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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21F |
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管理番号 | 1321478 |
審判番号 | 不服2016-2491 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-01 |
確定日 | 2016-11-16 |
事件の表示 | 特願2014-561222「放射線遮蔽用の溶融プラスチック成形物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日国際公開、WO2014/175386、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の概要 本願は、2014年4月24日(優先権主張2013年4月24日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月28日付けで拒絶理由が通知され、同年8月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。 本件は、これに対して、平成28年2月1日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後、同年5月23日付けで前置報告がなされた。 第2 本願発明 本願の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明8」、といい、「本願発明1」?「本願発明8」をまとめて「本願発明」という。)は、平成28年2月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1?8は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 プラスチック材料から成る廃プラスチック配合物に着色剤、安定剤、充填剤、希釈剤、可塑剤、発泡剤、ビスブレーカー、金属石鹸、パラフィン・ワックス類、(動植物油、)石油類、顔料、及び強化材から選ばれる添加剤の1種若しくは2種以上を添加して溶融成形した、γ線を含む放射線遮蔽用の溶融プラスチック成形物であって、該廃プラスチック配合物の該プラスチック材料は、ポリオレフィン(PO)及びポリエチレンテレフタレート(PET)から成るプラスチック混合物を該廃プラスチック配合物全体の60重量%以上含み、更にポリフェニレンサルフィド(PPS)を該廃プラスチック配合物全体の5?40重量%の量で含むことを特徴とする、放射線遮蔽用の溶融プラスチック成形物。 【請求項2】 γ線遮蔽用である、請求項1に記載の溶融プラスチック成形物。 【請求項3】 上記廃プラスチック配合物が、ポリプロピレン8?15重量%、ポリエチレン10?25重量%、ポリエチレンテレフタレート50?60重量%及びポリフェニレンサルフィド10?20重量%から成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶融プラスチック成形物。 【請求項4】 上記廃プラスチック配合物が、ポリエチレン30?50重量%、ポリエチレンテレフタレート20?50重量%、及びポリフェニレンサルフィド20?40重量%から成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶融プラスチック成形物。 【請求項5】 上記溶融プラスチック成形物が板状体である請求項1?4のいずれか1項に記載の溶融プラスチック成形物。 【請求項6】 上記廃プラスチック配合物を200?280℃で溶融成形したものである、請求項1?5のいずれか1項に記載の溶融プラスチック成形物。 【請求項7】 15.4cm以下の半価層(cm)値を有する板状成形物である、請求項1?6のいずれか1項に記載の溶融プラスチック成形物。 【請求項8】 請求項1?7のいずれか1項記載の溶融プラスチック成形物から構成されるγ線を含む放射線遮蔽用の廃プラスチック容器。」 第3 原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2002-59424号公報 引用文献2:兵藤俊夫、放射線の遮へい、[oneline]、平成23年5月3日、兵藤俊夫、[平成27年4月10日検索]、 インターネット〈URL:http://www.geocities.jp/hyodo89/shield.html〉 本願発明は、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された周知技術を採用するとともに、配合割合の数値範囲を最適化又は好適化することにより、当業者が容易に想到し得ることである。 第4 当審の判断 1 引用文献の記載事項 (1)引用文献1 引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。) ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、廃プラスチック配合物及びそれを用いた成形物に関し、より詳細には雑多の廃プラスチックが混合した廃プラスチック配合物及びそれを溶融成形した成形物に関する。 【0002】 【従来の技術】今日、多量に排出される種々雑多の廃プラスチックのリサイクルは大きな社会的課題になっている。工場内リサイクルのようにほぼ純粋な単品や殆ど単品といえる状態の回収品のリサイクルは容易である。