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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1321163
審判番号 不服2015-9691  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-26 
確定日 2016-11-02 
事件の表示 特願2013-144651「レンズ系」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月29日出願公開、特開2015- 18086〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月10日の出願であって、平成26年11月25日に手続補正書が提出され、平成27年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年5月26日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成27年5月26日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
平成27年5月26日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、本件補正前の特許請求の範囲(平成26年11月25日に提出された手続補正書による補正後のもの)が下記(1)のとおりであったものを、下記(2)のとおりとする補正である(下線は補正箇所を示し、当審が付した。)。

(1)本件補正前の特許請求の範囲(平成26年11月25日に提出された手続補正書による補正後のもの)
「 【請求項1】
焦点距離fである固定焦点および長さTTLを有するレンズ系であって、
物体と結像面との間の光軸に沿って前記物体から離れるにしたがって配置された第一レンズ、第二レンズ、絞り、第三レンズ、第四レンズおよび第五レンズから構成されており、
前記第一レンズは、屈折力が負の凸凹レンズであり、凸面が前記物体に対向し、凹面が前記結像面に対向し、
前記第二レンズは、屈折力が正であり、前記物体に対向する側面が凸面であり、
前記第三レンズは、屈折力が正である両凸レンズであり、
前記第四レンズは、屈折力が負である両凹レンズであり、
前記第五レンズは、凸凹レンズであり、前記結像面に対向する側面が凹面であり、前記物体に対向する側面が凸面であり、
前記焦点距離fおよび前記長さTTLは、下記式4を満たし、
前記第一レンズの厚さD_(1)および前記長さTTLは、下記式5を満たすことを特徴とするレンズ系。
0.1<f/TTL<0.29・・・式4
D_(1)/TTL<0.17・・・式5
【請求項2】
前記第一レンズは、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項3】
前記第一レンズは、プラスチック材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項4】
前記第一レンズは、ガラス材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項5】
前記第二レンズは、前記結像面に対向する側面が凸面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項6】
前記第二レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項7】
前記第二レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項8】
前記第二レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項9】
前記第三レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項10】
前記第三レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項11】
前記第三レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項12】
前記第四レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項13】
前記第四レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項14】
前記第四レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項15】
前記第三レンズは、結像面に対向する側面が前記第四レンズの前記物体に対向している側面に接合していることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項16】
前記第五レンズは、屈折力が正であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項17】
前記第五レンズは、屈折力が負であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項18】
前記第五レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項19】
前記第三レンズの焦点距離f3および前記第四レンズの焦点距離f4は、下記の式2を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
0.8<|f3/f4|<1.25・・・式2
【請求項20】
前記第三レンズのアッベ数Vd3および前記第四レンズのアッベ数Vd4は、下記の式3を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
Vd3-Vd4>20・・・式3」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
焦点距離fである固定焦点および長さTTLを有するレンズ系であって、
物体と結像面との間の光軸に沿って前記物体から離れるにしたがって配置された第一レンズ、第二レンズ、絞り、第三レンズ、第四レンズおよび第五レンズから構成されており、
前記第一レンズは、屈折力が負の凸凹レンズであり、凸面が前記物体に対向し、凹面が前記結像面に対向し、
前記第二レンズは、屈折力が正であり、前記物体に対向する側面が凸面であり、
前記第三レンズは、屈折力が正である両凸レンズであり、
前記第四レンズは、屈折力が負である両凹レンズであり、
前記第五レンズは、凸凹レンズであり、前記結像面に対向する側面が凹面であり、前記物体に対向する側面が凸面であり、
前記焦点距離fおよび前記長さTTLは、下記式1を満たし、
前記第三レンズの焦点距離f3および前記第四レンズの焦点距離f4は、下記の式2を満たすレンズ系。
0.1<f/TTL<0.3・・・式1
0.8<|f3/f4|<1.25・・・式2
【請求項2】
前記第一レンズは、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項3】
前記第一レンズは、プラスチック材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項4】
前記第一レンズは、ガラス材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項5】
前記第二レンズは、前記結像面に対向する側面が凸面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項6】
前記第二レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項7】
前記第二レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項8】
前記第二レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項9】
前記第三レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項10】
前記第三レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項11】
前記第三レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項12】
前記第四レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項13】
前記第四レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項14】
前記第四レンズは、ガラス材料から構成され、少なくとも一つの側面が球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項15】
前記第三レンズは、結像面に対向する側面が前記第四レンズの前記物体に対向している側面に接合していることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項16】
前記第五レンズは、屈折力が正であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項17】
前記第五レンズは、屈折力が負であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項18】
前記第五レンズは、プラスチック材料から構成され、少なくとも一つの側面が非球面であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
【請求項19】
前記第三レンズのアッベ数Vd3および前記第四レンズのアッベ数Vd4は、下記の式3を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズ系。
Vd3-Vd4>20・・・式3」

