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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1322191
審判番号 不服2015-16311  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-03 
確定日 2016-12-21 
事件の表示 特願2011- 66812「圧電素子の製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-204549、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月24日の出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
平成26年 3月 5日 審査請求
平成27年 2月25日 拒絶理由通知(起案日)
平成27年 5月 7日 意見書及び手続補正書提出
平成27年 5月29日 拒絶査定(起案日)
平成27年 9月 3日 審判請求及び手続補正書提出


第2 平成27年9月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 本件補正の内容
本件補正は、平成27年5月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲のうち、独立請求項である請求項1及び請求項4を補正するものであって、その内容は以下のとおりである。
(1)請求項1について
ア 特許請求の範囲の請求項1についてする本件補正は、
本件補正前の
「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜上にジルコニウムからなる密着層を形成する工程と、
前記密着層上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程と、
前記圧電体層上に第2電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法。」という記載を、
本件補正後は、
「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜上にジルコニウムからなる密着層を形成する工程と、
前記密着層上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層を形成し、前記密着層が前記ビスマスの偏析を防止する工程と、
前記圧電体層上に第2電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法。」と補正するものである。

イ したがって、請求項1についてする本件補正は、本件補正前の「前記第1電極上に、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程」という記載を、本件補正後は、「前記第1電極上に、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層を形成し、前記密着層が前記ビスマスの偏析を防止する工程」と補正(以下「補正事項1」という。)するものである。

(2)請求項4について
ア 特許請求の範囲の請求項4についてする本件補正は、
本件補正前の
「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜と、
前記絶縁体膜上に設けられたジルコニウムを含む密着層と、
前記密着層上に設けられた第1電極と、
前記第1電極上に設けられ、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層と、
前記圧電体層上に設けられた第2電極と、
を具備することを特徴とする圧電素子。」という記載を、
本件補正後は、
「第1電極と、
前記第1電極上に設けられ、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層と、
前記圧電体層上に設けられた第2電極と、
前記第1電極の下に設けられ、前記圧電体層から拡散したビスマスの偏析を防止する、ジルコニウムを含む密着層と、
前記密着層の下に設けられ酸化ジルコニウムからなる絶縁体層とを具備することを特徴とする圧電素子。」と補正するものである。

イ したがって、請求項4についてする本件補正は、
(ア)本件補正前の「前記密着層上に設けられた第1電極」という記載を、本件補正後は、「第1電極」と補正し、
(イ)本件補正前の「前記絶縁体膜上に設けられたジルコニウムを含む密着層」という記載を、本件補正後は、「前記第1電極の下に設けられ、前記圧電体層から拡散したビスマスの偏析を防止する、ジルコニウムを含む密着層」と補正し、
(ウ)本件補正前の「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜」という記載を、本件補正後は、「前記密着層の下に設けられ酸化ジルコニウムからなる絶縁体層」と補正するものである。

ウ 前記(ア)の補正と、前記(イ)の補正のうちの「密着層」が「前記第1電極の下に設けられ」たと補正する補正は、本件補正前の「ジルコニウムを含む密着層」に「上に設けられた第1電極」を、本件補正後は、「前記第1電極の下に設けられ」た「ジルコニウムを含む密着層」と言い換えたものにすぎない。
前記(ウ)の補正は、本件補正前の前記「密着層」が「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜」上に「設けられ」ていたものを、本件補正後は、「酸化ジルコニウムからなる絶縁体層」は「前記密着層の下に設けられ」ると言い換えたものであり、ここで、「絶縁体膜」を「絶縁体層」と言い換えたことは実質的な補正であるとは認められない。

エ そうすると、請求項4についてする本件補正は、実質的には、本件補正前の「ジルコニウムを含む密着層」が、本件補正後は「前記圧電体層から拡散したビスマスの偏析を防止する」と補正(以下「補正事項2」という。)するものである。

2 補正の適否
(1)補正の目的について
ア 補正事項1
補正事項1は、本件補正前の「前記第1電極上に、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程」が、本件補正後は、「前記密着層が前記ビスマスの偏析を防止する工程」でもあるという限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項2
補正事項2は、本件補正前の「ジルコニウムを含む密着層」が、本件補正後は、「前記圧電体層から拡散したビスマスの偏析を防止する」層であるという限定を付加するものであって、補正前の請求項4に記載された発明と補正後の請求項4に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の有無等について
ア 新規事項の有無
補正事項1及び補正事項2は、本願の願書に最初に添付した明細書における、段落【0028】の「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55上にスパッタリング法によりジルコニウムからなる密着層56を形成し、その後、密着層56上に白金等からなる第1電極60を形成することで、圧電体層70に含まれるビスマスが第1電極60中に拡散し、さらには密着層56中に拡散しても、ビスマスの偏析が生じず、膜剥がれなどの問題が生じることがない。」という記載、及び、段落【0050】の「ここで、圧電体層70の形成の熱処理により、後述するように、圧電体層70からビスマスが第1電極60から密着層56との界面又は一部密着層56まで拡散し、一方、密着層56からのジルコニウムの拡散は第1電極60中に多少拡散しているが、圧電体層70までは拡散しないことが確認されている。」という記載に基づくと認められる。
したがって、補正事項1及び補正事項2は、特許法第17条の2第3項の要件を満たす。

