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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F21S |
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管理番号 | 1320638 |
審判番号 | 不服2015-10995 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-10 |
確定日 | 2016-11-10 |
事件の表示 | 特願2011- 68963号「ランプ装置および照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-204208号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年3月25日の出願であって、平成26年9月11日付けで拒絶理由が通知され、同年11月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月3日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年2月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年3月6日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、同年6月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成28年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明(以下、「本願発明1?3」という。)は、平成28年9月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 筐体と; 前記筐体内に収納され、基板およびこの基板に実装された半導体発光素子を有する発光モジュールと; 前記筐体内に収納され、前記半導体発光素子が発する光の配光を制御する光学部品と; 上面側に段部を有し、この段部によって前記発光モジュールの前記基板の周辺の一部を下面方向および横方向に位置決めし保持する枠状に形成され、前記筐体に固定することによって前記筐体との間に前記基板の周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記発光モジュールを前記筐体に取り付けるとともに、内周面と前記光学部品の外周面とで前記発光モジュールに対して前記光学部品を位置決めするホルダと; を具備していることを特徴とするランプ装置。 【請求項2】 前記ホルダは、前記発光モジュールに対向する前記光学部品の端部と前記ホルダとの間の隙間を覆う覆い部を有している ことを特徴とする請求項1記載のランプ装置。 【請求項3】 ソケットを有する器具本体と; 前記ソケットに装着される請求項1または2記載のランプ装置と; を具備していることを特徴とする照明器具。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 原査定の理由は、平成26年12月3日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由であり、その概要は、本願発明1は、その出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 そして、次の引用文献1が示されている。 引用文献1:国際公開第2005/053041号 2 原査定の理由の判断 (1)引用文献1に記載された発明 引用文献1には、「発光ダイオードチップを用いた発光装置」に関する技術について開示されているところ、段落[0043]?段落[0048]の記載内容及びFIG.6〈実施形態6〉を参酌し、本願発明1の記載ぶりに倣って整理すると、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明1」という。) 「実装基板2およびこの実装基板2に実装されたLEDチップ1を有するLEDパッケージと; 前記LEDチップ1が発する光の配光を制御するレンズ4と; ガイド部61及び爪63を有し、前記ガイド部61をLEDパッケージの前記実装基板2の外郭に嵌合し、前記爪63を折り返すことで前記レンズ4を固定し、前記LEDパッケージに対して前記レンズ4を位置決めするレンズ保持具6と; を具備する発光ダイオードチップを用いた発光装置。」 (2)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、 ア 後者の「実装基板2」及び「LEDチップ1」は前者の「基板」及び「半導体発光素子」に相当し、後者の「実装基板2およびこの実装基板2に実装されたLEDチップ1を有するLEDパッケージ」は前者の「基板およびこの基板に実装された半導体発光素子を有する発光モジュール」に相当する。 イ 後者の「前記LEDチップ1が発する光の配光を制御するレンズ4」は前者の「前記半導体発光素子が発する光の配光を制御する光学部品」に相当する。 ウ 後者の「実装基板2の外郭に嵌合」することは前者の「基板の周辺の一部を保持する」ことを充足し、後者の「爪63を折り返すことで前記レンズ4を固定」することは引用文献1のFIG.6を参酌すると、レンズ保持具6の内周面とレンズ4の外周面とで該レンズ4を固定しているといえるから、 後者の「ガイド部61及び爪63を有し、前記ガイド部61をLEDパッケージの前記実装基板2の外郭に嵌合し、前記爪63を折り返すことで前記レンズ4を固定し、前記LEDパッケージに対して前記レンズ4を位置決めするレンズ保持具6」と前者の「上面側に段部を有し、この段部によって前記発光モジュールの前記基板の周辺の一部を下面方向および横方向に位置決めし保持する枠状に形成され、前記筐体に固定することによって前記筐体との間に前記基板の周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記発光モジュールを前記筐体に取り付けるとともに、内周面と前記光学部品の外周面とで前記発光モジュールに対して前記光学部品を位置決めするホルダ」とは、「前記発光モジュールの前記基板の周辺の一部を保持するように形成されるとともに、内周面と前記光学部品の外周面とで前記発光モジュールに対して前記光学部品を位置決めするホルダ」という限度で共通する。 