• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1321893
審判番号 不服2015-22184  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-16 
確定日 2016-12-06 
事件の表示 特願2013-119549「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日出願公開、特開2014-238434、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成25年6月6日の出願であって、平成27年2月25日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月22日付けで手続補正がなされたが、平成27年9月29日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成27年10月1日)、これに対し平成27年12月16日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成28年8月16日付けで拒絶理由が通知され、平成28年10月6日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成28年10月28日付けで審理終結通知がなされ、平成28年11月8日付けで審理再開申立書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、平成28年10月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次の事項により特定される、次のとおりのものである(下線は、本件補正における補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
表示部と、
前記表示部の視認可能側に設けられ、かつ反射率および透過率の少なくともいずれかが可変であるミラー部と、
前記ミラー部の前に存在する対象を検知する検知部と、
前記検知部による前記対象の検知結果に基づき、前記ミラー部において前記対象の反射像を表示させるべき少なくとも一の範囲を算出する分析部と、
前記検知部の前記対象の検知有無に基づいて、表示部全面において第1の表示像を表示可能にする第1表示と、前記少なくとも一の範囲において前記反射像を表示可能とし、他の範囲において前記表示部による第2の表示像を表示可能とする第2表示とを切換える切換え部と、
前記切換え部により第2表示に切換えられた場合、前記少なくとも一の範囲における前記ミラー部の反射率を前記他の範囲より高くする制御、および前記少なくとも一の範囲における前記ミラー部の透過率を前記他の範囲より小さくする制御の少なくともいずれかを行う制御部と、を含み、
前記少なくとも一の範囲が、前記対象の顔の周囲を含む範囲であり、
前記第2の表示像が、前記対象に訴求するための情報;広告および販促情報;地域および建物の案内情報;電子書籍;ニュース情報、カレンダー情報、時計情報、および気象情報;アプリケーションプログラムへアクセスするためのアイコン;ブラウザ画面およびメーラ画面;入力インターフェース画面;ならびに、前記対象の後ろ姿画像のうちの少なくともいずれかであり、
前記検知部は、前記対象との距離を検知し、
前記制御部は、前記検知部が前記対象までの距離が所定範囲内であると検知した場合において、
前記分析部によって、前記対象の顔と前記ミラー部とが相対向していると判断された場合、前記切換え部が前記第1表示から前記第2表示に切換え、
前記対象の顔の向きが相対向していないと判断した場合、前記第1表示から前記第2表示に切り換えず、
前記第1表示から前記第2表示に切り換えた後は、前記対象が所定の範囲内に存在している場合、所定の時間において、前記対象の顔の向きに関わらず、前記第2表示を継続させる、表示装置。
【請求項2】
前記少なくとも一の範囲は、前記制御部が、対象の身長を計算し、顔の位置を抽出し、標準的な人体の構造に基づいて顔の位置を抽出し、前記顔位置から、標準的な人体の構造に基づいて顔の大きさを計算し、その顔の大きさを含む範囲を、前記反射像を表示可能な範囲とする、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記分析部は、対象の位置および大きさの少なくともいずれかの変動が無くなったと検知部が判断した場合に鏡表示範囲を決定する、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の表示像および前記第2の表示像の少なくともいずれかをインターネットを介して取得する通信部をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の表示像について操作を行う操作部をさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2の表示像を操作する操作部が、前記検知部による検知信号を操作信号に変換する、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記検知部が、前記対象を撮影するカメラ、前記対象との距離を検知するセンサ、および前記対象の温度を検知するセンサの少なくともいずれかである、請求項1から6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記検知部は、録画可能な録画装置をさらに含み、
前記録画装置は、
前記検知部により前記対象の回転を検知した場合、録画モードを開始し、
前記対象の回転が終了する場合、または前記録画モードの開始から所定の時間が経過した場合に前記録画モードを中断し、録画した録画像を前記第2の表示像として前記表示部に表示する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。」

第3 原査定の拒絶の理由について
1 原査定の理由の概要
(理由3)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項12?14について
「表示プログラム」が何により実行されるものであるのか不明である。
(2)請求項15?17について
各工程の主体が不明である。