イ 発明の特別な技術的特徴の変更の有無
補正事項1及び補正事項2が、請求項1ないしは請求項4に係る発明の特別な技術的特徴を変更しないことは、明らかである。
したがって、補正事項1及び補正事項2は、特許法第17条の2第4項の要件を満たす。

(3)独立特許要件について
以上のとおり、補正事項1及び補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
前記補正事項1及び補正事項2は、直接的には独立請求項である請求項1及び請求項4を補正するものであるが、請求項1を引用する請求項2?3及び請求項4を引用する請求項5?8についても、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正がなされたものである。
そこで、本件補正後の請求項1ないし請求項8に係る発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下で検討する。

ア 補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明1」という。)、及び、本件補正後の請求項4に係る発明(以下「補正発明4」という。)は、再掲すると以下の通りである。
(ア)補正発明1
「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜上にジルコニウムからなる密着層を形成する工程と、
前記密着層上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層を形成し、前記密着層が前記ビスマスの偏析を防止する工程と、
前記圧電体層上に第2電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法。」

(イ)補正発明4
「第1電極と、
前記第1電極上に設けられ、鉛を含有せずビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層と、
前記圧電体層上に設けられた第2電極と、
前記第1電極の下に設けられ、前記圧電体層から拡散したビスマスの偏析を防止する、ジルコニウムを含む密着層と、
前記密着層の下に設けられ酸化ジルコニウムからなる絶縁体層とを具備することを特徴とする圧電素子。」

イ 原査定に引用された刊行物
(ア)引用例1
原査定の根拠である平成27年2月25日付けの拒絶理由通知において「文献1」として引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2007-173690号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審において付した。以下同様。)。
(ア1)引用例1の記載事項
a 「【0001】
本発明は、基板上に形成される積層電極の製造方法、圧電素子の電極として積層電極を適用した圧電素子を有するアクチュエータ装置及びその製造方法、並びにアクチュエータ装置を液体噴射手段として備えた液体噴射ヘッドに関する。
……(中略)……
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、優れた密着性を有する積層電極の製造方法、アクチュエータ装置及びその製造方法、並びに液体噴射ヘッドを提供することを課題とする。」

b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
……(中略)……
【0020】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO_(2))等からなり厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が積層形成されている。また、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.1?0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約0.5?5μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とからなる圧電素子300が形成されている。
【0021】
一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよい。
【0022】
また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、本実施形態では、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が設けられている。具体的には、各圧電素子300のそれぞれにリード電極90が接続され、これら各リード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。なお、このリード電極90は、詳細は後述するが、電解液であるエッチング液を用いたウェットエッチングにより所定形状にパターン形成されたものであり、配線として機能する機能性膜である。
……(中略)……
【0024】
圧電素子300の下電極膜60は、図3に示すように、本実施形態では、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55上に形成された密着性金属からなる密着層61と、この密着層61上の全面に形成された導体層62とで構成された2層構造の積層電極である。
【0025】
ここで、密着層61を形成する密着性金属としては、圧電体層70の形成時の焼成温度で導体層62に拡散し難い高融点金属材料で、且つ圧電体層70の焼成温度以下の温度で熱酸化する材料であるのが好ましい。具体的には、例えば、Ta、Zr、W、Ni、Hf、Nb、Mo、Coからなる群から選択される少なくとも1種の材料を用いるのが好ましい。これにより、密着層61の金属成分が導体層62に拡散することが抑えられ、下電極膜60の密着性を十分に確保することができる。一方、導体層62を形成する金属材料としては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os),レニウム(Re),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd)等の白金族が挙げられる。本実施形態では、密着層61をZrで形成し、導体層62をPtで形成した。勿論、本発明において密着層61及び導体層62を形成する材料は、上述した材料に限定されるものではない。」

