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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1322139
審判番号 不服2015-3871  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-27 
確定日 2016-12-20 
事件の表示 特願2013- 58773「支援データを送達するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日出願公開、特開2013-118714、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年7月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年7月17日、米国)を国際出願日とした特願2006-520399号の一部を平成23年9月20日に新たな特許出願とした特願2011-205024号の一部を平成24年1月12日に新たな特許出願とした特願2012-4264号の一部を平成25年3月21日に新たな特許出願としたものであって、原審において平成26年5月21日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月27日付けで手続補正がされたが、同年10月22日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成27年2月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、その後、当審において平成28年3月8日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月14日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成28年6月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
アクセスポイント(AP)であって、
無線送受信ユニット(WTRU)が隣接するAPのスキャンを実行すべきであることを示すコマンドを前記WTRUに送信するように構成された送信機と、
前記コマンドに応答して前記WTRUからレポートを受信するように構成された受信機であって、前記レポートは、少なくとも1つの隣接するAPから前記WTRUにより受信されたビーコンに基づいており、前記ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの情報を含むことを条件として前記ビーコンに隣接するAPの情報の存在を示す第1の値を示すインジケータを含み、前記隣接するAPの情報は、隣接するAPが動作しているチャネルの指示を含むことと
を備えたことを特徴とするAP。」

第3 原査定の理由について
1.原審の拒絶理由の概要
「理由1
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



【請求項1-14】
本願発明が解決しようとする課題は、段落0006等に記載されているように、「ポイントツーポイント信号方式を使用した支援データ伝送が、結果として大量のネットワークトラフィックを発生させるという点において、非効率的であり、それによって支援データの送信/受信に関してだけでなく、一般的に送信/受信に関しても、大幅な遅延の確率がかなり上昇する」ことであるが、上記請求項には、上記課題に対応する手段である、「支援データは、マルチキャストおよび/またはブロードキャストタイプの信号方式を使用してWTRUに伝送され」る構成(段落0008)が記載されていない。
したがって、本願の上記請求項には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、上記請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1-14
・刊行物等
1.特開2001-298467号公報
2.特開2000-32548号公報
3.特開2002-112302号公報
4.国際公開第02/080607号
(パテントファミリ特表2004-522348号公報)
5.特開2001-244990号公報
6.特開2000-13843号公報
7.特表2001-512638号公報
8.特開2002-335255号公報

備 考

【請求項1、5、8、12】:刊行物1-5
刊行物1には、アクセスポイントが、移動局に、隣接アクセスポイントの数及び各隣接アクセスポイントが伝送しているチャネルを識別するための隣接リスト(本願の隣接情報に相当)を含めたビーコンのフレーム(本願の管理フレームに相当)を送信することが記載されている(段落0012、段落0029-0030、図1参照)。
刊行物2には、報知情報に、オプション情報の有無を示す報知状態指示フィールド(本願のインジケータに相当)を設け、そのビットは「0」(本願の第2の値に相当)で情報が存在しないことを、「1」(本願の第1の値に相当)で情報が存在することを表すことが記載されている(段落0041-0043、図4参照)。
刊行物3には、基地局が、移動局に対して、ネイバーリスト(本願の隣接情報に相当)を含む位置登録応答信号を送信することが記載されている(段落0028、図8参照)。ここで、位置登録応答信号が、ブロードキャストやマルチキャストではなく、ユニキャスト(本願のポイントツーポイントメッセージに相当)で基地局から移動局に送信されることは、当業者における技術常識である。
刊行物4には、隣接セルの最適化されたリスト(本願の隣接情報に相当)を、共通チャネルではなく専用チャネル(本願のポイントツーポイントメッセージに相当)で移動局に送信することが記載されている(第8頁第13-20行(パテントファミリ文献の段落0055)参照)。
したがって、刊行物1のビーコンのフレームに、刊行物2の記載に基づき、隣接アクセスポイントの情報の有無を示すフィールドを設けるよう構成するとともに、当該ビーコンのフレームの送信方法として、刊行物3又は4の記載の、ポイントツーポイントメッセージにより送信する方法を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、本願の無線送受信ユニット(WTRU)がネットワークに固定されたものであるのか移動可能なものであるのかは請求項に記載されていないが、アクセスポイントと無線により通信を行う無線モデムと当該無線モデムに接続されたユーザPCの組合せのうち、モバイル(移動可能)なものは、当業者において周知である(必要ならば、例えば刊行物5の段落0020、図3参照)から、刊行物1の図1に記載されているような、アクセスポイントと無線により通信を行う無線モデムと当該無線モデムに接続された加入者ユニットとの組合せを、移動可能なものとすることは、単なる周知技術の付加に過ぎない。

したがって、本願の請求項1、5、8、12に係る発明は、刊行物1-4の記載及び上記周知技術(刊行物5)に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。

【請求項2、9】:刊行物1-6
刊行物6には、基地局が、他の基地局に問い合わせメッセージ(本願の隣接情報の要求に相当)を送信して、前記他の基地局から隣接リストを受信することが記載されている(段落0022-0023、図3、図4参照)。

【請求項3、10】:刊行物1-5、7
刊行物7には、隣接リスト(本願の隣接するAPの情報に相当)の生成のために、移動局が、パイロット測定要求命令に応答してパイロット信号の測定(本願のチャネルスキャンに相当)を行うことが記載されている(第23頁第3行-第25頁第18行参照)。

