• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1321126
審判番号 不服2015-16721  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-11 
確定日 2016-11-28 
事件の表示 特願2014-509646「二枚のウェーハを接合するための方法及びデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日国際公開、WO2012/152507、平成26年 8月14日国内公表、特表2014-519700、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2011年5月11日、オーストリア共和国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年10月25日 特許協力条約第34条補正の翻訳文
平成26年 8月20日 拒絶理由通知
平成26年11月21日 意見書・手続補正書
平成27年 4月20日 拒絶査定
平成27年 9月11日 審判請求・手続補正書
平成28年 5月25日 拒絶理由通知(当審)
平成28年 8月23日 意見書・手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年8月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
第一および第二のウェーハ(2、3)を、第一および第二のウェーハ(2、3)が、前記第一のウェーハ(3)と前記第二のウェーハ(2)との間に位置する前記第一のウェーハ(3)の1つ以上の構造体(5)および前記第二のウェーハ(2)の1つ以上の構造体(5’)を介して、前記各構造体(5、5’)上の接合面(V)において一緒に接合されるように接合するためのデバイスであって、
前記第一および第二のウェーハ(2、3)は、それぞれ、第一および第二の面を有しており、前記第一のウェーハ(3)の構造体(5)は、前記第一のウェーハ(3)の第一の面に存在し、前記第二のウェーハ(2)の構造体(5’)は、前記第二のウェーハ(2)の第二の面に存在し、
前記デバイスは、
前記第一のウェーハ(3)を保持するための固定具(4)であって、前記第一のウェーハ(3)の前記第二の面は、前記固定具(4)に面している、固定具(4)と、
前記第一および第二のウェーハ(2、3)に接合圧力を印加するための、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面に接触する圧力面(D)を有する圧力伝達手段(1)であって、前記圧力面(D)の面積は、前記接合面(V)を形成する前記各構造体(5、5’)の表面の総面積よりも小さく、前記第二のウェーハ(2)の前記第二の面は、前記第一のウェーハ(3)の前記第一の面を向いている、圧力伝達手段(1)と、
前記圧力面(D)を、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面の複数の部分と逐次的に接触させることにより、前記接合圧力を、前記接合面(V)の複数の部分のそれぞれに印加する手段と
を備えており、
前記圧力面(D)は、さらに、前記圧力面(D)が少なくとも部分的に超音波に晒されると、前記超音波を前記接合面(V)に伝達するように構成されており、
前記圧力面(D)が楔型である、
ことを特徴とするデバイス。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成26年8月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由A、Bによって、拒絶をすべきものです。
……(中略)……
●理由A(特許法第29条第1項第3号)、理由B(同条第2項)について

(1)請求項1/引用文献等2、3

先記引用文献2(段落0013?0021、図1?4等)には、下側の半導体基板(7)をベース(5)に固定し、上側の半導体基板(8)の上面から加圧ローラー(1)により加圧して貼り合わせる装置が記載されている。前記構成を備えた装置は、加圧ローラにより加圧される面(本願請求項1の『圧力面』に相当。以下同様。)を、上側の半導体基板の複数の部分と逐次的に接触させることにより、貼り合わせの圧力(『接合圧力』)を貼り合わせ面(『接合面』)の複数の部分のそれぞれに印加する手段を備えているものと解される。
また、先記引用文献3(段落0107、035、0137、図7等)には、下側のウエハー(808)をステージ(211)に保持し、上側のウエハー(807)の上面から加圧手段(210)により加圧して接合する装置が記載されている。前記構成を備えた装置も、加圧手段により加圧される面(『圧力面』)を、上側のウエハーの複数の部分と逐次的に接触させることにより、接合圧力を接合面の複数の部分のそれぞれに印加する手段を備えているものと解される。
以上から、本願請求項1に係る発明は、先記引用文献2、3に記載されたものである。
なお、出願人は、意見書において、
『引用文献1?3の文献には、ウェーハ同士を接合する発明が確かに記載されておりますが、これらの文献において説明されているのは、ラミネート法(貼り合わせ法)であり、永続的接合については全く説明しておりません。さらに、引用文献4および5は、単に超音波を用いて接合を行う技術が説明されているだけであり、本願の新請求項1に係る発明の上記特徴について全く説明しておりません。
したがって、本願の新請求項1に係る発明は、引用文献1?5の文献に記載の発明に対して、新規性および進歩性を有するものと思料いたします。』
と主張している。
しかしながら、本願請求項1に係る発明は、接合が永続的である点が特定されていない。また、先記引用文献2及び3の構成においては、接合が永続的になされるものと解されるし、仮にそう解されないものであるとしても、先記引用文献2及び3の構成を永続的な接合に適用することに何ら困難性は見いだせない。
したがって、上記出願人による主張を採用することはできない。

よって、請求項1に係る発明は、引用文献2、3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、同請求項に係る発明は、引用文献2、3の記載に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)請求項2?4、6?8、10/引用文献等2、3

先の拒絶理由通知の理由1において示したとおりである。

(3)請求項9、11/引用文献等2、3

ウエハの接合面に電極等の構造体を備えることは、文献を挙げるまでなく慣用の技術にすぎない。

●理由B(特許法第29条第2項)について

(4)請求項5?9/引用文献等2?5

先の拒絶理由通知の理由2において示したとおりである。

<引用文献等一覧>

1.特開2006-245279号公報
2.特開平7-6937号公報
3.特開2009-220151号公報
4.特開2005-294824号公報
5.特開2007-301600号公報」