しかし、多くの工場から出る廃プラスチックや各家庭から無制限に出される廃プラスチックから、回収してリサイクルが可能な相溶性がある同種のプラスチックを選別することは、実質不可能であり、燃料として使用される以外、廃棄物として焼却や埋め立て処理せざるを得ない状況になっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、互いに相溶性がない異種の廃プラスチックが混じった廃プラスチックであっても、成形物として回収することができる廃プラスチック配合物及びそれを用いた成形物を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意研究した結果、相溶性がないとされ、現在廃プラスチックとして多く排出されているポリオレフィン系樹脂とポリエチレンテレフタレートに目をつけ、これらを特定の割合で混合し、更にこれらにその他雑多の廃プラスチックを混合したものが容易に均一に溶融し、かつその溶融物からの成形物が成形物として要求される強度を有することを見いだし本発明を完成した。 【0005】すなわち、本発明は、少なくともポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートを含む複合廃プラスチック混合物であり、該ポリオレフィン系樹脂と該ポリエチレンテレフタレートの混合割合が該ポリオレフィン系樹脂が60?80重量%、該ポリエチレンテレフタレートが40?20重量%である溶融混練用廃プラスチック配合物を要旨とする。又、本発明の廃プラスチック配合物は、上記複合廃プラスチック混合物がポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート以外の異種の廃プラスチックを1種以上含むことを特徴とする。又、本発明の廃プラスチック配合物は、上記ポリオレフィン系樹脂及び上記ポリエチレンテレフタレートの含有量が20?40重量%であることを特徴とする。 【0006】又、本発明の廃プラスチック配合物は、熱硬化性樹脂を1?10重量%含有することを特徴とする。 【0007】更に、本発明は、上記廃プラスチック配合物を溶融成形してなる成形物を要旨とする。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明の廃プラスチック配合物とするには、少なくともポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートを含む複合廃プラスチック混合物が用いられる。これらはポリオレフィン系樹脂を主として含む廃プラスチックとポリエチレンテレフタレート主として含む廃プラスチックの混合物であっても良く、ポリオレフィン系樹脂とポリエチレンテレフタレートを同時に含む複合廃プラスチック混合物であっても良い。 【0009】ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリヘキセン-1等が挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体等がそれぞれ挙げられる。 【0010】本発明においては、上記少なくともポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートを含む複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂とポリエチレンテレフタレートとの混合割合が重要であり、その割合がポリオレフィン系樹脂が60?80重量%、ポリエチレンテレフタレートが40?20重量%である必要がある。ポリオレフィン系樹脂の混合割合が60重量%未満であると、複合廃プラスチック混合物は均一に溶融混練することができなくなる。ポリオレフィン系樹脂の混合割合が80重量%を超えても、複合廃プラスチック混合物は均一に溶融混練することができるが、本発明は、現在廃プラスチックとして多く排出されているポリオレフィン系樹脂とポリエチレンテレフタレートを同時に処理することも目的とするものであるから、ポリオレフィン系樹脂の混合割合が80重量%を超えるようなポリオレフィン系樹脂の混合割合が圧倒的に多い場合はその目的が果たせなくなる。 【0011】複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量を20?40重量%とするのが好適である。本発明はポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量をこのように少量にすることができ、それにより種々雑多の他の廃プラスチックを同時に大量に処理することができるという利点がある。 【0012】その他の雑多の廃プラスチックとしては、スチレン系樹脂(一般、高衝撃等)、アクリル樹脂(アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのアルキルエステル等の誘導体の重合体若しくは共重合体等)、塩化ビニル樹脂(軟質、硬質等)、酢酸ビニル樹脂、アクリルニトリル共重合体系樹脂(アクリルニトリル-スチレン共重合体樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂)、ポリカーボネート、ポリアミド(6、6-6等)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー(芳香族ポリエステル系、芳香族ポリエステルアミド系等)等の熱可塑性樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ乳酸(商品名:レイシア、ラクティ等)、脂肪酸ポリエステル系樹脂(商品名:ビオナーレ、プラクセル、セルグリーン等)、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸との共重合体(商品名:バイオポール等)、テレフタル酸エステル系樹脂等の生分解性樹脂;ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。上記はそれぞれ同類のプラスチック毎に例示したものであり、そのものの前後に記載されているものは、本発明において異種のプラスチックとして取り扱う。 