【請求項4、11】:刊行物1-5
刊行物1には、上記に加えて、隣接リスト情報を用いて、各隣接APからのビーコンのフレームを検出すること(本願の隣接情報を取得するためのチャネルスキャンに相当)も記載されている(段落0029-0030参照)。

【請求項6、13】:刊行物1-5、8
刊行物8には、近隣セルのリストなどのネットワーク情報を、端末間で送受信して共用することが記載されている(段落0021、段落0028-0029、段落0040、段落0050、段落0057、図1、図4参照)。そして、当該ネットワーク情報の端末間での送受信を、端末からの要求をトリガに行うか、それ以外のトリガにより行うかは、当業者が適宜選択すべき設計的事項に過ぎない。

【請求項7、13、14】:刊行物1-5
隣接リストの送信を、端末からの要求をトリガに行うか、定期的に行うかは、当業者が適宜選択すべき設計的事項に過ぎない。」

2.原査定の理由についての当審の判断
ア.理由1について
平成28年6月14日付け手続補正により、特許請求の範囲の請求項1?12において、「アクセスポイント(AP)」と「無線送受信ユニット(WTRU)」は、「ビーコン」を用い、「前記ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの情報を含む」「前記隣接するAPの情報は、隣接するAPが動作しているチャネルの指示を含む」こととなった。このことにより、請求項1?12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。

イ.理由2について
(1)刊行物の記載事項
A 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-298467号公報(刊行物1)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無線通信に関し、特に、無線ネットワークにおいてアクセスポイントを選択する技術に関する。」(3頁左欄)

ロ.「【0002】
【従来の技術】インターネットおよびイントラネット関連サービスおよびアプリケーションへの高速アクセスに対する消費者の需要により、DSL(デジタル加入者線)、ブロードバンドネットワーク、全ファイバネットワーク、ISDN(統合デジタル通信ネットワーク)、および固定無線ネットワーク等、広帯域アクセスネットワークの選択肢がいくつかある。
【0003】固定無線は、特にワイヤライン接続をアップグレードおよび維持するコストが高い地理的領域において、古典的なワイヤベースのアクセスに対する実現性のある代替を提供する。本質的に、固定無線ネットワークは、短距離送信器/受信器(送受信器)の基地局に依拠して、大きなサービスエリアの小さな領域(「セル」)における加入者にサービスを提供するセルラネットワークである。サービスエリアを、限られた範囲の送受信器を有するセルに分割することで、同じ周波数をサービスエリアの異なる領域において再使用することができ、また、サービスを提供している基地局との通信に、比較的少ない電力を消費する加入者端末を用いることができる。
【0004】図1は、従来の無線インターネットアクセスシステム(WIAS)を示し、これは、4つの主要な構成要素、すなわち(1)無線接続性およびラジオカバレッジを加入者ユニット102(a)?(d)(例えば、図1に示す住宅および法人端末機器)に提供する複数のデータ基地局(BS)100(a)および100(b)と、(2)加入者ユニット102(a)?(d)が順方向(基地局から加入者へ)および逆方向(加入者から基地局へ)のエアインタフェースリンク115(a)?(c)を介して、BS100(a)または100(b)と通信可能にする無線モデム(「WM」)170(a)?(c)と、(3)データパケットをBS100(a)および100(b)に、またはBS100(a)および100(b)から、ルーティングするデータ交換センタ(DSC)125と、(4)DSC125に接続される、公衆IP(インターネットプロトコル)ネットワーク等のバックボーン伝送ネットワーク135と、を有する固定無線技術の特定の一実施である。
【0005】加入者ユニットは、様々な方法でバックボーン伝送ネットワーク135に接続することが可能であり、これらの例を図1に示す。法人端末102(c)および102(d)は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、無線ルータおよび/またはファイアウォール(図示せず)、および共有WM170(c)を介してバックボーン伝送ネットワーク135に接続される一方、加入者ユニット102(a)および102(b)はそれぞれ、各自専用のWM170(a)、170(b)を備える。BS100(a)および100(b)は、DSC125に直接接続してもよく、またはサービスプロバイダの私設IPネットワーク127を介して、DSC125と通信してもよい。
【0006】図2は、固定無線アクセスの実施に適した例示的なセルパターンを示す。図2に示すように、各BS100(a)および100(b)は、指定された周波数ブロック(例えば、5MHz幅の送信周波数ブロックおよび5MHz幅の受信周波数ブロック)におけるエアインタフェースを介して、信号を送受信することで、セル150(a)および150(b)内の加入者端末に360度RFサービスカバレッジをそれぞれ提供する。通常、セルカバレッジは、所与のセルに指定された周波数ブロックが、複数のセクタ間に分散されるように(例えば、セル構造当たり、それぞれ送信に1MHzブロック、受信に1MHzブロックが割り当てられた5つのセル)、セクタ化される。したがって、各BS100(a)および(b)は、セクタ毎に1つずつ、複数のアクセスポイント(「AP」、図1に図示せず)を含む。
【0007】セル/セクタの境界に相対する加入者WMのロケーション、および周辺エリアの無線周波数(RF)伝搬特性に応じて、加入者は、複数のAP、すなわち単一セルについての複数のAP、および/または異なるセルからのAPと通信することが可能である。例えば、加入者のWMは、2つ以上のセクタおよび/または2つ以上のセルの境界上または境界付近にあってもよい。固定無線アクセスの本実施では、加入者のWMのインストーラが、順方向リンク信号強度に基づいて、セットアップ時に単一のAPを選択し、加入者のWMに送受信するAPの割り当ては変わらない。
【0008】しかし、周辺エリアのFR伝搬特性が変化するため、インストール時に最良の性能を提供するAPが常に、適正なサービスクォリティまたはデータスループットレートを保証する最良の、さらには適切なAPであるわけではないことが多い。例えば、温度および天候の変化、特に反射係数を変化させる湿度は、APと加入者のWM間のRF伝搬にかなり影響を及ぼしうる。さらに、ユーザに割り当てられたAPが一時的に障害を起こすか、またはAPによりサービス提供されるセクタがオーバロードになる場合に、サービスが劣化する結果になりうる。またさらに、サービスプロバイダが、(例えば、成長および「セル分裂」の結果)続けてより適したAPを配置することができる。
【0009】【発明が解決しようとする課題】したがって、加入者のWMがネットワーク状況に応答して、サービスを提供するAPを選択し、切り替えられるようにする高速AP選択および割り当て技術が必要とされている。」(3頁左欄?4頁左欄)