また、平成26年8月20日付け拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「(理由A)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(理由B)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
……(中略)……
1.請求項1?4、6?9/理由A、B/引用文献1?3
引用文献1(段落【0049】?【0054】、図9?12等)、2(段落【0013】?【0021】、図1?4等)、3(段落【0135】、【0137】、図7等)の各々には、本願請求項1?4、6,8、9に係る発明が記載されている。
さらに、圧力面の形状については、当業者が適宜設計しうる事項であるし、また、上記引用文献3に記載の押圧部分に係る複数の態様を勘案することにより当業者が任意の形状を採りうるものともいえる。

2.請求項5?8/理由B/引用文献1?5
ウェハの接合時に超音波振動を印加することは、引用文献4(段落【0036】、図2等)、5(段落【0023】、図1等)にも記載されているように周知技術にすぎない。
……(中略)……
引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2006-245279号公報
2.特開平7-6937号公報
3.特開2009-220151号公報
4.特開2005-294824号公報
5.特開2007-301600号公報」

2 原査定の理由についての当審の判断
(1)引用文献1ないし4の記載事項並びに引用発明1及び2
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の理由に引用され、本願についての優先権の主張の基礎とした出願の日(以下「本願の優先日」という。)の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開平7-6937号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(当審注.下線は、参考のために、当審において付したものである。以下において同じ。)
a「【請求項1】 半導体基板を他の基板に貼り合わせる半導体基板貼り合わせ装置において、
少なくとも一組の貼り合わせられる基板の貼り合わせ面の位置を決める基板位置決め手段と、
前記少なくとも一組の基板を、その貼り合わせ面が互いに接触しないように間隙をとって向かい合わせて保持する基板保持手段と、
前記一組の基板の端部から順に圧力を加えて貼り合わせる加圧手段と、
前記加圧手段の基板加圧位置に連動し、前記加圧されていない基板部分の前記間隙を保持する基板間隙制御手段と、
を有することを特徴とする半導体基板貼り合わせ装置。
【請求項2】 前記基板保持手段は、一方の基板を載せて真空吸引して保持する基板台と、他方の基板を真空吸引して持ち上げて保持する手段とにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板貼り合わせ装置。
・・・
【請求項8】 前記加圧手段は、移動可能なローラーであることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板貼り合わせ装置。」
b「【0013】
【実施例】[実施例1]図1は、本発明の実施例を示す外観斜視図であり、図2は図1の概略断面図である。図1、2において、(1)は加圧ローラー(加圧手段)、(2)は真空吸引口(基板保持手段)、(3)はベアリング、(4)はテーパ面、(5)はベース(基板台)、(6)は基板位置合わせ板(基板位置決め手段)、(7)は第一の半導体基板、(8)は第二の半導体基板、(9)はテーパ面ガイドを示す。
【0014】本実施例で、ベース(5)には、真空吸引溝を有し、ベース(5)上に位置決めしておいた半導体基板を平坦に吸引・固定することができる(基板保持手段)。
【0015】また、加圧ローラー(1)はテフロン製を用い、加圧ローラー(1)の軸が常にベース(5)面に平行な状態のまま軸に対し直角に進行し、加圧ローラー(1)が進行するとテーパ面(4)も加圧ローラー(1)と一体物としてテーパ面ガイド(9)に沿って動く構造になっている。
【0016】さらに真空吸引口(2)はベアリング(3)と一体物で、ベース(5)上のガイドにより垂直方向のみ動けるものとなっていることより、テーパ面(4)が動きテーパ面(4)上をベアリング(3)が転がることでベアリング(3)と真空吸引口(2)は上下方向に移動する。これにより基板間隙を制御している(基板間隙制御手段)。
【0017】まず、ベース(5)に第一の半導体基板(7)を基板位置合わせ板(6)にオリエンテーションフラット部が合うようにして置き真空吸引で固定する。
【0018】このとき、基板位置合わせ板(6)は加圧ローラー(1)の中心軸と角度を有している。これは半導体基板の面内方位方向が加圧ローラー(1)の加圧方向に合ってしまうことにより生じる割れを防ぐためである。
【0019】次に第二の半導体基板(8)を第一の半導体基板(7)に向かい合う形で基板位置合わせ板(6)にオリエンテーションフラット部を合わせる。このとき第二の半導体基板(8)は裏面の一部が図2で示すように真空吸引口(2)によって吸引・保持されていることにより第一の半導体基板(7)と第二の半導体基板(8)の間には間隙が生じ貼り合わせは行われない。
【0020】次に、加圧ローラー(1)を進行方向左側に動かすことにより2枚の半導体基板を加圧していく。このとき加圧ローラー(1)の進行に同期して真空吸引口(2)は下方向に移動するので2枚の半導体基板の間隙も徐々に小さくなって行き、加圧ローラー(1)の通過面順に貼り合わせが行われていく。
【0021】本実験では、加圧ローラー(1)進行前の状態(図3)で2枚の半導体基板の間隙(a)を0.15mmとし、加圧ローラー(1)の進行にともなって線形に間隙を小さくして行き、半導体基板の全面を加圧したとき(図4)の間隙(a)が0mmとなるように、すなわち、2枚の半導体基板が密着するように間隙を制御することにより、2枚の半導体基板の貼り合わせ部の広がりを加圧ローラー(1)の進行と同期させて進行することができ、よって、ランダムな貼り合わせ面進行によって生じる気泡混入を防ぐことができた。」
(イ)引用発明1
上記(ア)の引用文献1の記載と当該技術分野における技術常識より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「第1の半導体基板(7)と第2の半導体基板(8)を貼り合わせる半導体基板貼り合わせ装置において、
前記第1の半導体基板(7)と前記第2の半導体基板(8)の貼り合わせ面の位置を決める基板位置合わせ板(6)と、
前記第1の半導体基板(7)と前記第2の半導体基板(8)を、その貼り合わせ面が互いに接触しないように間隙をとって向かい合わせて保持するための基板保持手段であって、前記第1の半導体基板(7)を載せて真空吸引して保持する基板台(5)と、前記第2の半導体基板(8)を真空吸引して持ち上げて保持する真空吸引口(2)とにより構成される、基板保持手段と、
前記第1の半導体基板(7)と前記第2の半導体基板(8)の端部から順に圧力を加えて貼り合わせる加圧ローラー(1)と、
前記加圧ローラー(1)の基板加圧位置に連動し、加圧されていない基板部分の間隙を保持する基板間隙制御手段と、
を有することを特徴とする、
半導体基板貼り合わせ装置。」
イ 引用文献2の記載事項及び引用発明2
(ア)引用文献2の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-220151号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a「【0107】
また、デバイス基板808およびは蓋基板807は、樹脂により構成されたプリント基板、配線層が積み上げられたビルドアップ基板またはSi、SiO_(2)、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等、種々の材料で構成することができる。」
b「【0134】
3.本接合装置
次に、本接合工程を実行する本接合装置(本発明の「本接合手段」に相当)について説明する。図7は本接合装置を示す図であり、(a)?(c)は本接合装置のそれぞれ異なる態様を示す。なお、図7で示すそれぞれの本接合装置21?23は、上記した表面活性化処理による仮接合が行われた後に、大気中で当該両基板807,808の内部接合部831aどうしを接合して本接合する本接合処理(本接合工程)を行うものである。このように、本実施形態では、表面活性化・仮接合装置1および本接合装置21?23のいずれかにより本発明の「接合装置」が構成されている。
【0135】
(1)本接合装置(a)
図7(a)を参照して本接合装置21について説明する。同図(a)に示すように、本接合装置21は仮接合が行われた蓋基板807およびデバイス基板808を保持するステージ211と、当該ステージ211に保持された両基板807,808を加圧する際、加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段210とを備えている。したがって、加圧手段210により加圧位置をずらしながら、両基板807,808を加圧することで、外周接合部831bの内側に形成された内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる。」
(イ)引用発明2
上記(ア)の引用文献2の記載と当該技術分野における技術常識より、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「Si、SiO_(2)、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等で構成されたデバイス基板808と、Si、SiO_(2)、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等で構成された蓋基板807とを、両基板の内部接合部831aどうしを接合して本接合する本接合処理を行う本接合装置21であって、
前記本接合装置21は、前記蓋基板807及び前記デバイス基板808を保持するステージ211と、
前記ステージ211に保持された蓋基板807とデバイス基板808とを加圧する際、加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段210を備え、
前記加圧手段210により加圧位置をずらしながら、前記蓋基板807及び前記デバイス基板808を加圧することで、内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる、
本接合装置21。」
ウ 引用文献3の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2005-294824号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0033】
ヘッド部は接合時に超音波振動を併用するため、ヘッド7はホーン保持部24、ホーン25、振動子26から構成され、振動子による振動がホーンに伝達され、超音波振動をホーンが保持する被接合物へ伝達する。
・・・
【0036】
・・・
続いて8に示すように、ヘッドを下降させ、両ウエハーを接触させ、位置制御から圧力制御へと切り替え加圧する。圧力検出手段により接触を検出し高さ位置を認識しておいた状態で、圧力検出手段の値をトルク制御式昇降駆動モータにフィードバックし設定圧力になるように圧力コントロールする。初期加圧が加えられた状態で超音波振動を印加し、接合界面での応力が増加することにより低荷重で接合が進む。」
エ 引用文献4の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-301600号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0023】
図1において、真空チャンバ1内に配設されたステージ5上には、第2のウエハ12を保持した保持手段7が配置され、第2のウエハ12の上に第1のウエハ11が載置されている。前記ステージ5の上方には接合ヘッド4が配設され、加圧軸8から加えられる荷重により下降移動して第1及び第2の各ウエハ11,12を加圧すると共に、図示しない電極が第1のウエハ11に接触して直流電圧を印加し、加熱手段により第1及び第2の各ウエハ11,12を所定温度に加熱する。また、接合ヘッド4には、X軸超音波振動子2からX軸方向の超音波振動が印加され、Z軸超音波振動子3からZ軸方向の超音波振動が印加される。
・・・
【0025】
この直流電圧の印加に並行してX軸超音波振動子2及びZ軸超音波振動子3から接合ヘッド4にX軸方向及びZ軸方向の超音波振動を印加することにより、超音波振動は接合ヘッド4から加圧された状態の第1のウエハ11及び第2のウエハ12に伝達されるので、第1のウエハ11と第2のウエハ12との接合面に超音波振動が印加され、接合界面での応力が増加することにより、接合面間は低荷重であっても超音波振動により接合が進行する。」