そして、後者の「発光ダイオードチップを用いた発光装置」は前者の「ランプ装置」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1とは、 「基板およびこの基板に実装された半導体発光素子を有する発光モジュールと; 前記半導体発光素子が発する光の配光を制御する光学部品と; 前記発光モジュールの前記基板の周辺の一部を保持するように形成されるとともに、内周面と前記光学部品の外周面とで前記発光モジュールに対して前記光学部品を位置決めするホルダと; を具備しているランプ装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点〕 本願発明1は、「筐体」を具備し、発光モジュールを「前記筐体内に収納され」ものであるとともに、ホルダは、「上面側に段部を有し、この段部によって」前記発光モジュールの前記基板の周辺の一部を「下面方向および横方向に位置決めし」保持する「枠状に」形成され、「前記筐体に固定することによって前記筐体との間に前記基板の周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記発光モジュールを前記筐体に取り付ける」ものであるのに対し、 引用発明1は、筐体を具備しているか明らかでなく、レンズ保持具6は、「ガイド部61及び爪63を有し、前記ガイド部61をLEDパッケージの前記実装基板2の外郭に嵌合し、前記爪63を折り返すことで前記レンズ4を固定」するものである点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 ア 引用文献1の段落[0057]の記載内容及びFIG.14(a)を参酌すると、「筐体10内に、実装基板2に実装されたLEDチップ1を有するLEDパッケージ及びレンズ4を収納する構造」が記載されている。(以下、「引用文献1に記載されている事項」という。) しかしながら、引用文献1には、「レンズ保持具6」(本願発明1の「ホルダ」に相当)に関し、上面側に段部を有し、この段部によってLEDパッケージの実装基板2の周辺の一部を下面方向および横方向に位置決めし保持する枠状に形成され、筐体に固定することによって前記筐体との間に前記実装基板2の周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記LEDパッケージを前記筐体に取り付けるという構成は記載されていないから、引用発明1に引用文献1に記載されている事項を適用しても、上記相違点に係る本願発明1の構成に至るものではない。 イ そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成により、本願明細書の段落【0008】に記載されているように「発光モジュールを筐体に固定するホルダにより、発光モジュールに対して光学部品を位置決めできるため、発光モジュールと光学部品との位置関係を一定とし、光学特性を安定させることができ、さらに、ホルダにより光学部品を位置決めする構成であるため、ホルダと光学部品との間からの光漏れが低減可能となり、外部への光取出効率の向上を期待できる。」という格別の効果を奏するものである。 (4)小活 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願発明2及び3は、本願発明1をさらに限定したものであるところ、平成26年12月3日付けの最後の拒絶理由で引用した引用文献2(後述する引用文献B)に記載されている事項を勘案しても、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は、平成28年6月30日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由であり、その概要は、以下のとおりである。 [理由1]この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献Aに記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 [理由2]この出願の請求項3に係る発明は、その出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献A及びBに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 そして、次の引用文献A及びBが示されている。 引用文献A:特開2008-140625号公報 引用文献B:特開2010-262781号公報 2 当審拒絶理由の判断 2-1 引用文献Aに記載された発明 引用文献Aには、「照明器具」に関する技術について開示されているところ、段落【0018】?段落【0029】の記載内容及び特に【図6】を参酌し、本願発明1の記載ぶりに倣って整理すると、以下の発明が記載されている。(以下、「引用発明A」という。) 「カバー12と灯具ボディ15と; 前記カバー12と灯具ボディ15内に収納され、基板20aおよびこの基板20aに実装されたLED20bを有する光源20と; 前記カバー12と灯具ボディ15体内に収納され、前記LED20bが発する光の配光を制御するレンズ22と; 前記灯具ボディ15のボディ基部16に固定することによって前記ボディ基部16との間に前記基板20aの周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記光源20を前記ボディ基部16に取り付けるとともに、レンズ22を内部に支持するレンズホルダ23と; を具備している灯具11。」 