ハ.「【0012】例示的な一実施形態において、固定無線ネットワークにおける無線モデムは、無線モデルを最初に電源投入するとき、サービスクォリティが閾値レベル未満に劣化するとき、セクタの負荷が閾値を超えるとき、またはサービスを提供しているAPがそうするよう命令したときなど、トリガイベントに応答して、AP検索/選択シーケンスを実行し、アクセスポイントを(再)選択する。トリガイベントが発生すると、加入者の無線モデムが、複数の隣接アクセスポイントから送信された、通常「ビーコン」と呼ばれるアクセス制御信号を検出する。アクセスポイントのビーコンは、アクセスポイントを識別し、隣接アクセスポイントと、かかる隣接アクセスポイントが送信している周波数チャネルとを識別するための隣接リストを含むと共に、アクセスポイントの負荷レベルを示すフィールドを含む。ビーコンを検出し、各隣接アクセスポイントについての通信リンククォリティ測定値を得た後、無線モデムは、通信リンククォリティ測定値および相対負荷レベルに基づいて、最良のアクセスポイントを選択する。」(4頁右欄)

ニ.「【0016】図3Aは、本発明の一実施形態による使用に適した、例示的な基地局を概略的に示す。図3Aにおいて、基地局200は、無線ハブ205と、少なくとも1つのAP210とを含む。好ましくは、基地局200は、それぞれ72度カバレッジの5つのセクタにサービスを提供する5つのAP210(1?5)を含む。ネットワークサービスエリアにおける各基地局には、送受信用に同じ5MHz幅のスペクトルブロックが割り当てられ、5つのAP210(1?5)それぞれには、送信用に異なる1MHzチャネルと、受信用に別個の1MHzチャネルが割り当てられるものと想定する。」(5頁左欄)

ホ.「【0022】図5は、本発明による使用に適したAP210の例示的なアーキテクチャのブロック図である。図5の例示的な構成において、AP210は、(1)水平偏波型アンテナ282と、(2)垂直偏波アンテナ281と、(3)マトリクスボード241と、(4)RX/TXボード対221と、(5)TXボード対231と、(6)電源/ハブボード212と、を備える。
【0023】図4のWM270のように、AP210は、上述した機能を行うラジオボードおよびデジタルボードをそれぞれ備える。AP210は、それぞれラジオボード222および232と、デジタルボード223および233それぞれを有する、送受信(TX/RX)ボード対221および送信(TX)ボード対231の双方を備える。ラジオボード222、232はそれぞれ、アナログRF/IF処理ユニット224、234およびDSP226、236とを備え、各デジタルボード223、233はそれぞれ、制御プロセッサ225、235と、フォーマットコンバータ227、237とを備える。」(5頁右欄?6頁左欄)

