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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W |
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管理番号 | 1321534 |
審判番号 | 不服2015-11190 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-15 |
確定日 | 2016-11-08 |
事件の表示 | 特願2013-500354「オートメーション装置において信号を無線伝送するための伝送方法および伝送システムならびに該伝送システムを有するオートメーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月29日国際公開、WO2011/116858、平成25年 7月18日国内公表、特表2013-529401〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続きの経緯 本件特許出願は、2011年(平成23年)2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年(平成22年)3月23日,ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成26年 5月29日付け:拒絶理由の通知 平成26年 9月 1日 :意見書の提出 平成27年 2月 6日付け:拒絶査定 平成27年 6月15日 :審判請求書の提出 平成28年 2月 5日付け:拒絶理由の通知 平成28年 5月 9日 :意見書の提出 第2.本件発明について 本件の請求項1に係る発明(「以下、本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。 「オートメーション装置(1)の複数のエレメント(10,20,30)の間で信号を無線伝送する伝送システム(11,11a,21,21a,31,31a)において、 前記オートメーション装置(1)の前記複数のエレメント(10,20,30)の1つずつのエレメント(10,20,30)が接続されている複数のネットワークノード(11,21,31)を有しており、 各ネットワーク(11,21,31)には、連続的に利用可能な別個の論理チャネル(D1,D2,D3;D21,D22,D23)が割り当てられており、当該論理チャネルを介して信号が無線伝送可能である、 ことを特徴とする伝送システム。」 第3.引用文献について 1.引用文献1の記載 当審における平成28年2月5日付けで通知した拒絶理由にて引用した、本願の優先権主張の日前に公開された刊行物である特開2010-050904号公報(平成22年3月4日公開、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。) (1)第0001段落 「【0001】 本発明は、FA(Factory Automation)における機器制御,プラント制御などのように、高い信頼性を要求され、かつ、遅延時間を保障する無線ネットワークを構築する通信システムおよび通信方法に関する。」 (2)第0009段落から第0015段落 「【0009】 実施の形態1. 図1は、本発明にかかる通信システムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように本実施の形態の通信システムは、制御装置1と、制御装置1に接続されるゲートウェイ装置2と、フィールドに散在し無線通信機能を有する被制御装置であるノード3,4,5,6と、で構成される。ノード3,4,5,6は、直接または転送を行うノードを経由してゲートウェイ装置と無線通信を行う。 【0010】 また、経路11はノード4とゲートウェイ装置2との間の経路を示しており、経路11は、直接通信経路を示し、経路12はノード3を経由する転送経路を示し、ノード5を経由する転送経路を示している。なお、ノード3およびノード5は、あらかじめノード4のホップノード(HopNode)として所定の転送手法により設定されていることとする。 【0011】 通信路14,15,16は、ノード4を送信元とする通信路であり、通信路14はノード3への通信路,通信路15はゲーウェイ装置2への通信路,通信路16はノード5への通信路をそれぞれ示している。ノード4は、制御装置1に宛てて送信するべきフレームに、送信元識別子と送信先識別子とパケットの識別を可能にするユニークな識別子と共に制御情報を付加してチャネルAで通信路14,15,16を用いて送信する。