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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10H
管理番号 1321647
審判番号 不服2015-359  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-07 
確定日 2016-11-10 
事件の表示 特願2009-181300「音楽コンテンツデータ選択装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日出願公開、特開2011- 33915〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年8月4日の出願であって、平成24年6月7日付けで手続補正がなされ、平成25年11月27日付け拒絶理由通知に対して、平成26年2月1日付けで手続補正がなされたが、同年10月1日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成27年1月7日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年2月1日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「複数のキーワードが付与された音楽コンテンツデータを複数記憶した音楽コンテンツデータ記憶手段から所望の音楽コンテンツデータを選択するための音楽コンテンツデータ選択装置であって、
音楽コンテンツ記憶手段に記憶された音楽コンテンツから登録が指示されたものに関する情報を記憶する特定情報登録記憶手段と、
ユーザ操作に基づいて所望のキーワードを設定するキーワード設定手段と、
音楽コンテンツデータ記憶手段から、キーワード設定手段により設定されたキーワードに合致するキーワードが付与された音楽コンテンツデータを検索する音楽コンテンツデータ検索手段と、
音楽コンテンツデータ検索手段により検索された音楽コンテンツデータを示す音楽コンテンツ情報を表示する検索結果表示手段と、
ユーザ操作に基づいて、検索結果表示手段により表示された音楽コンテンツ情報から任意の音楽コンテンツ情報を選択する音楽コンテンツ選択手段と、
ユーザ操作に基づいて、音楽コンテンツ選択手段により選択された音楽コンテンツ情報について登録を指示する登録指示手段と、
登録指示手段による登録の指示に基づいて、特定情報登録記憶手段に対し、音楽コンテンツ選択手段により選択された音楽コンテンツ情報を音楽コンテンツ指示情報として記憶すると共に、キーワード設定手段により設定されたキーワードを当該音楽コンテンツ指示情報に対応するキーワード情報として記憶する登録処理手段と、
特定情報登録記憶手段に対応して記憶されている音楽コンテンツ指示情報及びキーワードを互いに対応付けて表示する音楽コンテンツ情報表示手段と
を具備することを特徴とする音楽コンテンツデータ選択装置。」

そして、本願明細書によれば、本願発明は、上記構成要件により、下記の効果を生じるものである。なお、下線は当審で付与した。
「フェイバリット登録された所定の音楽コンテンツデータについて、フェイバリットとして登録される際の検索に使われた検索キーワード(Ky)を、音楽コンテンツデータを指示する音楽コンテンツ情報(Dr)と共にキーワード情報(Ky)として記憶しておき、フェイバリット表示時に、かかる検索キーワード(Ky)を音楽コンテンツ指示情報(Dr)と共に表示してユーザに知らせるようにしている。従って、この発明によれば、所望の音楽コンテンツデータをより効率的に選択することができる。つまり、フェイバリットに登録された音楽コンテンツデータの登録時の検索キーワードが一目で分かり、ユーザの気に入った音楽コンテンツデータの検索がし易い検索キーワードを簡単に知ることができる。また、別のキーワードで検索することによりいくつかの音楽コンテンツデータを抽出したいが、その中に、フェイバリット表示中の特定のキーワードが付与された音楽コンテンツデータを必ず含めておきたい、というような使い方のときに、音楽コンテンツ指示情報と共に表示されるキーワード情報を有効に利用することができる。また、検索キーワードとなり得る情報は数多くあるが、フェイバリット登録されたキーワード情報は、フェイバリット登録に至った検索に使われたものであるため、キーワード情報の参照により、ユーザにとって実用的かつ意味のある情報に絞り込まれていることを確認することができる。また、音楽コンテンツデータを新たに幅広く検索する際に、キーワード情報を参考にして新たな検索キーワードを設定することができる(段落【0010】)」。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-202307号公報(平成18年8月3日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【技術分野】【0001】本発明は、データベースに蓄積された情報の検索の支援と、文書等の情報のデータベースへの登録及び登録した旨の利用者への通知を行う情報管理システム及びそれに用いられるサーバ装置に関する。」
「【0004】ところで、上述した従来のデータベースを有するシステムにおける情報検索にあっては、次のような問題点があった。すなわち、データベース検索時に、目的とする情報が得られるまで検索条件を変えて入力を繰り返すことになり、過去に類似した情報を検索していてもその経験が活かされず、結果が得られるまで時間がかかっており、効率の良い検索ができない。」