2 新規事項の追加及び本件補正の目的
(1)本件補正後の請求項1に係る上記1の補正の目的について
ア 本件補正後の請求項1に係る上記1の補正は、次の(ア)ないし(ウ)の補正からなるものである。
(ア)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である式4(0.1<f/TTL<0.29)を削除し、式1(0.1<f/TTL<0.3)を追加するとともに、「焦点距離f」および「長さTTL」が満たすべき式を式4から式1に変更する補正。
(イ)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第一レンズの厚さD_(1)」および「長さTTL」が、式5(D_(1)/TTL<0.17)を満たすことを削除する補正。
(ウ)本件補正前の請求項1に新たに式2(0.8<|f3/f4|<1.25)を追加するとともに、「第三レンズの焦点距離f3」および「第四レンズの焦点距離f4」が当該式2を満たすことを追加する補正。
イ 上記ア(ア)の補正は、「f/TTL」が満たすべき範囲を「0.1<f/TTL<0.29」から「0.1<f/TTL<0.3」に実質的に拡張するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでないことは明らかである。また、原審の審査官は、特許法第36条第6項第2号(明確性要件)違反の拒絶理由を通知しておらず、上記ア(ア)の補正は、同法同条同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるともいえない。さらに、上記ア(ア)の補正は、同法同条同項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものであるとも、同法同条同項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであるともいえない。
また、上記ア(イ)の補正は、発明特定事項を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでないことは明らかである。また、上記ア(イ)の補正は、同法同条同項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものであるとも、同法同条同項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであるとも、同法同条同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるともいえない。
上記ア(ウ)の補正は、発明特定事項を追加するものであるから、同法同条同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
ウ 上記ア及びイからみて、本件補正後の請求項1に係る上記1の補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号のいずれかに掲げる事項を目的としたものであるとはいえないから、同条同項の規定に違反してなされたものである。

(2)本件補正の請求項1に係る補正以外の補正の目的について
ア 本件補正は、請求項1に係る上記1の補正以外に、本件補正前の請求項19を削除するとともに、本件補正前の請求項20を請求項19に繰り上げる補正を含むものである。
イ 上記アの補正が、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものであることは明らかである。
ウ 上記ア及びイからみて、本件補正の請求項1に係る補正以外の補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものであるといえるから、同条同項が規定する要件を充たすものである。