2-2対比・判断 (1)上記[理由1]について (1-1)本願発明1につて 本願発明1と引用発明Aとを対比すると、その意味、機能または構造からみて、 ア 後者の「カバー12と灯具ボディ15」は前者の「筐体」に相当し、以下同様に、「基板20a」は「基板」に、「LED20b」は「半導体発光素子」に、「光源20」は「発光モジュール」に、「レンズ22」は「光学部品」に、「灯具11」は「ランプ装置」に、それそれ相当する。 イ 後者の「レンズホルダ23」は、段落【0028】の記載内容及び【図6】の図示内容から、レンズ22及びLED20bを取り囲むように形成されているから、「枠状に形成され」ているといえる。 後者の「灯具ボディ15のボディ基部16」は、前者の「筐体」に相当する「カバー12と灯具ボディ15」の一部であるから、前者の「筐体」の一部であるといえる。 後者の「レンズホルダ23」を「灯具ボディ15のボディ基部16に固定することによって前記ボディ基部16との間に前記基板20aの周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記光源20を前記ボディ基部16に取り付ける」ことにより、基板20aが挟み込まれた状態で保持されることは明らかであるから、後者の「レンズホルダ23」は基板20aの周辺を保持する状態に形成されているといえる。 後者の「レンズホルダ23」が「レンズ22を内部に支持する」ことは、レンズホルダ23の内周面とレンズ22の外周面とで光源20に対してレンズ22を位置決めしているといえる。 以上のことから、後者の「前記灯具ボディ15のボディ基部16に固定することによって前記ボディ基部16との間に前記基板20aの周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記光源20を前記ボディ基部16に取り付けるとともに、レンズ22を内部に支持する」「レンズホルダ23」は、前者の「前記発光モジュールの前記基板の周辺を保持する枠状に形成され、前記筐体に固定することによって前記筐体との間に前記基板の周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記発光モジュールを前記筐体に取り付けるとともに、内周面と前記光学部品の外周面とで前記発光モジュールに対して前記光学部品を位置決めする」「ホルダ」に相当するといえる。 そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、 〔一致点〕 「筐体と; 前記筐体内に収納され、基板およびこの基板に実装された半導体発光素子を有する発光モジュールと; 前記筐体内に収納され、前記半導体発光素子が発する光の配光を制御する光学部品と; 前記発光モジュールの前記基板の周辺を保持する枠状に形成され、前記筐体に固定することによって前記筐体との間に前記基板の周辺の上面側および下面側を挟み込んだ状態で前記発光モジュールを前記筐体に取り付けるとともに、内周面と前記光学部品の外周面とで前記発光モジュールに対して前記光学部品を位置決めするホルダと; を具備しているランプ装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 「ホルダ」に関し、 本願発明1は、「上面側に段部を有し、この段部によって前記発光モジュールの前記基板の周辺の一部を下面方向および横方向に位置決めし保持する」のに対し、 引用発明Aは、かかる段部を有していない点。 したがって、本願発明1と引用発明Aとの間には相違点が存在するから、本願発明1は引用発明Aであるとはいえない。 (1-2)本願発明2につて 本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様に引用発明Aであるとはいえない。 (2)上記[理由2]について (2-1)対比 本願発明3と引用発明Aを対比すると、上記「第4 2-2(1)、(1-1)」で述べた〔一致点〕で一致し、〔相違点1〕及び以下に示す〔相違点2〕で相違する。 〔相違点2〕 本願発明3は、「ソケットを有する器具本体と;前記ソケットに装着される」「ランプ装置」を具備するのに対し、 引用発明Aは、かかるソケットを有する器具本体を具備していない点。 (2-2)判断 事案に鑑み、相違点1について検討する。 本願発明3の「ホルダ」に相当する引用発明Aの「レンズホルダ23」に関し、引用文献Aには、相違点1に係る段部を設けることは記載も示唆もされていない。また、引用文献Bには、「ソケット装置13を有する器具本体12を具備すること」が記載されているが(以下、「引用文献Bに記載されている事項」という。)、本願発明3の「ホルダ」に対応する反射体47に当該段部を設けることは記載されていない。 したがって、引用発明Aに引用文献Bに記載されている事項を適用しても、上記相違点1に係る本願発明3の構成に至るものではない。 そして、本願発明3は、上記「第3 2(3)イ」で述べたとおりの効果を奏するものである。 2-3 小活 以上のとおりであるから、本願発明1及び2は引用発明Aであるとはいえない。 また、本願発明3は、引用発明A及び引用文献Bに記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、当審の拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-10-26 |
出願番号 | 特願2011-68963(P2011-68963) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F21S)
P 1 8・ 113- WY (F21S) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 竹中 辰利 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 島田 信一 |
発明の名称 | ランプ装置および照明器具 |
代理人 | 熊谷 昌俊 |
代理人 | 河野 仁志 |