イ.「【0014】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(I)情報検索システム
図1は本発明に係る実施の形態1の情報検索システムの処理ブロック図である。また、図2は図1の情報検索システムのモニタ画面上に表示されるグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)の遷移を示す図である。また、図3?図5は主要なグラフィカル・ユーザ・インタフェースの具体例を示す図である。また、図6は図1の情報検索システムの検索履歴の処理関係を示す図である。この情報検索システムには、グラフィカル・ユーザ・インタフェースを採用したOS(オペレーティング・システム)がインストールされているものとする。
【0015】図1において、1はデータベース検索に関わる処理に関する部分である。2は本発明の情報検索システムの主要部分である。3は情報検索システムのモニタに表示されるデータベース検索のためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース、4はデータベース検索処理部、5は情報を格納するデータベース、6は検索者の検索操作に関わる検索履歴を一時的に保存するための検索履歴保持処理部、7は検索履歴保持処理部6により保存される検索履歴一時ファイル、8は検索履歴一時ファイル7を検索履歴データベース10に登録するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース、9は検索履歴データベース登録処理部、11は検索履歴データベース10を検索・参照するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース、12は検索履歴データベース10に対して検索処理を行う検索履歴データベース検索処理部である。
【0016】図2において、13はデータベース検索のためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース3に関するウィンドウ、14は検索履歴一時ファイル7を検索履歴データベース10に登録するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース8に関するウィンドウ、15は検索履歴データベース10を検索・参照するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース11に関するウィンドウである。16はデータベース5のホームとなるウィンドウであり、本発明の処理に係るウィンドウに遷移するためのコマンド(ボタンまたはメニューによる)が用意されている。17はデータベース検索条件設定ウィンドウ、18はデータベース5を検索した結果を一覧表示するための検索結果一覧表示ウィンドウである。
【0017】19は検索結果一覧表示ウィンドウ18で選択された情報のコンテンツを表示するためのコンテンツ表示ウィンドウ、20は検索者の検索操作に関わる検索履歴を検索履歴データベース10に登録するための検索履歴登録ウィンドウである。この検索履歴登録ウィンドウ20には、検索履歴確認・修正ウィンドウ21に遷移するためのコマンド(ボタンまたはメニューによる)が用意されている。検索履歴確認・修正ウィンドウ21は、検索履歴データベース10に登録する検索履歴を確認・修正するためのものである。22は検索履歴データベース検索条件設定ウィンドウであり、検索履歴データベース10から検索履歴を検索するためのものである。23は検索履歴データベース10を検索した結果を一覧表示するための検索結果表示ウィンドウである。24は検索結果一覧表示ウィンドウ23から選択した情報の検索履歴を表示するための検索履歴表示ウィンドウである。」

ウ.「【0018】次に、本発明に係る情報検索システムの処理の流れについて説明する。
(イ)データベース検索
まず、データベース検索では、データベース検索処理部4が、検索条件の読み込み、及び読み込んだ検索条件を表示するグラフィカル・ユーザ・インタフェース3を制御して、データベース検索条件設定ウィンドウ17(図2参照)にて入力された検索条件に従いデータベース5を検索する。そして、検索結果を検索結果一覧表示ウィンドウ18(図2参照)に表示する。データベース検索条件設定ウィンドウ17は、例えば図3に示すように「検索条件」の入力ボックスと「実行」ボタン46を有している。「検索条件」の入力ボックスに検索範囲、検索キーワード等の検索条件を入力し、「実行」ボタン46をマウスでクリックすることで検索処理が開始される。
【0019】検索結果一覧表示ウィンドウ18に表示された検索結果一覧を見た検索者は、その中から所望のものを選択すると(例えばマウスを使用して所望の情報項目をダブルクリックすると)、データベース検索処理部4は、検索者によって選択された情報項目のコンテンツをコンテンツ表示ウィンドウ19(図2参照)に表示する。以上が従来と同様の通常のデータベース検索処理である。」