(2)対比
ア 本願発明と引用発明1との対比
(ア)引用発明1における「第1の半導体基板(7)」及び「第2の半導体基板(8)」は、それぞれ、本願発明における「第一のウェーハ(3)」及び「第二のウェーハ(2)」に相当するといえる。
また、引用発明1における「半導体基板貼り合わせ装置」は、第1の半導体基板(7)と第2の半導体基板(8)を貼り合わせる装置であるから、「第1の半導体基板(7)及び第2の半導体基板(8)を接合するためのデバイス」であるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明1は、「第一および第二のウェーハ(2、3)を接合するためのデバイス」である点において共通するといえる。
(イ)引用文献1の図1及び図2の記載並びに当該技術分野における技術常識より、引用発明1における第1の半導体基板(7)及び第2の半導体基板(8)は、いずれも、「上面」及び「下面」を有しているといえ、当該「上面」及び「下面」は、それぞれ、本願発明の「第一の面」及び「第二の面」に相当するといえる。
そうすると、本願発明と引用発明1は、「前記第一および第二のウェーハ(2、3)は、それぞれ、第一および第二の面を有しており」という点において共通するといえる。
(ウ)引用発明1における「基板台(5)」は、第1の半導体基板(7)を載せて真空吸引して保持するものであるから、「第1の半導体基板(7)を保持するための固定具」であるといえる。
また、引用文献1の図1及び図2の記載より、引用発明1においては、第1の半導体基板(7)の下面が基板台(5)に面しているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明1は、「前記第一のウェーハ(3)を保持するための固定具(4)であって、前記第一のウェーハ(3)の前記第二の面は、前記固定具(4)に面している、固定具(4)」を備える点において共通するといえる。
(エ)引用発明1における「加圧ローラー(1)」は、第1の半導体基板(7)と第2の半導体基板(8)の端部から順に圧力を加えて貼り合わせるものであるから、「第1の半導体基板(7)と第2の半導体基板(8)に接合圧力を印加するための圧力伝達手段」であるといえる。
また、引用文献1の図1及び図2の記載より、引用発明1においては、加圧ローラー(1)と第2の半導体基板(8)の上面が接触するといえ、加圧ローラー(1)が第2の半導体基板(8)の上面と接触する部分は、本願発明における「圧力面」に相当するといえる。
また、引用文献1の図1及び図2の記載より、引用発明1においては、第2の半導体基板(8)の下面が、第1の半導体基板(7)の上面を向いているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明1は、「前記第一および第二のウェーハ(2、3)に接合圧力を印加するための、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面に接触する圧力面(D)を有する圧力伝達手段(1)であって、前記第二のウェーハ(2)の前記第二の面は、前記第一のウェーハ(3)の前記第一の面を向いている、圧力伝達手段(1)」を備える点において共通するといえる。
(オ)引用発明1における「加圧ローラー(1)」は、第1の半導体基板(7)と第2の半導体基板(8)の端部から順に圧力を加えて貼り合わせるものであるから、引用発明1は、「第2の半導体基板(8)の上面の複数の部分に逐次的に接触し、接合圧力を印加する手段」を備えたものであるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明1は、「前記圧力面(D)を、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面の複数の部分と逐次的に接触させることにより、前記接合圧力を印加する手段」を備える点において共通するといえる。
(カ)以上から、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。
a 一致点
「第一および第二のウェーハ(2、3)を接合するためのデバイスであって、
前記第一および第二のウェーハ(2、3)は、それぞれ、第一および第二の面を有しており、
前記デバイスは、
前記第一のウェーハ(3)を保持するための固定具(4)であって、前記第一のウェーハ(3)の前記第二の面は、前記固定具(4)に面している、固定具(4)と、
前記第一および第二のウェーハ(2、3)に接合圧力を印加するための、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面に接触する圧力面(D)を有する圧力伝達手段(1)であって、前記第二のウェーハ(2)の前記第二の面は、前記第一のウェーハ(3)の前記第一の面を向いている、圧力伝達手段(1)と、
前記圧力面(D)を、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面の複数の部分と逐次的に接触させることにより、前記接合圧力を印加する手段と、
を備えることを特徴とするデバイス。」
b 相違点
・相違点1-1
本願発明では、第一のウェーハ(3)の第一の面に構造体(5)が存在し、第二のウェーハ(2)の第二の面に構造体(5’)が存在し、第一のウェーハ(3)と第二のウェーハ(2)は前記各構造体(5、5’)上の接合面(V)において一緒に接合され、圧力面(D)の面積は前記接合面(V)を形成する前記各構造体(5、5’)の表面の総面積よりも小さく、接合圧力を前記接合面(V)の複数の部分のそれぞれに印加するのに対し、引用発明1では、第1の半導体基板(7)の上面に構造体が存在するとは特定されておらず、第2の半導体基板(8)の下面に構造体が存在するとは特定されておらず、第1の半導体基板(7)と第2の半導体基板(8)が構造体上の接合面において接合されるとは特定されておらず、加圧ローラー(1)が第2の半導体基板(8)の上面と接触する部分の面積が接合面を形成する各構造体の表面の総面積よりも小さいとは特定されておらず、接合圧力を構造体上の接合面の複数の部分のそれぞれに印加するとは特定されていない点。
・相違点1-2
本願発明では、圧力面(D)が少なくとも部分的に超音波に晒(さら)されると、前記超音波を前記接合面(V)に伝達するように構成されているのに対し、引用発明1では、加圧ローラー(1)が第2の半導体基板(8)の上面と接触する部分が少なくとも部分的に超音波に晒(さら)されると、前記超音波を接合面に伝達するとは特定されていない点。
・相違点1-3
本願発明では、圧力面(D)が楔(くさび)型であるのに対し、引用発明1では、加圧ローラー(1)の表面のうち第2の半導体基板(8)の上面と接触する部分が楔(くさび)型であるとは特定されていない点。
イ 本願発明と引用発明2との対比
(ア)引用発明2における「デバイス基板808」及び「蓋基板807」は、いずれもウエハー等で構成されるものであるから、それぞれ、本願発明における「第一のウェーハ(3)」及び「第二のウェーハ(2)」に相当するといえる。
また、引用発明2における「デバイス基板808の内部接合部831a」及び「蓋基板807の内部接合部831a」は、それぞれ、本願発明における「第一のウェーハ(3)の1つ以上の構造体(5)」及び「第二のウェーハ(2)の1つ以上の構造体(5’)」に相当するといえる。