(3)本件補正後の特許請求の範囲の補正が新規事項を追加するものであるか否かについて
ア 本件補正後の請求項1に係る上記1の補正は、上記(1)アの(ア)ないし(ウ)の補正からなるものである。
上記(1)アの(ア)の補正における式1(0.1<f/TTL<0.3)は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「当初明細書等」という。)の「第1実施形態」の説明において記載されており(【0019】参照。)、また、「第1実施形態」のレンズ系1の「焦点距離f」および「長さTTL」が当該式1を満足することも、当該【0019】に記載されている。さらに、当初明細書の「第2実施形態」ないし「第9実施形態」の説明においても、式1及び各実施形態のレンズ系2ないし9の「焦点距離f」および「長さTTL」が当該式1を満足することが、それぞれ記載されている(【0037】、【0051】、【0065】、【0079】、【0093】、【0107】、【0121】、【0135】参照。)。
また、上記(1)アの(ウ)の補正における式2(0.8<|f3/f4|<1.25)も、当初明細書の「第1実施形態」の説明において記載されており(【0019】参照。)、また、「第1実施形態」のレンズ系1の「第三レンズの焦点距離f3」および「第四レンズの焦点距離f4」が当該式2を満たすことも、当該【0019】に記載されている。さらに、当初明細書の「第2実施形態」ないし「第9実施形態」の説明においても、式2及び各実施形態のレンズ系2ないし9の「第三レンズの焦点距離f3」および「第四レンズの焦点距離f4」が当該式2を満足することが、それぞれ記載されている(【0037】、【0051】、【0065】、【0079】、【0093】、【0107】、【0121】、【0135】参照。)。
さらに、上記(1)アの(ア)の補正における式4及びレンズ系の「焦点距離f」および「長さTTL」が式4を満たすこと、並びに、上記(1)アの(イ)の補正における式5及びレンズ系の「第一レンズの厚さD_(1)」および「長さTTL」が式5を満たすことは、原審の審査官が平成27年1月26日付け拒絶査定の「<新たな拒絶理由>」において指摘しているように、いずれも、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明な事項であるともいえないものであるから、これら式4及び式5を削除したことが、新規事項の追加に当たらないことは明らかである。
以上のことからみて、本件補正後の請求項1に係る上記1の補正は、新規事項を追加するものではない。
イ 本件補正の請求項1に係る補正以外の補正は、上記(2)アに示したとおり、本件補正前の請求項19を削除するとともに、本件補正前の請求項20を請求項19に繰り上げる補正であるところ、当該補正が新規事項を追加するものでないことは明らかである。
ウ 上記ア及びイからみて、本件補正は、当初明細書等の記載との関係で、新たな技術的事項を導入しないものであるといえるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(4)小括
以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1の補正は特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていないから、本件補正は同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成26年11月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
本願の優先日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用文献8として引用された国際公開第2009/063766号(以下「引用例」という。)には、「変倍光学系、撮像装置およびデジタル機器」(発明の名称)に関し、図とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0001]
本発明は、変倍光学系に関し、特に、小型化の可能な変倍光学系に関する。そして、本発明は、この変倍光学系を備える撮像装置およびこの撮像装置を搭載したデジタル機器に関する。」

(2)「[0006]
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、比較的高い変倍比とコンパクト化とを達成しつつ、広角端で撮影用途に適した画角を確保しながら、テレセントリック性、撮像素子への入射角の格差、ならびに、球面収差、色収差、非点収差および歪曲収差等の諸収差を背景技術に較べてより補正することができる変倍光学系、これを備えた撮像装置およびデジタル機器を提供することである。」

(3)「[0103]
[実施例1]
図4は、実施例1の変倍光学系におけるレンズ群の配列を示す断面図である。図4(A)は、広角端の場合を示し、図4(B)は、中間点の場合を示し、そして、図4(C)は、望遠端の場合を示す。なお、後述の実施例2から実施例11の変倍光学系1B?1Kのレンズ群の配列を示す断面図である図6、図8、図10、図12、図14、図16、図18、図20、図22および図24における(A)、(B)および(C)についても同様の場合を示している。」