エ.「【0020】(ロ)検索履歴の保持
データベース検索処理部4は、検索処理中に検索者の検索操作に関わる検索履歴を検索履歴保持処理部6に渡す。検索履歴保持処理部6はデータベース検索処理部4から渡された検索履歴を一時的に検索履歴一時ファイル7に保存する。
【0021】(ハ)検索履歴のデータベース登録
検索履歴データベース登録処理部9は、検索履歴一時ファイル7に保存された検索履歴を読み出して検索履歴確認・修正ウィンドウ21(図2参照)に表示し、検索履歴データベース10に登録するための処理を行う。検索履歴確認・修正ウィンドウ21は、例えば図4に示すように「コンテンツ表題」、「検索キーワード」及び「検索時刻」の各ボックス及び「削除」、「検索」、「コンテンツ表示」及び「閉じる」の各ボタン40?43等からなる。「コンテンツ表題」、「検索キーワード」及び「検索時刻」の各ボックスには、検索履歴一時ファイル7に保存された検索履歴の全てが表示される。
【0022】検索履歴一時ファイル7に保存された検索履歴の確認・修正は、検索者が検索履歴確認・修正ウィンドウ21を見ながら行うことになる。例えば、図4において、スクロールバー44を操作して削除したい検索履歴のコンテンツを見つけると、それを例えばマウスでクリックして表示を反転させ、その後「削除」ボタン40をクリックする。これにより、そのコンテンツが削除される。このようにして、検索者によって検索履歴一時ファイル7に保存された検索履歴を確認・修正する操作が行われると、検索履歴データベース登録処理部9が検索履歴一時ファイル7の指定された情報の修正を行う。そして、修正が終了して「閉じる」ボタン43がクリックされたことを認識すると、検索履歴の確認・修正が終了したものとして、確認・修正された検索履歴を検索履歴データベース10に登録する。」

オ.「【0023】(ニ)検索履歴の検索・参照
検索履歴データベース検索処理部12は、検索履歴データベース10に登録された検索履歴を検索・参照するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース11を制御して、検索履歴データベース検索条件設定ウィンドウ22(図2参照)にて検索履歴データベース10より検索履歴を検索・参照する。そして、参照した検索履歴を検索者の検索操作による検索・参照を実行した順序で検索結果一覧表示ウィンドウ23(図2参照)にリスト表示する。そして、検索結果一覧表示ウィンドウ23にリスト表示されている検索履歴の中で検索者が所望とするものを選択すると、検索履歴データベース検索処理部12は、その選択された検索履歴を検索履歴表示ウィンドウ24に表示する。検索履歴表示ウィンドウ24は、例えば図5に示すように「コンテンツ表題」、「検索キーワード」及び「検索時刻」の各ボックスと、「検索」、「コンテンツ表示」及び「閉じる」の各ボタン48?50等からなる。
【0024】(ホ)検索履歴の利用
検索履歴データベース検索処理部12は、検索履歴表示ウィンドウ24に表示されている一覧の選択項目を受けて、検索条件またはコンテンツのリンク情報をデータベース検索処理部4に渡す。データベース検索処理部4は、受け取った検索条件またはコンテンツのリンク情報を基にデータベース検索条件設定ウィンドウ17またはコンテンツ表示ウィンドウ19を表示・制御する。これにより、新たな検索処理において入力した検索条件に加えて、類似する過去の検索履歴が検索条件として提示されることから、効率の良い検索が可能になる。しかも、第3者が検索した履歴を活用できるので、自分の考えに第3者の考えを加味して検索でき、自己の検索における視野が拡大する。
【0025】なお、図6は情報検索システム内部での検索履歴の処理関係を示す図である。この図において、25はデータベース検索処理部4から検索履歴保持処理部6に渡されるデータの構成を示すもので、図示のように検索条件(検索範囲、検索キーワード等)とコンテンツとのリンク情報と検索時刻データとからなる。26は検索履歴一時ファイル7の具体的な構造の実現例である。27は検索履歴データベース10の具体的構造の実現例である。
【0026】このように、この実施の形態では、情報検索システムの提供するデータベース検索のためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース3にて検索者の検索条件を読み込むことで、検索者が目的とする情報を検索・収集するとともに、この時の検索処理と並行して情報のコンテンツを得るまでの検索情報及び得られたコンテンツの表題とリンク情報からなる検索履歴を一時的に保持・記録し、そして一時的に保持しておいた検索履歴が検索者によって確認及び削除・整理された後、通常の情報とは別に分類して検索履歴データベース10に登録し、この登録した検索履歴を新たに類似した目的の情報検索の際に参照して検索者に提示する。」