通信路17は、ノード3からゲートウェイ装置2への通信路と示し、通信路18は、ノード5からゲートウェイ装置2への通信路を示している。 【0012】 ノード4のホップノードであるノード3は、ノード4からチャネルAで通信路14によりゲートウェイ装置2へ向けたフレームを受信すると、フレームの完全性チェック(CRCチェックなど)を行い、その結果が正常であった場合には、受信したフレームをコピーする。そして、ノード4からのフレーム受信完了後から所定の規定時間経過後に、チャネルAとは異なる所定のチャネルBを用いて、受信したフレームを通信路17によりゲートウェイ装置2へ転送する。同様に、ノード5は、ノード4からチャネルAで通信路14によりゲートウェイ装置2へ向けたフレームを受信すると、フレームの完全性チェックを行い、その結果が正常であった場合には、受信したフレームをコピーする。そして、ノード4からのフレーム受信完了後から所定の規定時間経過後に、チャネルAとは異なり、かつ、チャネルBとも異なる所定のチャネルCを用いて、受信したフレームを通信路18によりゲートウェイ装置2に転送する。 【0013】 ゲートウェイ装置2は、同時に複数のチャネルの受信が可能な無線通信装置を備えていることとする。ゲートウェイ装置2は、経路11によりフレームを受信し、また、経路12および経路13からも異なるチャネルで同じフレームを受信する。フレームに含まれるフレーム識別子に基づいて経路の異なる3つの同一フレームを識別し、識別したフレームの完全性チェックの結果が正常であるフレームを抽出し、抽出したフレームのうち最も早く到着したフレームを制御装置1に転送する。また、転送後に、同一のフレーム識別子を含むフレームを受信した場合には、そのフレームを破棄する。 【0014】 同様に、ノード4以外のノードについても、ホップノードとして設定された全てのノードに所定のチャネルで制御装置1宛てのフレームを送信し、フレームを受信したホップノードは、受信したフレームに用いられたチャネルと異なるチャネル、かつ、ホップノードごとに異なるチャネルでゲートウェイ装置2に受信したフレームを転送するようにしてもよい。 【0015】 なお、制御装置1から被制御装置である各ノードへの逆方向伝送についても、同様にフレーム送信を行う。この場合、ゲートウェイ装置2が制御装置1から受信したフレームを、ノード4への全ての経路(図1の場合は、経路11,12,13)に所定のチャネルを用いて転送する。そして、経路上のホップノードは、受信したフレームに用いられたチャネルと異なるチャネル、かつ、ホップノードごとに異なるチャネルでノード4に向けてフレームを転送する。この方向の通信の場合には、複数の経路を経由したフレームが到着するノード4が宛先であり、ノード4は、各経路で転送された同一フレームのうち、完全性のチェック結果が正常で、かつ、最初に到着したフレームを用いて所定のデータ処理を行う。」 2.引用発明1について 以上の引用文献1の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「FA(Factory Automation)における無線ネットワークを構築する通信システムであって、 前記通信システムは、制御装置1と、制御装置1に接続されるゲートウェイ装置2と、フィールドに散在し無線通信機能を有する被制御装置であるノード3,4,5,6と、で構成され、ノード3,4,5,6は、直接または転送を行うノードを経由してゲートウェイ装置と無線通信を行い、 ノード3およびノード5は、あらかじめノード4のホップノード(HopNode)として所定の転送手法により設定されており、 ノード4は、制御装置1に宛てて送信するべきフレームに、送信元識別子と送信先識別子とパケットの識別を可能にするユニークな識別子と共に制御情報を付加してチャネルAで通信路14,15,16を用いて送信し、 ノード4のホップノードであるノード3は、フレームを受信すると、チャネルAとは異なる所定のチャネルBを用いて、受信したフレームを通信路17によりゲートウェイ装置2へ転送し、同様に、ノード5は、フレームを受信すると、チャネルAとは異なり、かつ、チャネルBとも異なる所定のチャネルCを用いて、受信したフレームを通信路18によりゲートウェイ装置2に転送し、 ゲートウェイ装置2は、経路11によりフレームを受信し、また、経路12および経路13からも異なるチャネルで同じフレームを受信し、フレームに含まれるフレーム識別子に基づいて経路の異なる3つの同一フレームを識別し、正常であるフレームを抽出し、抽出したフレームのうち最も早く到着したフレームを制御装置1に転送し、 同様に、ノード4以外のノードについても、ホップノードとして設定された全てのノードに所定のチャネルで制御装置1宛てのフレームを送信し、フレームを受信したホップノードは、受信したフレームに用いられたチャネルと異なるチャネル、かつ、ホップノードごとに異なるチャネルでゲートウェイ装置2に受信したフレームを転送し、 制御装置1から被制御装置である各ノードへの逆方向伝送についても、同様にフレーム送信を行い、経路上のホップノードは、受信したフレームに用いられたチャネルと異なるチャネル、かつ、ホップノードごとに異なるチャネルでノード4に向けてフレームを転送する、 通信システム。」 