また、引用発明2における「本接合装置21」は、デバイス基板808と蓋基板807とを、両基板の内部接合部831aどうしを接合して本接合する装置であるから、「デバイス基板808と蓋基板807を、デバイス基板808の内部接合部831a及び蓋基板の内部接合部831aを介して、各内部接合部831a上の接合面において一緒に接合されるように接合するためのデバイス」であるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明2は、「第一および第二のウェーハ(2、3)を、第一および第二のウェーハ(2、3)が、前記第一のウェーハ(3)と前記第二のウェーハ(2)との間に位置する前記第一のウェーハ(3)の1つ以上の構造体(5)および前記第二のウェーハ(2)の1つ以上の構造体(5’)を介して、前記各構造体(5、5’)上の接合面(V)において一緒に接合されるように接合するためのデバイス」である点において共通するといえる。
(イ)引用文献2の図7(a)の記載及び当該技術分野における技術常識より、引用発明2におけるデバイス基板808及び蓋基板807は、いずれも、「上面」及び「下面」を有しているといえ、当該「上面」及び「下面」は、それぞれ、本願発明の「第一の面」及び「第二の面」に相当するといえる。
また、引用文献2の図7(a)の記載より、引用発明2における「デバイス基板808の内部接合部831a」はデバイス基板808の上面に存在するといえ、「蓋基板807の内部接合部831a」は蓋基板807の下面に存在するといえる。
そうすると、本願発明と引用発明2は、「前記第一および第二のウェーハ(2、3)は、それぞれ、第一および第二の面を有しており、前記第一のウェーハ(3)の構造体(5)は、前記第一のウェーハ(3)の第一の面に存在し、前記第二のウェーハ(2)の構造体(5’)は、前記第二のウェーハ(2)の第二の面に存在」する点において共通するといえる。
(ウ)引用発明2における「ステージ211」は、デバイス基板808を保持するものであるから、「デバイス基板808を保持するための固定具」であるといえる。
また、引用文献2の図7(a)の記載より、引用発明2におけるデバイス基板808の下面はステージ211に面しているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明2は、「前記第一のウェーハ(3)を保持するための固定具(4)であって、前記第一のウェーハ(3)の前記第二の面は、前記固定具(4)に面している、固定具(4)」を備える点において共通するといえる。
(エ)引用文献2の図7(a)の記載より、引用発明2における加圧手段210は、蓋基板807の上面に接触するといえ、加圧手段210が蓋基板807の上面に接触する部分は、本願発明の「圧力面」に相当するといえる。
また、引用発明2においては、加圧手段210により加圧位置をずらしながら、前記蓋基板807及び前記デバイス基板808を加圧することで、内部接合部831aのすべてを確実に接合することができるのであるから、引用発明2の「加圧手段210」は、「蓋基板807及びデバイス基板808に接合圧力を印加するための圧力伝達手段」であるといえる。
また、引用文献2の図7(a)の記載より、引用発明2においては、蓋基板807の下面は、デバイス基板808の上面を向いているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明2は、「前記第一および第二のウェーハ(2、3)に接合圧力を印加するための、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面に接触する圧力面(D)を有する圧力伝達手段(1)であって、前記第二のウェーハ(2)の前記第二の面は、前記第一のウェーハ(3)の前記第一の面を向いている、圧力伝達手段(1)」を備える点において共通するといえる。
(オ)引用文献2の図7(a)の記載より、引用発明2における加圧手段210は蓋基板807の上面の一部分に接触しており、加圧手段210による圧力は、内部接合部831aの接合面の一部に印加されているといえる。
また、引用発明2においては、前記加圧手段210により加圧位置をずらしながら、前記蓋基板807及び前記デバイス基板808を加圧することで、内部接合部831aのすべてを確実に接合することができるのであるから、引用発明2は、「加圧手段210の圧力面を蓋基板807の上面の複数の部分と逐次的に接触させることにより、接合圧力を、内部接合部831aの間の接合面の複数の部分のそれぞれに印加する手段」を備えているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明2は、「前記圧力面(D)を、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面の複数の部分と逐次的に接触させることにより、前記接合圧力を、前記接合面(V)の複数の部分のそれぞれに印加する手段」を備える点において共通するといえる。
(カ)以上から、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。
a 一致点
「第一および第二のウェーハ(2、3)を、第一および第二のウェーハ(2、3)が、前記第一のウェーハ(3)と前記第二のウェーハ(2)との間に位置する前記第一のウェーハ(3)の1つ以上の構造体(5)および前記第二のウェーハ(2)の1つ以上の構造体(5’)を介して、前記各構造体(5、5’)上の接合面(V)において一緒に接合されるように接合するためのデバイスであって、
前記第一および第二のウェーハ(2、3)は、それぞれ、第一および第二の面を有しており、前記第一のウェーハ(3)の構造体(5)は、前記第一のウェーハ(3)の第一の面に存在し、前記第二のウェーハ(2)の構造体(5’)は、前記第二のウェーハ(2)の第二の面に存在し、
前記デバイスは、
前記第一のウェーハ(3)を保持するための固定具(4)であって、前記第一のウェーハ(3)の前記第二の面は、前記固定具(4)に面している、固定具(4)と、
前記第一および第二のウェーハ(2、3)に接合圧力を印加するための、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面に接触する圧力面(D)を有する圧力伝達手段(1)であって、前記第二のウェーハ(2)の前記第二の面は、前記第一のウェーハ(3)の前記第一の面を向いている、圧力伝達手段(1)と、
前記圧力面(D)を、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面の複数の部分と逐次的に接触させることにより、前記接合圧力を、前記接合面(V)の複数の部分のそれぞれに印加する手段と、
を備えることを特徴とするデバイス。」
b 相違点
・相違点2-1
本願発明では、圧力面(D)の面積は接合面(V)を形成する各構造体(5、5’)の表面の総面積よりも小さいのに対し、引用発明2では、加圧手段210が蓋基板807の上面に接触する部分の面積が、接合面を形成する内部接合部831aの表面の総面積よりも小さいとは特定されていない点。
・相違点2-2
本願発明では、圧力面(D)が少なくとも部分的に超音波に晒(さら)されると、前記超音波を接合面(V)に伝達するように構成されているのに対し、引用発明2では、加圧手段210が蓋基板807の上面に接触する部分が少なくとも部分的に超音波に晒(さら)されると、前記超音波を接合面に伝達するとは特定されていない点。
・相違点2-3
本願発明では、圧力面(D)が楔(くさび)型であるのに対し、引用発明2では、加圧手段210が蓋基板807の上面に接触する部分が楔(くさび)型であるとは特定されていない点。