上記の記載事項から以下のことがいえる。
・上記アの記載によれば、データベースに蓄積された情報の検索の支援を行う情報管理システムとして、従前、データベース検索時に、過去に類似した情報を検索していてもその経験が生かされず、効率の良い検索ができないという問題点があったことが背景技術として記載されている。

・上記イの記載によれば、情報検索システムの主要部分として、情報検索システムのモニタに表示されるデータベース検索のためのGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)3、データベース検索処理部4、情報を格納するデータベース5、検索者の検索操作に関わる検索履歴を一時的に保存するための検索履歴保持処理部6、検索履歴保持処理部6により保存される検索履歴一時ファイル7、検索履歴一時ファイル7を検索履歴データベース10に登録するためのGUI(8)、検索履歴データベース登録処理部9、検索履歴データベース10を検索・参照するためのGUI(11)、検索履歴データベース10に対して検索処理を行う検索履歴データベース検索処理部12を備え、
情報検索システムのモニタ画面上に表示されるGUIとして、データベース検索のためのGUI(3)に関するウィンドウ13、検索履歴一時ファイル7を検索履歴データベース10に登録するためのGUI(8)に関するウィンドウ14、検索履歴データベース10を検索・参照するためのGUI(11)に関するウィンドウ15、データベース5のホームとなるウィンドウであり、本発明の処理に係るウィンドウに遷移するためのコマンド(ボタンまたはメニューによる)が用意されているウィンドウ16、データベース検索条件設定ウィンドウ17、データベース5を検索した結果を一覧表示するための検索結果一覧表示ウィンドウ18、検索結果一覧表示ウィンドウ18で選択された情報のコンテンツを表示するためのコンテンツ表示ウィンドウ19、検索者の検索操作に関わる検索履歴を検索履歴データベース10に登録するための検索履歴登録ウィンドウ20、検索履歴登録ウィンドウ20に用意された、検索履歴確認・修正ウィンドウ21(検索履歴データベース10に登録する検索履歴を確認・修正するためのもの)に遷移するためのコマンド(ボタンまたはメニューによる)、検索履歴データベース10から検索履歴を検索するための検索履歴データベース検索条件設定ウィンドウ22、検索履歴データベース10を検索した結果を一覧表示するための検索結果表示ウィンドウ23、検索結果一覧表示ウィンドウ23から選択した情報の検索履歴を表示するための検索履歴表示ウィンドウ24、を備える点が記載されている。

・上記ウの記載によれば、情報検索システムの処理として、データベース検索条件設定ウィンドウの検索条件の入力ボックスに検索範囲、検索キーワード等の検索条件を入力して検索条件に従いデータベースを検索し、検索結果一覧を検索結果一覧表示ウィンドウに表示して、検索者が検索結果一覧の中から所望のものを選択すると、データベース検索処理部は検索者が選択したコンテンツを、コンテンツ表示ウィンドウに表示する、という従来と同様のデータベース検索処理が記載されている。

・上記エの記載によれば、データベース検索処理部は、検索者の検索操作に基づく検索履歴を検索履歴保持処理部に渡し、検索履歴保持処理部は渡された検索履歴を一時的に検索履歴一時ファイルに保存し、検索履歴データベース登録処理部は、検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴を読み出して検索履歴確認・修正ウィンドウに表示し、検索履歴データベースに登録するための処理を行う。具体的には、検索履歴確認・修正ウィンドウは、「コンテンツ表題」、「検索キーワード」等の各ボックス及び「削除」、「検索」、「コンテンツ表示」及び「閉じる」の各ボタン等からなり、「コンテンツ表題」、「検索キーワード」等の各ボックスには、検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴の全てが表示される。
また、検索履歴一時ファイル7に保存された検索履歴の確認・修正は、検索者が検索履歴確認・修正ウィンドウを見ながら行うもので、検索者によって検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴を確認・修正する操作が行われると、検索履歴データベース登録処理部が検索履歴一時ファイルの指定された情報の修正を行い、修正が終了して「閉じる」ボタンがクリックされると、検索履歴の確認・修正が終了したものとして、確認・修正された検索履歴を検索履歴データベースに登録することが記載されている。