(4)「[0106]
実施例1の変倍光学系1Aは、図4に示すように、各レンズ群(Gr1、Gr2、Gr3)が物体側から像側へ順に、全体として負の光学的パワーを有する第1レンズ群(Gr1)と、開口絞りSTを含む全体として正の光学的パワーを有する第2レンズ群(Gr2)と、全体として負の光学的パワーを有する第3レンズ群(Gr3)とからなる負・正・負の3成分ズーム構成であり、ズーミングの際には、図5に示すように、第1レンズ群(Gr1)が固定され、第2レンズ群(Gr2)と第3レンズ群(Gr3)とが移動する。、開口絞りSTは、図4が示すように、第2レンズ群(Gr2)と共に移動する。
[0107]
より詳しくは、実施例1の変倍光学系1Aは、各レンズ群(Gr1、Gr2、Gr3)が物体側から像側へ順に、次のように構成されている。
[0108]
第1レンズ群(Gr1)は、1枚の負レンズとして、物体側に凸の負メニスカスレンズ(第1レンズL1)から構成されて成る。
[0109]
第2レンズ群(Gr2)は、両凸の正レンズ(第2レンズL2)と、開口絞りSTと、両凸の正レンズ(第3レンズL3)とから構成されて成る。このように第2レンズ群(Gr2)には、開口絞りSTを含み、開口絞りSTは、第2レンズL2と第3レンズL3との間に配置され、第2レンズ群(Gr2)と共に移動する。第2および第3レンズL2、L3は、両面が非球面であり、例えば、樹脂材料製レンズである。
[0110]
第3レンズ群(Gr3)は、前群(Gr3f)としての両凹の負レンズ(第4レンズL4)と、後群(Gr3b)としての物体側に凸の正メニスカスレンズ(第5レンズL5)とから構成されて成る。第4および第5レンズL4、L5は、両面が非球面であり、例えば、樹脂材料製レンズである。
[0111]
そして、第3レンズ群(Gr3)の像側には、平行平板FTを介して撮像素子SRの受光面(像面)が配置されている。平行平板FTは、各種光学フィルタや撮像素子のカバーガラス等である。
[0112]
図4において、各レンズ面に付されている番号ri(i=1,2,3,・・・)は、物体側から数えた場合のi番目のレンズ面(ただし、レンズの接合面は1つの面として数えるものとする。)であり、riに「*」印が付されている面は、非球面であることを示す。なお、光学絞りST、平行平板FTの両面および撮像素子SRの受光面も1つの面として扱っている。このような取り扱いおよび符号の意義は、後述の実施例2から実施例11についても同様である(図6、図8、図10、図12、図14、図16、図18、図20、図22および図24)。ただし、全く同一のものであるという意味ではなく、例えば、各実施例1?11の各図6、図8、図10、図12、図14、図16、図18、図20、図22および図24を通じて、最も物体側に配置されるレンズ面には、同じ符号(r1)が付されているが、これらの曲率などが各実施例1?11を通じて同一であるという意味ではない。」

(5)「[0115]
実施例1の変倍光学系1Aにおける、各レンズのコンストラクションデータを以下に示す。
[0116]
数値実施例1
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 21.2564 0.8000 1.77250 49.62
2 3.4235 可変
3* 4.2140 1.3261 1.53048 55.72
4* -9.7728 1.0064
5(絞り) ∞ 0.7470
6* 5.2684 1.1454 1.53048 55.72
7* -5.2889 可変
8* -5.1285 0.9414 1.63219 23.42
9* 3.5999 2.9803
10* 6.5443 2.1837 1.58340 30.22
11* 52.7254 可変
12 ∞ 0.3000 1.51680 64.20
13 ∞ 0.3000
像面 ∞
非球面データ
第3面
K=0.00000e+000,A4=5.25419e-004,A6=5.45142e-004,A8=-6.38339e-005,A10=4.02065e-005
第4面
K=0.00000e+000,A4=3.64905e-003,A6=5.38408e-004,A8=1.72305e-005,A10=4.21460e-005
第6面
K=0.00000e+000,A4=1.77930e-004,A6=-7.62801e-004,A8=-1.66121e-004,A10=1.62754e-005
第7面
K=0.00000e+000,A4=-5.96458e-003,A6=4.27884e-004,A8=-5.95194e-004,A10=1.41564e-004
第8面
K=0.00000e+000,A4=-2.15483e-002,A6=7.83553e-003,A8=-2.97686e-003,A10=6.64100e-004
第9面
K=0.00000e+000,A4=-1.29548e-002,A6=7.38953e-003,A8=-2.14312e-003,A10=3.03227e-004
第10面
K=0.00000e+000,A4=-2.46107e-003,A6=1.26128e-004,A8=-5.69914e-006,A10=1.99346e-007
第11面
K=0.00000e+000,A4=-1.86201e-003,A6=-1.43890e-005,A8=3.71681e-006,A10=-7.02703e-008
各種データ
ズームデータ
ズーム比 2.74
広角 中間 望遠
焦点距離 4.758 9.251 13.024
Fナンバ 4.178 5.989 7.100
画角 38.545 22.247 15.937
像高 3.600 3.600 3.600
レンズ全長 18.395 18.395 18.398
BF 1.038 4.322 5.227
d2 5.808 2.191 0.645
d7 0.419 0.752 1.396
d11 0.544 3.797 4.691
ズームレンズ群データ
群 始面 終面 焦点距離
1 1 2 -5.388
2 3 7 3.644
3 8 11 -6.357
上記の面データにおいて、面番号は、図4に示した各レンズ面に付した符号ri(i=1,2,3,…)の番号iが対応する。番号iに*が付された面は、非球面(非球面形状の屈折光学面または非球面と等価な屈折作用を有する面)であることを示す。
[0117]
また、“r”は、各面の曲率半径(単位はmm)、“d”は、無限遠合焦状態での光軸上の各レンズ面の間隔(軸上面間隔)、“nd”は、各レンズのd線(波長587.56nm)に対する屈折率、“νd”は、アッベ数をそれぞれ示している。なお、開口絞りST、平行平面板FTの両面、撮像素子SRの受光面(像面)の各面は、平面であるために、それらの曲率半径は、∞(無限大)である。」