(3)判断
ア 本願発明の新規性について
上記(2)ア(カ)bのとおり、本願発明と引用発明1とは、相違点1-1ないし1-3において相違する。したがって、本願発明と引用発明1が同一であるとはいえない。
また、上記(2)イ(カ)bのとおり、本願発明と引用発明2とは、相違点2-1ないし2-3において相違する。したがって、本願発明と引用発明2が同一であるとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明1又は2と同一であるとはいえない。
イ 本願発明の進歩性について
上記相違点1-3及び2-3について検討する。
引用文献1ないし4の記載事項は上記(1)ア(ア)、イ(ア)、ウ及びエに摘記したとおりであり、上記相違点1-3及び2-3に係る構成について記載されているとは認められず、また、当該構成を示唆する記載があるとも認められない。
そうすると、上記相違点1-3及び2-3に係る構成は、引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に相当し得たものであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本願の請求項2ないし8に係る発明の新規性及び進歩性について
本願の請求項2ないし6は、請求項1を引用しており、本願の請求項2ないし6に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
また、本願の請求項7に係る発明は、本願発明を「方法」の発明として表現した発明であり、上記相違点1-3及び2-3に対応する発明特定事項である「前記圧力面(D)が楔(くさび)形である」という構成を備えている。
また、本願の請求項8は、請求項7を引用しており、本願の請求項8に係る発明は請求項7に係る発明の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、本願の請求項2ないし8に係る発明は、引用発明1又は2と同一であるとはいえず、また、上記相違点1-3及び2-3に係る構成が引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に相当し得たものであるとはいえない以上、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 原査定の理由についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし8に係る発明は、引用発明1又は2と同一のものではなく、また、引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成28年5月25日付けで当審より通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
「[理由1]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[理由2]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献等 1-4
・備考
……(中略)……
イ 上記アの(ア)ないし(オ)から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりであると認められる。