ヘ.「【0028】AP検索/選択が開始される(ステップ402)と、加入者のWM270が、AP検索のための初期RFチャネルを選択する(ステップ404)。無線ネットワーク領域を通して同じ周波数が用いられるため、限られた数のチャネルしか利用することができない。WM270は、初期RFチャネルとして、検索範囲内の任意の可能な周波数チャネル(例えば、最低周波数チャネルまたは最高周波数チャネル)を選択しうる。
【0029】APによって送信される各フレームは、通常「ビーコン」と呼ばれるアクセス制御情報を含む。本発明によれば、各ビーコンは、伝送しているAPを識別し、該APの負荷レベルを示すと共に、隣接APの数および各隣接APが伝送しているチャネルを識別するため、隣接リストを含む。ビーコンは、データパケット承認(「ACK」)等、制御情報をさらに含みうる。WM270は、初期RFチャネルにおいて、APによって伝送されたビーコンを検出するよう試みる(ステップ406)。ビーコンが選択されたチャネル上で見つかる(ステップ408)と、WM270が、隣接APとそれらに割り当てられたチャネルを識別するために、検出されたビーコンから隣接リストが抽出される(ステップ410)。抽出された隣接リスト情報を用いて、WM270は、各隣接APからビーコンを検出する(ステップ412)。
【0030】WM270が、所定の時間期間、例えば10秒以内に、割り当てられたRFチャネル上でビーコンを検出しない場合(ステップ418)、新たなRFチャネルが選択される(ステップ420)。新しく選択されたRFチャネルが、チャネル検索範囲内にある場合(ステップ422)、WM270は、新たに選択されたチャネル上でビーコンを検出するよう試みる(ステップ406)。新たに選択されたRFチャネルが、チャネル検索範囲にない(すなわち、検索範囲における最高/最低チャネルよりも高い/低い)場合、WM270は、初期FRチャネルを再選択し(ステップ404)、ビーコン検出を試みる(ステップ406)。
【0031】ステップ410において検出されたビーコンから隣接リストを取り出し、隣接APからビーコンを検出(ステップ412)した後、WM270は、通信リンククォリティ測定値に基づいて、少なくとも1つの許容可能なAPがあるか否かを決定し(ステップ413)、少なくとも1つの許容可能なAPがある場合、通信リンククォリティ測定値およびAP相対負荷レベルに基づいて1つのAPを選択する(ステップ414)。通信リンククォリティ測定値は、WM270における信号強度(例えば、RSSI)、WM270における信号クォリティ、AP210における信号強度、およびAP210における信号クォリティ、またはこれら測定値の2つ以上の組み合わせのうちの1つでありうる。信号クォリティは、信号対雑音比、ビットエラーレート、フレームエラーレート、パケット承認パーセント(すなわち、承認される送信パケットのパーセント)等を含む、任意の数の測定値で表すことが可能である。」(6頁左欄?同頁右欄)

上記刊行物1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ヘ.の【0029】における「APによって送信される各フレームは、通常「ビーコン」と呼ばれるアクセス制御情報を含む。本発明によれば、各ビーコンは、伝送しているAPを識別し、該APの負荷レベルを示すと共に、隣接APの数および各隣接APが伝送しているチャネルを識別するため、隣接リストを含む。」との記載によれば、AP(210)は、ビーコンを送信し、当該ビーコンは、当該ビーコンが隣接するAPの隣接リストを含んでいる。ここで、上記ハ.の【0012】における「アクセスポイントのビーコンは、アクセスポイントを識別し、隣接アクセスポイントと、かかる隣接アクセスポイントが送信している周波数チャネルとを識別するための隣接リストを含む」との記載によれば、前述の隣接リストは、隣接APが送信している周波数チャネルを含んでいる。

したがって、上記刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの隣接リスト、を含み、
前記隣接リストは、隣接するAPが送信している周波数チャネルを含むこと。」

B 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-32548号公報(刊行物2)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セルラー方式が採用された移動通信システムで使用される移動端末装置及びそのメッセージ表示方法に関し、特に基地局の情報を表示することによりユーザに知らせる技術に関する。」(2頁右欄)

ロ.「【0040】無線制御部102は、システム制御部100から基地局への待ち受け要求があった場合、無線部14に基地局検索を行わせる。また、無線制御部102は、基地局検索の結果、無線部14から得られた基地局に関する情報をシステム制御部100に通知する。この基地局に関する情報には、基地局の有無を表す情報及び基地局の状態を表す報知情報が含まれる。
【0041】次に、上記報知情報について、図4?図6を参照しながら説明する。報知情報は、無線チャネル報知情報(図4参照)、システム報知情報(図5参照)、第2システム報知情報(図6参照)及び第3システム報知情報から構成されている。これらのうち、システム報知情報、第2システム報知情報及び第3システム報知情報はオプションである。なお、この実施の形態では、第3システム報知情報は使用されないので説明は省略する。
【0042】無線チャネル報知情報の形式を図4に示す。この無線チャネル報知情報は、8バイトのデータから構成されており、主に基地局からの信号のタイミングを認識するための情報が含まれている。この無線チャネル報知情報の各フィールドの意味は、「第二世代コードレス電話システム標準規格RCR STD-28」に定義されているので、以下では本発明に関係する部分以外の説明は省略する。システム報知情報及び第2システム報知情報についても同様である。
【0043】第7バイト目のビット6?4に定義されている報知状態指示フィールドでは、オプション情報の有無が示される。即ち、ビットで6はシステム報知情報の有無、ビット5では第2システム報知情報の有無、ビット4では第3システム報知情報の有無が指定される。各ビットは、「0」で情報が存在しないことを、「1」で情報が存在することをそれぞれ表す。
【0044】システム報知情報の形式を図5に示す。第3バイト目のビット6?1に定義されているCS情報フィールド中のビット5では、基地局の使用可否が示される。即ち、該ビット5が「0」であるときは、待ち受け基地局が使用可能である、つまりゾーン選択可能であることを表す。一方、該ビット5が「1」であるときは、待ち受け基地局が使用不可能である、つまりゾーン選択不可能であることを表す。
【0045】また、第6バイト目のビット8?5に定義されている無チャネル使用規制情報フィールド中のビット6では、位置登録規制の有無が示される。即ち、該ビット6が「0」であるときは、位置登録規制がないことを表し、「1」であるときは、位置登録規制があることを表す。また、無チャネル使用規制情報フィールド中のビット5では、発信規制の有無が示される。即ち、該ビット5が「0」であるときは、発信規制がないことを表し、「1」であるときは、発信規制があることを表す。
【0046】第2システム報知情報の形式を図6に示す。第2及び第3バイト目に定義されている国番号フィールドは国番号を示す。この第2システム報知情報の中の国番号とコードレス電話機に登録されている国番号とが一致しなければ、このコードレス電話機は使用できない。」(5頁右欄?6頁左欄)