3.引用文献2について 当審における平成28年2月5日付けで通知した拒絶理由にて引用した、本願の優先権主張の日前に公開された刊行物である特開2007-184831号公報(平成19年7月19日公開、以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。) (1)第0019段落 「【0019】 図1に示す産業設備管理システム1は、無線親機2と、製造ライン内の産業設備毎に配置された、センサ等のI/O機器3を通じて接点情報等の状態情報を検出すると共に、無線親機2に無線収容される複数の無線子機4と、無線子機4を通じて収集した接点情報に基づき各種制御動作を実行するPLC5とを有し、無線親機2は、複数のチャネル周波数の内、単一のチャネル周波数を使用して、各無線子機4とのポーリング通信を実行することで、各無線子機4からの接点情報を収集すると共に、これら接点情報をPLC5に通知するものである。」 (2)【図1】 4.周知技術1について 以上の引用文献2の記載によれば、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められ、このような技術は周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。 「産業設備毎に無線子機を接続して無線通信を行う、という技術。」 5.引用文献3について 当審における平成28年2月5日付けで通知した拒絶理由にて引用した、本願の優先権主張の日前に公開された刊行物である「服部 武 編著,「OFDM/OFDMA教科書」,インプレス標準教科書シリーズ,株式会社インプレスR&D,2008年9月21日発行」(平成20年9月21日公開、以下「引用文献3」という。)には、その74頁-77頁に、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。) (1)第75頁の「[1]FDMA(周波数分割多元接続)方式」の記載 「例えば、3つの端末A、B、Cがあった場合、端末Aにはf1、端末Bにはf2、端末Cにはf3という周波数を割り当てて通信を行う方式です。」 (2)第76頁の「[3]CDMA(符号分割多元接続)方式」の記載 「例えば、端末Aには拡散符号1を、端末Bには拡散符号2を、端末Cには拡散符号3を割り当てて、お互いに通信を行います。同じ周波数、同じ時間帯で複数の通信を行っても、拡散符号を変えることによって、互いに干渉しないようにする方式です。」 (3)第75頁の図2-22「いろいろな多元接続方式とその仕組み」 6.周知技術2について 以上の引用文献3の記載によれば、引用文献3には、次の技術が記載されていると認められ、このような技術は周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。 「FDMAは各ノードにそれぞれ異なる周波数チャネルを割り当て、CDMAは各ノードにそれぞれ異なる符号チャネルを割り当てることで、同じ時間帯で複数のノードが通信できる、FDMA及びCDMAという通信技術」 第4.対比 1.本件発明と引用発明1との対比 本件発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「制御装置1」及び被制御装置である「ノード3」から「ノード6」は、FAにおける制御機器及び被制御機器であるから、本件発明の「オートメーション装置(1)の複数のエレメント(10,20,30)」に対応する。 (2)引用発明1の「ゲートウェイ装置2」は、制御装置1に接続され、かつ、ノードとの無線通信を行うものであるから、「前記オートメーション装置(1)の前記エレメント(10,20,30)の1つのエレメントが接続されているネットワークノード」である点で、本件発明の「ネットワークノード」と一致する。 (3)引用発明1では、各ノードからゲートウェイ装置2が受信したフレームを制御装置1に転送し、制御装置1から被制御装置である各ノードへの逆方向伝送についても同様に行うのであるから、引用発明1と本件発明とは、「オートメーション装置(1)の複数のエレメント(10,20,30)の間で信号を無線伝送する伝送システム」である点で一致する。 (4)引用発明1の「ノード4」は送信チャネルとしてチャネルAを用い、ホップノードは受信したチャネルと異なるチャネル、かつ、ホップノードごとに異なるチャネル(チャネルB及びチャネルC)で送信を行うのであるから、引用発明1と本件発明とは、「各ネットワーク(11,21,31)には、利用可能な別個の論理チャネル(D1,D2,D3;D21,D22,D23)があり、当該論理チャネルを介して信号が無線伝送可能である」点で一致する。 2.一致点について したがって、本件発明と引用発明1とは、以下の点で一致する。 [一致点] 「オートメーション装置(1)の複数のエレメント(10,20,30)の間で信号を無線伝送する伝送システム(11,11a,21,21a,31,31a)において、 前記オートメーション装置(1)の前記エレメント(10,20,30)の1つのエレメントが接続されているネットワークノードを有しており、 各ネットワーク(11,21,31)には、利用可能な別個の論理チャネル(D1,D2,D3;D21,D22,D23)があり、当該論理チャネルを介して信号が無線伝送可能である、 ことを特徴とする伝送システム。」 3.相違点について 一方、本件発明と引用発明1は、以下の点で相違する。 [相違点1] 本件発明は、オートメーション装置の複数のエレメントの1つずつのエレメントが複数のネットワークノードに接続されているのに対し、引用発明1は、制御装置1がゲートウェイ装置2に接続されているに過ぎず、被制御機器であるノード3からノード6は、それ自体が無線通信機能を有しているので、別体のネットワークノードには接続されていない点。 [相違点2] 本件発明の論理チャネルは、連続的に利用可能であるのに対し、引用発明1のチャネルは連続的に利用可能であるか否かが不明である点。 [相違点3] 本件発明の論理チャネルは各ネットワークに別個のものが割当てられたものであるのに対し、引用発明1のチャネルは全てのノードに対して異なるチャネルが割り当てられているのか否かが不明である点。 第5.当審の判断 1.[相違点1]について 上記「第3.引用文献について 4.周知技術1について」で述べたように、以下の技術は周知技術である。 [周知技術1] 「産業設備毎に無線子機を接続して無線通信を行う、という技術。」 そして、引用発明1はファクトリーオートメーションに係る発明であり、産業設備管理はファクトリーオートメーションの一要素であることに鑑みれば、引用発明1に対して当該周知技術1を適用することで、引用発明1の各ノードの無線通信機能を無線子機として別体とし、各ノードをそれぞれの無線子機に接続する構成とし、引用発明1が「前記オートメーション装置(1)の前記複数のエレメント(10,20,30)の1つずつのエレメント(10,20,30)が接続されている複数のネットワークノード(11,21,31)を有」するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 2.[相違点2]及び[相違点3]について 上記「第3.引用文献について 6.周知技術2について」で述べたように、以下の技術は周知技術である。 [周知技術2] 「FDMAは各ノードにそれぞれ異なる周波数チャネルを割り当て、CDMAは各ノードにそれぞれ異なる符号チャネルを割り当てることで、同じ時間帯で複数のノードが通信できる、FDMA及びCDMAという通信技術」 ここで、本件発明における「連続的に利用可能」について、本願明細書[0030]段落では次のように説明されている。 「【0030】 より正確に言うと、各伝送装置11,21,31はネットワークノードを構成し、このネットワークノードには、連続して利用可能な別個の論理チャネルが割り当てられているのである。このことは図2に示されており、ここでは伝送装置11ないしは第1ネットワークノード11には、全体として利用可能な合計データレートDgesの一部D1だけが割り当てられているが、第1ネットワークノード11は、この部分D1を全時間軸にわたって、すなわち連続して利用することができるのである。別の伝送装置21,31ないしは第2ネットワークノード21および第3ネットワークノード31および図1に示していない第4ネットワークノードにはそれぞれ、全体として利用可能な合計データレートDgesの部分D2,D3およびD4がそれぞれ割り当てられる。すなわち、部分D1は、ネットワークノード11の連続して利用可能なそれぞれ別個の論理チャネルに相応する等々である。」 