(ア)一致点
「第一および第二のウェーハを、前記第一および第二のウェーハが、前記第一のウェーハと前記第二のウェーハとの間に位置する接合面において直接的または間接的に一緒に接合されるように、接合するためのデバイスであって、
前記第一および第二のウェーハは、それぞれ、第一および第二の面を有しており、
前記デバイスは、前記第一のウェーハを保持するための固定具であって、前記第一のウェーハの前記第二の面は、前記固定具に面している、固定具と、
前記第一および第二のウェーハに接合圧力を印加するための、前記第二のウェーハの前記第一の面に接触する圧力面を有する圧力伝達手段であって、前記第二のウェーハの前記第二の面は、前記第一のウェーハの前記第一の面を向いている、圧力伝達手段と、
前記圧力面を、前記第二のウェーハの前記第一の面の複数の部分と逐次的に接触させることにより、前記接合圧力を、前記接合面の複数の部分のそれぞれに印加する手段と
を備えることを特徴とするデバイス。」

(イ)相違点
・相違点1
本願発明においては、圧力面(D)が接合面(V)よりも小さいのに対し、引用発明においては、圧力面(D)と接合面(V)のいずれが小さいのかが明確に特定されていない点。

・相違点2
本願発明は、「前記圧力面(D)は、さらに、前記圧力面(D)が少なくとも部分的に超音波に晒されると、前記超音波を前記接合面(V)に伝達するように構成されている」という発明特定事項を含むのに対し、引用発明はこの発明特定事項を含まない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

・相違点1について
上記(1)イの引用文献1の記載と、当該記載で参照する図7(a)から、引用発明における「加圧手段210」の下面の大きさを、「蓋基板807」の上面の大きさよりも小さなものとしてもよいことは、当業者であれば容易に理解し得る事項である。また、引用発明における「蓋基板807」の上面と下面の大きさが略同程度であることは、当業者にとっては明らかな事項である。これらの点を踏まえると、引用発明において、圧力面(「加圧手段210」の下面)の大きさを、接合面(「蓋基板807」の下面)よりも小さなものとし、相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
なお、上記においては、引用発明における「デバイス基板808の上面」及び「蓋基板807の下面」が本願発明の「接合面(V)」に相当するものとしたが、以下では、引用発明において「デバイス基板808」と「蓋基板807」とがじかに接触する面、すなわち、両基板の各「内部接合部831a」及び「外周接合部831b」の接合面を全て含む面)が、本願発明の「接合面(V)」に相当するものとした場合についても、検討する。
引用発明における「加圧手段210」は、加圧位置をずらしながら両基板を加圧することで「内部接合部831a」を確実に接合するものであるから、当該「加圧手段210」が「蓋基板807」に接触する部分の面積、すなわち圧力面の面積は、個々の「内部接合部831a」の接合面の面積よりやや大きな程度であってもよいことは、当業者であれば容易に理解できる事項である。また、引用文献1の図3等に示されるように、「内部接合部831a」は「デバイス基板808」の全体にわたって多数配置されているのであるから、両基板の各「内部接合部831a」及び「外周接合部831b」の接合面を全てあわせた面積は、個々の「内部接合部831a」の接合面の面積の数倍以上となることは、当業者にとって明らかである。してみれば、引用発明において、圧力面(加圧装置の下面のうち蓋基板の上面に接触する部分)の面積を、接合面(両基板の各「内部接合部831a」及び「外周接合部831b」の接合面を全て含む面)の面積よりも小さなものとし、相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