上記刊行物2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0040】における「この基地局に関する情報には、基地局の有無を表す情報及び基地局の状態を表す報知情報が含まれる。」との記載、同ロ.の【0043】における「報知状態指示フィールドでは、オプション情報の有無が示される。即ち、ビットで6はシステム報知情報の有無、ビット5では第2システム報知情報の有無、ビット4では第3システム報知情報の有無が指定される。各ビットは、「0」で情報が存在しないことを、「1」で情報が存在することをそれぞれ表す。」との記載、及び図4によれば、刊行物2の基地局は、報知情報に、オプション情報の有無を示す報知状態指示フィールドを設け、そのビットは「0」で情報が存在しないことを、「1」で情報が存在することを表している。

したがって、上記刊行物2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「基地局が、報知情報に、オプション情報の有無を示す報知状態指示フィールドを設け、そのビットは「0」で情報が存在しないことを、「1」で情報が存在することを表すこと。」

C 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-112302号公報(刊行物3)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0026】図8は、本発明における移動局5と基地局1乃至基地局4と基地局制御装置6の間で送り受けされる概略信号シーケンスチャート図である。図8に示すように、移動局5は電源投入する(ステップ20)と、基地局1乃至基地局4が送信しているパイロットチャネル21を受信して、これらの電波のSIR値を測定する。図1において説明しているように、移動局5は基地局2に最も近い距離にいるため基地局2におけるパイロットチャネルの受信品質(SIR値)が最良となり、移動局5は基地局2に対して位置登録信号22を送る。
【0027】位置登録信号22を受信した基地局2は、基地局制御装置6に対して位置登録信号23を送る。基地局制御装置6は、基地局2経由で移動局5からの初めての位置登録信号23を受けて、基地局制御装置内のメモリに記憶されているネイバーリストを含む位置登録応答信号24を基地局2に対して送る。
【0028】基地局2はネイバーリストを含む位置登録応答信号24を受けて、移動局5に対してネイバーリストを含む位置登録応答信号25を送る。移動局5は、ネイバーリストを含む位置登録応答信号25を受信することでネイバーリストを入手することができる(ステップ26)。
【0029】ネイバーリストを入手した移動局5は、再び各基地局が送信しているパイロットチャネル27を受信してこれらの電波のSIR値を測定し、基地局選択優先度判定表における必要情報の入手を完了する(ステップ28)。移動局5は、測定したSIR値を基に反比例計算して選択優先度を算出し、この値とネイバーリストから入手した基地局選択優先度を加算して総合選択優先度を決定する(ステップ29)。」(5頁左欄?同頁右欄)

上記刊行物3の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.の【0028】における「基地局2はネイバーリストを含む位置登録応答信号24を受けて、移動局5に対してネイバーリストを含む位置登録応答信号25を送る。」との記載によれば、刊行物3の基地局は、移動局に対して、ネイバーリストを含む位置登録応答信号を送信している。

したがって、上記刊行物3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「基地局が、移動局に対して、ネイバーリストを含む位置登録応答信号を送信すること。」

D 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第02/080607号(刊行物4)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「La liste optimisee de cellules voisines ainsi etablie par le reseau d'acces est alors transmise par ce reseau d'acces a la station mobile. Si cette liste est particuliere a chaque utilisateur, c'est-a-dire si elle a ete etablie en tenant compte egalement du type d'abonnement de l'utilisateur, elle est de preference transmise dans un canal dedie. Si cette liste est commune aux utilisateurs, c'est-a-dire si elle n'a pas ete etablie en tenant egalement compte du type d'abonnement de l'utilisateur, elle peut etre transmise dans un canal commun, la prise en compte du type d'abonnement pouvant alors se faire au niveau de la station mobile et/ou de la carte SIM associee.」(8頁13?20行)

訳文(イ.)「次に、アクセス網は自らが作成した隣接セルの最適化されたリストを移動局に送信する。リストが各ユーザに特有である場合、すなわち、リストがユーザの契約タイプも考慮に入れて作成されている場合、リストは、好ましくは、専用チャネルを介して送信される。リストがすべてのユーザに共通である場合、すなわち、リストがユーザの契約タイプも考慮して作成されていない場合、リストは共通チャネルを介して送信されることが可能であり、契約タイプは移動局および/または関連するSIMカードによって考慮に入れられる。」

上記刊行物4の記載及びこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.における「アクセス網は自らが作成した隣接セルの最適化されたリストを移動局に送信する。・・・リストは、好ましくは、専用チャネルを介して送信される。」との記載によれば、刊行物4のアクセス網は、隣接セルの最適化されたリストを専用チャネルを介して移動局に送信している。