(理由4)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項1?17に対して、引用文献1及び2

引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1 特開2009-204817号公報
引用文献2 特開2007-279445号公報

2 原査定の理由の判断
(1)(理由3)について
原査定の拒絶の理由とされた請求項12?17は、本件補正により補正された特許請求の範囲から削除されているので、(理由3)は解消している。

(2)(理由4)について
引用文献1には、デジタルフォトフレームにおいて、通常表示モードにおいて広告用画像が表示パネル22上に表示されること(例えば【0027】を参照。)、及び、近接センサ26からの近接信号NSがオンのとき、デジタルカメラ32により撮影された画像を左右反転させて上記表示パネル22に表示する鏡像表示モードに自動切替を行うこと(例えば【0021】?【0023】を参照。)が記載されており、図3からは、上記通常表示モードにおける上記広告用画像が上記表示パネル22の全面に表示されることが見てとれる。
また、引用文献2には、表示部2の背面に反射率が可変であるハーフミラー3を設けること(例えば【0013】を参照。)、及び、被写体101の像102が映る部分のハーフミラー3の反射率を高くし、それ以外の部分の反射率を低下させ、上記被写体101の像102と表示画像103とを同時に映すこと(例えば【0041】及び図13(a)を参照。)が記載されている。
しかし、引用文献1にも、引用文献2にも、本願の(本件補正により補正された特許請求の範囲の)請求項1に係る発明における「前記検知部の前記対象の検知有無に基づいて、表示部全面において第1の表示像を表示可能にする第1表示と、前記少なくとも一の範囲において前記反射像を表示可能とし、他の範囲において前記表示部による第2の表示像を表示可能とする第2表示とを切換える切換え部」を含む点は記載されていない。
よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに、本願の請求項2?8に係る発明は、本願の請求項1に係る発明をさらに限定したものであるから、本願の請求項1に係る発明と同様に、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(理由1)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
(請求項1に係る発明について)
引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることがきたものである。

(請求項2?5に係る発明について)
引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることがきたものである。

(請求項6、9、10に係る発明について)
引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることがきたものである。

(請求項7、8に係る発明について)
引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることがきたものである。

(請求項11に係る発明について)
引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、引用例7に記載された技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることがきたものである。

引 用 文 献 等 一 覧
引用例1:STREET SMITH'S SportsBusiness JOURNAL、SBJ/20100802/This Week's News、Video mirrors give ads new home at stadiums、By Michael Smith, Staff Writer、Published August 2, 2010、[on-line]、インターネット<URL:http://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2010/08/20100802/This-Weeks-News/Video-Mirrors-Give-Ads-New-Home-At-Stadiums.aspx?hl=mirrussc=0>
引用例2:特開2007-279445号公報
引用例3:福島悠人,濱本和彦、ハーフミラーとFPDを用いたバーチャル鏡の開発とそのデジタルサイネージへの応用に関する研究、第16回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集(2011年9月)、[CD-ROM]、2011年9月22日、日本バーチャルリアリティ学会、p.610?611
引用例4:助田浩子、堀井洋一、丸山幸伸、星野剛史、空間の質を高め日々の生活を豊かにする情報什器、電子情報通信学会技術研究報告、Vol.105、No.570、電子情報通信学会、2006年1月20日発行、p.1?6
引用例5:YouTube、frankgarcia、Interactive Mirror、2007/12/27にアップロード、[on-line]、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=D4DI2J4O1-k>
引用例6:YouTube、Reply Living Network、HI Life、2011/06/23にアップロード、[on-line]、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=V5RVqgmSV28>
引用例7:特開2009-204817号公報
引用例8:miragraphy ミラグラフィ、ミラー型ディスプレイ、2005年10月、株式会社 日立製作所(<URL:https://web.archive.org/web/20061210113321/http://www.hitachi.co.jp/Prod/elv/jp/tosi/solution/images/pdf/mirror_syousai_0510.pdf>)

