品やソフトウェアが他機種と共通に使えること」を意味するから、或るコネクタが使用できる充電ステーションがどの充電ステーションであるかを示す情報を判別することとなる。
そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等には、コネクタに対する充電ステーションの互換性情報との記載は一切無く、しかも、車両が充電ステーションでコネクタを介して充電を開始しても、当該コネクタが当該充電ステーションに用いることができることを判別できるのみで、コネクタに対する充電ステーションの互換性の判断はできない。
したがって、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・コネクタに対する充電ステーションの互換性情報が判別され」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、請求項6の「充電ステーションとコネクタの互換性情報」も同様である。
(ア-2)請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性が判別され」と記載されているから、車両が充電を開始してから、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性を判別することとなる。
そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等には、上記a、bの記載があるにすぎず、充電ステーションの予約情報について記載はあるものの、利用可能な充電ポートの予約可能性との記載は一切無く示唆も無い。
したがって、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性が判別され」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、請求項6の「利用可能な充電ポートの予約可能性」も同様である。
(ア-3)請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両のトランスミッション装置を判別」と記載されており、「トランスミッション」とは「自動車などの歯車式変速装置」のことであるから、充電ステーション情報を送信するために車両の歯車式変速装置を判別することとなる。
そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等には、車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両のトランスミッション装置の判別について記載は一切無く示唆も無い。
したがって、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両のトランスミッション装置を判別」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
(ア-4)よって、平成27年10月26日付でした手続補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(イ)理由2について
(イ-1)請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・コネクタに対する充電ステーションの互換性情報が判別され」とあり、互換性とは「機械、特にパソコンなどで、部品やソフトウェアが他機種と共通に使えること」を意味するが、車両が充電ステーションでコネクタを介して充電を開始しても、当該コネクタが当該充電ステーションに用いることができることを判別できるのみで、コネクタに対する充電ステーションの互換性の判断はできないから、コネクタに対する充電ステーションの互換性情報とは何を意味するのか明細書を参照しても構成を特定できず不明である。なお、請求項6も同様である。
(イ-2)請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性が判別され」と記載されているから、車両が充電を開始してから、車両は、充電ステーションが、利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性とともに使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性を判別することとなるが、充電ステーションの利用可能性を判別するために、どの様にして利用可能な充電ポートと利用可能な充電ポートの予約可能性について判別するのか何ら開示が無く不明であり、又、使用可能と利用可能に何が違いがあるのか不明のため、使用可能かどうかを示すための充電ステーションの利用可能性が判別とはどの様なことを行うのか明細書を参照しても構成を特定できず不明である。なお、請求項6も同様である。
(イ-3)請求項1には、「コネクタを通じてバッテリーが充電を開始することを検出すると、車両は次のことが判別されるように設定されるが、・・・略・・・車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するための車両のトランスミッション装置を判別し」とあり、「トランスミッション」とは「自動車などの歯車式変速装置」のことであるから、車両の充電ステーション情報モジュールかリモートサーバへ充電ステーション情報を送信するために、歯車式変速装置を判別することとなるが、何故情報送信のためにトランスミッション装置を判別する必要があるのか不明であり、具体的にどの様に判別するのか明細書を参照しても不明である。
(イ-4)請求項4には、「判定した充電ステーションの位置が、本質的に充電ステーションデータベースの現存する充電ステーションと合致しないとき」とあるが、本質的に合致しないとはどの様な条件になれば該当するのか構成が特定できず不明である。なお、請求項7も同様である。
(イ-5)請求項6には、「車両の知られている地形図的座標、ジャイロスコープ、車輪パルスセンサーの少なくとも1つを使用して、充電ステーションと車両がと切断された後に起こる、距離、方向、高度の変化に基づいて、車両の位置の変化を特定することを備える」とあり、「少なくとも1つ」とあるので、地形図的座標、ジャイロスコープ、車輪パルスセンサーのうちの1つのみを使用しても良いこととなるが、例えば車輪パルスセンサーのみを使用してどの様にすれば方向、高度の変化を把握することができるのか何ら開示が無く不明である。地形図的座標、ジャイロスコープも同様である。
(イ-6)請求項9には、「請求項1に記載の方法」とあるが、請求項1はシステムに係る発明であるので、請求項9がどの様な構成となるのか不明である。なお、請求項10も同様である。
(イ-7)請求項10には、「前記送信装置は、前記充電ステーション情報モジュールが、充電ステーション情報が実質的に、前記充電ステーション情報モジュールに蓄積された情報に適合していないことを検知した時、前記充電ステーション情報を送信する」とあるが、この記載より前に「送信装置」との記載は無いため、「前記送信装置」とは何を意味するのか不明であり、情報の送信先が何処であるのか何等記載が無く不明である。なお、請求項12も同様である。
(イ-8)請求項1-5のシステム、請求項6-12の方法は、充電ステーションの判別の際に、当該充電ステーションが何れのステーションであっても判別の対象となっているが、翻訳文等では、当該充電ステーションが自宅にある場合、充電ステーションデータベースに含めないように処理をしており(【0035】、【0042】)、自宅の充電ステーションが判別の対象とはなっておらず、充電ステーションの判別の際に、当該充電ステーションが何れのステーションであっても判別の対象とすることは、発明の詳細な説明に記載が無い。
(イ-9)したがって、請求項1-12の記載は発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、請求項1-12の記載は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


(3)むすび
したがって、平成27年10月26日付でした手続補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、請求項1-12の記載は発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、請求項1-12の記載は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることはできない。
したがって、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-04 
結審通知日 2016-07-05 
審決日 2016-08-22 
出願番号 特願2013-538990(P2013-538990)
審決分類 P 1 8・ 562- WZ (G01C)
P 1 8・ 575- WZ (G01C)
P 1 8・ 537- WZ (G01C)
P 1 8・ 537- WZ (G01C)
P 1 8・ 536- WZ (G01C)
P 1 8・ 536- WZ (G01C)
P 1 8・ 572- WZ (G01C)
P 1 8・ 55- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 中川 真一
矢島 伸一
発明の名称 充電ステーション情報更新システム及び充電ステーション情報更新方法  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
代理人 磯野 道造  

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