c 「【0030】
このような下電極膜60上に形成される圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料に、ニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等を用いてもよい。その組成は、圧電素子の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PZN-PT)、Pb(Ni_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/2)Nb_(1/2))O_(3)-PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)-PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)-PbTiO_(3)(BY-PT)等が挙げられる。圧電体層70の製造方法は、ゾル-ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。」

d 「【0036】
ここで、インクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4?図8を参照して説明する。なお、図4?図8は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
【0037】
次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500?1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO_(2))からなる絶縁体膜55を形成する。
【0038】
次に、図4(c)に示すように、絶縁体膜55の前面に、例えば、ジルコニウム(Zr)からなる密着層61を形成し、この密着層61上に白金(Pt)からなる導体層62を形成した。
【0039】
次に、下電極膜60上に、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電体層70を形成する。なお、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル-ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。また、圧電体層70の製造方法は、ゾル-ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
【0040】
圧電体層70の形成手順の一例としては、まず、図5(a)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、流路形成基板用ウェハ110上に金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布する。次いで、圧電体前駆体膜71を、所定温度に加熱して一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒を蒸発させることで圧電体前駆体膜71を乾燥させる。さらに、大気雰囲気下において一定の温度で一定時間、圧電体前駆体膜71を脱脂する。なお、ここで言う脱脂とは、ゾル膜の有機成分を、例えば、NO_(2)、CO_(2)、H_(2)O等として離脱させることである。
【0041】
そして、図5(b)に示すように、この圧電体前駆体膜71を拡散炉又はRTP(Rapid Thermal Processing)装置等で加熱処理することによって結晶化させて圧電体膜72を形成する。すなわち、圧電体前駆体膜71を焼成することで結晶が成長して圧電体膜72が形成される。なお、焼成温度は、650?850℃であることが好ましく、例えば、約700℃で30分間、圧電体前駆体膜71を焼成して圧電体膜72を形成する。なお、このように形成した圧電体膜72の結晶は(100)面に優先配向する。その後、このようにして形成された圧電体膜72と、その下地である下電極膜60とを所定形状にパターニングする。
【0042】
さらに、上述した塗布・乾燥・脱脂・焼成の工程を、複数回繰り返すことにより、図5(c)に示すように、例えば、5層の圧電体膜72を形成し、所定厚さの圧電体層70を形成する。なお、このように複数回焼成を行って圧電体層70を形成する場合には、トータルの焼成(加熱)時間を、0.5?3時間以内とするのが好ましい。
【0043】
次に、このように圧電体層70を形成した後は、図6(a)に示すように、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極膜80を流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。次いで、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に積層された圧電体層70及び上電極膜80を、例えば、イオンミリング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いて各圧力発生室12となる領域にパターニングすることにより、各圧力発生室12となる領域のそれぞれに対応して圧電素子300を形成する。」

(ア2)引用発明1
上記のa?dから、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する工程と、
前記弾性膜50上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する工程と、
前記絶縁体膜55の前面に、圧電体層70の形成時の焼成温度で導体層62に拡散し難い高融点金属材料であり、かつ、前記焼成温度以下の温度で熱酸化する材料である、Ta、Zr、W、Ni、Hf、Nb、Mo、Coからなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる密着層61を形成する工程と、
前記密着層61上に前記導体層62を形成する工程と
前記密着層61と前記導体層62とで構成される下電極膜60上に、PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PZN-PT)、Pb(Ni_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/2)Nb_(1/2))O_(3)-PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)-PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)-PbTiO_(3)(BY-PT)等の鉛を含有する強誘電性圧電性材料からなる前記圧電体層70を形成する工程と、
前記圧電体層70を形成した後に、上電極膜80を形成する工程と、
を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法。」

(ア3)引用発明2
また、上記のa?dから、引用例1には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「密着層61と導体層62とで構成された2層構造の積層電極である下電極膜60と、
前記下電極膜60上に設けられ、PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PZN-PT)、Pb(Ni_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/2)Nb_(1/2))O_(3)-PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)-PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)-PbTiO_(3)(BY-PT)等の鉛を含有する強誘電性圧電性材料からなる圧電体層70と、
前記圧電体層70上に設けられた上電極膜80と、
前記導体層62の下に設けられ、前記圧電体層70の形成時の焼成温度で前記導体層62に拡散し難い高融点金属材料であり、かつ、前記焼成温度以下の温度で熱酸化する材料である、Ta、Zr、W、Ni、Hf、Nb、Mo、Coからなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる密着層61と、
前記密着層の下に設けられ酸化ジルコニウムからなる絶縁体層55と、
を具備することを特徴とする圧電素子。」