(6)図4は次のとおりのものである。
[図4]


(7)上記(1)ないし(6)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「各レンズ群(Gr1、Gr2、Gr3)が物体側から像側へ順に、全体として負の光学的パワーを有する第1レンズ群(Gr1)と、開口絞りSTを含む全体として正の光学的パワーを有する第2レンズ群(Gr2)と、全体として負の光学的パワーを有する第3レンズ群(Gr3)とからなる負・正・負の3成分ズーム構成の変倍光学系1Aであって、
第1レンズ群(Gr1)は、1枚の負レンズとして、物体側に凸の負メニスカスレンズ(第1レンズL1)から構成され、
第2レンズ群(Gr2)は、両凸の正レンズ(第2レンズL2)と、開口絞りSTと、両凸の正レンズ(第3レンズL3)とから構成され、
第3レンズ群(Gr3)は、前群(Gr3f)としての両凹の負レンズ(第4レンズL4)と、後群(Gr3b)としての物体側に凸の正メニスカスレンズ(第5レンズL5)とから構成され、
第3レンズ群(Gr3)の像側には、平行平板FTを介して撮像素子SRの受光面(像面)が配置され、
前記各レンズのコンストラクションデータが、
面番号1のレンズ面と面番号2のレンズ面との間の軸上面間隔(無限遠合焦状態での光軸上の各レンズ面の間隔)が、0.8000mmであり、
広角端における変倍光学系1Aの焦点距離とレンズ全長が、それぞれ、4.758mmと18.395mmである、
変倍光学系1A。」(以下「引用発明」という。)

3 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「焦点距離」、「レンズ全長」、「第1レンズL1」、「第2レンズL2」、「開口絞りST」、「第3レンズL3」、「第4レンズL4」及び「第5レンズL5」は、それぞれ、本願発明の「焦点距離f」、「長さTTL」、「第一レンズ」、「第二レンズ」、「絞り」、「第三レンズ」、「第四レンズ」及び「第五レンズ」に相当する。

(2)引用発明の「変倍光学系1A」は、広角端で4.758mmの「焦点距離」(本願発明の「焦点距離f」に相当)と18.395mmの「レンズ全長」(同じく「長さTTL」に相当)を有するものであるから、引用発明の「可変光学系1A」と、本願発明の「レンズ系」とは、「焦点距離fおよび長さTTLを有するレンズ系」である点で一致する。