このことから、本件発明における「連続的に利用可能」とは、時間軸にわたって連続して利用することができることを意味すると解される。 一方、周知技術2にあるFDMA及びCDMAは、同じ時間帯で複数のノードが通信できるものであるから、いずれも「連続的に利用可能」であるといえる。 よって、周知技術2は、周波数チャネル又は符号チャネルが「連続的に利用可能」であって、各ノードにそれぞれ異なるチャネルを割り当てるものであるから、当該[相違点2]及び[相違点3]に関する事項は、当該周知技術2が有するものである。 そして、引用発明1の無線通信に対して、当該周知技術2を採用し、各ノード毎に異なる拡散符号又は周波数チャネルを割り当てることで、各ノードに連続的に利用可能な別個の論理チャネルを割り当てるように構成することは、設計的事項に過ぎない。 3.効果について また、本件発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明1並びに周知技術1及び周知技術2より当業者であれば容易に予測することができる程度のものである。 4.まとめ よって、本件発明は、引用発明1並びに周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本件発明は、引用文献1に記載された引用発明1並びに周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7.その他 なお、審判請求人は、平成28年5月9日提出の意見書において主張している下記事項についても言及しておく。(なお、ここでいう「引用文献1」?「引用文献3」は、本審決でいう「引用文献1」?「引用文献3」と同じ文献である。また、下線は当審にて付した。) 1.引用文献1について 引用文献1について、審判請求人は意見書にて、以下のように主張している。 「平成26年9月1日付け意見書及び平成27年6月15日付け審判請求書においても述べたように、本願発明と引用文献1に開示された通信システムとの間には、構成上の明確な相違点が存在する。その相違点について、再度説明すると、以下の通りである。 引用文献1には、複数のノード3,4,5と無線通信が可能なゲートウェイ装置2を備えた通信システムが開示されている。 複数のノード3,4,5は、直接又は他のノードを介してゲートウェイ装置2と無線通信を行う。 各ノードは、直接ゲートウェイ装置2と無線通信を行う場合には、共通のチャネルAを用いて無線通信を行う。 一方、いずれかのノード、例えばノード4が、他のノード3,5を介してゲートウェイ装置2と無線通信を行う場合には、先ず、ノード4が共通のチャネルAを用いてフレームをノード3,5へ送信する。当該フレームはノード3,5により受信され、ノード3は、チャネルAとは異なるチャネルBを用いて当該フレームをゲートウェイ装置2へ送信し、ノード5は、チャネルA及びBと異なるチャネルCを用いて当該フレームをゲートウェイ装置2へ送信する。 上記構成によるチャネルの使い分けは、ある一つのノード4が他のノード3,5を介してゲートウェイ装置2と無線通信を行う場合に用いられるものであるが、当該一つのノード4と他のノード3,5との間の無線通信は共通のチャネルAを用いて行われ、中継を行うノード3,5とゲートウェイ装置2との間の無線通信のみ、異なるチャネルB、Cを用いて行われる。 また、前述のように、各ノード3,4,5が直接ゲートウェイ装置2と無線通信を行う場合には、共通のチャネルAを用いて無線通信を行う。 従って、引用文献1に開示された通信システムにおいては、各ノード3,4,5がゲートウェイ装置2と無線通信を行う際には、いずれの通信経路を経由する場合であっても、その通信経路の一部又は全部に共通のチャネルAが用いられることとなる。 即ち、引用文献1に開示された通信システムの技術的構成は、各ノード3,4,5に対してそれぞれ連続的に利用可能な別個のチャネルが割り当てられている構成ではない。 よって、本願発明と引用文献1に記載された発明との間には、構成上の明確な相違点が存在する。」 審判請求人の引用文献1についての当該主張は、要するに、引用文献1では、各ノード3,4,5が無線通信を行う際には共通のチャネルAを用いるものであって、各ノード3,4,5に対してそれぞれ連続的に利用可能な別個のチャネルが割り当てられている構成ではないので本件発明と相違する、というものである。 しかしながら、上記「第3.引用文献について 1.引用文献1の記載 (2)第0009段落から第0015段落」にて示したように、各ノード3,4,5が無線通信を行う際にそれぞれ、異なるチャネルA,B,Cを用いることが記載されている。 