(イ)引用例2
原査定の根拠である平成27年2月25日付けの拒絶理由通知において「文献2」として引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-78328号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(イ1)引用例2の記載事項
a 「【0038】
ここで、インクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4?図8を参照して説明する。なお、図4?図8は、圧力発生室の長手方向の断面図である。まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
【0039】
次に、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタリング法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500?1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO_(2))からなる絶縁体膜55を形成する。
【0040】
次に、図5(a)に示すように、例えば密着層62、白金層63及び拡散防止層64からなる下電極膜60を形成する。具体的には、まず、絶縁体膜55上に、密着層62を形成する。密着層62としては、例えば、厚さが10?50nmのチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、密着層62として、厚さ20nmのチタン(Ti)を設けた。このように下電極膜60の最下層に密着層62を設けることによって、絶縁体膜55と下電極膜60との密着力を高めることができる。次いで、密着層62上に白金(Pt)からなり厚さが50?500nmの白金層63を形成する。本実施形態では、白金層63を130nmの厚さで形成した。そして、白金層63上に拡散防止層64を形成する。これにより、密着層62、白金層63及び拡散防止層64からなる下電極膜60が形成される。なお、拡散防止層64は、後の工程で圧電体層70を焼成して結晶化させて形成する際に、密着層62の成分が圧電体層70に拡散するのを防止すると共に圧電体層70の成分が下電極膜60に拡散するのを防止するためのものである。このような拡散防止層64としては、厚さが例えば、5?20nmのイリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、拡散防止層64として、厚さ10nmのイリジウム(Ir)を用いた。なお、このような下電極膜60の各層62?64は、例えば、DCマグネトロンスパッタリング法によって形成することができる。」
b 「【0042】
次に、このように形成した種チタン層上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル-ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、例えば、上述したようにリラクサ強誘電体(例えば、PMN-PT、PZN-PT、PNN-PT等)の他の圧電材料を用いてもよい。また、圧電体層70の製造方法は、圧電材料を塗布して圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成し結晶化させて形成する方法であればよく、ゾル-ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。」

(ウ)引用例3
原査定の根拠である平成27年2月25日付けの拒絶理由通知において「文献3」として引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2009-255532号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ウ1)引用例3の記載事項
a 「【0040】
圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛[Pb(Zr,Ti)O_(3):PZT]を主成分とする材料で形成されていることが好ましいが、その他、マグネシウム酸ニオブ酸鉛とチタン酸鉛の固溶体[Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3):PMN-PT]、亜鉛酸ニオブ酸鉛とチタン酸鉛の固溶体[Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3):PZN-PT]等を用いてもよい。いずれにしても圧電体層70の材料は、ペロブスカイト構造の結晶からなるものであれば上記の材料に限定されない。」
b 「【0051】
まず、図4(a)に示すように、結晶面方位(110)のシリコン単結晶基板からなるシリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110の表面に振動板50を形成する。具体的には、まず、弾性膜51を構成する二酸化シリコン膜53を形成する。例えば、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110の表面を熱酸化することによって弾性膜51(二酸化シリコン膜53)を形成している。勿論、弾性膜51は、熱酸化以外の方法で形成してもよい。さらに、この弾性膜51(二酸化シリコン膜53)上に、酸化チタン(TiO_(X))からなる絶縁体膜52を形成する。絶縁体膜52の形成方法は、特に限定されず、例えば、スパッタ法等によって形成すればよい。
【0052】
ところで、振動板50を構成する絶縁体膜52は、圧電素子300を構成する圧電体層70の鉛成分が弾性膜51や流路形成基板10に拡散するのを防止するための役割も果たしている。
【0053】
次いで、図4(b)に示すように、振動板50(絶縁体膜52)上に、導電層61及び配向制御層62からなる下電極膜60を形成し、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。具体的には、例えば、白金(Pt)等の所定の金属材料を絶縁体膜52上にスパッタリング法等によって導電層61を形成し、さらにこの導電層61上にニッケル酸ランタンからなる配向制御層62を形成する。その後、これら配向制御層62と導電層61とを順次パターニングする。」