【0013】本発明の配合物である複合廃プラスチック混合物は、少なくともポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートを含み、更に上記のプラスチック類を含んだものである。上記複合廃プラスチック混合物は、ポリオレフィン系樹脂とポリエチレンテレフタレートとを上記の混合割合範囲で含む以外、ポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート以外の上記のプラスチック類から任意に選択されたプラスチックを含むものであるが、上記異種のプラスチックを1種類以上、好ましくは2種類以上、特に好ましくは3種類以上を選択してポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートと混合されたものである。但し、上記廃プラスチック類の内、熱硬化性樹脂が含まれる場合、複合廃プラスチック混合物におけるその含有量を1?10重量%とするのが好ましい。 【0014】又、上記配合物中に、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド等のエンジニアリングプラスチックの廃プラスチックを1?10重量%を含有すると得られる成形物の機械的強度を上昇することができ望ましい。 【0015】本発明の配合物は溶融混練されるものであるが、ポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート、更に上記のプラスチック類の混合は溶融混練の前に行っても良く、溶融混練と同時に行っても良い。ポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート、更に上記のプラスチック類を混合する際には、それらのプラスチックはそのまま用いても良いが、予め例えば押出機のホッパーに投入できる程度の大きさに粉砕ないし裁断しておくのが望ましい。特に、上記廃プラスチックの内、熱硬化性樹脂が含まれる場合、熱硬化性樹脂を0.5mm以下程度の大きさに粉砕しておくのが望ましい。上記プラスチック類を含む廃プラスチックは、上記プラスチック類が使用される際に通常添加される着色剤、安定剤、充填剤(粉状、繊維状等)、希釈剤、可塑剤等の数多くの添加剤を含有しているが、それら添加剤の含有により本発明の配合物は特に影響されない。 【0016】本発明の配合物は溶融混練されるものであるが、溶融混練を効率良く行わせるため、得られる成形物の強度を上昇させるため、その他の目的で、必要に応じて上記配合物に種々の添加剤を配合することができる。それら添加剤としては、発泡剤、ビスブレーカー、金属石鹸、パラフィン・ワックス類、動植物油、石油類等の他、顔料、強化材等が挙げられる。」 イ 「【0020】本発明の成形体は、上記配合物を溶融混練し成形することにより製造されるが、上記配合物の溶融混練は通常押出機を用いて行われる。溶融混練時の温度は、上記配合物の組成により変動するが、通常は200?320℃の温度範囲である。上記配合物に発泡剤を添加すると溶融混練温度を添加しない場合に比べて30℃程度下げることができる。又、溶融混練時の押出機のスクリュー回転数は、65?140rpmの範囲で調整することができ、特に上記配合物に熱硬化性樹脂が含まれている場合は、押出機のスクリュー回転数を65?90rpm程度とゆっくり溶融混練するのが好ましい。 【0021】押出機により溶融混練された配合物は、溶融された状態で押出機から押出され、ペレット状、棒状等の形状に押出成形される他、金型を通して板状、ブロック状等の形状に成形することができ、パレット、トラックの床材、地表に敷設するU字溝材、防音フェンス、棚や杭、ごみ箱、植木鉢等の成形体に射出成形することができる。これら成形された成形体は、簡単に手で折れるような強度ではなく、足で踏み付けても折れないような該成形体が要求する十分な強度を有している。 【0022】 【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明する。 (実施例1)廃ポリプロピレン20kg、廃高密度ポリエチレン10kg、廃低密度ポリエチレン10kg(ポリオレフィン系樹脂として40kg)、廃ポリエチレンテレフタレート20kg、廃ポリカーボネート10kg、廃ポリスチレン(一般用)10kg、廃ポリスチレン(高衝撃)10kg、廃難燃性ポリスチレン10kg、廃アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂10kg、廃難燃性アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂10kg、廃アクリルニトリル-スチレン共重合体樹脂10kg、廃ポリアミド10kg、廃ポリアセタール5kg、廃軟質塩化ビニル樹脂5kg及び予め0.5mm以下に粉砕した廃フェノール樹脂(ベークライト)5kgからなる複合廃プラスチック混合物を粉砕したものに、発泡剤(p-トルエン・スルホニル・セミカルバジド、商品名:セロゲン RA,白石カルシウム社製)3g、ビスブレーカー(1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、商品名:パーカドックス14,化薬アクゾ社製)2g、ステアリン酸カルシウム2g、菜種油1l及び灯油500mlを加え、スクリュー部温度が260?280℃に設定されたL/D=32の押出機のホッパーに投入し、71rpmのスクリュー回転数で混練して配合物を得ると共に、150kg/時間の速度で押出成形してペレットを得た。このペレットを用い厚さ4mmの板状成形物を成形した。 【0023】この板状成形物から長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を作成し、この試験片5個について、島津製作所社製、オートグラフAG-M1を用い、温度23℃、RH50%、試験速度2mm/分、支点間距離64mmの条件で曲げ強度を測定したところ、平均曲げ強度は、30.5MPaであった。 