(理由2)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1に「前記対象に直接的に訴求するための情報」と記載されているが、「直接的に訴求するため」との用語は過度に観念的、抽象的であって、「情報」に対してどのような技術的内容を特定しているのか、不明瞭である。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?11に係る発明は明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
2-1 (理由1)について
(1)引用例の記載事項
(引用例1)
本願の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1(STREET SMITH'S SportsBusiness JOURNAL、SBJ/20100802/This Week's News、Video mirrors give ads new home at stadiums、By Michael Smith, Staff Writer、Published August 2, 2010、[on-line]、インターネット<URL:http://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2010/08/20100802/This-Weeks-News/Video-Mirrors-Give-Ads-New-Home-At-Stadiums.aspx?hl=mirrussc=0>)
には、図と共ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同じ。)。
「The mirror itself is essentially a TV screen with two-way mirror glass over the top. When the screen goes black, the glass becomes a mirror and shows the reflection.
When the TV is on, the image shines through the glass. Mirrus’ technology allows the user to insert a chip into the mirror and run advertising across the mirror screen in HD. Those chips can be coordinated to move in a sequence of motion or remain static.
A motion sensor at the base of the mirror detects someone approaching the sink and allows the ad to fade into a smaller position as the fans wash their hands. Through the motion sensor, the units count impressions at the sink.」(当審訳:鏡それ自身は、本質的にTVスクリーンで、その表面上に2方向鏡ガラスが備えられています。 スクリーンが黒くなるとき、ガラスは鏡になって、そして反射を示します。
TVがついているとき、映像がガラスを通して輝きます。 Mirrus の技術はユーザーがチップを鏡に挿入して、そして HDで鏡スクリーンの向こう側に広告を掲載することを可能にします。 それらのチップは、一続きの動作で動かすか、あるいは変化がないままでいるよう、コーディネートされています。
鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して、ファンが彼らの手を洗うときに、そして広告がもっと狭い位置の中に小さくなることを可能にします。 動きセンサーを通して、装置は流し(sink)においてインプレッション(当審注:広告が提供された数)を数えます。)

また、引用例1には、次の図が記載されている。

さらに、引用例1には、上図の説明として、次の事項が記載されている。
「Ads can cover all (above) or half the screen, then fade into a smaller position when a motion sensor detects movement.」(当審訳:広告は、スクリーンの全て(上図)あるいは半分をカバーして、それから、動きセンサーが動きを検出するとき、もっと狭い位置の中に小さくなることができます。)

また、上記引用例1の図より、広告が「もっと狭い位置の中に小さくなる」場所は、ガラスの右上の隅であることが見て取れる。

よって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(なお、用語の混乱を避けるため、鏡(The mirror)を、「鏡」と表記した。)
「TVスクリーンで、その表面上に2方向鏡ガラスが備えられている「鏡」であって、
スクリーンが黒くなるとき、ガラスは鏡になって、そして反射を示し、TVがついているとき、映像がガラスを通して輝き、
チップが「鏡」に挿入され、そして鏡スクリーンの向こう側に広告を掲載する(run)ことを可能にし、それらのチップは、一続きの動作で動かすよう、コーディネートされ、
広告は、スクリーンの全てをカバーして、鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して、彼らの手を洗うときに、広告がもっと狭い位置の中に小さくなることを可能にする「鏡」。」

(引用例2)
本願の出願前に頒布された刊行物である、引用例2(特開2007-279445号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【背景技術】
【0002】
ハーフミラーの反射像と表示部に表示されている画像とを重ね合わせて表示可能な画像表示装置に関する提案として、例えば特許文献1においては、前面から入射した光を前方に反射し、背面から入射した光を前方に透過させるような特性を持つハーフミラーの背面に、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)等の画像表示部を配置することで、ハーフミラーの前に存在するユーザの眼にハーフミラーからの反射像と表示部に表示された画像とを重ね合わせた画像を見せることができる技術が提案されている。」

「【0041】
また、上述した第1?第3の実施形態においては、被写体範囲102a或いは表示画像範囲103aと反射率制御範囲とを一致させていたが、必ずしもこれらを一致させる必要はない。例えば、図13(a)に示すように、被写体101の像102が映る部分のハーフミラー3の反射率を高くし、それ以外の部分の反射率を低下させるようにしても良い。このような制御を行うことにより、被写体101の像102と表示画像103とを同時にハーフミラー3上に鮮明に映すことが可能となる。
【0042】
また、上述した各実施形態においては、被写体の像102と表示画像103とが重なる部分において表示画像103の部分のハーフミラーの反射率を低下させ、図13(b)に示すように表示画像103のほうが表示されるような制御を行っている。これに対し、図13(c)に示すように、被写体101の像102がハーフミラー3上に映るように制御しても良い。この場合には、対応する部分において表示画像103を表示させないような制御を制御部8において行えば良い。」