(エ)引用例4
原査定の根拠である平成27年2月25日付けの拒絶理由通知において「文献4」として引用され、本願出願前に外国において頒布された刊行物である国際公開第2005/056295号(以下「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(エ1)引用例4の記載事項
a 「[0056] このようにジルコニウム層が形成された流路形成基板用ウェハ110を、700℃以上に加熱された拡散炉200に、200mm/minよりも速いボートロードスピードで挿入してジルコニウム層を熱酸化することで、絶縁体膜55を緻密な膜に形成することができ、絶縁体膜55にクラックが発生するのを防止できる。また、絶縁体膜55の密着性が向上するため、圧電素子300の駆動によって繰り返し変形した場合でも、絶縁体膜55の剥がれを防止することができる。」
b 「[0063] なお、このような絶縁体膜55を形成した後は、図 3 (c)に示すように、例えば、白金 とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成後、この下電極膜 60を所定形状にパターユングする。次いで、図 3 (d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾルーゲル法を用いてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)かららなる圧電体層70を形成している。また、このように圧電体層70を形成すると、焼成時に圧電体層70の鉛成分が弾性膜50に拡散する虞があるが、圧電体層70の下側には酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が設けられているため、圧電体層70の鉛成分が弾性膜50に拡散するのを防止することができる。
[0064] なお、圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料に、ニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等を用いてもよい。その組成は、圧電素子の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、 PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)?PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)?PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)?PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)?PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)?PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)?PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)?PbTiO_(3)(BY-PT)等が挙げられる。また、圧電体層 70の製造方法は、ゾル-ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。」

(オ)周知例
原査定において周知技術として新たに引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2010-214841号公報(以下「周知例」という。)には、以下の事項が記載されている。
(オ1)周知例の記載事項
a 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、環境問題の観点から、鉛を含有しない圧電材料が求められている。ここで、鉛を含有しない圧電材料としては、例えばABO_(3)で示されるペロブスカイト構造を有するBiFeO_(3)が挙げられる。なお、BiFeO_(3)は、優れた圧電特性を有する材料であり、また、ビスマスと酸素や、鉄と酸素で共有結合を形成するため、同じく鉛を含有しない圧電材料であるBaTiO_(3)と比較しても、キュリー温度が高いという利点を有している。
【0006】
しかしながら、BiFeO_(3)を圧電材料とする圧電素子はリーク電流が大きく、例えば25V程度の駆動電圧でも絶縁破壊が発生する場合があるという問題がある。なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、他の装置に搭載されるアクチュエーター装置においても同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、鉛を含有せず、電流のリークを抑制することができる圧電素子を有する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びにアクチュエーター装置を提供することを目的とする。」
b 「【0020】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と、厚さが10μm以下、好ましくは0.3?1.5μmの薄膜の圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。……(以下、省略)」
c 「【0028】
また、圧電体層70は、Bサイトの+4以上のイオン価数を有する遷移金属Cがマンガンであれば、下記一般式(4)で、また、Aサイトがビスマスのみからなり、Bサイトの+4以上のイオン価数を有する遷移金属Cがマンガンであれば、下記一般式(5)で表される。
A_(1-δ/3)(Fe_(1-δ)Mn_(δ))O_(3) (4)
(0.01≦δ≦0.1)
Bi_(1-δ/3)(Fe_(1-δ)Mn_(δ))O_(3) (5)
(0.01≦δ≦0.1)