【0024】(実施例2)実施例1で用いた複合廃プラスチック混合物を粉砕したものに、ステアリン酸カルシウム2g、菜種油1l及び灯油500mlを加え、実施例1で用いた押出機のホッパーに投入し、スクリュー部温度を290?305℃とした以外は、実施例1と同様にしてペレットを得た。このペレットを用い厚さ4mmの板状成形物を成形した。この板状成形物から作成した試験片5個について、実施例1と同様にして曲げ強度を測定したところ、平均曲げ強度は、29.8MPaであった。 【0025】(実施例3)廃フェノール樹脂(ベークライト)含有しない複合廃プラスチック混合物を粉砕したものを用い、スクリュー回転数を108rpmとした以外は、実施例1と同様にして230kg/時間の速度でペレットを得た。このペレットを用い厚さ4mmの板状成形物を成形した。この板状成形物から作成した試験片5個について、実施例1と同様にして曲げ強度を測定したところ、平均曲げ強度は、31.9MPaであった。 【0026】(比較例1)廃ポリプロピレンを20kg、廃高密度ポリエチレンを5kg、廃低密度ポリエチレンを5kg(ポリオレフィン系樹脂として30kg)、廃ポリエチレンテレフタレートを30kgとした以外は、実施例2と同様にして混練したが、発泡して配合物からペレットを成形することができなかった。 【0027】 【発明の効果】従来、焼却や埋め立て以外に処理手段がなかった互いに相溶性がない異種の廃プラスチック同志を混合して、均一に溶融混練することができる。従って、その混練物から種々の成形物を成形することができ、その成形物は高い機械的強度を有していることから、それら廃プラスチックを半永久的にリサイクル再利用することができる。」 上記記載事項から、「複合廃プラスチック混合物」は、「ポリオレフィン系樹脂」、「ポリエチレンテレフタレート」及び「その他の雑多の廃プラスチック」を含むことが明らかである。 すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びその他の雑多の廃プラスチックを含む複合廃プラスチック混合物に、発泡剤、ビスブレーカー、金属石鹸、パラフィン・ワックス類、動植物油、石油類等の他、顔料、強化材等の添加剤を配合した廃プラスチック配合物を溶融成形してなる成形物であって、 複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂とポリエチレンテレフタレートとの混合割合が、ポリオレフィン系樹脂が60?80重量%、ポリエチレンテレフタレートが40?20重量%であり、 複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量は20?40重量%であって、 その他の雑多の廃プラスチックは、スチレン系樹脂(一般、高衝撃等)、アクリル樹脂(アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのアルキルエステル等の誘導体の重合体若しくは共重合体等)、塩化ビニル樹脂(軟質、硬質等)、酢酸ビニル樹脂、アクリルニトリル共重合体系樹脂(アクリルニトリル-スチレン共重合体樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂)、ポリカーボネート、ポリアミド(6、6-6等)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー(芳香族ポリエステル系、芳香族ポリエステルアミド系等)等の熱可塑性樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ乳酸(商品名:レイシア、ラクティ等)、脂肪酸ポリエステル系樹脂(商品名:ビオナーレ、プラクセル、セルグリーン等)、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸との共重合体(商品名:バイオポール等)、テレフタル酸エステル系樹脂等の生分解性樹脂;ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂等から任意に選択されたものであって、 押出成形されたペレット状、棒状等の形状、金型を通して成形された板状、ブロック状等の形状、又は、射出成形されたパレット、トラックの床材、地表に敷設するU字溝材、防音フェンス、棚や杭、ごみ箱、植木鉢等の成形体である成形物である、廃プラスチック配合物を溶融成形してなる成形物。」 (2)引用文献2 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「放射線の遮へい ・・中略・・ 放射線の種類のによる遮へいのしやすさ(または遮へいのしにくさ): ・・中略・・ そこで、放射線の電荷と質量を調べると、X線とガンマ線は光のなかまで、波長の短い電磁波ですから、電気的には中性です。質量はありません。ただし、電場と磁場が振動している波ですから、電子を揺さぶってエネルギーを与えることができます。 ・・中略・・ エネルギーの高いガンマ線は物質を突き抜けやすく、十分に遮へいするためには20cm以上の鉛や1m以上の重コンクリートが必要になります。 ・・中略・・ どのような物質が放射線をよく遮へいするか: ・・中略・・ これらのことを勘案すると、密度(単位積当たりの質量)の大きな物質ほど、同じ体積中により多くの電子を含むことになり、ガンマ線、X線、ベータ線、アルファ線などを遮へいする力が強いことが分かります。鉛は密度が大きい割には価格が低いので、放射線の遮へいによく使われます。 密度の低い水やプラスチックでも、十分な厚さにすれば、その中に含まれる原子が多くなり、したがって電子の数も増えますので、遮へいの効果が期待できます。 ・・後略・・」 すると、上記引用文献2には、密度の低いプラスチックでも、十分な厚さにすれば、放射線遮へいの効果があることが記載されている。 2 対比 本願発明1と引用発明を対比すると、両者は、 「プラスチック材料から成る廃プラスチック配合物に着色剤、安定剤、充填剤、希釈剤、可塑剤、発泡剤、ビスブレーカー、金属石鹸、パラフィン・ワックス類、(動植物油、)石油類、顔料、及び強化材から選ばれる添加剤の1種若しくは2種以上を添加して溶融成形した、溶融プラスチック成形物であって、該廃プラスチック配合物の該プラスチック材料は、ポリオレフィン(PO)及びポリエチレンテレフタレート(PET)から成るプラスチック混合物を含み、更に他のプラスチックを含む、溶融プラスチック成形物。」 で一致し、次の各点で相違する。 (相違点ア) 本願発明1は、「γ線を含む放射線遮蔽用の溶融プラスチック成形物」であるのに対して、引用発明は、γ線を含む放射線遮蔽用であるとは特定されない点。 (相違点イ) 本願発明1では、「ポリオレフィン(PO)及びポリエチレンテレフタレート(PET)から成るプラスチック混合物を該廃プラスチック配合物全体の60重量%以上含」むのに対して、引用発明では、「複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量は20?40重量%であ」る点。 (相違点ウ) 他のプラスチックについて、本願発明1では、「ポリフェニレンサルフィド(PPS)を該廃プラスチック配合物全体の5?40重量%の量で含む」のに対して、引用発明では、「その他の雑多の廃プラスチック」の任意の選択肢として「ポリフェニレンスルフィド」が挙げられるのみであり、また、その「複合廃プラスチック混合物」における含有量も特定されない点。 3 判断 上記相違点イについて検討する。 まず、引用文献2には、廃プラスチックに関する技術事項は記載されていない。 そして、引用発明の「複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量は20?40重量%であ」る点について、引用文献1には、「【発明の属する技術分野】本発明は、廃プラスチック配合物及びそれを用いた成形物に関し、より詳細には雑多の廃プラスチックが混合した廃プラスチック配合物及びそれを溶融成形した成形物に関する。」(段落【0001】)、「【従来の技術】今日、多量に排出される種々雑多の廃プラスチックのリサイクルは大きな社会的課題になっている。」(段落【0002】)、「【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意研究した結果、相溶性がないとされ、現在廃プラスチックとして多く排出されているポリオレフィン系樹脂とポリエチレンテレフタレートに目をつけ、これらを特定の割合で混合し、更にこれらにその他雑多の廃プラスチックを混合したものが容易に均一に溶融し、かつその溶融物からの成形物が成形物として要求される強度を有することを見いだし本発明を完成した。」(段落【0004】)などと記載されるように、雑多の廃プラスチックをリサイクルすることを課題とし、そのために、「複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量を20?40重量%とするのが好適である。本発明はポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量をこのように少量にすることができ、それにより種々雑多の他の廃プラスチックを同時に大量に処理することができるという利点がある。」(段落【0011】)などと記載されるように、「雑多の廃プラスチック」を同時に大量に処理するために、「複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量を20?40重量%」とすることが開示されている。 すると、引用発明の「複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量」を20?40重量%より多い60重量%以上とすることには、阻害要因があるといえる。 すると、引用発明において、「複合廃プラスチック混合物におけるポリオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートの含有量」を60重量%以上とすることは、数値範囲を最適化又は好適化することにより、当業者が容易に想到し得ることであるとすることはできない。 そして、上記相違点イにより、本願発明1は、本願明細書記載の効果を奏する。 よって、本願発明1は、少なくとも上記相違点イにより、引用発明に引用文献2に記載された周知技術を採用するとともに、配合割合の数値範囲を最適化又は好適化することにより、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 4 小括 したがって、本願発明1は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。 また、本願発明2?8は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明、引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-10-24 |
出願番号 | 特願2014-561222(P2014-561222) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G21F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 青木 洋平 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 伊藤 昌哉 |
登録日 | 2016-12-16 |
登録番号 | 特許第6057191号(P6057191) |
発明の名称 | 放射線遮蔽用の溶融プラスチック成形物 |