・上記オの記載によれば、検索履歴データベース検索処理部は、検索履歴データベース検索条件設定ウィンドウにて検索履歴データベースより検索履歴を検索・参照する。そして、参照した検索履歴を検索者の検索操作による検索・参照を実行した順序で検索結果一覧表示ウィンドウにリスト表示する。そして、検索結果一覧表示ウィンドウにリスト表示されている検索履歴の中で検索者が所望とするものを選択すると、検索履歴データベース検索処理部は、その選択された検索履歴を検索履歴表示ウィンドウに表示し、検索履歴表示ウィンドウは、例えば図5に示すように「コンテンツ表題」、「検索キーワード」等の各ボックスと、「検索」、「コンテンツ表示」及び「閉じる」の各ボタン48?50等からなり、検索者の検索条件を読み込むことで、検索者が目的とする情報を検索・収集するとともに、この時の検索処理と並行して情報のコンテンツを得るまでの検索情報及び得られたコンテンツの表題とリンク情報からなる検索履歴を一時的に保持・記録し、そして一時的に保持しておいた検索履歴が検索者によって確認及び削除・整理された後、通常の情報とは別に分類して検索履歴データベース10に登録し、この登録した検索履歴を新たに類似した目的の情報検索の際に参照して検索者に提示することが記載されている。

そうすると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のキーワードが付与された情報を複数記憶したデータベースから所望の情報を選択するための情報検索システムであって、
検索者の検索操作に関わる検索履歴を検索履歴データベースに登録するための検索履歴登録ウィンドウが用意され、
検索者がデータベース検索条件設定ウィンドウの検索条件の入力ボックスに検索キーワード等の検索条件を入力して検索条件に従いデータベースを検索し、
検索結果一覧を検索結果一覧表示ウィンドウに表示して、検索者が検索結果一覧の中から所望のものを選択すると、データベース検索処理部は検索者が選択したコンテンツを、コンテンツ表示ウィンドウに表示し、
検索者の検索操作に基づく検索履歴を検索履歴保持処理部に渡し、検索履歴保持処理部は渡された検索履歴を一時的に検索履歴一時ファイルに保存し、検索履歴データベース登録処理部は、検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴を読み出して「コンテンツ表題」、「検索キーワード」等の各ボックス及び「削除」、「検索」、「コンテンツ表示」及び「閉じる」の各ボタン等からなる検索履歴確認・修正ウィンドウに表示し、
検索者によって検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴を確認・修正する操作が行われると、検索履歴データベース登録処理部が検索履歴一時ファイルの指定された情報の修正を行い、終了の操作により検索履歴の確認・修正が終了したものとして、確認・修正された検索履歴を検索履歴データベースに登録し、
この登録した検索履歴を新たに類似した目的の情報検索の際に参照して検索者に提示する情報検索システム。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明の「情報」、「データベース」、「情報検索システム」、「検索者」は、本願発明の「コンテンツデータ」、「コンテンツデータ記憶手段」、「コンテンツデータ選択装置」、「ユーザ」に、それぞれ相当し、引用発明の「検索者の検索操作に関わる検索履歴を検索履歴データベースに登録するための検索履歴登録ウィンドウが用意され」は、本願発明の「コンテンツ記憶手段(当審注「コンテンツデータ記憶手段」の誤り)に記憶されたコンテンツから登録する検索履歴に関する情報を記憶する特定情報登録記憶手段」に相当する。また、引用発明の「検索者がデータベース検索条件設定ウィンドウの検索条件の入力ボックスに検索キーワード等の検索条件を入力し」は、本願発明の「ユーザ操作に基づいて所望のキーワードを設定するキーワード設定手段」に相当し、引用発明の「検索条件に従いデータベースを検索し」は、本願発明の「コンテンツデータ記憶手段から、キーワード設定手段により設定されたキーワードに合致するキーワードが付与されたコンテンツデータを検索するコンテンツデータ検索手段」に相当する。