【0029】
このような圧電素子300を流路形成基板10上に形成する方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハーの表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO_(2))等からなる二酸化シリコン膜を形成する。次いで、弾性膜50(二酸化シリコン膜)上に、酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜55を形成する。
【0030】
次に、絶縁体膜55上に白金やイリジウム等からなる第1電極60をスパッタリング法等により全面に形成した後パターニングする。
【0031】
次いで、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル-ゲル法を用いて圧電体層70を形成できる。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル-ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法や、レーザアブレーション法やスパッタ法等の気相法などを用いてもよい。」
d 「【0040】
圧電体層70を形成後、スパッタ法等により、圧電体層70上にPt膜等からなる第2電極80を形成する。
……(以下、省略)
【0042】
ここで、BiFeO_(3)を圧電材料とするとリーク電流が大きくなってしまう原因は、以下の機構であったことを知見した。まず、上記圧電体層70の焼成工程の際に、厚さが10μm以下である薄膜の圧電体層70においては、融点が低く揮発し易い元素であるビスマスの一部は、大気中に揮発したり第1電極60側へ拡散したりすることにより、圧電体層70から抜ける。BiFeO_(3)を圧電材料とする場合、このようにビスマスが圧電体層70から抜ける際、圧電体層70の電荷中性を保つために、酸素も同時に圧電体層70から抜ける。そして、ビスマスの欠損と同時に酸素が抜けることにより、圧電体層70に不純物準位が出現する。また、不純物準位は圧電体層70の伝導帯のボトム付近に出現する。したがって、BiFeO_(3)を圧電材料とする場合、この不純物準位の出現により、電流のリークが大きくなる。すなわち、BiFeO_(3)においては、実際に製造されていたのは、BiFeO_(3)の完全な結晶ではなくビスマス及び酸素の一部が製造段階で抜けたものであり、この酸素の欠損により不純物準位が出現し電流のリークが大きくなっていた。
【0043】
一方、本発明においては、+4以上のイオン価数を有するマンガン等の遷移金属Cを添加することにより、Bサイトの+3のイオン価数を有する鉄の一部を+4以上のイオン価数を有する遷移金属C、すなわち、鉄よりも大きなイオン価数を有する遷移金属で置き換えている。したがって、ビスマスが抜けない場合は、遷移金属Cの添加量に応じて圧電体層70はプラスが過剰となることになる。よって、圧電体層70は、電荷中性を満たすためにプラスを減らす方向に働く、具体的には、プラスのイオン価数を有し揮発し易いビスマスがより抜けやすくなる。そして、圧電体層70の焼成の際に、プラスであるビスマスが抜けるが、Bサイトに添加された遷移金属Cによって、もともと圧電体層70はプラスが過剰になっているため、ビスマスがある程度抜けることにより、製造される圧電体層70は、上記一般式(1)?(5)に示すように、電荷中性になる。よって、焼成の際に、ビスマスが抜けても圧電体層70の電荷中性のための酸素の抜けは生じないことになる。このように、+4以上のイオン価数を有する遷移金属Cを添加することにより、酸素が抜けることを防ぐことができるため、酸素欠損により生じる不純物準位の出現を防ぐことができ、リーク電流を抑制することができる。なお、本発明において、+4以上のイオン価数を有する遷移金属Cを添加することにより、Aサイトのビスマスは一部が抜け、このビスマスが抜けたAサイトは、原子が存在しない空孔となる。なお、ビスマスが抜ける量は一般式(1)においてはxで表される。また、一般式(2)に示すように、+4以上のイオン価数を有する遷移金属Cの添加量がδモルの場合、遷移金属Cのイオン価数をzとすると、抜けるビスマスの量は、(z-3)・δ/3モルとなる。」
e 「【0046】
(実施例)
次に、本実施形態に係る圧電素子300の製造について、図2(b)を参照しながら、具体例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0047】
(A)まず、Si(110)配向基板からなる流路形成基板10の表面上に、Si熱酸化によりSiO_(2)層を弾性膜50として形成した。膜厚は1000nmである。
【0048】
(B)次いで、弾性膜50上に絶縁体膜55を形成した。絶縁体膜55は、スパッタ法により形成した500nmのZrO_(2)膜である。
【0049】
(C)次に、絶縁体膜55上に第1電極60を形成した。第1電極60は、スパッタ法により形成された200nmのIr膜である。
【0050】
(D)その後、第1電極60上に圧電体層70を形成した。具体的には、ビスマスイソプロポキシド、酢酸鉄及び酢酸マンガンをアルコールに溶解・分散させた前駆体溶液を、スピンコート法を用いて第1電極60上に塗布し、乾燥した後、350℃で熱処理し(脱脂工程)、RTAにより酸素雰囲気中にて600℃で3分間焼成し(焼成工程)、厚さ1.0μmの圧電体層70を得た。
【0051】
(E)次に、圧電体層70上に、100nmのPt膜からなる第2電極80をスパッタ法により形成した。
【0052】
(F)次いで、650℃の温度域でRTAにより酸素雰囲気中にて1分間ポストアニールを行った。
【0053】
上記(A)?(F)の工程により、添加するMnの割合の異なる複数の圧電素子を作成した。こうして得られた圧電体層70は、ペロブスカイト構造を有し、結晶が(100)面に優先配向していることがX線回折により確認できた。……(以下、省略)」