この記載によれば、引用文献1において、各ノード3,4,5が無線通信を行う際に共通のチャネルAを使用することは記載されていないし、仮にある条件下において共通のチャネルAを使用する場合があったとしても、各ノード3,4,5がそれぞれ、異なるチャネルA,B,Cを用いて送信することが明記されている以上、各ノードがそれぞれ異なるチャネルを利用可能であって、それぞれ異なるチャネルを介して送信可能であることは明らかである。 そして、本件発明では、「各ネットワーク(11,21,31)には、連続的に利用可能な別個の論理チャネル(D1,D2,D3;D21,D22,D23)が割り当てられており、当該論理チャネルを介して信号が無線伝送可能である」とあるところ、「第4.対比 1.本件発明と引用発明1との対比 (4)」で述べたように、本件発明と同様に、引用発明1でも、各ノードが異なるチャネルを利用可能であって、異なるチャネルを介して無線伝送が可能であるといえる。 よって、各ノード3,4,5に対してそれぞれ連続的に利用可能な別個のチャネルが割り当てられている構成ではないので本件発明と相違する、という審判請求人の主張は採用できない。 2.引用文献2について 引用文献2について、審判請求人は意見書にて、使用するチャネル周波数について検討している。 しかしながら、引用文献2から周知技術1として認定しているのは、 「産業設備毎に無線子機を接続して無線通信を行う、という技術。」 であって、引用文献2における接続構成に関する技術についてである。 よって、「引用文献2には、無線親機2と複数の無線子機4との間でそれぞれ通信が行われることは開示されているものの、複数のチャネル周波数のうちの異なる別個のチャネル周波数がそれぞれ連続的に割り当てられる構成までは開示されていない。」とする出願人の主張は当を得ないものである。 3.引用文献3について 引用文献3について、審判請求人は意見書にて、以下のように主張している。 「引用文献3は、FDMA方式やCDMA方式の技術的構成の概要が開示されているものに過ぎない。 従って、引用文献3には、複数のエレメントがそれぞれ別個の複数のネットワークノードに接続されている構成は開示されておらず、そのような構成において各ネットワークに連続的に利用可能な別個の論理チャネルが割り当てられている構成も開示されていない。」 これについて、複数のエレメントがそれぞれ別個の複数のネットワークノードに接続されている構成は、上記「第5.当審の判断 1.[相違点1]について」にて既に述べたように、周知技術1として示している。 また、上記「第5.当審の判断 2.[相違点2]及び[相違点3]について」にて既に述べたように、引用発明1の無線通信に対して、周知技術2として示したFDMA又はCDMAという通信技術を採用し、各ノード毎に異なる拡散符号又は周波数チャネルを割り当てることで、各ノードに連続的に利用可能な別個の論理チャネルを割り当てるように構成することは、設計的事項に過ぎない。 なお、審判請求人は、引用文献1及び引用文献3について、「引用文献3に開示されたFDMA方式は、各ネットワークに連続的に利用可能な別個のチャネルが割り当てられる構成ではあるものの、引用文献1に開示された通信システムにおける各ノード3,4,5とゲートウェイ装置2との間の通信経路の一部又は全部に共通のチャネルAが用いられる技術的構成に対して、どのように組み合わせることが可能であるのかが不明である。」とも主張しているが、引用発明1においても、異なるチャネルA,B,Cが利用可能であることは、上記「第7.その他 1.引用文献1について」にて示したとおりであって、引用文献1が共通のチャネルAが用いられる技術的構成であることを前提に述べている当該主張も当を得ないものである。 4.以上より、審判請求人の上記主張はいずれも採用できない。 |
審理終結日 | 2016-06-08 |
結審通知日 | 2016-06-13 |
審決日 | 2016-06-24 |
出願番号 | 特願2013-500354(P2013-500354) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久松 和之 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 古市 徹 |
発明の名称 | オートメーション装置において信号を無線伝送するための伝送方法および伝送システムならびに該伝送システムを有するオートメーション装置 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 高橋 佳大 |