また、図13の記載は次のとおりである。

よって、引用例2には、次の技術(以下、「引用例2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「被写体範囲或いは表示画像範囲と反射率制御範囲とを一致させず、被写体の像が映る部分のハーフミラーの反射率を高くし、それ以外の部分の反射率を低下させるようにし、被写体の像と表示画像とを同時にハーフミラー上に鮮明に映すことを可能にする」技術。

(引用例3)
本願の出願前に頒布された刊行物である、引用例3(福島悠人,濱本和彦、ハーフミラーとFPDを用いたバーチャル鏡の開発とそのデジタルサイネージへの応用に関する研究、第16回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集(2011年9月)、[CD-ROM]、2011年9月22日、日本バーチャルリアリティ学会、p.610?611)には、図とともに、次の事項が記載されている。
ア 「本研究では,ハーフミラーとFPDを用いたバーチャル鏡を開発,ターゲットユーザごとに異なる広告を提示するマーカレスARを用いたデジタルサイネージに応用する事を目的としている.」(第610頁左欄第20?23行)

イ 「4 ターゲットユーザの認識
4.1顔領域認識
本研究では,開発にあたり著名なコンピュータビジョンライブラリであるOpenCVを利用している.
Paul ViolaとMichael Jonesにより開発されたViola-Jones検出器[2]を斜めの特徴量を利用するためにRainer LienhartとJochen Maydtにより拡張されたHaar分類器[3]と,顔画像用の特徴分類器を使い,WEBカメラから取得した映像からターゲットユーザの顔領域を検出する.

顔領域が検出された時,バーチャル鏡を覗き込んでいるユーザをターゲットユーザとして認識する.」(第611頁左欄第6?16行)

ウ 「5.広告の提示
ユーザがバーチャル鏡に近づき,ターゲットユーザと認識された時,図1のFPD1に映るユーザの顔領域付近に,FPD2の広告に着目させる為の情報をARとして提示する.顔領域付近に情報を提示した場合,図4の様に表示される.」(第611頁右欄第4?8行)

また、「図4:情報の提示」における「情報提示後」の表示では、ユーザの顔の右側に、間隔をあけて情報が提示されている。

よって、引用例3には、次の技術(以下、「引用例3に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。
「WEBカメラから取得した映像からターゲットユーザの顔領域を検出し、ユーザが、ハーフミラーとFPDを用いたバーチャル鏡に近づき、ターゲットユーザと認識された時、FPD1に映るユーザの顔領域付近に、情報をARとして提示する」技術。

(引用例4)
本願の出願前に頒布された刊行物である、引用例4(助田浩子、堀井洋一、丸山幸伸、星野剛史、空間の質を高め日々の生活を豊かにする情報什器、電子情報通信学会技術研究報告、Vol.105、No.570、電子情報通信学会、2006年1月20日発行、p.1?6)には、図とともに、次の事項が記載されている。
ア 「4.2 影認識を用いたユーザインタフェース
赤外線カメラを用いた影によるオブジェクト認識方式の概要を図3に示す.天板の上に手や他の物体が載せられると,天板越しにテーブル内部に組み込まれた赤外線カメラで映像を取得し,映像の濃淡からオブジェクトの位置・形状・厚みなどを認識する.時系列の画像を照らし合わせることで,オブジェクトの動きを認識し,天板の上のオブジェクトが人間の手なのか静的物体なのかを見分けることも可能である.認識されたオブジェクトの位置や種類に応じて,あらかじめ格納されたコンテンツと合成された映像をプロジェクタから天板に投影する.これにより,ユーザの手の動きに応じて所定の処理を行ったり,手の動きに追随して映像を移動させたり,グラスや皿等の物体をよけるように映像が移動したりする効果を演出することができる.」(第3頁右欄第19行?第4頁左欄第1行)