したがって、上記刊行物4には、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。

「アクセス網が隣接セルの最適化されたリストを専用チャネルを介して移動局に送信すること。」

E 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-244990号公報(刊行物5)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0020】トラフィック管理システムの例証的応用例を図3に示す。図3において、本発明の概念を実現する無線インターネットアクセスシステムの一部300が示されている。(本発明の概念以外の、図3に示されるような無線インターネットアクセスシステムの一例はルーセント・テクノロジー社による無線インターネットアクセスシステムである。)無線インターネットアクセスシステムの一部300は、基地局315のような多数の基地局を備える。この基地局はL2TP(レイヤー・2・トンネリング・プロトコル)アクセス・コントロール(LAC)を提供する無線ポイント・オブ・プレゼンス(POP)サーバの一例である。各基地局は無線ハブ(WH)を備える。無線ハブは複数のアクセスポイント(例えば、基地局315のAP1、AP2、AP3及びAP4)の全体区域を取り扱う。各アクセスポイントは、無線モデム310-1?310-Nで示されるような複数の無線モデムと通信するための、当業者に公知の無線アクセス・コントローラを有する。(各無線モデムはユーザ・パーソナル・コンピュータ(PC)305-1?305-Nで示されるような無線加入者に付属される。)(各PCは、当業者に公知なように、データ端末装置(DTE)の代表例である。)各無線モデムはアップリンクチャネル(ライン311で示される)及びダウンリンク(ライン312で示される)を介して各基地局と通信する。無線モデムとユーザPCの組合せは、モバイルであるか、又はモバイルではない無線エンドポイントを示す。・・・」(5頁左欄?同頁右欄)

上記刊行物5の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.の【0020】における「各アクセスポイントは、無線モデム310-1?310-Nで示されるような複数の無線モデムと通信するための、当業者に公知の無線アクセス・コントローラを有する。(各無線モデムはユーザ・パーソナル・コンピュータ(PC)305-1?305-Nで示されるような無線加入者に付属される。)・・・無線モデムとユーザPCの組合せは、モバイルであるか、又はモバイルではない無線エンドポイントを示す。」との記載、図3によれば、刊行物5のアクセスポイントと無線により通信を行う無線モデムと無線モデムに接続されたユーザPCの組み合わせは、移動可能なものであるか又は移動可能でないものである。

したがって、上記刊行物5には、以下の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。

「アクセスポイントと無線により通信を行う無線モデムと無線モデムに接続されたユーザPCの組み合わせは、移動可能なものであるか又は移動可能でないものであること。」

F 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-13843号公報(刊行物6)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0022】図3は、ハンドオフリクエストを受信する基地局の動作を示すフローチャート図である。この基地局は、主基地局からハンドオフ要求を受信する(動作ブロック301)。受信中の基地局向けのタイムスタンプが、受信中の基地局の近隣リスト向けのローカルタイムスタンプ以下の場合には、更新された近隣リストと、最新のタイムスタンプが受領確認メッセージで主基地局に送信して戻される(動作ブロック303)。さらにまた、受信中の基地局が呼をサービスすべき第3、第4、第5、第6の基地局のいずれかの場合には、この要求メッセージはそれらが主基地局内に記憶されたように、他の基地局のタイムスタンプ内に含まれる。他の基地局向けの受信したタイムスタンプが、これらの他の基地局向けに記憶されたタイムスタンプよりも大きい場合(このことはこれらの基地局向けの近隣リストの情報は更新されていないことを示すが)には、このハンドオフ要求を受信した基地局は、更新された近隣リストとタイムスタンプをそのデータベースが送れているこれらの基地局から得る(動作ブロック305、307)。
【0023】図4は、動作ブロック305で送信された問い合わせを受信する基地局により行われるプロセスを表す。基地局は、問い合わせメッセージを受信する(動作ブロック401)。基地局はホーム近隣リストと関連するタイムスタンプを表す応答を送信する(動作ブロック403)。」(5頁右欄)

上記刊行物6の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.の【0023】における「図4は、動作ブロック305で送信された問い合わせを受信する基地局により行われるプロセスを表す。基地局は、問い合わせメッセージを受信する(動作ブロック401)。基地局はホーム近隣リストと関連するタイムスタンプを表す応答を送信する(動作ブロック403)。」との記載、及び図4によれば、刊行物6の基地局は、他の基地局に問い合わせメッセージを送信して、他の基地局から近接リストを受信している。

したがって、上記刊行物6には、以下の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。

「基地局が他の基地局に問い合わせメッセージを送信して、他の基地局から近接リストを受信すること。」

G 原査定の拒絶の理由に引用された特表2001-512638号公報(刊行物7)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「同一の制御プロセッサで生成され、少なくとも一つの基地局を介して移動局に送信される他のメッセージは、パイロット測定要求命令、ハンドオフ方向メッセージ及び隣接リスト更新メッセージである。これらメッセージは、復調され、デコードされそして移動局制御プロセッサに与えられる。移動局は、前述の’261特許で述べたように、ハンドオフをサポートする際にこれらそれぞれのメッセージに従って動作する。
本発明で特に重要なのは、パイロット測定要求命令及び隣接リスト更新メッセージである。パイロット測定要求命令に応答して、移動局は能動集合及び候補集合内のすべてのパイロットのパイロット強度の現在の推定値を、それぞれのパイロットの位相遅延時間とともに報告する。このメッセージはパイロット強度測定メッセージとして呼ばれる。このパイロット強度測定メッセージは能動集合内で識別されたパイロットに対応するセル-サイトへ送信され、システムコントローラ及びスイッチ10上に送信される。
再度図3を参照すると、パイロット識別情報と対応する信号強度はシステムコントローラ及びスイッチ10で受信され、システム制御プロセッサ100を用いて処理される。能動/候補集合内の各パイロットはまず関連するラウンドトリップ遅延(RTD)が本実施形態でRTD_MAXとして示される所定のしきい値よりも大きいか否かを判定する。もし大きければ、これは、このパイロットに関連する基地局に隣接する基地局が、隣接リスト更新メッセージに含まて考えるには移動局から非常に遠すぎることを示す。このようなパイロットは、隣接リスト更新メッセージの生成を決定する際にさらに考慮されることはない。」(22頁26行?23頁17行)