(3)引用発明の「変倍光学系1A」は、各レンズ群(Gr1、Gr2、Gr3)が物体側から像側へ順に、全体として負の光学的パワーを有する第1レンズ群(Gr1)と、「開口絞りST」(本願発明の「絞り」に相当)を含む全体として正の光学的パワーを有する第2レンズ群(Gr2)と、全体として負の光学的パワーを有する第3レンズ群(Gr3)とからなる負・正・負の3成分ズーム構成であり、第1レンズ群(Gr1)は、1枚の負レンズとして、物体側に凸の負メニスカスレンズ(「第1レンズL1」(同じく「第一レンズ」に相当))から構成され、第2レンズ群(Gr2)は、両凸の正レンズ(「第2レンズL2」(同じく「第二レンズ」に相当))と、「開口絞りST」(同じく「絞り」に相当)と、両凸の正レンズ(「第3レンズL3」(同じく「第三レンズ」に相当))とから構成され、第3レンズ群(Gr3)は、前群(Gr3f)としての両凹の負レンズ(「第4レンズL4」(同じく「第四レンズ」に相当))と、後群(Gr3b)としての物体側に凸の正メニスカスレンズ(「第5レンズL5」(同じく「第五レンズ」に相当))とから構成されるものである。
ここで、「第1レンズL1」(同じく「第一レンズ」に相当)は、1枚の負レンズとして、物体側に凸の負メニスカスレンズであるところ、メニスカスレンズとは、レンズの片面が凸、もう片面が凹になったレンズであるから、当該「第1レンズL1」は、像側の面が凹面である。また、「第5レンズL5」(同じく「第五レンズ」に相当)は、物体側に凸の正メニスカスレンズであるから、当該「第5レンズL5」は、像側の面が凹面である。
したがって、引用発明の「変倍光学系1A」と、本願発明の「レンズ系」とは、「物体と結像面との間の光軸に沿って前記物体から離れるにしたがって配置された第一レンズ、第二レンズ、絞り、第三レンズ、第四レンズおよび第五レンズから構成されており、前記第一レンズは、屈折力が負の凸凹レンズであり、凸面が前記物体に対向し、凹面が前記結像面に対向し、前記第二レンズは、屈折力が正であり、前記物体に対向する側面が凸面であり、前記第三レンズは、屈折力が正である両凸レンズであり、前記第四レンズは、屈折力が負である両凹レンズであり、前記第五レンズは、凸凹レンズであり、前記結像面に対向する側面が凹面であり、前記物体に対向する側面が凸面である」点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、
「焦点距離fおよび長さTTLを有するレンズ系であって、
物体と結像面との間の光軸に沿って前記物体から離れるにしたがって配置された第一レンズ、第二レンズ、絞り、第三レンズ、第四レンズおよび第五レンズから構成されており、
前記第一レンズは、屈折力が負の凸凹レンズであり、凸面が前記物体に対向し、凹面が前記結像面に対向し、
前記第二レンズは、屈折力が正であり、前記物体に対向する側面が凸面であり、
前記第三レンズは、屈折力が正である両凸レンズであり、
前記第四レンズは、屈折力が負である両凹レンズであり、
前記第五レンズは、凸凹レンズであり、前記結像面に対向する側面が凹面であり、前記物体に対向する側面が凸面である、
レンズ系。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記「焦点距離f」が、
本願発明では、「固定焦点」であるのに対し、
引用発明では、広角端における変倍光学系1Aの焦点距離である点。

相違点2:
前記「焦点距離f」及び前記「長さTTL」が、
本願発明では、下記式4を満たすのに対し、
引用発明では、下記式4を満たすか否かが一応、明らかではなく、
前記「第一レンズ」の「厚さD_(1)」及び前記「長さTTL」が、
本願発明では、下記式5を満たすのに対し、
引用発明では、下記式5を満たすか否かが一応、明らかではない点。
0.1<f/TTL<0.29・・・式4
D_(1)/TTL<0.17・・・式5