イ 「このプロトタイプでは,ユーザ入力手段としてセンサとRFIDタグリーダ,外付けのカメラおよびICカードリーダ・バーコードリーダ等を実装できるようにした.テーブルと鏡とではユーザの接し方が異なること,手を触れることによる鏡表面の汚れが気になること等から,Silhouette Counterで用いた影認識手段は実装していないが,原理的には同様の入力方法が実装可能である.」 (第5頁左欄第3?9行)

ウ 「5.2 アプリケーション例
(1)身支度や化粧をする際に,図6a)に示すように,鏡の端にニュース見出しや天気予報,メール着信等の情報を表示する.あるには,自分のお気に入りのタレントやモデル等の映像を表示し,似たメイクを試すことができる.」(第5頁左欄第10行?同頁右欄第2行)

また、図6(a)は、以下のとおりである。

よって、引用例4には、次の技術(以下、「引用例4に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。
「アプリケーション例として、身支度や化粧をする際に、鏡の端にニュース見出しや天気予報、メール着信等の情報を表示する」技術。

(引用例5)
YouTube、frankgarcia、Interactive Mirror、2007/12/27にアップロード、[on-line]、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=D4DI2J4O1-k>

(引用例6)
YouTube、Reply Living Network、HI Life、2011/06/23にアップロード、[on-line]、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=V5RVqgmSV28>

字幕(イタリア語)により「HI REPLY RENDE SMART QUALSIASI OGGETTO
ANCHE UNO SPECCHIO
CHE DIVENTA UN DEVICE MULTIMEDIALE
CONNESSO ALLA RETE
E AD ALTRI SMART OBJECT
HI LIFE
TI DICE COME STAI
E COME PUOI STARE MEGLIO
LEGGI E SCRIVI MESSAGGI TOUCH
METEO, NOTIZIE, MUSIC PLAYER, AGENDA」(当審訳:HI REPLYは、任意のオブジェクトを、鏡でさえ、スマートにし、ネットワークや他のスマート・オブジェクトと接続されたマルチメディアデバイスにします。HI LIFEは、あなたに伝え、あなたの気分を良くします。タッチによるメッセージの読み書き、天気、ニュース、音楽プレーヤー、カレンダー。)と表示されている。

(引用例7)
本願の出願前に頒布された刊行物である、引用例7(特開2009-204817号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「この場合は、一旦、近接センサ26で近接物を感知すると共に顔認識処理により人物の顔が認識されて鏡像表示モードに自動切替がなされている状態から近接センサ26は近接物を感知し続けているが人物の顔が認識されなくなった場合であるから、人物が横向きや後ろ向きに姿勢を変えたものと考えることができる。したがって、こうした場合に録画モードを実行して撮影した映像を保存しておくことにより、後に横姿や後ろ姿を自身で確認することができるようになる。録画モードで録画された映像の再生は、ステップS180で再び人物の顔が認識され、ステップS190で登録者でないと判定され、ステップS200でモード判定フラグF2が値1と判定されたときに、所定時間T1(例えば、10秒や20秒など)の範囲内で(ステップS260)、再生モードを実行することにより行なわれる(ステップS270)。再生モードが実行されてから所定時間T1が経過すると、モード判定フラグF2を値0に設定して鏡像表示モードに戻る(ステップS220)。」(段落【0025】)