上記刊行物7の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、刊行物7の移動局は、隣接リスト更新メッセージの作成のために、基地局からのパイロット測定要求命令に応答して、能動集合及び候補集合内のすべてのパイロット信号強度の測定を行い基地局に報告している。

したがって、上記刊行物7には、以下の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されているものと認められる。

「隣接リスト更新メッセージの作成のために、基地局からのパイロット測定要求命令に応答して、移動局が能動集合及び候補集合内のすべてのパイロット信号強度の測定を行い基地局に報告すること。」

H 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-335255号公報(刊行物8)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0057】モニタリング端末が選定されると、GMS端末413は必要なGSMネットワーク情報をクライアント端末であるデュアルCDMA端末414に転送する。ネットワーク性能に関する情報とGSMネットワーク情報の転送は、WPANリンク408を介して実行される。また、接続されたGSM端末413の専用リンクによっても同時に情報転送、交換を行ってもよい。こうして、GSM端末413とデュアルモードCDMA端末414の間で、現在サービスを行っている基地局に関する情報や、現在の接続ネットワークでの近隣セルのリスト等の情報が共有される。」(8頁左欄)

上記刊行物8の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.の【0057】における「GMS端末413は必要なGSMネットワーク情報をクライアント端末であるデュアルCDMA端末414に転送する。・・・接続されたGSM端末413の専用リンクによっても同時に情報転送、交換を行ってもよい。こうして、GSM端末413とデュアルモードCDMA端末414の間で、現在サービスを行っている基地局に関する情報や、現在の接続ネットワークでの近隣セルのリスト等の情報が共有される。」との記載、及び図4によれば、刊行物8のGMS端末は、GSMネットワーク情報として近接セルのリストの情報を、デュアルCDMA端末に転送している。

したがって、上記刊行物8には、以下の発明(以下、「引用発明8」という。)が記載されているものと認められる。

「GMS端末がデュアルCDMA端末に、GSMネットワーク情報として近接セルのリストの情報を転送すること。」

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
a.本願明細書段落【0015】における「支援データ(すなわち隣接リストまたは隣接情報)」との記載、同段落【0005】における「支援データは、隣接するWTRUのおよびアクセスポイントの動作周波数、アクセスモード(たとえば、802.11周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS)/直接シーケンススペクトラム拡散(DSSS)、802.11a、802.11b高レート直接シーケンススペクトラム拡散(HR-DSSS)、その他)、タイミング、隣接する基本サービスセット(BSS)に関するシステム構成情報(たとえば、Ready to Send(RTS)/Clear to Send(CTS)、Point Coordination Function(PCF)、Wired Equivalent Privacy(WEP)、その他)などの、隣接するアクセスポイントに関する情報を含むことができる。」との記載によれば、本願発明の「隣接するAPの情報」は、隣接するアクセスポイントの動作周波数を含むものである。
一方、刊行物1の上記ハ.における「アクセスポイントのビーコンは、アクセスポイントを識別し、隣接アクセスポイントと、かかる隣接アクセスポイントが送信している周波数チャネルとを識別するための隣接リストを含む」との記載によれば、引用発明1の「隣接リスト」は、隣接アクセスポイントが送信している周波数チャネルを含むものである。
よって、引用発明1の「隣接リスト」は、本願発明の「隣接するAPの情報」に含まれる。
そうすると、引用発明1の「ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの隣接リストを含み、前記隣接リストは、隣接するAPが送信している周波数チャネルを含む」と、本願発明の「前記ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの情報を含むことを条件として前記ビーコンに隣接するAPの情報の存在を示す第1の値を示すインジケータを含み、前記隣接するAPの情報は、隣接するAPが動作しているチャネルの指示を含む」とは、後述する相違点を除いて、「ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの情報を含み、前記隣接するAPの情報は、隣接するAPが動作しているチャネルの指示を含む」という点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

<一致点>
「ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの情報を含むことができ、前記隣接するAPの情報は、隣接するAPが動作しているチャネルの指示を含む」

<相違点1>
本願発明は、「アクセスポイント(AP)であって、無線送受信ユニット(WTRU)が隣接するAPのスキャンを実行すべきであることを示すコマンドを前記WTRUに送信するように構成された送信機と、前記コマンドに応答して前記WTRUからレポートを受信するように構成された受信機であって、前記レポートは、少なくとも1つの隣接するAPから前記WTRUにより受信されたビーコンに基づいており」であるのに対し、引用発明1は、その様な構成を備えていない点。

<相違点2>
一致点の「ビーコンは、前記ビーコンが隣接するAPの情報を含むことができ」の「ビーコン」に関し、
本願発明は、「前記ビーコンが隣接するAPの情報を含むことを条件として前記ビーコンに隣接するAPの情報の存在を示す第1の値を示すインジケータを含む」のに対し、引用発明1は、そのような条件を有さず、各ビーコンがAPの隣接リストを含む点。