イ.引用発明の「検索結果一覧を検索結果一覧表示ウィンドウに表示し」は、本願発明の「コンテンツデータ検索手段により検索されたコンテンツデータを示すコンテンツ情報を表示する検索結果表示手段」に相当し、引用発明の「検索者が検索結果一覧の中から所望のものを選択すると、データベース検索処理部は検索者が選択したコンテンツを、コンテンツ表示ウィンドウに表示し」は、本願発明の「ユーザ操作に基づいて、検索結果表示手段により表示されたコンテンツ情報から任意のコンテンツ情報を選択するコンテンツ選択手段」に相当する。

ウ.引用発明の「検索者の検索操作に基づく検索履歴を検索履歴保持処理部に渡し、検索履歴保持処理部は渡された検索履歴を一時的に検索履歴一時ファイルに保存し、検索履歴データベース登録処理部は、検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴を読み出して「コンテンツ表題」、「検索キーワード」等の各ボックス及び「削除」、「検索」、「コンテンツ表示」及び「閉じる」の各ボタン等からなる検索履歴確認・修正ウィンドウに表示し、
検索者によって検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴を確認・修正する操作が行われると、検索履歴データベース登録処理部が検索履歴一時ファイルの指定された情報の修正を行い、終了の操作により検索履歴の確認・修正が終了したものとして、確認・修正された検索履歴を検索履歴データベースに登録し」とは、検索者の検索操作に基づく検索履歴を検索履歴データベースに登録するに際し、検索履歴を一時ファイルに保存して読み出し、コンテンツ選択手段により選択されたコンテンツ情報と検索キーワードとを対応するキーワード情報として確認・修正の後、終了の操作により、確認・修正された検索履歴を検索履歴データベースに登録するものであるから、本願発明の「特定情報登録記憶手段に対し、コンテンツ選択手段により選択されたコンテンツ情報をコンテンツ指示情報として記憶すると共に、キーワード設定手段により設定されたキーワードを当該コンテンツ指示情報に対応するキーワード情報として記憶する登録処理手段」に相当する。
また、引用発明の「この登録した検索履歴を新たに類似した目的の情報検索の際に参照して検索者に提示する」とは、検索履歴データベースに登録されたコンテンツ情報と検索キーワードとを対応するキーワード情報として検索者に提示するものであるから、本願発明の「特定情報登録記憶手段に対応して記憶されているコンテンツ指示情報及びキーワードを互いに対応付けて表示するコンテンツ情報表示手段」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「複数のキーワードが付与されたコンテンツデータを複数記憶したコンテンツデータ記憶手段から所望のコンテンツデータを選択するためのコンテンツデータ選択装置であって、
コンテンツ記憶手段(当審注「コンテンツデータ記憶手段」の誤り)に記憶されたコンテンツから登録する(検索履歴に関する)情報を記憶する特定情報登録記憶手段と、
ユーザ操作に基づいて所望のキーワードを設定するキーワード設定手段と、
コンテンツデータ記憶手段から、キーワード設定手段により設定されたキーワードに合致するキーワードが付与されたコンテンツデータを検索するコンテンツデータ検索手段と、
コンテンツデータ検索手段により検索されたコンテンツデータを示すコンテンツ情報を表示する検索結果表示手段と、
ユーザ操作に基づいて、検索結果表示手段により表示されたコンテンツ情報から任意のコンテンツ情報を選択するコンテンツ選択手段と、
ユーザ操作に基づいて、コンテンツ選択手段により選択されたコンテンツ情報について、
特定情報登録記憶手段に対し、コンテンツ選択手段により選択されたコンテンツ情報をコンテンツ指示情報として記憶すると共に、キーワード設定手段により設定されたキーワードを当該コンテンツ指示情報に対応するキーワード情報として記憶する登録処理手段と、
特定情報登録記憶手段に対応して記憶されているコンテンツ指示情報及びキーワードを互いに対応付けて表示するコンテンツ情報表示手段と
を具備することを特徴とするコンテンツデータ選択装置。」

(相違点1)
本願発明は、「音楽コンテンツデータ」を検索するものであるのに対して、引用発明で検索されるコンテンツデータは、「音楽」コンテンツデータとは特定されていない点。
(相違点2)
本願発明は、「ユーザ操作に基づいて、コンテンツ選択手段により選択されたコンテンツ情報について登録を指示する登録指示手段による登録の指示に基づいて」、特定情報登録記憶手段に対し、選択手段により選択されたコンテンツ情報をコンテンツ指示情報として記憶するのに対して、引用発明は、「検索者によって検索履歴一時ファイルに保存された検索履歴を確認・修正する操作が行われると、検索履歴データベース登録処理部が検索履歴一時ファイルの指定された情報の修正を行い、終了の操作により」検索履歴の確認・修正が終了したものとして、確認・修正された検索履歴を検索履歴データベースに登録する点。