・相違点2について
加圧手段を用いて二枚のウエハを接合する際に、当該加圧手段から接合面に対して超音波を伝達させる技術は、引用文献2ないし4の下記摘記箇所に記載されているように、本願出願時において周知であったから、引用発明において、「加圧手段210」によって「デバイス基板808」と「蓋基板807」を加圧することにより本接合を行う際に、「加圧手段210の下面」から接合面に超音波を伝達する構成とすること(相違点2に係る構成とすること)は、当業者であれば適宜なし得たことである。
……(中略)……
(5)請求項1についてのむすび
上記の通り、本願発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
……(中略)……
●理由2(明確性)について

・請求項 1-10
本願の請求項1に「第一および第二のウェーハ(2、3)を、前記第一および第二のウェーハ(2、3)が、前記第一のウェーハ(3)と前記第二のウェーハ(2)との間に位置する接合面(V)において直接的または間接的に一緒に接合されるように、接合するためのデバイスであって、」と記載されている(当審注.下線は、参考のために、当審において付したものである。以下において同じ。)が、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「間接的に一緒に接合される」との記載が、下記(a)ないし(c)のいずれを意味するのかが不明である。

(a)「第一のウェーハ」と「第二のウェーハ」が、「構造体」等を介して間接的に接合される。
(b)「第一のウェーハ上の構造体」と「第二のウェーハ上の構造体」とが、接着剤層等を介して間接的に接合される。
(c)上記以外。

また、上記に伴い、本願の請求項1に係る発明における「接合面(V)」が、「第一のウェーハ」及び「第二のウェーハ」の表面のことを意味しているのか、それとも「第一のウェーハ上の構造体」及び「第二のウェーハ上の構造体」の表面のことを意味しているのかが不明である。
本願の請求項9の「前記第一および第二のウェーハ(2、3)は、前記接合面(V)において、直接的または間接的に一緒に接合され」という記載についても、上記と同様の点が指摘される。
また、請求項1を引用する請求項2-8、及び請求項9を引用する請求項10についても、上記と同様の点が指摘される。
よって、請求項1-10に係る発明は明確でない。

・請求項 1-8
本願の請求項1に「前記圧力面(D)は前記接合面(V)よりも小さく」と記載されているが、接合面の大きさは接合の対象となるウェーハ自体の大きさやウェーハ上に形成された構造体の形状等によって変化するものであるから、上記のような記載では圧力面の大きさを一意に特定できず、請求項1に係る発明である「デバイス」の構成を特定することができない。
請求項1を引用する請求項2-8についても、上記と同様の点が指摘される。
よって、請求項1-8に係る発明は明確でない。

・請求項 2-8
本願の請求項2に「前記圧力面(D)が前記接合面(V)の<80%である」との記載があるが、日本語として不適切な表現であり、記載の意味を明確に把握することができない。(なお、「前記圧力面(D)が前記接合面(V)の大きさの80%よりも小さい」との意味であれば、そのように記載することが適切である。)
請求項2を引用する請求項3-8についても、上記と同様のことがいえる。
よって、請求項2-8に係る発明は明確でない。

・請求項 3-8
本願の請求項3に「前記圧力面(D)が、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面に沿って少なくとも部分的に移動する」との記載があるが、「圧力面(D)のうちの、少なくとも一部分が移動する」という意味であるのか、「圧力面(D)が、第二のウェーハ(2)の第一の面のうちの少なくとも一部分に沿って移動する」という意味であるのかが不明である。
請求項3を引用する請求項4-8についても、上記と同様のことがいえる。
よって、請求項3-8に係る発明は明確でない。

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2009-220151号公報
2.特開2005-294824号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2007-301600号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2005-142537号公報(周知技術を示す文献)」