4 判断
(1)相違点1について
ア 一般に、引用発明のような変倍光学系は、変倍範囲内のいずれのレンズ群の配置においても、球面収差、色収差、非点収差及び歪曲収差等の諸収差が所定の範囲内にあることが保証されたレンズ系である。また、実際に、引用発明の目的は、広角端で撮影用途に適した画角を確保しながら、球面収差、色収差、非点収差および歪曲収差等の諸収差を背景技術に較べてより補正することができる変倍光学系を提供することである(上記第3の2(2)に摘記した引用例[0006]の記載を参照。)から、引用発明は、少なくとも広角端における上記諸収差等の光学性能において所期の目的を達成したレンズ系である。
そうすると、引用発明の変倍光学系において、広角端におけるレンズ群の配置を選択した場合、当該広角端におけるレンズ群の配置を有するレンズ系は、広角での撮影用途に適した画角を確保しながら諸収差を補正したレンズ系なのであるから、引用発明と同じレンズ群構成を有する固定焦点系の広角レンズ系を設計しようとする当業者が、引用発明の各レンズの諸元(コンストラクションデータ)や引用発明の広角端におけるレンズ群の配置を参考にしようとすることは、極めて自然なことである。
すなわち、引用発明と同じレンズ群構成を有する固定焦点系の広角レンズ系を設計しようとする当業者が、引用発明の変倍光学系において各レンズ群をその広角端における配置で固定して固定焦点系のレンズ系となすことは、適宜なし得る程度のことである。
イ さらにいえば、変倍光学系は、変倍範囲内のいずれのレンズ群の配置においても所期の諸収差等の光学性能が保証され、かつ、その配置に対応した一つの焦点距離fを有するレンズ系であるので、各レンズ群を適当な配置で固定したレンズ系は、一つの固定焦点を有するレンズ系(固定焦点系)として成立しており、したがって、引用発明の変倍光学系の変倍範囲の中から、適当な焦点距離f、例えば、広角端の焦点距離fを選択し、当該広角端の焦点距離fの値を持つ固定焦点系のレンズ系となすことは、当業者が容易に想到し得る事項に過ぎないということもできる。
ウ 上記ア及びイからみて、引用発明において、本願発明の相違点1に係る構成となすことは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
引用発明の「変倍光学系1A」は、面番号1のレンズ面と面番号2のレンズ面との間の軸上面間隔(無限遠合焦状態での光軸上の各レンズ面の間隔)が、0.8000mmであり、広角端における変倍光学系1Aの「焦点距離」(本願発明の「焦点距離f」に相当)と「レンズ全長」(同じく「長さTTL」に相当)が、それぞれ、4.758mmと18.395mmであるところ、面番号1のレンズ面と面番号2のレンズ面との間の軸上面間隔とは、「第1レンズL1」(同じく「第一レンズ」に相当)の光軸上の厚さ、すなわち、本願発明の「第一レンズの厚さD_(1)」に他ならないから、引用発明の「変倍光学系1A」は、広角端において、焦点距離f及び長さTTLが、f/TTL=4.758/18.395=0.259であり、また、第一レンズの厚さD_(1)及び長さTTLが、D_(1)/TTL=0.8000/18.395=0.0435である。
そうすると、引用発明の「変倍光学系1A」を広角端のレンズ群配置で固定して得られる固定焦点系のレンズ系は、焦点距離f及び長さTTLが式4(0.1<f/TTL<0.29)を満たし、また、第一レンズの厚さD_(1)及び長さTTLが、式5(D_(1)/TTL<0.17)を満たすものであるから、相違点2に係る本願発明の構成を備えたものである。
そして、引用発明の変倍光学系の変倍範囲の中から、広角端の焦点距離fを選択し、当該広角端の焦点距離fの値を持つ固定焦点系のレンズ系となすことが当業者が容易に想到し得る事項であることは、上記(1)イで述べたとおりである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

5 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-31 
結審通知日 2016-06-07 
審決日 2016-06-20 
出願番号 特願2013-144651(P2013-144651)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 57- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森内 正明  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 西村 仁志
鉄 豊郎
発明の名称 レンズ系  
代理人 吉田 大  
代理人 Knowledge Partners 特許業務法人  

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