(2)対比・判断
(請求項1に係る発明について)
ア 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「TVスクリーン」が、本願発明1における「表示部」に相当する。
次に、引用発明1における「2方向鏡ガラス」は、「TVスクリーン」の「表面上」に備えられているから、本願発明1における「前記表示部の視認可能側に設けられ、かつ反射率および透過率の少なくともいずれかが可変であるミラー部」とは、「前記表示部の視認可能側に設けられた、反射および透過が可能なミラー部」の点で共通する。
次に、引用発明1における「鏡の底辺にある動きセンサー」は、「誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して」いるから、本願発明1における「前記ミラー部の前に存在する対象を検知する検知部」に相当する。
次に、引用発明1における「スクリーンの全てをカバー」する像を、「鏡スクリーンの向こう側」に「掲載する(run)」ことが、本願発明1における「表示部全面において第1の表示像を表示可能にする第1表示」に相当する。
次に、引用発明1における「もっと狭い位置の中に小さくな」った像を「鏡スクリーンの向こう側」に「掲載する(run)」ことが、本願発明1における「少なくとも一の範囲において前記反射像を表示可能とし、他の範囲において前記表示部による第2の表示像を表示可能とする第2表示」に相当する。
次に、引用発明1において、「チップは、一続きの動作で動かすよう、コーディネートされ」ているが、該「一続きの動作」とは、「鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して」、「スクリーンの全てをカバー」する像を、「もっと狭い位置の中に小さくな」った像へと動かすことを意味していることは明らかである。
よって、引用発明1の「チップ」において、「鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して」、「スクリーンの全てをカバー」する像を、「もっと狭い位置の中に小さくな」った像へと、「一続きの動作で動かすよう、コーディネート」する部分が、本願発明1における「前記検知部の前記対象の検知有無に基づいて、表示部全面において第1の表示像を表示可能にする第1表示と、少なくとも一の範囲において前記反射像を表示可能とし、他の範囲において前記表示部による第2の表示像を表示可能とする第2表示とを切換える切換え部」に相当するといえる。
次に、引用発明1における「もっと狭い位置の中に小さくな」った像が「広告」であることが、本願発明1における「前記第2の表示像が、前記対象に訴求するための情報;広告および販促情報;地域および建物の案内情報;電子書籍;ニュース情報、カレンダー情報、時計情報、および気象情報;アプリケーションプログラムへアクセスするためのアイコン;ブラウザ画面およびメーラ画面;入力インターフェース画面;ならびに、前記対象の後ろ姿画像のうちの少なくともいずれかである」ことに相当する。
次に、引用発明1において「広告は、スクリーンの全てをカバーして、鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して、彼らの手を洗うときに広告がもっと狭い位置の中に小さくなる」ことと、本願発明1における「前記検知部は、前記対象との距離を検知し、前記制御部は、前記検知部が前記対象までの距離が所定範囲内であると検知した場合において、前記分析部によって、前記対象の顔と前記ミラー部とが相対向していると判断された場合、前記切換え部が前記第1表示から前記第2表示に切換え、前記対象の顔の向きが相対向していないと判断した場合、前記第1表示から前記第2表示に切り換えず、前記第1表示から前記第2表示に切り換えた後は、前記対象が所定の範囲内に存在している場合、所定の時間において、前記対象の顔の向きに関わらず、前記第2表示を継続させる」こととは、「前記検知部は、前記対象との距離を検知し、前記制御部は、前記検知部が前記対象までの距離が所定範囲内であると検知した場合において、前記切換え部が前記第1表示から前記第2表示に切換え、前記第1表示から前記第2表示に切り換えた後は、前記対象が所定の範囲内に存在している場合、前記第2表示を継続させる」点で共通する。
次に、引用発明1における、「チップ」が「挿入され」た「「鏡」」が、次の相違点は別として、本願発明1における「表示装置」に相当する。

イ 以上のことから、本願発明1と引用発明1の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「表示部と、
前記表示部の視認可能側に設けられ、かつ反射および透過が可能なミラー部と、
前記ミラー部の前に存在する対象を検知する検知部と、
前記検知部の前記対象の検知有無に基づいて、表示部全面において第1の表示像を表示可能にする第1表示と、少なくとも一の範囲において前記反射像を表示可能とし、他の範囲において前記表示部による第2の表示像を表示可能とする第2表示とを切換える切換え部と、
前記第2の表示像が、前記対象に訴求するための情報;広告および販促情報;地域および建物の案内情報;電子書籍;ニュース情報、カレンダー情報、時計情報、および気象情報;アプリケーションプログラムへアクセスするためのアイコン;ブラウザ画面およびメーラ画面;入力インターフェース画面;ならびに、前記対象の後ろ姿画像のうちの少なくともいずれかであり、
前記検知部は、前記対象との距離を検知し、前記制御部は、前記検知部が前記対象までの距離が所定範囲内であると検知した場合において、前記切換え部が前記第1表示から前記第2表示に切換え、前記第1表示から前記第2表示に切り換えた後は、前記対象が所定の範囲内に存在している場合、前記第2表示を継続させる、表示装置。」