2 当審拒絶理由についての判断
(1)進歩性について
ア 当審引用文献1ないし4の記載事項及び当審引用発明
(ア)当審引用文献1の記載事項及び当審引用発明
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-220151号公報(以下「当審引用文献1」という。)には、上記第3の2(1)イ(ア)で摘記したとおりの事項が記載されており、当審引用文献1には、上記第3の2(1)イ(イ)のとおり、下記の発明(引用発明2)が記載されていると認められる(以下では、下記の発明(引用発明2)を、「当審引用発明」という。)。
「Si、SiO_(2)、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等で構成されたデバイス基板808と、Si、SiO_(2)、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等で構成された蓋基板807とを、両基板の内部接合部831aどうしを接合して本接合する本接合処理を行う本接合装置21であって、
前記本接合装置21は、前記蓋基板807及び前記デバイス基板808を保持するステージ211と、
前記ステージ211に保持された蓋基板807とデバイス基板808とを加圧する際、加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段210を備え、
前記加圧手段210により加圧位置をずらしながら、前記蓋基板807及び前記デバイス基板808を加圧することで、内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる、
本接合装置21。」
(イ)当審引用文献2の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2005-294824号公報(以下「当審引用文献2」という。)には、上記第3の2(1)ウで摘記したとおりの事項が記載されている。
(ウ)当審引用文献3の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-301600号公報(以下「当審引用文献3」という。)には、上記第3の2(1)エで摘記したとおりの事項が記載されている。
(エ)当審引用文献4の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2005-142537号公報(以下「当審引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0049】
図1に本発明の一実施形態に係る超音波振動接合装置を示す。超音波振動の伝達を説明する上で共振器側から振動が伝わる被接合物の順を第1、第2と呼ぶこととする。この実施形態では第1の被接合物であるチップ20と第2の被接合物である基板22を接合するための装置を例として上げる。チップ20の接合面には接続端子である金属突起21を多数有する。基板22の接合面には接続端子である金属パッド23が金属突起21に対向した位置に配している。チップ側金属突起21と基板側金属パッド23が超音波振動により接合されることにより、チップ20が基板22に面実装される。
超音波振動接合装置は、大まかには、上下駆動機構25とヘッド部26とステージ10とステージテーブル12からなる接合機構27、位置認識部29、架台フレーム13,搬送部30、制御装置24からなる。
・・・
モータのトルクにより一定の加圧力が両被接合物間に加えられた状態で、超音波接合を開始する。
・・・
【0050】
・・・
これらの縦振動を使用した接合装置におけるヘッド構造としては、図2に示す50%以上縦振動を含む効率的な、振動子、被接合物保持手段、被接合物が縦に配列されたタイプがある。それ以外では、10%以上の縦振動を含む被接合物保持手段を揺動させるタイプとして次の2つのものが使用できる。まず、図4に示す、振動子、被接合物保持手段がキャピラリー方式である構造からなる。また、図3に示す、複数の振動子が縦型被接合物保持手段の鉛直周辺に配置された複合型振動ヘッドである構造からなる。
一実施形態としてチップと基板における実施形態を説明したが、被接合物は半導体以外の材料でも良い。また接合部は金、Al、銅、などが適するが、その他の金属や金属以外のものでも超音波振動で接合できるものであれば良い。」
・・・
チップはチップ、ウエハーなどどのような形態であっても良い。また、金属突起は個々に独立した複数の形状であっても良いし、ある領域を閉じ込めたつながった形状であっても良い。また、全面が接合面であっても良い。」
イ 対比
本願発明と当審引用発明とを対比すると、上記第3の2(2)イ(カ)aに示した点において一致し、上記第3の2(2)イ(カ)bに示した相違点2-1ないし2-3において相違する。
ウ 判断
(ア)本願発明の進歩性について
上記相違点2-3について検討する。
当審引用文献1ないし4の記載事項は上記ア(ア)ないし(エ)のとおりであり、上記相違点2-3に係る構成について記載されているとは認められず、また、当該構成を示唆する記載があるとも認められない。
そうすると、上記相違点2-3に係る構成は、当審引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に相当し得たものであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当審引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本願の請求項2ないし8に係る発明の進歩性について
本願の請求項2ないし6は、請求項1を引用しており、本願の請求項2ないし6に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
また、本願の請求項7に係る発明は、本願発明を「方法」の発明として表現した発明であり、上記相違点2-3に対応する発明特定事項である「前記圧力面(D)が楔(くさび)形である」という構成を備えている。
また、本願の請求項8は、請求項7を引用しており、本願の請求項8に係る発明は請求項7に係る発明の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、上記相違点2-3に係る構成が当審引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に相当し得たものであるとはいえない以上、本願の請求項2ないし8に係る発明は、当審引用文献1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
進歩性についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし8に係る発明は、当審引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、当審拒絶理由の「理由1」に示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。

(2)記載要件について
ア 当審拒絶理由の「理由2」において、「間接的に一緒に接合される」との記載の意味が不明確である旨が指摘されたが、当該記載は、平成28年8月23日付け手続補正書による補正により削除された。
イ 当審拒絶理由の「理由2」において、「接合面(V)」が「第一のウェーハ」及び「第二のウェーハ」の表面のことを意味しているのか、それとも「第一のウェーハ上の構造体」及び「第二のウェーハ上の構造体」の表面のことを意味しているのかが不明である旨が指摘されたが、平成28年8月23日付け手続補正書による補正により、「接合面(V)」が「各構造体(5、5’)上」にあることが明確となった。
ウ 当審拒絶理由の「理由2」において、接合面の大きさは接合の対象となるウェーハ自体の大きさやウェーハ上に形成された構造体の形状等によって変化するものであるから、「前記圧力面(D)は前記接合面(V)よりも小さく」との記載では圧力面の大きさを一意に特定できず、「デバイス」の構成を特定することができない旨が指摘されたが、第一のウェーハ及び第二のウェーハを特定することによって、圧力面(D)及び接合面(V)の面積を特定することが可能となり、「デバイス」の構成を特定することができるものと認められる。
エ 当審拒絶理由の「理由2」において、「前記圧力面(D)が前記接合面(V)の<80%である」との記載の意味を明確に把握することができない旨が指摘されたが、平成28年8月23日付け手続補正書による補正により、当該記載は「前記圧力面(D)の面積が、前記接合面(V)を形成する前記各構造体(5、5’)の表面の総面積の80%よりも小さい」と補正され、記載の意味が明確となった。
オ 当審拒絶理由の「理由2」において、「前記圧力面(D)が、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面に沿って少なくとも部分的に移動する」との記載が、「圧力面(D)のうちの、少なくとも一部分が移動する」という意味であるのか、「圧力面(D)が、第二のウェーハ(2)の第一の面のうちの少なくとも一部分に沿って移動する」という意味であるのかが不明である旨が指摘されたが、平成28年8月23日付け手続補正書による補正により、当該記載は「前記圧力面(D)が、前記第二のウェーハ(2)の前記第一の面のうちの少なくとも一部分に沿って移動する」と補正され、記載の意味が明確となった。
カ 上記アないしオのとおり、当審拒絶理由の「理由2」に示した拒絶の理由は全て解消しているから、当該理由によっては、本願を拒絶することはできない。

(3)当審拒絶理由についてのまとめ
以上のとおり、当審拒絶理由の「理由1」及び「理由2」に示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 結言
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-11 
出願番号 特願2014-509646(P2014-509646)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 剛  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 須藤 竜也
加藤 浩一
発明の名称 二枚のウェーハを接合するための方法及びデバイス  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 高橋 佳大  
代理人 久野 琢也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