ウ 対比及び判断
A 補正発明1について
(ア)補正発明1と引用発明1との対比
引用発明1における「圧電体層70」を形成する「PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PZN-PT)、Pb(Ni_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/2)Nb_(1/2))O_(3)-PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)-PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)-PbTiO_(3)(BY-PT)等の鉛を含有する強誘電性圧電性材料」は、いずれも、2種以上の金属イオンを含む複合酸化物である。
したがって、補正発明1と引用発明1とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<<一致点>>
「酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜上に密着層を形成する工程と、
前記密着層上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に、複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程と、
前記圧電体層上に第2電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法。」

<<相違点>>
<<相違点1>>
補正発明1の「密着層」は「ジルコニウムからなる」のに対して、引用発明1の「密着層61」は「圧電体層70の形成時の焼成温度で導体層62に拡散し難い高融点金属材料であり、かつ、前記焼成温度以下の温度で熱酸化する材料である、Ta、Zr、W、Ni、Hf、Nb、Mo、Coからなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる」点。
<<相違点2>>
補正発明1の「圧電体層」は「鉛を含有」しないのに対して、引用発明1の「圧電体層70」は「鉛を含有する」点。
<<相違点3>>
補正発明1の「圧電体層」は「ビスマスを含む」のに対して、引用発明1の「圧電体層70」は「PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PZN-PT)、Pb(Ni_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/2)Nb_(1/2))O_(3)-PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)-PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)-PbTiO_(3)(BY-PT)等」の「強誘電性圧電性材料からなる」点。
<<相違点4>>
補正発明1の「圧電体層を形成」する工程においては「前記密着層が前記ビスマスの偏析を防止」するのに対して、引用発明1の「圧電体層70を形成する工程」はそのような特定を有していない点。

(イ)補正発明1についての判断
(イ1)上記の相違点のうち、相違点1、相違点3及び相違点4について検討する。

(イ2)引用発明1においては、「密着層61」は「Ta、Zr、W、Ni、Hf、Nb、Mo、Coからなる群から選択される少なくとも1種の材料」から形成し、「圧電体層70」は「PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PZN-PT)、Pb(Ni_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/2)Nb_(1/2))O_(3)-PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)-PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)-PbTiO_(3)(BY-PT)等の鉛を含有する強誘電性圧電性材料からなる」ものである。
したがって、引用発明1は、「強誘電性圧電性材料」の選択肢の中に「ビスマスを含む複合酸化物」を有するに止まるものであって、前記「強誘電性圧電性材料」として「ビスマスを含む複合酸化物」を採用する場合に「密着層61」を「Zr」から形成することを特定する発明ではない。

(イ3)そして、引用例1には、具体的な実施態様における「密着層61」と「圧電体層70」を形成する材料に関しては、第2の2(3)イ(ア)(ア1)bで摘記したように、段落【0025】に「本実施形態では、密着層61をZrで形成」すると記載され、同cで摘記したように、段落【0038】?【0039】に「絶縁体膜55の前面に、例えば、ジルコニウム(Zr)からなる密着層61を形成」し「チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電体層70を形成する。」と記載されているのみである。
すなわち、「圧電体層70」を「ビスマスを含む複合酸化物」で形成する場合に「密着層61」を「ジルコニウム(Zr)」で形成することは、引用例1には、記載も示唆もされていない。

(イ3)原査定に引用された他の刊行物について検討する。
引用例2には、第2の2(3)イ(イ)(イ1)a及びbで摘記したように、「密着層62としては、例えば、厚さが10?50nmのチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、密着層62として、厚さ20nmのチタン(Ti)を設けた。」こと、「チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する」が前記「圧電体層70の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、例えば、上述したようにリラクサ強誘電体(例えば、PMN-PT、PZN-PT、PNN-PT等)の他の圧電材料を用いてもよい。」と記載されている。
引用例3には、第2の2(3)イ(ウ)(ウ1)a及びbで摘記したように、「圧電体層70の材料」については、「チタン酸ジルコン酸鉛[Pb(Zr,Ti)O_(3):PZT]を主成分とする材料で形成されていることが好ましいが、その他、マグネシウム酸ニオブ酸鉛とチタン酸鉛の固溶体[Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3):PMN-PT]、亜鉛酸ニオブ酸鉛とチタン酸鉛の固溶体[Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3):PZN-PT]等を用いてもよい。」という記載はあるものの、「密着層」を設けることは記載されていない。
引用例4には、第2の2(3)イ(エ)(エ1)a及びbで摘記したように、「圧電体層70の材料」の選択肢の1つとしてビスマスを含む複合酸化物を用いることは記載されているものの、ことさら「密着層」を設けることは記載されていない。
周知例には、第2の2(3)イ(オ)(オ1)a?eで摘記したように、「圧電体層70」をビスマスを含む複合酸化物で形成することは記載されているものの、「密着層」を設けることは何ら記載されていない。
以上のように、引用例2?引用例4及び周知例には、「圧電体層」を「ビスマスを含む複合酸化物」で形成する場合に「密着層」を「ジルコニウム」で形成することは、記載も示唆もされていない。

(イ4)これに対して、本願発明1は、「ジルコニウムからなる密着層」と「ビスマスを含む複合酸化物からなる圧電体層」という組み合わせを採用することによって、「絶縁体膜55上にスパッタリング法によりジルコニウムからなる密着層56を形成し、その後、密着層56上に白金等からなる第1電極60を形成することで、圧電体層70に含まれるビスマスが第1電極60中に拡散し、さらには密着層56中に拡散しても、ビスマスの偏析が生じず、膜剥がれなどの問題が生じることがない。」という、本願明細書の段落【0028】に記載された格別の効果を奏するものである。