そこで、上記相違点について検討する。
(相違点1について)
情報検索システムの検索されるコンテンツとして、曲ごとに複数のキーワードが付与された音楽データは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-265563号公報(以下、「引用例2」という。)の特に段落【0009】?【0010】,段落【0018】?【0019】,【図2】に記載されているように、周知のものであり、一般的な情報検索システムである引用例1のコンテンツデータに、引用例2に記載の音楽コンテンツデータを適用して相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(相違点2について)
本願発明と引用発明は、共に「ユーザ操作に基づいて、検索履歴を検索履歴データベースに登録する」ものであり、その効果は、本願発明は「フェイバリットに登録された音楽コンテンツデータの登録時の検索キーワードが一目で分かり、ユーザの気に入った音楽コンテンツデータの検索がし易い検索キーワードを簡単に知ることができる。また、音楽コンテンツデータを新たに幅広く検索する際に、キーワード情報を参考にして新たな検索キーワードを設定することができる(段落【0010】)」ものであり、引用発明は「(1)過去に類似した検索履歴を参照することによって、実行した検索の流れから迅速な情報検索の入力操作を誘導・支援することができ、(2)過去の検索履歴により、検索者に対して検索目的毎の検索の手引となり、初心者でも容易に目的とする情報を検索することが可能になる(段落【0040】)」というものであり、共に共通するものである。
しかしながら、ユーザ操作により情報を登録する契機が、本願発明は「登録の指示に基づいて」行われるのに対し、引用発明は「一時保存された検索履歴を確認・修正する操作を行い、終了の操作により」行われる点で相違している。
ここで、原査定時に周知技術として引用された特開2002-82984号公報(以下、「引用例3」という。)の段落【0012】,【0028】?【0029】に記載されているように、情報検索の技術分野において、検索結果のうちからユーザが選択したことにより情報を記憶することは周知の事項である。
そうすると、情報を選択して登録する際に、表示されている情報から「登録するものを選択する」か「登録しないものを削除する」かは、当業者が適宜選択しうる設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明の「ユーザ操作により情報を登録する契機」に「ユーザが選択したことにより情報を記憶する」という周知技術を適用して、本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

なお、請求人は、審判請求書において、「引用例1には、ユーザ操作に基づいて、(検索された音楽コンテンツデータを示す音楽コンテンツ情報から)選択された音楽コンテンツ情報について登録の指示を行い、登録の指示に基づいて、特定情報登録記憶手段に対し、選択された音楽コンテンツ情報を音楽コンテンツ指示情報として記憶すると共に、設定されたキーワードを当該音楽コンテンツ指示情報に対応するキーワード情報として記憶することについては、記載も示唆もなされていない。すなわち、引用例1記載の情報検索システムでは、あくまでも先に検索結果が記憶され、その記憶した結果を編集可能としているものであって、検索をすれば、一旦は履歴として記憶されることから、仮に検索結果にユーザにとってのノイズが多く含まれるものだったとしてもその検索結果をご破算にすることができず、削除したい場合は、検索結果の中の多くのコンテンツを個々にクリックして選択しては削除する作業を繰り返し行う必要がある。すなわち、検索履歴をユーザにとって所望のものとしておく、すなわち、本願実施例のフェイバリットに相当するものとするためにはきわめて繁雑な作業を行うことが必要とされるのである。」旨主張しているが、本願発明は、音楽コンテンツデータ選択装置であり、引用発明も本願発明と同様の構成要件を備えるものであるから、情報検索システムの処理ステップの先後による本願発明の格別の作用効果についての請求人の主張は認められない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1,2の記載事項および周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2および引用例3に記載された技術事項および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-09 
結審通知日 2016-09-13 
審決日 2016-09-26 
出願番号 特願2009-181300(P2009-181300)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 間宮 嘉誉  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 関谷 隆一
森川 幸俊
発明の名称 音楽コンテンツデータ選択装置及びプログラム  
代理人 浅見 保男  

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