(相違点1)
本願発明1では、「反射率および透過率の少なくともいずれかが可変であるミラー部」と、「切換え部により第2表示に切換えられた場合、前記(前記ミラー部において前記対象の反射像を表示させるべき)少なくとも一の範囲における前記ミラー部の反射率を前記他の範囲より高くする制御、および前記少なくとも一の範囲における前記ミラー部の透過率を前記他の範囲より小さくする制御の少なくともいずれかを行う制御部」とを含むのに対し、
引用発明1では、「2方向鏡ガラス」を含んでいるものの、その反射率および透過率の少なくともいずれかを可変とするものではなく、「広告がもっと狭い位置の中に小さくな」った場合に、「2方向鏡ガラス」の反射率および透過率のいずれについても制御が行われていない点。

(相違点2)
本願発明1では、前記検知部による前記対象の検知結果に基づき、前記ミラー部において前記対象の反射像を表示させるべき少なくとも一の範囲を算出する分析部を含み、前記少なくとも一の範囲が、前記対象の顔の周囲を含む範囲であるのに対し、
引用発明1では、そのような分析部を含んでいない点。

(相違点3)
本願発明1における「制御部」は、「前記検知部が前記対象までの距離が所定範囲内であると検知した場合において、前記分析部によって、前記対象の顔と前記ミラー部とが相対向していると判断された場合、前記切換え部が前記第1表示から前記第2表示に切換え、前記対象の顔の向きが相対向していないと判断した場合、前記第1表示から前記第2表示に切り換えず、前記第1表示から前記第2表示に切り換えた後は、前記対象が所定の範囲内に存在している場合、所定の時間において、前記対象の顔の向きに関わらず、前記第2表示を継続させる」のに対し、引用発明1では、「広告は、スクリーンの全てをカバーして、鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して、彼らの手を洗うときに広告がもっと狭い位置の中に小さくなる」ように制御されている点。

ウ そこで、上記相違点について判断すると、
(相違点1)について:
引用例2に記載された技術を再掲すれば、次のとおりである。
「被写体範囲或いは表示画像範囲と反射率制御範囲とが一致させず、被写体の像が映る部分のハーフミラーの反射率を高くし、それ以外の部分の反射率を低下させるようにし、被写体の像と表示画像とを同時にハーフミラー上に鮮明に映すことを可能にする」技術。
引用例2に記載された技術は、引用例2の段落「【0002】」に記載されているとおり、引用発明1のような、ハーフミラーの背面にディスプレイを配置した画像表示装置を改良する技術であるから、引用発明1に引用例2に記載された技術を適用し、引用発明1において「広告がもっと狭い位置の中に小さくな」た場合に、「彼ら」とそれ以外の部分(広告)とを同時に2方向鏡ガラス(ハーフミラー)上に鮮明に映すことを可能にするため、「2方向鏡ガラス」(ハーフミラー)の反射率が制御できるようにするとともに、「彼ら」が映っている部分の「2方向鏡ガラス」(ハーフミラー)の反射率を高くし、「彼ら」が映っていない部分(広告)の反射率を低下させるように制御して、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2)について:
引用発明1の「「鏡」」は、「流し(sink)」に備えられた鏡であって、そのような鏡は、通常、利用者が、顔や髪型を含む頭部全体の身だしなみを確認し、整えるために用いられるものである。また、引用発明1において、「鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して、彼らの手を洗うとき」に、広告を、ガラスの右上の隅の「もっと狭い位置の中に小さくなる」ようにする理由が、「彼ら」の顔や髪型を含む頭部全体を鏡に映して、「彼ら」が身だしなみを確認し、整えられるようにするためであることも、常識的に明らかなことである。
そうであれば、引用発明1において、「鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見して、彼らの手を洗うときに」、引用例3に記載された技術を適用し、「ユーザの顔領域」を検出し、そこから少なくとも彼らの顔や髪型を含む頭部全体を含む範囲(身だしなみは、手や櫛等によって整えるのが普通であるから、輪郭の外側部分も含む)、つまり、相違点1で述べた「彼ら」が映っている部分、を分析して、該範囲のガラスが「鏡になって、そして反射を示す」ようにして、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3)について:
引用例3には、「WEBカメラから取得した映像からターゲットユーザの顔領域を検出し、ユーザが、ハーフミラーとFPDを用いたバーチャル鏡に近づき、ターゲットユーザと認識された時、FPD1に映るユーザの顔領域付近に、情報をARとして提示する」技術が記載されている。
しかし、引用例3には、FPD1に映るユーザの顔領域付近に、情報をARとして提示した後、前記ユーザがバーチャル鏡に近づいたままである場合に、所定の時間において、前記ユーザの顔領域の検出の有無、つまり顔の向きに関わらず、ユーザの顔領域付近に、ARとしての情報の提示を継続させることは、何ら記載されていない。
よって、引用例3に記載された技術を考慮しても、引用発明1において、「鏡の底辺にある動きセンサーが、誰かが流し(sink)に接近しているのを発見し」た場合において、「彼」の顔と前記ミラー部とが相対向していると判断された場合、引用発明1における「チップ」が、「スクリーンの全てをカバー」する像を、「もっと狭い位置の中に小さくな」った像へと「一続きの動作で動かすよう、コーディネート」し、前記「彼」の顔の向きと「鏡」とが相対向していないと判断した場合、「スクリーンの全てをカバー」する像を、「もっと狭い位置の中に小さくな」った像へと「一続きの動作で動かすよう、コーディネート」せず、「スクリーンの全てをカバー」する像を、「もっと狭い位置の中に小さくな」った像へと「一続きの動作で動か」した後は、「彼」が「流し(sink)」で手を洗っている場合、所定の時間において、「彼」の顔の向きに関わらず、「もっと狭い位置の中に小さくな」った像の表示を継続させ、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