(3)判断
そこで、上記相違点1について検討する。
「第3 原査定の理由について」の項中の「2.原査定の理由についての当審の判断」の項に引用発明7として記載した「隣接リスト更新メッセージの作成のために、基地局からのパイロット測定要求命令に応答して、移動局が能動集合及び候補集合内のすべてのパイロット信号強度の測定を行い基地局に報告すること。」は、公知技術であるが、引用発明7は、移動局からのパイロット信号強度に基づいて隣接リスト(隣接セル基地局に対応するPNオフセット)更新メッセージを移動交換局で生成することを前提とするのに対し、引用発明1は、最良のアクセスポイントを選択させるため、隣接リスト(伝送しているAPを識別し負荷レベル等を示す情報)を無線モデムに送信することを前提としていて、両者で前提とする構成が相違するため、引用発明7を引用発明1に適用する動機付けがそもそも存在せず、また、仮に適用したとしても、上記相違点に相当する構成を導き出すことはできない。
また、引用発明1に、仮に、引用発明2ないし引用発明6、引用発明8のいずれかの発明を適用したとしても、上記相違点に相当する構成を導き出すことはできない。

よって、本願発明は、上記相違点2を検討するまでもなく、引用発明1ないし引用発明8に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明1ないし8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項2ないし6は、請求項1を引用する従属項であり、本願発明の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(3)と同じ理由により、引用発明1ないし8に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項7は、請求項1に係る発明のカテゴリーを「方法」とした発明であるから、上記(3)と同じ理由により、引用発明1ないし8に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項8ないし12は、請求項7を引用する従属項であり、請求項7に係る発明の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(3)と同じ理由により、引用発明1ないし8に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
「1)平成26年2月19日、平成27年2月27日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由1について
1.平成26年2月19日、平成27年2月27日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1には、「管理フレームを802.11無線送受信ユニット(WTRU)にポイントツーポイントメッセージとして送信する・・・前記管理フレームは・・・前記管理フレームに隣接情報の存在を示す第1の値を示し、・・・前記管理フレームに隣接情報の不存在を示す第2の値を示すインジケータを含み」との記載(以下、「本件補正」という。)がある。しかしながら、明細書段落【0006】、【0024】及び【0025】の記載を参酌しても、管理フレームが隣接情報を含むという条件の下で前記管理フレームに隣接する802.11APの情報の存在を示す第1の値を示し、および前記管理フレームが隣接情報を含まないという条件の下で前記管理フレームに隣接情報の不存在を示す第2の値を示すインジケータを含む、前記管理フレームを、802.11APが802.11WTRUにポイントツーポイントメッセージで送信することは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていない。 また、請求項5、8及び12についても同様である。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。また、請求項5、8及び12についても同様である。

以上のとおり、本件補正は、当初明細書等の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

理由2について
上記理由1の1.で指摘した「管理フレームを802.11無線送受信ユニット(WTRU)にポイントツーポイントメッセージとして送信する・・・前記管理フレームは・・・前記管理フレームに隣接情報の存在を示す第1の値を示し、・・・前記管理フレームに隣接情報の不存在を示す第2の値を示すインジケータを含み」なる構成は、原出願及びその原出願(特願2012-4264号、特願2011-205024号、特願2006-520399号)の当初明細書等にも記載されていないから、本件出願の出願日の遡及を認めることはできず、本件出願の出願日は、現実の出願日である平成25年3月21日である。

請求項1?14に対して、刊行物A。
刊行物A:特表2007-532032号公報

備考:刊行物Aには、802.11無線ローカルエリアネットワークにおいて、隣接情報を無線送受信ユニットにポイントツーポイントメッセージとして送信するAPが記載されている(段落【0006】)。また、刊行物1には、フレームに隣接情報の有無を示すエクストラビットを設けること(以下、「技術事項」という。)が記載されている(段落【0025】、図5)。
そうすると、隣接情報を無線送受信ユニットにポイントツーポイントメッセージとして送信するAPにおいて、上記技術事項を適用して、請求項1に係る発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。また、請求項5、8及び12に係る発明についても、同様に、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、従属項についても、刊行物Aに記載された発明に基づいて、当業者が適宜なし得ることである。」

2.当審拒絶理由についての当審の判断
(1)理由1について
平成28年6月14日付けの手続補正により、平成27年2月27日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1における「管理フレームを802.11無線送受信ユニット(WTRU)にポイントツーポイントメッセージとして送信する・・・前記管理フレームは、・・・前記管理フレームに隣接情報の存在を示す第2の値を示すインジケータを含み」との記載は削除された。これにより、特許請求の範囲の請求項1の記載は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとなり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえなくなった。また、請求項5、8及び12についても同様である。

(2)理由2について
上記(1)のとおり、特許請求の範囲の請求項1、5及び12の記載は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとなり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえなくなったから、本件出願の出願日の遡及は認められる。
よって、本願発明は、本件出願の出願日より後に公開された刊行物Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

請求項2ないし6は、請求項1を引用する従属項であり、本願発明の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記理由により、刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

請求項7は、請求項1に係る発明のカテゴリーを「方法」とした発明であるから、上記理由により、刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

請求項8ないし12は、請求項7を引用する従属項であり、請求項7に係る発明の発明特定事項を含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記理由により、刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-05 
出願番号 特願2013-58773(P2013-58773)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 萩原 義則
中野 浩昌
発明の名称 支援データを送達するための方法およびシステム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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