(イ5)したがって、「圧電体層」が「ビスマスを含む」場合に、「ジルコニウム」からなる「密着層」を設けることで、「前記密着層が前記ビスマスの偏析を防止」することを、引用例2?引用例4及び周知例の記載を参酌して、引用発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たとは認められない。

(イ6)以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、補正発明1は、引用例2?引用例4及び周知例の記載を参酌しても、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

B 本件補正後の請求項2及び請求項3に係る発明について
本件補正後の請求項2及び請求項3は、いずれも、本件補正後の請求項1を引用する発明であるから、補正発明1をさらに限定した発明である。
したがって、上記のとおり、補正発明1は、引用例2?引用例4及び周知例の記載を参酌しても、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、同じ理由により、本件補正後の請求項2及び請求項3に係る発明も、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

C 補正発明4について
(ア)補正発明4と引用発明2との対比
補正発明4と引用発明2とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<<一致点>>
「第1電極と、
前記第1電極上に設けられ、複合酸化物からなる圧電体層と、
前記圧電体層上に設けられた第2電極と、
前記第1電極の下に設けられた密着層と、
前記密着層の下に設けられ酸化ジルコニウムからなる絶縁体層とを具備することを特徴とする圧電素子。」

<<相違点>>
<<相違点5>>
補正発明4の「圧電体層」は「鉛を含有」しないのに対して、引用発明2の「圧電体層70」は「鉛を含有する」点。
<<相違点6>>
補正発明4の「圧電体層」は「ビスマスを含む」のに対して、引用発明2の「圧電体層70」は「PbTiO_(3)(PT)、PbZrO_(3)(PZ)、Pb(Zr_(X)Ti_(1-X))O_(3)(PZT)、Pb(Mg_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PMN-PT)、Pb(Zn_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PZN-PT)、Pb(Ni_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PNN-PT)、Pb(In_(1/2)Nb_(1/2))O_(3)-PbTiO_(3)(PIN-PT)、Pb(Sc_(1/3)Ta_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PST-PT)、Pb(Sc_(1/3)Nb_(2/3))O_(3)-PbTiO_(3)(PSN-PT)、BiScO_(3)-PbTiO_(3)(BS-PT)、BiYbO_(3)-PbTiO_(3)(BY-PT)等」の「強誘電性圧電性材料からなる」点。
<<相違点7>>
補正発明4の「密着層」は「前記圧電体層から拡散したビスマスの偏析を防止する」のに対して、引用発明2の「密着層61」はそのような特定を有していない点。
<<相違点8>>
補正発明4の「密着層」は「ジルコニウムを含む」のに対して、引用発明2の「密着層61」は「圧電体層70の形成時の焼成温度で導体層62に拡散し難い高融点金属材料であり、かつ、前記焼成温度以下の温度で熱酸化する材料である、Ta、Zr、W、Ni、Hf、Nb、Mo、Coからなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる」点。

(イ)補正発明4についての判断
(イ1)上記の相違点のうち、相違点6?相違点8について検討する。

(イ2)相違点6は相違点3と同一の相違点であり、相違点8は相違点1と実質的に同一の相違点である。
また、補正発明1において、「密着層」が「偏析を防止」する「前記ビスマス」は、「圧電体層」に含まれていた「ビスマス」が当該「圧電体層」の「形成」時に「拡散」したものであることは明らかであるから、相違点7は相違点4と実質的に同一の相違点である。

(イ3)そうすると、補正発明1と同じ理由により、相違点5について検討するまでもなく、補正発明4は、引用例2?引用例4及び周知例の記載を参酌しても、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

C 本件補正後の請求項5ないし請求項8に係る発明について
本件補正後の請求項5ないし請求項8は、いずれも、本件補正後の請求項4を引用する発明であるから、補正発明4をさらに限定した発明である。
したがって、上記のとおり、補正発明4は、引用例2?引用例4及び周知例の記載を参酌しても、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、同じ理由により、本件補正後の請求項5ないし請求項8に係る発明も、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

エ 独立特許要件のまとめ
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1ないし請求項8に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものと認められる。
よって、請求項1ないし請求項8に係る発明についての本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3 小括
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし請求項8に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願の請求項1ないし請求項8に係る発明は、第2の2(3)で検討したとおり、引用例2?引用例4及び周知例の記載を参酌しても、当業者が引用発明1又は引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。


第4 むすび
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-05 
出願番号 特願2011-66812(P2011-66812)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 境 周一  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 鈴木 匡明
加藤 浩一
発明の名称 圧電素子の製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置  
代理人 栗原 浩之  
代理人 山▲崎▼ 雄一郎  

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