また、引用例4?7には、人の顔が鏡に相対向しているか否かに応じて、鏡における表示を制御することは記載されていないから、引用例4?7に記載された技術を考慮しても、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

なお、引用例8は、引用例4に記載された「Miragraphy」について詳しく説明した参照例であって、引用例8の記載を参酌しても、上記判断は変わらない(以下、引用例8についての言及は省略する。)。

エ よって、本願発明1は、引用発明1及び引用例2?7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(請求項2?8に係る発明について)
本願の請求項2?8に係る発明は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明1及び引用例2?7に記載された技
術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、当審で通知した拒絶理由における「(理由1)」によって本願を拒絶することはできない。

2-2 (理由2)について
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「対象に直接的に訴求するための情報」との記載は、本件補正により「対象に訴求するための情報」と補正され、本件補正後の「対象に訴求するための情報」については、平成28年10月6日付けでの意見書において「ここで、前記対象に直接的に訴求するための情報が不明瞭とのことであり、情報を具体的に限定例示するとともに、直接的という語彙を削除補正しております。その結果、対象に訴求する、対象に投げかける情報であることは明確であると思料します。その結果、「前記対象に訴求するための情報」は、出願当初の明細書の記載を考慮した限定補正により、明確であると思料致します。」との釈明がなされている。
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記第2の表示像が、前記対象に訴求するための情報;広告および販促情報;地域および建物の案内情報;電子書籍;ニュース情報、カレンダー情報、時計情報、および気象情報;アプリケーションプログラムへアクセスするためのアイコン;ブラウザ画面およびメーラ画面;入力インターフェース画面;ならびに、前記対象の後ろ姿画像のうちの少なくともいずれかであり、」との記載における「対象に訴求するための情報」とは、当該意見書にて釈明されたとおりの意味であるから、もはや、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された「対象に訴求するための情報」との記載が不明確であるとすることはできない。
したがって、当審で通知した拒絶理由における「(理由2)」によって本願を拒絶することはできない。

(付記)
審判請求人より、平成28年11月8日付けで審理再開申立書が提出されたが、同申立書に記載された申立の理由をみても、審理再開の必要があるとは認められない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-15 
出願番号 特願2013-119549(P2013-119549)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09G)
P 1 8・ 537- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 浩史  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
清水 稔
発明の名称 表示装置  
代理人 特許業務法人 クレイア特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